(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086675
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 11/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
H02H11/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198824
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 久雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太
(57)【要約】
【課題】例えば、保護回路が誤って電源およびグラウンドに逆に接続されてしまったような場合にあっても、スイッチング素子の故障を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得る。
【解決手段】保護回路は、例えば、制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成されたスイッチング素子と、グラウンド端子の電位の電源端子の電位に対する第一電位差が閾値未満である状態ではグラウンド端子とゲートとの間を電気的に遮断し、第一電位差が閾値以上である状態ではグラウンド端子とゲートとの間を電気的に接続する第一保護素子と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成されたスイッチング素子と、
グラウンド端子の電位の前記電源端子の電位に対する第一電位差が第一閾値電圧未満である状態では前記グラウンド端子と前記ゲートとの間を電気的に遮断し、前記第一電位差が第一閾値電圧以上である状態では前記グラウンド端子と前記ゲートとの間を電気的に接続する第一保護素子と、
を備えた、保護回路。
【請求項2】
前記グラウンド端子と電気的に接続された制御電極を有し、前記グラウンド端子の電位の前記負荷端子の電位に対する第二電位差が第二閾値電圧未満である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に遮断し、前記第二電位差が第二閾値電圧以上である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する第二保護素子を備えた、請求項1に記載の保護回路。
【請求項3】
前記グラウンド端子の電位の前記電源端子の電位に対する第三電位差が第三閾値電圧未満である状態では前記制御電極と前記電源端子との間を電気的に遮断し、前記第三電位差が第三閾値電圧以上である状態では前記制御電極と前記電源端子との間を電気的に接続する第三保護素子を備えた、請求項2に記載の保護回路。
【請求項4】
前記グラウンド端子と前記制御電極とが抵抗を介して電気的に接続された、請求項3に記載の保護回路。
【請求項5】
前記負荷端子と前記グラウンド端子との間に介在したコンデンサを備えた、請求項2~4のうちいずれか一つに記載の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過電流などの異常が検出された際の検出信号等に応じて負荷と当該負荷に対する電源との間を電気的に遮断するスイッチング素子を備えた保護回路が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献では、スイッチング素子は、電界効果トランジスタを用いて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の保護回路では、当該保護回路が誤って電源およびグラウンドに逆に接続されてしまった場合、すなわち、保護回路の電源端子にグラウンドが接続されるとともに保護回路のグラウンド端子に電源が接続されてしまった場合、スイッチング素子が故障してしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、保護回路が誤って電源およびグラウンドに逆に接続されてしまったような場合にあっても、スイッチング素子の故障を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保護回路は、例えば、制御回路からゲートに印加した制御電圧に応じて電源端子と負荷端子との間の電気的な接続と遮断とを切り替える電界効果トランジスタを用いて構成されたスイッチング素子と、グラウンド端子の電位の前記電源端子の電位に対する第一電位差が閾値未満である状態では前記グラウンド端子と前記ゲートとの間を電気的に遮断し、前記第一電位差が閾値以上である状態では前記グラウンド端子と前記ゲートとの間を電気的に接続する第一保護素子と、を備える。
【0007】
