(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022086969
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】O/W/O型食品、食品及びO/W/O型食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A23D7/00 504
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056010
(22)【出願日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020198926
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501149411
【氏名又は名称】キユーピータマゴ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正記
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 直純
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋志
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DH05
4B026DL03
4B026DL05
4B026DL07
4B026DL08
4B026DP01
4B026DX04
4B026DX06
(57)【要約】
【課題】乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型食品を提供する。
【解決手段】乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含む、O/W/O型食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含む、O/W/O型食品であって、
前記可塑性油脂組成物は、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、
5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、
25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型食品。
【請求項2】
前記O/W型食品と前記可塑性油脂組成物との質量比が、9:1~4:6であることを特徴とする、請求項1に記載のO/W/O型食品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のO/W/O型食品を含む食品。
【請求項4】
乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、
前記可塑性油脂組成物は、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、
5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、
25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はO/W/O型食品、食品及びO/W/O型食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、O/W型クリーム20~70重量%と連続相として食用油脂30~80重量%、乳化剤を0.05~10%を用いた二重乳化型油脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、O/W型の乳製品に食用油脂を加えたO/W/O型乳製品において、O/W型の乳製品の味を活かした優れた呈味性を有し、かつ、撥水性を良好なものとすることについて検討されていないため、この点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含むO/W/O型食品において、可塑性油脂組成物が、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、特定量の液油及び総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを含み、固体脂含量が特定の範囲である場合に、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型食品を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含む、O/W/O型食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型食品、
(2)前記O/W型食品と前記可塑性油脂組成物との質量比が、9:1~4:6であることを特徴とする、(1)のO/W/O型食品、
(3)(1)又は(2)のO/W/O型食品を含む食品、
(4)乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を意味する。
【0010】
<本発明のO/W/O型食品の特徴>
本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下「乳等」ということもある。)を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含むO/W/O型食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含む。
【0011】
