IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特開2022-88144複合シートおよび複合シートの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088144
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】複合シートおよび複合シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20220607BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220607BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220607BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C08J5/04 CEW
C08L101/02
C08K9/04
H05K1/03 610H
H05K1/03 610N
H05K1/03 610L
H05K1/03 610K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200430
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD07
4F072AD42
4F072AE14
4F072AH03
4F072AH26
4F072AJ16
4F072AJ23
4F072AJ37
4F072AL13
4J002AA001
4J002AA021
4J002AA031
4J002BD152
4J002CC031
4J002CD001
4J002CD201
4J002CH071
4J002CM021
4J002CM041
4J002DL007
4J002EH076
4J002FB267
4J002FD010
4J002FD017
4J002FD140
4J002GF00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、所定の熱硬化性樹脂とを有し、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れた複合シートおよびその製造方法の提供。
【解決手段】カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのマイクロパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、エポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂とを含み、前記含浸焼成クロスに含まれる前記マイクロパウダーの焼成物と前記熱硬化性樹脂が接触している複合シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのマイクロパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、エポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂とを含み、前記含浸焼成クロスに含まれる前記マイクロパウダーの焼成物と前記熱硬化性樹脂が接触している複合シート。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの熱溶融温度が、260から320℃である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、主鎖炭素数1×10個あたり、10個以上5000個以下のカルボニル基含有基を有するポリマーである請求項1または2に記載の複合シート。
【請求項4】
前記マイクロパウダーが、平均粒子径が100μm以下であり、かつ比表面積が1m/g以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂および架橋性ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である請求項1から4のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項6】
硬化剤または無機フィラーを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項7】
前記ガラスクロスが、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、LガラスおよびNEガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種のガラスを含む請求項1から6のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項8】
前記ガラスクロスが、NEガラスを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の複合シート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の複合シートからなるプリプレグ。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の複合シートからなるプリント基板材料。
【請求項11】
カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのマイクロパウダーを含む分散液をガラスクロスに含浸し、加熱して前記パウダーを焼成させ、前記パウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスを得て、前記含浸焼成クロスの表面にエポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂を配置して、前記含浸焼成シートと前記熱硬化性樹脂とを有し、前記含浸焼成クロスに含まれる前記パウダーの焼成物と前記熱硬化性樹脂とが接触している複合シートの製造方法。
【請求項12】
前記分散液が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの液状分散媒を含む請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記配置を、前記熱硬化性樹脂と液状分散媒とを含む液状組成物を前記含浸焼成クロスに含浸し、加熱して、前記液状分散媒を除去して行う、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記配置を、前記熱硬化性樹脂を含むシートと前記含浸焼成クロスを熱圧着して行う、請求項11または12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、所定の熱硬化性樹脂とを有する複合シートおよび該複合シートの製造方法に関する。さらに本発明は該複合シートからなるプリプレグおよびプリント基板材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の分野では、高速通信の技術の発達によりプリント配線基板用の銅張積層体の性能向上が要求されている。テトラフルオロエチレン系ポリマーは耐熱性、電気特性等の物性に優れるため、プリント配線基板へ利用されており、銅張積層体の材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーおよびガラスクロスを含む複合シートが提案されている。
