(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086864
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20220602BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20220602BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20220602BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20220602BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220602BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/67
A61K8/60
A61K8/39
A61K8/55
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199128
(22)【出願日】2020-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴胤
(72)【発明者】
【氏名】柳 輝一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC122
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD622
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB11
4C083CC03
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】トコフェロールを含み、優れた抗酸化能を有し、かつ、経時安定性に優れる水中油型乳化組成物、及び化粧料の提供。
【解決手段】トコフェロールと、乳化剤と、油剤と、水と、を含み、トコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%であり、乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む水中油型乳化組成物、及び化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トコフェロールと、乳化剤と、油剤と、水と、を含み、
トコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%であり、
乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む水中油型乳化組成物。
【請求項2】
トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.15~0.40である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.30~0.80である、請求項1又は請求項2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.01~0.20である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率が、ショ糖脂肪酸エステルの全質量に対して90質量%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが、分岐鎖及び不飽和炭素結合の少なくとも一方を有する脂肪酸構造を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中油型乳化組成物及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性成分を配合した水性化粧料が、種々開発されている。一般に、水性化粧料に油性成分を配合する場合、予め油性成分を乳化粒子に含めて水性媒体に分散させ、水中油型の乳化組成物とし、水性化粧料に配合しやすい状態にした上で、上記乳化組成物を水性化粧料に配合することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-52823号公報
【特許文献2】特開2014-12656号公報
【特許文献3】特開2014-201558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油性成分であるトコフェロールは、抗酸化能を有することが知られている。トコフェロールの抗酸化能を期待して、化粧料にトコフェロールを配合することが行われている。化粧料を適用した肌の内部において、トコフェロールの抗酸化能を効果的に発揮させるためには、化粧料へのトコフェロールの配合量を多くする必要がある。しかし、トコフェロールは、単体では水性媒体に溶解し難い成分であるため、化粧料が水性化粧料の場合には、トコフェロールを高濃度で配合させることは難しい。本発明者らが、トコフェロールを高濃度で乳化粒子に含めて水性媒体に分散させ、水中油型の乳化組成物にしたところ、乳化状態を経時で安定に保持することが困難となり、乳化組成物に濁りが生じることが判明した。乳化組成物に濁りが生じると、乳化組成物を配合した化粧料の透明性が損なわれるため、好ましいとは言えない。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、トコフェロールを含み、優れた抗酸化能を有し、かつ、経時安定性に優れる水中油型乳化組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記水中油型乳化組成物を含む化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
[1] トコフェロールと、乳化剤と、油剤と、水と、を含み、
トコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%であり、
乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む水中油型乳化組成物。
[2] トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.15~0.40である、[1]に記載の水中油型乳化組成物。
[3] トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.30~0.80である、[1]又は[2]に記載の水中油型乳化組成物。
[4] トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.01~0.20である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物。
[5] ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率が、ショ糖脂肪酸エステルの全質量に対して90質量%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物。
[6] ポリグリセリン脂肪酸エステルが、分岐鎖及び不飽和炭素結合の少なくとも一方を有する脂肪酸構造を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物を含む化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、トコフェロールを含み、優れた抗酸化能を有し、かつ、経時安定性に優れる水中油型乳化組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記水中油型乳化組成物を含む化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の水中油型乳化組成物について詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、水中油型乳化組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が水中油型乳化組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、水中油型乳化組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本開示において「水相」との語は、溶剤の種類にかかわらず、「油相」に対応する語として使用する。
