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特開2022-86478回路接続用接着剤、接続構造体及び接続構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086478
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】回路接続用接着剤、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20220602BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220602BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220602BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01B1/20 A
C09J7/30
C09J9/02
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198510
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
(72)【発明者】
【氏名】市村 剛幸
(72)【発明者】
【氏名】富坂 克彦
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5G301
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AB05
4J004CE01
4J004FA05
4J040EC041
4J040HD30
4J040HD36
4J040HD41
4J040JA09
4J040JB10
4J040KA12
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA01
4J040MA04
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
4J040NA19
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA18
5G301DA32
5G301DA33
5G301DA51
5G301DA53
5G301DA57
5G301DA59
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温短時間での熱圧着により、対向する電極間の接続抵抗が充分に低い接続構造体を得る回路接続用接着剤を提供する。
【解決手段】回路接続用接着剤は、カチオン重合性化合物と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子と、を含有する。カチオン重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物を含み、熱カチオン重合開始剤が、下記式(1)で表されるアニオンを有するオニウム塩を含む。回路接続用接着剤により、低温短時間での熱圧着により、対向する電極間の接続抵抗が十分に低い接続構造体を得ることができる。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子と、を含有し、
前記カチオン重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物を含み、
前記熱カチオン重合開始剤が、下記式(1)で表されるアニオンを有するオニウム塩を含む、回路接続用接着剤。
【化1】
【請求項2】
前記熱カチオン重合開始剤が、前記オニウム塩として、スルホニウム塩及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含む、請求項1に記載の回路接続用接着剤。
【請求項3】
フィルム状である、請求項1又は2に記載の回路接続用接着剤。
【請求項4】
第一の接着剤層と、前記第一の接着剤層上に積層された第二の接着剤層と、を備え、
前記第一の接着剤層が、前記カチオン重合性化合物と、前記熱カチオン重合開始剤と、前記導電粒子と、を含有する、請求項3に記載の回路接続用接着剤。
【請求項5】
第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、
前記回路接続部が、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤の硬化物を含む、接続構造体。
【請求項6】
第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤を介在させ、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を熱圧着して、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤、接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を駆動させる半導体が搭載されたTCP(Tape Carrier Package)又はCOF(Chip On Flex)とLCDパネル、あるいは、TCP又はCOFとプリント配線板とを電気的に接続するための接着材料(回路接続材料)として、接着剤中に導電粒子が分散された回路接続用接着剤が使用されている。
【0003】
また、半導体をフェイスダウンで直接LCDパネル又はプリント配線板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンディング法ではなく、薄膜化及び狭ピッチ接続に有利なフリップチップ実装が採用されており、ここでも、回路接続材料として、接着剤中に導電粒子が分散された回路接続用接着剤が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-251787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、回路接続用接着剤を用いた回路部材同士の接続は、回路部材間に当該回路接続用接着剤を介在させた状態で、加熱しながら回路部材同士を圧着(熱圧着)することにより行われている。熱圧着時の加熱温度は、回路部材の種類等により異なるが、例えば、回路部材として、プラスチック基板等の耐熱性に劣る基板、薄膜のガラス基板などを有する部材を用いる場合には、130~160℃程度の温度で熱圧着が行われる。
【0006】
近年、圧着箇所周辺の低耐熱性部材の破損の抑制、歩留まりの改善等の観点から、熱圧着時の温度の更なる低温化及び圧着時間の短時間化が求められており、例えば、130℃未満、5秒間以下の熱圧着により回路接続を行うことが求められている。しかしながら、本発明者らの検討の結果、従来の回路接続用接着剤を用いた場合、上記のような条件での熱圧着では、対向する電極間の接続抵抗値が上昇することが明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明は、低温短時間での熱圧着により、対向する電極間の接続抵抗が充分に低い接続構造体を得ることができる、回路接続用接着剤を提供することを主な目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記式(1)で表されるアニオンを有するオニウム塩が、脂環式エポキシ化合物と組み合わせた場合に特異的に低温硬化性の向上効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【化1】
【0009】
すなわち、本発明の一側面は、以下の[1]に記載の回路接続用接着剤に関する。
【0010】
[1]カチオン重合性化合物と、熱カチオン重合開始剤と、導電粒子と、を含有し、前記カチオン重合性化合物が、脂環式エポキシ化合物を含み、前記熱カチオン重合開始剤が、下記式(1)で表されるアニオンを有するオニウム塩を含む、回路接続用接着剤。
【化2】
【0011】
上記側面の回路接続用接着剤によれば、低温短時間での熱圧着により、対向する電極間の接続抵抗が充分に低い接続構造体を得ることができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、上記側面の回路接続用接着剤は、脂環式エポキシ化合物と上記式(1)で表されるアニオンを有するオニウム塩との組み合わせによって優れた低温硬化性を有するため、熱圧着時の導電粒子の過度な流動が抑制され、対向する電極間での導電粒子の捕捉性が向上し、結果として、接続抵抗の上昇が抑制されると推察される。
【0012】
上記側面の回路接続用接着剤は、以下の[2]~[4]に記載の回路接続用接着剤であってよい。
【0013】