前記保護回路は、前記グラウンド端子と電気的に接続された制御電極を有し、前記グラウンド端子の電位の前記負荷端子の電位に対する第二電位差が閾値未満である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に遮断し、前記第二電位差が閾値以上である状態では前記ゲートと前記負荷端子との間を電気的に接続する第二保護素子を備えてもよい。
【0008】
前記保護回路は、前記グラウンド端子の電位の前記電源端子の電位に対する第三電位差が閾値未満である状態では前記制御電極と前記電源端子との間を電気的に遮断し、前記第三電位差が閾値以上である状態では前記制御電極と前記電源端子との間を電気的に接続する第三保護素子を備えてもよい。
【0009】
前記保護回路にあっては、前記グラウンド端子と前記制御電極とが抵抗を介して電気的に接続されてもよい。
【0010】
前記保護回路は、前記負荷端子と前記グラウンド端子との間に介在したコンデンサを備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、保護回路が誤って電源およびグラウンドに逆に接続されてしまったような場合にあっても、スイッチング素子の故障を抑制することが可能な、改善された新規な保護回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態の保護回路の例示的なブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の保護回路の例示的な回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の保護回路の例示的なブロック図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の保護回路の例示的な回路図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の変形例の保護回路の例示的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0014】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、実施形態の保護回路100Aの概略構成図である。
【0016】
保護回路100Aは、電源200と負荷300との間に設けられている。保護回路100Aは、負荷300に対する過負荷を防止する過負荷保護素子110を有している。保護回路100Aは、例えば、プリント配線基板のような回路基板(不図示)上に実装されている。
【0017】
電源200は、例えば、直流電源であり、電源電圧は、例えば、12[V]や48[V]等である。電源200は、負荷300に対して電源電力を供給する。なお、G2は、電源200のグラウンドである。
【0018】
負荷300は、一例としては、モータのような、誘導性負荷である。なお、G3は、負荷300のグラウンドである。
【0019】
保護回路100Aは、電源端子tsと、負荷端子tlと、グラウンド端子tgと、を有している。なお、G1は、保護回路100Aのグラウンドである。
【0020】
電源端子tsは、例えば、保護回路100Aが実装された回路基板の端子であり、過負荷保護素子110と電源200との間に設けられている。
【0021】
負荷端子tlは、例えば、保護回路100Aが実装された回路基板の端子であり、過負荷保護素子110と負荷300との間に設けられている。
【0022】
グラウンド端子tgは、例えば、保護回路100Aが実装された回路基板の端子であり、保護回路100AとグラウンドG1との間、具体的には制御回路120および逆接続保護回路140AとグラウンドG1との間に設けられている。グラウンド端子tgは、保護回路100Aや、回路基板上に実装された保護回路100Aとは別の回路、回路基板上に実装された保護回路100Aに含まれる素子とは別の素子等の間での共通グラウンドとする端子である。共通グラウンドは、一点アースとも称されうる。
【0023】
本明細書では、グラウンド端子tgとグラウンドG1とがグラウンド線を介して電気的に接続されている正常状態におけるグラウンド端子tgの電位を、通常のグラウンド電位と称する。
【0024】
また、保護回路100Aは、過負荷保護素子110と、制御回路120と、サージ対策素子130と、を有している。
【0025】
過負荷保護素子110は、電源端子tsと負荷端子tlとの間に設けられている。過負荷保護素子110は、制御回路120からの制御信号に応じて、電源端子tsと負荷端子tlとの間の電気的な接続と遮断とを切り替える。
【0026】
過負荷保護素子110は、電界効果トランジスタを用いて構成されている。以下、過負荷保護素子110を、トランジスタT1(
図2参照)と称する。過負荷保護素子110、すなわちトランジスタT1は、スイッチング素子の一例である。
