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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088174
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】信頼性評価装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20220607BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020200469
(22)【出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】前川 清石
(72)【発明者】
【氏名】松岡 諒
(72)【発明者】
【氏名】麻生 英樹
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀司
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 夏樹
(57)【要約】
【課題】学習手段が行った推論の信頼性を適切に評価する信頼性評価装置を得ること。
【解決手段】信頼性評価装置1は、入力データと正解データもしくは目標仕様を入力として学習する第1学習手段と、入力データに関する情報についてクラスタリングを行う第2学習手段と、第1学習手段が行った学習の評価結果を記憶する評価結果記憶手段3と、第2学習手段が行ったクラスタリングの結果をもとに推論時の入力データについてクラスタリングを行って複数のクラスタを抽出する近傍群抽出手段5と、評価結果記憶手段3によって記憶された評価結果と近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの情報とをもとに第1学習手段が行った推論の信頼性を評価する信頼性評価値を決定する評価値決定手段7とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データと、正解データもしくは目標仕様を入力として学習を行う第1学習手段と、
前記入力データに関する情報についてクラスタリング又はクラス分類を行う第2学習手段と、
前記第1学習手段が行った学習の評価結果を記憶する評価結果記憶手段と、
前記第2学習手段が行ったクラスタリング又はクラス分類の結果をもとに推論時の入力データについてクラスタリング又はクラス分類を行って複数のクラスタ又はクラスを抽出する近傍群抽出手段と、
前記評価結果記憶手段によって記憶された前記評価結果と前記近傍群抽出手段によって抽出された前記複数のクラスタ又はクラスの情報とをもとに前記第1学習手段が行った推論の信頼性を評価する信頼性評価値を決定する評価値決定手段と
を備えることを特徴とする信頼性評価装置。
【請求項2】
前記推論時の入力データが、学習時の入力データの中間に位置するデータであるか、前記学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであるかを判定する近傍方向判定手段を更に備え、
前記推論時の入力データが前記学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであると前記近傍方向判定手段によって判定された場合、前記評価値決定手段は、前記推論時の入力データが前記学習時の入力データの中間に位置するデータである場合に比べて前記信頼性を低く評価する前記信頼性評価値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の信頼性評価装置。
【請求項3】
制御対象の特性変動の有無を判定する特性変動判定手段を更に備え、
前記特性変動が有ると前記特性変動判定手段によって判定された場合、前記評価値決定手段は、前記特性変動が無い場合に比べて前記信頼性を低く評価する前記信頼性評価値を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の信頼性評価装置。
【請求項4】
あらかじめ定められた閾値以上の外乱が作用したかどうかを判定する外乱混入判定手段を更に備え、
前記閾値以上の外乱が作用したと前記外乱混入判定手段によって判定された場合、前記評価値決定手段は、前記閾値以上の外乱が作用しなかった場合に比べて前記信頼性を低く評価する前記信頼性評価値を決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の信頼性評価装置。
【請求項5】
前記第1学習手段において、入力データと正解データを入力とし、入力データと正解データの関係を学習することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の信頼性評価装置。
【請求項6】
前記第2学習手段に入力する入力データに関する情報として、入力データそのものを用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の信頼性評価装置。
【請求項7】
前記第2学習手段に入力する入力データに関する情報として、動作条件データを用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の信頼性評価装置。
【請求項8】
前記第1学習手段において、入力データと目標仕様を入力とし、入力データが入力された時の制御パラメータを探索する最適パラメータ探索手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の信頼性評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、学習手段が行った推論の信頼性を評価する信頼性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば産業用ロボット、産業機械又は工作機械といったメカニカルシステムの高性能化及び高機能化を目的に、人工知能を応用した指令生成部及びサーボ制御部の高性能化が求められてきている。特に、人工知能を用いて高精度にモデル化を行い、人工知能で構築した高精度なモデルを用いて、制御装置でリアルタイムにメカニカルシステムを制御することが求められるようになってきた。人工知能を用いて生成されるモデルを用いることで比較的高い性能が得られる場合もあるが、従来、人工知能の推論結果の信頼性を評価する適切な手法が存在せず、学習していないデータに対しては人工知能の出力をそのまま用いるとかえって性能が劣化する恐れがあるため、人工知能の出力を評価しながら人工知能をメカニカルシステムの制御に適用する技術が求められている。
