(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088111
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
C08J3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200371
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】淡路 直矢
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070DA42
4F070DA48
4F070DB05
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC07
(57)【要約】
【課題】吸水速度が速い造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法が開示される。当該方法は、架橋重合体を含有する乾燥ゲルを粉砕する工程と、粉砕された乾燥ゲルを、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む重合体微粉と、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群とに分級する工程と、重合体微粉と水を含む水性液とを含む混合物を混錬することにより、重合体微粉の凝集物を形成する工程と、凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた凝集物を得る工程と、乾燥させた凝集物を粉砕して、造粒粒子を形成する工程と、を含む。乾燥ゲルが水を含有し、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率が、乾燥ゲルの全質量に対して7~13質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、当該方法が、
架橋重合体を含有する乾燥ゲルを粉砕する工程と、
粉砕された前記乾燥ゲルを、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む重合体微粉と、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群とに分級する工程と、
前記重合体微粉と水を含む水性液とを含む混合物を混錬することにより、前記重合体微粉の凝集物を形成する工程と、
前記凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた前記凝集物を得る工程と、
乾燥させた前記凝集物を粉砕して、造粒粒子を形成する工程と、
を含み、
前記乾燥ゲルが水を含有し、粉砕され始める時点における前記乾燥ゲルの含水率が、前記乾燥ゲルの全質量に対して7~13質量%である、方法。
【請求項2】
粉砕され始める時点における前記乾燥ゲルの含水率が、前記乾燥ゲルの全質量に対して7質量%以上10質量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉砕された前記乾燥ゲルの全質量に対する前記目開き180μmの篩を通過する粒子の割合が、6質量%以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。吸水性樹脂粒子の製造工程中に発生した微粉を凝集させて、吸収性物品への適用に適した粒径を有する造粒粒子を形成することがある。造粒粒子は、例えば、水性液を加熱しておき、かつ、該加熱した水性液と吸水性樹脂粉末とを高速混合する工程を含む製造方法によって得ることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の吸水性能向上のために、吸水体が含有する吸水性樹脂粒子の吸水速度が速いことが望ましい。そのため、微粉から形成された造粒粒子の吸水速度も速くすることが求められている。
【0005】
そこで本発明の一側面は、吸水速度が速い造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供する。当該方法は、架橋重合体を含有する乾燥ゲルを粉砕する工程と、粉砕された乾燥ゲルを、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む重合体微粉と、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群とに分級する工程と、重合体微粉と水を含む水性液とを含む混合物を混錬することにより、重合体微粉の凝集物を形成する工程と、凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた凝集物を得る工程と、乾燥させた凝集物を粉砕して、造粒粒子を形成する工程と、を含む。乾燥ゲルが水を含有し、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率が、乾燥ゲルの全質量に対して7~13質量%である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、吸水速度が速い造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。篩はJIS標準篩を意味する。「乾燥」とは、目的のものから水の少なくとも一部を除去することをいう。
【0010】
吸水性樹脂粒子を製造する方法の一実施形態は、架橋重合体を含有する乾燥ゲルを粉砕する工程と、粉砕された乾燥ゲルを、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む重合体微粉と、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群とに分級する工程と、重合体微粉と水を含む水性液とを含む混合物を混錬することにより、重合体微粉の凝集物を形成する工程と、凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた凝集物を得る工程と、乾燥させた凝集物を粉砕して、造粒粒子を形成する工程と、を含む。乾燥ゲルは水を含有し、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率が、乾燥ゲルの全質量に対して7~13質量%である。
【0011】
[重合体微粉]
