(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086689
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】スルホン化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
C07F7/08 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020198841
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉成 保彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ78
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS78
4H049VU36
4H049VV02
4H049VV09
(57)【要約】
【課題】スルホン化合物を製造する新規な方法を提供すること。
【解決手段】 スルホン化合物を製造する方法であって、スルフィド化合物と、過マンガン酸塩とを、酸存在下で反応させて、スルホニル基を形成することにより、前記スルホン化合物を得る工程を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化合物を製造する方法であって、
スルフィド化合物と、過マンガン酸塩とを、酸存在下で反応させて、スルホニル基を形成することにより、前記スルホン化合物を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
前記スルフィド化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【化1】
[式(1)中、
R
1及びR
2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
Zは、単結合又は酸素原子を含む2価の基を示す。]
【請求項3】
前記Zが下記式(1-1)で表される基である、請求項2に記載の方法。
【化2】
[式(1-1)中、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4はそれぞれ独立にアルキル基を示し、*は結合手を示す。]
【請求項4】
前記スルフィド化合物が、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン及び(3-メチルスルホニルプロピル)ペンタメチルジシロキサンからなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が硫酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スルホン化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホニル基(-SO2-)を有するスルホン化合物は、化学的又は生物学的に活性な化合物及びその合成中間体等として有用であることが知られている(例えば、特許文献1)。例えば、特許文献1には、スルフィド化合物を過酸化水素により酸化して、スルホキシド化合物またはスルホン化合物を製造する方法であって、タンタル化合物を酸化触媒として使用することを特徴とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなスルホン化合物の製造するために用いられている過酸化水素は、爆発性を有していることから過酸化水素を使用しないスルホン化合物の新たな製造方法が求められていた。
【0005】
本発明の一側面は、スルホン化合物を製造する新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、スルホン化合物を製造する方法であって、スルフィド化合物と、過マンガン酸塩とを、酸存在下で反応させて、スルホニル基を形成することにより、スルホン化合物を得る工程を含む、方法に関する。
【0007】
スルフィド化合物は、下記式(1)で表される化合物であってよい。
【化1】
[式(1)中、
R
1及びR
2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
Zは、単結合又は酸素原子を含む2価の基を示す。]
【0008】
Zは、下記式(1-1)で表される基であってよい。
【化2】
[式(1-1)中、
Y
1、Y
2、Y
3及びY
4はそれぞれ独立にアルキル基を示し、*は結合手を示す。]
【0009】
スルフィド化合物は、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン及び(3-メチルチオプロピル)ペンタメチルジシロキサンからなる群から選択される化合物であってよい。
【0010】
過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウムであってよい。酸は、硫酸であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、スルホン化合物を製造する新規な方法を提供することができる。本発明の一側面によれば、爆発の危険性が少ない反応剤及び/又は高価な触媒(例えば、タンタル化合物)を使用することなく、スルホン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
本実施形態に係るスルホン化合物の製造方法は、スルフィド化合物と、過マンガン酸塩とを酸存在下で反応させて、スルホニル基(-SO2-)を形成することにより、スルホニル化合物を得る工程を含む。
【0014】
スルフィド化合物は、スルフィド結合(-S-)を有する化合物である。スルフィド化合物中のスルフィド結合(-S-)の数は、例えば、1以上、又は2以上であってよく、例えば、5以下、又は4以下であってよい。
【0015】
スルフィド化合物は、スルフィド結合に直接結合したアルキル基を更に有している。スルフィド化合物中のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。スルフィド化合物中のアルキル基の置換基としては、例えば、エーテル基、アミド基、フェニル基が挙げられる。スルフィド化合物中のアルキル基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、10以下、8以下、6以下、4以下、又は2以下であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基(例えば、n-ペンチル基)、ヘキシル基(例えば、n-ヘキシル基)が挙げられる。
【0016】
スルフィド化合物は、スルフィド結合に直接結合した炭素鎖(例えば、エチレン鎖、n-プロピレン鎖)を有していてよい。スルフィド化合物は、2つの炭素鎖が連結基(例えば、後述する酸素原子を含む2価の基)を介して連結した構造を有していてもよい。
【0017】
スルフィド化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物であってよい。
【化3】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示し、Zは、単結合又は酸素原子を含む2価の基を示す。
【0018】
R1及びR2におけるアルキレン基の炭素数は、例えば、1以上、又は2以上であってよく、10以下、又は9以下であってよい。R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数2以上又は炭素数3以上のアルキレン基であることが好ましい。R1及びR2におけるアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。R1及びR2におけるアルキレン基の置換基としては、例えば、エーテル基、アミド基、フェニル基が挙げられる。R1及びR2におけるアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、ペンチル基が挙げられる。