【0003】
特許文献1には、熱硬化性樹脂を含浸させたガラスクロスと、テトラフルオロエチレン系ポリマーのフィルムとをラミネートした複合シートが記載されている。
特許文献2には、液晶性ポリエステルポリマーおよびテトラフルオロエチレン系ポリマーを、ガラスクロスにラミネート、または溶融押出して積層させた複合シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-55226号公報
【特許文献2】特開2007-55054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載の複合シートは、成分間の接着性が未だ充分ではなく、シートが剥離しやすいという課題、シートの緻密性が低下して耐水性が低下しやすいという課題がある。
本発明者らは、鋭意検討し、所定のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成シートと、所定の熱硬化性樹脂を含むマトリックスとを有し、含浸焼成シートに含まれる上記パウダーの焼成物と上記マトリックスが直接接触している複合シートは、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れることを知見し、本発明を完成した。
本発明の目的は、かかる複合シートおよび該複合シートの製造方法の提供である。さらに本発明は該複合シートからなるプリプレグおよびプリント材料基板の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]
カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのマイクロパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、エポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂とを含み、前記含浸焼成クロスに含まれる前記マイクロパウダーの焼成物と前記熱硬化性樹脂が接触している複合シート。
[2]
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの熱溶融温度が、260から320℃である、[1]に記載の複合シート。
[3]
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、主鎖炭素数1×10個あたり、10個以上5000個以下のカルボニル基含有基を有するポリマーである[1]または[2]に記載の複合シート。
[4]
前記マイクロパウダーが、平均粒子径が100μm以下であり、かつ比表面積が1m/g以上である[1]から[3]のいずれか1項に記載の複合シート。
[5]
前記熱硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂および架橋性ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である[1]から[4]のいずれかに記載の複合シート。
[6]
硬化剤または無機フィラーを含む[1]から[5]のいずれかに記載の複合シート。
[7]
前記ガラスクロスが、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、LガラスおよびNEガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種のガラスを含む[1]から[6]のいずれかに記載の複合シート。
[8]
前記ガラスクロスが、NEガラスを含む[1]から[7]のいずれかに記載の複合シート。
[9]
[1]から[8]のいずれか一項に記載の複合シートからなるプリプレグ。
[10]
[1]から[8]のいずれか一項に記載の複合シートからなるプリント基板材料。
[11]
カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのマイクロパウダーを含む分散液をガラスクロスに含浸し、加熱して前記パウダーを焼成させ、前記パウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスを得て、前記含浸焼成クロスの表面にエポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂を配置して、前記含浸焼成シートと前記熱硬化性樹脂とを有し、前記含浸焼成クロスに含まれる前記パウダーの焼成物と前記熱硬化性樹脂とが接触している複合シートの製造方法。
[12]
前記分散液が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの液状分散媒を含む[11]に記載の製造方法。
[13]
前記配置を、前記熱硬化性樹脂と液状分散媒とを含む液状組成物を前記含浸焼成クロスに含浸し、加熱して、前記液状分散媒を除去して行う、[11]または[12]に記載の製造方法。
[14]
前記配置を、前記熱硬化性樹脂を含むシートと前記含浸焼成クロスを熱圧着して行う、[11]または[12]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスと、所定の熱硬化性樹脂とを有し、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れた複合シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー」とは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEとも記す)に基づく単位(以下、TFE単位とも記す)を含むポリマーであり、荷重49Nの条件下、ポリマーの溶融温度よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1から1000g/10分となる温度が存在する溶融流動性のポリマーを意味する。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ポリマーのガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「D50」とは、対象物の平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法によって求められる粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒子の粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「D90」とは、対象物の累積体積粒径であり、「D50」と同様にして求められる粒子の体積基準累積90%径である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、室温下(25℃)で回転数が30rpmの条件下で液状の組成物について測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、液状の組成物を回転数が30rpmの条件で測定して求められる粘度ηを回転数が60rpmの条件で測定して求められる粘度ηで除して算出される値(η/η)である。
