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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086364
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】光電式ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220602BHJP
   G01D 5/38 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G01D5/347 110E
G01D5/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198318
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶顕
(72)【発明者】
【氏名】水谷 都
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103CA02
2F103CA03
2F103CA04
2F103DA01
2F103DA13
2F103EA02
2F103EA12
2F103EB06
2F103EB12
2F103EB13
2F103EB14
2F103EB32
2F103EB33
2F103FA01
(57)【要約】
【課題】光電式ロータリエンコーダにおいて3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる光電式ロータリエンコーダの提供。
【解決手段】光電式ロータリエンコーダ1は、所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とし、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターン20を有する板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケール2と、スケール2から測定対象の回転による変位量を検出するヘッド3と、を備える。ヘッド3は、光源4と、複数の格子50を有する回折手段5と、複数の受光素子60を有する受光手段6と、を備える。回折手段5の複数の格子50は、スケール2の格子状のパターン20に沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成され、複数の受光素子60は、スケール2の回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とし、当該測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを有する板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケールと、前記スケールから測定対象の回転による変位量を検出するヘッドと、を備える光電式ロータリエンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記スケールに向かって光を照射する光源と、
前記光源と前記スケールとの間に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、前記スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有して前記光源からの光を回折する、前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される回折手段と、
前記スケールを介した光の進行方向に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、前記スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有して前記スケールを介した光を通過させる前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される通過手段と、
前記通過手段を通過した光を受光する受光手段と、を備え、
前記回折手段と前記通過手段とのいずれか一方の複数の格子は、前記スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成され、いずれか他方の複数の格子は、前記スケールの回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成され、
前記受光手段は、前記回折手段で回折し前記スケールを介して前記通過手段を通過することで生じる前記直交方向に沿って所定の周期を有する干渉光を受光することを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項2】
所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とし、当該測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを有する板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケールと、前記スケールから測定対象の回転による変位量を検出するヘッドと、を備える光電式ロータリエンコーダであって、
前記ヘッドは、
前記スケールに向かって光を照射する光源と、
前記光源と前記スケールとの間に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、前記スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有して前記光源からの光を回折する、前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される回折手段と、前記スケールを介した光の進行方向に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、前記スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の受光素子を有して前記スケールを介した光を受光する前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される受光手段と、を備え、
前記回折手段の複数の格子と前記受光手段の受光素子とのいずれか一方は、前記スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成され、前記回折手段の複数の格子と前記受光手段の受光素子とのいずれか他方は、前記スケールの回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成され、