【0027】
制御回路120は、センサや検出回路等(不図示)から取得した検出信号に応じて、トランジスタT1のオンとオフとを切り替える制御信号を出力する。
【0028】
制御回路120は、異常が検出されていない通常状態では、トランジスタT1のゲートT1g(
図2参照)に制御信号としての制御電圧を印加することにより、トランジスタT1をオンとする。この状態では、電源端子tsと負荷端子tlとが電気的に接続され、電源200から負荷300へ、電源電力が印加される。制御回路120は、ゲートドライバとも称されうる。ゲートT1gは、制御電極の一例である。
【0029】
他方、制御回路120は、例えば、過熱や、過電流等の異常が検出された異常状態では、ゲートT1gへの制御電圧の印加を停止することにより、トランジスタT1をオフとする。この状態では、電源端子tsと負荷端子tlとが電気的に遮断される。
【0030】
また、サージ対策素子130は、負荷300のサージ電圧によりトランジスタT1が故障するのを抑制する。サージ対策素子130は、例えば、ツェナーダイオードである。以下、サージ対策素子130を、ダイオードD1(
図2参照)と称する。
【0031】
[逆接続保護回路]
上述した構成の保護回路100Aが、誤って電源200およびグラウンドG1に逆に接続されてしまった場合、すなわち、電源端子tsにグラウンドG1が接続されるとともにグラウンド端子tgに電源200が接続されてしまった場合、トランジスタT1が故障してしまう虞がある。
【0032】
そこで、本実施形態の保護回路100Aは、このようなトランジスタT1の故障を防止するため、逆接続保護回路140Aを有している。なお、以下では、電源200およびグラウンドG1に逆に接続されてしまった状態を逆接続状態と称する。
【0033】
図2は、保護回路100Aの回路図である。
図2に示されるように、逆接続保護回路140Aは、トランジスタT2と、ダイオードD21と、ダイオードD22と、を有している。
【0034】
トランジスタT2は、バイポーラトランジスタとして構成されている。トランジスタT2のエミッタは、グラウンド端子tgと電気的に接続されている。また、トランジスタT2のコレクタは、トランジスタT1のゲートT1gと電気的に接続され、トランジスタT2のベースは、電源端子tsと電気的に接続されている。なお、トランジスタT2に対応して、当該トランジスタT2の動作を安定化するバイアス抵抗が設けられている。トランジスタT2は、第一保護素子の一例である。
【0035】
ダイオードD21は、トランジスタT2と電源端子tsとの間に介在している。ダイオードD21の順方向は、トランジスタT2から電源端子tsへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD21は、トランジスタT2から電源端子tsへの電流を許容し、電源端子tsからトランジスタT2への電流を阻止する。
【0036】
ダイオードD22は、トランジスタT2とゲートT1gとの間に介在している。ダイオードD22の順方向は、トランジスタT2からゲートT1gへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD22は、トランジスタT2からゲートT1gへの電流を許容し、ゲートT1gからトランジスタT2への電流を阻止する。
【0037】
抵抗R11および抵抗R12は、制御回路120とトランジスタT1のゲートT1gとの間に介在している。抵抗R11は、制御回路120とトランジスタT2のコレクタとの間に介在している。また、抵抗R12は、ゲートT1gとトランジスタT2のコレクタとの間に介在している。これら抵抗R11,R12の大きさは、トランジスタT1,T2が適切に作動するよう、適宜に設定される。
【0038】
このような構成の逆接続保護回路140Aにあっては、トランジスタT2は、グラウンド端子tgの電位の電源端子tsの電位に対する第一電位差が第一閾値電圧未満である状態では、オフ状態となり、グラウンド端子tgとゲートT1gとを電気的に遮断する。第一閾値電圧は、トランジスタT2のベース-エミッタ間電圧(接合部不飽和電圧)に基づいて定まる。なお、第一閾値電圧は正の値である。
【0039】
他方、トランジスタT2は、グラウンド端子tgの電位の電源端子tsの電位に対する第一電位差が第一閾値電圧以上である状態では、オン状態となり、グラウンド端子tgとゲートT1gとを電気的に接続する。
【0040】