【0003】
特許文献1は、訓練データと訓練データに対する推論結果の正解を示す正解データとを用いて教師あり学習を行う第1の学習器と、訓練データを用いて教師なし学習を行う第2の学習器とを用いて、第1の学習器の学習結果で推論する際の入力データを第2の学習器で推論する際にも入力し、第2の学習器の出力に基づいて、第1の学習器の出力の妥当性を評価する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-139277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、学習したデータ毎に推論の精度が異なるため、推論時の入力が学習したデータに近いかどうかを判断するだけでは学習器が行った推論の信頼性を適切に評価することができない。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、学習手段が行った学習の信頼性を適切に評価する信頼性評価装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る信頼性評価装置は、入力データと正解データもしくは目標仕様を入力として学習する第1学習手段と、入力データについてクラスタリング又はクラス分類を行う第2学習手段と、第1学習手段が行った学習の評価結果を記憶する評価結果記憶手段と、第2学習手段が行ったクラスタリング又はクラス分類の結果をもとに推論時の入力データについてクラスタリング又はクラス分類を行って複数のクラスタ又はクラスを抽出する近傍群抽出手段と、評価結果記憶手段によって記憶された評価結果と近傍群抽出手段によって抽出された複数のクラスタ又はクラスの情報とをもとに第1学習手段が行った学習の信頼性を評価する信頼性評価値を決定する評価値決定手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る信頼性評価装置は、学習手段が行った推論の信頼性を適切に評価することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる信頼性評価装置の学習時の構成を示す図
図2】実施の形態1にかかる信頼性評価装置が有する第1学習手段の構成を示す図
図3】実施の形態1にかかる信頼性評価装置の推論時の構成を示す図
図4】実施の形態2にかかる信頼性評価装置の推論時の構成を示す図
図5】実施の形態3にかかる信頼性評価装置の推論時の構成を示す図
図6】実施の形態4にかかる信頼性評価装置の推論時の構成を示す図
図7】実施の形態5にかかる信頼性評価装置の学習時の構成を示す図
図8】実施の形態5にかかる信頼性評価装置の推論時の構成を示す図
図9】実施の形態6にかかる信頼性評価装置の学習時の構成を示す図
図10】実施の形態7にかかる信頼性評価装置の学習時の構成を示す図
図11】実施の形態1にかかる信頼性評価装置が有する第1学習手段、第2学習手段、近傍群抽出手段、評価値推定手段及び評価値決定手段の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合のプロセッサを示す図
図12】実施の形態1にかかる信頼性評価装置が有する第1学習手段、第2学習手段、近傍群抽出手段、評価値推定手段及び評価値決定手段の少なくとも一部が処理回路によって実現される場合の処理回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる信頼性評価装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1の学習時の構成を示す図である。信頼性評価装置1は、入力データと教師データもしくは目標仕様を受け取って学習を行う第1学習手段2を有する。本実施の形態では、信頼性評価装置1は、入力データと教師データを受け取るものとする。すなわち、信頼性評価装置1は、入力データと正解データとを受け取って入力データと正解データとの関係を学習する第1学習手段2を有する。第1学習手段2は、入力データと教師データとの関係を学習する第1学習器21を有する。教師データは、正解データである。
【0012】
例えば、教師データは、制御対象のパラメータ、又は、制御対象を制御する制御装置のパラメータである。例えば、制御対象は、ロボット、工作機械又は産業機械である。例えば、入力データは、制御対象を駆動する各軸のモータの位置、速度、加速度若しくは電流を示すデータ、又は、制御対象に取り付けられたセンサの出力である。入力データは、例えば電流の測定データそのものでなく、例えば電流と何らかの手段によって予測された予測電流との差といった加工後のデータであってもよい。
【0013】
図2は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2の構成を示す図である。上述の通り、第1学習手段2は第1学習器21を有する。例えば、第1学習器21は、フィードフォワードニューラルネットワークを用いて学習を行う。第1学習器21は、リカレントネットワークを用いて学習を行ってもよい。
【0014】
第1学習手段2は、第1学習器21によって行われた学習の結果と正解データとを受け取る学習結果評価手段22を更に有する。学習結果評価手段22は、第1学習器21が様々な入力データと教師データとの組み合わせをもとに学習を行った結果を評価する。例えば、学習結果評価手段22は、教師データと第1学習器21の出力との差の絶対値を算出する。第1学習器21の出力は、第1学習器21が学習を行った後に、教師データと対になる入力を第1学習器21に入力した場合の出力である。学習結果評価手段22は、絶対値の算出を行わず、教師データと第1学習器21の出力との差の算出のみを行ってもよい。学習結果評価手段22は、教師データと第1学習器21の出力との差の絶対値を教師データの大きさで除算してもよい。
【0015】
