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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088115
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220607BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20220607BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220607BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEY
B01J2/10 Z
B01J20/26 D
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200376
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】淡路 直矢
【テーマコード(参考)】
4F070
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070AC12
4F070AE27
4F070AE29
4F070DA44
4F070DA48
4F070DB03
4F070DB08
4F070DB09
4F070DC07
4F070DC15
4G004FA00
4G066AA13D
4G066AA45D
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07A
4G066AC17B
4G066AC21D
4G066AC35B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA28
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066DA20
4G066EA05
4G066FA07
4G066FA21
4G066FA26
4G066FA37
4G066FA38
(57)【要約】
【課題】吸水性樹脂粒子の吸水速度を速めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を3~45質量%含む粒子群を造粒することにより造粒粒子を得ることを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を3~45質量%含む粒子群を造粒することにより造粒粒子を得ることを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記凝集塊状物が、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群の凝集物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝集塊状物が、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群の吸湿により得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させることにより前記凝集塊状物を得ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸湿が100℃未満の環境下で行われる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記吸湿が大気圧下で行われる、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記造粒が、前記粒子群と液体の水とを混合することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野で広く用いられている。吸水性樹脂粒子の製造において発生する微粉は、凝集させて所望の粒子径まで粒子径を増大させて用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-54151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸水性樹脂粒子には、速い吸水速度が求められる。
【0005】
本発明は、吸水性樹脂粒子の吸水速度を速めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法は、目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を3~45質量%含む粒子群を造粒することにより造粒粒子を得ることを含む。
【0007】
上記凝集塊状物は、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群の凝集物であってよい。
【0008】
上記凝集塊状物は、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群の吸湿により得られたものであってよい。
【0009】
上記方法は、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させることにより前記凝集塊状物を得ることを更に含んでもよい。
【0010】
上記方法において、吸湿は100℃未満の環境下で行われてよい。また、吸湿は大気圧下で行われてよい。
【0011】
上記方法において、造粒は、上記粒子群と液体の水とを混合することを含んでよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、吸水性樹脂粒子の吸水速度を速めることができる吸水性樹脂粒子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0015】
本明細書において、篩はJIS標準篩を意味する。本明細書において、目開きXの篩を通過する粒子とは、粒子が目開きXの篩を通過可能な大きさを有していることを意味し、実際に粒子が目開きXの篩を通過することを必要とするものではない。
【0016】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を3~45質量%含む粒子群を造粒することにより造粒粒子を得ることを含む。本実施形態により得られる吸水性樹脂粒子は、造粒粒子を含む。本実施形態に係る製造方法により、凝集塊状物を含まない粒子群を用いて造粒した場合よりも、吸水速度の速い吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0017】
目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物(以下、単に「凝集塊状物」ともいう。)は、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉(以下、単に「架橋重合体微粉」ともいう。)を含む微粉群の凝集物であってよい。凝集塊状物は、例えば、架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させることにより得ることができる。