「モノマーに基づく単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0009】
本発明の複合シート(以下、「本複合シート」とも記す。)は、カルボニル基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)のマイクロパウダー(以下、「本マイクロパウダー」とも記す。)およびガラスクロスの含浸焼成クロスと、エポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基の含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱硬化性樹脂(以下、「変性硬化性樹脂」とも記す。)とを有し、含浸焼成クロスに含まれるFパウダーの焼成物と、本熱硬化性樹脂とが接触している。
【0010】
本複合シートは、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
Fポリマーは電気特性、電気特性、耐熱性、耐水性等に優れる一方で、溶融粘度が高い。そのため、ラミネートまたは溶融押出にてFポリマーのフィルムをガラスクロスに含浸させても、ガラスクロスの空隙にFポリマーが充分に充填され難い。本発明においては、粒径の小さなマイクロパウダーがガラスクロスに含浸して焼成物を形成しているため、ガラスクロスの表面にFポリマーが緻密に付着しており、ガラスクロスとFポリマーの密着性を向上させている。
【0011】
また、含浸焼成クロスにおけるFポリマーの焼成物は、マイクロパウダーのパッキングにより形成され、その表面にはひだ状の微小凹凸が存在していると考えられる。これにより、Fポリマーの焼成物と変性硬化性樹脂とが入り込んで直接接着するだけなく、Fポリマーのカルボニル基含有基と、変性硬化性樹脂中の所定の官能基とが高度に相互作用して、Fポリマーと変性硬化性樹脂との密着性を向上させている。
その結果、本複合シートは、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性を高度に具備したと考えられる。
【0012】
Fポリマーの溶融温度は、260℃以上320℃以下が好ましく、285℃以上320℃以下がより好ましい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、125℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0013】
Fポリマーとしては、TFE単位とエチレンに基づく単位を含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」とも記す。)に基づく単位(以下、「PAVE単位」とも記す。)を含むポリマー(以下、「PFA」とも記す。)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーまたはTFEとヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を含むポリマー(以下、FEP」とも記す)が好ましく、PFAまたはFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーには、さらに他のコモノマーに基づく単位が含まれていてもよい。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFまたはCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
Fポリマーは、また、カルボニル基含有基を有する。
カルボニル基含有基としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)およびカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが有するカルボニル基含有基の量は、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、主鎖炭素数1×10個あたり、10個以上5000個以下が好ましく、50個以上4000個以下がより好ましく、100個以上2000個以下がさらに好ましい。この場合、本複合シートにおけるFポリマーと変性硬化性樹脂との密着性がより向上し、 本複合シートの電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性がより向上しやすい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、ポリマーの組成または国際公開2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0015】
Fポリマーとしては、溶融温度が260から320℃であり、PAVE単位を含み、全単位に対してPAVE単位を1から5モル%含むポリマーが好ましく、PAVE単位を含み、カルボニル基含有基を有するポリマー(1)がより好ましい。かかるポリマーを含有した場合、本複合シートに加工した時、ガラスクロスの表面にFポリマーが緻密に付着するため、本複合シートの特性が向上しやすい。
【0016】
Fポリマーが有するカルボニル基含有基は、ポリマーが含有する単位に含まれていてもよく、ポリマー主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基としてカルボニル基含有基を有するポリマーや、プラズマ処理、電離線処理や放射線処理によって調製された、カルボニル基含有基を有するポリマーが挙げられる。
【0017】
ポリマー(1)は、全単位に対して、TFE単位を93から98.99モル%、PAVE単位を1から5モル%および極性官能基を有するモノマーに基づく単位を0.01から2モル%、それぞれ含有するのが好ましい。
また、カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
ポリマー(1)の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
【0018】
Fポリマーのフッ素含有量は、70から76質量%であるのが好ましく、74から76質量%であるのがより好ましい。かかるフッ素含有量が高いFポリマーは、Fポリマーの電気物性等の物性に優れる反面、極性が低いため、後述する熱硬化性樹脂との親和性も低い。しかしながら本複合シートで用いられるFポリマーは熱溶融性でありカルボニル基含有基を有し、分散性に優れるため、本複合シートの特性が向上しやすい。
【0019】
本マイクロパウダーは、前記Fポリマーを含有する粒子であり、粒子中のFポリマーの量は、80質量%以上であるのが好ましく、100質量%であるのがより好ましい。