前述の組成を有する可塑性油脂組成物を最外油相に含むことで、良好な撥水性と呈味性とを両立したO/W/O型食品を提供できる。本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、撥水性に優れるので、接触する他の食品素材への水分移行を抑制することができ、当該食品素材が本来有する風味及び食感を維持することができる。また、本発明の一態様に係るO/W/O型食品は呈味性に優れるので、O/W型食品のみずみずしい風味及び食感を呈することができる。このように、本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、良好な撥水性と呈味性とを兼ね備えるので、乳等を含むO/W型食品及び接触する他の食品素材がそれぞれ本来有する呈味を、それぞれを維持したまま喫食者に感じさせることができる。
【0012】
<O/W/O型食品の態様>
本発明において、O/W/O型食品は、乳等を含む水中油(O/W)型の食品を分散相として、連続相となる最外油相に分散相を均一に分散させた油中水中油(O/W/O)型の食品が意図される。
【0013】
本発明の一態様に係るO/W/O型食品の態様としては、例えば、食品、食品の材料等が挙げられる。食品としては、例えば、アイスクリーム等の冷菓が挙げられる。本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、冷凍した状態であっても、良好な撥水性と呈味性とを示すので、アイスクリームとして好適に喫食することができ、また、アイスクリームの材料として好適に用いることができる。食品の材料としては、例えば、生クリーム、カスタードクリーム、チーズクリーム、ホイップクリーム、野菜又は果物を使用したクリーム、コーヒークリーム、キャラメルクリーム、ガナッシュ等の製菓用又は製パン用クリームが挙げられる。また、野菜又は果物を使用したクリームとしては、例えば、モンブランクリーム、カボチャクリーム、イチゴクリーム、レモンクリーム等が挙げられる。また、本発明の一態様に係るO/W/O型食品が食品の材料である態様としては、例えば、調味料、練り込み用、スプレッド用、フィリング用、及びトッピング用の食品が挙げられる。
【0014】
<最外油相>
本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、最外油相に可塑性油脂組成物を含む。本発明の一態様における可塑性油脂組成物は、乳化剤を含有しなくても、容易にO/W/Oに乳化した状態を作ることができる。換言すれば、最外油相に乳化剤を実質的に含まないO/W/O型食品も本発明の一態様である。当該O/W/O型食品の態様によれば、健康志向が高い消費者のニーズを満たす、乳化剤を含まない食品を提供することができる。
【0015】
<可塑性油脂組成物>
本発明において、可塑性油脂組成物は可塑性を有する油脂組成物が意図される。本発明の一態様における、可塑性油脂組成物の態様としては、例えば、油脂のみの態様、油脂に加えて水系原料を含むW/O乳化物の態様のものが挙げられる。可塑性油脂組成物の油脂のみの態様としては例えばショートニングが挙げられ、可塑性油脂組成物のW/O乳化物の態様としては例えばマーガリンが挙げられる。また、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、油脂を、可塑性油脂組成物の総量に対して、例えば65質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上含む。
【0016】
<液油の種類>
本発明において、「液油」は、品温20℃で、液状でかつ油脂結晶が析出しない油脂が意図される。本発明の一態様に係るO/W/O型食品において、可塑性油脂組成物に含まれる液油は、特定の液油に制限されない。例えば、菜種油、オリーブ油、ごま油、えごま油、大豆油、グレープシードオイル、コーン油、亜麻仁油、米油、綿実油、サフラワー油、落花生油、パーム分別油等の植物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するもの;魚油、肝油等の動物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するものが挙げられる。液油は、粗油、半精製油、精製油、又はサラダ油であってよい。所望の可塑性油脂組成物が得られるように、各液油の特性を考慮して適切な液油を選択すればよい。液油は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0017】
<液油の含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含む。可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が50質量%未満であると、可塑性油脂組成物が硬くなる。そのため、O/W/O型食品も硬くなることから、O/W/O型食品の食感が悪くなる。また、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が95質量%を超えると、油脂組成物の可塑性が損なわれ、O/W/O型食品が含有するО/W型食品のみずみずしさが得られない。さらに、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が95質量%を超える場合、5℃での固体脂含量を5質量%以上にするためには、可塑性油脂組成物に含有させる後述の液油以外の油脂としてできるだけ硬い油脂を使用する必要が生じる。結果として5℃での固体脂含量と25℃での固体脂含量との差が小さくなる。その結果、O/W/O型食品の呈味性が劣るおそれがある。複数種の液油を併用して含有する場合は、液油の総含有量が前述の範囲となるように液油を含有すればよい。
【0018】
