(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086674
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】端子付き電線および端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20220602BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198823
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊亮
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E063CB04
5E063CC05
5E063CC06
5E063XA01
5E085BB05
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085JJ06
5E085JJ13
(57)【要約】
【課題】丸めて圧着された導体圧着部を有し、防水性能および電気接続信頼性に優れる端子付き電線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の端子付き電線は、複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、前記導体部が前記絶縁被覆から露出した導体露出部を丸めて圧着接続する圧着端子と、を備え、前記絶縁被覆の前記圧着端子側の端部に切り欠きが設けられること特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、
前記導体部が前記絶縁被覆から露出した導体露出部を丸めて圧着接続する圧着端子と、を備え、
前記絶縁被覆の前記圧着端子側の端部に切り欠きが設けられること特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記絶縁被覆の切り欠き形状は、三角形、台形、紡錘形、またはスリット状であることを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記導体部は、前記複数の素線が並列に配列した導体並列型、または周状に撚り合わせた扁平撚線であることを特徴とする請求項1または2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記圧着端子は、前記導体露出部を丸めて圧着接続するワイヤバレルと、前記絶縁被覆を丸めて圧着接続するインシュレーションバレルと、を有するオープンバレル形式の端子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記ワイヤバレルの形状は、U字状またはV字状である請求項4に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記導体露出部の少なくとも一部は、前記複数の素線が接合されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の端子付き電線。
【請求項7】
複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆と、を有する扁平状の被覆電線の一端部の前記絶縁被覆を切除して、前記導体部を露出させた導体露出部を形成するとともに、前記絶縁被覆の端部に切り欠きを形成し、
前記導体露出部を、圧着接続する圧着端子の形状に沿うように折り曲げて、前記圧着端子に収容し、
収容した前記導体露出部を前記圧着端子により丸めて圧着接続することを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線および端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、ハイブリッド自動車や電気自動車等に代表される電動化や、自動運転システムやコネクテッドカー等に代表される多機能化或いは高機能化が急速に進んでいる。このため、このような車両に用いるワイヤーハーネスは、複雑な配策経路に対応でき、しかも高い放熱性を有する必要がある。この目的に対応したワイヤーハーネスには、複数の素線を並列させた薄い帯状の扁平電線が用いられることがある。
【0003】
このような扁平電線の一端部には圧着端子が圧着接続されるが、例えば、底辺がU字やV字型のオープンバレル形の圧着端子のワイヤバレルおよびインシュレーションバレルで、複数の素線からなる導体露出部および絶縁被覆で被覆された被覆部をそれぞれ丸めて圧着する場合、インシュレーションバレル片でかしめられる絶縁被覆の上部側にしわがより絶縁被覆と素線との間に隙間が生じたり、余分な絶縁被覆の上部側がインシュレーションバレル上からはみ出したりすることがある。係る場合、防水処理やコネクタへの収容に影響を及ぼすおそれがあった。
【0004】
これに対し、ワイヤバレル片の間隔を扁平電線の導体露出部の長さより長くし、インシュレーションバレル片の間隔を絶縁被覆の幅より長くすることで確実に圧着しうる端子金具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、導体露出部や絶縁被覆で覆われた被覆部を事前に曲げる等の処理を行うことなく圧着端子内に収容できるものの、扁平電線の形状に合わせた圧着端子とすることが必要となる。また、扁平なワイヤバレルおよびインシュレーションバレルを丸めて圧着するには、2方向からの押圧のみでは困難であり、また、丸めた際の絶縁被覆のシワの発生等を完全に防止することは困難である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、丸めて圧着された導体圧着部を有し、防水性能および電気接続信頼性に優れる端子付き電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆とを有する扁平状の被覆電線と、前記導体部が前記絶縁被覆から露出した導体露出部を丸めて圧着接続する圧着端子と、を備え、前記絶縁被覆の前記圧着端子側の端部に切り欠きが設けられること特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、