前記受光手段は、前記回折手段で回折し前記スケールを介することで生じる前記直交方向に沿って所定の周期を有する干渉光を受光することを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された光電式ロータリエンコーダにおいて、
前記回折手段の複数の格子は、前記スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成されることを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された光電式ロータリエンコーダにおいて、
前記複数の変形格子は、前記回転軸と直交する直交方向を軸として線対称に形成されることを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された光電式ロータリエンコーダにおいて、
前記複数の変形格子は、前記回転軸と直交する直交方向の軸上に位置する変形格子を0本目の変形格子とし、前記リニア格子の所定の周期をPとし、前記回転軸から前記スケールまでの半径をRとし、前記スケールの幅方向の距離をxとするとき、前記変形格子のn本目の形状は、
【数1】
・・・(1)
式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成されることを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された光電式ロータリエンコーダにおいて、
前記複数の変形格子は、前記回転軸と直交する直交方向の軸上に位置する変形格子を0本目の変形格子とし、前記リニア格子の所定の周期をPとし、前記回転軸から前記スケールまでの半径をRとし、前記スケールの幅方向の距離をxとするとき、前記変形格子のn本目の形状は、
【数2】
・・・(2)
式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成されることを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された光電式ロータリエンコーダにおいて、
前記スケールは、前記光源からの光を反射する格子状のパターンを備え、
前記格子状のパターンは、前記回折手段にて回折された光を反射することを特徴とする光電式ロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式ロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電式リニアエンコーダでは、3格子原理を応用したものがある。具体的には、光電式リニアエンコーダは、光源と、第1格子を有するインデックスと、第2格子を有するスケールと、第3格子を有する受光手段と、を備える。インデックスが有する第1格子は、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子である。インデックスは、光源とスケールとの間に配置され光源からの光をスケールに向かって通過させる。スケールが有する第2格子は、測定方向に沿って形成される格子状のパターンである。受光手段が有する第3格子は、測定方向に沿って所定の周期で配置される複数の受光素子である。受光手段は、インデックスを通過しスケールを介した光によって生じた干渉光である明暗の縞からなる干渉縞を受光する。この干渉縞は、スケールの格子状のパターン(第2格子)と同じ周期を有する。この際、スケールを測定方向に距離L移動させると、受光手段に生成される干渉縞は、距離2L移動する。光電式リニアエンコーダは、この干渉縞の移動である位相の変化に基づいてスケールとヘッドとの相対移動量を算出する。
【0003】
一方、従来、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを有する略円盤状のスケールと、スケールから測定対象の回転による変位量を検出するヘッドと、を備える光電式ロータリエンコーダが知られている。ヘッドは、光源と、第1格子を有するインデックスと、第2格子を有するスケールと、第3格子を有する受光手段と、を備える。このような光電式ロータリエンコーダでは、光電式リニアエンコーダにおける3格子原理を採用するために、インデックスおよびスケールを円弧状に形成し、第1格子と第2格子を円弧に沿って配置している。このような構成によれば、インデックスおよびスケールを介した光は、受光手段上で円弧状の干渉縞を生成する。このため、受光素子を円弧状に作成することで、3格子原理に基づいた光電式ロータリエンコーダを構成することができる。
【0004】
ここで、光電式リニアエンコーダと光電式ロータリエンコーダにおいて、受光手段における受光素子の共通化の要望がある。光電式ロータリエンコーダでは、前述のように、円弧状のスケールに合わせてインデックスおよび受光手段を円弧状に形成しなければならない。このため、光電式リニアエンコーダと光電式ロータリエンコーダにおいて、受光手段における受光素子の共通化は困難であるという問題がある。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1に記載の光学式エンコーダ(光電式ロータリエンコーダ)は、測定軸に沿って所定の角度ピッチで形成されるスケール格子を有するメインスケールと、このメインスケールと対向配置されて測定軸方向に相対移動する受光側光学格子を有する検出ヘッドとを備える。具体的には、光学式エンコーダは、スケール格子のみを円弧状に変形させ、インデックスおよび受光手段には、光電式リニアエンコーダと同様のものを採用している。
【0006】
このような構成によれば、受光手段には、略中央部に光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を含む歪んだ干渉縞が生成される。光学式エンコーダは、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞のみを取得するため、この干渉縞が生成される部分のみに窓を有するマスク材からなるアパーチャを備えている。受光手段は、アパーチャのマスク材により、歪んだ干渉縞が遮断されるため、窓を介した光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞のみを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-116592公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の光学式エンコーダは、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を取得することができるものの、生成される干渉縞そのものは歪んでいることから検出に用いる信号の信号雑音比(S/N比)が低下してしまうという問題がある。