【0018】
凝集塊状物を含まずに微粉のみを用いて造粒する一般的な方法においては、通常は、造粒時に液体の水を添加した際に微粉群全体が吸水して、それらが凝集していくことで造粒が進む。一方、本実施形態に係る製造方法においては、あらかじめ目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を造粒の原料の一部に用いることで、液体の水を添加した際に、まず該凝集物が吸水し、それを核としてその周囲に微粉が付着するように造粒が進むと考えられる。
【0019】
凝集塊状物の最大辺の長さは、例えば、19mm以下、9.5mm以下、又は2mm以下であってよい。
【0020】
造粒に用いられる粒子群における、凝集塊状物の含有率は、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、43質量%以下、41質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってもよい。
【0021】
造粒に用いられる粒子群は、凝集塊状物のほかに、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を含む。粒子群は更に、目開き180μmの篩を通過せずかつ目開き850μmの篩を通過する架橋重合体粒子を含んでもよい。
【0022】
造粒に用いられる粒子群において、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉の割合は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、82質量%以上、又は85質量%以上であってよい。粒子群において、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉の割合は、97質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、88質量%以下、85質量%以下、82質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0023】
造粒に用いられる粒子群において、目開き180μmの篩を通過せず、かつ目開き850μmの篩を通過する架橋重合体粒子の割合は、例えば、0質量%、1質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量、5質量%以下、又は2質量%以下であってよい。
【0024】
<造粒工程>
粒子群を造粒することにより、造粒粒子が得られる。本明細書において造粒とは、目開き850μmの篩を通過する原料粒子(例えば、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉)を含む粒子群を凝集させて、該原料粒子よりも大きい粒径を有する粒子(例えば、目開き180μmの篩を通過しない造粒粒子)を得ることをいう。粒子群の造粒は、粒子群と水とを混合することにより、粒子群を凝集させて塊状物を得ることを含んでよい。造粒時に粒子群と混合される水は全量が液体であることが好ましい。
【0025】
混合に用いる水には、水溶性塩類、エチレン性不飽和単量体等の水溶性重合性単量体、架橋剤、又は親水性有機溶媒等の成分が添加されていてもよい。すなわち水は水性液の形態であってよい。水性液中の水の割合は、例えば80~100質量%であってよい。架橋剤としては例えば、後述の内部架橋剤又は表面架橋剤と同様の架橋剤を用いることができる。
【0026】
粒子群と水とを混合する際の温度は、例えば10~150℃、20~100℃、又は20~50℃であってよい。混合に用いる水の量は、原料となる粒子群100質量部に対して、例えば、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、80質量部以上、又は90質量部以上であってよく、200質量部以下、150質量部以下、130質量部以下、又は100質量部以下であってよい。粒子群と水とを混合する際には例えば、粒子群に、水を少量ずつ滴下してもよく、水全量を一度に加えてもよく、水を噴霧してもよい。
【0027】
粒子群と水との混合は、例えば、撹拌翼を有する各種撹拌機を用いて行うことができる。撹拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(撹拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(撹拌部)とを有している。さらに、平板部は、スリット等を有していてもよい。撹拌翼として平板翼を用いると、より均一に造粒を行うことができ、比較的大きいサイズの造粒粒子が得られやすい傾向がある。撹拌型混合機としては、例えば、モルタルミキサー、双腕ニーダー、連続ニーダー、レディゲミキサー等が挙げられる。
【0028】
混合をより均一に行う観点から、粒子群と水との混合時間は、粒子群及び水の全量を同一の容器内に投入してから、30~150秒であることが好ましく、60~120秒であることがより好ましい。
【0029】
粒子群と水とを混合することにより、粒子同士が凝集し、塊状物を得ることができる。
【0030】
本実施形態に係る製造方法は、得られた塊状物を乾燥することを含んでもよい。塊状物は、乾燥効率を向上させるため、乾燥に供する前にあらかじめ3~10mm程度に裁断しておいてもよい。
【0031】
乾燥は、例えば常圧下又は減圧下であってよく、乾燥効率を高めるために窒素等の気流下等で行ってもよい。乾燥は、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。常圧下の乾燥のための加熱温度は、例えば70~250℃、又は80~200℃であってよい。乾燥により得られる乾燥物の含水率は、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0032】
本実施形態に係る製造方法は、塊状物又はその乾燥物を粉砕することを含んでもよい。粉砕には、例えば、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(超遠心粉砕機、ハンマーミル、ピンミル、ロータミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)等の粉砕機を使用することができる。粉砕機は、出口側に多孔板、スクリーン、グリッド等の、粉砕粒子の最大粒子径を制御する開口部を有していてもよい。開口部の形状は多角形、円形等であってよく、開口部の最大径は、0.1~5mm、0.3~3.0mm、又は0.5~1.5mmであってよい。
【0033】
造粒して得られた造粒粒子は、必要に応じて分級してもよい。すなわち本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、造粒粒子を分級する工程を含んでもよい。必要に応じて、分級後の粒子を再度粉砕して、粉砕工程と分級工程とを繰り返すなど、複数の分級工程を行ってもよく、後述する表面架橋工程後に分級工程を行ってもよい。分級は、上述の架橋重合体微粉の製造方法における分級方法と同様に行うことができる。