信頼性評価装置1は、学習結果評価手段22によって得られた評価結果を記憶する評価結果記憶手段3を更に有する。例えば、評価結果記憶手段3は半導体メモリによって実現される。学習結果評価手段22は、算出した学習時の評価結果を評価結果記憶手段3に出力する。評価結果記憶手段3は、学習結果評価手段22から出力された学習時の評価結果を受け取って学習時の評価結果を記憶する。つまり、評価結果記憶手段3は、第1学習手段2が行った学習の評価結果を記憶する。
【0016】
信頼性評価装置1は、第1学習手段2が受け取る入力データに関する情報を受け取る第2学習手段4を更に有する。本実施の形態では、入力データに関する情報として、入力データそのものを使用する。つまり、第1学習手段2に入力される入力データは、第2学習手段4にも入力される。第2学習手段4は、入力データについてクラスタリングを行う。第2学習手段4は、入力データについてクラスタリングを行うクラスタリング手段41を有する。クラスタリング手段41は、例えばk平均法又はkSHAPE法を実行して入力データについてクラスタリングを行う。
【0017】
クラスタリング手段41がk平均法を用いる場合、入力データが時系列データであるとき、クラスタリング手段41は、時系列データの例えば最大値又は平均値といった特徴量を抽出した後にk平均法を用いてもよい。例えば、時系列データは、モータの位置又はモータの電流を示す時系列データである。クラスタリング手段41は、入力データが時系列データであっても、特徴量の抽出を行わず、例えばkSHAPE法を用いて入力データについてクラスタリングを行ってもよい。第2学習手段4は、クラスタリングを行った結果を評価結果記憶手段3に出力する。当該結果は、第2学習手段4が行ったクラスタリングに関する情報である。
【0018】
評価結果記憶手段3は、第1学習手段2が行った学習の評価結果を記憶すると共に、第2学習手段4が行ったクラスタリングに関する情報を記憶する。例えば、評価結果記憶手段3は、クラスタの中心に最も近い入力データに対する評価結果を当該クラスタに対応する評価結果として記憶する。評価結果記憶手段3は、クラスタの中心に近い複数の評価結果の平均値を当該クラスタに対応する評価結果として記憶してもよいし、クラスタに属する入力データのすべての評価結果の最悪値を記憶してもよいし、クラスタに属する入力データのすべての評価結果の平均値と分散とを記憶してもよい。クラスタの中心に最も近い、あるいは、クラスタ中心に近いかどうかは、入力データとクラスタ中心との距離から判定する。特徴量を抽出した後にk平均法を用いる場合であれば、クラスタ中心の特徴量と入力の特徴量の距離から判定すればよい。この場合であれば、入力データとクラスタ中心との距離は、特徴量をベクトル表現した場合の、入力データの特徴量ベクトルとクラスタ中心の特徴量ベクトルの各要素の差の2乗和の平方根になる。時系列データをそのまま用いる場合は、Shape-based distance(SBD)、DTW(Dynamic Time Warping)などを用いて判定すればよい。
【0019】
図3は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1の推論時の構成を示す図である。第1学習器21は、推論時の入力データを受け取って、推論結果を出力する。信頼性評価装置1は、推論時の入力データを受け取る近傍群抽出手段5を更に有する。つまり、推論時の入力データは、第1学習器21と第2学習手段4の学習結果である近傍群抽出手段5とに入力される。
【0020】
近傍群抽出手段5は、第2学習手段4が有するクラスタリング手段41を有する。つまり、クラスタリング手段41は、第2学習手段4及び近傍群抽出手段5に含まれている。近傍群抽出手段5は、第2学習手段4が行ったクラスタリングの結果をもとに推論時の入力データについてクラスタリングを行って複数のクラスタを抽出する。例えば、近傍群抽出手段5は、入力データについてのクラスタリングの結果の近傍に中心を持つ複数のクラスタを抽出する。近傍かどうかは、入力データとクラスタ中心との距離から判定する。特徴量を抽出した後にk平均法を用いる場合であれば、クラスタ中心の特徴量と入力の特徴量の距離から判定すればよい。時系列データをそのまま用いる場合は、Shape-based distance(SBD)、DTW(Dynamic Time Warping)などを用いて判定すればよい。
【0021】
信頼性評価装置1は、近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの各々についての評価結果を評価結果記憶手段3から読み出す評価値推定手段6を更に有する。信頼性評価装置1は、評価値決定手段7を更に有する。評価値推定手段6は、評価結果記憶手段3から読み出した複数のクラスタの各々についての評価結果と、近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの情報とを評価値決定手段7に出力する。
【0022】
評価値決定手段7は、評価結果記憶手段3によって記憶された評価結果と近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの情報とをもとに第1学習手段2が行った学習の信頼性を評価する信頼性評価値を決定する。例えば、評価値決定手段7は、複数のクラスタの各々のクラスタの中心までの距離に応じた評価結果の重み付き和を算出し、算出した評価結果の重み付き和を信頼性評価値として決定し、決定した信頼性評価値を出力する。上記の距離は、ユークリッド距離又はマハラノビス距離である。評価値決定手段7は、クラスタの中心に最も近いクラスタの評価値を採用し、採用した評価値を信頼性評価値と決定してもよい。評価値決定手段7は、抽出された複数のクラスタの評価結果の中の最悪値を採用し、採用した評価値を信頼性評価値と決定してもよい。
【0023】
評価値推定手段6が読み出した評価結果が複数のクラスタの各々の平均値及び分散である場合、評価値決定手段7は、信頼性評価値として平均値及び分散のそれぞれの平均値を出力してもよいし、平均値と分散のそれぞれの最悪値とを出力してもよい。評価値決定手段7は、最も近いクラスタとの距離があらかじめ定められた閾値以内であるクラスタについては、当該クラスタの評価値を採用し、最も近いクラスタとの距離が閾値を超えるクラスタについては、距離に応じてクラスタの評価値を大きくした結果、つまり評価値が悪化する方向に評価値を修正した結果を出力してもよい。
【0024】