架橋重合体を含有する乾燥ゲルを粉砕し、粉砕された乾燥ゲルを、粒度分布の異なる2以上の粒子群に分級することによって重合体微粉が回収される。以下、重合体微粉を得る方法の例について詳述する。所定の含水率で水を含有する乾燥ゲルは、例えば、架橋重合体及び水を含む含水ゲル状重合体から、水の一部を除去することによって形成される。含水ゲル状重合体は、例えば、単量体及び水を含む単量体水溶液である反応液中で単量体を重合させることによって形成される。
【0012】
単量体は、エチレン性不飽和単量体を含んでよく、エチレン性不飽和単量体は水溶性エチレン性不飽和単量体であってもよい。エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸及びその塩などのカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体、及び、その第四級化物;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、及び、それらの塩等のスルホン酸系単量体が挙げられる。エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物を含むことができる。不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸等)の塩は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、又はアンモニウム塩であってもよい。
【0013】
酸基を有するエチレン性不飽和単量体(例えば(メタ)アクリル酸)は、酸基が予め中和剤(アルカリ性中和剤)により中和されていてもよい。中和剤の例としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアが挙げられる。中和剤は、これら成分の水溶液であってもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基は、エチレン性不飽和単量体の重合前、重合中、又は重合後に中和してもよい。
【0014】
エチレン性不飽和単量体の中和度は、浸透圧を高めることにより、良好な吸水性能を得やすい観点、及び、安全性を高める観点から、10モル%以上、30モル%以上、50モル%以上、又は60モル%以上であってよく、100モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、又は80モル%以下であってもよい。本明細書において中和度とは、重合に用いられたエチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度を意味する。
【0015】
反応液中の単量体(例えば(メタ)アクリル酸化合物)の含有量は、反応液の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってもよい。反応液中の単量体の含有量は、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0016】
(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、反応液に含まれる単量体の合計量、又は、反応液に含まれるエチレン性不飽和単量体の合計量を基準として、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、又は、99モル%以上であってもよい。反応液に含まれる単量体は、実質的に(メタ)アクリル酸化合物からなる態様、すなわち反応液に含まれる単量体の100モル%が(メタ)アクリル酸化合物である態様であってもよい。
【0017】
反応液は、重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤を含む反応液を加熱又は露光することによって重合反応を開始してもよい。重合開始剤は、光重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、又はこれらの組み合わせであってもよい。重合開始剤が水溶性であってもよい。熱ラジカル重合開始剤は、吸水性能を高めやすい観点から、アゾ系化合物及び過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0018】
アゾ系化合物の例としては、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が挙げられる。アゾ系化合物は、良好な吸水性能が得られやすい観点から、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0019】
過酸化物の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物が挙げられる。過酸化物は、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得やすい観点、及び、吸水性樹脂粒子に含まれる未反応の単量体量を低減しやすい観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び、過硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0020】
重合開始剤の含有量は、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子を得やすい観点、及び、吸水性樹脂粒子に含まれる未反応の単量体量を低減しやすい観点から、単量体(例えば(メタ)アクリル酸化合物)1モルに対して、0.001ミリモル以上、0.005ミリモル以上、0.01ミリモル以上、0.05ミリモル以上、0.1ミリモル以上、0.15ミリモル以上、0.3ミリモル以上、又は0.4ミリモル以上であってもよい。重合開始剤の含有量は、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子を得やすい観点、及び、急激な重合反応を回避しやすい観点から、単量体(例えば(メタ)アクリル酸化合物)1モルに対して、5ミリモル以下、4ミリモル以下、2ミリモル以下、1ミリモル以下、0.9ミリモル以下、0.7ミリモル以下、0.5ミリモル以下、又は0.4ミリモル以下であってもよい。
【0021】
反応液は、還元剤を含有してもよい。還元剤の例としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸が挙げられる。
【0022】