特に、小径の光電式ロータリエンコーダでは、信号雑音比が著しく低下してしまうため、位置のちらつき等、精度が低下する恐れがあるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、光電式ロータリエンコーダにおいて3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる光電式ロータリエンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光電式ロータリエンコーダは、所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とし、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを有する板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケールと、スケールから測定対象の回転による変位量を検出するヘッドと、を備える。ヘッドは、スケールに向かって光を照射する光源と、光源とスケールとの間に配置されるとともにスケールの板面と平行に配置され、スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有して光源からの光を回折する、スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される回折手段と、スケールを介した光の進行方向に配置されるとともにスケールの板面と平行に配置され、スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有してスケールを介した光を通過させる前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される通過手段と、通過手段を通過した光を受光する受光手段と、を備える。回折手段と通過手段とのいずれか一方の複数の格子は、スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成される。また、回折手段と通過手段とのいずれか他方の複数の格子は、スケールの回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成される。受光手段は、回折手段で回折しスケールを介して通過手段を通過することで生じる直交方向に沿って所定の周期を有する干渉光を受光することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、回折手段とスケールと通過手段との関係において、回折手段の複数の格子と通過手段の複数の格子とのいずれか一方を複数の変形格子とし、他方をリニア格子としている。変形格子は、干渉光である干渉縞の歪みを補整し、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を受光手段上に生成することができる。これにより、受光手段は、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を取得することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダは、3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる。
【0012】
本発明の光電式ロータリエンコーダは、所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とし、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを有する板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケールと、スケールから測定対象の回転による変位量を検出するヘッドと、を備える。ヘッドは、スケールに向かって光を照射する光源と、光源とスケールとの間に配置されるとともにスケールの板面と平行に配置され、スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の格子を有して光源からの光を回折する、スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される回折手段と、スケールを介した光の進行方向に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、前記スケールの板面と平行な面に所定の形状で形成される複数の受光素子を有して前記スケールを介した光を受光する前記スケールの径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される受光手段と、を備える。回折手段の複数の格子と受光手段の受光素子とのいずれか一方は、スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成される。回折手段の複数の格子と受光手段の受光素子とのいずれか他方は、スケールの回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成される。受光手段は、回折手段で回折しスケールを介することで生じる直交方向に沿って所定の周期を有する干渉光を受光することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、回折手段とスケールと受光手段との関係において、回折手段の複数の格子と受光手段の複数の受光素子とのいずれか一方を複数の変形格子とし、他方をリニア格子としている。変形格子は、干渉光である干渉縞の歪みを補整し、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を受光手段上に生成することができる。これにより、受光手段は、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を取得することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダは、3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる。
【0014】
この際、回折手段の複数の格子は、スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子に形成されることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、受光手段は、光電式リニアエンコーダと共通の受光素子を採用することができる。したがって、光電式リニアエンコーダと光電式ロータリエンコーダにおいて、受光手段における受光素子の共通化の要望に沿うことができる。また、受光手段は、リニアエンコーダと共通の受光素子を採用できるので、コスト削減を図ることができる。
