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  • 特開-反射防止膜付透明基体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087162
(43)【公開日】2022-06-09
(54)【発明の名称】反射防止膜付透明基体
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/34 20060101AFI20220602BHJP
   C03C 17/42 20060101ALI20220602BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220602BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
C03C17/42
B32B7/023
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057144
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018004354の分割
【原出願日】2018-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2017005124
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健輔
(57)【要約】
【課題】光吸収能を有し、絶縁性であり、かつ、透過光が黄色を帯びることがない反射防止膜付透明基体が提供できる。
【解決手段】透明基体の一方の主面に反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体であって、視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であり、前記反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、前記反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上であることを特徴とする反射防止膜付透明基体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの主面を有する透明基体及び該透明基体の一方の主面に形成された反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体であって、視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であり、前記反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、前記反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上であり、
前記反射防止膜は、互いに屈折率が異なる層を少なくとも2層以上積層させた積層構造であり、前記積層構造の層のうち少なくとも1層が、主として、Siの酸化物で構成されており、前記積層構造の層のうち別の少なくとも1層が、主として、MoおよびWからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、SnおよびInからなるB群から選択される少なくとも1つの酸化物、の混合酸化物で構成され、該混合酸化物に含まれるA群の元素と該混合酸化物に含まれるB群の元素との合計に対する、該混合酸化物に含まれるB群の元素の含有率が50質量%未満であることを特徴とする反射防止膜付透明基体。
【請求項2】
前記反射防止膜上に防汚膜をさらに有する、請求項1に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項3】
前記透明基体がガラス基板である、請求項1または2に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項4】
前記ガラス基板が化学強化されている、請求項3に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項5】
前記ガラス基板は、前記反射防止膜を有する側の主面に防眩処理が施されている、請求項3または4に記載の反射防止膜付透明基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜付透明基体に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠性の観点から、液晶ディスプレイ(LCD)のような画像表示装置の前面にカバーガラスを設置することが増えている。画面への外光の映り込み防止のために、かかるカバーガラスに反射防止膜を設置していることが多い。
【0003】
画像表示装置とカバーガラスとは、光学的透明な粘着剤(OCA)や、UV硬化樹脂等の光学的透明な樹脂(OCR)を用いて接着するが、画像表示装置の明所コントラストを向上させるため、画像表示装置と接着層との界面からの反射も抑制することが望ましい。
【0004】
反射防止膜に光吸収能を付与することで画像表示装置と接着層との界面からの反射を抑制できる。光吸収能が付与された反射防止膜は、たとえば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の光吸収性反射防止体では、基体上に、基体側から、光吸収膜、可視光に対し実質的に透明な誘電体膜がこの順に形成されている。
画像表示装置の表示面には、タッチパネルの機能を付与することが求められる場合もあるが、特許文献1に記載の光吸収性反射防止体の光吸収膜は、金、銅、あるいはそれらの合金を含有し導電性を有するため、タッチパネルの機能を付与できない。
【0005】
また画像品質の観点から、カバーガラスの透過光が黄色みを帯びないことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-96801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光吸収能を有し、絶縁性であり、かつ、透過光が黄色みを帯びることがない反射防止膜付透明基体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の反射防止膜付透明基体は、二つの主面を有する透明基体及び該透明基体の一方の主面に形成された反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体であって、視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であり、前記反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、前記反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様の反射防止膜付透明基体において、前記反射防止膜は、互いに屈折率が異なる誘電体層を少なくとも2層以上積層させた積層構造であり、前記積層構造の各誘電体層は、主として、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、Sn、およびInからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物、あるいは、SiおよびAlからなる群から選択される少なくとも1つの窒化物で構成されており、前記積層構造の反射防止膜のうち少なくとも1層には、Ag、Mo、W、Cu、Au、Pd、Pt、Ir、Ni、Co、Fe、Cr、C、TiC、SiC、TiN、およびCrNからなる群から選択される少なくとも1つの微粒子が分散していることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様の反射防止膜付透明基体において、前記反射防止膜は、互いに屈折率が異なる層を少なくとも2層以上積層させた積層構造であり、前記積層構造の層のうち少なくとも1層が、主として、Siの酸化物で構成されており、前記積層構造の誘電体層のうち別の少なくとも1層が、主として、MoおよびWからなるA群から選択される少なくとも一つの酸化物と、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、Sn、およびInからなるB群から選択される少なくとも一つの酸化物、の混合酸化物で構成され、該混合酸化物に含まれるA群の元素と該混合酸化物に含まれるB群の元素との合計に対する、該混合酸化物に含まれるB群の元素の含有率が50質量%未満であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様の反射防止膜付透明基体において、前記反射防止膜上に防汚膜をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様の反射防止膜付透明基体において、前記透明基体がガラス基板であることが好ましい。