前記絶縁被覆の切り欠き形状は、三角形、台形、紡錘形、またはスリット状であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記導体部は、前記複数の素線が並列に配列した導体並列型、または周状に撚り合わせた扁平撚線であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記圧着端子は、前記導体露出部を丸めて圧着接続するワイヤバレルと、前記絶縁被覆を丸めて圧着接続するインシュレーションバレルと、を有するオープンバレル形式の端子であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記ワイヤバレルの形状は、U字状またはV字状である。
【0013】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記導体露出部の少なくとも一部は、前記複数の素線が接合されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、複数の素線で構成される導体部と、前記導体部を被覆する絶縁被覆と、を有する扁平状の被覆電線の一端部の前記絶縁被覆を切除して、前記導体部を露出させた導体露出部を形成するとともに、前記絶縁被覆の端部に切り欠きを形成し、前記導体露出部を、圧着接続する圧着端子の形状に沿うように折り曲げて、前記圧着端子に収容し、収容した前記導体露出部を前記圧着端子により丸めて圧着接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る端子付き電線および端子付き電線の製造方法によれば、扁平状の被覆電線を、導体露出部の収容部が円形等の一般的な圧着端子により圧着接続した場合でも、防水性能および電気接続信頼性に優れる端子付き電線を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による端子付き電線における圧着端子と被覆電線との概略構成を示す模式図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の導体露出部における長手方向に直交した断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の導体露出部を折り曲げた状態での長手方向に直交した断面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の第1の実施形態による端子付き電線の導体圧着部における長手方向に直交した断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の絶縁被覆の端部近傍における長手方向に直交した断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の第1の実施形態による被覆電線を折り曲げた状態での絶縁被覆の端部近傍における長手方向に直交した断面図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の第1の実施形態による端子付き電線の被覆圧着部における長手方向に直交した断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第1の実施形態の変形例1に係る被覆電線の上面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の第2の実施形態の変形例2に係る被覆電線の上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態による端子付き電線の圧着前の圧着部における被覆電線の長手方向に直交した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
(圧着端子および被覆電線)
本発明の実施形態に係る端子付き電線1について説明する前に、
図1を参照して、圧着端子および被覆電線の概略構成について説明する。
図1に示すように、扁平状の被覆電線10は、導体11および絶縁被覆12を有する。導体11は、長手方向Xに延伸した複数の素線111が横並びに並べられて、それぞれの素線111が2層に並列に配列された導体並列型の扁平状の導体部である。絶縁被覆12は、扁平状の導体11の外周に形成された絶縁性の被覆部である。扁平状の被覆電線10は、先端部において導体11の外周の絶縁被覆12が除去されて、所定の長さの導体11が露出した導体露出部112を有する。以下の説明において、被覆電線10は、長手方向Xにおいて、前方側を先端側となる導体端部側とし、後方側を基端側となる被覆側とする。
【0019】
導体11は、複数の素線111から構成され、例えば純度の高いアルミニウム(Al)やアルミニウム合金(Al合金)からなるが、必ずしもこれらの材料に限定されない。本実施形態において被覆電線10は、断面積が例えば3.5mm2(3.5sq)以上90mm2(90sq)以下の、例えば20sqの電線である。被覆電線10の断面積は、それぞれの素線111の断面積の総和、すなわち総断面積である。絶縁被覆12は、絶縁性を有する例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンやノンハロゲン材料などの樹脂からなる。絶縁被覆12を構成する樹脂には、可塑剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0020】
圧着接続前の圧着端子20は、オープンバレル形式の端子である。圧着端子20は、表面に錫メッキ(Snメッキ)処理が施された黄銅などの銅合金からなる板材が加工されて形成される。圧着端子20は、先端側である長手方向Xの前方から基端側である後方に向かって順次接続された、端子接続部(図示せず)、トランジション部22、ワイヤバレル23、およびインシュレーションバレル24を有する。導体圧着部は、導体露出部112がワイヤバレル23により丸められて圧着接続された部分であり、被覆圧着部は、絶縁被覆12により被覆された導体11がインシュレーションバレル24により丸めて圧着接続された部分である。
【0021】