<液油の好ましい含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物に含まれる液油の含有量は、O/W/O型食品をより柔らかくし、滑らかにする観点から、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、好ましくは60質量%以上である。また、当該含有量は、O/W/O型食品においてより良好な撥水性及び呈味性を実現する観点から、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0019】
<液油以外の油脂>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、液油以外の油脂を含む。本発明において、「液油以外の油脂」は、品温20℃で固体の油脂、及び品温20℃で油脂結晶が析出している油脂が意図される。液油以外の油脂としては、例えば、パーム油、パーム軟質油、パーム核油、ヤシ油等の植物性油脂であって、前記「液油以外の油脂」の定義に該当するもの;ラード、牛脂、乳脂等の動物性油脂であって、前記「液油以外の油脂」の定義に該当するものが挙げられる。液油以外の油脂は、水素添加油、分別油、エステル交換油等の加工油脂であってよい。液油以外の油脂の種類及び含有量は、可塑性油脂組成物の固体脂含量(Solid Fat Content:SFC)が後述の範囲となる範囲であれば、特に制限はない。所望の可塑性油脂組成物が得られるように、各油脂の特性を考慮して適切な液油以外の油脂を選択すればよい。液油以外の油脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0020】
<固体脂含量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、5℃での固体脂含量(Solid Fat Content:SFC)が、5.0質量%以上、15質量%以下である。また、本発明の一態様に係るO/W/O型食品において、可塑性油脂組成物は、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少ない。
【0021】
なお、本明細書において、可塑性油脂組成物のSFCは、後述する実施例に記載の方法によって測定した値が意図され、可塑性油脂組成物を製造する際に使用される固体脂の量とは区別されることに留意されたい。また、「25℃でのSFCが、前記5℃のときのSFCより0.50質量%以上、8.0質量%以下少ない」とは、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が0.50質量%以上、8.0質量%以下であることが意図される。
【0022】
可塑性油脂組成物の5℃でのSFCが5.0質量%未満、又は15質量%より大きいと、O/W/O型食品において、O/W型食品のみずみずしい風味及び食感が感じられない。
【0023】
可塑性油脂組成物の、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が0.50質量%未満であると、O/W/O型食品において、O/W型食品のみずみずしい風味及び食感が感じにくく、呈味性に劣る。また、可塑性油脂組成物の、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が8.0質量%を超えると、O/W/O型食品は呈味性に優れるが、乳化が不安定になるため、保存性が悪くなる。したがって、25℃でのSFCが、前記5℃でのSFCより0.50質量%以上、8.0質量%以下少ないことにより、O/W/O型食品において、保存性を悪くすること無く、呈味性を優れるものにすることができる。
【0024】
<好ましい固体脂含量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、より良好な撥水性及び呈味性を実現する観点から、5℃でのSFCが好ましくは5.0質量%以上である。また、可塑性油脂組成物は、より良好な呈味性を実現する観点から、5℃でのSFCが好ましくは12質量%以下である。
【0025】
また、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、O/W/O型食品の呈味性をより良くする観点から、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が好ましくは2.0質量%以上である。また、可塑性油脂組成物は、O/W/O型食品の保存性をより良くする観点から、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が好ましくは7.0質量%以下である。
【0026】
<総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールの含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロール(以下、「C54以上の飽和TAG」ということがある。)を10質量%以下含む。換言すれば、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物の全油脂中のC54以上の飽和TAG量が前述の範囲となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよい。
【0027】
本発明において、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAGの量は、後述する実施例に記載の方法によって測定した値をいう。「総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロール」は、トリアシルグリセロール1分子を構成する脂肪酸が全て飽和脂肪酸であり、且つ当該脂肪酸の炭素数の合計が54以上であることが意図される。