[2]前記熱カチオン重合開始剤が、前記オニウム塩として、スルホニウム塩及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含む、[1]に記載の回路接続用接着剤。
【0014】
[3]フィルム状である、[1]又は[2]に記載の回路接続用接着剤。
【0015】
[4]第一の接着剤層と、前記第一の接着剤層上に積層された第二の接着剤層と、を備え、前記第一の接着剤層が、前記カチオン重合性化合物と、前記熱カチオン重合開始剤と、前記導電粒子と、を含有する、[3]に記載の回路接続用接着剤。
【0016】
本発明の他の一側面は、以下の[5]に記載の接続構造体に関する。
【0017】
[5]第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、前記回路接続部が、[1]~[4]のいずれかに記載の回路接続用接着剤の硬化物を含む、接続構造体。
【0018】
本発明の他の一側面は、以下の[6]に記載の接続構造体の製造方法に関する。
【0019】
[6]第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、[1]~[4]のいずれかに記載の回路接続用接着剤を介在させ、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を熱圧着して、前記第一の電極及び前記第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温短時間での熱圧着により、対向する電極間の接続抵抗が充分に低い接続構造体を得ることができる、回路接続用接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、回路接続用接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、図2の接続構造体の製造方法を示す模式断面図である。
図4図4は、実験例1及び実験例2のDSC曲線を示す図である。
図5図5は、実験例3及び実験例4のDSC曲線を示す図である。
図6図6は、実験例5及び実験例6のDSC曲線を示す図である。
図7図7は、実験例3及び実験例4のDMA曲線を示す図である。
図8図8は、実験例3及び実験例4のTG/DTA曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、「室温」とは、25℃を意味する。
【0023】
以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0025】
<回路接続用接着剤>
回路接続用接着剤は、カチオン重合性化合物(以下、「(a)成分」ともいう)と、熱カチオン重合開始剤(以下、「(b)成分」ともいう)と、導電粒子(以下、「(c)成分」ともいう)と、を含有する。この回路接続用接着剤において、カチオン重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物を含み、熱カチオン重合開始剤は、下記式(1)で表されるアニオン(テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオン)を有するオニウム塩(以下、「オニウム塩(1)」ともいう。)を含む。
【化3】
【0026】
上記回路接続用接着剤は、例えば、第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に介在させ、第一の回路部材及び第二の回路部材を熱圧着して、第一の電極及び第二の電極を互いに電気的に接続するために用いられる。
【0027】
上記回路接続用接着剤によれば、回路接続時の熱圧着を低温短時間で行う場合において、対向する電極間の接続抵抗が充分に低い接続構造体を得ることができる。また、上記回路接続用接着剤によれば、接続信頼性に優れる回路接続構造体が得られる傾向がある。すなわち、上記回路接続用接着剤を用いて得られた接続構造体は、高温高湿雰囲気(例えば85℃、85%RH)に長期間さらされた場合でも剥離等の不具合を生じがたく、充分に低い接続抵抗を維持できる傾向がある。
【0028】
回路接続用接着剤は、例えば、フィルム状である。以下では、フィルム状の回路接続用接着剤(回路接続用接着剤フィルム)を例に挙げて、回路接続用接着剤の詳細を説明する。
【0029】
回路接続用接着剤フィルムは、カチオン重合性化合物及び熱カチオン重合開始剤を含む接着剤成分と、接着剤成分中に分散された導電粒子とからなる、異方導電性の接着剤フィルムである。なお、本明細書では、回路接続用接着剤フィルムに含まれる導電粒子以外の成分を総称して接着剤成分と称する。また、「異方導電性」とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
【0030】
[(a)カチオン重合性化合物]
(a)成分は、例えば、熱によって熱カチオン重合開始剤(熱カチオン発生剤)が発生したカチオン種によって重合する化合物である。(a)成分は、少なくとも脂環式エポキシ化合物を含む。ここで、脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物をいう。
【0031】
脂環式エポキシ化合物1分子中の脂環式エポキシ基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。脂環式エポキシ化合物1分子中の脂環式エポキシ基の数が2つ以上である場合、硬化後の架橋密度が高くなる傾向がある。脂環式エポキシ化合物1分子中の脂環式エポキシ基の数は、例えば、6つ以下であってよい。
【0032】
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセン、シクロペンテン等の脂環構造を有する化合物を酸化して得られる化合物(例えば、シクロヘキセンオキシド、シクロペンテンオキシド等を有する化合物)が挙げられる。
【0033】
脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロエキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3,3’、4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0034】
脂環式エポキシ化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150、EHPE3150CE、CEL(セロキサイド)8010、CEL(セロキサイド)2021P、CEL(セロキサイド)2081(商品名、株式会社ダイセル製)等が挙げられる。
【0035】
脂環式エポキシ化合物は1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
脂環式エポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば、接着強度の観点から、100~300g/eqであってよい。エポキシ当量は、JIS K 7236に準拠して決定される。
【0037】
脂環式エポキシ化合物の含有量は、回路接続用接着剤の硬化性を担保する観点から、接着剤成分の合計量を基準として、10質量%以上、15質量%以上又は20質量%以上であってよい。脂環式エポキシ化合物の含有量は、回路接続用接着剤のフィルム形成性を担保する観点から、接着剤成分の合計量を基準として、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、脂環式エポキシ化合物の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、10~60質量%、15~55質量%又は20~50質量%であってよい。
【0038】
(a)成分は、脂環式エポキシ化合物以外のカチオン重合性化合物を更に含んでいてよい。脂環式エポキシ化合物以外のカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物等の環状エーテル基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、(a)成分がオキセタン化合物を更に含む場合、架橋密度が高くなり、接続抵抗の低減効果がより顕著に得られる傾向があり、また、より優れた接続信頼性が得られる傾向がある。
【0039】
オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物である。オキセタン化合物1分子中のオキセタニル基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。オキセタン化合物1分子中のオキセタニル基の数が2つ以上である場合、硬化後の架橋密度がより一層高くなりやすく、また、脂環式エポキシ化合物との組み合わせによる相乗効果が得られやすくなる。オキセタン化合物1分子中のオキセタニル基の数は、例えば、6つ以下であってよい。