【0034】
[架橋重合体微粉]
次に、凝集塊状物の形成、及び造粒に用いられる粒子群に含まれる架橋重合体微粉について説明する。架橋重合体微粉は、吸水性樹脂粒子の製造において発生し得るものであり、例えばブロック状又は粗粒子状の架橋重合体を粉砕して粒子化する際に発生するものを用いることができる。架橋重合体微粉は、例えば、単量体を重合して含水ゲル状重合体を得た後、該含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕及び分級することで得ることができる。以下、架橋重合体微粉を得る方法の例について詳述する。
【0035】
(重合工程)
まず、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させて含水ゲル状重合体を得る。含水ゲル状重合体は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体が水を含みゲル状となったものであってよい。本実施形態に係る製造方法によって得られる吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0036】
重合は、例えば、水溶液重合法により行うことができる。以下、水溶液重合法による単量体の重合について説明する。
【0037】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びそれらの塩等のカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸系単量体が挙げられる。エチレン性不飽和単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸及びその塩と、他のエチレン性不飽和単量体を共重合させてもよい。この場合、エチレン性不飽和単量体の総量のうち、上記(メタ)アクリル酸及びその塩が70~100モル%用いられることが好ましく、80~100モル%用いられることがより好ましく、90~100モル%用いられることが更に好ましい。エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0039】
エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基があらかじめアルカリ性中和剤により中和されたものを用いることができる。このようなアルカリ性中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。アルカリ性中和剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、酸基の中和は、原料であるエチレン性不飽和単量体の重合前に行ってもよく、重合中又は重合後に行ってもよい。
【0040】
アルカリ性中和剤によるエチレン性不飽和単量体の中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する安全性等に問題が生じないようにする観点から、通常、10~100モル%であることが好ましく、30~90モル%であることがより好ましく、40~85モル%であることが更に好ましく、50~80モル%であることがより更に好ましい。ここで、中和度は、エチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度とする。
【0041】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液の状態で用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%、又は30~50質量%であってよい。
【0042】
エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。なかでも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0043】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含み、エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70~100モル%であるものであってよい。
【0044】
単量体水溶液は、重合開始剤を含んでいてよい。単量体水溶液に含まれる単量体の重合は、単量体水溶液に重合開始剤を添加し、必要により加熱、光照射等を行うことで開始される。重合開始剤としては、光重合開始剤又はラジカル重合開始剤が挙げられ、なかでも水溶性ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物等であってよい。
【0045】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系化合物を挙げることができる。良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られやすいという観点から、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、及び2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物が好ましい。これらのアゾ系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物類;過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。これらの過酸化物のなかでも、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過酸化水素を用いることが好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、又は過硫酸ナトリウムを用いることがより好ましい。これらの過酸化物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
重合開始剤と還元剤とを組み合わせて用いて、レドックス重合開始剤として用いることもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL-アスコルビン酸が挙げられる。
【0048】
吸水性樹脂粒子、及び造粒に用いられる架橋重合体微粉におけるCRC等の性能バランスの観点から、重合開始剤の量は、単量体1モルに対して0.05~1ミリモル、0.08~0.8ミリモル、又は0.1~0.7ミリモルであってもよい。
【0049】
単量体水溶液は、内部架橋剤を含むことが好ましい。内部架橋剤を含むことにより、得られる架橋重合体が、その内部架橋構造として、重合反応による自己架橋に加え、内部架橋剤による架橋を有することができる。
【0050】