【0028】
可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAG量が、10質量%を超えると、喫食時に口の中で融解しづらいため、得られるO/W/O型食品の呈味性が劣る。
【0029】
<総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールの好ましい含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAGの量は、O/W/O型食品の撥水性をより良くする観点から、好ましくは2.5質量%以上、10質量%以下である。特に、本発明の一態様において、O/W/O型食品が冷菓の態様である場合には、当該飽和TAGの量が2.5質量%以上であることは、O/W/O型食品が室温で融解しにくくなるため、より好ましい。
【0030】
<最外油相における可塑性油脂組成物以外の成分>
本発明の一態様において、最外油相は可塑性油脂組成物以外の成分を含んでもよい。可塑性油脂組成物以外の成分は、最外油相に含まれた際に最外油相の乳化安定性、撥水性及び、食用とする場合の呈味性を損なわない範囲であれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。可塑性油脂組成物以外の成分は例えば、水、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等を含有することができる。
【0031】
<可塑性油脂組成物の好ましい量>
本発明の一態様に係るO/W/O型食品において、O/W型食品と可塑性油脂組成物との質量比は、9:1~4:6であることが好ましい。O/W型食品と可塑性油脂組成物との質量比が前述の範囲内であることにより、O/W型食品のみずみずしさを示し、より良好な呈味を有するO/W/O型食品を得ることができる。
【0032】
<O/W型食品>
本発明の一態様に係るO/W/O型食品は、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品を含む。本発明の一態様に係るO/W/O型食品に含まれるO/W型食品は、油相を分散相とし、水相を連続相として油相を均一に分散させた乳化物である。なお、乳等を含むO/W型食品は、乳化剤を含んでいてもよい。本発明では、前述の通り最外油相に含まれる可塑性油脂組成物が前述の組成を有していることによって、良好な撥水性と呈味性とを両立したO/W/O型食品を提供することができるため、O/W型食品に含まれる乳等は特に限定されず、どのような乳等であっても本発明の効果を得られる。
【0033】
<乳及び乳製品>
本発明の一態様において、O/W型食品は、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。O/W型食品が含む乳等は、1種であってもよいし、2種以上を混合してもよい。乳等の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
乳としては、例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、水牛乳、やぎ乳、羊乳、馬乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、及び加工乳、等の乳、並びにこれらの乳を加工して得られる食品が挙げられる。当該食品としては、例えば、生クリーム、バター、チーズ、カスタードクリーム、ホイップクリーム、ガナッシュ等が挙げられる。
【0035】
乳製品としては、例えば、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料、及び乳飲料、等の乳製品、並びにこれらの乳製品を加工して得られる食品が挙げられる。当該食品としては、例えば、上記乳を加工して得られる食品において乳の代わりに乳製品を加工して得られる食品が挙げられる。
【0036】
<乳等を含むO/W型食品の具体例>
乳等を含むO/W型食品の具体例としては、例えば、乳等を含む食品、食品の材料であって乳等を含むもの等が挙げられる。食品としては、例えば、アイスクリーム等の冷菓が挙げられる。食品の材料には、例えば、調味及び/又は装飾に用いる材料も含まれる。具体的には、食品の材料としては、生クリーム、カスタードクリーム、チーズクリーム、ホイップクリーム、野菜又は果物を使用したクリーム、コーヒークリーム、キャラメルクリーム、ガナッシュ等の製菓用又は製パン用クリームが挙げられる。また、野菜又は果物を使用したクリームの具体例は前述した通りである。
【0037】
<O/W型食品の乳等以外の成分>
O/W型食品は、乳等以外の成分を含んでもよい。O/W型食品における乳等以外の成分は、水相に含まれていてもよく、油相に含まれていてもよい。水相に含まれる成分として、例えば、水、酸味料、食塩、調味料、糖類、香辛料、着色料、着香料、増粘剤、有機酸、酸化防止剤、保存料、静菌剤等が挙げられる。油相に含まれる成分としては、植物油脂、動物油脂、鉱物油、合成油等が挙げられる。これらは、単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0038】
<本発明の食品の特徴>
