(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086574
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 3/14 20060101AFI20220602BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20220602BHJP
H03K 17/0812 20060101ALI20220602BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02H3/14
H02H7/00 B
H03K17/0812
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198659
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA05
5G004EA01
5G053AA07
5G053BA04
5G053CA02
5G053EC03
5J055AX32
5J055AX53
5J055BX16
5J055CX13
5J055CX20
5J055DX22
5J055DX61
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY13
5J055EY17
5J055GX01
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】例えば、スイッチング素子の誤作動を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得る。
【解決手段】保護回路は、例えば、制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成された第一スイッチング素子と、グラウンド端子と電気的に接続された制御電極を有し、グラウンド端子の電位の負荷端子の電位に対する電位差が閾値未満である状態ではゲートと負荷端子との間を電気的に遮断し、電位差が閾値以上である状態ではゲートと負荷端子との間を電気的に接続する第二スイッチング素子と、を備える。第二スイッチング素子は、グラウンド端子の電位が通常のグラウンド電位よりも高くかつ電位差が閾値以上である状態でゲートと負荷端子との間を電気的に接続してもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成された第一スイッチング素子と、
グラウンド端子と電気的に接続された制御電極を有し、前記グラウンド端子の電位の前記負荷端子の電位に対する電位差が閾値未満である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に遮断し、前記電位差が閾値以上である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する第二スイッチング素子と、
を備えた、保護回路。
【請求項2】
前記第二スイッチング素子は、前記グラウンド端子の電位が通常のグラウンド電位よりも高くかつ前記電位差が閾値以上である状態で前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する、請求項1に記載の保護回路。
【請求項3】
前記第二スイッチング素子は、前記負荷端子の電位が通常のグラウンド電位よりも低くかつ前記電位差が閾値以上である状態で、前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する、請求項1または2に記載の保護回路。
【請求項4】
前記負荷端子と前記グラウンド端子との間に介在したコンデンサを備えた、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過電流などの異常が検出された際の検出信号等に応じて負荷と当該負荷に対する電源との間を電気的に遮断するスイッチング素子を備えた保護回路が知られている(例えば、特許文献1~3)。これら特許文献では、スイッチング素子は、電界効果トランジスタを用いて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-372517号公報
【特許文献2】特開2000-236621号公報
【特許文献3】特開2018-11467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の保護回路では、例えば、何らかの原因によって制御回路のグラウンド電位が上昇し、ゲートドライバの動作停止が停止することで、これにより電界効果トランジスタを用いて構成されたスイッチング素子においてゲート電位が通常時より低下すると、スイッチング素子が高オン抵抗状態でオンとなり、熱破壊に至る虞があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、スイッチング素子の誤作動を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保護回路は、例えば、制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成された第一スイッチング素子と、グラウンド端子と電気的に接続された制御電極を有し、前記グラウンド端子の電位の前記負荷端子の電位に対する電位差が閾値未満である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に遮断し、前記電位差が閾値以上である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する第二スイッチング素子と、を備える。
【0007】
前記保護回路にあっては、前記第二スイッチング素子は、前記グラウンド端子の電位が通常のグラウンド電位よりも高くかつ前記電位差が閾値以上である状態で前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続してもよい。