よって、トランジスタT2は、例えば、電源端子tsにグラウンドG1が接続されるとともにグラウンド端子tgに電源200が接続されてしまった場合、すなわち逆接続状態となってしまった場合においては、第一電位差が第一閾値電圧以上となり、これによりオン状態となって、グラウンド端子tgとゲートT1gとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I2bが流れ、これに伴ってコレクタ電流I2cが流れる。これにより、ゲートT1gに正の電位を印加し、トランジスタT1をオン状態にすることができる。仮に、逆接続状態において、トランジスタT1がオフ状態にあると、当該トランジスタT1内部に形成された寄生ダイオードに順方向電流が流れ、これによりトランジスタT1が過熱されて、故障する虞がある。オン状態であれば、このような故障は生じない。この点、本実施形態の構成によれば、逆接続状態となってしまった場合において、トランジスタT1をオン状態にすることができるので、トランジスタT1のオフ状態で当該トランジスタT1に流れる電流によって当該トランジスタT1が故障するのを、抑制することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図3は、実施形態の保護回路100Bの概略構成図である。
【0042】
[対策回路]
本実施形態の保護回路100Bには、電源端子tsは電源200と電気的に接続されているものの、グラウンド端子tgがグラウンドG1と電気的に正しく接続されていない場合の対策が施されている。
【0043】
保護回路100Bでは、仮に対策回路150を有しない場合、グラウンド端子tgとグラウンドG1との間のグラウンド線が断線したり、グラウンド端子tgが当該グラウンド線から外れたりした場合には、グラウンド端子tgの電位は、通常のグラウンド電位よりも上昇する。この場合のグラウンド端子tgの電位は、回路基板上に実装された保護回路100B以外の回路も含む回路の構成や、各部の抵抗値等によって定まる。グラウンド電位が上昇すると、制御回路120を介してトランジスタT1のゲートT1gに印加される制御電圧も上昇し、これによりトランジスタT1が不本意にオンとなる虞がある。すなわち、トランジスタT1が誤作動する虞がある。
【0044】
そこで、本実施形態の保護回路100Bは、このようなトランジスタT1の誤作動を防止するため、対策回路150を有している。
【0045】
図4は、保護回路100Bの回路図である。
図4に示されるように、対策回路150は、トランジスタT3と、ダイオードD3と、抵抗R3と、を有している。
【0046】
トランジスタT3は、バイポーラトランジスタとして構成されている。トランジスタT3のベースT3bは、グラウンド端子tgと電気的に接続されている。また、トランジスタT3のコレクタは、トランジスタT1のゲートT1gと電気的に接続され、トランジスタT3のエミッタは、負荷端子tlと電気的に接続されている。トランジスタT3は、第二保護素子の一例である。また、ベースT3bは、制御電極の一例である。
【0047】
なお、トランジスタT3は、トランジスタT3と当該トランジスタT3の動作を安定化するバイアス抵抗とを内蔵した抵抗器内蔵型トランジスタ150aとして構成されている。抵抗器内蔵型トランジスタ150aは、デジタルトランジスタとも称されうる。
【0048】
ダイオードD3は、トランジスタT3と負荷端子tlとの間に介在している。ダイオードD3の順方向は、トランジスタT3から負荷端子tlへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD3は、トランジスタT3から負荷端子tlへの電流を許容し、負荷端子tlからトランジスタT3への電流を阻止する。
【0049】
保護回路100Bには、第1実施形態の抵抗R12と同様に機能する抵抗R121および抵抗R122が設けられている。抵抗R11、抵抗R121、および抵抗R3は、制御回路120とトランジスタT3のコレクタとの間に介在している。また、抵抗R122および抵抗R3は、ゲートT1gとトランジスタT3のコレクタとの間に介在している。これら抵抗R11,R121,R122,R3の大きさは、トランジスタT1,T2が適切に作動するよう、適宜に設定される。
【0050】
このような構成の対策回路150にあっては、トランジスタT3は、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する第二電位差が第二閾値電圧未満である状態では、オフ状態となり、ゲートT1gと負荷端子tlとを電気的に遮断する。第二閾値電圧は、トランジスタT3のベース-エミッタ間電圧(接合部不飽和電圧)に基づいて定まる。なお、第二閾値電圧は正の値である。
【0051】
他方、トランジスタT3は、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する第二電位差が第二閾値電圧以上である状態では、オン状態となり、ゲートT1gと負荷端子tlとを電気的に接続する。
【0052】