反応液は、酸化剤を含有してもよい。酸化剤の例としては、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸及びその塩、過マンガン酸カリウムが挙げられる。
【0023】
反応液は、単量体の重合により生成する重合体を架橋するための架橋剤を含有してもよい。単量体水溶液に含まれる架橋剤を内部架橋剤ということがある。内部架橋剤は、反応性官能基(例えば重合性不飽和基)を2個以上有する化合物であってもよい。内部架橋剤の例としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上記ポリオールと不飽和酸(マレイン酸、フマル酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート;ジビニルベンゼン;ペンタエリスリトール;エチレンジアミン;ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0024】
内部架橋剤の含有量は、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子を得やすい観点から、エチレン性不飽和単量体(例えば(メタ)アクリル酸化合物)1モルに対して、0.001ミリモル以上、0.005ミリモル以上、0.01ミリモル以上、0.05ミリモル以上、0.1ミリモル以上、0.13ミリモル以上、0.3ミリモル以上、又は0.5ミリモル以上であってもよい。内部架橋剤の含有量は、良好な吸水性能が得られやすい観点から、5ミリモル以下、4ミリモル以下、3ミリモル以下、2ミリモル以下、1ミリモル以下、又は0.5ミリモル以下であってもよい。
【0025】
反応液は、連鎖移動剤、増粘剤、無機フィラー等を更に含有してもよい。連鎖移動剤の例としては、チオール類、チオール酸類、第二級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸、アクロレインが挙げられる。増粘剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミドが挙げられる。無機フィラーの例としては、金属酸化物、セラミック、粘度鉱物が挙げられる。
【0026】
重合反応中、反応液を撹拌しなくても、撹拌してもよい。重合の形態は、例えば、回分、半連続、又は連続であってもよい。例えば、単量体水溶液を撹拌しない静置重合方式において連続重合を採用する場合、反応容器(例えば、ベルトコンベア状の反応容器)に単量体水溶液を連続的に供給しながら重合反応を行い、連続的に含水ゲル状重合体を得ることができる。
【0027】
重合反応中の反応液の温度、すなわち重合温度は、例えば0~130℃又は10~110℃であってもよい。重合時間は、例えば1~200分又は5~100分であってもよい。
【0028】
反応液が重合反応の進行にともなってゲル化し、含水ゲル状重合体が形成される。形成された含水ゲル状重合体から水の一部を除去することにより、乾燥ゲルが形成される。含水ゲル状重合体を粗砕することと、粗砕された含水ゲル状重合体中の水の一部を除去することとを含む方法によって、乾燥ゲルを形成してもよい。含水ゲル状重合体を粗砕してから乾燥することで、含水ゲル状重合体からより効率的に水を除去することができる。
【0029】
含水ゲル状重合体の粗砕は、例えば、ニーダー(加圧式ニーダー、双腕型ニーダー等)、ミートチョッパー、カッターミル、又はファーマミルのような粗砕機を用いて行ってもよい。塊状の含水ゲル状重合体を例えば5cm角程度に予め裁断し、裁断された含水ゲル状重合体を粗砕してもよい。ニーダー等の装置によって撹拌重合により重合反応が行われる場合、単量体の重合と含水ゲル状重合体の粗砕とを実質的に同時に行ってもよい。粗砕された含水ゲル状重合体の最小幅は、例えば、0.2~15mm、又は1.0~10mmであってもよい。粗砕された含水ゲル状重合体の最大幅は、0.2~200mm、又は1.0~150mmであってもよい。
【0030】
含水ゲル状重合体から水を除去する、すなわち乾燥する方法は、例えば自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、凍結乾燥又はこれらの組み合わせであってもよい。常圧下又は減圧下で含水ゲル状重合体又はその粗砕物から水を除去してもよい。用いられる乾燥装置は、例えば熱風乾燥機、減圧乾燥機、通気ベルト式乾燥機、通気バンド型乾燥機、回転型通気乾燥機、攪拌乾燥機、流動層乾燥機、振動流動乾燥機、又は減圧乾燥機であってもよい。
【0031】
含水ゲル状重合体を乾燥させるための加熱温度(乾燥温度)、及び乾燥時間は、所定の含水率の乾燥ゲルが形成されるように調整することができる。例えば、乾燥温度が最大で80℃以上、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、170℃以上、又は180℃以上であってもよく、最大で250℃以下、220℃以下、200℃以下、190℃以下、又は180℃以下であってもよい。乾燥温度は、乾燥装置の設定温度、又は、含水ゲル状重合体の暴露雰囲気温度であってもよい。乾燥時間は、例えば15分以上、20分以上、25分以上、又は30分以上であってよく、120分以下、90分以下、又は60分以下であってもよい。
【0032】
乾燥される前の含水ゲル状重合体の含水率は、得られる乾燥ゲルの含水率を調整しやすい観点、及び、含水ゲル状重合体中の固形性分の劣化を抑制する観点から、含水ゲル状重合体の全質量に対して50質量%以上、又は55質量%以上であってもよく、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。乾燥される前の含水ゲル状重合体の含水率は、例えば、架橋重合体の重合に用いる単量体水溶液の水分量により調整することができる。
【0033】
乾燥ゲルを粉砕することで、架橋重合体を含む重合体粒子の粉体が形成される。粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率が7~13質量%であり、当該乾燥ゲルを粉砕して得られる重合体微粉から造粒粒子を形成することで、吸水速度の速い造粒粒子を含む吸水性樹脂粒子を製造することができる。乾燥ゲルの含水率が7質量%以上であると、乾燥ゲルの軟性が高くなることで粉砕されにくくなり、乾燥ゲルの粉砕時間が長くなる傾向がある。乾燥ゲルの粉砕時間が長くなることで、乾燥ゲルを粉砕して得られる重合体微粉と水とを混錬する際に、重合体微粉から溶出される成分(水可溶分)が多くなる。水可溶分が多くなることでより混錬されやすくなり、比表面積が大きな造粒粒子を得やすくなると推察される。乾燥ゲルの含水率が13質量%以下であると、乾燥ゲルを粉砕して得られる重合体微粉の粒子径が小さくなる傾向がある。重合体微粉の粒子径が小さくなることで、重合体微粉と水とを混錬しやすくなるため、比表面積が大きな造粒粒子を得やすくなると推察される。そして、造粒粒子の比表面積が大きくなることで、造粒粒子(又は吸水性樹脂粒子)の吸水速度が速くなる。ただし、上記の効果が得られる理由はこれらの内容に限定されない。