内部架橋剤は、(メタ)アクリル基、アリル基、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物を含んでもよい。これら反応性官能基を2つ以上有する化合物を内部架橋剤として用いることができる。(メタ)アクリル基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、及びN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アリル基を有する化合物の例としては、トリアリルアミンが挙げられる。エポキシ基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、及びエピクロロヒドリンが挙げられる。アミノ基を有する化合物の例としては、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。内部架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
内部架橋剤を使用する場合の使用量は、吸水性樹脂粒子及び架橋重合体微粉におけるCRC等の性能バランスを調整する観点から、単量体1モルに対して0.02~1.0ミリモル、0.05~0.8ミリモル、又は0.1~0.6ミリモルであってもよい。
【0052】
単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等の添加剤が含まれていてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。単量体水溶液には、水溶性有機溶媒等の、水以外の溶媒が適宜配合されてもよい。
【0053】
重合方式としては、例えば、単量体水溶液を撹拌しない状態(例えば、静置状態)で重合する静置重合方式、又は反応装置内で単量体水溶液を撹拌しながら重合する撹拌重合方式であってよい。静置重合方式である水溶液静置重合により含水ゲル状重合体を得ることが好ましい。静置重合方式では、重合完了時、反応容器中に存在した単量体水溶液と略同じ体積を占める単一のブロック状の含水ゲル状重合体を得ることができる。
【0054】
製造の形態は、回分、半連続、連続等であってよい。例えば、水溶液静置連続重合においては、ベルトコンベア状の連続重合装置に単量体水溶液を連続的に供給しながら重合反応を行い、例えば帯状等の連続的な形状の含水ゲルを得ることができる。
【0055】
重合温度は、使用する重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高める観点から、0~130℃が好ましく、10~110℃がより好ましい。重合時間は、使用する重合開始剤の種類又は量、反応温度等に応じて適宜設定されるが、1~200分が好ましく、5~100分がより好ましい。
【0056】
含水ゲル状重合体は、乾燥に供する際にあらかじめ粗砕しておくことが好ましい。含水ゲル状重合体を粗砕して得られる粗砕物は、粒子状であってよく、粒子が連なったような細長い形状であってもよい。粗砕物の最小辺のサイズは、例えば、0.1~15mm程度、又は1.0~10mm程度であってよい。粗砕物の最大辺のサイズは、0.1~200mm程度、又は1.0~150mm程度であってよい。粗砕装置としては、例えば、ニーダー(例えば、加圧式ニーダー、双腕型ニーダー等)、ミートチョッパー、カッターミル、ファーマミル等を用いることができ、双腕型ニーダー、ミートチョッパー、カッターミルが好ましい。
【0057】
塊状の含水ゲル状重合体又はその粗砕物中の水を含む溶媒を、加熱及び/又は送風により除去することで、乾燥物を得ることができる。乾燥の方法は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の方法であってよい。乾燥は、例えば常圧下又は減圧下であってよく、乾燥効率を高めるために窒素等の気流下等で行ってもよい。乾燥は、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。常圧下の乾燥のための加熱温度は、例えば70~250℃、又は80~200℃であってよい。乾燥により得られる乾燥物の含水率は、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0058】
続いて、乾燥物を粉砕することにより、架橋重合体微粉を一部に含む粒子群が得られる。粉砕には、例えば、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(超遠心粉砕機、ハンマーミル、ピンミル、ロータミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)等の粉砕機を使用することができる。粉砕機は、出口側に多孔板、スクリーン、グリッド等の、粉砕粒子の最大粒子径を制御する開口部を有していてもよい。開口部の形状は多角形、円形等であってよく、開口部の最大径は、0.1~5mm、0.3~3.0mm、又は0.5~1.5mmであってよい。
【0059】
粉砕は、粒子群の少なくとも一部が、目開き180μmの篩を通過するような粒子径を有する微粉となるように行えばよい。粉砕は、例えば、粒子径180μm以上850μm未満程度の適切な粒子径を有する重合体粒子を得ることを主目的として粉砕しつつ、目開き180μmの篩を通過するような粒子径を有する微粉が一部発生するような方法で行うことができる。
【0060】
粉砕して得られた粒子のうち、目開き180μmの篩を通過する微粉を架橋重合体微粉として用いることができる。例えば上述の粉砕工程において得られる粒子が、目開き180μmの篩を通過しない粒子も含む場合は、当該篩を用いることによって粒子群を分級し、目開き180μmの篩を通過する架橋重合体微粉を得てもよい。分級とは、ある粒子群を粒子径に応じて粒度分布の異なる2つ以上の粒子群に分ける操作のことをいう。
【0061】
分級の方法は、公知の分級方法を使用することができ、例えば、スクリーン分級、又は風力分級であってもよい。スクリーン分級は、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法である。スクリーン分級は、例えば振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、又はロータップ式振とう器を用いて行うことができる。風力分級は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法である。なお、本明細書において、「目開き180μmの篩を通過する粒子」とは、目開き180μmの篩を通過可能な大きさを有する粒子を指し、篩を用いて分級したものに限られない。
【0062】
凝集塊状物の形成に用いられる架橋重合体微粉、及び造粒のための粒子群に含まれる架橋重合体微粉は、それぞれ、同様の製造条件で得られた微粉の集合であってよく、異なる製造条件で得られた微粉、又は同様の製造条件の異なる製造ロットで得られた微粉の混合物であってもよい。
【0063】