前記ガラス基板は、化学強化されていることが好ましい。
前記ガラス基板は、前記反射防止膜を有する側の主面に防眩処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、光吸収能を有し、絶縁性であり、かつ、透過光が黄色みを帯びることがない反射防止膜付透明基体が提供される。
上記の特徴により、本発明の反射防止膜付透明基体は、画像表示装置のカバーガラス、特に、車両等に搭載されるナビゲーションシステムの画像表示装置のような車両等に搭載される画像表示装置のカバーガラスとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、反射防止膜付透明基体の一構成例を模式的に示した断面図である。
図2図2は、反射防止膜付透明基体の別の一構成例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0016】
本発明の反射防止膜付透明基体は、二つの主面を有する透明基体及び透明基体の一方の主面に形成された反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体であって、視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であり、前記反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、前記反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上である。
【0017】
本発明の一態様は、透明基体の一方の主面に反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体である。
【0018】
反射防止膜を形成する透明基体は、透光性に優れた透明の基体である限り特に限定されないが、ガラス基板であることが強度および耐熱性の点から好ましい。
【0019】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、視感透過率が20~85%である。視感透過率が上記範囲であれば、適度な光吸収能を有するため、画像表示装置のカバーガラスとして使用した場合に、画像表示装置と接着層との界面からの反射を抑制できる。これにより画像表示装置の明所コントラストが向上する。なお、視感透過率は後述の実施例に記載のように、JIS Z 8709(1999年)に規定の手法で測定できる。本発明に係る反射防止膜付透明基体の視感透過率は50~80%が好ましく、65~75%がより好ましい。
【0020】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、D65光源下の透過色でb値が5以下である。b値が上記範囲であれば、透過光が黄色みを帯びていないため、画像表示装置のカバーガラスとしての使用に好適である。なお、D65光源下の透過色でのb値は、後述の実施例に記載のように、JIS Z 8729(2004年)に規定の手法で測定できる。本発明に係る反射防止膜付透明基体のb値は3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
【0021】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、反射防止膜の視感反射率が1%以下である。反射防止膜の視感反射率が上記範囲であれば、画像表示装置のカバーガラスとして使用した場合に、画面への外光の映り込み防止効果が高い。なお、視感反射率は後述の実施例に記載のように、JIS Z 8701(1999年)に規定の手法で測定できる。本発明に係る反射防止膜付透明基体の反射防止膜の視感反射率は0.8%以下が好ましく、0.6%以下がより好ましい。
【0022】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上である。反射防止膜のシート抵抗が上記範囲であれば、反射防止膜が絶縁性であるため、画像表示装置のカバーガラスとして使用した場合に、タッチパネルを付与しても、静電容量式タッチセンサに必要な指の接触による静電容量の変化が維持され、タッチパネルを機能させられる。なお、シート抵抗は後述の実施例に記載のように、ASTM D257またはJIS K 6271-6(2008年)に規定の手法で測定できる。本発明に係る反射防止膜付透明基体の反射防止膜のシート抵抗は10Ω/□以上が好ましく、10Ω/□以上がより好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る反射防止膜付透明基体における反射防止膜は下記構成が好ましい。
図1は、反射防止膜付透明基体の一構成例を模式的に示した断面図であり、透明基体10上に反射防止膜20が形成されている。図1に示す反射防止膜20は、互いに屈折率が異なる誘電体層22、26を2層積層させた積層構造である。互いに屈折率が異なる誘電体層22、26を積層させることにより、光の反射を抑制する。
図1に示す反射防止膜20において、誘電体層22が高屈折率層、誘電体層26が低屈折率層の組合せでも、誘電体層22が低屈折率層、誘電体層26が高屈折率層の組合せでもよい。ここでいう高屈折率層とは、例えば、波長550nmでの屈折率が1.9以上の層であり、低屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の層である。
【0024】
図1に示す反射防止膜20において、誘電体層22には光線吸収能を有する微粒子24が分散している。光線吸収能を有する微粒子24としては、可視光線の全波長域で高い光線吸収能を有するものを用いる。
【0025】
本実施形態では、誘電体層22に分散させる微粒子24として、可視光線の全波長域で高い光線吸収能を有するものを用いることで、透過光が黄色みを帯びることをより効果的に防止する。
本実施形態では、誘電体層22に分散させる微粒子24として、Ag、Mo、W、Cu、Au、Pd、Pt、Ir、Ni、Co、Fe、Cr、C、TiC、SiC、TiN、およびCrNからなる群から選択される少なくとも1つを用いる。
微粒子24の選択肢として例示したものは導電性が高いが、特許文献1に記載の光吸収性反射防止体の光吸収膜とは違い、誘電体層22に微粒子24として分散させているため、反射防止膜20は絶縁性となる。
【0026】
誘電体層22、26は、主として、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、Sn、およびInからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物、あるいは、SiおよびAlからなる群から選択される少なくとも1つの窒化物で構成されていることが好ましい。その理由は以下に記載する通り。
