(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022087997
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
C08J3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200190
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA49
4F070AB13
4F070DA42
4F070DA48
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC07
(57)【要約】
【課題】鉄を含む水溶液の吸水性に優れる吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供すること。
【解決手段】架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、当該方法が、前記架橋重合体、水及び下記式(1):
[式(1)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体から水を除去して、前記架橋重合体を含む乾燥物を形成する乾燥工程を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、当該方法が、
前記架橋重合体、水及び下記式(1):
【化1】
[式(1)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体から水を除去して、前記架橋重合体を含む乾燥物を形成する乾燥工程を含む、方法。
【請求項2】
前記含水架橋重合体中の前記イミダゾリン化合物の含有量が、前記含水架橋重合体の固形分量に対して、25~11,000質量ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが炭素数3のアルキル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋重合体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を単量体単位として含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用、保水材、土壌改良材等の農園芸材料用、ケーブル用止水材、結露防止材等の工業資材用等に用いられている。吸水性樹脂粒子には、一般的に、重合性官能基を有する単量体の重合反応によって形成される重合体が含まれている(特許文献1)。吸水性樹脂粒子を製造するための単量体組成物の重合反応は、水溶液中で行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸水性樹脂粒子は、吸液対象となる液体が鉄を含む場合でも、優れた吸水性を維持していること望ましい。
【0005】
本発明の一側面は、鉄を含む水溶液の吸水性に優れる吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、当該方法が、前記架橋重合体、水及び下記式(1):
【化1】
[式(1)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体から水を除去して、前記架橋重合体を含む乾燥物を形成する乾燥工程を含む、方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面に係る上記方法によれば、鉄を含む水溶液の吸水性に優れる吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0010】
吸水性樹脂粒子を製造する方法の一実施形態は、架橋重合体、水及び下記式(1):
【化2】
[式(1)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。]
で表されるイミダゾリン化合物(以下単に「イミダゾリン化合物」ともいう。)を含む含水架橋重合体から水を除去して、架橋重合体を含む乾燥物を形成する乾燥工程を含む。
【0011】
含水架橋重合体は、例えば、単量体、架橋剤及び水を含む重合反応液中での重合反応により、架橋重合体及び水を少なくとも含む含水架橋重合体を形成する重合工程を含む方法によって製造することができる。
【0012】
重合反応液は、単量体が水に溶解した単量体水溶液であってもよい。重合反応液が単量体水溶液である場合、重合反応の進行にともなって、重合反応液は増粘し、続いてゲル化して、ゲル状の含水架橋重合体を形成する。通常、重合反応の進行にともなって重合反応液は流動性を失うが、本明細書では、重合反応液が流動性を失った後の混合物のことも、便宜上重合反応液と称することがある。通常、重合反応液が反応容器中に収容された状態で重合反応が行われる。
【0013】
単量体は、架橋重合体粒子及び吸水性樹脂粒子に吸水性を付与する重合体を重合によって形成する化合物である。単量体はエチレン性不飽和単量体であってもよい。
【0014】
エチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、並びにジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。単量体が、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、又は、アクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。
【0015】
重合反応液が、エチレン性不飽和単量体以外の単量体を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体(特に、(メタ)アクリル酸及びその塩)の割合が、反応液中の単量体全量に対し70~100モル%であってもよい。エチレン性不飽和単量体のうち、(メタ)アクリル酸及びその塩の占める割合が、70~100モル%であってもよい。