本マイクロパウダーのD50は、20μm以下であるのが好ましく、8μm以下であるのがより好ましく、5μm以下であるのがさらに好ましい。本マイクロパウダーのD50は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、1μm以上であるのがさらに好ましい。また、本マイクロパウダーのD90は、10μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのがより好ましい。本マイクロパウダーのD50およびD90が、かかる範囲にあれば、その表面積が大きくなり、本マイクロパウダーの分散性が一層改良されやすい。
【0020】
本マイクロパウダーは、Fポリマーと異なる他の樹脂または無機物を含有してもよい。
他の樹脂の例としては、芳香族ポリマーが挙げられる。芳香族ポリマーは、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、スチレンエラストマーのような芳香族エラストマー、芳香族ポリアミック酸が挙げられる。
無機物の例としては、酸化物、窒化物、金属単体、合金およびカーボンが好ましく、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物、窒化ホウ素およびステアナイトまたはメタ珪酸マグネシウムが挙げられ、シリカおよび窒化ホウ素が好ましく、シリカがさらに好ましい。
無機物を含む本マイクロパウダーは、Fポリマーをコアとし、無機物をシェルに有するコアシェル構造を有するか、Fポリマーをシェルとし、無機物をコアに有するコアシェル構造を有するのが好ましい。かかる本マイクロパウダーは、例えば、Fポリマーの粒子と、無機物の粒子とを衝突または凝集等により合着させて得られる。
【0021】
本複合シートに含まれる含侵焼成クロスは前記本マイクロパウダーを後述する方法でガラスクロスに含侵後、焼成して得られる。
用いるガラスクロスは、前記Fポリマーとの親和性を高めるためにシランカップリング剤処理を施されたものが好ましい。ガラスクロスの材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられるが、入手が容易である点からEガラス、Sガラス、NEガラスが好ましく、NEガラスがより好ましい。
【0022】
NEガラスの中でも、下記の低誘電率の組成が好ましい。
SiO : 50から60質量%
Al: 10から20質量%
: 20から30質量%
CaO : 0から5質量%
MgO : 0から4重量%
O : 0から0.5質量%
TiO : 0.5から5重量%
(ただし、Rは、Li、NaおよびKのうち、少なくとも1種のアルカリ金属)
繊維の織り方としては平織でも綾織でもよい。ガラスクロスの厚さは通常5から90μmであり、好ましくは10から75μmである。
【0023】
本複合シートに含まれる変性硬化性樹脂はエポキシ基、エチレン性不飽和基、ヒドロキシ基、アミノ基およびカルボニル基の含有基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する。変性硬化性樹脂にはこれら官能基を有するポリマー、これら官能基を有するオリゴマー、およびこれら官能基を有する低分子が含まれる。
変性硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂のようなポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂のようなシアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂のようなマレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、架橋性ポリオレフィン樹脂であって前記官能基を有する樹脂が挙げられる。
【0024】
これら変性硬化性樹脂の中でも前記官能基を有する、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂および架橋性ポリオレフィン樹脂であって前記官能基を有する樹脂が好ましい。
【0025】
ポリフェニレンエーテル樹脂を構成する変性ポリフェニレンエーテル化合物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物が挙げられる。このような変性ポリフェニレンエーテル化合物を含むことによって、低誘電率や低誘電正接などの誘電特性と高い耐熱性とを兼ね備えることができると考えられる。
変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、WO2017/135168号に記載の化合物が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。その具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、およびこれらのハロゲン化物が挙げられる。
これらの中でも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、難燃性、耐熱性の面で好ましい。
これらエポキシ樹脂は、1種または2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0027】
マレイミド樹脂を構成するマレイミド化合物としては、分子中に一個以上のマレイミド基を有する化合物であればよい。具体例としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、o-フェニレンビスシトラコンイミド、m-フェニレンビスシトラコンイミド、p-フェニレンビスシトラコンイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4-ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2-ビス[4-(4-シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-シトラコンイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物が挙げられる。
【0028】
これらのマレイミド化合物は1種または2種以上を適宜混合して使用することも可能である。この中でも、耐熱性に優れるという観点から、BMI-2300(大和化成工業(株)社製)、MIR-3000(日本化薬(株)社製)が挙げられる。
【0029】
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有するフェノール樹脂が挙げられる。例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、重合性不飽和炭化水素基含有フェノール樹脂および水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられる。
【0030】
シアン酸エステル樹脂を構成するシアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)が少なくとも1個置換した芳香族部分を分子内に有すればよい。具体的な化合物としてはWO2017/135168号に記載の化合物が挙げられる。