誘電体層自体は、光線吸収能を有さない方が好ましく、したがって全可視波長域で吸収能が小さいものが好ましい。また反射防止性能を有する膜にするためには、例えば透明基体としてガラス基板を使用する場合には、低屈折率層であれば波長550nmの屈折率が1.5以下の膜、高屈折率層であれば1.8以上の膜であることが好ましい。上記の群から選べば、かかる条件を満足する。
本明細書において、「主として」とは、誘電体層22、26の構成材料に占める上記の酸化物あるいは窒化物の比率が70質量%以上であることを指す。
【0027】
誘電体層22、26は、それぞれが所望の屈折率層(高屈折率層、低屈折率層)になるように、それらの構成材料を上記の酸化物あるいは窒化物から適宜選択する。なお、誘電体層22は、微粒子24による屈折率も含めて所望の屈折率層(高屈折率層、低屈折率層)になるように構成材料を適宜選択する。
なお、誘電体層22、26は、上記の酸化物あるいは窒化物のうち1種のみで構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。
【0028】
図1に示す反射防止膜20は、2層の誘電体層22、26を積層させた積層構造であるが、本発明における反射防止膜はこれに限定されず、互いに屈折率が異なる層を3層以上積層させた積層構造であってもよい。この場合、全ての層の屈折率が異なる必要はない。例えば、3層積層構造の場合、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層積層構造や、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の3層積層構造とできる。前者の場合は2層存在する低屈折率層、後者の場合は2層存在する高屈折率層が同一の屈折率であってもよい。4層積層構造の場合、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の4層積層構造や、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層積層構造とできる。この場合、それぞれ2層存在する低屈折率層および高屈折率層が同一の屈折率であってもよい。
【0029】
また、図1に示す反射防止膜20では、誘電体層22に微粒子24が分散しているが、誘電体層26に微粒子が分散していてもよく、誘電体層22、誘電体層26の両方に微粒子が分散していてもよい。
また、反射防止膜が、互いに屈折率が異なる層を3層以上積層させた積層構造の場合、2層以上に微粒子が分散していてもよい。例えば、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層積層構造の場合、2層存在する低屈折率層に微粒子が分散していてもよい。高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の3層積層構造の場合、2層存在する高屈折率層に微粒子が分散していてもよい。低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の4層積層構造や、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層積層構造の場合、2層存在する低屈折率層若しくは2層存在する高屈折率層に微粒子が分散していてもよい。
【0030】
誘電体層22に分散する微粒子24は、Ag、Mo、W、Cu、Au、Pd、Pt、Ir、Ni、Co、Fe、Cr、C、TiC、SiC、TiN、およびCrNからなる群から選択される少なくとも1つであることが以下の理由から好ましい。
これらはいずれも酸化還元電位が高く、周囲の酸化物と反応して、酸化物微粒子を作るおそれが少ない。また、光線吸収能が大きく、少量の微粒子添加で十分な光線吸収を発生させるため、微粒子同士がくっついて、マクロに導電性が発生するおそれも少ない。また、比較的入手しやすいという利点もある。
誘電体層22に分散する微粒子24は、上記のうち1種のみでも2種以上でもよい。
【0031】
なお、後述する手順で透明基体の主面に反射防止膜を形成する場合、反射防止膜を構成する誘電体層のうち、最表層以外の誘電体層に微粒子が分散していることが好ましい。
【0032】
上述した本発明に係る反射防止膜付透明基体の特性のうち、反射防止膜付透明基体の視感透過率、および、反射防止膜のシート抵抗に影響するのは、微粒子24が分散している誘電体層22である。
反射防止膜付透明基体の視感透過率を20~85%とし、反射防止膜のシート抵抗を10Ω/□以上とするためには、誘電体層22、および該誘電体層22に分散する微粒子24は、以下に示す条件を満たすように、両者の組合せを選択することが好ましい。
【0033】
微粒子24が分散する誘電体層22は、微粒子24が分散していない誘電体層22とした場合のシート抵抗が1×10Ω/□以上であることが好ましく、1×10Ω/□以上がより好ましい。
一方、微粒子24は、単体としての体積抵抗率が1×10-5Ωm以下であることが好ましい。なお、シート抵抗は後述の実施例に記載のように、ASTM D257またはJIS K 6271-6(2008年)に規定の手法で測定できる。
【0034】
微粒子24が分散している誘電体層22は、波長550nmにおける消衰係数は0.005~3の範囲が好ましく、0.01~1の範囲がより好ましい。
波長550nmにおける消衰係数は0.005未満だと合理的な膜厚で吸収特性を得ることが難しく、反射防止膜付透明基体について、85%以下の視感透過率を達成することが困難になる。一方、波長550nmにおける消衰係数が3超だと逆に吸収が強すぎて、反射防止膜付透明基体について、20%以上の視感透過率を達成することが困難になる。
また、波長550nmにおける消衰係数が上記範囲であれば、透過光が黄色みを帯びることがなく、反射防止膜付透明基体について、D65光源下の透過色でb値が5以下とできる。
【0035】
上述した物性を満たす誘電体層22上に形成する誘電体層26は、誘電率が1.3~1.5、かつ厚さが30~150nmであることが好ましい。
【0036】
視感透過率、b値、ならびに、反射防止膜の視感反射率およびシート抵抗が上述した条件を満たす反射防止膜付透明基体は、たとえば、以下の構成であってもよい。
透明基体の一方の主面に従来の反射防止膜が形成され、該透明基体の他方の主面に光線吸収能を有する微粒子を分散させた誘電体層が形成されている。
光線吸収能を有する微粒子としては、酸化クロム、酸化鉄などの酸化物、炭化クロム、炭化タングステン等の炭化物、カーボンブラック、雲母等を使用できる。
光線吸収能を有する微粒子を分散させる誘電体層としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリカーボネート、透明ABS樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニル、ポリビニルブチラール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー、およびこれらの樹脂のモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーからなる樹脂層が挙げられる。
【0037】
図2は、反射防止膜付透明基体の別の一構成例を模式的に示した断面図であり、透明基体10上に反射防止膜30が形成されている。図2に示す反射防止膜30は、互いに屈折率が異なる層32、34を2層積層させた積層構造である。互いに屈折率が異なる層32、34を積層させることにより、光の反射を抑制する。
【0038】
図2に示す反射防止膜30において、層32は、MoおよびWからなるA群から選択される少なくとも1つと、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、SnおよびInからなるB群から選択される少なくとも1つとの混合酸化物で構成されている。但し、該混合酸化物は、該混合酸化物に含まれるA群の元素と該混合酸化物に含まれるB群の元素との合計に対する、該混合酸化物に含まれるB群の元素の含有率(以下、B群含有率と記載する。)が50質量%未満である。