【0016】
重合反応前の重合反応液における単量体の濃度は、重合反応液の質量を基準として、例えば20~50質量%、又は25~40質量%であってもよい。
【0017】
架橋剤は、内部架橋のための反応性化合物(以下「内部架橋剤」ということがある。)を含むことができる。
【0018】
内部架橋剤は、単量体と共重合する2官能以上の重合性化合物であってもよい。内部架橋剤は、例えば、反応性官能基として(メタ)アクリル基、アリル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物であってもよい。(メタ)アクリル基を有する化合物は、2以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル化合物であってもよく、その例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アリル基を有する化合物の例としては、トリアリルアミンが挙げられる。エポキシ基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル及びエピクロロヒドリンが挙げられる。アミノ基を有する化合物の例としては、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0019】
重合反応前の重合反応液に含まれる内部架橋剤の量は、単量体1モルに対して0.002~3.0ミリモルであってもよい。
【0020】
重合反応液は、開始剤(特に、ラジカル重合開始剤)を更に含んでもよい。開始剤は、過硫酸塩、アゾ化合物、有機過酸化物又はこれらの組み合わせを含んでもよい。開始剤の量が、単量体1モルに対して0.01~15ミリモルであってもよい。2種以上の開始剤が用いられる場合、それぞれの開始剤の量が、単量体1モルに対して0.01~15ミリモルであってもよい。
【0021】
過硫酸塩の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0022】
アゾ化合物の例としては、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、及び2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。大きなCRCの重合体粒子の形成の観点から、ラジカル重合開始剤が、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩及び2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物から選ばれる少なくとも1種のアゾ化合物を含んでもよい。
【0023】
有機過酸化物の例としては、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、及びt-ブチルパーオキシピバレートが挙げられる。
【0024】
重合反応液が、開裂促進剤を更に含んでもよい。開裂促進剤は、開始剤によって重合反応が開始する温度を低下させる化合物である。重合反応が低温で開始すると、より優れた吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られ易い。開裂促進剤は、例えば、還元剤、酸化剤又はこれらの組み合わせであることができる。開裂促進剤のうち一部又は全部を、単量体、開始剤及び水を含む反応液に対して後から投入し、それにより重合反応を開始させてもよい。開裂促進剤の量は、例えば、開始剤1モルに対して0.01~1.0モルであってもよい。
【0025】
開裂促進剤として用いられる還元剤は、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第1鉄、及びL-アスコルビン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。開裂促進剤として用いられる酸化剤は、例えば、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸、過リン酸塩、及び過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0026】
重合反応液が連鎖移動剤を更に含んでもよい。連鎖移動剤は、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸、アクロレイン等又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0027】
重合反応によって形成された塊状の含水架橋重合体が反応容器から取り出される。
【0028】
含水架橋重合体の含水率は、例えば、50%以上、55%以上、60%以上、又は65%以上であってよく、80%以下、75%以下、又は70%以下であってよい。含水架橋重合体の含水率は、次に示す方法によって測定される。含水架橋重合体より1×1×1cmに切り出したゲル片の重量をY[g]とし、ゲル片を熱風乾燥機を用いて200℃、2時間の条件で乾燥した後に得られた乾燥後のゲル片の重量をY’[g]として、次に示す式によって、含水架橋重合体の含水率Aが算出される。
A[%]=(Y-Y’)/Y×100
【0029】
重合反応によって形成された含水架橋重合体は、溶媒に浸漬させてよい。溶媒は水であってよい。含水架橋重合体を浸漬させる際の溶媒の温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、又は70℃以上であってよく、90℃以下、又は80℃以下であってもよい。含水架橋重合体を溶媒に浸漬させる時間は、例えば、5~90分間、5~60分間、又は10~30分間であってよい。
【0030】