なお、実施の形態1では、値が大きいほど信頼性が低くなる評価値が用いられるが、値が小さいほど信頼性が低くなる評価値が用いられてもよい。値が小さいほど信頼性が低くなる評価値が用いられる場合、評価値決定手段7は、評価値を悪化する方向に修正するとき、信頼性の評価値が小さくなる方向に評価値を修正する。
【0025】
上述の通り、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1は、推論時の入力データが属する領域に応じて推論結果の信頼性を評価する。推論結果は、第1学習手段2の出力である。更に言うと、推論結果は、第1学習手段2が行った学習結果を用いたときの推論結果である。したがって、信頼性評価装置1は、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。すなわち、信頼性評価装置1は、第1学習手段2が行った学習結果を用いたときの推論の信頼性を適切に評価することができる。
【0026】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2にかかる信頼性評価装置1Aの推論時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Aの構成は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1の構成と推論時のみ異なる。実施の形態2では、実施の形態1と相違する推論時の構成及び動作を主に説明する。信頼性評価装置1Aは、信頼性評価装置1が有するすべての構成要素を有する。信頼性評価装置1Aは、推論時の入力データが、学習時の入力データの中間に位置するデータであるか、学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであるかを判定する近傍方向判定手段8を更に有する。
【0027】
推論時に、入力データは第1学習器21と近傍群抽出手段5とに入力される。近傍群抽出手段5は、入力データについてのクラスタリングの結果の近傍に中心を持つ複数のクラスタを抽出する。評価値推定手段6は、近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの各々に対する評価結果を評価結果記憶手段3から読み出し、読み出した評価結果と抽出された複数のクラスタの情報とを評価値決定手段7に出力する。評価値決定手段7は、複数のクラスタの各々のクラスタの中心までの距離に応じた評価結果の重み付き和を算出し、算出した評価結果の重み付き和を信頼性評価値として決定して出力する。上記の距離は、ユークリッド距離又はマハラノビス距離である。
【0028】
近傍方向判定手段8は、推論時の入力データが、学習時の入力データの中間に位置するデータであるか、学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであるかを判定し、判定結果を評価値決定手段7に出力する。例えば、近傍方向判定手段8は、入力データを特徴量に変換し、変換によって得られた特徴量の各要素の値と近傍と判定されたクラスタの中心の特徴量の各要素の値との差を算出し、差の符号がすべて同一の場合に推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであると判定する。
【0029】
近傍方向判定手段8は、学習時に分析されたすべてのクラスタを含むひとつの大きなクラスタを導出し、推論時の入力データが当該ひとつの大きなクラスタに属するかどうかを判定することによって、推論時の入力データが、学習時の入力データの中間に位置するデータであるか、学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであるかを判定してもよい。具体的には、近傍方向判定手段8は、推論時の入力データが当該ひとつの大きなクラスタに属しないと判定した場合、推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであると判定してもよい。
【0030】
評価値決定手段7は、推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであると近傍方向判定手段8によって判定された場合、入力データと当該入力データの最近傍のクラスタとの距離に応じて評価値を大きくした結果を信頼性評価値として決定して出力する。つまり、評価値決定手段7は、推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータであると近傍方向判定手段8によって判定された場合、推論時の入力データが学習時の入力データの中間に位置するデータである場合に比べて信頼性を低く評価する信頼性評価値を決定する。言い換えると、評価値決定手段7は、評価値が悪化する方向に評価値を修正する。更に言うと、評価値決定手段7は、信頼性を低く評価するように評価値を修正する。
【0031】
評価値決定手段7は、推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域のデータでないと近傍方向判定手段8によって判定された場合、評価値を修正せず当該評価値を信頼性評価値に決定して出力する。
【0032】
上述の通り、実施の形態2にかかる信頼性評価装置1Aは、推論時の入力データが学習時の入力データの範囲を逸脱した領域にある場合に信頼性を低く評価することで、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。
【0033】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3にかかる信頼性評価装置1Bの推論時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Bの構成は、実施の形態2にかかる信頼性評価装置1Aの構成と推論時のみ異なる。実施の形態3では、実施の形態2と相違する推論時の構成及び動作を主に説明する。信頼性評価装置1Bは、信頼性評価装置1Aが有するすべての構成要素を有する。信頼性評価装置1Bは、制御対象の特性変動の有無を判定する特性変動判定手段9を更に有する。例えば、制御対象は、産業用ロボット、工作機械又は産業機械である。評価値決定手段7は、特性変動判定手段9によって得られる判定結果をもとに信頼性評価値を修正する場合がある。