【0008】
前記保護回路にあっては、前記第二スイッチング素子は、前記負荷端子の電位が通常のグラウンド電位よりも低くかつ前記電位差が閾値以上である状態で、前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続してもよい。
【0009】
前記保護回路は、前記負荷端子と前記グラウンド端子との間に介在したコンデンサを備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、スイッチング素子の誤作動を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態の保護回路の例示的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の保護回路の例示的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0013】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0014】
[実施形態]
図1は、実施形態の保護回路100の概略構成図である。
【0015】
保護回路100は、電源200と負荷300との間に設けられている。保護回路100は、負荷300に対する過負荷を防止する過負荷保護素子110を有している。保護回路100は、例えば、プリント配線基板のような回路基板(不図示)上に実装されている。
【0016】
電源200は、例えば、直流電源であり、電源電圧は、例えば、12[V]や48[V]等である。電源200は、負荷300に対して電源電力を供給する。なお、G2は、電源200のグラウンドである。
【0017】
負荷300は、一例としては、モータのような、誘導性負荷である。なお、G3は、負荷300のグラウンドである。
【0018】
保護回路100は、電源端子tsと、負荷端子tlと、グラウンド端子tgと、を有している。なお、G1は、保護回路100のグラウンドである。
【0019】
電源端子tsは、例えば、保護回路100が実装された回路基板の端子であり、過負荷保護素子110と電源200との間に設けられている。
【0020】
負荷端子tlは、例えば、保護回路100が実装された回路基板の端子であり、過負荷保護素子110と負荷300との間に設けられている。
【0021】
グラウンド端子tgは、例えば、保護回路100が実装された回路基板の端子であり、保護回路100とグラウンドG1との間、具体的には制御回路120および対策回路140とグラウンドG1との間に設けられている。グラウンド端子tgは、保護回路100や、回路基板上に実装された保護回路100とは別の回路、回路基板上に実装された保護回路100に含まれる素子とは別の素子等の間での共通グラウンドとする端子である。共通グラウンドは、一点アースとも称されうる。
【0022】
本明細書では、グラウンド端子tgとグラウンドG1とがグラウンド線を介して電気的に接続されている正常状態におけるグラウンド端子tgの電位を、通常のグラウンド電位と称する。
【0023】
保護回路100は、過負荷保護素子110と、制御回路120と、サージ対策素子130と、を有している。
【0024】
過負荷保護素子110は、電源端子tsと負荷端子tlとの間に設けられている。過負荷保護素子110は、制御回路120からの制御信号に応じて、電源端子tsと負荷端子tlとの間の電気的な接続と遮断とを切り替える。
【0025】
過負荷保護素子110は、電界効果トランジスタを用いて構成されている。以下、過負荷保護素子110を、トランジスタT1(
図2参照)と称する。過負荷保護素子110、すなわちトランジスタT1は、第一スイッチング素子の一例である。
【0026】
制御回路120は、センサや検出回路等(不図示)から取得した検出信号に応じて、トランジスタT1のオンとオフとを切り替える制御信号を出力する。
【0027】
制御回路120は、異常が検出されていない通常状態では、トランジスタT1のゲートTg(
図2参照)に制御信号としての制御電圧を印加することにより、トランジスタT1をオンとする。この状態では、電源端子tsと負荷端子tlとが電気的に接続され、電源200から負荷300へ、電源電力が印加される。制御回路120は、ゲートドライバとも称されうる。
【0028】
他方、制御回路120は、例えば、過熱や、過電流等の異常が検出された異常状態では、ゲートTgへの制御電圧の印加を停止することにより、トランジスタT1をオフとする。この状態では、電源端子tsと負荷端子tlとが電気的に遮断される。
【0029】
また、サージ対策素子130は、負荷300のサージ電圧によりトランジスタT1が故障するのを抑制する。サージ対策素子130は、例えば、ツェナーダイオードである。以下、サージ対策素子130を、ダイオードD1(
図2参照)と称する。
【0030】
上述した構成の保護回路100において、グラウンド端子tgとグラウンドG1との間のグラウンド線が断線したり、グラウンド端子tgが当該グラウンド線から外れたりした場合には、グラウンド端子tgの電位は、通常のグラウンド電位よりも上昇する。この場合のグラウンド端子tgの電位は、回路基板上に実装された保護回路100以外の回路も含む回路の構成や、各部の抵抗値等によって定まる。グラウンド電位が上昇すると、制御回路120が動作を停止、もしくは出力電圧が低下し、トランジスタT1のゲートTgに印加される制御電圧が低下し、これによりトランジスタT1が高オン抵抗状態でオンとなり熱破壊に至る虞がある。
【0031】
そこで、本実施形態の保護回路100は、このようなトランジスタT1の誤作動を防止するため、対策回路140を有している。
【0032】
図2は、保護回路100の回路図である。
図2に示されるように、対策回路140は、トランジスタT2と、ダイオードD2と、抵抗R3と、を有している。
【0033】