乾燥工程の前に、含水架橋重合体を粗砕することによってある程度小さいサイズの構造体を含む粗砕物を形成してもよい。粗砕物を形成することにより、水を効率的に除去することができる。粗砕物を構成する構造体は、例えば、細長い構造体、粒状の構造体(粒子)、又はこれらの組み合わせであることができる。粗砕物は、直径10mm又は7mmの円形孔を通過可能な形状を有する複数の構造体を含んでいてもよい。細長い構造体は、曲がっていてもよく、その最大幅が10mm以下であれば、直径10mmの円形孔を通過可能な形状を有するといえる。粒状の構造体(粒子)は不定形であってもよく、向きを変えながら直径10mmの円形孔を通過可能な形状を有していてもよい。含水架橋重合体を粗砕する粗砕装置の例としては、ニーダー(例えば、加圧式ニーダー、双腕型ニーダー)、ミートチョッパー、カッターミル、及びファーマミルが挙げられる。
【0031】
乾燥工程では、架橋重合体、水及びイミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体から、水を除去する。含水架橋重合体から水を除去することによって、水の大部分が除去され、架橋重合体を含む乾燥物が形成される。
【0032】
イミダゾリン化合物中のRは、炭素数1~3のアルキル基である。Rとしてのアルキル基の炭素数は、1~3、又は2~3であってよく、3であってよい。Rは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。Rは、炭素数3のアルキル基であってよい。イミダゾリン化合物は、例えば、2-(2-イミダゾリン―2-イル)プロパン、2-プロピル-2-イミダゾリン等が挙げられる。イミダゾリン化合物は1種を含むものであってよく、2種以上を組み合わせて含むものであってもよい。
【0033】
含水架橋重合体中のイミダゾリン化合物の含有量は、含水架橋重合体の固形分量に対して、25質量ppm以上、40質量ppm以上、100質量ppm以上、200質量ppm以上、400質量ppm以上、600質量ppm以上、800質量ppm以上、1000質量ppm以上、又は2000質量ppm以上であってよく、11,000質量ppm以下、9000質量ppm以下、7000質量ppm以下、5000質量ppm以下、又は3000質量ppm以下であってもよい。含水架橋重合体中のイミダゾリン化合物の含有量は、含水架橋重合体の固形分量に対して、例えば、25~11,000質量ppmであってよい。
【0034】
ここで、含水架橋重合体の固形分量は、例えば、次に示す方法によって測定される。
含水架橋重合体の全量をX[g]と、上述した含水架橋重合体の含水率A[%]とから、次に示す式によって、含水架橋重合体の固形分を測定することができる。
含水架橋重合体の固形分量[g]=(100-A)/100×X
【0035】
単量体の重合によって得られる含水架橋重合体の固形分量は、仕込みに用いる単量体の量(仕込量)に略等しいことから、重合時に単量体の量基準に仕込んだイミダゾリン化合物の添加量(割合)を、含水架橋重合体の固形分量に対する、イミダゾリン化合物の含有量(割合)と読み替えることもできる。
【0036】
イミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾリン化合物そのものを含水架橋重合体又は重合反応液等に混合して、イミダゾリン化合物を含む含水架橋重合体を得る方法、イミダゾリン化合物の前駆体化合物を重合反応前、重合反応中若しくは重合反応後の重合反応液を混合する方法等が挙げられる。イミダゾリン化合物の前駆体化合物は、反応後にイミダゾリン化合物を形成する化合物を用いることができる。
【0037】
乾燥により得られる、架橋重合体を含む乾燥物の含水率が、例えば20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。ここでの乾燥物の含水率は、水を含む乾燥物の全体質量を基準とする、架橋重合体における水分量の割合を意味する。通常、測定に供する水を含む乾燥物を200℃で2時間加熱したときに、加熱前後での乾燥物の質量の差を、測定に供した乾燥物における水分量とみなすことができる。乾燥の方法は、例えば自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、凍結乾燥又はこれらの組み合わせのような一般的な方法であってよい。常圧下又は減圧下で、含水架橋重合体(含水架橋重合体の粗砕物も含む。)を乾燥してもよい。乾燥のための加熱温度は、例えば、80℃以上、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、又は170℃以上であってよく、200℃以下、又は190℃以下であってもよい。乾燥のための加熱温度を保持する時間は、例えば5~90分であってもよい。
【0038】
乾燥によって形成された乾燥物の粉砕により、架橋重合体粒子の粉体が形成される。粉砕の方法は特に限定されない。例えば、遠心粉砕機、ローラーミル、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機、及び容器駆動型ミル等の粉砕機を用いて乾燥物を粉砕することができる。
【0039】
粉砕により得られた粉体を分級してもよい。分級は、粒子群(粉体)を、粒度分布の異なる2以上の粒子群に分ける操作のことを意味する。分級後の粉体の一部を再度、粉砕及び分級してもよい。
【0040】
分級の方法は、特に限定されないが、例えば、スクリーン分級、又は風力分級であってもよい。スクリーン分級は、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法である。スクリーン分級は、例えば振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、又はロータップ式振とう器を用いて行うことができる。風力分級は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法である。
【0041】
粉砕、及び必要により分級を経て得られる架橋重合体粒子の粉体の中位粒子径が、例えば200~500μm、又は300~500μmであってもよい。分級によって得られた、中位粒子径の異なる2以上の粉体を混ぜ合わせることによって、粒度分布を調整してもよい。