【0040】
オキセタン化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。
【0041】
オキセタン化合物の市販品としては、例えば、ETERNACOLL OXBP(商品名、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、宇部興産株式会社製)、OXSQ、OXT-121、OXT-221、OXT-101、OXT-212(商品名、東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
オキセタン化合物は1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(a)成分がオキセタン化合物を更に含む場合、脂環式エポキシ化合物の含有量に対するオキセタン化合物の含有量の質量比率(オキセタン化合物の含有量/脂環式エポキシ化合物の含有量)は、オキセタン化合物の反応性を向上させ、脂環式エポキシ化合物との組み合わせによる相乗効果が得られやすくなる観点から、0.2以上、0.5以上、1.0以上又は1.5以上であってよく、5.0以下、4.0以下、3.0以下又は2.5以下であってよく、0.2~5.0、0.5~4.0、1.0~3.0又は1.5~2.5であってよい。
【0044】
(a)成分の含有量は、回路接続用接着剤の硬化性を担保する観点から、接着剤成分の合計量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上であってよい。(a)成分の含有量は、回路接続用接着剤のフィルム形成性を担保する観点から、接着剤成分の合計量を基準として、50質量%以下、40質量%以下又は30質量%以下であってよい。これらの観点から、(a)成分の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、10~50質量%、15~40質量%又は20~30質量%であってよい。
【0045】
[(b)熱カチオン重合開始剤]
(b)成分は、加熱によりカチオン種(酸等)を発生して重合を開始させる化合物であり、例えば、カチオンとアニオンとから構成される塩化合物である。(b)成分は、少なくともオニウム塩(1)を含む。
【0046】
オニウム塩(1)が有するカチオンは特に限定されない。オニウム塩(1)は、例えば、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩又はヨードニウム塩であってよい。これらの中でも、スルホニウム塩及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種を用いる場合、より低い接続抵抗が得られる傾向がある。かかる傾向は、アンモニウム塩(特にアニリニウム塩)を用いる場合に強くなる。
【0047】
アニリニウム塩としては、例えば、N-アルキルアニリニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、N,N,N-トリアルキルアニリニウム塩、N-ベンジルアニリニウム塩(N-アルキル-N-ベンジルアニリニウム塩及びN,N-ジアルキル-N-ベンジルアニリニウム塩を含む)等が挙げられる。これらのアニリニウム塩において、窒素原子に結合する炭化水素基(アルキル及びベンジル)は、置換基を有するものであってよい。
【0048】
オニウム塩(1)は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、下記式(2)で表されるカチオン(N-ベンジルアニリニウムイオン)を有する塩であってよい。
【化4】
【0049】
式(2)中、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、又はカルボニル基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基を示す。
【0050】
上記式(2)で表されるカチオンの具体例としては、N-ベンジル-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(4-ニトロベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(α-フェニルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(α-メチルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-シンナミル-N,N-ジメチルアニリニウムイオン等が挙げられる。
【0051】
オニウム塩(1)は、例えば、上記式(1)で表されるアニオンとナトリウムイオンとの塩と、オニウム塩(1)の対カチオンとなるイオンとヨウ化物イオンとの塩と、を用意し、これらを混合すること等により調製することができる。
【0052】
オニウム塩(1)は1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
オニウム塩化物(1)の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、脂環式エポキシ化合物100質量部に対して、10質量部以上、15質量部以上又は20質量部以上であってよい。オニウム塩化物(1)の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、脂環式エポキシ化合物100質量部に対して、45質量部以下、40質量部以下又は35質量部以下であってよい。これらの観点から、オニウム塩化物(1)の含有量は、脂環式エポキシ化合物100質量部に対して、10~45質量部、10~40質量部、15~45質量部、15~40質量部又は20~35質量部であってよい。
【0054】
オニウム塩化物(1)の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、接着剤成分の合計量を基準として、0.5質量%以上、1.0質量%以上又は3.0質量%以上であってよい。オニウム塩化物(1)の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、接着剤成分の合計量を基準として、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。これらの観点から、オニウム塩化物(1)の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.5~20質量%、1.0~15質量%又は3.0~10質量%であってよい。
【0055】
(b)成分は、オニウム塩化物(1)以外の熱カチオン重合開始剤を含んでいてもよい。(b)成分の全質量を基準とするオニウム塩化物(1)の含有量は、例えば、90質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
【0056】
(b)成分の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、接着剤成分の合計量を基準として、0.5質量%以上、1.0質量%以上又は3.0質量%以上であってよい。(b)成分の含有量は、低温短時間での熱圧着時における接続抵抗の低減効果を向上させる観点から、接着剤成分の合計量を基準として、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。これらの観点から、(b)成分の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.5~20質量%、1.0~15質量%又は3.0~10質量%であってよい。
【0057】
[(c)導電粒子]
(c)成分としては、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などであってよい。(c)成分は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子であってもよい。これらの中でも、(c)成分が、熱溶融性の金属で形成された金属粒子及び被覆導電粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む場合(特に被覆導電粒子を含む場合)、加熱及び/又は加圧することにより変形させることが容易となり、電極同士を電気的に接続する際に、電極と導電粒子との接触面積を増加させ、電極間の導電性をより向上させることができる。
【0058】