【0012】
本開示において「経時安定性」とは、高温での経時安定性を意味し、「高温」とは、50℃を意味する。
本開示において「低温での経時安定性」とは、10℃での経時安定性を意味する。
【0013】
[水中油型乳化組成物]
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールと、乳化剤と、油剤と、水と、を含み、トコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%であり、乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む水中油型乳化組成物である。
【0014】
トコフェロールは、単体では水性媒体に溶解し難い成分であるため、水性化粧料にトコフェロールを高濃度で配合させることは難しい。一般に、水性化粧料に油性成分を配合する場合、予め油性成分を乳化粒子に含めて水性媒体に分散させ、水中油型の乳化組成物とし、水性化粧料に配合しやすい状態にした上で、上記乳化組成物を水性化粧料に配合することが行われる。しかし、水中油型の乳化組成物において、トコフェロールを高濃度で乳化粒子に含めると、乳化状態を経時で安定に保持することが困難となり、乳化組成物に濁りが生じ得る。
一方、本開示の水中油型乳化組成物は、特定の乳化剤の組み合わせを含むことで、水等の水性媒体に分散する乳化粒子が、抗酸化能を十分に発揮できる量のトコフェロールを含みながらも、乳化状態を経時で安定に保持できる。このため、本開示の水中油型乳化組成物は、優れた抗酸化能を有し、かつ、経時安定性に優れる。
【0015】
本開示の水中油型乳化組成物に対し、特許文献1(特開2018-52823号公報)に記載の水中油型乳化組成物は、トコフェロールを高濃度で配合させることに着目していないため、トコフェロールの濃度が低く、優れた抗酸化能を有するものではない(例えば、後述の比較例1参照)。また、特許文献2(特開2014-12656号公報)に記載の水性分散組成物、及び、特許文献3(特開2014-201558号公報)に記載の水中油型エマルション組成物は、いずれもトコフェロールの濃度が高く、抗酸化能には優れるものの、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含むものではないため、経時安定性の点については、更なる検討の余地があるといえる(例えば、後述の比較例3及び比較例4参照)。
【0016】
以下、本開示の水中油型乳化組成物の各成分について、詳細に説明する。
以下の説明では、「ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む乳化剤」を「特定乳化剤」と総称する場合がある。
【0017】
〔トコフェロール〕
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールを含み、かつ、トコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%である。
本開示の水中油型乳化組成物において、トコフェロールは、水中油型乳化組成物の抗酸化能の向上に寄与し得る。
【0018】
本開示において「トコフェロール」とは、dl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、又はdl-δ-トコフェロールを指す。
すなわち、本開示でいう「トコフェロール」には、トコフェロールの誘導体(例えば、トコフェロールのエステル)は含まれない。
トコフェロール、dl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、及びdl-δ-トコフェロールのいずれであってもよく、これらのトコフェロールの2種以上の混合物(所謂、ミックストコフェロール)であってもよい。
【0019】
トコフェロールとしては、市販品を使用できる。
トコフェロールの市販品の例としては、理研ビタミン(株)製の理研Eオイル800(商品名、ミックストコフェロール)、DSM ニュートリション ジャパン(株)製のdl-α-トコフェロール、及び日清オイリオグループ(株)製のトコフェロール100が挙げられる。
【0020】
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0021】
本開示の水中油型乳化組成物におけるトコフェロールの含有率は、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%~4.5質量%である。
本開示の水中油型乳化組成物におけるトコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%以上であると、水中油型乳化組成物が優れた抗酸化能を有する傾向がある。
このような観点から、本開示の水中油型乳化組成物におけるトコフェロールの含有率は、水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%以上であり、2.2質量%以上であることが好ましく、2.4質量%以上であることがより好ましく、2.6質量%以上であることが更に好ましく、2.8質量%以上であることが特に好ましい。
また、本開示の水中油型乳化組成物におけるトコフェロールの含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して4.5質量%以下であると、水中油型乳化組成物が経時安定性に優れる傾向がある。
このような観点から、本開示の水中油型乳化組成物におけるトコフェロールの含有率は、水中油型乳化組成物の全質量に対して4.5質量%以下であり、4.4質量%以下であることが好ましく、4.3質量%以下であることがより好ましく、4.1質量%以下であることが更に好ましく、3.9質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
本開示の水中油型乳化組成物における、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するトコフェロールの含有量の割合は、特に限定されないが、例えば、質量基準で、0.11~0.60であることが好ましく、0.15~0.45であることがより好ましく、0.15~0.40であることが更に好ましく、0.25~0.40であることが特に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するトコフェロールの含有量の割合が、質量基準で、上記範囲内であると、経時安定性がより優れる傾向を示す。
【0023】
〔特定乳化剤〕
本開示の水中油型乳化組成物は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含む乳化剤(即ち、特定乳化剤)を含む。
本開示の水中油型乳化組成物において、特定乳化剤は、水中油型乳化組成物の経時安定性の向上に寄与し得る。
【0024】
ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質は、例えば、化粧料の分野(詳細には、化粧品及び医薬部外品の分野)において、一般に乳化剤として使用されている成分であることが好ましい。また、特定乳化剤は、肌に適用可能な成分であることが好ましい。
【0025】
ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のHLB値は、例えば、水中油型乳化組成物の乳化分散性の観点から、いずれも、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが更に好ましい。
ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のHLB値の上限は、特に限定されないが、いずれも、20以下であることが好ましく、19以下であることがより好ましい。
HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性-疎水性のバランスを意味する。HLB値は、以下に示す川上式を用いて計算する。なお、市販品を使用する場合には、HLB値は、市販のカタログデータを優先して採用する。
【0026】
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)
「Mw」は、親水基の分子量を示し、「Mo」は、疎水基の分子量を示す。
【0027】
ショ糖脂肪酸エステルは、特に限定されないが、ショ糖脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造の炭素数は、例えば、12以上であることが好ましく、12~20であることがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの具体例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、及びショ糖モノラウリン酸エステルが挙げられる。
これらの中でも、ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノステアリン酸エステル(化粧品の成分表示名称:ステアリン酸スクロース)が好ましい。
【0028】
ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率は、特に限定されないが、例えば、水中油型乳化組成物が高温(即ち、50℃)での経時安定性のみならず、低温(即ち、10℃)経時安定性にも優れる傾向を示すという観点から、ショ糖脂肪酸エステルの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率の上限は、特に限定されず、例えば、ショ糖脂肪酸エステルの全質量に対して100質量%であってもよい。
【0029】
ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率は、以下の方法により求められる値である。
【0030】
<<ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率の求め方>>
-試料の調製-
ショ糖脂肪酸エステルをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1mg/mLの試料溶液を調製する。調製した試料溶液を用いて、下記の測定条件により、クロマトグラムを得る。
【0031】
-測定条件-
使用装置:高速液体クロマトグラフィー〔商品名:Prominence、(株)島津製作所製〕
検出方法:コロナ荷電化粒子検出法
カラム:CAPCELL PAK(登録商標) C18〔商品名、タイプ:UG120、内径4.6mm×長さ150mm、(株)大阪ソーダ製〕
カラム温度:40℃
溶離液:水/メタノール=50/50(v/v)に対して、10mMの濃度となるように酢酸アンモニウムを添加して溶解した溶液
流量:1mL/分
注入量:10μL
【0032】
-算出方法-
得られたクロマトグラムにおいて検出された、保持時間15分~30分におけるピークの総面積に対する保持時間17分~22分におけるピーク面積の割合を算出する。得られた値の小数点以下1桁目を四捨五入し、モノエステル体の含有率とする。
【0033】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、市販品を使用できる。
ショ糖脂肪酸エステルの市販品の例としては、三菱ケミカルフーズ(株)製の「リョートー(登録商標) シュガーエステル」シリーズの「S-070」〔HLB値(カタログ値):1以下、モノエステル体(カタログ値):約0質量%〕、「S-170」〔HLB値(カタログ値):約1、モノエステル体(カタログ値):約1質量%〕、「S-270」〔HLB値(カタログ値):約2、モノエステル体(カタログ値):約10質量%〕、「S-370」〔HLB値(カタログ値):約3、モノエステル体(カタログ値):約20質量%〕、「S-370F」〔HLB値(カタログ値):約3、モノエステル体(カタログ値):約20質量%〕、「S-570」〔HLB値(カタログ値):約5、モノエステル体(カタログ値):約30質量%〕、「S-770」〔HLB値(カタログ値):約7、モノエステル体(カタログ値):約40質量%〕、「S-970」〔HLB値(カタログ値):約9、モノエステル体(カタログ値):約50質量%〕、「S-1170」〔HLB値(カタログ値):約11、モノエステル体(カタログ値):約55質量%〕、「S-1170F」〔HLB値(カタログ値):約11、モノエステル体(カタログ値):約55質量%〕、「S-1570」〔HLB値(カタログ値):約15、モノエステル体(カタログ値):約70質量%〕、及び「S-1670」〔HLB値(カタログ値):約16、モノエステル体(カタログ値):約75質量%〕(以上、いずれもショ糖ステアリン酸エステル)が挙げられる。
また、ショ糖脂肪酸エステルの市販品の例としては、第一工業製薬(株)製の「DKエステル(登録商標)」シリーズの「SS」〔HLB値(カタログ値):約19、モノエステル体(カタログ値):97質量%〕、「F-160」、「F-140」、「F-110」、「F-90」、「F-70」、「F-50」、「F-20W」、「F-10」、及び「FA-10E」、並びに、「コスメライク(登録商標)」シリーズの「S-10」、「S-50」、「S-70」、「S-110」、「S-160」、及び「S-190」〔HLB値(カタログ値):約19、モノエステル体(カタログ値):97質量%〕が挙げられる。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、特に限定されない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれるポリグリセリン構造は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれるポリグリセリン構造の平均重合度は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造の炭素数は、特に限定されないが、例えば、6~22であることが好ましく、12~22であることがより好ましく、12~20であることが更に好ましく、12~18であることが特に好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造は、例えば、水中油型乳化組成物が高温(即ち、50℃)での経時安定性のみならず、低温(即ち、10℃)経時安定性にも優れる傾向を示すという観点から、分岐鎖及び不飽和炭素結合の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0035】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1分子のポリグリセリンに1種類の脂肪酸がエステル結合したものであってもよく、1分子のポリグリセリンに2種類以上の脂肪酸がエステル結合したものであってもよい。
【0036】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、イソステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、イソステアリン酸デカグリセリル、及びモノリノール酸デカグリセリルが挙げられる。