【0042】
架橋重合体粒子の粉体を表面架橋してもよい。架橋重合体粒子の粉体と架橋剤溶液との混合物を加熱することにより、主に架橋重合体粒子の表面近傍の架橋重合体が表面架橋剤によって架橋される。
【0043】
架橋剤溶液は、水、及び水に溶解した表面架橋剤を含有する溶液であることができる。架橋剤溶液に含まれる溶媒は、実質的に水のみであってもよい。水以外の溶媒の割合が、架橋剤溶液の質量を基準として、25質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
【0044】
架橋剤溶液に含まれる表面架橋剤の例としては、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン等のポリオール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、及び3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。これらの表面架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤が、アルキレンカーボネート化合物、ポリオール化合物、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。2種の表面架橋剤を併用する場合、表面架橋剤におけるアルキレンカーボネート化合物の比率は、表面架橋剤の総質量を基準として15~95質量%、20~80質量%、25~60質量%、又は30~45質量%であってもよい。表面架橋剤におけるポリオール化合物の比率が、表面架橋剤の総質量を基準として30~100質量%、40~90質量%、50~80質量%、又は55~70質量%であってもよい。
【0045】
表面架橋剤の量は、架橋重合体粒子中の架橋重合体を構成する単量体単位1モル当たり、0.01~40ミリモル、0.1~30、又は1~20ミリモルであってもよい。
【0046】
表面架橋のための加熱温度及び加熱時間は、表面架橋剤の種類等を考慮して、架橋反応が適切に進行するように調整される。例えば、表面架橋のための加熱温度が80℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上、又は180℃を超えていてもよく、190℃以上であってもよい。表面架橋のための加熱温度が250℃以下であってもよい。表面架橋のための加熱時間は、例えば5~90分であってもよい。
【0047】
表面架橋された架橋重合体粒子は、必要により更に乾燥してもよいし、分級してもよい。架橋重合体粒子の表面に無機粒子を付着させてもよい。無機粒子の例としては、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0048】
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水能は、例えば、40g/g以上、45g/g以上、50g/g以上、又は55g/g以上であってよく、75g/g以下、70g/g、65g/g以下、又は60g/g以下であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水能は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0049】
吸水性樹脂粒子の鉄入り生理食塩水の吸水能は、例えば、35g/g以上、37g/g以上、又は39g/g以上であってよく、45g/g以下又は40g/g以下であってよい。吸水性樹脂粒子の鉄入り生理食塩水の吸水能は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。鉄入り生理食塩水は、鉄イオンを鉄入り生理食塩水の全質量を基準として、50質量ppm含有する生理食塩水である。
【0050】
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水能(X)に対する、鉄入り生理食塩水の吸水能(Y)の比率(Y/X×100)は、例えば、59質量%以上、61質量%以上、70質量%以上、71質量%以上、72質量%以上であってよく、100質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0051】
製造された吸水性樹脂粒子は、例えば、おむつ等の吸収性物品を構成する吸収体を形成するために用いられる。
【0052】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法によれば、鉄を含む水溶液の吸水性に優れる吸水性樹脂粒子を製造することができる。鉄を含む水溶液としては、例えば、人尿、血液、又は、これらのうち少なくとも1種を含む溶液(例えば、医療廃液)が挙げられる。
【0053】
本発明の一実施形態として、架橋重合体及び水を含む含水架橋重合体から水を除去して、架橋重合体を含む乾燥物を形成する乾燥工程を含む、吸水性樹脂粒子の製造方法において、含水架橋重合体にイミダゾリン化合物を含有させることを含む、吸水性樹脂粒子の鉄を含む水溶液の吸水性向上方法が提供される。本発明の他の実施形態として、イミダゾリン化合物を有効成分とする、吸水性樹脂粒子の鉄を含む水溶液の吸水性向上剤が提供される。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
重合
内容積2Lのセパラブルフラスコに95.13g(1.32モル)のアクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内のアクリル酸に、撹拌しながらイオン交換水79.14gを加えた。次いで、氷浴下で83.13gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、76mol%のアクリル酸が中和された単量体濃度45質量%のアクリル酸のナトリウム部分中和液を調製した。