【0019】
R3及びR4で表されるアルキル基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、10以下、8以下、6以下、4以下、又は2以下であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基(例えば、n-ペンチル基)、ヘキシル基(例えば、n-ヘキシル基)、が挙げられる。
【0020】
R3及びR4で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。アルキル基の置換基としては、例えば、エーテル基、アミド基、フェニル基が挙げられる。
【0021】
Zは、酸素原子を含む2価の基であることが好ましい。Zで表される酸素原子を含む2価の基としては、例えば、オキシ基(-O-)又はシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する基が挙げられる。
【0022】
Zは、例えば、下記式(1-1)で表される基であることが好ましい。
【化4】
式(1-1)中、Y
1、Y
2、Y
3及びY
4はそれぞれ独立にアルキル基を示し、*は結合手を示す。
【0023】
Y1~Y4で表されるアルキル基の炭素数は、1以上であってよく、3以下であってよい。Y1~Y4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基であってよく、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0024】
スルフィド化合物としては、例えば、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、(3-メチルチオプロピル)ペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0025】
過マンガン酸塩としては、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウムが挙げられる。過マンガン酸塩は、過マンガン酸カリウムであることが好ましい。
【0026】
スルフィド化合物のモル数に対する過マンガン酸塩のモル数の比は、例えば、1~20、又は4~15であってよい。
【0027】
酸としては、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸が挙げられる。
【0028】
スルホニル化合物を得る工程では、例えば、スルフィド化合物、過マンガン酸塩、酸及び溶媒を含む反応液中で、スルフィド化合物及び過マンガン酸塩を反応させてよい。溶媒は、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素溶媒、エステル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンが挙げられる。エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチルが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンが挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
反応液の総量におけるスルフィド化合物の濃度は、例えば、0.001~10mol/L、又は0.01~1.0mol/Lであってよい。
【0030】
反応液の総量における酸の濃度は、例えば、0.001~10mol/Lであってよい。反応液のpHは、例えば1~6の範囲であってよい。
【0031】
反応液の温度は、反応液中の溶媒等の成分の種類等に応じて適宜設定することができる。反応液の温度は、例えば、5~40℃、又は10~30℃であってよい。反応液の温度を上記温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分間以上、又は1時間以上であってよく、例えば、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってもよい。
【0032】
反応は、不活性ガス雰囲気下で実施されてもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0033】
反応終了後、必要により後処理が行われてよい。例えば、反応液が水を含む場合、反応液を分液処理することによって水を除去して、油層中の溶媒を揮発させることによって、スルホン化合物を得ることができる。本実施形態に係る方法によれば、分液操作以外に精製操作等を行うことなく、スルホン化合物を得ることができるため、高収率でスルホン化合物を得ることができる。
【0034】
スルホン化合物は、例えば、下記式(2)で表される化合物であってよい。
【化5】
式(2)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を示し、Zは、単結合又は酸素原子を含む2価の基を示す。R
1、R
2及びZの詳細は、式(1)中のR
1~R
4及びZにおいて述べたとおりであってよい。
【0035】
スルホン化合物としては、例えば、1,3-ビス(3-メチルスルホニルプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、(3-メチルスルホニルプロピル)ペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0036】
スルホニル基を形成する反応の反応率は、例えば、95%~100%であってよい。反応率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
冷却管、温度計及び滴下ロートを接続した3つ口フラスコを反応容器とした。反応容器内は、N2雰囲気にした。その後、フラスコ内にスターラチップ、溶媒、触媒、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(BTDS、下記式(I)で表される化合物)を反応容器内に投入し、室温で撹拌した。酸化剤を含む水溶液を加えた滴下ロートから3秒に1滴のペースで反応容器内に、酸化剤を含む水溶液を滴下した。滴下後に反応液を、室温で所定の時間反応させた。反応終了後、分液ロートにて水層を取り除き、油層をエバポレーションして、反応物として、1,3-ビス(3-メチルスルホニルプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(BSDS、下記式(II)で表される化合物)を得た。
【0039】
【0040】
【0041】
得られたBSDSの1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(300MHz,CDCI3)δ3.10(t,J=4.09,4H),2.94(s,6H),2.01-1.90(m―4H),0.76-0.70(t,J=4.27Hz-4H),0.18(s,12H)
【0042】
表1に反応率の結果を示す。反応率は、1H NMRから算出した原料のメチルチオールの末端メチル基と反応後のメチルスルホニルの末端メチル基の積分比から算出した値である。
【0043】
【0044】
実施例1~2の方法によれば、過酸化水素を用いた参考例1の方法と同程度の反応効率でスルホン化合物を製造することができることが示された。