よって、トランジスタT3は、例えば、グラウンド端子tgの電位が通常のグラウンド電位よりも高くなり、これにより、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する第二電位差が第二閾値以上となった場合に、オン状態となって、ゲートT1gと負荷端子tlとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I3bが流れ、これによりコレクタ電流I3cが流れる。この場合、ゲートT1gの電荷を、トランジスタT3を介して負荷端子tlに逃がすことができ、これにより、負荷端子tlの電位に対するゲートT1gの電位の正の第二電位差によってトランジスタT1が不本意にオン状態となるのを、抑制することができる。すなわち、対策回路150によれば、例えば、グラウンド端子tgとグラウンドG1との間のグラウンド線が断線したり、グラウンド端子tgが当該グラウンド線から外れたりしたような場合にあっても、ゲートT1gの電圧の上昇を抑制して、トランジスタT1が不本意にオン状態となるのを抑制することができる。
【0053】
また、保護回路100Bでは、例えば、トランジスタT1を流れる電流の電流値が高い状態で、トランジスタT1がオンからオフに切り替わったような場合において、負荷端子tlの電位が通常のグラウンド電位よりも低くなることがある。これを、負荷端子tlにおける負サージと称する。この場合も、グラウンド端子tgの電位の負荷端子tlの電位に対する第二電位差が第二閾値以上となった場合には、トランジスタT3は、オン状態となり、ゲートT1gと負荷端子tlとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I3bが流れ、これによりコレクタ電流I3cが流れる。この場合も、ゲートT1gの電荷を、トランジスタT3を介して負荷端子tlに逃がすことができ、これにより、負荷端子tlの電位に対するゲートT1gの電位の第二電位差によってトランジスタT1が不本意にオン状態となるのを、抑制することができる。この結果、トランジスタT1の不飽和作動によるショート故障を抑制することができる。
【0054】
また、対策回路150は、コンデンサC3を有している。コンデンサC3は、負荷端子tlとグラウンド端子tgとの間に介在するとともに、トランジスタT3のエミッタとグラウンド端子tgとの間に介在している。負荷300が、例えば、モータのような誘導性負荷であるような場合に、仮にコンデンサC3が設けられていないとすると、負荷端子tlにおける電位の変動に応じてトランジスタT3のエミッタの電位の変動が生じ、トランジスタT3の作動が安定化しない虞がある。この点、コンデンサC3は、高周波成分をグラウンド端子tgへ逃がし、当該高周波成分が負荷端子tlからトランジスタT3のエミッタへ伝達するのを抑制することができる。すなわち、コンデンサC3は、ローパスフィルタを構成している。このようなコンデンサC3により、トランジスタT3の作動をより安定化することができる。
【0055】
[逆接続保護回路と対策回路との両立]
また、逆接続保護回路140Bは、第1実施形態の逆接続保護回路140Aとは異なる構成を有している。具体的に、逆接続保護回路140Bは、トランジスタT4、ダイオードD23、抵抗R21、および抵抗R22を有する点で、逆接続保護回路140Aと相違している。
【0056】
ここで仮に、トランジスタT4、ダイオードD23、および抵抗R21が設けられず、トランジスタT3のベースT3bがグラウンド端子tgと電気的に接続されていたとすると、逆接続状態では、グラウンド端子tgと電気的に接続されているベースT3bの電位が上昇し、トランジスタT3がオンされ、これにより、トランジスタT1がオフされる虞がある。
【0057】
そこで、このような不都合を回避するため、本実施形態の対策回路150を有した保護回路100Bには、第1実施形態の逆接続保護回路140Aに対して、トランジスタT4、ダイオードD23、および抵抗R21が、追加されている。
【0058】
トランジスタT4は、バイポーラトランジスタとして構成されている。トランジスタT4のベースは、グラウンド端子tgと電気的に接続されている。また、トランジスタT4のコレクタは、トランジスタT3のベースT3bと電気的に接続され、トランジスタT4のエミッタは、負荷端子tlと電気的に接続されている。なお、トランジスタT4に対応して、当該トランジスタT4の動作を安定化するバイアス抵抗が設けられている。トランジスタT4は、第三保護素子の一例である。
【0059】
ダイオードD23は、トランジスタT4と電源端子tsとの間に介在している。ダイオードD3の順方向は、トランジスタT4から電源端子tsへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD3は、トランジスタT4から電源端子tsへの電流を許容し、電源端子tsからトランジスタT4への電流を阻止する。
【0060】
抵抗R21は、トランジスタT4のコレクタとグラウンド端子tgとの間に介在するとともに、トランジスタT3のベースT3bとグラウンド端子tgとの間に介在している。