【0056】
調製されたアクリル酸のナトリウム部分中和液252.86gと、イオン交換水38.67gと、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.27g(日油株式会社、ブレンマーADE-400A)と、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15g(東京化成工業社)とを、フッ素樹脂コーティングされたステンレスバット(開口部の内寸法:175mm×130mm、底面の内寸法:155×110mm、高さ:30mm)内に入れた。1個の撹拌子(直径8mm、長さ45mm、リング無し)をステンレスバットの中心部に設置し、撹拌することにより、均一な液状の混合物(単量体水溶液)を形成させた。混合物の温度を測定するための温度計をステンレスバット内の中心部に設置した。その後、ステンレスバットの開口をポリエチレンフィルムでカバーした。混合物の温度を25℃に調整した後、混合物に挿入した管から窒素ガスをバブリングすることにより、溶存酸素量が0.1ppm以下になるまで反応系を窒素置換した。次いで、混合物を300rpmで撹拌しながら反応系内より窒素置換用の管を抜き、濃度2質量%の過硫酸カリウム水溶液8.71g(0.644ミリモル)、濃度0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液0.98gを、注射器(HENKE SASS WOLF社製3mL容ディスポシリンジ、テルモ株式会社製注射針)を用いてステンレスバット内の混合物に滴下した。
【0057】
L-アスコルビン酸水溶液を滴下後、直ちに重合反応が開始した。L-アスコルビン酸水溶液の滴下終了から2分後に、撹拌を停止した。重合反応の進行にともなって反応液の粘度が増加していった後、混合物がゲル化した。L-アスコルビン酸水溶液の滴下終了から9分後の時点で、混合物の温度を測定する温度計は、最大値の68℃を示した。その後、反応液のゲル化によって形成された、水及び重合体を含む含水架橋重合体が入ったステンレスバットを75℃の水浴に浸し、その状態で含水架橋重合体を20分間熟成させた。
熟成終了後の含水架橋重合体の全量は297.33gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は60%、固形分量は118.93gであった。
【0058】
粗砕
ゲル化した混合物である含水架橋重合体をステンレスバットから取り出し、直ちに約5cm幅に裁断した。裁断された含水架橋重合体を、ミートチョッパー(喜連ローヤル社製、12VR-750SDX)によって粗砕した。
ミートチョッパーの混錬室の端部に装着されたプレートの複数の円形の吐出孔から、含水架橋重合体の細長い構造体を含む粗砕物が吐出された。吐出孔の直径は6.4mmであった。含水架橋重合体の投入から5分間、ミートチョッパーによる粗砕を5分間継続した。得られた粗砕物は、幅4~6mmの複数の細長い構造体によって形成された集合体であった。
【0059】
乾燥及び粉砕
得られた粗砕物を目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げて配置し、180℃で30分間の熱風乾燥により乾燥して、乾燥物を得た。乾燥物を遠心粉砕機(Retsch社製、ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)を用いて粉砕した。粉砕により得られた粉体を、目開き850μmの篩及び180μmの篩を用い、1分間の振とうによって篩分けした。分級により、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画として架橋重合体粒子(1)を得た。
【0060】
表面架橋
フッ素樹脂製の碇型撹拌翼を備えた内径11cmの丸底円筒型セパラブルフラスコに架橋重合体粒子(1)30gを量りとった。次に、300rpmで撹拌しながら、エチレンカーボネート0.094g、プロピレングリコール0.150g、及び、脱イオン水0.600gを混合して得られた表面架橋剤溶液をパスツールピペットにてセパラブルフラスコ内に滴下し、5分間攪拌することによって混合物を得た。この混合物を200℃で35分間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を目開き850μmの篩を用いて分級した。分級により、目開き850μmの篩を通過した吸水性樹脂粒子(1)を得た。
【0061】
(実施例2)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水39.48g、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて2-プロピル-2-イミダゾリン0.35gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。熟成終了後の含水架橋重合体の全量は296.99gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は60%、固形分量は118.80gであった。
以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(2)を得た。
【0062】
(実施例3)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水39.71g、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて2-プロピル-2-イミダゾリン0.115gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。熟成終了後の含水架橋重合体の全量は298.06gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は59%、固形分量は122.20gであった。