これらの中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸デカグリセリル(化粧品の成分表示名称:オレイン酸ポリグリセリル-10)、モノステアリン酸デカグリセリル(化粧品の成分表示名称:ステアリン酸ポリグリセリル-10)、及びイソステアリン酸デカグリセリル(化粧品の成分表示名称:イソステアリン酸ポリグリセリル-10)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、モノオレイン酸デカグリセリル(化粧品の成分表示名称:オレイン酸ポリグリセリル-10)及びイソステアリン酸デカグリセリル(化粧品の成分表示名称:イソステアリン酸ポリグリセリル-10)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0037】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を使用できる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品の例としては、日光ケミカルズ(株)製の「NIKKOL(登録商標) Decaglyn」シリーズの「1-ISV」、「1-OV」、及び「1-LN」、三菱ケミカルフーズ(株)製の「リョートー(登録商標) ポリグリエステル」シリーズの「O-15D」、及び「O-50D」、太陽化学(株)製の「サンソフトQ-S」シリーズの「Q-17S」、並びに、理研ビタミン(株)製の「ポエム」シリーズの「J-0381V」が挙げられる。
【0038】
リン脂質としては、例えば、天然物由来のリン脂質であるレシチンが挙げられる。
レシチンとは、ホスファチジルコリン自体、又は、少なくともホスファチジルコリンを含む混合物を指す。
少なくともホスファチジルコリンを含む混合物とは、一般に、ホスファチジルコリンの他に、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、N-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、スフィンゴエタノールアミン等を含み得る混合物である。
【0039】
レチチンは、酵素分解レシチン(所謂、リゾレシチン)であってもよい。
酵素分解レシチンは、ホスホリパーゼ等の酵素により、ホスファチジルコリン分子が持つ1つの脂肪酸が失われたリゾホスファチジルコリンを含む組成物である。なお、本開示における「酵素分解レシチン」には、水素添加処理を行い、結合脂肪酸を飽和脂肪酸にすることで酸化安定性を向上させた、所謂、水素添加された酵素分解レシチンが含まれる。
【0040】
レシチンの純度は、例えば、水中油型乳化組成物の乳化分散性の観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
レシチンの純度は、レシチンがトルエンに溶解しやすく、アセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物の質量とアセトン可溶物の質量とから求められる。
【0041】
リン脂質としては、市販品を使用できる。
リン脂質の市販品の例としては、辻製油(株)製のSLP-ホワイト(商品名)、及び理研ビタミン(株)製のレシオンP(商品名)が挙げられる。
【0042】
本開示の水中油型乳化組成物は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種以上含んでいればよい。
本開示の水中油型乳化組成物は、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ1種のみ含んでいてもよく、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質をそれぞれ2種以上含んでいてもよい。また、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のうち、1種のみ含むものと2種以上含むものとがあってもよい。
【0043】
本開示の水中油型乳化組成物における特定乳化剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、水中油型乳化組成物の全質量に対して、1質量%~30質量%であることが好ましく、3質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが更に好ましく、7質量%~15質量%であることが特に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物における特定乳化剤の含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して1質量%以上であると、油相と水相との間の界面張力がより下がり、より乳化しやすくなる傾向がある。
本開示の水中油型乳化組成物における特定乳化剤の含有率が、水中油型乳化組成物の全質量に対して30質量%以下であると、水中油型乳化組成物における泡立ちの発生をより抑制できる傾向がある。
「特定乳化剤の含有率」とは、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質の合計含有率を意味する。
【0044】
本開示の水中油型乳化組成物における、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合は、特に限定されないが、例えば、質量基準で、0.10~0.50であることが好ましく、0.12~0.45であることがより好ましく、0.15~0.40であることが更に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、上記範囲内であると、経時安定性がより優れる傾向を示す。
【0045】
本開示の水中油型乳化組成物における、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合は、特に限定されないが、例えば、質量基準で、0.10~1.00であることが好ましく、0.20~0.90であることがより好ましく、0.30~0.80であることが更に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、上記範囲内であると、経時安定性がより優れる傾向を示す。
【0046】
本開示の水中油型乳化組成物における、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合は、特に限定されないが、例えば、質量基準で、0.01~0.25であることが好ましく、0.01~0.20であることがより好ましく、0.03~0.18であることが更に好ましく、0.04~0.16であることが特に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、上記範囲内であると、経時安定性がより優れる傾向を示す。
【0047】
本開示の水中油型乳化組成物における特定乳化剤の態様としては、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.10~0.50であり、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.10~1.00であり、かつ、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.01~0.25である態様が好ましく、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.12~0.45であり、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.20~0.90であり、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.01~0.20である態様がより好ましく、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.15~0.40であり、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.30~0.80であり、かつ、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.03~0.18である態様が更に好ましく、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するショ糖脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.15~0.40であり、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の割合が、質量基準で、0.30~0.80であり、かつ、トコフェロール及び油剤の合計含有量に対するリン脂質の含有量の割合が、質量基準で、0.04~0.16である態様が特に好ましい。