本発明の一態様に係るO/W/O型食品を含む食品もまた、本発明の範疇に含まれる。当該食品としては、例えば、本発明のO/W/O型食品が前述の食品の材料である態様において、当該材料から得られる食品が挙げられる。また、例えば、本発明の一態様に係るO/W/O型食品が前述の製菓用又は製パン用のクリームである形態においては、本発明の一態様に係る食品として、当該クリームを用いて得られる製菓、製パンが挙げられる。より具体的には、シュークリーム、タルト、ウエハース、クッキーサンドが挙げられる。本発明の一態様に係るO/W/O型食品の一態様である製菓用又は製パン用のクリームは撥水性が高い。よって、当該クリームを用いれば、当該クリームから、菓子の生地、パン生地、クリームに混合する食材(例えば、クッキー類、ナッツ類等)に水分が移行することを抑制できる。よって、当該クリームを用いれば、菓子の生地、パン生地、クリームに混合する食材のクリスピーな食感が保たれる。また、例えば、本発明のO/W/O型食品がアイスクリームである態様においては、本発明の一態様に係る食品として、アイスクリーム用のコーン及びクッキー等の焼成された食品、又は、ナッツ類等と、アイスクリームとが接触している食品が挙げられる。より具体的には、本発明のO/W/O型食品の一態様であるアイスクリームに、クッキー、クラッカー、ナッツ等を混ぜたもの、コーンアイス、アイス最中、アイスビスケットサンド、アイスどら焼き等が挙げられる。本発明の一態様に係るO/W/O型食品の一態様であるアイスクリームは撥水性が高い。よって、当該アイスクリームを用いれば、当該アイスクリームから、焼成された食品又はナッツ類等に水分が移行することを抑制できる。よって、焼成された食品又はナッツ等の良好な食感が保たれる。つまり、当該焼成された食品又はナッツ類等のクリスピーな食感が保たれた食品を提供できる。
【0039】
<本発明の食品中のO/W/O型食品の含有量>
食品中に含まれているO/W/O型食品の含有量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。
【0040】
<O/W/O型食品の製造方法>
本発明の一態様にかかるO/W/O型食品の製造方法は、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含む。
【0041】
<乳化工程>
本発明の一態様に係る乳化工程は、乳等を含むO/W型食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる工程である。乳等を含むO/W型食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる方法は、O/W型食品を分散相とし、可塑性油脂組成物を連続相としてエマルションを形成すればよく、特に限定されない。例えば、可塑性油脂組成物とO/W型食品とを、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。
【0042】
乳化工程は、最外油相が可塑性油脂組成物のみから形成されるように行なってもよく、最外油相が可塑性油脂組成物以外の成分を含んで形成されるように行なってもよい。乳化工程は例えば、可塑性油脂組成物と可塑性油脂組成物以外の成分とを予め混合して、得られた混合物、すなわち最外相用油脂とO/W型食品とを乳化させることで、行なってもよい。
【0043】
<可塑性油脂組成物の製造方法>
本発明の一態様にかかるO/W/O型食品の製造方法において用いられる可塑性油脂組成物は、前述の範囲の組成となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよく、特に限定されない。例えば、液油と液油以外の油脂とを混合する工程の後に、得られた混合物を急冷可塑化する工程を経て製造された可塑性油脂組成物を用いてもよい。
【0044】
<液油と液油以外の油脂との混合>
液油と液油以外の油脂とを混合する工程では、液油と液油以外の油脂とを混合することができればよく、混合方法は特に限定されない。例えば、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。油脂は加温され、融解されて撹拌混合されることが好ましい。
【0045】
<急冷可塑化>
液油と液油以外の油脂とを混合する工程後に必要により油脂結晶が析出しない程度に混合物を予備冷却した後、急冷可塑化する工程を行なう。急冷可塑化は、従来公知の冷却機を用いて行うことができる。従来公知の冷却機としては、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、及びケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行ってもよく、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせにより行ってもよい。急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物が得られる。また、急冷可塑化の際には、冷却機に加えて、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)、レスティングチューブ、又はホールディングチューブ等を使用してもよい。
【0046】
以下、本発明について、実施例、比較例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例0047】
<原料油脂>
(液油)
菜種油:市販品を用いた。
【0048】
(液油以外の油脂)
パーム油:市販品を用いた。
【0049】
パームステアリン:ヨウ素価33のものを用いた。
【0050】
エステル交換油1:以下の方法で調製したものを用いた。
【0051】
パーム分別軟質部(ヨウ素価56)を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行って、エステル交換油1を得た。
【0052】
エステル交換油2:以下の方法で調製したものを用いた。
【0053】
原料油脂としてパーム油を60質量部、ヤシ油を20質量部、及び菜種油を20質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油2を得た。
【0054】
エステル交換油3:以下の方法で調製したものを用いた。
【0055】