【0034】
上述の通り、特性変動判定手段9は、制御対象の特性変動の有無を判定する。例えば、特性変動判定手段9は、制御対象を駆動する各軸のモータから見た摩擦トルクをもとに、又は制御対象の共振周波数をもとに制御対象の特性変動の有無を判定する。特性変動判定手段9は、入力データをもとに特性変動の有無を判定することもできるし、環境変動情報をもとに特性変動の有無を判定することもできる。
【0035】
特性変動判定手段9は、入力データをもとに特性変動の有無を判定する場合、入力データに含まれる時系列データをもとに特性変動の有無を判定する。例えば、特性変動判定手段9は、制御対象を駆動する各軸のモータの位置と電流とをもとに制御対象を駆動する各軸の摩擦係数を同定する。特性変動判定手段9は、同定した摩擦係数があらかじめ定められた範囲外にあれば特性変動が有ると判定し、判定結果と、同定した摩擦係数とあらかじめ定められた範囲との差とを評価値決定手段7に出力する。当該範囲は、閾値で定義される。
【0036】
特性変動が無いと特性変動判定手段9によって判定された場合、評価値決定手段7は、評価値を修正することなく出力する。特性変動が有ると特性変動判定手段9によって判定された場合、評価値決定手段7は、特性変動が無い場合に比べて信頼性を低く評価する信頼性評価値を決定する。例えば、評価値決定手段7は、特性変動判定手段9によって同定された摩擦係数とあらかじめ定められた範囲との差に応じて評価値を大きくした結果を信頼性評価値として決定する。つまり、特性変動が有ると判定された場合、評価値決定手段7は、評価値が悪化する方向に評価値を修正した結果を信頼性評価値として決定して出力する。
【0037】
上述の通り、特性変動判定手段9は、環境変動情報をもとに特性変動の有無を判定することもできる。例えば、環境変動情報は、制御対象に取り付けられた温度センサによって測定される温度の変動を示す情報である。温度センサが制御対象を駆動するモータのエンコーダに取り付けられていることが比較的多く、温度センサがエンコーダに取り付けられている場合、特性変動判定手段9は、温度センサによって測定される温度の変動を示す情報を環境変動情報として使用する。
【0038】
例えば、温度の範囲があらかじめ設定され、特性変動判定手段9は、温度センサによって測定された温度が当該範囲の内側から外側に変化した場合に特性変動が有ると判定し、温度センサによって測定された温度と当該範囲との差を評価値決定手段7に出力する。当該範囲は、閾値で定義される。特性変動が無いと特性変動判定手段9によって判定された場合、評価値決定手段7は評価値を修正することなく出力する。
【0039】
特性変動が有ると特性変動判定手段9によって判定された場合、評価値決定手段7は、特性変動が無い場合に比べて信頼性を低く評価する信頼性評価値を決定する。例えば、評価値決定手段7は、特性変動判定手段9によって同定された摩擦係数とあらかじめ定められた範囲との差に応じて評価値を大きくした結果を信頼性評価値として出力する。つまり、特性変動が有ると判定された場合、評価値決定手段7は、評価値が悪化する方向に評価値を修正する。
【0040】
上述の通り、実施の形態3にかかる信頼性評価装置1Bは、制御対象の特性変動の有無に応じて信頼性評価値を修正することができるため、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。
【0041】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4にかかる信頼性評価装置1Cの推論時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Cの構成は、実施の形態3にかかる信頼性評価装置1Bの構成と推論時のみ異なる。実施の形態4では、実施の形態3と相違する推論時の構成及び動作を主に説明する。信頼性評価装置1Cは、信頼性評価装置1Bが有するすべての構成要素を有する。信頼性評価装置1Cは、フィルタ手段10及び外乱混入判定手段11を更に有する。評価値決定手段7は、外乱混入判定手段11によって得られる判定結果をもとに評価値を修正する場合がある。
【0042】
例えば、フィルタ手段10は、高域通過フィルタ又は帯域通過フィルタである。例えば入力データに周波数が比較的高い外乱が作用することがある場合、フィルタ手段10として高域通過フィルタが用いられる。外乱の例は、ノイズである。制御対象の駆動機構が劣化して、駆動機構の回転数に応じた外乱が大きくなることが想定される場合、フィルタ手段10として帯域通過フィルタが用いられる。例えば、駆動機構の劣化は、駆動機構に内蔵されている軸受けの劣化である。
【0043】
外乱混入判定手段11は、あらかじめ定められた閾値以上の外乱が作用したかどうかを判定する。具体的には、外乱混入判定手段11は、フィルタ手段10から出力される時系列データをもとに、入力データに基準値以上の外乱が混入しているかどうかを判定する。例えば、外乱混入判定手段11は、フィルタ手段10の出力の絶対値を算出し、算出した絶対値を移動平均フィルタに通し、移動平均フィルタを通った後の絶対値とあらかじめ記憶している閾値とを比較し、移動平均フィルタを通った後の絶対値が閾値以上であると判定した場合に入力データに基準値以上の外乱が混入していると判定する。
【0044】
外乱混入判定手段11は、基準値以上の外乱が混入していると判定した場合、判定結果と、閾値からの超過量とを評価値決定手段7に出力する。基準値以上の外乱が混入していると外乱混入判定手段11によって判定された場合、評価値決定手段7は、閾値からの超過量に応じて評価値が大きくなる方向に評価値を修正する。つまり、評価値決定手段7は、評価値が悪化する方向に評価値を修正する。評価値決定手段7は、修正後の評価値を信頼性評価値として出力する。このように、閾値以上の外乱が作用したと外乱混入判定手段11によって判定された場合、評価値決定手段7は、閾値以上の外乱が作用しなかった場合に比べて信頼性を低く評価する信頼性評価値を決定する。
【0045】
上述の通り、実施の形態4にかかる信頼性評価装置1Cは、推論時に閾値以上の外乱が作用した場合に当該外乱を考慮して信頼性評価値を修正することができるため、推論時に閾値以上の外乱が作用しても、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。
【0046】
実施の形態5.