凝集塊状物の形成に用いられる架橋重合体微粉、及び造粒のための粒子群に含まれる架橋重合体微粉のCRCは、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、又は45g/g以下であってよく、30g/g以上、33g/g以上、35g/g以上、37g/g以上、又は40g/g以上であってよい。CRCは、EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0064】
凝集塊状物は、例えば、架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させて得ることができる。吸湿させる場合は、100℃未満の環境下で行う。本明細書において吸湿とは、主に気体状の水分を吸うことを意味し、それに付随して気体状の水分が結露して生じた結露水を吸うことも含まれる。架橋重合体微粉は高い含水率まで吸湿が進行すると凝集する性質を有する。吸湿の際には、結露水以外の液体の水を微粉群に添加しないことが好ましい。架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させて得られる凝集塊状物は、造粒時に液体の水を粒子群と混合して得られる塊状物とは異なる。吸湿は、例えば、架橋重合体微粉を含む微粉群を、湿度を有する空気環境下に曝すことにより行うことができる。吸湿中は、架橋重合体微粉を含む微粉群を静置してもよく、微粉群を流動させてもよい。
【0065】
架橋重合体微粉を含む微粉群を吸湿させるための環境(以下、吸湿環境ともいう。)は、例えば、0℃以上、5℃以上、10℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上又は35℃以上であってよく、99℃以下、98℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下又は45℃以下であってよい。吸湿環境は0~90℃であることが好ましく、25~65℃であることがより好ましく、25~45℃であることが更に好ましい。吸湿環境が低いほど、吸湿中の微粉同士の過剰な結着を防ぐことができ好ましい。吸湿環境とは例えば、架橋重合体微粉と湿度を有する空気とが共存する環境であってよく、例えば1つの区切られた空間内、又は開放系の環境であってよい。
【0066】
吸湿環境の相対湿度は例えば、50%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上であってよく、100%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、又は75%未満であってよい。吸湿環境の圧力は大気圧又は大気圧超であってよい。吸湿環境の圧力は、例えば、0.1Mpa以上、又は0.1013Mpa以上、0.11Mpa以上であってよく、1.5Mpa以下、1.2Mpa以下、1.0Mpa以下、0.8Mpa以下、0.6Mpa以下、0.4Mpa以下、0.2Mpa以下、0.15Mpa以下、0.13Mpa以下、0.11Mpa以下であってよい。吸湿中の微粉同士の過剰な結着を防ぐため、吸湿は大気圧下で行われることが好ましい。
【0067】
吸湿に要する時間は特に制限はなく、例えば、1時間以上、2時間以上、5時間以上、10時間以上、1日以上、3日以上、又は1週間以上であってよい。吸湿後の微粉群は造粒に供されるまで保管されておいてよい。
【0068】
例えば架橋重合体微粉を吸湿環境としての容器内に堆積させた場合、典型的には、堆積している架橋重合体微粉層の、空気と触れている表面から吸湿が進行し、架橋重合体微粉層の表面において架橋重合体微粉同士が凝集し、凝集塊状物を形成しやすい。
【0069】
本実施形態に係る製造方法において用いられる凝集塊状物は、造粒時に水及び微粉と撹拌して塊状物を得る際に実質的に崩壊しない程度の強度を有していればよく、上述の方法により得られるものに限られない。
【0070】
[吸水性樹脂粒子]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、粒子の表面架橋を行う工程を含んでもよい。すなわち本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、表面架橋されたものであってもよい。表面架橋は、例えば、表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)を造粒粒子に対して添加して反応させることにより行うことができる。表面架橋剤の添加は、塊状物を粉砕した後のいずれかのタイミングで行えばよく、分級の前又は後に行ってもよい。表面架橋剤を添加し表面架橋処理を行うことにより、造粒粒子の表面近傍の架橋密度が高まるため、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能を高めることができる。
【0071】
造粒粒子への表面架橋剤の添加は、例えば、表面架橋剤溶液の添加、又は表面架橋剤溶液の噴霧添加により行うことができる。表面架橋剤の添加形態は、表面架橋剤を造粒粒子表面に均一に分散する観点から、表面架橋剤を水及び/又はアルコール等の溶媒に溶解し、表面架橋剤溶液として添加することが好ましい。また、表面架橋工程は、1回又は2回以上の複数回に分割して実施してもよい。
【0072】
表面架橋剤は、例えば、エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性を有する官能基(反応性官能基)を2個以上含有するものであってよい。表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらのなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物及び/又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオール類が好ましく、ポリグリシジル化合物がより好ましい。これらの表面架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えばポリグリシジル化合物とポリオール類とを組み合わせて使用してよい。
【0073】
表面架橋剤の添加量は、吸水性樹脂粒子の表面近傍の架橋密度を適度に高める観点から、通常、重合に使用したエチレン性不飽和単量体の総量100モルに対して、好ましくは0.0001~4.0モル、より好ましくは0.001~2.0モルである。
【0074】
表面架橋工程は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して1~200質量部の範囲の水の存在下で行うことが好ましい。適宜、水及び/又はアルコール等の水溶性有機溶媒を用いることで水分量を調整することができる。表面架橋工程時の水分量を調整することによって、より好適に吸水性樹脂粒子の粒子表面近傍における架橋を施すことができる。
【0075】
表面架橋剤の処理温度は、使用する表面架橋剤に応じて適宜設定され、20~250℃であってよい。表面架橋剤による処理時間は、1~200分又は5~100分であってよい。表面架橋は、一度のみ行ってもよく、複数のタイミングで行ってもよい。