原料油脂としてパーム油を20質量部、パーム核油を40質量部、及びパーム極度硬化油(ヨウ素価0.1以下)を40質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油3を得た。
【0056】
菜種極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0057】
パーム極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0058】
ハイエルシンナタネ極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0059】
<固体脂含量の定量方法>
可塑性油脂の固体脂含量は、基準油脂分析試験法2.2.9-2013に記載の方法で定量した。
【0060】
<トリアシルグリセロール(TAG)の定量方法>
(ガスクロマトグラフィーの条件)
カラム:Ultra ALLOY-1(MS/HT)(FRONTIER LAB製)
移動相:ヘリウムガス
注入温度:380℃
カラム温度:280℃で1分間、その後に400℃で10分間(昇温速度10℃/分)
検出器:FID
検出器温度:400℃
(定量方法)
トリウンデカノイン及びC54~C66の飽和トリアシルグリセロールをクロロホルムに溶解し、標準溶液を用意した。
【0061】
前記条件のガスクロマトグラフィーにおいて、トリウンデカノインの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値に対する、C54~C66の飽和トリアシルグリセロールそれぞれの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値の比(ファクター)を求めた。
【0062】
製造例及び比較製造例の可塑性油脂組成物を調製するのに用いた各原料油脂及び内部標準としてトリウンデカノインを溶解したクロロホルム溶液を試料溶液として、前記条件のガスクロマトグラフィー分析を行い、前記ファクターを基に、各原料油脂中のC54~C66の飽和トリアシルグリセロールの含有量を求めた。C54~C66の飽和トリアシルグリセロール量を合計することで、C54以上の飽和トリアシルグリセロール量を求めた。
【0063】
製造例及び比較製造例に含まれるC54以上の飽和トリアシルグリセロール量は、各原料油脂の配合量および各原料油脂中のC54以上のトリアシルグリセロール量に基づいて算出した。
【0064】
[製造例1]
【0065】
表1に示す配合で、液油及び液油以外の油脂を60℃に加熱、溶解して混合した後に、冷却しながら練りを加えることで、製造例1の可塑性油脂組成物を作製した。
【0066】
[製造例2~11、及び比較製造例1~3]
表1に示す配合量にした以外は製造例1と同様にして、製造例2~11、及び比較製造例1~3の可塑性油脂組成物を作製した。
【0067】
【0068】
[実施例1]
<O/W型食品>
乳等を含むO/W型食品として、以下に示す配合で原料を混合し、鍋で加熱撹拌(70℃達温まで)して、カスタードクリームを調製した。
【0069】
(配合)
卵黄 12質量%
上白糖 15質量%
薄力粉 5質量%
牛乳(森永乳業製) 68質量%
【0070】
<O/W/O型食品の製造方法>
製造例1の可塑性油脂組成物をホバートミキサーで600秒間撹拌し、可塑性油脂組成物を含気させた。次いで、O/W型食品と可塑性油脂組成物との比(質量比)が7:3となる量で、O/W型食品を投入し、ホイッパーを用いて軽く撹拌することによって両者を混合して、実施例1のO/W/O型食品を作製した。
【0071】
[実施例2~10、比較例1~3]
可塑性油脂組成物として、製造例2~10、及び比較製造例1~3の可塑性油脂組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10、及び比較例1~3のO/W/O型食品を作製した。
【0072】
[実施例26]
実施例1で用いたO/W型食品と製造例11の可塑性油脂組成物との比(質量比)が7:3となる量で、O/W型食品を投入し、ホイッパーを用いて軽く撹拌することによって両者を混合して、実施例26のO/W/O型食品を作製した。すなわち、実施例26のO/W/O型食品は、可塑性油脂組成物を含気させずに作製された。
【0073】
[実施例11~17、及び比較例4~6]
<O/W型食品>
乳等を含むO/W型食品として、以下に示す配合で原料を混合して、生クリーム調製物を調製した。尚、生クリーム調製物とは、泡立てていない、液状の状態の生クリームをいう。
【0074】
(配合)
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 80質量%
上白糖 20質量%
<O/W/O型食品の製造方法>
可塑性油脂組成物として、製造例1~5、9~10、及び比較製造例1~3の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W型食品として、調製した生クリーム調製物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11~17、及び比較例4~6のO/W/O型食品を作製した。
【0075】
[実施例27]
O/W型食品として、調製した生クリーム調製物を使用したこと以外は、実施例26と同様にして、実施例27のO/W/O型食品を作製した。
【0076】
[実施例18~22、及び比較例7~8]
<O/W型食品>
乳等を含むO/W型食品として、以下に示す配合で原料を混合して、アイスクリームミックスを調製した。得られたアイスクリームミックス全体に占める乳脂肪分は、約15質量%であった。
【0077】
(配合)
卵黄 12質量%
グラニュー糖 26質量%
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 31質量%
牛乳(森永乳業株式会社製) 31質量%