【0034】
粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率は、得られる造粒粒子の吸水速度がより速くなる観点、及び、乾燥ゲルを粉砕及び分級した際に、得られる重合体微粉の割合が高くなる観点から、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、10質量%未満、9質量%以下、又は8質量%以下であってもよい。同様の観点から、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率は、7~12質量%、7~11質量%、7~10質量%、7質量%以上10質量%未満、7~9質量%、又は7~8質量%であってもよい。粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率は、7.5質量%以上、8質量%以上、又は9質量%以上であってもよい。
【0035】
通常、粉砕機に投入する直前の乾燥ゲルから採取された測定サンプルの含水率を、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率とみなすことができる。より具体的には、含水率を測定するための乾燥ゲルの測定サンプルを採取してから乾燥ゲルが粉砕され始めるまでの時間が15分以内であるとき、測定される含水率を、粉砕され始める時点における乾燥ゲルの含水率とみなすことができる。測定サンプルが精秤されてから乾燥ゲルが粉砕され始めるまでの間、乾燥ゲルは、25±2℃、湿度50±10%の環境下にあってもよい。採取された測定サンプルは、含水率の測定のために乾燥前の質量が測定されるまでの間、25±2℃、湿度50±10%の環境下にあってもよい。
【0036】
乾燥ゲルの含水率は、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)の手順に従って測定することができる。
(1)測定サンプル20.0gを、恒量W1(g)のステンレスバットに量り取り、測定サンプルとステンレスバットの合計質量W2(g)を精秤する。
(2)内温を200℃に設定した熱風乾燥機中で、ステンレスバット上の測定サンプルを2時間乾燥させる。
(3)乾燥後の測定サンプルを、その温度が25±℃になるまでデシケーター中で放冷した後、ステンレスバット及び測定サンプルの合計質量W3(g)を精秤する。
(4)以下の式から、測定サンプルの含水率を算出する。
含水率(質量%)=[{(W2-W1)-(W3-W1)}/(W2-W1)]×100
【0037】
乾燥ゲルの含水率は、13質量%を超える含水率(例えば含水率50~70質量%)の含水ゲル状重合体から、水を除去して含水率を7~13質量%にしてもよい。あるいは、含水ゲル状重合体から含水率が7質量%未満となるまで水を除去し、その後、吸湿等によって含水率が7~13質量%となった乾燥ゲルを粉砕してもよい。乾燥ゲルの含水率は、含水ゲル状重合体を乾燥する際の乾燥温度、乾燥時間等により調整することができる。
【0038】
乾燥ゲルは、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む粉体が形成されるように粉砕される。乾燥ゲルの粉砕には、例えば、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ロータミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)などの粉砕機を使用することができる。粉砕機は、粒子の最大粒子径を制御する開口部を有する粒子出口を備えていてもよい。粒子出口は、例えば、多孔板、スクリーン、又はグリッドであってもよい。開口部の最大径は0.1~5mm、0.3~3.0mm、又は0.5~1.5mmであってもよい。
【0039】
粉砕された乾燥ゲルは、架橋重合体を含む重合体粒子の粉体であり、これが目開き180μmの篩を通過する粒子を含む重合体微粉と、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群とに分級される。重合体微粉は、分級前の粉体のうち、相対的に小さい粒子径を有する粒子の分画であり、主として、目開き180μmの篩を通過する粒子を含む。重合体微粉は180μmの篩を通過しない粒子を更に含んでいてもよい。重合体微粉全量に対する目開き180μmの篩を通過する粒子の質量割合は、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。重合体微粉全量に対する目開き180μmの篩を通過する粒子の質量割合は、100質量%以下であってもよい。
【0040】
ここで、「目開き180μmの篩を通過する粒子」は、目開き180μmのJIS標準篩に粉砕後に得られた重合体粒子を入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じた条件で10分間分級した後、目開き180μmの篩を通過した粒子を意味する。
【0041】
粉砕された乾燥ゲルの分級は、例えば、篩分け、スクリーン分級、又は風力分級等の方法によって行うことができる。篩分けの場合、例えば、目開き106~180μmの最下段の篩と、最下段の篩の目開きよりも大きい目開きの最上段の篩とを含む2以上の篩の組み合わせによって、粉砕された乾燥ゲルを分級することができる。その場合、最下段の篩を通過した粒子を重合体微粉として回収してもよい。最下段の篩の目開きは、180μmであってもよいがこれに限られず、例えば120~180μmであってもよい。各篩上に残った粒子から構成される粒子群を、目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群として回収することができる。この粒子群は、2以上の篩のうち、一部又は全部の篩上に残った粒子の混合物であることができる。例えば、最上段の篩上に残った粒子が粒子群から排除されてもよい。最上段の篩の目開きは、例えば850~1000μmであってもよい。目開き180μmの篩を通過しない粒子を含む粒子群は、造粒を必要とせずに、吸水性樹脂粒子の製品を得るために用いることができる。粉砕された乾燥ゲルの分級はロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて行ってもよい。