耐熱性、および誘電率、誘電正接に優れるという観点から、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンのプレポリマーが好ましい。
これらのシアン酸エステル化合物は、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0031】
また、フェノール樹脂をシアネート化したもの並びにこれらのプレポリマー等も好適に用いられる。これらの材料としては、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が挙げられる。
これらのシアン酸エステル化合物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、Ian Hamerton,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,”Blackie Academic & Professionalに記載の手法を用いることができる。
【0032】
ポリイミド樹脂としては芳香族ポリイミドまたは芳香族ポリアミック酸が挙げられる。芳香族ポリイミドの具体例としては、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「ユピア(登録商標)-AT」シリーズ(宇部興産社製)が挙げられる
【0033】
架橋性のポリオレフィン樹脂としてはエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基を有する化合物は、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する化合物が挙げられる。これらは1種または2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0034】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0035】
この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類、同様に(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等も挙げられる。
【0036】
上記ウレタン(メタ)アクリレート類とは、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネート、必要に応じて用いられるその他アルコール類との反応物である。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の糖アルコール(メタ)アクリレート類と、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンメチレンジイソシアネート、およびそれらのイソシアヌレート、ビュレット反応物等のポリイソシアネート等を反応させ、ウレタン(メタ)アクリレート類となる。
【0037】
上記エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、前記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0038】
酸無水物変性エポキシアクリレートとしては、酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレートが挙げられる。
例えば、日本化薬(株)製の、KAYARAD(登録商標)ZCR-6001H、KAYARAD(登録商標)ZCR-6002H、KAYARAD(登録商標)ZCR-6006H、KAYARAD(登録商標)ZCR-6007H、KAYARAD(登録商標)ZCA-601H(以上、商品名)等が挙げられる。また、酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレートとしては、日本化薬(株)製のKAYARAD(登録商標)ZFR-1553H(商品名)が挙げられる。
【0039】
ビニル基を有する化合物としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ビニル基を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマー等のビニルエーテル類が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、α-メチルスチレン、およびこれらのオリゴマー等が挙げられる。その他ビニル化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、ビスアリルナジイミド等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、ビニル基を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマー、α-メチルスチレンのオリゴマー、酸変性ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、ビスアリルナジイミドからなる群より選択される少なくとも一種以上が好ましい。
【0041】
また架橋性のポリオレフィン樹脂として、分子中に架橋性の高い1,2-ビニルを有するスチレンブタジエンコポリマーが挙げられる。
スチレンブタジエンコポリマーの分子量は数平均分子量10000未満が好ましく、相溶性の観点から、2000以上が好ましい。より好ましい数平均分子量は3000から9000である。
【0042】
スチレンブタジエンコポリマーにおいて、その分子中のスチレン含有量が20から50質量%、架橋性1,2-ビニルを有するブタジエン含有量が50から80質量%であることが好ましい。
スチレンブタジエンコポリマー中のスチレンおよびブタジエン含有量は、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR) によって測定することができる。
スチレンブタジエンコポリマーにおいて、ブタジエン中の1,2-ビニル含有量が30 から70モル%であることが好ましい。
スチレンブタジエンコポリマーのブタジエン中の1,2-ビニル基の含有量は、例えば、赤外吸収スペクトル法(モレロ法) によって測定することができる。
【0043】
分子中に架橋性の高い1,2-ビニルを有するスチレンブタジエンコポリマーは、例えば、CRAYVALLEY社製の「Ricon181」、「Ricon100」や「Ricon184」等が挙げられる。
【0044】
本複合シートは前記変性硬化性樹脂とともに硬化剤を含んでもよい。硬化剤は使用する変性硬化性樹脂に応じて適宜、選定される。
本複合シートは硬化剤以外に無機フィラーまたはエラストマーを含んでいてもよい。
無機フィラーとしては、例えば、球状シリカ、硫酸バリウム、酸化ケイ素粉、破砕シリカ、焼成タルク、チタン酸バリウム、酸化チタン、クレー、アルミナ、マイカ、ベーマイト、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、その他の金属酸化物や金属水和物等が挙げられる。このような無機フィラーを含有していると、本複合シートの熱膨張が抑制され、寸法安定性を高めることができる場合がある。
【0045】