【0016】
この際、複数の変形格子は、回転軸と直交する直交方向を軸として線対称に形成されることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、複数の変形格子は、回転軸と直交する直交方向を軸として線対称に形成されることで、干渉縞を補整し、より精度の高い光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を生成することができる。
【0018】
この際、複数の変形格子は、回転軸と直交する直交方向の軸上に位置する変形格子を0本目の変形格子とし、リニア格子の所定の周期をPとし、回転軸からスケールまでの半径をRとし、スケールの幅方向の距離をxとするとき、変形格子のn本目の形状は、下記第1実施形態に記載の式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成されることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、複数の変形格子は、式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成されることで、容易に設計し製造することができる。
【0020】
または、複数の変形格子は、回転軸と直交する直交方向の軸上に位置する変形格子を0本目の変形格子とし、リニア格子の所定の周期をPとし、回転軸からスケールまでの半径をRとし、スケールの幅方向の距離をxとするとき、変形格子のn本目の形状は、下記第2実施形態に記載の式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成されることが好ましい。
【0021】
ここで、前述の式(1)にて求められる曲線Cnに基づいて形成される複数の変形格子を採用した場合、スケールが小径の光電式ロータリエンコーダでは、変形格子のn本目における「n」の値が大きくなると誤差が重畳し、干渉縞が生じにくくなることがある。
しかしながら、このような構成によれば、複数の変形格子は、式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成されることで、光の位相が補償され、スケールが小径の光電式ロータリエンコーダでも干渉縞を生じさせやすくすることができる。したがって、光電式エンコーダは、式(1)よりも補整精度の高い複数の変形格子を容易に設計し製造することができる。
【0022】
この際、スケールは、光源からの光を反射する格子状のパターンを備える。格子状のパターンは、回折手段にて回折された光を反射することが好ましい。
【0023】
ここで、光源と回折手段とスケールと通過手段または受光手段とのそれぞれの離間距離が異なる場合、受光手段に干渉縞が生成されなくなったり、精度が低下することがある。このため、各構成部材は、それぞれ等間隔に配置されることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、スケールは、光源からの光を反射する格子状のパターンを備えるため、回折手段を介した光をスケールにて反射し、通過手段または受光手段に折り返して照射させることができる。このため、回折手段と通過手段または受光手段とは、同一平面上に配置することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダは、容易に各構成部材を等間隔に配置することができ、干渉縞の精度低下を抑制することができる。また、光電式ロータリエンコーダは、スケールにて光を反射するため小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る光電式ロータリエンコーダを模式的に示す斜視図
図2】前記光電式ロータリエンコーダにおける変形格子を示す平面図
図3】第2実施形態に係る光電式ロータリエンコーダにおける変形格子を示す平面図
図4】第3実施形態に係る光電式ロータリエンコーダを模式的に示す斜視図
図5】第4実施形態に係る光電式ロータリエンコーダを模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る光電式ロータリエンコーダ1を模式的に示す斜視図である。
光電式ロータリエンコーダ1は、図示しない所定の軸で回転する測定対象の回転方向を測定方向とする。図1に示すように、光電式ロータリエンコーダ1は、板状かつ回転軸を中心とした略円盤状のスケール2と、スケール2から測定対象の回転による変位量を検出するヘッド3と、を備える。
スケール2は、光を透光するガラス等の透光部材で形成されている。スケール2の一面には、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターン20が形成されている。
【0027】
ヘッド3は、スケール2に向かって光を照射する光源4と、光源4とスケール2との間に配置される回折手段5と、スケール2を介した光の進行方向に配置される受光手段6と、を備える。これらを備えたヘッド3は、スケール2に対して測定方向に沿って一体で進退可能に設けられている。
【0028】
光源4は、スケール2の一面に向かって垂直に平行光を照射する。光源4は、例えばLED(Light Emitting Diode)が採用される。なお、光源4はLEDに限らず、任意の光源を用いてもよい。
【0029】
回折手段5は、スケール2の板面と平行に配置され、スケール2の径方向と直交する方向と平行な方向であるX方向に沿って長尺状に形成される。回折手段5は、スケール2の板面と平行な面であるXY平面に所定の形状で形成される複数の格子50を有する。複数の格子50は、光源4からの光を回折する。回折手段5は、光源4からの光を透光するガラスで形成されている。回折手段5は、スケール2からd1の距離を有して離間した位置に配置されている。
【0030】
回折手段5の複数の格子50は、スケール2の格子状のパターン20に沿って回転軸を中心とする裾広がり状の複数の変形格子50に形成される。複数の変形格子50の設計方法については後述する。なお、以下の説明において、スケール2の径方向と直交する方向と平行な方向をX方向とし、スケール2の板面上でX方向と直交する方向をY方向とし、スケール2の回転軸と平行な方向でありX方向とY方向との双方と直交する方向をZ方向として説明する。また、図面において、複数の変形格子50は、形状が明確に判別できるように黒で表されているが、当該部分は、透明な部材で形成されていてもよいし、不透明な部材で形成されていてもよいし、隣接する白い部分と異なる厚みを有して形成されていてもよいし、孔として形成されていてもよい。要するに、複数の変形格子は、変形格子として機能すれば、どのように形成されていてもよい。