(c)成分の平均粒子径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上、2.0μm以上又は2.5μm以上であってよい。(c)成分の平均粒子径は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、6.0μm以下、5.5μm以下又は5.0μm以下であってよい。これらの観点から、(c)成分の平均粒子径は、1.0~6.0μm、2.0~5.5μm又は2.5~5.0μmであってよい。なお、回路接続用接着剤に含まれる導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒子径の測定を行い、得られた粒子径の平均値を(c)成分の平均粒子径とする。導電粒子が球形ではない場合、導電粒子の粒子径は、SEMによる観察画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0059】
(c)成分は、回路接続用接着剤フィルム中で均一に分散されていてよい。回路接続用接着剤フィルムにおける(c)成分の粒子密度は、安定した接続抵抗が得られる観点から、100個/mm以上、1000個/mm以上又は3000個/mm以上であってよい。回路接続用接着剤フィルムにおける(c)成分の粒子密度は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、100000個/mm以下、50000個/mm以下又は30000個/mm以下であってよい。これらの観点から、回路接続用接着剤フィルムにおける(c)成分の粒子密度は、100~100000個/mm、1000~50000個/mm又は3000~30000個/mmであってよい。
【0060】
(c)成分の含有量は、安定した接続抵抗が得られる観点から、回路接続用接着剤の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってよい。(c)成分の含有量は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、回路接続用接着剤の全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってよい。
【0061】
[その他の成分]
回路接続用接着剤フィルムは、上述した成分以外の成分(その他の成分)を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填材等が挙げられる。これらの成分は、接着剤成分に含まれる。
【0062】
-熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、回路接続用接着剤のフィルム形成性の向上に寄与する。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルゴム、エポキシ樹脂(25℃で固形)等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000~200000であってよく、10000~100000であってよく、20000~80000であってよく、40000~60000であってよい。なお、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。
【0064】
熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、1.0質量%以上であってよく、5.0質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、1.0~50質量%であってよく、5.0~40質量%であってよく、10~30質量%であってよく、15~20質量%であってよい。
【0065】
-カップリング剤
カップリング剤は、接着性の向上に寄与する。カップリング剤は、例えばシランカップリング剤であってよい。カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び、これらの縮合物が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
カップリング剤の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよく、1.5質量%以上であってよい。カップリング剤の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、10質量%以下であってよく、8.0質量%以下であってよく、5.0質量%以下であってよく、3.0質量%以下であってよい。カップリング剤の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.1~10質量%であってよく、0.5~8.0質量%であってよく、1.0~5.0質量%であってよく、1.5~3.0質量%であってよい。
【0067】
-充填材
充填材は、接続信頼性の向上に寄与する。充填材としては、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。充填材は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。
【0068】
無機フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカ-アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子等の金属酸化物粒子;金属窒化物粒子などが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
有機フィラーとしては、例えば、シリコーン粒子、メタアクリレート・ブタジエン・スチレン粒子、アクリル・シリコーン粒子、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
充填材は、フィルム成形性及び接続構造体の信頼性を向上させる観点では、無機フィラーであってよい。この効果は、充填材がシリカ粒子を含む場合に顕著に得られる傾向がある。シリカ粒子は、結晶性シリカ粒子又は非結晶性シリカ粒子であってよい。これらのシリカ粒子は合成品であってよい。シリカ粒子の合成方法は、乾式法又は湿式法であってよい。シリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子及びゾルゲルシリカ粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
【0071】
シリカ粒子は、接着剤成分中での分散性に優れる観点から、表面処理されたシリカ粒子であってよい。表面処理されたシリカ粒子は、例えば、アルコキシシラン化合物、ジシラザン化合物、シロキサン化合物等のシラン化合物により表面処理されたシリカ粒子であってよく、シランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子であってよい。表面処理されたシリカ粒子は、例えば、シリカ粒子の表面の水酸基をシラン化合物又はシランカップリング剤により疎水化したものである。
【0072】
アルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
ジシラザン化合物としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3,-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3,-テトラメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0074】
シロキサン化合物としては、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサフェニルシクロシロキサン、オクタデカメチルシクロノナシロキサン、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘプタフェニルヂシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3-ビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、1,3-ジメトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジメチル-1,3-ジフェニル-1,3-ジビニルジシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチル-3-(3-グリシドイロキシプロピル)トリシロキサン、1,3,5-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]トリシロキサン、1,3,-ビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-イル)エチル]-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-[(トリメチルシリル)オキシ]-3-ビニルトリシロキサン、3-[[ジメチル(ビニル)シリル]オキシ]-1,1,5,5,-テトラメチル-3-フェニル-1,5-ビニルトリシロキサン、オクタビニルオクタシルセスキオキサン、オクタフェニルオクタシラシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0075】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0076】