トランジスタT2は、バイポーラトランジスタとして構成されている。トランジスタT2のベースTbは、グラウンド端子tgと電気的に接続されている。また、トランジスタT2のコレクタは、トランジスタT1のゲートTgと電気的に接続され、トランジスタT2のエミッタは、負荷端子tlと電気的に接続されている。トランジスタT2は、第二スイッチング素子の一例である。また、ベースTbは、制御電極の一例である。
【0034】
なお、トランジスタT2は、トランジスタT2と当該トランジスタT2の動作を安定化するバイアス抵抗とを内蔵した抵抗器内蔵型トランジスタ140aとして構成されている。抵抗器内蔵型トランジスタ140aは、デジタルトランジスタとも称されうる。
【0035】
ダイオードD2は、トランジスタT2と負荷端子tlとの間に介在している。ダイオードD2の順方向は、トランジスタT2から負荷端子tlへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD2は、トランジスタT2から負荷端子tlへの電流を許容し、負荷端子tlからトランジスタT2への電流を阻止する。
【0036】
抵抗R1および抵抗R2は、制御回路120とトランジスタT1のゲートTgとの間に介在している。抵抗R1および抵抗R3は、制御回路120とトランジスタT2のコレクタとの間に介在している。また、抵抗R2および抵抗R3は、ゲートTgとトランジスタT2のコレクタとの間に介在している。これら抵抗R1,R2,R3の大きさは、トランジスタT1,T2が適切に作動するよう、適宜に設定される。
【0037】
このような構成の対策回路140にあっては、トランジスタT2は、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する電位差が閾値電圧未満である状態では、オフ状態となり、ゲートTgと負荷端子tlとを電気的に遮断する。閾値電圧は、トランジスタT2のベース-エミッタ間電圧(接合部不飽和電圧)に基づいて定まる。
【0038】
他方、トランジスタT2は、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する電位差が閾値電圧以上である状態では、オン状態となり、ゲートTgと負荷端子tlとを電気的に接続する。
【0039】
よって、トランジスタT2は、例えば、グラウンド端子tgの電位が通常のグラウンド電位よりも高くなり、これにより、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する電位差が閾値以上となった場合に、オン状態となって、ゲートTgと負荷端子tlとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I1が流れ、これによりコレクタ電流I2が流れる。この場合、ゲートTgの電荷を、トランジスタT2を介して負荷端子tlに逃がすことができ、これにより、負荷端子tlの電位に対するゲートTgの電位の低下によってトランジスタT1が高オン抵抗状態でオンとなり熱破壊に至るのを、防ぐことができる。すなわち、対策回路140によれば、例えば、グラウンド端子tgとグラウンドG1との間のグラウンド線が断線したり、グラウンド端子tgが当該グラウンド線から外れたりしたような場合に、ゲートTgのゲートソース間電圧Vgsをゲート閾値Vth以下に低下させることで、トランジスタT1が高オン抵抗状態でオンとなり熱破壊に至るのを抑制することができる。
【0040】
また、保護回路100では、例えば、トランジスタT1を流れる電流の電流値が高い状態で、トランジスタT1がオンからオフに切り替わったような場合において、負荷端子tlの電位が通常のグラウンド電位よりも低くなることがある。これを、負荷端子tlにおける負サージと称する。この場合も、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する電位差が閾値以上となった場合には、トランジスタT2は、オン状態となり、ゲートTgと負荷端子tlとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I1が流れ、これによりコレクタ電流I2が流れる。この場合も、ゲートTgの電荷を、トランジスタT2を介して負荷端子tlに逃がすことができ、これにより、負荷端子tlの電位に対するゲートTgの電位の電位差によってトランジスタT1が不本意にオン状態となる、もしくは高オン抵抗状態でオンとなり熱破壊に至るのを、抑制することができる。この結果、トランジスタT1の不飽和作動によるショート故障を抑制することができる。
【0041】
また、対策回路140は、コンデンサC1を有している。コンデンサC1は、負荷端子tlとグラウンド端子tgとの間に介在するとともに、トランジスタT2のエミッタとグラウンド端子tgとの間に介在している。負荷300が、例えば、モータのような誘導性負荷であるような場合に、仮にコンデンサC1が設けられていないとすると、負荷端子tlにおける電位の変動に応じてトランジスタT2のエミッタの電位の変動が生じ、トランジスタT2の作動が安定化しない虞がある。この点、コンデンサC1は、グラウンド端子tgの電位を安定化させることができる。このようなコンデンサC1により、トランジスタT2の作動をより安定化することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
100…保護回路
110…過負荷保護素子(第一スイッチング素子)
120…制御回路
130…サージ対策素子
140…対策回路
140a…抵抗器内蔵型トランジスタ
200…電源
300…負荷
C1…コンデンサ
D1…ダイオード
D2…ダイオード
G1…グラウンド
G2…グラウンド
G3…グラウンド
I1…ベース電流
I2…コレクタ電流
R1…抵抗
R2…抵抗
R3…抵抗
T1…トランジスタ(第一スイッチング素子)
T2…トランジスタ(第二スイッチング素子)
Tb…ベース(制御電極)
Tg…ゲート
tg…グラウンド端子
tl…負荷端子
ts…電源端子