【0076】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含んでもよい。追加成分は、吸水性樹脂粒子の内部、表面上又はこれらの両方に配置され得る。
【0077】
吸水性樹脂粒子は、粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を更に含んでいてもよい。本実施形態に係る製造方法は、造粒粒子の表面に無機粒子を付着させる工程を更に含んでもよい。
【0078】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子の形状は、例えば、破砕状、又は破砕状粒子が凝集して形成された形状であってよい。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250μm以上、280μm以上、300μm以上、320μm以上、又は340μm以上であってよく、850μm以下、800μm以下、750μm以下、700μm以下、650μm以下、600μm以下、550μm以下、500μm以下、450μm以下、420μm以下、400μm以下、又は380μm以下であってよい。
【0079】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子の吸水速度は、例えば、42秒以下、40秒以下、38秒以下、37秒以下、36秒以下、35秒以下、33秒以下、又は31秒以下であってよく、27秒以上、29秒以上、31秒以上、又は33秒以上であってよい。吸水速度の測定方法は後述の実施例に示される。
【0080】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子のCRCは、例えば、30g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、又は40g/g以上であってよく、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、又は45g/g以下であってよい。
【0081】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、吸水性に優れ、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【実施例0082】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
<製造例>
[重合工程]
撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに552.25g(7.66モル)のアクリル酸を入れた。このアクリル酸を撹拌しながらセパラブルフラスコ内にイオン交換水464.24gを加えた後、氷浴下で483.22gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、76mol%のアクリル酸が中和された単量体濃度45質量%のアクリル酸ナトリウム部分中和液1499.71gを調製した。
【0084】
アクリル酸ナトリウム部分中和液1323.63gに、イオン交換水202.04g、及びポリエチレングリコールジアクリレート(内部架橋剤、日油株式会社製、製品名:ブレンマーADE-400A)1.39gを加えて反応液(単量体水溶液)を得た。反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間窒素ガス置換することにより、溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。
【0085】
次いで、温度計及び窒素吹込み管を備えた、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付き3L容のステンレス製双腕型ニーダー(株式会社入江商会製)を用意した。該ニーダーに上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながらニーダー内を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、2.0質量%の過硫酸ナトリウム水溶液44.31g(3.72ミリモル)、及び0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液7.58gを加えたところ、約2分後に温度が上昇し始め、重合が開始した。7分後に温度計は最高温度79℃を示し、その後、ジャケット温度を80℃に保ちながら撹拌し続け、重合を開始してから60分後に、生成した含水ゲル状重合体を取り出した。
【0086】
[乾燥工程]
含水ゲル状重合体を喜連ローヤル社製ミートチョッパー12VR-750SDXに順次投入して粗砕した。ミートチョッパーの出口に位置するプレートの穴の径は6.4mmとした。得られた含水ゲル状重合体粗砕物を目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げ、180℃で30分間熱風乾燥して乾燥物を得た。
【0087】
[粉砕工程]
遠心粉砕機(Retsch社製ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)を用いて乾燥物を粉砕することにより、不定形破砕状の粒子群(A)を得た。
【0088】
[分級工程]
目開き850μmの篩及び180μmの篩を用いて粒子群(A)を分級した。分級により、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である架橋重合体粒子(A1)、及び180μmの篩を通過した分画である架橋重合体微粉(a1)を得た。架橋重合体微粉(a1)のCRCは40g/gであり、含水率は4.9%であった。
【0089】
(比較例1)
[造粒工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに入れた。撹拌機には、撹拌翼としてスリットを有する平版翼を取り付けた。この撹拌翼は、軸及び平板部を備えている。平板部は、軸に溶接されるとともに、湾曲した先端を有している。平板部には、軸の軸方向に沿って延びる4つのスリットが形成されている。4つのスリットは平板部の幅方向に配列されており、内側の二つのスリットの幅は1cmであり、外側二つのスリットの幅は0.5cmである。平板部の長さは約10cmであり、平板部の幅は約6cmである。
【0090】
撹拌機の撹拌翼を284rpmで回転させながら、上記フラスコ内に25℃のイオン交換水45.0gを一度に投入した。90秒間上記フラスコ中で架橋重合体微粉(a1)と水とを撹拌することにより、微粉の凝集物である塊状物を得た。フラスコから内容物(塊状物)の全量を取り出した。塊状物のうち、サイズの大きいものを3~10mmの大きさになるよう裁断し、内容物全量が約10mm以下の大きさになるようにした。裁断したものを含む塊状物の全量を150℃で60分間熱風乾燥して、塊状物の粗砕乾燥物を得た。
【0091】