図7は、実施の形態5にかかる信頼性評価装置1Dの学習時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Dは、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2、評価結果記憶手段3及び第2学習手段4を有する。実施の形態5の第2学習手段4に入力されるデータは、実施の形態1の第2学習手段4に入力されるデータと異なる。実施の形態5では、実施の形態1と相違する学習時の構成及び動作を主に説明する。
【0047】
実施の形態1では、第2学習手段4の入力は第1学習手段2の入力と同じ、すなわち、入力データに関する情報として入力データそのものを用いていたが、実施の形態5では、第2学習手段4の入力である入力データに関する情報は動作条件データである。動作条件データは、入力データに関連するデータである。実施の形態1と同じく、実施の形態5では、例えば、入力データは、制御対象を駆動する各軸のモータの位置、速度、加速度若しくは電流を示すデータ、又は、制御対象に取り付けられたセンサの出力である。動作条件データは、入力データを採取する際の動作指令データである。動作指令データは、制御対象を駆動する各軸のモータ位置指令、速度指令又は加速度指令の時系列データであってもよいし、制御対象を駆動する各軸のモータ位置指令における加速度又は速度の最大値を示すデータであってもよい。
【0048】
実施の形態5の第2学習手段4は、動作条件データについてクラスタリングを行う。実施の形態5の第2学習手段4は、動作条件データとして位置指令、速度指令又は加速度指令の時系列データを入力した場合、実施の形態1の第2学習手段4と同様に、例えば時系列データの最大値又は平均値といった特徴量をクラスタリング手段41で抽出してからk平均法を用いてもよい。
【0049】
実施の形態5の第2学習手段4は、特徴量の抽出を行わず、例えばkSHAPE法を用いてクラスタリングを行ってもよい。モータ位置指令における加速度又は速度の最大値を示すデータが第2学習手段4に入力される場合、特徴量が直接入力されることになるため、第2学習手段4はk平均法を用いる。第2学習手段4によって得られるクラスタリングの結果は、第1学習手段2が行った学習の評価結果と共に、評価結果記憶手段3に出力される。第2学習手段4によって得られるクラスタリングの結果は、第2学習手段4が行ったクラスタリングに関する情報である。
【0050】
評価結果記憶手段3は、第1学習手段2が行った学習の評価結果と第2学習手段4が行ったクラスタリングに関する情報とを記憶する。評価結果記憶手段3は、クラスタの中心に最も近い入力データに対する評価結果を当該クラスタに対応する評価結果として記憶する。評価結果記憶手段3は、クラスタの中心に近い複数の評価結果の平均値を当該クラスタに対応する評価結果として記憶してもよいし、クラスタに属する入力データのすべての評価結果の最悪値を記憶してもよいし、クラスタに属する入力データのすべての評価結果の平均値と分散とを記憶してもよい。クラスタの中心に最も近い、あるいは、クラスタ中心に近いかどうかは、入力データとクラスタ中心との距離から判定する。特徴量を抽出した後にk平均法を用いる場合であれば、クラスタ中心の特徴量と入力の特徴量の距離から判定すればよい。この場合であれば、入力データとクラスタ中心との距離は、特徴量をベクトル表現した場合の、入力データの特徴量ベクトルとクラスタ中心の特徴量ベクトルの各要素の差の2乗和の平方根になる。時系列データをそのまま用いる場合は、Shape-based distance(SBD)、DTW(Dynamic Time Warping)などを用いて判定すればよい。
【0051】
図8は、実施の形態5にかかる信頼性評価装置1Dの推論時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Dは、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7を有する。実施の形態5の近傍群抽出手段5に入力される推論時の入力データは、動作条件データである。例えば、推論時の動作条件データは、制御対象を駆動する各軸のモータ位置指令、速度指令若しくは加速度指令の時系列データ、又は、制御対象を駆動する各軸のモータ位置指令における加速度若しくは速度の最大値を示すデータである。
【0052】
近傍群抽出手段5は、第2学習手段4が行ったクラスタリングの結果をもとに推論時の入力データについてクラスタリングを行って複数のクラスタを抽出する。例えば、近傍群抽出手段5は、動作条件データについてのクラスタリングの結果の近傍に中心を持つ複数のクラスタを抽出する。近傍かどうかは、入力データとクラスタ中心との距離から判定する。特徴量を抽出した後にk平均法を用いる場合であれば、クラスタ中心の特徴量と入力の特徴量の距離から判定すればよい。時系列データをそのまま用いる場合は、Shape-based distance(SBD)、DTW(Dynamic Time Warping)などを用いて判定すればよい。評価値推定手段6は、近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの各々に対する評価結果を評価結果記憶手段3から読み出し、読み出した評価結果と抽出された複数のクラスタの情報とを評価値決定手段7に出力する。
【0053】
評価値決定手段7は、評価結果記憶手段3によって記憶された評価結果と近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスタの情報とをもとに第1学習手段2が行った学習の信頼性を評価する信頼性評価値を決定する。
【0054】
上述の通り、実施の形態5にかかる信頼性評価装置1Dは、動作条件データを用いて信頼性評価値を決定するので、比較的少ない計算量で推論結果の信頼性を評価することができる。
【0055】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6にかかる信頼性評価装置1Eの学習時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Eは、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2及び評価結果記憶手段3を有する。信頼性評価装置1Eは、信頼性評価装置1が有する第2学習手段4の代わりに第2学習手段4Eを有する。第2学習手段4Eは、入力データに関する情報に関してクラス分類を行うクラス分類手段42を有する。本実施の形態では、入力データに関する情報として、入力データそのものを用いる。また、第2学習手段4Eには、入力データだけでなく、入力データのクラス正解データも入力される。評価結果記憶手段3には、第2学習手段4Eの出力ではなく、第2学習手段4Eに入力されるクラス正解データが入力される。実施の形態6では、実施の形態1と相違する学習時の構成及び動作を主に説明する。
【0056】
例えば、クラス分類手段42は、サポートベクターマシン又はニューラルネットワークを用いる。ニューラルネットワークの例は、フィードフォワードニューラルネットワーク又はリカレントニューラルネットワークである。クラス分類手段42がニューラルネットワークを用いる場合、クラスの種類がN個あるとき、ニューラルネットワークの出力層のノードの数はNに設定され、ひとつのノードの出力のみ1であって、残りのノードの出力は0である。Nは、2以上の整数である。クラス分類手段42は、正解のクラス毎にどのノードの出力を1にするかを割り当てて学習を行う。例えば、クラス分類手段42は、1番目のクラスについては1番目のノードの出力を1にし、3番目のクラスについては3番目のノードの出力を1にする。
【0057】
評価結果記憶手段3には、第1学習手段2が行った学習の評価結果とクラス正解データとが入力される。評価結果記憶手段3は、クラス正解データで示されるクラス毎に評価結果を記憶する。例えば、評価結果記憶手段3が記憶する評価結果は、クラス毎の評価結果の平均値、クラス毎の評価結果の最悪値、又は、クラス毎の評価結果の平均値及び分散である。
【0058】
実施の形態6にかかる信頼性評価装置1Eの推論時の構成は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1の推論時の構成と同じである。ただし、実施の形態1では近傍群抽出手段5は第2学習手段4が有するクラスタリング手段41を有するのに対し、実施の形態6では近傍群抽出手段5は第2学習手段4Eのクラス分類手段42を有する。