前記エラストマーは、ブチレン/イソプレン/ブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマーおよびフッ素系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性エラストマーであるのが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーは、誘電正接が低く、耐熱性にも優れるだけでなく、パウダー分散液中に均一に分散または溶解しやすい。
ブチレン/イソプレン/ブタジエン系エラストマーとしては、ポリブタジエン、ブチルゴム(イソブチレン/イソプレン系ポリマー)が挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンブロックをハードセグメントとして、ポリオレフィンブロックをソフトセグメントとして、それぞれ有するブロックコポリマーが好ましい。それぞれのブロックは、ジブロックまたはトリブロックを形成するのが好ましい。
【0046】
スチレン系エラストマーの具体例としては、SBS(ポリスチレン-ポリブタジエンブロック-ポリスチレン)、SEP(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン)SEEPS(ポリエチレン/ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン-ポリイソプレンブロック-ポリスチレン)が挙げられる。
フッ素系エラストマーとしては、FKM(フッ化ビニリデン系ポリマー)、FEPM(TFE/プロピレン系ポリマー)、FFKM(TFE/PMVE系ポリマー)が挙げられる。なお、TFE/プロピレン系ポリマーとは、TFE単位とプロピレン単位を含むポリマーを意味し、他のフッ素系ポリマーにおける表記も同様の意味を示す。
【0047】
エラストマーのガラス転移温度は、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましい。ガラス転移温度が10℃以下のエラストマーであれば、ゴム弾性が向上し、本複合シートの折り曲げ性がさらに改善する。
また、エラストマーは、溶媒可溶性が好ましいが、溶媒非可溶性であってもよい。後者のエラストマーは、パウダー分散液に分散するエラストマーが好ましい。
【0048】
かかる溶媒非可溶性のエラストマー粒子としては、コアシェル型エラストマー粒子、架橋型エラストマー粒子(架橋型SBS粒子等)が挙げられる。中でも、溶媒非可溶性のエラストマー粒子としては、本複合シートの折り曲げ性をより向上させる観点から、コアシェル型エラストマー粒子が好ましい。
コアシェル型エラストマー粒子は、コア層と、このコア層の表面を被覆するシェル層とを含むエラストマー粒子である。
コアシェル型エラストマー粒子としては、相対的に低いガラス転移温度を有するポリマーで形成されたコア層と、相対的に高いガラス転移温度を有するポリマーで形成されたシェル層とを含むエラストマー粒子が挙げられる。かかるコアシェル型エラストマー粒子のシェル層は、粒子同士の凝集を抑制する効果や、パウダー分散液への分散性を向上する効果を発揮でき、コア層は、優れたゴム弾性を発現する効果(F層に優れた柔軟性を付与する効果)を発揮できる。
【0049】
エラストマー粒子のD50は、10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下が特に好ましく、0.3μm以下が最も好ましい。
【0050】
本複合シートは前記含侵焼成クロスと前記変性硬化樹脂を含有し、前記含侵焼成クロス中のマイクロパウダーの焼成物と前記変性硬化性樹脂とは接触している。マイクロパウダーの焼成物と変性硬化性樹脂は、シランカップリング剤等による接着ではなく、直接接触しているのが好ましい。
【0051】
本複合シートは、前記本マイクロパウダーを含む分散液(以下、本分散液とも記す。)をガラスクロスに含浸し、加熱して前記パウダーを焼成させ、前記本マイクロパウダーおよびガラスクロスの含浸焼成クロスを得て、前記含浸焼成クロスの表面に前記変性硬化性樹脂を配置して得られる(以下、本製造方法とも記す。)。
【0052】
本分散液は前記本マイクロパウダーと液状化合物を含有した液状状態にあるスラリー状またはゾル状の組成物であり、通常、本マイクロパウダーは分散液中に分散している。なお液状とは25℃で粘度が10mPa・s以下の化合物であり、以下も同じである。
液状化合物は本マイクロパウダーを分散または溶解する機能を有する液体であり、25℃で不活性な化合物である。液状化合物は、Fポリマーとの親和性の観点から、極性溶媒であるのが好ましい。
極性溶媒は、水であってもよく、非水系溶媒であってもよい。また、極性溶媒は、非プロトン性極性溶媒であってもよく、プロトン性溶媒であってもよい。また、極性溶媒は、1種を単独で使用してもよく、例えば、水とN-メチル-2-ピロリドンのように、2種以上を混合して使用してもよい。
極性溶媒は、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンがより好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。
【0053】
液状化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、異種の液状化合物は相溶するのが好ましい。
液状化合物の沸点は、125から250℃が好ましい。この範囲の沸点を有する液状化合物を含有する本分散液は、本分散液と前記ガラスクロスと接触させた後、液状化合物を除去する際に、本マイクロパウダーが高度に流動して緻密にパッキングしやすい。その結果、得られる含侵焼成クロス中の本マイクロパウダーの焼成物は緻密な構造となる。
【0054】
本分散液中のFポリマーの含有量は30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。前記含有量は60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。この場合、本分散液の分散性が優れやすく、また得られる複合シートは電気特性と平滑性に優れやすい。
【0055】
本分散液中の固形分は、上記本マイクロパウダーを含有し、前記無機物または他の樹脂を含有する場合はこれらを含む。また、本分散液の固形分とは、得られる含侵焼成クロスにおいて固形成分を形成する物質の総量を意味する。本分散液の全質量を100%として、固形分濃度は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また本分散液の分散性の観点から、固形分濃度は70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。固形分中の本マイクロパウダーの量は、固形分の全質量を100質量%として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。前記量は、100質量%以下が好ましい。
【0056】
本分散液は分散安定性とハンドリング性とを向上させる観点からさらにノニオン性界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤の親水部位は、オキシアルキレン基またはアルコール性水酸基を有するのが好ましい。