【0048】
〔油剤〕
本開示の水中油型乳化組成物は、油剤を含む。
油剤は、特に限定されないが、例えば、化粧料の分野(詳細には、化粧品及び医薬部外品の分野)において、一般に油剤として使用されている成分であることが好ましい。また、油剤は、肌に適用可能な成分であることが好ましい。
油剤は、液体であることが好ましく、25℃で液体であることがより好ましい。
油剤が「25℃で液体である」とは、油剤の融点又は軟化点が25℃未満であることを意味する。
【0049】
油剤としては、例えば、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸、及び高級アルコールが挙げられる。
例えば、化粧品又は医薬部外品(例えば、薬用化粧品)の処方を組む上では、油剤は、エステル油であることが好ましい。
【0050】
エステル油の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸PG、ジカプリル酸PG、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン、及びイソステアリン酸ヘキシルデシルが挙げられる。なお、上記「PG」は、プロピレングリコールの略称である。
【0051】
炭化水素油の具体例としては、流動パラフィン及びスクワランが挙げられる。
【0052】
シリコーン油の具体例としては、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、及びフェニルジメチコンが挙げられる。
【0053】
本開示において「高級脂肪酸」とは、炭素数が12~24の脂肪酸を意味する。
高級脂肪酸の具体例としては、イソステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸が挙げられる。
【0054】
本開示において「高級アルコール」とは、炭素数が12~24の炭化水素基を有するアルコールを意味する。
高級アルコールの具体例としては、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルデカノール、デシルテトラデカノール、及びオレイルアルコールが挙げられる。
【0055】
本開示の水中油型乳化組成物は、油剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0056】
本開示の水中油型乳化組成物における油剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、水中油型乳化組成物の経時安定性の観点から、水中油型乳化組成物の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、3質量%~20質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることが更に好ましい。
【0057】
〔水〕
本開示の水中油型乳化組成物は、水を含む。
水は、化粧料に使用可能な水であれば、特に限定されない。
水の具体例としては、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、及び超純水(例えば、Milli-Q水)が挙げられる。
これらの中でも、水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
【0058】
本開示の水中油型乳化組成物における水の含有率は、特に限定されないが、例えば、水中油型乳化組成物の全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましい。
【0059】
〔その他の成分〕
本開示の水中油型乳化組成物は、本開示の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、化粧料において通常用いられる添加成分(以下、単に「添加成分」ともいう。)が挙げられる。
【0060】
<添加成分>
本開示の水中油型乳化組成物は、添加成分を含んでいてもよい。
添加成分としては、例えば、化粧料(所謂、化粧品及び薬用化粧品)に使用した際に有用な美容効果(保湿効果、美白効果、整肌効果等)を示す機能性成分が挙げられる。
このような機能性成分としては、パルミチン酸L-アスコルビル等のアスコルビン酸誘導体;β-カロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテイン等のカロテノイド;パルミチン酸レチノール等のレチノール誘導体;コエンザイムQ10等のユビキノン;グリセリン、1,3-ブチレングリコール(化粧品の成分表示名称:BG)、ジプロピレングリコール(DPG)等の多価アルコール;ヒアルロン酸、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ソルビトール、トレハロース等の多糖類;グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等のスフィンゴ糖脂質;加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン等のコラーゲン;アセチルヒドロキシプロリン等のアミノ酸;加水分解シロバナルーピンタンパク;ニコチン酸アミド;ポリエチレングリコール;アセンヤクエキス;ヒオウギエキス;グリチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられる。
上記以外の添加成分としては、抗酸化剤、緩衝剤(クエン酸、リン酸等)、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸等)、防腐剤(フェノキシエタノール、エチルへキシルグリセリン等)、紫外線吸収剤、抗炎症剤、着色剤、香料等が挙げられる。
これらの添加成分は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0061】
本開示の水中油型乳化組成物は、その他の成分を含む場合、その他の成分を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0062】
本開示の水中油型乳化組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0063】
-乳化粒子の平均粒子径-
本開示の水中油型乳化組成物における乳化粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることが更に好ましい。
本開示の水中油型乳化組成物における乳化粒子の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば、1nm以上であることが好ましい。
【0064】
本開示において、乳化粒子の「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を意味する。
乳化粒子の平均粒子径は、水中油型乳化組成物を超純水にて10倍に希釈し、粒度分布計を用いて、動的光散乱法により測定される。
粒度分布計としては、例えば、大塚電子(株)製の濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(商品名)を好適に使用できる。但し、粒度分布計は、これに限定されない。
【0065】
[水中油型乳化組成物の用途]
本開示の水中油型乳化組成物は、化粧料〔化粧品又は医薬部外品(所謂、薬用化粧品)〕の原料として、特に、水性化粧料の原料として、好適に用いることができる。