【0078】
<O/W/O型食品の製造方法>
可塑性油脂組成物として、製造例1~5、及び比較製造例1~2の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W型食品として、調製したアイスクリームミックスを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18~22、及び比較例7~8のO/W/O型食品を作製した。
【0079】
[実施例28]
O/W型食品として、調製したアイスクリームミックスを使用したこと以外は、実施例26と同様にして、実施例28のO/W/O型食品を作製した。
【0080】
<撥水性の評価>
実施例1~22、26~28、及び比較例1~8の各O/W/O型食品を平板上に薄く塗り広げ、その上にスポイト(Kartell S.p.A.製、パスツールピペット3ml非無菌)で水を1滴(0.03g)落とし、撥水性の有無を下記評価基準により目視で評価した。その水滴の形が丸く球状になっている場合、撥水性有りと判断した。撥水できていない場合は、水滴が球状にならず、滲む、又は水が白濁した。撥水性の評価は、O/W/O型食品を袋(PE/NYラミネート勢、無地)に入れ、-20℃の冷凍庫で4週間保管することによって凍結させた後のO/W/O型食品、及び凍結前のO/W/O型食品について行なった。
【0081】
<撥水性の評価基準>
○:十分撥水した。具体的には、水滴の形状が、球状、又は、少し扁平して水平方向から見たときに楕円となる形状で維持された。
△:○よりは弱いが、撥水した。具体的には、水滴の形状が○より扁平したが、白濁したり、濁ったりはしなかった。
×:撥水しなかった。具体的には、水滴が球状を維持せずに広がり、白濁したり濁ったりした。
【0082】
<呈味性の評価>
パネラーが実施例1~22、26~28、及び比較例1~8の各O/W/O型食品を喫食して、下記評価基準により呈味性を評価した。呈味性の評価は、O/W/O型食品を撥水性の評価と同様の条件で凍結させた後のO/W/O型食品、及び凍結前のO/W/O型食品について行なった。
【0083】
<呈味性の評価基準>
◎:О/W型食品のみずみずしい風味を最も強く感じた。
○:◎よりも弱いが、О/W型食品のみずみずしい風味を強く感じた。
△:穏やかに感じた。
×:感じなかった。
なお、撥水性の評価が「×」であった比較例7及び8については、呈味性の評価を行わず、評価は「-」とした。
【0084】
<評価の結果>
各実施例及び比較例の評価の結果を表2~表4に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
[実施例23]
製造例5の可塑性油脂組成物とサラダ油とを1:1(質量比)で混合し、ホバートミキサーで10分間撹拌して含気させ、比重0.50の油脂Aを得た。得られた油脂Aを最外相用油脂として用いた。油脂A30質量%と、実施例11と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W型食品)70質量%とを混合し、ホイッパーを用いて撹拌して、実施例23のO/W/O型食品を作製した。実施例23で得られたO/W/O型食品では、O/W型食品と最外油相との質量比は、7.0:3.0であった。
【0089】
O/W/O型食品全量に対する可塑性油脂組成物の配合量が15質量%であっても、乳化安定性が高いO/W/O型食品を作製することができた。
【0090】
[実施例24]
製造例5の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、実施例11と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W型食品)と製造例5の可塑性油脂組成物とを7.5:2.5(質量比)で混合したこと以外は実施例11と同様にして実施例24のO/W/O型食品を作製した。
【0091】
実施例23のO/W/O型食品における可塑性油脂組成物の配合量は25質量%であった。この場合も、乳化安定性が高いO/W/O型食品を得ることが出来た。
【0092】
[実施例25]
製造例5の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、実施例11と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W型食品)と製造例5の可塑性油脂組成物とを5.2:4.8(質量比)で混合したこと以外は実施例11と同様にして実施例25のO/W/O型食品を作製した。
【0093】
実施例25のO/W/O型食品における可塑性油脂組成物の配合量は48質量%であった。この場合も、乳化安定性が高いO/W/O型食品を得ることが出来た。
【0094】
実施例23~25の各O/W/O型食品の、凍結前の撥水性及び呈味性を、前述した方法により評価した。結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
表2~5に示したように、乳及び乳製品からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むO/W型食品と、最外油相に可塑性油脂組成物とを含むO/W/O型食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、95質量%以下含み、5℃での固体脂含量が、5.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを10質量%以下含むO/W/O型食品は、良好な撥水性と呈味性とを両立することができることが示された。また、このような性質を有するO/W/O型食品により、接触する食品素材への水分移行を抑制し、且つみずみずしい風味及び食感を有するフィリングを提供することが可能であることも示された。