オキシアルキレン基は、1種から構成されていてもよく、2種以上から構成されていてもよい。後者の場合、種類の違うオキシアルキレン基は、ランダム状に配置されていてもよく、ブロック状に配置されていてもよい。オキシアルキレン基は、オキシエチレン基が好ましい。
【0057】
界面活性剤の疎水部位は、アセチレン基、ポリシロキサン基、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルケニル基を有するのが好ましい。換言すれば、界面活性剤は、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
かかる界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(株式会社ネオス社製 フタージェントは登録商標)、「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製 サーフロンは登録商標)、「メガファック」シリーズ(DIC株式会社製 メガファックは登録商標)、「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業株式会社製 ユニダインは登録商標)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン株式会社社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合、本分散液中の界面活性剤の含有量は、1から15質量%が好ましい。この場合、成分間の親和性が増し、本組成物の分散安定性がより向上しやすい。
【0058】
本分散液の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。本分散液の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れるため、得られる含侵焼成クロスに任意の厚さを有する本マイクロパウダーの焼成物の層を形成させやすい。
本分散液のチキソ比は、1以上が好ましい。本分散液のチキソ比は、3以下が好ましく、2以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れるだけでなく、その均質性にも優れるため、より緻密な本マイクロパウダーの焼成物の層を形成しやすい。
【0059】
本分散液は、上記成分以外にも、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、各種フィラー等の他の成分をさらに含有してもよい。
【0060】
本分散液を、ガラスクロスに含浸させ、加熱により乾燥後、さらに焼成することで本マイクロパウダーの焼成物がガラスクロスを被覆した含侵焼成クロスが得られる。本分散液をガラスクロスに含浸させる方法は、本分散液にガラスクロスを浸漬する方法、本分散液をガラスクロスに塗布する方法が挙げられる。
【0061】
ガラスクロスには通常、サイジング剤が含まれるため、本分散液をガラスクロスに塗付する前に、サイジング剤の量を熱により低減するのが好ましい。サイジング剤としては、例えば、デンプン、加工デンプン、デキストリン、アミロースなどのデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルアミド-酢酸ビニル共重合体などの合成高分子化合物、シランカップリング剤が挙げられる。
【0062】
低減する場合、ガラスクロスの加熱温度は、サイジング剤が熱により分解または焼失する温度であればよく、例えば300から450℃であり、加熱時間は、例えば5から30分である。これらの加熱条件の範囲では、ガラスクロス中のガラス繊維の劣化を抑制しながらサイジング剤の量を安定して低減できる。ガラス繊維が劣化するとガラスクロスが毛羽立ちしやすくなり、得られる複合シートの強度低下や外観が不良となる場合がある。
【0063】
例えば、サイジング剤の量がサイジング剤を含むガラスクロス全体の重量に対して3質量%未満となるように、ガラスクロスに含まれるサイジング剤の量を低減させるのが好ましい。サイジング剤の量が、サイジング剤を含むガラスクロス全体の重量に対して0.5から3重量%となるようにサイジング剤の量を低減させることが好ましく、0.5から2重量%がより好ましく、0.5から1重量%がさらに好ましい。
【0064】
上記ガラスクロスを本マイクロパウダーの焼成物で被覆することで、ガラスクロスの糸切れ、毛羽立ちを抑えるサイジング効果が得られる。したがってガラスクロスに予め含まれているサイジング剤の量を前記のように低減させても、本分散液がサイジング剤として作用する。
【0065】
前記で得られた含侵焼成クロスの表面に変性硬化性樹脂を配置する。配置の方法は例えば、前記含侵焼成クロス上に硬化前の変性硬化性樹脂を押出し、含侵焼成クロス上で硬化する方法、予め変性硬化性樹脂を含むシートを作成し、該シートと含侵焼成クロスとを接着させる方法、変性硬化性樹脂と液状分散媒を含む液状組成物を含侵焼成クロスに含侵させ、液状分散媒を除去する方法等がある。
【0066】
これら方法の中でも、変性硬化性樹脂と液状分散媒を含む液状組成物を含侵焼成クロスに含侵させ、液状分散媒を除去する方法、または予め変性硬化性樹脂を含むシートを作成し、該シートと含侵焼成クロスとを接着させる方法が、前記本マイクロパウダーの焼成物と変性硬化性樹脂との密着性の観点から好ましい。
【0067】
変性硬化性樹脂と液状分散媒を含む液状組成物を含侵焼成クロスに含侵させる場合、液状組成物を含侵焼成クロスに塗付する、または液状組成物に含侵焼成クロスを浸漬すればよい。
使用される液状分散媒は前記液状化合物と同じ化合物が例示できる。液状分散媒と液状化合物は同じでも異なっていてもよい。
液状分散媒に変性硬化性樹脂を溶解または分散させ、得られた液状組成物を含侵焼成クロスに塗付し、乾燥により液状分散媒を除去し、必要に応じてさらに変性硬化性樹脂を硬化させることで本マイクロパウダーの焼成物と変性硬化性樹脂とが接触した本複合シートが得られる。
前記液状組成物には必要に応じて、前記硬化剤、前記無機フィラーおよび前記エラストマーを含んでもよい。
【0068】
変性硬化性樹脂を含むシートと前記含侵焼成クロスの接着は、シートと含侵焼成クロスを加熱し、両者を圧着する熱圧着が好ましい。加熱温度は使用した変性硬化性樹脂に応じて適宜設定され、変性硬化性樹脂の軟化温度以上が好ましい。
圧着の際の圧力は、変性硬化性樹脂が変形しない程度の圧力であればよい。
前記含侵または熱圧着により、本マイクロパウダーとの焼成物と変性硬化性樹脂が直接接触し、両者の接着強度が高くなる。
【0069】
上記方法により本複合シートが得られる。得られた本複合シートの変性硬化性樹脂は完全に硬化していてもよいし、半硬化の状態でもよい。変性硬化樹脂が半硬化の状態である本複合シートはプリプレグとして有用である。かかるプリプレグはプリント配線基板に有用である。
【0070】
上記得られた本複合シートはさらに基材と積層し積層体としてもよい。
積層体の好適な態様としては、金属箔とその少なくとも一方の表面に本複合シートとを有する金属張積層体、樹脂フィルムとその少なくとも一方の表面に本複合シートとを有する多層フィルムが挙げられる。