端子接続部(図示せず)は、例えば、雌型圧着端子の接続構造やスリーブ形状の端子(以下、スリーブ端子)の接続構造からなる。なお、接続構造はこれに限定されず、雄型圧着端子や丸型圧着端子などの他の形状の接続構造であってもよい。トランジション部22は、端子接続部とワイヤバレル23とを接続する部分である。
【0022】
ワイヤバレル23は、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であって、かつ長手方向Xに延伸した形状を有する。インシュレーションバレル24も同様に、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であり、かつ長手方向Xに延在した形状を有する。ワイヤバレル23とインシュレーションバレル24とは下側で連結している。本実施形態では、ワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24は、ともにU字形状のものを使用しているが、V字形状のものなども好適に使用することができる。なお、本明細書において、高さ方向Zにおける上側および下側は、構成要素間の相対的な位置関係を説明するために便宜的に向きを特定したものである。ワイヤバレル23の表面23aには、複数のセレーション23bが形成されている。本実施形態におけるセレーション23bの本数は3本であるが、本数は3本に限定されるものではない。
【0023】
図2Aは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の導体露出部における長手方向に直交した断面図である。
図2Bは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の導体露出部を折り曲げた状態での長手方向に直交した断面図である。
図2Cは、本発明の第1の実施形態による端子付き電線1の導体圧着部における長手方向に直交した断面図である。
図3Aは、本発明の第1の実施形態による被覆電線の絶縁被覆の端部近傍における長手方向に直交した断面図である。
図3Bは、本発明の第1の実施形態による被覆電線を折り曲げた状態での絶縁被覆の端部近傍における長手方向に直交した断面図である。
図3Cは、本発明の第1の実施形態による端子付き電線1の被覆圧着部における長手方向に直交した断面図である。
図2Aに示すように、第1の実施形態による被覆電線10は、導体11が13本の素線111を2層で横並びに配列した扁平電線の一種である並列電線である。被覆電線10は、素線111を1層で並列させたものであってもよい。あるいは、素線111を、一方向且つ周状に撚り合わせるとともに、圧縮成形によって所望の断面略長方形に形成した扁平撚線であってもよい。
【0024】
素線111は、例えば、被覆されていない単芯線からなる。被覆電線10のサイズは、必要とされる電流値に応じて適宜設定される。
【0025】
絶縁被覆12は、
図1に示すように、圧着端子20と接続される側の端部に切り欠き12aを有する。切り欠き12aは、絶縁被覆12の端部側が底辺となる三角形状をなしている。絶縁被覆12の端部に切り欠き12aを設けることにより、ワイヤバレル23で導体露出部112を丸めて圧着した際に、インシュレーションバレル24により圧着される絶縁被覆12の端部側が導体露出部112の変形に追随して変形しやすくなり、絶縁被覆12のしわの発生や、絶縁被覆12と導体11との間に隙間が生じにくくなる。本実施の形態では、切り欠き12aは三角形状としているがこれに限定するものではなく、
図4A、
図4Bに示すような台形、または紡錘形の切り欠き12aを有する被覆電線10Aおよび10Bも好適に使用することができる。あるいは、被覆電線の延伸方向と平行な直線状の切込みを、例えばスリット状の幅の狭い切り欠き12aとして設けてもよい。
【0026】
(端子付き電線の製造方法)
次に、以上のように構成された第1の実施形態による被覆電線10および圧着端子20を接続する端子付き電線の製造方法について説明する。第1の実施形態による端子付き電線1を製造する場合には、まず、扁平状の被覆電線10の一端部の絶縁被覆12を切除して、導体11を露出させた導体露出部112を形成する。次いで、絶縁被覆12の端部に切り欠き12aを形成する。次に、導体露出部112がワイヤバレル23の底部に収容され、絶縁被覆12の先端側の一部がインシュレーションバレル24の底部に収容されるように、被覆電線10と圧着端子20とを重ね合わせる。
【0027】
被覆電線10は、導体露出部112の幅r1がワイヤバレル23の開口の幅より大きく、絶縁被覆12の幅r4がインシュレーションバレル24の幅より大きいため、
図2Bおよび
図3Bの矢印で示すように、導体露出部112および絶縁被覆12をワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24の底面形状に沿うように折り曲げた後、ワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24の底部にそれぞれ収容することが好ましい。あるいは、導体露出部112については、少なくとも一部が超音波接合により断面形状が丸くなるように接合されていてもよい。導体露出部112の一部を超音波接合する場合、導体露出部112の前方側、または後方側を超音波接合部としてもよい。導体露出部112の一部を超音波接合することにより、ワイヤバレル23内への導体露出部112の収容を容易に行うことができるとともに、素線111間の導通性を確保することができる。
【0028】
次に、圧着端子20の外周に圧力を加えて、圧着端子20を導体露出部112と絶縁被覆12の一部とに圧着接続する圧着工程を行う。これにより、圧着端子20は、ワイヤバレル23が加締められて、その表面23aが導体露出部112と接触して導体11を包み込み、インシュレーションバレル24が絶縁被覆12の一部を包み込むように丸めて圧着接続される。すなわち、
図2Cおよび
図3Cに示すように、ワイヤバレル23は導体11の外周に沿って接触して圧着され、インシュレーションバレル24は絶縁被覆12の外周に沿って接触して圧着される。これにより端子付き電線1が完成する。
【0029】
なお、ワイヤバレル23により導体露出部112が圧着接続された導体圧着部は、