【0061】
また、抵抗R22の大きさは、トランジスタT1,T2が適切に作動するよう、適宜に設定される。
【0062】
このような構成の逆接続保護回路140Bにあっては、トランジスタT4は、グラウンド端子tgの電位の電源端子tsの電位に対する第三電位差が第三閾値電圧未満である状態では、オフ状態となり、トランジスタT3のベースT3bと電源端子tsとを電気的に遮断する。第三閾値電圧は、トランジスタT4のベース-エミッタ間電圧(接合部不飽和電圧)に基づいて定まる。なお、第三閾値電圧は、正の値である。
【0063】
他方、トランジスタT4は、グラウンド端子tgの電位の電源端子tsの電位に対する第三電位差が第三閾値電圧以上である状態では、オン状態となり、トランジスタT3のベースT3bと電源端子tsとを電気的に接続する。
【0064】
よって、トランジスタT4は、逆接続状態となってしまった場合においては、第三電位差が第三閾値電圧以上となり、これによりオン状態となって、トランジスタT3のベースT3bと電源端子tsとの間を電気的に接続する。言い換えると、ベース電流I4bが流れ、これに伴ってコレクタ電流I4cが流れる。これにより、ベースT3bから電荷を逃がし、トランジスタT3をオフ状態にし、ひいては、トランジスタT3がオン状態となることに伴ってトランジスタT1がオフ状態となることすなわち対策回路150が作動することを防止することができる。
【0065】
なお、逆接続状態にあっては、抵抗R21の抵抗値が大きいほど、コレクタ電流I4cの電流値は小さくなるとともに、トランジスタT3のベースT3bの電位が低くなる。すなわち、抵抗R21の大きさは、トランジスタT4が所期の作動を行うよう、適宜に設定される。言い換えると、抵抗R21により、トランジスタT2~T4、ひいてはトランジスタT1は、より確実に所期の作動を実行できる。
【0066】
また、本実施形態において、電源端子tsは電源200に電気的に接続されているものの、グラウンド端子tgはグラウンドG1に電気的に接続されていない場合にあっては、ダイオードD21,D22によってトランジスタT2が非作動となり、ダイオードD23によってトランジスタT4も非作動となり、トランジスタT3のベースT3bとグラウンド端子tgとの電気的な接続は確保されている。このため、この場合において、トランジスタT2,T4が作動して、トランジスタT3の作動、すなわち対策回路150の作動を妨げることはない。
【0067】
[第1変形例]
図5は、第2実施形態の第1変形例の回路図である。
図5に示されるように、本変形例の保護回路100B1の逆接続保護回路140B1では、第2実施形態の保護回路100Bの逆接続保護回路140Bに対して、トランジスタT2のコレクタとトランジスタT1のゲートT1gとの間に介在していた抵抗R22およびダイオードD22を除去している。そして、逆接続保護回路140B1では、制御回路120とトランジスタT2のコレクタとの間の点p1と、電源端子tsとの間を、ダイオードD24および抵抗R23を介して電気的に接続している。この変更点を除き、保護回路100B1は、保護回路100Bと同じ構成を有している。
【0068】
ダイオードD24の順方向は、トランジスタT2から電源端子tsへ向かう方向である。すなわち、ダイオードD24は、トランジスタT2から電源端子tsへの電流を許容し、電源端子tsからトランジスタT2への電流を阻止する。
【0069】
逆接続状態において、点p1の電位は、抵抗R23の抵抗値に依存する。点p1は分圧点とも称されうる。本変形例によれば、逆接続状態においてトランジスタT2の作動によってトランジスタT1をオン状態にする際の、トランジスタT1のゲートT1gの電位を、トランジスタT1がより確実に作動する電位に、設定することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
100A,100B,100B1…保護回路
110…過負荷保護素子(スイッチング素子)
120…制御回路
130…サージ対策素子
140A,140B,140B1…逆接続保護回路
150…対策回路
150a…抵抗器内蔵型トランジスタ
200…電源
300…負荷
C3…コンデンサ
D1…ダイオード
D21,D22,D23,D24…ダイオード
D3…ダイオード
G1…グラウンド
G2…グラウンド
G3…グラウンド
I2b…ベース電流
I2c…コレクタ電流
I3b…ベース電流
I3c…コレクタ電流
I4b…ベース電流
I4c…コレクタ電流
p1…点(分圧点)
R11…抵抗
R12,R121,R122…抵抗
R21,R22,R23…抵抗
R3…抵抗
T1…トランジスタ(スイッチング素子)
T1g…ゲート
T2…トランジスタ(第一保護素子)
T3…トランジスタ(第二保護素子)
T3b…ベース(制御電極)
T4…トランジスタ(第三保護素子)
tg…グラウンド端子
tl…負荷端子
ts…電源端子