層34は、主として、Siの酸化物、すなわち、SiOで構成されている。
【0039】
光吸収能を有し、かつ、絶縁性の光透過膜としては、半導体製造分野で用いられるハーフトーンマスクが知られている。ハーフトーンマスクとしては、Moを少量含むMo-SiO膜のような酸素欠損膜が用いられる。また、光線吸収能を有し、かつ、絶縁性の光透過膜としては、半導体製造分野で用いられる狭バンドギャップ膜がある。
しかしながら、これらの膜は可視光線のうち、短波長側の光線吸収能が高いため、透過光が黄色みを帯びる。そのため、画像表示装置のカバーガラスには不適である。
本発明の本実施形態において、Moの含有率を高めた層32と、SiOで構成される層34とを有することで、光線吸収能を有し、絶縁性であり、かつ、透過光が黄色みを帯びることがない反射防止膜付透明基体が得られた。
【0040】
図2に示す反射防止膜30において、層32が高屈折率層であり、層34が低屈折率層である。
本明細書において、「主として」とは、層32の構成材料に占めるMoおよびWからなるA群から選択される少なくとも1つと、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、SnおよびInからなるB群から選択される少なくとも1つとの混合酸化物の比率が70質量%以上であることを指し、層34の構成材料に占めるSiの酸化物の比率が70質量%以上であることを指す。
以下、本明細書において、主として、A群およびB群の混合酸化物で構成される層を層(A-B-O)、主として、Siの酸化物で構成される層を層(SiO)と記載する。
【0041】
図2に示す反射防止膜付透明基体は、反射防止膜30が上述した構成であることにより、上述した本発明に係る反射防止膜付透明基体の特性を満たす。
層(A-B-O)32におけるB群含有率を50質量%未満とするのは、B群含有率が50質量%以上だと、b値が5超となるためである。B群含有率は45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
図2に示す反射防止膜30は、2層の層(A-B-O)32、層(SiO)34を積層させた積層構造であるが、本発明における反射防止膜はこれに限定されず、透明基体上に、層(SiO)、層(A-B-O)の順に積層させた積層構造であってもよい。また、互いに屈折率が異なる層を3層以上積層させた積層構造であってもよい。この場合、少なくとも1層が層(SiO)であり、別の少なくとも1層が層(A-B-O)である。例えば、3層積層構造の場合、透明基体上に、層(A-B-O)、層(SiO)、層(A-B-O)の順に積層させた3層積層構造や、層(SiO)、層(A-B-O)、層(SiO)の順に積層させた3層積層構造とできる。4層積層構造の場合、透明基体上に、層(A-B-O)、層(SiO)、層(A-B-O)、層(SiO)の順に積層させた4層積層構造や、層(SiO)、層(A-B-O)、層(SiO)、層(A-B-O)の順に積層させた4層積層構造とできる。
また、互いに屈折率が異なる層を3層以上積層させた積層構造の場合、層(A-B-O)および層(SiO)以外の層を含んでいてもよい。この場合、層(A-B-O)および層(SiO)を含めて低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層積層構造、若しくは、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の3層積層構造、あるいは、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の4層積層構造、若しくは、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層積層構造となるように各層を選択する必要がある。ただし、最表面の層は層(SiO)であることが好ましい。低反射性を得るためには最表面の層が層(SiO)であれば比較的容易に作製できるためである。また、防汚膜を形成する場合、防汚膜の耐久性に関わる結合性の観点から層(SiO)上に形成することが好ましい。
【0043】
以下、本発明に係る反射防止膜付透明基体についてさらに記載する。
【0044】
(透明基体)
透明基体は、屈折率が1.4以上1.7以下の材質が好ましい。これはディスプレイやタッチパネルなどを光学的に接着する場合、接着面における反射を十分に抑制できるためである。
上述のように、透明基体としてガラス基板が好ましい。ガラス基板としては、種々の組成を有するガラスを利用できる。たとえば、本発明で使用されるガラスはナトリウムを含んでいることが好ましく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成であることが好ましい。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0045】
ガラス基板の厚みは、特に制限はないが、化学強化処理を行う場合はこれを効果的に行うために、通常5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
【0046】
ガラス基板は、カバーガラスの強度を高めるために化学強化された化学強化ガラスが好ましい。なお、ガラス基板に防眩処理を施す場合、化学強化は防眩処理の後、反射防止膜を形成する前に行なう。
【0047】
ガラス基板は、反射防止膜を有する側の主面に防眩処理が施されていることが好ましい。防眩処理方法は特に限定されず、ガラス主面について表面処理を施し、所望の凹凸を形成する方法を利用できる。具体的には、ガラス基板の主面に化学的処理を行う方法、例えばフロスト処理を施す方法が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、被処理体であるガラス基板を浸漬し、浸漬面を化学的に表面処理できる。また、このような化学的処理による方法以外にも、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気でガラス基板表面に吹きつけるいわゆるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせたもので磨く等の物理的処理による方法も利用できる。
【0048】
(反射防止膜)
上述した反射防止膜は、スパッタリング法などの公知の成膜方法を用いて、透明基体の主面に形成できる。すなわち、反射防止膜を構成する誘電体層又は層を、その積層順に応じて、透明基体の主面にスパッタリング法などの公知の成膜方法を用いて形成する。
微粒子が分散している誘電体層は以下の手順で形成できる。
母体となる誘電体材料を数nmの厚さでスパッタ成膜して、誘電体材料の酸化物または窒化物である誘電体の連続膜を形成する。
次に、微粒子材料を連続膜にならない範囲でスパッタ成膜する。連続膜にならない範囲とは、スパッタ成膜により不連続膜が形成される膜厚を指す。不連続膜が形成される膜厚は、微粒子材料により異なり、選択した微粒子材料に応じて適宜選択する。
次に、母体となる誘電体材料を、酸素または窒素を導入せずに、アルゴン等の希ガスのみのプラズマ放電で、1nm程度の厚さでスパッタ成膜する。これは次の誘電体膜をスパッタ成膜する際に、先の手順で成膜した不連続膜の酸化または窒化を防止するための犠牲層である。
次に、母体となる誘電体材料を数nmの厚さでスパッタ成膜して、誘電体材料の酸化物または窒化物である誘電体の連続膜を形成する。
このようにして、母体の誘電体中に微粒子が分散した膜が形成される。
この手順を繰り返すことにより、任意の膜厚の誘電体層が得られる。
【0049】
デジタルスパッタリング法を用いれば上記の手順が容易になる。