シラン化合物又はシランカップリング剤により表面処理されたシリカ粒子は、シリカ粒子表面の水酸性基残基を更に疎水化するために、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメトキシフェニルシラン等のシラン化合物などを用いて表面処理し、更に疎水化させてもよい。
【0077】
表面処理されたシリカ粒子は、回路接続用接着剤フィルムを圧着する際に、流動性を制御しやすい観点、圧着後の接続構造体の機械的物性及び耐水性を向上させる観点から、シリカとトリメトキシオクチルシランとの反応生成物(加水分解生成物)、シリカとジメチルシロキサンとの反応生成物、二酸化ケイ素又はシリカとジクロロ(ジメチル)シランとの反応生成物、シリカとビス(トリメチルシリル)アミンの反応生成物(加水分解生成物)、及びシリカとヘキサメチルジシラザンの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。これらの中では、シリカとトリメトキシオクチルシランとの反応生成物、及びシリカとビス(トリメチルシリル)アミンの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0078】
充填材の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよく、5.0質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。充填材の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。充填材の含有量は、接着剤成分の合計量を基準として、0.1~50質量%であってよく、1.0~40質量%であってよく、5.0~30質量%であってよく、10~20質量%であってよい。
【0079】
回路接続用接着剤フィルムは、未硬化の状態であってよく、一部が硬化している状態であってもよい。
【0080】
回路接続用接着剤フィルムの厚さは、例えば、5μm以上又は10μm以上であってよく、30μm以下又は20μm以下であってよい。
【0081】
回路接続用接着剤フィルムは、単層構造であっても、多層構造(二層以上の構造)であってもよい。多層構造を有する回路接続用接着剤フィルムの例を図1に示す。
【0082】
図1は、二層構造を有する回路接続用接着剤フィルムの模式断面図である。図1に示す回路接続用接着剤フィルム1は、第一の接着剤層1Aと第二の接着剤層1Bとを備える。第一の接着剤層1Aは、第一の接着剤成分2A及び第一の接着剤成分2A中に分散された導電粒子3Aとからなる。第二の接着剤層1Bは、第二の接着剤成分2Bからなる。
【0083】
第一の接着剤成分2A及び第二の接着剤成分2Bの少なくとも一方は、脂環式エポキシ化合物及びオニウム塩(1)を含む。第一の接着剤成分2A及び第二の接着剤成分2Bにおける、脂環式エポキシ化合物及びオニウム塩(1)の含有量(第一の接着剤成分2Aの合計量基準及び第二の接着剤成分の合計量基準)は、上述した回路接続用接着剤フィルム全体におけるこれらの成分の含有量(接着剤成分の合計量基準)と同じ範囲であってよい。また、第一の接着剤成分2A及び第二の接着剤成分2Bにおける、(a)成分、(b)成分及びその他の成分の含有量(第一の接着剤成分2Aの合計量基準及び第二の接着剤成分の合計量基準)も、上述した回路接続用接着剤フィルム全体におけるこれらの成分の含有量(接着剤成分の合計量基準)と同じ範囲であってよい。
【0084】
第一の接着剤層1Aにおける導電粒子3Aの含有量は、安定した接続抵抗が得られる観点から、第一の接着剤層1Aの全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってよい。第一の接着剤層1Aにおける導電粒子3Aの含有量は、隣り合う電極間の絶縁性を確保する観点から、第一の接着剤層1Aの全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってよい。
【0085】
第二の接着剤層1Bにおける導電粒子の含有量は、第二の接着剤層の全質量を基準として、例えば、1質量%以下であり、0質量%であってもよい。すなわち、第二の接着剤層1Bは、導電粒子を含有しなくてよい。
【0086】
第一の接着剤層1A及び第二の接着剤層1Bは、それぞれ、未硬化の状態であってよく、一部が硬化している状態であってもよい。
【0087】
第一の接着剤層1Aの厚さは、例えば、3μm以上又は5μm以上であってよく、15μm以下又は10μm以下であってよい。
【0088】
第二の接着剤層1Bの厚さは、例えば、5μm以上又は10μm以上であってよく、20μm以下又は15μm以下であってよい。
【0089】
第一の接着剤層1Aの厚さと第二の接着剤層1Bの厚さとの比(第一の接着剤層1Aの厚さ/第二の接着剤層1Bの厚さ)は、0.1以上又は0.3以上であってよく、1.0以下又は0.5以下であってよい。
【0090】
回路接続用接着剤フィルムは、例えば、上述した(a)成分と、(b)成分と、(c)成分と、必要に応じて、その他の成分とを、有機溶媒中で撹拌混合、混練等を行うことによって、溶解又は分散させ、ワニス組成物(ワニス状の接着剤組成物)を調製し、離型処理を施した基材上に、当該ワニス組成物をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗布した後、加熱によって有機溶媒を揮発させることによって作製することができる。このとき、ワニス組成物の塗布量を調整することによって、回路接続用接着剤フィルムの厚さを調整することができる。
【0091】
ワニス組成物の調製において使用される有機溶媒は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものであれば特に制限されない。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ワニス組成物の調製の際の撹拌混合又は混練は、例えば、撹拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0092】
基材は、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限されない。このような基材としては、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる基材(例えば、フィルム)を用いることができる。
【0093】
基材へ塗布したワニス組成物から有機溶媒を揮発させる際の加熱条件は、使用する有機溶媒等に合わせて適宜設定することができる。加熱条件は、例えば、40~120℃で0.1~10分間であってよい。
【0094】
回路接続用接着剤フィルム中には、溶剤の一部が除去されずに残っていてもよい。回路接続用接着剤フィルムにおける溶剤の含有量は、接着剤フィルムの全質量を基準として、例えば、10質量%以下であってよい。
【0095】
回路接続用接着剤フィルムが図1に示すような二層構造の接着剤フィルムである場合、上記と同様の方法で、基材上に第二の接着剤層を形成した後、更に同様にして、第二の接着剤層上に第一の接着剤層を形成することで接着剤フィルムを作製してよい。また、基材上に第一の接着剤層を備える第一の接着剤フィルムと、基材上に第二の接着剤層を備える第二の接着剤フィルムと、を作製し、これらを貼り合わせることによって接着剤フィルムを作製することもできる。
【0096】
以上説明した、回路接続用接着剤フィルムは、基材(例えば上記製造に使用した基材)上に、剥離可能に貼付された状態で提供されてよい。換言すれば、本発明は、一側面において、基材と、基材上に形成された回路接続用接着剤フィルムとを備える、基材付き接着剤フィルムを提供する。
【0097】
<接続構造体及びその製造方法>