【0042】
粉砕された乾燥ゲルの全質量に対する、目開き180μmの篩を通過する粒子の割合は、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、30質量%未満、27質量%以下、又は25質量%以下であってもよい。目開き180μmの篩を通過する粒子の割合が大きいと、より効率的に造粒粒子を得ることができる。
【0043】
[造粒粒子]
重合体微粉と水を含む水性液とを含む混合物を混錬することにより、重合体微粉の凝集物を形成する工程と、凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた凝集物を得る工程と、乾燥させた凝集物を粉砕して、造粒粒子を形成する工程とを含む方法によって、造粒粒子を得ることができる。
【0044】
造粒のために重合体微粉と混合される水性液は、水に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。水性液が含み得るその他の成分の例としては、水溶性塩、水溶性の単量体、架橋剤、及び親水性有機溶媒が挙げられる。架橋剤は、例えば、内部架橋剤又は後述の表面架橋剤と同様の化合物から選択することができる。水性液中の水の割合は、水性液の質量を基準として90~100質量%であってもよい。
【0045】
重合体微粉と水とを混合する方法は、特に限定されないが、例えば、重合体微粉に対して、水を少量ずつ添加してもよく、水の全量を一度に添加してもよい。噴霧により水を重合体微粉に添加してもよく、水蒸気を重合体微粉に添加してもよい。
【0046】
重合体微粉と混合される水性液の量は、重合体微粉と水性液とを含む混合物を均一に混錬しやすい観点から、重合体微粉の乾燥固形分100質量部に対して50質量部以上、70質量部以上、90質量部以上、又は100質量部以上であってもよい。水性液の量は、凝集物の効率的な乾燥の観点から、重合体微粉の乾燥固形分100質量部に対して150質量部以下、130質量部以下、又は110質量部以下であってもよい。「重合体微粉の乾燥固形分」は、重合体微粉のうち水を除いた部分の質量を意味する。
【0047】
重合体微粉と水性液とを含む混合物を混錬する間の水性液の温度は、例えば、0~150℃、10~100℃、又は20~50℃であってもよい。混錬時間は、重合体微粉と水とを均一に混合しやすい観点から、重合体微粉と水性液の全量とを混合してから、10~150秒、20~130秒、又は30~110秒であってもよい。
【0048】
重合体微粉と水性液とを含む混合物は、例えば、撹拌翼を有する各種撹拌機を用いて混錬することができる。撹拌翼は、例えば、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、又はマックスブレンド翼であってもよい。平板翼は、軸(撹拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(撹拌部)とを有する。平板部は、スリット等を有していてもよい。撹拌翼として平板翼を用いることにより、混合物を均一に混練しやすい傾向がある。撹拌型混合機の例としては、モルタルミキサー、連続ニーダー、レディゲミキサーが挙げられる。
【0049】
混練により形成される重合体微粉の凝集物は、架橋重合体及び水を含む塊状物であってよい。凝集物から水の少なくとも一部を除去することにより、乾燥させた凝集物が得られる。凝集物が塊状物である場合、乾燥効率を向上させる観点から、塊状の凝集物を最大幅3~10mm程度に裁断してから、乾燥してもよい。
【0050】
凝集物を乾燥させるための乾燥温度は、80℃以上、100℃以上、120℃以上、140℃以上、又は150℃以上であってもよく、250℃以下、200℃以下、180℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってもよい。凝集物を乾燥させる時間(乾燥時間)は、乾燥温度等の条件に応じて設定してよく、例えば15分以上、30分以上、45分以上、又は60分以上であってよく、120分以下、90分以下、又は60分以下であってもよい。
【0051】
乾燥させた凝集物の含水率は、乾燥させた凝集物の湿潤基準の全質量に対して、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。乾燥させた凝集物の含水率は、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってもよい。「凝集物の湿潤基準の全質量」は、水を含む凝集物の全質量を意味する。
【0052】
乾燥させた凝集物を粉砕することにより、造粒粒子の粉体が形成される。凝集物の粉砕は、上記の乾燥ゲルを粉砕する方法と同様の方法を適用できる。凝集物を粉砕して得られる粉体を、所望の粒度分布を有する造粒粒子を得るために分級して、粒度を調整してもよい。すなわち、本実施形態に係る方法は、乾燥させた凝集物を粉砕する工程と、粉砕された凝集物を分級して、粒度が調整された造粒粒子を得る工程とを含んでよい。粉砕された凝集物を、例えば、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しない粒子群が得られるように分級してもよい。乾燥させた凝集物の粉砕、及び粉砕された凝集物の分級は同時に行われてもよい。
【0053】
(造粒粒子の表面架橋)
本実施形態に係る方法は、造粒粒子を表面架橋する工程を更に含んでもよい。造粒粒子は、例えば、表面架橋を行うための架橋剤(以下「表面架橋剤」ということがある。)を含む架橋剤液と、造粒粒子とを含む混合物を加熱することにより、表面架橋することができる。分級される前、又は分級された後(粒度を調整された後)の造粒粒子を表面架橋することができる。表面架橋された造粒粒子を、乾燥及び/又は分級してもよい。
【0054】
表面架橋剤は、例えば、エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性を有する官能基(反応性官能基)を2個以上含有する化合物であってもよい。表面架橋剤の例としては、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン等のポリオール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、及び3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。