【0059】
実施の形態6では、近傍群抽出手段5は、第2学習手段4Eが行ったクラス分類の結果をもとに推論時の入力データについてクラス分類を行って複数のクラスを抽出する。具体的には、近傍群抽出手段5は、入力データが入力されると、クラス分類手段42が学習した推論を実施し、推論結果に最も近いクラスと当該クラスからの距離とを出力する。実施の形態6では、最も近いクラスは、各ノードの出力のなかで最も1に近いノードに対応するクラスであり、当該クラスからの距離は最も1に近いノードの値の1との差である。例えば、出力層のノードの数が5で、各ノードの出力がそれぞれ、0、0.9、0.1、0.3、0.7であった場合、最も近いクラスは2番目のノードの出力を1に割り当てたクラスであり、当該クラスからの距離は0.1となる。近傍群抽出手段5は、推論結果に最も近いクラスについての距離だけでなく、推論結果に2番目又は3番目に近いクラスと当該クラスまでの距離とを出力してもよい。
【0060】
評価値推定手段6は、近傍群抽出手段5によって抽出された複数のクラスの各々に対する評価結果を評価結果記憶手段3から読み出し、読み出した評価結果と抽出された複数のクラスの情報とを評価値決定手段7に出力する。近傍群抽出手段5によって複数のクラスが抽出された場合、評価値決定手段7は、クラスまでの距離に応じた評価結果の重み付き和を算出し、重み付き和を信頼性評価値として決定して出力する。
【0061】
評価値決定手段7は、各ノードの出力のなかで最も1に近いノードに対応するクラスである最も近いクラスの評価値を採用してもよいし、抽出されたクラスの中の最悪値を採用してもよい。読み出された評価結果がクラス毎の平均値及び分散である場合、評価値決定手段7は、信頼性評価値として、平均値及び分散の平均値を出力してもよいし、平均値及び分散の最悪値を出力してもよい。評価値決定手段7は、最も近いクラスとの距離があらかじめ定めた閾値以内である場合、当該クラスの評価値を採用し、最も近いクラスとの距離があらかじめ定めた閾値を超える場合、閾値を超えた距離に応じてクラスの評価値を大きくした結果を出力してもよい。つまり、最も近いクラスとの距離が閾値を超える場合、評価値決定手段7は、評価値が悪化する方向に評価値を修正した結果を出力してもよい。
【0062】
上述の通り、実施の形態6にかかる信頼性評価装置1Eは、推論時の入力データが属する領域に応じて推論結果の信頼性を評価する。推論結果は、第1学習手段2の出力である。更に言うと、推論結果は、第1学習手段2が行った学習の結果である。したがって、信頼性評価装置1Eは、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。すなわち、信頼性評価装置1Eは、第1学習手段2が行った学習結果を用いたときの推論の信頼性を適切に評価することができる。
【0063】
実施の形態7.
図10は、実施の形態7にかかる信頼性評価装置1Fの学習時の構成を示す図である。信頼性評価装置1Fは、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する評価結果記憶手段3及び第2学習手段4を有する。信頼性評価装置1Fは、信頼性評価装置1が有する第1学習手段2の代わりに第1学習手段2Fを有する。実施の形態7では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0064】
実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2は、第1学習器21を有し、入力された入力データと教師データとの関係を学習する。実施の形態7にかかる信頼性評価装置1Fが有する第1学習手段2Fは、入力データと教師データとの関係を学習するのではなく、入力データと目標仕様が入力され、入力データが入力された時の制御パラメータを目標仕様に応じて探索する最適パラメータ探索手段である第1学習器21Fを有する。すなわち、第1学習器21Fは、入力データに対する制御対象の制御パラメータの最適値を探索する。目標仕様としては動作時間短縮、軌跡精度向上、消費エネルギー最小などがある。
【0065】
第1学習手段2Fは、教師データと第1学習器21Fの出力との差でなく、第1学習器21Fが探索したパラメータを用いた場合の制御対象の制御結果の評価値である評価結果を出力する。例えば、制御結果の評価指標は、整定時間、オーバーシュート量、又は先端軌跡誤差最大値である。第1学習手段2Fは、制御結果の評価指標そのものを評価結果として出力してもよいし、評価指標の目標値との差を評価結果として出力してもよい。実施の形態7では、第1学習手段2Fは、評価指標の目標値との差を評価結果として出力する。したがって、評価結果の値が小さいほど高い制御性能を期待することができる。
【0066】
例えば、第1学習器21Fが使用する学習方式は、強化学習、ベイズ最適化、又は粒子群最適化である。例えば、第1学習器21Fが探索する制御パラメータは、加減速区間の長さ若しくは加速度最大値といった動作指令パラメータ、又は、各軸のモータ制御装置のフィードフォワード制御パラメータ若しくはフィードバック制御パラメータである。
【0067】
実施の形態7にかかる信頼性評価装置1Fの推論時の構成は、図3に示される実施の形態1にかかる信頼性評価装置1の推論時の構成と同じである。ただし、実施の形態7では、図3の第1学習器21は第1学習器21Fに置き換えられる。推論時の入力データが第1学習器21Fに入力されると、学習時と同じように第1学習器21Fは制御パラメータの探索を行い、探索を行った結果得られた制御パラメータを推論結果として出力する。
【0068】
第1学習器21Fが探索した制御パラメータの信頼性評価は、学習時に探索された制御パラメータをもとにする評価結果に基づく。すなわち、評価結果記憶手段には、学習時の教師データとの差に基づく値ではなく、学習時に探索された制御パラメータでの評価結果に基づく値は記憶されている。第1学習器21Fが探索した制御パラメータの信頼性評価が学習時に探索された制御パラメータをもとにする評価結果に基づく点を除くと、信頼性評価装置1Fの推論時の動作は実施の形態1に係る信頼性評価装置1の推論時の動作と同じである。
【0069】
上述の通り、実施の形態7にかかる信頼性評価装置1Fは、入力データが入力された時の制御パラメータをもとに推論結果の信頼性を評価する。したがって、信頼性評価装置1Fは、推論結果の信頼性を比較的高精度に評価することができる。すなわち、信頼性評価装置1Fは、第1学習手段2Fが行った学習の信頼性を適切に評価することができる。
【0070】
図11は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部がプロセッサ91によって実現される場合のプロセッサ91を示す図である。つまり、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部の機能は、メモリ92に格納されるプログラムを実行するプロセッサ91によって実現されてもよい。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。図11には、メモリ92も示されている。
【0071】
第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部の機能がプロセッサ91によって実現される場合、当該少なくとも一部の機能は、プロセッサ91と、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせとによって実現される。ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部の機能を実現する。
【0072】
第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部の機能がプロセッサ91によって実現される場合、信頼性評価装置1は、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を有する。メモリ92に格納されるプログラムは、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0073】
メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク又はDVD(Digital Versatile Disk)等である。
【0074】
図12は、実施の形態1にかかる信頼性評価装置1が有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部が処理回路93によって実現される場合の処理回路93を示す図である。つまり、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、処理回路93によって実現されてもよい。処理回路93は、専用のハードウェアである。処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0075】
第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の一部は、残部と別個の専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0076】
第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の複数の機能について、当該複数の機能の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現され、当該複数の機能の残部が専用のハードウェアで実現されてもよい。このように、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の複数の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって実現することができる。
【0077】
実施の形態2にかかる信頼性評価装置1Aが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7及び近傍方向判定手段8の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Aが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7及び近傍方向判定手段8の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Aは、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7及び近傍方向判定手段8によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Aが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7及び近傍方向判定手段8の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0078】
実施の形態3にかかる信頼性評価装置1Bが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8及び特性変動判定手段9の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Bが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8及び特性変動判定手段9の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Bは、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8及び特性変動判定手段9によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Bが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8及び特性変動判定手段9の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0079】
実施の形態4にかかる信頼性評価装置1Cが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8、特性変動判定手段9、フィルタ手段10及び外乱混入判定手段11の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Cが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8、特性変動判定手段9、フィルタ手段10及び外乱混入判定手段11の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Cは、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8、特性変動判定手段9、フィルタ手段10及び外乱混入判定手段11によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Cが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6、評価値決定手段7、近傍方向判定手段8、特性変動判定手段9、フィルタ手段10及び外乱混入判定手段11の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0080】
実施の形態5にかかる信頼性評価装置1Dが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Dが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Dは、第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Dが有する第1学習手段2、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0081】
実施の形態6にかかる信頼性評価装置1Eが有する第1学習手段2、第2学習手段4E、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Eが有する第1学習手段2、第2学習手段4E、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Eは、第1学習手段2、第2学習手段4E、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Eが有する第1学習手段2、第2学習手段4E、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0082】
実施の形態7にかかる信頼性評価装置1Fが有する第1学習手段2F、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、プロセッサによって実現されてもよい。当該プロセッサは、プロセッサ91と同様のプロセッサである。信頼性評価装置1Fが有する第1学習手段2F、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合、信頼性評価装置1Fは、信頼性評価装置1Fが有する第1学習手段2F、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを有する。当該メモリは、メモリ92と同様のメモリである。信頼性評価装置1Fが有する第1学習手段2F、第2学習手段4、近傍群抽出手段5、評価値推定手段6及び評価値決定手段7の少なくとも一部は、処理回路によって実現されてもよい。当該処理回路は、処理回路93と同様の処理回路である。
【0083】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 信頼性評価装置、2,2F 第1学習手段、3 評価結果記憶手段、4,4E 第2学習手段、5 近傍群抽出手段、6 評価値推定手段、7 評価値決定手段、8 近傍方向判定手段、9 特性変動判定手段、10 フィルタ手段、11 外乱混入判定手段、21,21F 第1学習器、22 学習結果評価手段、41 クラスタリング手段、42 クラス分類手段、91 プロセッサ、92 メモリ、93 処理回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12