本発明の他の実施形態は、第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材と、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材の間に配置され、上記第一の電極及び上記第二の電極を互いに電気的に接続する回路接続部と、を備え、上記回路接続部が、上記回路接続用接着剤の硬化物を含む、接続構造体である。
【0098】
本発明の他の実施形態は、第一の電極を有する第一の回路部材と、第二の電極を有する第二の回路部材との間に、上記回路接続用接着剤を介在させ、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材を熱圧着して、上記第一の電極及び上記第二の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、接続構造体の製造方法である。
【0099】
以下、回路接続材料として上述した回路接続用接着剤フィルム1を用いた接続構造体及びその製造方法について説明する。
【0100】
図2は、接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように、接続構造体10は、相互に対向する第一の回路部材4及び第二の回路部材5と、第一の回路部材4及び第二の回路部材5の間において第一の回路部材4及び第二の回路部材5を接続する回路接続部6と、を備えている。
【0101】
第一の回路部材4は、第一の回路基板41と、第一の回路基板41の主面41a上に形成された第一の電極42とを備えている。第二の回路部材5は、第二の回路基板51と、第二の回路基板51の主面51a上に形成された第二の電極52とを備えている。
【0102】
第一の回路部材4及び第二の回路部材5は、電気的接続を必要とする電極が形成された部材であれば特に制限はない。電極が形成された部材(回路部材等)としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機基板;TCP、FPC、COF等に代表されるポリイミド基板;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等のフィルム上に電極を形成した基板;プリント配線板などが用いられ、これらのうちの複数を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
回路接続部6は、回路接続用接着剤フィルム1の硬化物を含む。回路接続部6は、例えば、第一の回路部材4と第二の回路部材5とが互いに対向する方向(以下「対向方向」)における第一の回路部材4側に位置する第一の領域7と、対向方向における第二の回路部材5側に位置する第二の領域8と、少なくとも第一の電極42及び第二の電極52の間に介在して(第一の電極42及び第二の電極52の双方に接触して)第一の電極42及び第二の電極52を互いに電気的に接続する導電粒子3Aと、を有する。導電粒子3Aは、対向する第一の電極42と第二の電極52との間のみならず、第一の回路基板41の主面41aと第二の回路基板51の主面51aとの間に配置されていてもよい。
【0104】
第一の領域7は、例えば、第一の接着剤成分2Aの硬化物を含む絶縁性物質で構成されている。第二の領域8は、例えば、第二の接着剤成分2Bの硬化物を含む絶縁性物質で構成されている。回路接続部6は、第一の領域7及び第二の領域8のように2つの領域を有していなくてもよく、例えば、第一の接着剤成分2Aと第二の接着剤成分2Bとが混在した状態で硬化してなる硬化物からなっていてもよい。
【0105】
図3は、接続構造体10の製造方法を示す模式断面図である。接続構造体10の製造方法では、図3の(a)に示されるように、まず、第一の回路部材4と、回路接続用接着剤フィルム1とを用意する。次に、回路接続用接着剤フィルム1を第一の回路部材4の主面41a上に配置する。回路接続用接着剤フィルム1が基材(図示せず)上に積層されている場合には、当該基材の回路接続用接着剤フィルム1側を第一の回路部材4に向けるようにして、回路接続用接着剤フィルム1と基材とを備える積層体を第一の回路部材4上に配置する。この際、回路接続用接着剤フィルム1の第一の接着剤層1A側を第一の回路部材4の主面41aと対向させることで、対向する電極間に捕捉される導電粒子数を向上させることができる。
【0106】
そして、回路接続用接着剤フィルム1を、図3の(a)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続用接着剤フィルム1を第一の回路部材4に仮接続する(図3の(b)参照)。このとき、加圧と共に加熱を行ってもよい。
【0107】
続いて、図3の(c)に示すように、第一の回路部材4上に配置された回路接続用接着剤フィルム1上に、第二の電極52側を第一の回路部材4に向けるようにして(すなわち、第一の電極42と第二の電極52とが対向配置される状態にして、第一の回路部材4と、第二の回路部材5との間に、回路接続用接着剤フィルム1を介在させて)第二の回路部材5を更に配置する。回路接続用接着剤フィルム1が基材(図示せず)上に積層されている場合には、基材を剥離してから第二の回路部材5を回路接続用接着剤フィルム1上に配置する。
【0108】
そして、回路接続用接着剤フィルム1を図3の(c)の矢印A及びB方向に熱圧着する。これにより、回路接続用接着剤フィルム1が硬化され、第一の電極42及び第二の電極52を互いに電気的に接続する本接続が行われる。その結果、図2に示すような接続構造体10が得られる。
【0109】
上記のようにして得られる接続構造体10においては、対向する第一の電極42及び第二の電極52の双方に導電粒子3を接触させることが可能であり、第一の電極42及び第二の電極52間の接続抵抗を充分に低減することができる。したがって、第一の電極42及び第二の電極52間の電流の流れを円滑にすることが可能であり、第一の回路部材4及び第二の回路部材5が有する機能を充分に発揮させることができる。
【0110】
熱圧着時の温度は、回路接続用接着剤フィルム1を充分に硬化させ、第一の回路部材4と第二の回路部材5とを接着できる温度である。熱圧着時の温度は、130℃未満であってよく、125℃以下又は115℃以下であってもよい。熱圧着時の温度は110℃以上であってよい。なお、上記温度は、回路接続用接着剤フィルムの最高到達温度である。
【0111】
熱圧着の時間は、10秒未満であってよく、7秒以下又は5秒以下であってもよい。熱圧着の時間は3秒以上であってよく、4秒以上であってもよい。
【実施例0112】
以下、実験例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実験例のみに限定されるものではない。
【0113】
実験例では以下に示す材料を用いた。
・熱カチオン重合開始剤
A1:下記合成例1で合成した(N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート
A2:下記合成例2で合成したN,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
・カチオン重合性化合物
B1:ビス-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン(商品名:セロキサイド8010、株式会社ダイセル製)
B2:4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]ビフェニル(商品名:OXBP、宇部興産株式会社製)
B3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:180~190、商品名:YL980、三菱ケミカル株式会社製)
・熱可塑性樹脂
C1:ビスフェノールA型及びビスフェノールF型の共重合フェノキシ樹脂(重量平均分子量:62000、ガラス転移温度:71℃、商品名:ZX-1356-2、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、有機溶媒(2-ブタノン)で不揮発分50質量%に希釈したものを使用
C2:下記合成例3で合成したP-1(フルオレン型フェノキシ樹脂)
C3:ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(商品名:jER1010、三菱化学株式会社製)
・導電粒子
D1:下記作製例1で作製した導電粒子
・カップリング剤
E1:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業株式会社製)
・充填材
F1:表面処理されたシリカ粒子(シリカとビス(トリメチルシリル)アミンとの加水分解生成物)