トコフェロールは、単体では水性媒体に溶解し難く、従来、水性化粧料への配合には制限があった。これに対し、本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールを乳化粒子に含めて水性媒体に分散させた水中油型の乳化組成物であり、水性化粧料に配合しやすい状態となっている。このため、本開示の水中油型乳化組成物を用いることで、トコフェロールを高濃度(換言すると、トコフェロールの抗酸化能が十分に発揮される濃度)で水性化粧料に配合することが可能となる。
【0066】
[水中油型乳化組成物の製造方法]
本開示の水中油型乳化組成物の製造方法は、特に限定されない。
本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールと、乳化剤と、油剤と、水と、必要に応じて、既述の添加成分と、を用いて、公知の水中油型乳化組成物の製造方法に従って、製造できる。
【0067】
本開示の水中油型乳化組成物の好ましい製造方法は、例えば、少なくともトコフェロール及び油剤を含む油相組成物と、少なくとも水を含む水相組成物と、を混合して混合液とし、得られた混合液に対して乳化分散を行う方法である。この方法では、乳化剤は、油相組成物に含まれていてもよく、水相組成物に含まれていてもよく、油相組成物及び水相組成物の両方に含まれていてもよく、乳化剤の特性に応じて、適宜設定できる。
【0068】
油相組成物は、例えば、トコフェロールと、油剤と、乳化剤と、所望により配合される添加成分のうち油性の添加成分と、を混合することにより調製できる。
油相組成物の調製に際しては、油相組成物に配合される全ての成分を一度に混合してもよく、油相組成物に配合される各成分をいくつかに分けて混合してもよい。
油相組成物に配合される成分は、油相組成物中において、単に混合されていればよいが、均一に混合されていることが好ましい。
混合方法は、特に限定されない。
混合方法としては、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌には、一般的な撹拌器具又は撹拌装置を使用できる。
【0069】
撹拌温度は、特に限定されないが、例えば、50℃~90℃に設定することが好ましい。
温度を調整する手段は、特に限定されない。
温度を調整する手段としては、一般的な加熱装置(例えば、ウォーターバス)を使用できる。
撹拌時間は、特に限定されず、撹拌器具又は撹拌装置の種類、油相組成物の組成等に応じて、適宜設定できる。
撹拌温度及び撹拌時間の好ましい態様の一例としては、撹拌温度が70℃であり、かつ、撹拌時間が30分である態様が挙げられる。
【0070】
水相組成物は、例えば、水と、乳化剤と、所望により配合される添加成分のうち水性の添加成分と、を混合することにより調製できる。
水相組成物の調製に際しては、水相組成物に配合される全ての成分を一度に混合してもよく、水相組成物に配合される各成分をいくつかに分けて混合してもよい。
水相組成物に配合される成分は、水相組成物中において、単に混合されていればよいが、均一に混合されていることが好ましい。
混合方法は、特に限定されない。
混合方法としては、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌には、一般的な撹拌器具又は撹拌装置を使用できる。
【0071】
撹拌温度は、特に限定されないが、例えば、突沸を防ぐ観点から、100℃以下に設定することが好ましく、50℃~90℃に設定することがより好ましい。
温度を調整する手段は、特に限定されない。
温度を調整する手段としては、一般的な加熱装置(例えば、ウォーターバス)を使用できる。
撹拌時間は、特に限定されず、撹拌器具又は撹拌装置の種類、水相組成物の組成等に応じて、適宜設定できる。
撹拌温度及び撹拌時間の好ましい態様の一例としては、撹拌温度が70℃であり、かつ、撹拌時間が1時間である態様が挙げられる。
【0072】
油相組成物と水相組成物との混合に際しては、油相組成物と水相組成物とを一度に混合してもよく、一方に他方を少しずつ添加しながら混合してもよい。
混合方法は、特に限定されない。
混合方法としては、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌には、一般的な撹拌器具又は撹拌装置を使用できる。
【0073】
水相組成物と混合する際の油相組成物の温度は、例えば、突沸を防ぐ観点から、100℃以下に設定することが好ましく、20℃~90℃に設定することがより好ましい。
油相組成物と混合する際の水相組成物の温度は、例えば、20℃~90℃に設定することが好ましい。
撹拌時間は、特に限定されず、撹拌器具又は撹拌装置の種類、油相組成物及び水相組成物の組成等に応じて、適宜設定できる。
【0074】
乳化分散の方法は、特に限定されない。
乳化分散を行う際には、例えば、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー等の通常の乳化分散装置を用いた乳化分散の後、高圧乳化装置〔例えば、(株)スギノマシン製のスターバーストミニ(SBM)等の高圧ホモジナイザー〕を用いた乳化分散を行う等、2種以上の乳化装置を併用することが好ましい。
高圧乳化装置を使用すると、乳化粒子をより均一に近い粒子径に揃えることができる。
更なる粒子径の均一化を図る目的で、乳化分散を複数回行ってもよい。
【0075】
高圧乳化装置としては、例えば、処理液の流路が固定されたチャンバーを有するチャンバー型高圧ホモジナイザー、及び均質バルブを有する均質バルブ型高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0076】
高圧ホモジナイザーの圧力は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは100MPa~250MPa、更に好ましくは150MPa~250MPaである。
【0077】
油相組成物と水相組成物との比率(油相組成物/水相組成物)は、特に限定されないが、例えば、質量基準で、1/99~50/50とすることが好ましく、3/97~40/60とすることがより好ましく、5/95~30/70とすることが更に好ましく、10/90~20/80とすることが特に好ましい。
【0078】
[化粧料]
本開示の化粧料は、既述の本開示の水中油型乳化組成物を含む。
本開示の化粧料では、本開示の水中油型乳化組成物が有する優れた抗酸化能(換言すると、トコフェロールが有する優れた抗酸化能)が期待できる。
【0079】
本開示の化粧料は、水性化粧料であることが好ましい。
本開示において「水性化粧料」とは、水の含有率が、水性化粧料の全質量に対して50質量%以上である化粧料を意味する。
トコフェロールは、単体では水性媒体に溶解し難く、従来、水性化粧料への配合には制限があった。これに対し、本開示の水中油型乳化組成物は、トコフェロールを乳化粒子に含めて水性媒体に分散させた水中油型の乳化組成物であり、水性化粧料に配合しやすい状態となっているため、本開示の水中油型乳化組成物を用いることで、トコフェロールを高濃度(換言すると、トコフェロールの抗酸化能が十分に発揮される濃度)で水性化粧料に配合することが可能となる。よって、本開示の化粧料は、水性化粧料であっても、トコフェロールが有する優れた抗酸化能が期待できる。
【0080】
本開示の化粧料における本開示の水中油型乳化組成物の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
例えば、本開示の水中油型乳化組成物の含有率は、化粧料の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であってもよい。
【実施例0081】
以下、本開示の水中油型乳化組成物を実施例により更に具体的に説明する。但し、本開示の水中油型乳化組成物は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
[水中油型乳化組成物の調製]
〔実施例1〕
下記の表1に記載の油相組成物を構成する各成分を容器に入れ、70℃のウォーターバス中で、スターラーを用いて、30分間撹拌することにより、油相組成物を得た。