デジタルスパッタリング法は、通常のマグネトロンスパッタリング法とは異なり、まずスパッタリングによって金属材料の極薄膜を形成してから、酸素プラズマあるいは酸素イオンあるいは酸素ラジカルを照射することによって酸化する、という工程を同一チャンバ内で繰り返して金属酸化物の薄膜を形成する方法である。
この方法を用いれば、透明基体が通過する順に、微粒子用のターゲット、母体となる誘電体用の金属ターゲット、酸素プラズマ源と配置し、微粒子の上に母体の誘電体の金属が堆積したのち、酸素プラズマ源で母体の誘電体金属がちょうど酸化する程度に酸素プラズマへの投入パワーおよび母体誘電体の堆積膜厚を調整することにより、微粒子が分散している誘電体層を簡便に形成できる。
通過型インラインスパッタリング装置を用いる場合も、ターゲット自体を細分化するなどの工夫を行うことにより、微粒子が分散している誘電体層を形成できる。
【0050】
反射防止膜の材料は特に限定されず、光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用できる。例えば反射防止膜としては、高屈折率層と低屈折率層とを積層した構成としてもよい。ここでいう高屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.9以上の層であり、低屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の層である。
【0051】
なお、本発明の反射防止膜付透明基体では、反射防止膜は透明基体の少なくとも一方の主面に設けられていればよいが、必要に応じて、透明基体の両主面に設ける構成としてもよい。
【0052】
<防汚膜>
本発明の反射防止膜付透明基体は、膜最表面を保護する観点から、上記反射防止膜上に、さらに防汚膜(「Anti Finger Print(AFP)膜」とも称する。)を有してもよい。防汚膜は例えば、フッ素含有有機ケイ素化合物により構成できる。フッ素含有有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性、撥油性を付与できれば特に限定されず使用でき、例えば、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物が挙げられる。なお、ポリフルオロポリエーテル基とは、ポリフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。
【0053】
また、市販されているポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物として、KP-801(商品名、信越化学社製)、KY178(商品名、信越化学社製)、KY-130(商品名、信越化学社製)、KY-185(商品名、信越化学社製)オプツ-ル(登録商標)DSXおよびオプツールAES(いずれも商品名、ダイキン社製)などが好ましく使用できる。
【0054】
防汚膜は、反射防止膜上に積層されることになる。ガラス基板の両主面に反射防止膜を成膜した場合には、両方の反射防止膜に防汚膜を成膜することもできるが、何れか一方の面についてのみ防汚膜を積層する構成としてもよい。これは、防汚膜は人の手等が接触する可能性がある場所について設けられていればよいためであり、その用途等に応じて選択できる。
【実施例0055】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0056】
(実施例1)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
【0057】
透明基体には、縦50mm×横50mm×厚さ2mmの化学強化ガラス基板(ドラゴントレイル:登録商標、旭硝子社製)を用いた。
【0058】
次に、通常のスパッタリング法により、透明基体の一方の主面に以下に示す積層構造の反射防止膜を形成した。なお、通常のスパッタリング法とは、マグネトロンスパッタリング法を用いて、上記反射防止膜の項に記載の手順で微粒子が分散している誘電体層を形成する手法を指す。積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Ag微粒子が分散しているSiO層(厚さ20nm)
誘電体層(2):TiO層(厚さ25nm)
誘電体層(3):SiO層(厚さ120nm)
なお、特性値は下記の通りであった
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):1.55
誘電体層(2):2.35
誘電体層(3):1.47
・誘電体層(1)について、Ag微粒子が分散していないSiO層のシート抵抗:1010Ω/□以上
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.36
【0059】
作製した反射防止膜付透明基体について、以下の評価を実施した。
(反射防止膜のシート抵抗)
測定装置(三菱化学アナリテック社製、装置名:ハイレスタUP(MCP-HT450型))を用いてシート抵抗値を測定した。反射防止膜付透明基体の中央にプローブをあて、10Vで10秒間通電して測定した。
(反射防止膜の視感反射率)
分光光度計(島津製作所社製、商品名:SolidSpec-3700)により分光反射率を測定し、計算により視感反射率(JIS Z 8701:1999において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。なお、反射防止膜付透明基体の裏面側(ガラス基板側)をラッカーにより黒く塗り、裏面反射をなくした状態で測定した。
(反射防止膜付透明基体の視感透過率)
分光光度計(島津製作所社製、商品名:SolidSpec-3700)により分光透過率を測定し、計算により視感透過率(JIS Z 8701:1999において規定されている刺激値Y)を求めた。
(反射防止膜付透明基体のD65光源下の透過色(b値))
上記の分光透過率を測定して得られた透過スペクトルから、JIS Z 8729:2004において規定されている色指標(b値)を求めた。光源はD65光源を用いた。
結果を下記表1に示す。
【0060】
(実施例2)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Cu微粒子が分散しているSiO層(厚さ80nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ40nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):1.42
誘電体層(2):1.47
・誘電体層(1)について、Cu微粒子が分散していないSiO層のシート抵抗:1010Ω/□以上
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.17
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表1に示す。
【0061】
(実施例3)
誘電体層の形成にデジタルスパッタリング法を用いた点、および、積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Ag微粒子が分散しているTiO層(厚さ22nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ105nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):2.03
誘電体層(2):1.47
・誘電体層(1)について、Ag微粒子が分散していないTiO層のシート抵抗:5×10Ω/□
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.34
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表1に示す。
【0062】