F2:表面処理されたシリカ微粒子(トリメトキシオクチルシランとシリカの加水分解生成物、商品名:アエロジルR805、Evonik Industries AG社製、有機溶媒で不揮発分の含有量を10質量%に希釈したものを使用)
【0114】
<合成例1>
(N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート)の合成)
[工程1]
マグネチックスターラー上にスターラーチップを入れた200ml三角フラスコを準備し、脱水アセトン100ml(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、4-メトキシベンジルクロリド3.11g(20mmol、富士フイルム和光純薬株式会社製)、及びヨウ化ナトリウム6.00g(40mmol、富士フイルム和光純薬株式会社製)を溶解し、室温で2時間攪拌した。攪拌後の沈殿物を濾過し後、溶液を更に、ヘキサン100ml(富士フイルム和光純薬製)と水50mlの3回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム20g(富士フイルム和光純薬株式会社製)で乾燥した。有機層を留去することにより、薄黄色液体として、4.61g(収率99%)の4-メトキシベンジルヨーダイドを得た。
【0115】
[工程2]
マグネチックスターラー上にスターラーチップを入れた200ml三角フラスコを準備し、ヘキサン100ml(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、4-メトキシベンジルヨーダイド4.61g(19mmol、富士フイルム和光純薬株式会社製)と、を混合した。5mlのヘキサンに混合したN,N-ジメチルアニリン2.30g(19mmol、富士フイルム和光純薬株式会社製)を三角フラスコに滴下し、室温で30分攪拌した。攪拌後の反応物にメタノール50ml(富士フイルム和光純薬株式会社製)を投入し、メタノール層をヘキサン100mlで3回洗浄した後、メタノールを留去することにより、6.00g(収率85%)のN,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・ヨーダイドを得た。
【0116】
(工程3A)
マグネチックスターラー上にスターラーチップを入れた200ml三角フラスコを準備し、酢酸エチル50ml(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、水50mlと、を混合した。5mlの2-ブタノン(富士フイルム和光純薬株式会社製)に溶解したN,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・ヨーダイド1.89g(5.1mmol)と、5mLの2-ブタノンに溶解したナトリウム・テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート4.56g(5.1mmol、アポロサイエンティフィック社製)と、を三角フラスコに滴下し、室温で30分攪拌した。攪拌後の反応物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで1回、水50mlで3回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム20gで乾燥した。その後、有機溶剤を留去して、減圧乾燥することにより、4.22g(収率69%)のN,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを得た。
【0117】
[化合物の同定]
上記で得られた化合物のH NMRスペクトルをNMR(日本電子株式会社製、JNM-ECX400II)を使用して測定した。各化合物のスペクトルデータを以下に示す。
・4-メトキシベンジルヨーダイド(400MHz、CDCl δ:3.79(s,3H),4.48(s,2H),6.82(d,2H,J=8.8Hz),7.32(d,2H,J=8.8Hz)
・N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・ヨーダイド(400MHz,CDOD), δ:3.64(s,6H),3.77(s,3H),4.98(s,2H),6.84(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),7.01(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),7.06~7.62(m,3H),7.75~7.77(m,2H)
・N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(400MHz,CDOD), δ:3.60(s,6H),3.75(s,3H),4.92(s,2H),6.83(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),6.97(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),7.58~7.61(m,15H),7.71~7.73(m,2H)
【0118】
<合成例2>
(N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成)
工程3Aを、以下の工程3Bに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス(ペンタ不フルオロフェニル)ボレートを合成した。
【0119】
[工程3B]
マグネチックスターラー上にスターラーチップを入れた200ml三角フラスコを準備し、酢酸エチル50mlと、N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウムヨーダイド1.85g(5.0mmol)と、を混合した。三角フラスコにナトリウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート10%溶液38.61g(5.0mmol、株式会社日本触媒製、TE-PB-NA-10-W)を滴下し、室温で30分攪拌した。攪拌後の反応物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで1回、水50mlで3回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム20gで乾燥した。その後、有機溶剤を留去して、減圧乾燥することにより、N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート2.16g(収率47%)を得た。
【0120】
[化合物の同定]
上記で得られた化合物のH NMRスペクトルをNMR(日本電子株式会社製、JNM-ECX400II)を使用して測定した。化合物のスペクトルデータを以下に示す。
・N,N-ジメチル,N-(4-メトキシベンジル)アニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(400MHz,CDOD), δ:3.60(s,6H),3.75(s,3H),4.92(s,2H),6.83(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),6.97(dt,2H,J=8.8,2.4Hz),7.58~7.63(m,3H),7.69~7.73(m,2H)
【0121】
<合成例3>
(熱可塑性樹脂P-1の合成)
ジムロート冷却管と、塩化カルシウム管と、攪拌モーターに接続されたテフロン(登録商標)攪拌棒と、を装着した3000mLの3つ口フラスコ中で、4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール45g(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)及び3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50g(商品名:YX-4000H、三菱化学株式会社製)をN-メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。この反応液に炭酸カリウム21gを加え、マントルヒーターで110℃に加熱しながら3時間攪拌した。攪拌後の反応液を1000mLのメタノールが入ったビーカーに滴下し、吸引ろ過することによって生成した沈殿物をろ取した。ろ取した沈殿物をさらに300mLのメタノールで3回洗浄して、フェノキシ樹脂P-1を75g得た。得られたフェノキシ樹脂P-1の分子量を高速液体クロマトグラフ(東ソー株式会社製、GP8020、カラム:株式会社日立ハイテクフィールディング製ゲルパックGL-A150S及びGLA160S、溶離液:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/分)を用いて測定したところ、ポリスチレン換算でMn=15769、Mw=38045、Mw/Mn=2.413であった。