【0031】
受光手段6は、スケール2の板面と平行に配置され、スケール2を介した光を受光するスケール2の径方向と直交する方向と平行な方向であるX方向に沿って長尺状に形成される。受光手段6は、スケール2および回折手段5を透過した複数の回折光を受光し、複数の回折光によって生成された干渉縞から信号を検出する複数の受光素子60を備える。受光素子60は、スケール2の板面と平行な面であるXY平面に所定の形状で形成されている。具体的には、複数の受光素子60は、Z方向と平行なスケール2の回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向であるX方向に沿って所定の周期Pを有する複数のリニア格子として形成される。受光手段6は、回折手段5で回折しスケール2を介することで生じる直交方向であるX方向に沿って所定の周期Pを有する干渉光である図示しない干渉縞を受光する。
【0032】
受光素子60には、PDA(Photo Diode Array)が用いられ、回折手段5とスケール2と重なるよう設置されている。すなわち、回折手段5と受光手段6とは、スケール2を挟んで互いに重なるように向かい合せて設置されている。PDAは、複数の干渉縞を1度に測定することができる性質を持つ検出器である。なお、複数の受光素子60は、PDAに限らず、PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge-Coupled Device)等の任意の検出器を用いてもよい。
【0033】
図2は、光電式ロータリエンコーダ1における変形格子50を示す平面図である。
図2に示すように、回折手段5における複数の変形格子50は、Z方向と平行な図示しない回転軸と直交する直交方向を軸Lとして線対称に形成されている。以下、複数の変形格子50の設計方法について説明する。
【0034】
先ず、複数の変形格子50において、回転軸と直交する直交方向の軸L上に位置する変形格子500を0本目の変形格子500とする。次に、受光素子60(図1参照)であるリニア格子の所定の周期をPとし、回転軸からスケール2(図1参照)までの半径をRとし、スケール2の幅方向の距離をxとする。この際、変形格子のn本目の形状は、式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成される。
【数1】
・・・(1)
【0035】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)回折手段5とスケール2と受光手段6との関係において、回折手段5の複数の格子50を複数の変形格子とし、受光手段6の複数の受光素子60をリニア格子としている。変形格子50は、干渉縞の歪みを補整し、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を受光手段6上に生成することができる。これにより、受光手段6は、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を取得することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダ1は、3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる。
【0036】
(2)受光手段6は、光電式リニアエンコーダと共通の受光素子60を採用することができる。したがって、光電式リニアエンコーダと光電式ロータリエンコーダ1において、受光手段6における受光素子60の共通化の要望に沿うことができる。また、受光手段6は、リニアエンコーダと共通の受光素子60を採用できるので、コスト削減を図ることができる。
(3)複数の変形格子50は、Z方向と平行な回転軸と直交する直交方向を軸Lとして線対称に形成されることで、干渉縞を補整し、より精度の高い光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を生成することができる。
(4)複数の変形格子50は、式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成されることで、容易に設計し製造することができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図3は、第2実施形態に係る光電式ロータリエンコーダ1Aにおける変形格子50Aを示す平面図である。
前記第1実施形態では、複数の変形格子50は、式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成されていた。第2実施形態では、図3に示すように、式(1)とは異なる式にて求められる曲線に基づいて複数の変形格子50Aが形成されている点で前記第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態における複数の変形格子50Aの設計方法について説明する。
【0039】
先ず、複数の変形格子50Aにおいて、回転軸と直交する直交方向の軸L上に位置する変形格子500Aを0本目の変形格子とする。次に、受光素子60(図1参照)であるリニア格子の所定の周期をPとし、回転軸からスケール2(図1参照)までの半径をRとし、スケール2の幅方向の距離をxとする。この際、変形格子50Aのn本目の形状は、式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成される。
【数2】
・・・(2)
【0040】
このような第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(3)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(5)複数の変形格子50Aは、式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成されることで、光の位相が補償され、スケール2が小径の光電式ロータリエンコーダ1Aでも干渉縞を生じさせやすくすることができる。したがって、光電式ロータリエンコーダ1Aは、式(1)よりも補整精度の高い複数の変形格子を容易に設計し製造することができる。
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図4は、第3実施形態に係る光電式ロータリエンコーダ1Bを模式的に示す斜視図である。
前記第1実施形態では、スケール2が有する格子状のパターン20は光を透過する透過型の光電式ロータリエンコーダ1であった。第3実施形態のスケール2Bは、光源4からの光を反射する格子状のパターン20Bを備える点で前記第1実施形態と異なる。また、光を反射する格子状のパターン20Bを採用することにより、第3実施形態のヘッド3B内における回折手段5および受光手段6は、前記第1実施形態とは異なる位置に配置されている。