(実施例4)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Mo微粒子が分散しているSiO層(厚さ30nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ100nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):1.82
誘電体層(2):1.47
・誘電体層(1)について、Mo微粒子が分散していないSiO層のシート抵抗:1010Ω/□以上
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.38
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表2に示す。
【0063】
(実施例5)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Ag微粒子が分散しているNb層(厚さ13nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ26nm)
誘電体層(3):Nb層(厚さ100nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ95nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):2.38
誘電体層(2):1.47
誘電体層(3):2.38
誘電体層(4):1.47
・誘電体層(1)について、Ag微粒子が分散していないNb層のシート抵抗:3×10Ω/□
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.076
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表2に示す。
【0064】
(実施例6)
誘電体層の形成にデジタルスパッタリング法を用いた点、および、積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Ag微粒子が分散しているNb層(厚さ25nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ30nm)
誘電体層(3):Ag微粒子が分散しているNb層(厚さ125nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ95nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):2.38
誘電体層(2):1.47
誘電体層(3):2.38
誘電体層(4):1.47
・誘電体層(1),(3)について、Ag微粒子が分散していないNb層のシート抵抗:両方とも3×10Ω/□
・誘電体層(1),(3)について、波長550nmにおける消衰係数:両方とも0.076
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表2に示す。
【0065】
(実施例7)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Ag微粒子が分散しているSiN層(厚さ25nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ90nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):1.99
誘電体層(2):1.47
・誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:0.88
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表3に示す。
【0066】
(実施例8)
誘電体層の形成にデジタルスパッタリング法を用いた点、および、積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):Nb層(厚さ8nm)
誘電体層(2):1wt%Pdを含むAg微粒子が分散しているSiO層(厚さ25nm)
誘電体層(3):Nb層(厚さ112nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):2.38
誘電体層(2):1.55
誘電体層(3):2.38
誘電体層(4):1.47
・誘電体層(2)について、1wt%PdのAg微粒子が分散していないSiO層のシート抵抗:1010Ω/□以上
・誘電体層(2)について、波長550nmにおける消衰係数:0.36
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表3に示す。
【0067】
(実施例9)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度0.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、透明基体の一方の主面にMo-Si-O層を14nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ35nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度0.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、Mo-Si-O層を120nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ90nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Mo-Si-O層(厚さ14nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ35nm)
誘電体層(3):Mo-Si-O層(厚さ120nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Si-O層中のMoとSiの組成比は、Mo:Si=99:1(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Si-O層の550nmの屈折率は2.1、消衰係数は0.08であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表5に示す。
【0068】
(実施例10)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに15体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度1.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、透明基体の一方の主面にMo-Si-O層を14nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ35nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに15体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度1.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、Mo-Si-O層を120nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ90nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Mo-Si-O層(厚さ14nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ35nm)