【0055】
表面架橋剤の量は、造粒粒子の表面近傍の架橋密度を適度に高める観点から、造粒粒子の質量から算出される単量体単位の総量1モルに対して、0.0001~4.0ミリモル、又は0.001~2.0ミリモルであってもよい。
【0056】
架橋剤液は、水を含んでいてもよい。架橋剤液における水の量は、造粒粒子100質量部に対して1~20質量部であってもよい。
【0057】
造粒粒子の表面架橋のための加熱温度は、例えば、20~250℃であってもよい。加熱時間は、例えば1~200分又は5~100分であってもよい。
【0058】
本実施形態に係る方法により得られる吸水性樹脂粒子は、造粒粒子の他に、ゲル安定化剤、消臭剤、金属キレート剤、無機粒子等を更に含んでよい。金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸等のポリカルボン酸系化合物及びこれらの塩が挙げられる。無機粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る方法により得られる吸水性樹脂粒子の遠心分離機保持容量(CRC)は、例えば、28g/g以上、30g/g以上、32g/g以上、34g/g以上、36g/g以上、38g/g以上、又は40g/g以上であってよく、70g/g以下、60g/g以下、50g/g以下、45g/g以下、又は43g/g以下であってもよい。
【0060】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、吸水性に優れ、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
(比較例1)
[重合工程]
撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに、439.77g(6.10モル)のアクリル酸を入れた。アクリル酸を撹拌しながらセパラブルフラスコ内にイオン交換水369.69gを加えた後、氷浴下で48質量%水酸化ナトリウムを384.80g滴下することにより、単量体濃度45質量%のアクリル酸ナトリウム部分中和液(アクリル酸の中和度76モル%)1194.26gを調製した。本操作を2回繰り返して、必要量のアクリル酸ナトリウム部分中和液を得た。
【0063】
アクリル酸ナトリウム部分中和液2185.52gにイオン交換水346.66g、及びトリメチロールプロパントリアクリラート(内部架橋剤、東京化成工業株式会社製)1.65gを加えて反応液(単量体水溶液)を得た。反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間窒素ガス置換することにより、溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。次いで、温度計及び窒素吹込み管を備え、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きの内容積5Lのステンレス製双腕型ニーダー(株式会社入江商会製)を用意した。ニーダーに窒素ガス置換後の反応液を供給し、供給した反応液の温度を30℃に保ちながらニーダー内を窒素ガス置換した。ニーダー内を窒素ガス置換した後、反応液を撹拌しながら、30質量%の過硫酸アンモニウム水溶液3.67g(4.83ミリモル)、及び2.0質量%のL-アスコルビン酸水溶液2.75gを加えたところ、約2分後に温度が上昇し始め、重合が開始した。温度上昇を確認後、ジャケット温度を50℃に昇温した。温度上昇から8分後に温度計は最高温度72℃を示し、その後、ジャケット温度を80℃に保ちながら撹拌し続け、重合を開始してから60分後に、生成した含水ゲル状重合体を取り出した。
【0064】
[乾燥工程]
得られた含水ゲル状重合体をミートチョッパー(喜連ローヤル社製、12VR-750SDX)に投入して粗砕した。ミートチョッパーの出口に位置するプレートの穴の径は6.4mmであった。得られた含水ゲル状重合体の粗砕物を目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げ、180℃で35分間熱風乾燥させて、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの含水率は、乾燥ゲルの全質量に対して4.0質量%であった。
【0065】
[粉砕工程]
乾燥ゲルの含水率を測定するための測定サンプルを採取してから15分以内に、乾燥ゲルを遠心粉砕機(Retsch社製ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)に投入し、粉砕して、不定形破砕状の粉砕された乾燥ゲル(以下「粉体(A)」という)を得た。
【0066】
[分級工程]
粉体(A)を目開き850μmの篩、及び、目開き180μmの篩を用いて、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)によりJIS Z 8815(1994)に準じて10分間分級した。分級により、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である粒子群(A1)、及び目開き180μmの篩を通過した分画である重合体微粉(a1)を得た。粉体(A)の全質量に対する重合体微粉(a1)の割合は30質量%であった。
【0067】
[造粒工程]
得られた重合体微粉(a1)25.0gを、撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに入れた。撹拌機には、軸と平板部を備える撹拌翼としてスリットを有する平版翼を取り付けた。撹拌翼の平板部は、軸に溶接されるとともに、湾曲した先端を有しており、軸の軸方向に沿って延びる4つのスリットが形成されていた。4つのスリットは、平板部の幅方向に配列されており、内側の2つのスリットの幅は1cmであり、外側の2つのスリットの幅は0.5cmであった。平板部の長さは、約10cmであり、平板部の幅は約6cmであった。
【0068】
撹拌機の撹拌翼を284rpmで回転させながら、重合体微粉(a1)が入っているフラスコ内に25℃のイオン交換水25.0gを一度に投入した。フラスコ中で重合体微粉(a1)と水との混合物を90秒間混錬することにより、重合体微粉(a1)の凝集物を得た。フラスコから凝集物の全量を取り出し、大きい凝集物は3~10mmの大きさになるよう裁断して、凝集物の最大幅が約10mm以下になるようにした。凝集物の全量を150℃で60分間の熱風乾燥によって乾燥して、乾燥させた凝集物を得た。