以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(3)を得た。
【0063】
(実施例4)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水39.77g、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて2-プロピル-2-イミダゾリン0.058gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。熟成終了後の含水架橋重合体の全量は298.85gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は60%、固形分量は119.54gであった。
以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(4)を得た。
【0064】
(実施例5)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水39.79g、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて2-プロピル-2-イミダゾリン0・029gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。熟成終了後の含水架橋重合体の全量は299.34gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は60%、固形分量は119.74gであった。
以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(5)を得た。
【0065】
(実施例6)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水40.47g、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて濃度20%質量の2-プロピル-2-イミダゾリン水溶液0.029gを用いたこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。熟成終了後の含水架橋重合体の全量は297.02gであった。この時、含水架橋重合体の含水率は59%、固形分量は121.78gであった。
以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(6)を得た。
【0066】
(比較例1)
イオン交換水38.67gに代えてイオン交換水39.82gを用いたこと、2-プロピル-2-イミダゾリン1.15gに代えて2-プロピル-2-イミダゾリンを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして粗砕に供する含水架橋重合体を得た。以降の工程も実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(7)を得た。
【0067】
<生理食塩水吸水能>
生理食塩水吸水能は下記手順により25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。容積500mLのビーカーに0.9%生理食塩水250gを量り取った。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×長さ30mm、リング無し)を用いて600rpmで撹拌させながら、ママコが発生しないように吸水性樹脂粒子1.0gを生理食塩水に分散させた。撹拌させた状態で60分間放置することにより粒子を充分に膨潤させることにより、膨潤ゲルを含む分散液を得た。続いて、目開き75μm標準篩の質量Wa[g]を測定した後、上述の分散液をこの標準篩に通した。そして、水平に対して約30度の傾斜角に篩を傾けた状態で30分間放置することにより余剰の水分を除去した。膨潤ゲルが残存した篩の質量Wb[g]を測定し、下記式により生理食塩水吸水能Wc[g/g]求めた。
生理食塩水吸水能Wc[g/g]=(Wb-Wa)/1.0
【0068】
<鉄を含む水溶液の吸収性の評価>
鉄を含む水溶液の吸収性は、鉄入り食塩水の吸水能を測定することにより実施した。鉄入り生理食塩水吸水能は下記手順により25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。0.9%生理食塩水999.75gへ硫酸鉄(II)七水和物0.249gを添加し、溶解させた。これにより、鉄入り生理食塩水(鉄イオン濃度50ppm)1000gを作製した。
【0069】
容積500mLのビーカーに鉄入り生理食塩水250gを量り取った。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×長さ30mm、リング無し)を用いて600rpmで撹拌させながら、ママコが発生しないように吸水性樹脂粒子1.0gを生理食塩水に分散させた。撹拌させた状態で60分間放置することにより粒子を充分に膨潤させることにより、膨潤ゲルを含む分散液を得た。続いて、目開き75μm標準篩の質量Wg[g]を測定した後、上述の分散液をこの標準篩に通した。そして、水平に対して約30度の傾斜角に篩を傾けた状態で30分間放置することにより余剰の水分を除去した。膨潤ゲルが残存した篩の質量Wh[g]を測定し、下記式により鉄入り生理食塩水吸水能Wi[g/g]を求めた。
鉄入り生理食塩水吸水能Wi[g/g]=(Wh-Wg)/1.0
【0070】
<吸水能維持率>
下記式により吸水能維持率[%]を算出した。
吸水能維持率[%]=鉄入り生理食塩水吸水能Wi/生理食塩水吸水能Wc×100
【0071】
【0072】
表1に示される通り、乾燥工程において、含水架橋重合体が2-プロピル-2-イミダゾリンを含むことによって、得られる吸水性樹脂粒子の鉄を含む水溶液の吸水能が向上することが確認された。