誘電体層(3):Mo-Si-O層(厚さ120nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Si-O層中のMoとSiの組成比は、Mo:Si=90:10(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Si-O層の550nmの屈折率は1.9、消衰係数は0.08であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表5に示す。
【0069】
(実施例11)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに39体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、ニオブとモリブデンとを重量比で80:20の割合で混合して焼結したターゲットを用いて、周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、透明基体の一方の主面にMo-Nb-O層を14nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ35nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、ニオブとモリブデンを重量比で80:20の割合で混合して焼結したターゲットを用いて、周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、Mo-Nb-O層を120nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに39体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ90nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Mo-Nb-O層(厚さ14nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ35nm)
誘電体層(3):Mo-Nb-O層(厚さ120nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Nb-O層中のMoとNbの組成比は、Mo:Nb=80:20(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Nb-O層の550nmの屈折率は2.1、消衰係数は0.04であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表6に示す。
【0070】
(実施例12)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに39体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、ニオブとモリブデンを重量比で50:50の割合で混合して焼結したターゲットを用いて、周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、透明基体の一方の主面にMo-Nb-O層を14nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ35nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに39体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、ニオブとモリブデンを重量比で50:50の割合で混合して焼結したターゲットを用いて、周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、Mo-Nb-O層を110nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ90nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Mo-Nb-O層(厚さ14nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ35nm)
誘電体層(3):Mo-Nb-O層(厚さ110nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Nb-O層中のMoとNbの組成比は、Mo:Nb=50:50(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Nb-O層の550nmの屈折率は2.2、消衰係数は0.12であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表6に示す。
【0071】
(実施例13)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、チタンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、チタンターゲットには周波数20kHz、電力密度1.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、チタンとモリブデンのコスパッタによって、透明基体の一方の主面にMo-Ti-O層を12nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ30nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、チタンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、チタンターゲットには周波数20kHz、電力密度1.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、チタンとモリブデンのコスパッタによって、Mo-Ti-O層を106nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ80nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。
誘電体層(1):Mo-Ti-O層(厚さ12nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ30nm)
誘電体層(3):Mo-Ti-O層(厚さ106nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ80nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Ti-O層中のMoとTiの組成比は、Mo:Ti=93:7(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Ti-O層の550nmの屈折率は2.1、消衰係数は0.06であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表7に示す。
【0072】
(比較例1)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):CuO層(厚さ10nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ45nm)
誘電体層(3):CuO層(厚さ15nm)
誘電体層(4):SiO層(厚さ100nm)
なお、特性値は下記の通りであった。
・各層の波長550nmの屈折率
誘電体層(1):2.82
誘電体層(2):1.47
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表4に示す。
【0073】
(比較例2)
積層構造の反射防止膜を下記構成とした以外は実施例1と同様である。
誘電体層(1):TiN層(厚さ10nm)
誘電体層(2):SiO層(厚さ80nm)