図2Cに示すように、例えば、断面のY方向の幅r2とZ方向の高さr3との比が、0.7~2.0程度であり、インシュレーションバレル24により絶縁被覆12が圧着接続された被覆圧着部は、
図3Cに示すように、例えば、断面のY方向の幅r5とZ方向の高さr6との比が、0.7~2.0程度である。絶縁被覆12に切り欠き12aを設けることにより、導体圧着部および被覆圧着部を丸めて圧着しやすくなる。なお、本明細書では、便宜上、導体圧着部および被覆圧着部のY方向とZ方向の長さにより断面形状を特定しているが、これに限定するものではなく、断面形状のY方向の幅とZ方向の高さの比が0.7~2.0程度であればよい。
【0030】
本実施形態では、ワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24の形状がU字形状の圧着端子20を、扁平状の被覆電線10と圧着接続する。扁平状の被覆電線10を、U字形状またはV字形状の圧着端子で圧着する場合、インシュレーションバレル24と接していない絶縁被覆12の上部側にしわがよりやすくなり、絶縁被覆12と素線111との間に隙間が生じたり、余分な絶縁被覆12の上部側が突出して変形したりすることがある。本実施形態では、絶縁被覆12の端部に切り欠き12aを設けることにより、絶縁被覆12をインシュレーションバレル24の底面形状に沿うように折り曲げる際、およびインシュレーションバレル24により絶縁被覆12の外周を丸めて圧着する際、切り欠き12aの存在により絶縁被覆12を折り曲げやすくなり、またインシュレーションバレル24の形状に沿って丸めやすくなる。これにより絶縁被覆12にシワが発生しにくくなり、絶縁被覆12と導体11とを密着した状態、すなわち隙間を生ずることなくインシュレーションバレル24により圧着することができる。また、切り欠き12aにより絶縁被覆12が変形しやすくなるため、インシュレーションバレル24により丸めて圧着する際、導体11に無理な力が加わらず、断線のおそれも低くなり、接続信頼性を向上することができる。
【0031】
以上説明した第1の実施形態によれば、被覆電線10が、絶縁被覆12の端部に切り欠き12aを有することにより、断面形状が略丸の被覆圧着部を形成しやすくなり、防水処理やコネクタへの収容も容易となる。
【0032】
なお、第1の実施形態におけるワイヤバレル23およびインシュレーションバレル24については、両方がU字形状、V字形状等のオープンバレルの例を示しているが、一方がオープンバレル、他方が筒型形状のようなクローズバレルの例も適用することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による管端子からなる端子付き電線の製造方法について説明する。
図5は、第2の実施形態による端子付き電線の製造方法を説明するための斜視図である。
図5に示すように、クローズバレル形式の管端子からなる圧着端子20Dは、管状接続部30を有する。管状接続部30は、被覆圧着範囲30a、導体圧着範囲30b、および封止部30cを備える。被覆圧着範囲30aは、被覆電線10の絶縁被覆12を覆う範囲である。導体圧着範囲30bは、被覆電線10から露出した導体11と接続される範囲である。封止部30cは、導体圧着範囲30bより前方側が押しつぶされて封止された一方の端部側の部位である。管状接続部30は、バレル構成片32が丸められてバレル構成片32の対向端部同士を突き合せて溶接することによって、後方視略管形状に形成される。なお、第2の実施形態において、封止部30cの存在は任意であり、例えば導体圧着範囲30bの前方側が開放されていてもよい。
【0034】
まず、被覆電線10の先端の絶縁被覆12を除去することにより、導体11の先端部に導体露出部112を露出させるとともに、絶縁被覆12の端部に切り欠き12aを形成する。次に、導体露出部112および絶縁被覆12を、導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aの内部形状に沿うように折り曲げ、導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aに被覆電線10を挿入する。被覆電線10は、被覆電線10の中心軸が管状接続部30の長手方向Xに平行になるように挿通される。この際、長手方向Xに沿った導体露出部112の先端の位置が管状接続部30における封止部30cより後方になるように挿通される。導体圧着範囲30bの前方側が開放された圧着端子20Dに挿通する場合は、、長手方向Xに沿った導体露出部112の先端の位置が管状接続部30における導体圧着範囲30bの前方側端部付近になるように挿通すればよい。
【0035】
次に、圧着端子20Dの外周に圧力を加えて、圧着端子20Dを導体露出部112と絶縁被覆12の一部とに丸めて圧着接続する圧着工程を行う。これにより、圧着端子20Dは、管状接続部30の導体圧着範囲30bおよび被覆圧着範囲30aが加締められる。すなわち、導体圧着範囲30bの内表面が導体露出部112と接触して導体11を包み込み、被覆圧着範囲30aが絶縁被覆12の一部を包み込むように圧着接続される。以上により、端子付き電線1Dが完成する。
【0036】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、断面形状が略丸の被覆圧着部を形成しやすくなり、防水処理やコネクタへの収容も容易となる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値や材料はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値や材料を用いてもよく、本発明は、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により限定されることはない。
【符号の説明】
【0038】
1、1D 端子付き電線
10、10A、10B 被覆電線
11 導体
12 絶縁被覆
12a 切り欠き
20、20D 圧着端子
22 トランジション部
23 ワイヤバレル
23a 表面
23b セレーション
24 インシュレーションバレル
30 管状接続部
30a 被覆圧着範囲
30b 導体圧着範囲
30c 封止部
32 バレル構成片