次に、下記の表1に記載の水相組成物を構成する各成分を容器に入れ、70℃のウォーターバス中で、スターラーを用いて、1時間撹拌することにより、水相組成物を得た。
次に、70℃のウォーターバス中で、水相組成物を、スターラーを用いて撹拌し、撹拌中の水相組成物に、油相組成物を徐々に添加して混合液を得た。得られた混合液に対し、超音波ホモジナイザー〔型番:US600-AT、(株)日本精機製作所製〕を用いて、1分間分散処理を行い、粗分散液を得た。次いで、得られた粗分散液に対し、高圧乳化装置〔製品名:スターバーストミニ、(株)スギノマシン製〕を用いて、乳化処理(圧力:245MPa、パス方式にて2パス)を行い、実施例1の水中油型乳化組成物を得た。
【0083】
〔実施例2~実施例4〕
実施例2~実施例4では、油相組成物の組成を、表1に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~実施例4の各水中油型乳化組成物を得た。
【0084】
〔実施例5~実施例7〕
実施例5~実施例7では、油相組成物の組成を、表2に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例5~実施例7の各水中油型乳化組成物を得た。
【0085】
〔実施例8~実施例10〕
実施例8~実施例10では、油相組成物の組成を、表3に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例8~実施例10の各水中油型乳化組成物を得た。
【0086】
〔実施例11及び実施例12〕
実施例11及び実施例12では、水相組成物の組成を、表4に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例11及び実施例12の各水中油型乳化組成物を得た。
【0087】
〔実施例13及び実施例14〕
実施例13及び実施例14では、水相組成物の組成を、表5に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例13及び実施例14の各水中油型乳化組成物を得た。
【0088】
〔実施例15~実施例18〕
実施例15~実施例18では、水相組成物の組成を、表6に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例15~実施例18の各水中油型乳化組成物を得た。
【0089】
〔比較例1及び比較例2〕
比較例1及び比較例2では、油相組成物の組成を、表1に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1及び比較例2の各水中油型乳化組成物を得た。
【0090】
〔比較例3及び比較例4〕
比較例3及び比較例4では、油相組成物の組成及び水相組成物の組成を、それぞれ、表1に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例3及び比較例4の各水中油型乳化組成物を得た。
【0091】
〔比較例5〕
比較例5では、水相組成物の組成を、表4に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例5の水中油型乳化組成物を得た。
【0092】
〔比較例6〕
比較例6では、水相組成物の組成を、表5に記載の組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例6の水中油型乳化組成物を得た。
【0093】
[評価]
1.抗酸化能
実施例1~実施例18及び比較例1~比較例6の各水中油型乳化組成物について、抗酸化能の評価を行った。水中油型乳化組成物の抗酸化能を評価する手法としては、以下の消色性の試験を採用した。
純水20mLに、発色試薬〔製品名:Active Cl-Test Wako、富士フイルム和光純薬(株)製〕1錠を溶解させて、発色試薬溶液を調製した。この調製した発色試薬溶液は、活性酸素によって発色する。次いで、調製した発色試薬溶液に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液〔商品名:ハイター(登録商標)、花王(株)製〕を2μL添加し、スターラーを用いて撹拌した。発色試薬溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加によって緑色を呈した。次いで、この撹拌中の緑色を呈した溶液に、水中油型乳化組成物400μLを添加した。水中油型乳化組成物を添加してから、発色試薬溶液の緑色が消失するまでの時間を測定し、下記の評価基準に従って、水中油型乳化組成物の抗酸化能を評価した。
水中油型乳化組成物中のトコフェロールが活性酸素を捕捉すると、上記緑色を呈した溶液の緑の色が消えるため、この緑の色が消えるまでの時間が短いほど、水中油型乳化組成物の抗酸化能が優れるといえる。結果を表1~表6に示す。
評価結果が「2」又は「3」であれば、抗酸化能に優れる水中油型乳化組成物であると判断した。下記の評価基準において、最も優れるものは「3」である。
【0094】
-評価基準-
3:3秒以内に緑色が完全に消失する。
2:1分以内に緑色が完全に消失する(但し、「3」に該当するものを除く。)。
1:1分を超えても緑色が完全に消失しない。
【0095】
2.経時安定性
実施例1~実施例18及び比較例1~比較例6の各水中油型乳化組成物について、経時安定性の評価を行った。
【0096】
(1)初期
調製直後(調製から24時間以内)の水中油型乳化組成物を光路長1cmのセルに入れ、波長650nmにおける透過率を、雰囲気温度25℃の環境下、分光光度計〔型番:V-630、日本分光(株)製〕を用いて測定した。得られた測定値を初期の濁度とし、この濁度に基づき、下記の評価基準に従って、水中油型乳化組成物の初期の乳化状態を評価した。結果を表1~表6に示す。
評価結果が「3」、「4」、又は「5」であれば、水中油型乳化組成物が良好に乳化している状態であると判断した。下記の評価基準において、最も良好に乳化している状態であることを示すランクは「5」である。
【0097】
-評価基準-
5:濁度が0.10未満である。
4:濁度が0.10以上0.15未満である。
3:濁度が0.15以上0.20未満である。
2:濁度が0.20以上0.30未満である。
1:濁度が0.30以上である。
【0098】
(2)経時後
水中油型乳化組成物20gをガラス容器に入れ、密封した後、雰囲気温度50℃の環境下にて2週間保管した。保管後の水中油型乳化組成物を光路長1cmのセルに入れ、波長650nmにおける透過率を、雰囲気温度25℃の環境下、分光光度計〔型番:V-630、日本分光(株)製〕を用いて測定した。得られた測定値を経時後の濁度とし、この濁度に基づき、下記の評価基準に従って、水中油型乳化組成物の経時後の乳化状態を評価した。結果を表1~表6に示す。
評価結果が「3」、「4」、又は「5」であれば、水中油型乳化組成物が良好に乳化している状態であると判断した。下記の評価基準において、最も良好に乳化している状態であることを示すランクは「5」である。
【0099】
-評価基準-
5:濁度が0.10未満である。
4:濁度が0.10以上0.15未満である。
3:濁度が0.15以上0.20未満である。
2:濁度が0.20以上0.30未満である。
1:濁度が0.30以上である。
【0100】
上記「(1)初期」の評価結果が「3」、「4」、又は「5」であって、かつ、「(2)経時後」の評価結果が「3」、「4」、又は「5」であれば、経時安定性に優れる水中油型乳化組成物であると判断した。
【0101】
3.低温での経時安定性
実施例1及び実施例15~実施例18の各水中油型乳化組成物について、低温での経時安定性の評価を行った。
【0102】
(1)経時後
水中油型乳化組成物20gをガラス容器に入れ、密封した後、雰囲気温度10℃の環境下にて6ヶ月保管した。保管後の水中油型乳化組成物を光路長1cmのセルに入れ、波長650nmにおける透過率を、雰囲気温度25℃の環境下、分光光度計〔型番:V-630、日本分光(株)製〕を用いて測定した。得られた測定値を低温経時後の濁度とし、この濁度に基づき、下記の評価基準に従って、水中油型乳化組成物の低温経時後の乳化状態を評価した。結果を表6に示す。