遠心粉砕機(Retsch社製ZM200、スクリーン口径1mm、6000rpm)を用いて粗砕乾燥物を粉砕し、更に目開き850μmの篩及び目開き180μmの篩で分級した。分級により、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A2))を得た。
【0092】
(実施例1)
[保管工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、底面を有するガラス製円筒型容器(内径4.5cm、高さ6cm)内に表面が平らになるように投入した。このとき、容器底面から微粉層表面までの高さは4.5cmであった。微粉を入れた容器を、温度35℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製LHU-113)内に6時間静置することで、粒子群(P1)46.3gを得た。粒子群(P1)中の目開き850μmの篩を通過しない分画(850μm on)、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しない分画(180~850μm)、目開き180μmの篩を通過する分画(180μm pass)の割合は、それぞれ4.7質量%、12.1質量%、83.2質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子を内温200℃に設定した熱風乾燥機で2時間乾燥させ、デシケーター中で放冷した後に質量を測定すると、乾燥減量は22.3質量%であった。
【0093】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P1)46.3gを用いたこと、イオン交換水の投入量を46.3gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A3))を得た。
【0094】
(実施例2)
[保管工程]
静置時間を8時間に変更したこと以外は実施例1の保管操作と同様の操作を行い、粒子群(P2)47.0gを得た。粒子群(P2)中の850μm on、180~850μm、180μm passの割合は、それぞれ7.7質量%、8.0質量%、84.3質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子の乾燥減量を測定すると24.5質量%であった。
【0095】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P2)47.0gを用いたこと、イオン交換水の投入量を47.0gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A4))を得た。
【0096】
(比較例2)
[保管工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、底面を有するガラス製円筒型容器(内径3cm、高さ23cm)内に表面が平らになるように投入した。このとき、容器底面から微粉層表面までの高さは10cmであった。微粉を入れた容器を、温度35℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製LHU-113)内に8時間静置することで、粒子群(P3)45.8gを得た。粒子群(P3)中の850μm on、180~850μm、180μm passの割合は、それぞれ2.6質量%、11.7質量%、85.7質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子の乾燥減量を測定すると20.2質量%であった。
【0097】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P3)45.8gを用いたこと、イオン交換水の投入量を45.8gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A5))を得た。
【0098】
(実施例3)
[保管工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、底面を有するガラス製円筒型容器(内径5.5cm、高さ11cm)内に表面が平らになるように投入した。このとき、容器底面から微粉層表面までの高さは3cmであった。微粉を入れた容器を、温度35℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製LHU-113)内に8時間静置することで、粒子群(P4)48.2gを得た。粒子群(P4)中の850μm on、180~850μm、180μm passの割合は、それぞれ11.8質量%、10.0質量%、78.2質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子の乾燥減量を測定すると24.5質量%であった。
【0099】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P4)48.2gを用いたこと、イオン交換水の添加量を48.2gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A6))を得た。
【0100】
(実施例4)
[保管工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、底面を有するガラス製円筒型容器(内径10cm、高さ2.5cm)内に表面が平らになるように投入した。このとき、容器底面から微粉層表面までの高さは0.9cmであった。微粉を入れた容器を、温度35℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製LHU-113)内に8時間静置することで、粒子群(P5)50.7gを得た。粒子群(P5)中の850μm on、180~850μm、180μm passの割合は、それぞれ23.8質量%、13.1質量%、65.1質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子の乾燥減量を測定すると24.0質量%であった。
【0101】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P5)50.7gを用いたこと、イオン交換水の投入量を50.7gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A7))を得た。
【0102】
(実施例5)
[保管工程]
製造例で得た架橋重合体微粉(a1)45.0gを、底面を有する金属製円筒型容器(内径15cm、高さ3cm)内に表面が平らになるように投入した。このとき、容器底面から微粉層表面までの高さは0.4cmであった。微粉を入れた容器を、温度35℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿機(エスペック株式会社製LHU-113)内に8時間静置することで、粒子群(P6)54.7gを得た。粒子群(P6)中の850μm on、180~850μm、180μm passの割合は、それぞれ40.7質量%、25.7質量%、33.6質量%であった。別途、該保管工程を実施し、850μm on分画の粒子の乾燥減量を測定すると24.3質量%であった。