誘電体層(1)の波長550nmの屈折率:1.55
誘電体層(1)について、波長550nmにおける消衰係数:1.32
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表4に示す。
【0074】
(比較例3)
誘電体層として、Ag微粒子が分散しているSiO層(厚さ100nm)の単膜を形成した以外は実施例1と同様である。なお、特性値は下記の通りであった。
・波長550nmの屈折率:1.55
・Ag微粒子が分散していないSiO層のシート抵抗:1010Ω/□以上
・Ag微粒子が分散しているSiO層の波長550nmにおける消衰係数:0.36
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表4に示す。
【0075】
(比較例4)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
まず、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、透明基体の一方の主面にMo-Si-O層を14nm成膜した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ35nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
次に、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、圧力を0.3Paに保ち、シリコンターゲットとモリブデンターゲットを用いて、シリコンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.6W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、モリブデンターゲットには周波数20kHz、電力密度4.0W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、シリコンとモリブデンのコスパッタによって、Mo-Si-O層を120nm成膜した。
続いて、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、厚さ90nmの酸化ケイ素(シリカ(SiO))からなる層を成膜した。
積層構造の反射防止膜は、透明基体の一方の主面側から以下の層構成を有する。誘電体層(1):Mo-Si-O層(厚さ14nm)誘電体層(2):SiO層(厚さ35nm)誘電体層(3):Mo-Si-O層(厚さ120nm)誘電体層(4):SiO層(厚さ90nm)
XPSによる分析の結果、誘電体層(1)と誘電体層(3)のMo-Si-O層中のSiとMoの組成比は、Mo:Si=50:50(wt%)であることが分かった。また、これらのMo-Si-O膜の550nmの屈折率は1.7、消衰係数は0.15であった。
作製した反射防止膜付透明基体について上述の評価を実施し、結果を下記表5に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
実施例1~10の反射防止膜付透明基体は、反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上であり、反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、反射防止膜付透明基体の視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であった。
一方、微粒子が分散している誘電体層を構成要素としない比較例1の反射防止膜付透明基体は、D65光源下の透過色でb値が5超であった。
また、誘電体層(1)として、TiNの連続膜を形成した比較例2の反射防止膜付透明基体は、反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□未満であった。
また、誘電体層として、Ag微粒子が分散しているSiO層(厚さ100nm)の単膜を形成した比較例3の反射防止膜付透明基体は、反射防止膜の視感反射率が1%超であり、D65光源下の透過色でb値が5超であった。
また、層(1),(3)として、SiとMoの組成比が、Mo:Si=50:50(wt%)であるMo-Si-O層を形成した比較例4の反射防止膜付透明基体は、D65光源下の透過色でb値が5超であった。
【0084】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は2017年1月16日出願の日本特許出願(特願2017-005124)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 透明基体
20、30 反射防止膜
22、26、32、34 誘電体層
24 微粒子
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの主面を有する透明基体及び該透明基体の一方の主面に形成された反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体であって、視感透過率が20~85%であり、D65光源下の透過色でb値が5以下であり、前記反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、前記反射防止膜のシート抵抗が10Ω/□以上であり、
前記反射防止膜は、互いに屈折率が異なる層を少なくとも2層以上積層させた積層構造であり、前記積層構造の層のうち少なくとも1層が、主として、Siの酸化物で構成されており、前記積層構造の層のうち別の少なくとも1層が、主として、MoおよびWからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、SnおよびInからなるB群から選択される少なくとも1つの酸化物、の混合酸化物で構成されることを特徴とする反射防止膜付透明基体。
【請求項2】
前記反射防止膜上に防汚膜をさらに有する、請求項1に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項3】
前記透明基体がガラス基板である、請求項1または2に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項4】
前記ガラス基板が化学強化されている、請求項3に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項5】
前記ガラス基板は、前記反射防止膜を有する側の主面に防眩処理が施されている、請求項3または4に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項6】
前記混合酸化物で構成される層の、波長550nmにおける消衰係数が0.005~3の範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項7】
前記反射防止膜は、3層以上積層させた積層構造である、請求項1から6のいずれか1項に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項8】
前記反射防止膜は、前記混合酸化物で構成される層を2層以上含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項9】
前記反射防止膜の最表層は、主として、Siの酸化物で構成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の反射防止膜付透明基体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の反射防止膜付透明基体からなる、画像表示装置用カバーガラス。
【請求項11】
請求項10に記載のカバーガラスを備えた画像表示装置。
【請求項12】
請求項10に記載のカバーガラスを備えた、車両に搭載される画像表示装置。