金属張積層体における金属箔は、銅箔であるのが好ましい。かかる金属張積層体は、プリント基板材料として特に有用である。
多層フィルムにおける樹脂フィルムは、ポリイミドフィルムであるのが好ましい。かかる多層フィルムは、電線被覆材料、プリント基板材料として有用である。
【0071】
基材の材質としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド等のフィルム)、プリプレグ(繊維強化樹脂基板の前駆体)が挙げられる。基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられ、さらに、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面に本複合シートを有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面に本複合シートを有する多層フィルムが挙げられる。これらの積層体は、電気特性等の諸物性に優れており、プリント基板材料等として好適である。具体的には、かかる積層体は、フレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板の製造に使用できる。
【0072】
金属張積層板を作製する方法としては、本複合シートを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面または片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張りまたは片面金属箔張りの金属張積層体を作製することができる。加熱加圧条件は、製造する金属張積層体の厚みや変性硬化性樹脂の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度は170から220℃、圧力は1.5から5MPa、時間は60から150分である。
【0073】
本複合シートと他の基材との積層体の構成としては、金属基板/本複合シート/他の基材層/本複合シート/金属基板、金属基板層/他の基材層/本複合シート/他の基材層/金属基板層等が挙げられる。それぞれの層には、さらに、ガラスクロスやフィラーが含まれていてもよい。また本複合シートは1枚でも2枚以上でもよい。
【0074】
かかる積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
【0075】
プリント基板としては、サーバー、スイッチ、ルーター等の高速通信向けプリント基板、ミリ波レーダー、Lider等の車載向けプリント基板、HDI(高密度実装)、半導体パッケージ等の端末機器向けプリント基板、アンテナ、ベースバンドユニット、パワーアンプ等の通信基地局向けプリント基板が挙げられる。
【0076】
なかでも変性硬化性樹脂が半硬化状態である本複合シートからなるプリプレグは、プリント基板用として有用である。また本複合シートからなるプリント基板としても有用である。本発明のプリント配線板は、上記本発明の金属箔張積層体をサブトラクト法や穴あけ加工などのプリント配線板の製造方法において公知の方法により加工することで得ることができる。また、本発明のプリプレグ、金属張り積層板、およびプリント配線板を適宜組み合わせて積層、加工することで、多層配線板を得ることもできる。
【0077】
上述のとおり本複合シートは電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れる。かかる本複合シートはプリプレグおよびプリント基板材料として有用である。また本製造方法によれば、電気特性、耐熱性、剥離強度および耐水性に優れた本複合シートが得られる。
【0078】
以上、本複合シートおよび本複合シートの製造方法について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、本複合シートは上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。本製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。
【実施例0079】
<Fポリマーのパウダー>
Fパウダー1:TFE単位、NAH単位およびPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含む、酸無水物基を有するポリマー(溶融温度300℃、5%重量減少温度:400℃以上)からなるパウダー(平均粒子径2μm、嵩密度0.18g/m
Fパウダ-2:TFE単位およびPPVE単位を、この順に97.5モル%、2.5モル%含む、官能基を有さないポリマー(溶融温度305℃、5%重量減少温度:400℃以上)からなるパウダー(平均粒子径2μm、嵩密度0.19g/m
【0080】
<ガラスクロス>
ガラスクロス1:日東紡 Eガラス IPCスペック1080
ガラスクロス2:日東紡 NEガラス IPCスペック1080
【0081】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂1:変性PPE NorylSA-90(SABICジャパン合同会社)
【0082】
[例1]分散液の調製、ガラスクロスへの配置
ポットに、10質量部のFパウダー1、1質量部のシリコーン系界面活性剤および89質量部の水を投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、分散液1(粘度:100mPa・s)を得た。得られた分散液1を、ローラー浸漬法によりガラスクロス1に配置した後、120℃にて5分間乾燥炉に通し、加熱し乾燥した。その後、遠赤外線炉で340℃にて10分間加熱し焼成して、ガラスクロスの表面に、Fパウダー1の焼成物が表面付着した含浸焼成クロス(以下、ガラスクロスT1と称する)を得た。ガラスクロスT1を、熱硬化性樹脂1のトルエン溶液に含浸して200℃で乾燥し、熱硬化性樹脂が重量比で50%である複合シート1を得た。
【0083】
[例2]
ガラスクロス1の代わりに、ガラスクロス2を使用した以外は例1と同様にして、複合シート2を得た。
【0084】
[例3]
Fパウダー1の代わりにFパウダー2を使用した以外は例1と同様にして、複合シート3を得た。
【0085】
[例4]
ガラスクロスを、分散液に含浸しなかった以外は例1と同様にして複合シート4を得た。
【0086】
以下の方法および評価基準に基づき、得られた複合シート1から4の評価を行った。結果を表1に示した。
<界面剥離>
複合シート1から4を、それぞれ260℃の炉に入れて10秒間静置後、取り出して1分間冷却した。これを5回繰りかえしたのち、断面を研磨してガラスクロスと熱硬化性樹脂間の剥離の有無を確認した。
〇:界面剥離は見られない
×:界面剥離が見られる。
【0087】
<誘電率>
SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、測定周波数10GHzでの複合シートの誘電率を測定した。
【0088】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0089】
上記結果から明らかなように、本複合シートは含侵焼成クロスと熱硬化性樹脂との接着性に優れ、電気的特性にも優れる。本複合シートはプリプレグやプリント基板材料として有用である。