評価結果が「3」、「4」、又は「5」であれば、水中油型乳化組成物が良好に乳化している状態であると判断した。下記の評価基準において、最も良好に乳化している状態であることを示すランクは「5」である。
【0103】
-評価基準-
5:濁度が0.10未満である。
4:濁度が0.10以上0.15未満である。
3:濁度が0.15以上0.20未満である。
2:濁度が0.20以上0.30未満である。
1:濁度が0.30以上である。
【0104】
上記「2.経時安定性」の「(1)初期」の評価結果が「3」、「4」、又は「5」であって、かつ、「3.低温での経時安定性」の「(1)経時後」の評価結果が「3」、「4」、又は「5」であれば、低温での経時安定性に優れる水中油型乳化組成物であると判断した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表中、各成分の欄に記載の「-」は、その欄に該当する成分を含んでいないことを意味する。また、表中、含有質量比の欄に記載の「-」は、その欄に該当する値がないことを意味する。
表中、トコフェロール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リン脂質、油剤、水、及びその他の成分に該当する成分を、便宜上、それぞれ「A」、「B1」、「B2」、「B3」、「C」、「D」、及び「E」に分類して表記した。
【0112】
表中、「C18」は、ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造の炭素数が「18」であることを意味し、「C14]は、ポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造の炭素数が「14」であることを意味する。
表中、「直鎖」、「分岐鎖」、「飽和」、及び「不飽和」は、いずれもポリグリセリン脂肪酸エステルに含まれる脂肪酸構造の詳細を示す。例えば、「不飽和」とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、不飽和炭素結合を有する脂肪酸構造を含むことを意味し、「飽和」とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、不飽和炭素結合を有しない脂肪酸構造を含むことを意味する。
【0113】
表6に記載の実施例1は、同じく表6に記載の他の実施例との対比のために記載したものであり、表1に記載の実施例1と同じ水中油型乳化組成物である。
【0114】
表に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<A:トコフェロール>
・トコフェロール〔商品名:理研Eオイル800、理研ビタミン(株)製〕
【0115】
<乳化剤>
(B1:ショ糖脂肪酸エステル)
・ステアリン酸スクロース〔商品名:DKエステル(登録商標) SS、HLB値(カタログ値):約19、モノエステル体(カタログ値):97質量%、三菱ケミカルフーズ(株)製〕
・ステアリン酸スクロース〔商品名:リョートー(登録商標) シュガーエステル S-1670、HLB値(カタログ値):約16、モノエステル体(カタログ値):75質量%、三菱ケミカルフーズ(株)製〕
・ステアリン酸スクロース〔商品名:リョートー(登録商標) シュガーエステル S-1170、HLB値(カタログ値):約11、モノエステル体(カタログ値):55質量%、三菱ケミカルフーズ(株)製〕
【0116】
(B2:ポリグリセリン脂肪酸エステル)
・オレイン酸ポリグリセリル-10〔商品名:NIKKOL(登録商標) Decaglyn 1-OV、HLB値(カタログ値):12、脂肪酸構造の炭素数:18、不飽和炭素結合を有する脂肪酸構造を含む、日光ケミカルズ(株)製〕
・ミリスチン酸ポリグリセリル-10〔商品名:NIKKOL(登録商標) Decaglyn 1-M、HLB値(カタログ値):14、脂肪酸構造の炭素数:14、日光ケミカルズ(株)製〕
・ステアリン酸ポリグリセリル-10〔商品名:NIKKOL(登録商標) Decaglyn 1-SV、HLB値(カタログ値):12、脂肪酸構造の炭素数:18、日光ケミカルズ(株)製〕
・イソステアリン酸ポリグリセリル-10〔商品名:NIKKOL(登録商標) Decaglyn 1-ISV、HLB値(カタログ値):12、脂肪酸構造の炭素数:18、分岐鎖を有する脂肪酸構造を含む、日光ケミカルズ(株)製〕
【0117】
(B3:リン脂質)
・レシチン〔商品名:SLP-ホワイト、辻製油(株)製〕
【0118】
<C:油剤>
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル〔商品名:O.D.O、日清オイリオグループ(株)製〕
【0119】
<D:水>
・水(精製水)
【0120】
<E:その他の成分>
・パルミチン酸レチノール〔商品名:理研Aパルミテート1000、パルミチン酸レチノール濃度:55質量%、理研ビタミン(株)製〕
・グリセリン〔花王(株)製〕(多価アルコール)
【0121】
表1~表6に示すように、実施例の水中油型乳化組成物は、いずれも優れた抗酸化能を有することが確認された。また、実施例の水中油型乳化組成物は、いずれも経時安定性に優れることが確認された。
【0122】
一方、表1に示すように、トコフェロールの含有率が水中油型乳化組成物の全質量に対して1.9質量%未満である比較例1の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、抗酸化能に劣ることが確認された。
トコフェロールの含有率が水中油型乳化組成物の全質量に対して4.5質量%を超える比較例2の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、経時安定性に劣ることが確認された。
トコフェロールの含有率が水中油型乳化組成物の全質量に対して4.5質量%を超え、かつ、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のうち、ショ糖脂肪酸エステルを含まない比較例3の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、経時安定性に劣ることが確認された。
ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のうち、ショ糖脂肪酸エステル及びリン脂質を含まない比較例4の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、経時安定性に劣ることが確認された。
表4に示すように、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のうち、ショ糖脂肪酸エステルを含まない比較例5の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、経時安定性に劣ることが確認された。
表5に示すように、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質のうち、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含まない比較例6の水中油型乳化組成物は、実施例の水中油型乳化組成物と比較して、経時安定性に劣ることが確認された。
【0123】
表6に示すように、実施例1、実施例17、及び実施例18の対比によれば、実施例の水中油型乳化組成物は、ショ糖脂肪酸エステルにおけるモノエステル体の含有率が高くなるほど、低温(即ち、10℃)での経時安定性が向上することが確認された。
実施例1、実施例15、及び実施例16の対比によれば、実施例の水中油型乳化組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、分岐鎖及び不飽和炭素結合の少なくとも一方を有する脂肪酸構造を含むと、高温(即ち、50℃)での経時安定性のみならず、低温(即ち、10℃)での経時安定性にも優れることが確認された。