【0069】
乾燥させた凝集物を遠心粉砕機(Retsch社製ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)により粉砕し、得られた粉体を目開き850μmの篩、及び目開き180μmの篩で分級した。分級により、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である造粒粒子(A2)を得た。
【0070】
(実施例1)
乾燥工程における熱風乾燥条件を、180℃で27分間に変更したこと以外は比較例1の乾燥工程と同様の方法で、含水ゲル状重合体を乾燥させて、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの含水率は、乾燥ゲルの全質量に対して7.4質量%であった。
【0071】
得られた乾燥ゲルを比較例1の粉砕工程と同様の方法で粉砕して、粉体(B)(粉砕された乾燥ゲル)を得た。粉体(B)を比較例1の分級工程と同様の方法で分級して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である粒子群(B1)、及び目開き180μmの篩を通過した分画である重合体微粉(b1)を得た。粉体(B)の全質量に対する重合体微粉(b1)の割合は24質量%であった。
【0072】
重合体微粉(a1)に代えて重合体微粉(b1)25.9gを用いたこと、イオン交換水25.0gに代えてイオン交換水24.1gを用いたこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の方法で、含水率が比較例1と同じである凝集物を得て、当該凝集物を乾燥及び粉砕して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である造粒粒子(B2)を得た。
【0073】
(実施例2)
乾燥工程における熱風乾燥条件を、180℃で24分間に変更したこと以外は比較例1の乾燥工程と同様の方法で、含水ゲル状重合体を乾燥させて、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの含水率は、乾燥ゲルの全質量に対して9.0質量%であった。
【0074】
得られた乾燥ゲルを比較例1の粉砕工程と同様の方法で粉砕して、粉体(C)(粉砕された乾燥ゲル)を得た。粉体(C)を比較例1の分級工程と同様の方法で分級して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である粒子群(C1)、及び目開き180μmの篩を通過した分画である重合体微粉(c1)を得た。粉体(C)の全質量に対する重合体微粉(c1)の割合は16質量%であった。
【0075】
重合体微粉(a1)に代えて重合体微粉(c1)26.3gを用いたこと、イオン交換水25.0gに代えてイオン交換水23.7gを用いたこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の方法で、含水率が比較例1と同じである凝集物を得て、当該凝集物を乾燥及び粉砕して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である造粒粒子(C2)を得た。
【0076】
(実施例3)
乾燥工程における熱風乾燥条件を、180℃で21分間に変更したこと以外は比較例1の乾燥工程と同様の方法で、含水ゲル状重合体を乾燥させて、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの含水率は、乾燥ゲルの全質量に対して11.8質量%であった。
【0077】
得られた乾燥ゲルを比較例1の粉砕工程と同様の方法で粉砕して、粉体(D)(粉砕された乾燥ゲル)を得た。粉体(D)を比較例1の分級工程と同様の方法で分級して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である粒子群(D1)、及び目開き180μmの篩を通過した分画である重合体微粉(d1)を得た。粉体(D)の全質量に対する重合体微粉(d1)の割合は9質量%であった。粒子群(D1)に対して、粉砕及び分級を繰り返し行うことにより、必要量の重合体微粉(d1)を得た。
【0078】
重合体微粉(a1)に代えて重合体微粉(d1)27.0gを用いたこと、イオン交換水25.0gに代えてイオン交換水23.0gを用いたこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の方法で、含水率が比較例1と同じである凝集物を得て、当該凝集物を乾燥及び粉砕して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である造粒粒子(D2)を得た。
【0079】
(比較例2)
乾燥工程における熱風乾燥条件を、180℃で16分間に変更したこと以外は比較例1の乾燥工程と同様の方法で、含水ゲル状重合体を乾燥させて、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの含水率は、乾燥ゲルの全質量に対して15.2質量%であった。
【0080】
得られた乾燥ゲルを比較例1の粉砕工程と同様の方法で粉砕して、粉体(E)(粉砕された乾燥ゲル)を得た。粉体(E)を比較例1の分級工程と同様の方法で分級して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である粒子群(E1)、及び目開き180μmの篩を通過した分画である重合体微粉(e1)を得た。粉体(E)の全質量に対する重合体微粉(e1)の割合は5質量%であった。粒子群(E1)に対して、粉砕及び分級を繰り返し行うことにより、必要量の重合体微粉(e1)を得た。
【0081】
重合体微粉(a1)に代えて重合体微粉(e1)27.9gを用いたこと、イオン交換水25.0gに代えてイオン交換水22.1gを用いたこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の方法で、含水率が比較例1と同じである凝集物を得て、当該凝集物を乾燥及び粉砕して、目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩を通過しなかった分画である造粒粒子(E2)を得た。
【0082】
以下の手順により、乾燥ゲルの粉砕され始める時点における含有率及び造粒粒子の性能を測定した。測定結果を表1に示す。