【0103】
[造粒工程]
架橋重合体微粉(a1)に代えて粒子群(P6)54.7gを用いたこと、イオン交換水の投入量を54.7gに変更したこと以外は、比較例1の造粒工程と同様の操作を行い、850μmの篩を通過し、180μmの篩を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(造粒粒子(A8))を得た。
【0104】
以上の実施例及び比較例で用いた粒子及び得られた粒子について、以下の項目で評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
<遠心分離機保持容量>
EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に遠心分離機保持容量(CRC)を下記の手順で測定した。測定は、温度25℃±2℃、湿度50%±10%の環境下で行った。
【0106】
60mm×170mmの大きさの不織布(製品名:ヒートパックMWA-18、日本製紙パピリア株式会社製)を長手方向に半分に折ることで60mm×85mmの大きさに調整した。長手方向に延びる両辺のそれぞれにおいて不織布同士をヒートシールで圧着することにより60mm×85mmの不織布バッグを作製した(幅5mmの圧着部を長手方向に沿って両辺に形成した)。不織布バッグの内部に測定対象粒子を0.2g精秤し収容した。その後、短手方向に延びる残りの一辺をヒートシールで圧着することにより不織布バッグを閉じた。
【0107】
不織布バッグが折り重ならない状態で、ステンレス製バット(240mm×320mm×45mm)に収容された生理食塩水1000g上に不織布バッグを浮かべることにより、不織布バッグの全体を完全に湿らせた。不織布バッグを生理食塩水に投入してから1分後にスパチュラにて不織布バッグを生理食塩水に浸漬することにより、ゲルが収容された不織布バッグを得た。
【0108】
不織布バッグを生理食塩水に投入してから30分後(浮かべた時間1分、及び、浸漬時間29分の合計)に生理食塩水の中から不織布バッグを取り出した。そして、遠心分離機(株式会社コクサン製、型番:H-122)に不織布バッグを入れた。遠心分離機における遠心力が250Gに到達した後、3分間不織布バッグの脱水を行った。脱水後、ゲルの質量を含む不織布バッグの質量Ma[g]を秤量した。測定対象粒子を収容することなく不織布バッグに対して上述の操作と同様の操作を施し、脱水後の不織布バッグの質量Mb[g]を測定した。下記式に基づきCRC[g/g]を算出した。Mc[g]は、測定に用いた測定対象粒子の質量0.2gの精秤値である。本実施例では、架橋重合体微粉、及び造粒粒子のうち目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しなかった分画を測定対象とした。
CRC=[(Ma-Mb)-Mc]/Mc
【0109】
<吸水速度>
粒子の生理食塩水の吸水速度をVortex法に基づき下記手順で測定した。まず、恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gを内容積100mLのビーカーに量りとった。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて回転数600rpmで撹拌することにより渦を発生させた。測定対象粒子2.0±0.002gを生理食塩水中に一度に添加した。粒子の添加後から、液面の渦が収束する時点までの時間[秒]を測定し、当該時間を粒子の吸水速度として得た。本実施例では、得られた造粒粒子のうち、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しなかった分画を測定対象とした。
【0110】
<中位粒子径>
粒子の中位粒子径は下記手順により25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。粒子の粉体10gを、連続全自動音波振動式ふるい分け測定器(ロボットシフター RPS-205、株式会社セイシン企業製)と、JIS規格の目開き850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、250μm及び180μmの篩と、受け皿とを用いて篩分けした。各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出した。各篩上に残存した粒子の質量百分率を、粒子径の大きいものから順に積算し、篩の目開きと、篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を求め、これを中位粒子径とした。本実施例では、得られた造粒粒子のうち、目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しなかった分画を測定対象とした。
【0111】
<含水率>
造粒粒子の含水率を以下の方法で測定した。
【0112】
あらかじめ恒量(W1(g))としたアルミホイルケース(8号)に測定対象粒子2.0gを量り取り、その合計質量W2(g)を精秤した。精秤された測定対象粒子を、アルミホイルケースごと内温を200℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)で2時間乾燥させた。アルミホイルケースごと測定対象粒子をデシケーター中で放冷した後、アルミホイルケース及び測定対象粒子の合計質量W3(g)を精秤した。以下の式から、測定対象粒子の含水率を算出した。本実施例では、造粒粒子のうち目開き850μmの篩を通過しかつ目開き180μmの篩を通過しなかった分画を測定対象とした。
含水率(質量%)=[{(W2-W1)-(W3-W1)}/(W2-W1)]×100
【0113】
<保管工程後粒子群の粒度分布>
保管工程後の粒子群の粒度分布は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き180μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。保管工程後の粒子群を容器内から全量取り出し、組み合わせた最上の篩に入れ、JIS Z 8815(1994)に準じて分級した。
【0114】
分級後、各目開きの篩上に残存した粒子の合計量に基づき、下記式により、測定に用いた粒子の全量に対する割合を算出した。
180μm通過分画の含有率[質量%]=[(目開き180μmの篩を通過した粒子の量)/(測定に用いた粒子の量)]×100
180~850μm分画の含有率[質量%]=[(目開き850μmの篩を通過し、目開き180μmの篩上に残存した粒子の量)/(測定に用いた粒子の量)]×100
850μm非通過分画の含有率=[(目開き850μmの篩上に残存した粒子の量[g])/(測定に用いた粒子の量)]×100
【0115】
【表1】
【0116】
目開き850μmの篩を通過しない凝集塊状物を所定量含む粒子群を用いて造粒した実施例では、凝集塊状物を含まないあるいは過剰に含まれる粒子群を用いて造粒した比較例よりも、得られる造粒粒子の吸水速度が速くなった。