【0122】
<作製例1>
(導電粒子の作製)
架橋ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.15μmとなるようにニッケルからなる層を形成した。このようにして、平均粒子径3.3μm、最大粒子径3.5μm、比重2.7の導電粒子を得た。
【0123】
<実験例A1~A6>
(接着剤フィルムの作製)
表1に示す各成分を同表に示す配合量(単位:質量部)で2-ブタノン(メチルエチルケトン)と混合することにより、ワニス状の接着剤組成物X1~X6を調製した。表中の各成分の配合量は不揮発分の配合量を表す。なお、熱カチオン重合開始剤の配合量は単位物質量当たりの質量が等しくなるように配合した。
【0124】
【表1】
【0125】
接着剤組成物X1~X6をそれぞれ基材(PETフィルム)の上に塗布し、乾燥させ、有機溶媒を除去することにより、基材上に厚さ10μmの接着剤フィルムX1~X6を形成した。
【0126】
(DSC評価)
接着剤フィルムX1~X6について、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名:DSC Q1000)を用いて、窒素(N)雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で50℃から300℃までのDSC測定を実施し、発熱開始温度[℃]、ピークトップ温度[℃]、発熱終了温度[℃]、発熱量[J/g]を算出した。結果を表2及び図4~6に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
実験例A1と実験例A2との対比、及び、実験例A3と実験例A4との対比により示されるように、カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物を用い、熱カチオン重合開始剤として、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンを有するオニウム塩を用いることで、DSCの発熱開始温度及びピークトップ温度が低温化することが確認された。また、実験例A5と実験例A6との対比より、上記低温化が、カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物を用いた場合に特異的に生じる効果であることが確認された。
【0129】
(硬化物性の評価)
接着剤フィルムX3~X4について、硬化物性の評価を行った。具体的には、接着剤フィルムを複数枚用意し、200μmの厚さになるようにラミネートし、180℃のオーブンで1時間加熱することで、評価用の硬化フィルムを作製した。その後、硬化フィルムをTAインスツルメントジャパン株式会社製の動的粘弾性装置(商品名:RSA-3)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で50℃から300℃までのDMA測定を行い、250℃での貯蔵弾性率を求めた。また、硬化フィルムをエスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製のTG/DTA測定装置(商品名:TG/DTA7200)を用いて、昇温速度20℃/分の条件で100℃から400℃までのTG/DTA測定を行い、5%重量減少開始温度を求めた。結果を表3及び図7~8に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
実験例A3と実験例A4との対比により、カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ化合物及びオキセタン化合物を用い、熱カチオン重合開始剤として、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオンを有するオニウム塩を用いることで、耐熱性が向上する(貯蔵弾性率が向上し、また、5%重量減少開始温度も高くなる)ことが確認された。
【0132】
<実験例B1~B5>
(回路接続用接着剤の作製)
表4及び表5に示す各成分を同表に示す配合量(単位:質量部)で2-ブタノン(メチルエチルケトン)と混合することにより、第一の接着剤層を形成するためのワニス状の接着剤組成物(第一の接着剤組成物)Y1~Y4、及び、第二の接着剤層を形成するためのワニス状の接着剤組成物(第二の接着剤組成物)Z1~Z4を調製した。表中の各成分の配合量は不揮発分の配合量を表す。なお、熱カチオン重合開始剤の配合量は単位物質量当たりの質量が等しくなるように配合した。
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
表6に示す組み合わせで第一の接着剤組成物及び第二の接着剤組成物を用いて回路接続用接着剤フィルムを作製した。具体的には、まず、基材(PETフィルム)の上に第二の接着剤組成物を塗布し、乾燥させ、有機溶媒を除去することにより、基材上に厚さ11μmの第二の接着剤層を形成した。次いで、第二の接着剤層の上に第一の接着剤組成物を塗布し、乾燥させ、有機溶媒を除去することにより、第二の接着剤層上に厚さ7μmの第一の接着剤層を形成した。これにより、基材、第二の接着剤層及び第一の接着剤層がこの順に積層された異方導電フィルム(回路接続用接着剤フィルム)を作製した。
【0136】
(接続構造体の作製)
第一の回路部材として、無アルカリガラス基板(OA-11、日本電気硝子株式会社製、外形:38mm×28mm、厚さ:0.3mm)の表面に、AlNd(100nm)/Mo(50nm)/ITO(100nm)の配線パターン(パターン幅:19μm、電極間スペース:5μm)を形成した配線付きガラス基板を準備した。第二の回路部材として、バンプ電極を2列で千鳥状に配列したICチップ(外形:0.9mm×20.3mm、厚さ:0.3mm、バンプ電極の大きさ:70μm×12μm、バンプ電極間スペース:12μm、バンプ電極厚さ:8μm)を準備した。
【0137】
上記で作製した異方導電フィルムを、第一の接着剤層と第一の回路部材の配線が形成されている面とが接するように、第一の回路部材上に配置した。セラミックヒータからなるステージとツール(8mm×50mm)とから構成される熱圧着装置(LD-06、株式会社大橋製作所製)を用いて、50℃、0.98MPa(10kgf/cm)の条件で2秒間加熱及び加圧することにより、異方導電フィルムを第一の回路部材に貼り付けた。次いで、異方導電フィルムの第一の回路部材とは反対側の離型フィルムを剥離した。次いで、第一の回路部材の回路電極と第二の回路部材のバンプ電極との位置合わせを行った後、ヒートツールを8mm×45mmで用い、緩衝材として厚さ50μmのPTFEシートを介して、80℃に加熱した台座上で加熱・加圧した。実装温度(異方導電フィルムの実測最高到達温度)は115℃又は125℃とし、加熱時間は5秒間とし、加圧時の圧力(バンプ電極での面積換算圧力)は60MPaとした。これにより異方導電フィルムの第二の接着剤層を第二の回路部材に貼り付け、接続構造体を得た。
【0138】
<接続構造体の評価>
上記で作製した接続構造体について、初期(作製直後)及び高温高湿試験後の接続抵抗を四端子測定法で測定し、対向する電極間の電気的導通性を評価した。具体的には、マルチメータ(MLR21、楠本化成株式会社製)を用いて、14箇所で接続抵抗を測定し、接続抵抗値の最大値(最大抵抗値)を比較した。高温高湿試験は、温度85℃湿度85%RHの恒温恒湿槽にて接続構造体を250時間保管することにより行った。評価結果を表6に示す。
【0139】
また、接続構造体の初期(作製直後)及び高温高湿試験後、第一の回路部材の異方導電フィルムとの接着面の反対側から、FPD/LSI検査顕微鏡(株式会社ニコンインステック製、ECLIPSE L300ND)を用いて、第一の回路部材と回路接続部(異方導電フィルムの硬化物)との界面を観察し、剥離の有無を確認した。第一の回路部材と回路接続部との界面で剥離が発生しなかったものを評価A(接着性良好)、剥離が発生したものを評価B(接着不良)とした。評価結果を表6に示す。
【0140】
【表6】
【符号の説明】
【0141】
1…回路接続用接着剤フィルム、1A…第一の接着剤層、1B…第二の接着剤層、2A,2B…接着剤成分、3A…導電粒子、4…第一の回路部材、5…第二の回路部材、6…回路接続部、10…接続構造体、41…第一の回路基板、42…第一の電極、51…第二の回路基板、52…第二の電極。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8