【0042】
格子状のパターン20Bは、回折手段5にて回折された光を反射し、反射した光を受光手段6に向かって照射することが好ましい。このため、図4に示すように、回折手段5と受光手段6とは同一平面上に配置されている。このように配置されることで、回折手段5とスケール2Bと受光手段6との離間距離を、それぞれ等間隔とすることができる。具体的には、回折手段5とスケール2Bとの離間距離d3と、スケール2Bと受光手段6との離間距離d4とは同じ距離となる。光源4から照射された光は、回折手段5にて回折され、スケール2Bにて反射し、受光手段6に照射される。
【0043】
このような第3実施形態においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態における(1)~(5)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(6)スケール2Bは、光源4からの光を反射する格子状のパターン20Bを備えるため、回折手段5を介した光をスケール2にて反射し、受光手段6に折り返して照射させることができる。このため、回折手段5と受光手段6とは、同一平面上に配置することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダ1Bは、容易に各構成部材を等間隔に配置することができ、干渉縞の精度低下を抑制することができる。また、光電式ロータリエンコーダ1Bは、スケール2Bにて光を反射するため、小型化を図ることができる。
【0044】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図5は、第4実施形態に係る光電式ロータリエンコーダ1Cを模式的に示す斜視図である。
前記第1実施形態では、受光手段6の複数の受光素子60は、所定の周期を有する複数のリニア格子に形成されていた。第4実施形態では、ヘッド3Cは、複数の格子70を有する通過手段7を備え、複数の格子70は、リニア格子に形成されている点で前記第1実施形態と異なる。また、通過手段7を備えることで、受光手段6Cは、リニア格子を備えていない点で前記1実施形態と異なる。
【0046】
図5に示すように、通過手段7は、スケール2を介した光の進行方向に配置されるとともにスケール2の板面と平行に配置されている。また、通過手段7は、スケール2の板面と平行な面に複数の格子70であるリニア格子を有する。通過手段7は、スケール2の径方向と直交する方向と平行な方向に沿って長尺状に形成される。通過手段7は、光を透光するガラス等の透光部材で形成されている。通過手段7の複数の格子70は、スケール2の回転軸を中心とした径方向と直交する直交方向に沿って所定の周期を有する複数のリニア格子に形成される。
【0047】
受光手段6Cは、通過手段7を通過した光を受光する。受光手段6Cは、回折手段5で回折しスケール2を介して通過手段7を通過することで生じる直交方向に沿って所定の周期を有する図示しない干渉縞を受光する。具体的には、受光手段6Cは、第1受光部61と、第2受光部62と、第3受光部63と、第4受光部64と、を備える。第1受光部61は、位相が0度の光を受光する。第2受光部62は、位相が90度の光を受光する。第3受光部63は、位相が180度の光を受光する。第4受光部64は、位相が270度の光を受光する。受光手段6Cは、複数の受光部61~64が受光したそれぞれ位相の異なる複数の光から4相信号を取得し、4相信号に基づいて変位量を取得する。なお、受光手段6Cは、複数の受光部61~64を備え、4相信号を取得しているが、受光手段6Cは、干渉光である干渉縞から変位量を取得できれば、どのような受光手段を採用してもよい。例えば、受光手段は、4相信号ではなく3相信号を取得できる構成を有していてもよい。
【0048】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態から前記第3実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(7)回折手段5とスケール2と通過手段7との関係において、回折手段5の複数の格子を変形格子50とし、通過手段7の複数の格子70をリニア格子としている。変形格子50は、干渉縞の歪みを補整し、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を受光手段6C上に生成することができる。これにより、受光手段6Cは、光電式リニアエンコーダと略同様の干渉縞を取得することができる。したがって、光電式ロータリエンコーダ1Cは、3格子原理を採用しつつ、検出精度を維持することができる。
(8)光電式ロータリエンコーダ1Cは、リニア格子である複数の格子70を有する通過手段7を備えるため、受光手段6Cにおいて所定の周期で配置される複数の受光素子を有さなくても、干渉縞を取得することができる。
【0049】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、測定機器に用いられる光電式ロータリエンコーダ1,1A~1Cについて説明したが、光電式ロータリエンコーダであれば、検出器の形式や検出方式等は特に限定されるものではない。また、光電式ロータリエンコーダは、測定機器ではなく、その他のものに設けられ、用いられていてもよい。
【0050】
前記各実施形態では、複数の変形格子50,50Aは、回折手段5,5Aに形成されていたが、前記第1実施形態における受光素子、または、前記第4実施形態における通過手段に複数の変形格子が形成されていてもよい。また、前記各実施形態では、複数の変形格子50,50Aは、回転軸と直交する直交方向を軸Lとして線対称に形成されていたが、線対称に形成されていなくてもよい。
【0051】
前記第1実施形態では、変形格子50は、式(1)にて求められる曲線Cに基づいて形成され、前記第2実施形態では、変形格子50Aは、式(2)にて求められる曲線Cn+1(x)に基づいて形成されていたが、変形格子は、式(1)や式(2)にて求められる曲線とは異なる曲線で形成されていてもよいし、曲線ではなく、直線に基づいて放射状に形成されていてもよい。
要するに、変形格子は、スケールの格子状のパターンに沿って回転軸を中心とする裾広がり状に形成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明は、光電式ロータリエンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A~1C 光電式ロータリエンコーダ
2,2B スケール
20,20B 格子状のパターン
3,3B,3C ヘッド
4 光源
5,5A 回折手段
50,50A 変形格子
6,6C 受光手段
60 受光素子
7 通過手段
図1
図2
図3
図4
図5