【0083】
<乾燥ゲルの含水率(粉砕前含水率)>
25±2℃、湿度50±10%の環境下で、予め恒量としたフッ素樹脂コーティングされたステンレスバット(外寸:185mm×140mm×高さ30mm、質量W1(g))に測定サンプルとして乾燥ゲル20.0gを量り取り、その合計質量W2(g)を精秤した。精秤後、内温を200℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)でステンレスバット及び測定サンプルを2時間乾燥させた。乾燥させたステンレスバット及び測定サンプルをデシケーター中で放冷した後、ステンレスバット及び測定サンプルの合計質量W3(g)を精秤した。以下の式から、測定サンプルの含水率を算出した。測定された粉砕前含水率は、実質的に、粉砕され始める時点の乾燥ゲルの含水率とみなすことができる。
含水率(質量%)=[{(W2-W1)-(W3-W1)}/(W2-W1)]×100
【0084】
<中位粒子径>
粒子の中位粒子径は下記手順により25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。造粒粒子10gを連続全自動音波振動式ふるい分け測定器(ロボットシフター RPS-205、株式会社セイシン企業製)と、JIS規格の目開きが850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、250μm及び180μmの篩と、受け皿とを用いて篩分けした。各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出した。各篩上に残存した粒子の質量百分率を、粒子径の大きいものから順に積算し、篩の目開きと、篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。対数確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を求め、これを中位粒子径とした。測定対象は、得られた造粒粒子のうち、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しない分画であった。
【0085】
<造粒粒子の含水率測定>
造粒粒子の含水率を以下の方法で測定した。測定対象は、得られた造粒粒子のうち、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しない分画であった。予め恒量としたアルミホイルケース(8号、質量W1(g))に測定サンプルとして造粒粒子2.0gを量り取り、その合計質量W2(g)を精秤した。精秤後、内温を200℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)でアルミホイルケース及び測定サンプルを2時間乾燥させた。乾燥させたアルミホイルケース及び測定サンプルをデシケーター中で放冷した後、アルミホイルケース及び測定サンプルの合計質量W3(g)を精秤した。以下の式から、測定サンプルの含水率を算出した。
含水率(質量%)=[{(W2-W1)-(W3-W1)}/(W2-W1)]×100
【0086】
<遠心分離機保持容量>
EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に遠心分離機保持容量(CRC)を下記の手順で測定した。測定は、温度25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で行った。測定対象は、造粒粒子のうち目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しない分画であった。
【0087】
60mm×170mmの大きさの不織布(製品名:ヒートパックMWA-18、日本製紙パピリア株式会社製)を長手方向に半分に折ることで60mm×85mmの大きさに調整した。短手方向の各端部をヒートシールで不織布同士を圧着することにより60mm×85mmの不織布バッグを作製した(長手方向に沿って短手方向の各端部に幅5mmの圧着部を形成した)。不織布バッグの内部に測定対象の粒子を0.2g精秤し収容した。その後、長手方向の折りたたんだ部分とは反対側の端部をヒートシールで圧着することにより不織布バッグを閉じた。
【0088】
不織布バッグが折り重ならない状態で、ステンレス製バット(240mm×320mm×高さ45mm)に入れた生理食塩水1000gの上に不織布バッグを浮かべることにより、不織布バッグの全体を完全に湿らせた。不織布バッグを生理食塩水の上に浮かべてから1分後にスパチュラを用いて不織布バッグを生理食塩水に浸漬させて、ゲル(吸水した造粒粒子)が収容された不織布バッグを得た。
【0089】
不織布バッグを生理食塩水に投入してから30分後(浮かべた時間1分、及び、浸漬させた時間29分の合計)に生理食塩水の中から不織布バッグを取り出した。取り出した不織布バックを遠心分離機(株式会社コクサン製、型番:H-122)に入れ、遠心分離機における遠心力が250Gに到達してから3分間不織布バッグの脱水を行った。脱水後、ゲルの質量を含む不織布バッグの質量Ma[g]を秤量した。測定対象の粒子を収容していない不織布バッグに対して同様の操作を施し、脱水後の不織布バッグの質量Mb[g]を測定した。測定に用いた測定対象の粒子の質量0.2gの精秤値をMc[g]として、下記式に基づきCRC[g/g]を算出した。
CRC=[(Ma-Mb)-Mc]/Mc
【0090】
<吸水速度>
造粒粒子の生理食塩水の吸水速度をVortex法に基づき下記手順で測定した。測定対象は、得られた造粒粒子のうち、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しない分画であった。まず、恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gを内容積100mLのビーカーに量りとった。マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて、ビーカー内の生理食塩水を回転数600rpmで撹拌することにより渦を発生させた。造粒粒子2.0±0.002gを一度に添加した。造粒粒子の添加後から、液面の渦が収束する時点までの時間[秒]を測定して、当該時間を造粒粒子の吸水速度として得た。
【0091】
【0092】
表1より、含水率が7~13質量%である乾燥ゲルを粉砕して得られる重合体微粉を用いることで、吸水速度が速い造粒粒子を得ることができたことを確認した。