(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022088491
(43)【公開日】2022-06-14
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20220607BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220607BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220607BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H05K7/12 M
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048175
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2020571095の分割
【原出願日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019018224
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
(57)【要約】
【課題】迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備える電子部品の提供。
【解決手段】一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が上記第二の貼付対象から露出した状態で上記第二の貼付対象に貼付された伸長剥離可能な粘着シートを備え、上記第二の貼付対象から露出した少なくとも2つの上記端部は、それぞれ把持して引き伸ばすことが可能であり、上記第一の貼付対象及び上記第二の貼付対象の少なくともいずれかが回収部品であり、上記回収部品が、ディスプレイ用ガラス及び電池の少なくともいずれかであることを特徴とする電子部品。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付された伸長剥離可能な粘着シートを備え、
前記第二の貼付対象から露出した少なくとも2つの前記端部は、それぞれ把持して引き伸ばすことが可能であり、
前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の少なくともいずれかが回収部品であり、前記回収部品が、ディスプレイ用ガラス及び電池の少なくともいずれかであることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記粘着シートの貼付面積の幅をX(cm)とし、前記貼付面積の長さをY(cm)としたとき、前記貼付面積の長さに対する前記貼付面積の幅の比(X/Y)が1/100,000~1/1である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記粘着シートは、フィラー粒子を含有する粘着層を少なくとも有する、請求項1又は2に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を構成する部品の固定などの場面において、作業性に優れる接着信頼性の高い接合手段として粘着シート(「粘着テープ」と称することもある)が広く使用されている。具体的には、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器を構成する板金同士の固定や外装部品と筐体との固定、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器への外装部品や電池等の剛体部品の固定などのような各産業分野での部品固定用途、該部品の仮固定用途の他、製品情報を表示するラベル用途等において、粘着テープが使用されている。
【0003】
近年、前記各産業分野において、地球環境保護の観点から省資源等を目的として、製品に使用されている再利用又は再使用可能な部品については、使用後に分解して再利用又は再使用することが多くなってきている。この際、粘着テープを使用している場合には、部品に貼付された粘着テープを剥離する必要があるが、前記粘着テープは、通常、接着力が大きく、かつ、製品中の多くの箇所に貼付されているため、それらを剥離する作業は、相当の労力を伴うものであった。そのため、前記再利用又は再使用の際に、容易な剥離及び除去による作業コストの低減が求められている。
【0004】
容易に剥離及び除去可能な粘着テープとして、接着部及びタブ部を備え、前記タブ部が、第一の被着体の外延部及び第二の被着体の外延部の一方から張り出して挟持可能となるように貼着され、該タブ部を挟持し、接着面とほぼ平行な方向に引き伸ばして剥離することができる粘着テープが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案の粘着テープのように、伸長剥離するためのタブ部(把持部)が一端にしかない場合、粘着テープの前記タブ部を有する側とは反対側の接着面(即ち、剥離時に一番長時間粘着テープが接着されている面)において、粘着テープの剥離後に被着体に粘着剤が残留し、汚染が生じるという問題がある。また、一端のタブ部から伸長剥離させる途中で千切れてしまった場合、それ以上剥離することできず、再利用又は再使用可能な部品等をそれ以上解体することができないという問題もある。
【0005】
これに対し、
図1に示すような、接着フィルム片の1つの末端部に位置するグリップタブ(1)と隣接していてもう一方の末端部(3)に向かって広がる接着領域(2)を含んで成るが、ここで、前記接着領域(2)は、前記グリップタブ(1)から本接着フィルム片のもう一方の末端部(3)に向かって順次、2番目の接着領域(5)に比較して大きい横断面積を有する1番目の接着領域(4)、末端部(3)に向かって急激に小さくなる横断面積を有する2番目の接着領域(5)、および末端部(3)を形成しておりかつこの末端部(3)の方向に向かって1つ以上の先端部(7)で終結している3番目の接着領域(6)、を含んで成る接着フィルムが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案の接着フィルムの形状の場合、貼り付け面積が小さくなり、貼付可能面積を有効利用できず、粘着力が弱くなるという問題がある。上記電子機器において、使用時に該電子機器を構成する部品が剥がれてしまうことは大きな問題であり、再利用又は再使用可能のために電子部品を回収するまでは、粘着力を維持している必要がある。
【0006】
したがって、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備える電子部品の提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-124289号公報
【特許文献2】米国特許第6680096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
即ち、一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付された粘着シートを備えたことを特徴とする電子部品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備える電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、従来技術の接着フィルムを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の電子部品の一態様を示す概略説明図(上面図)である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の電子部品の一態様を示す概略説明図(断面図)である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の電子部品の別の一態様を示す概略説明図(断面図)である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の電子部品の別の一態様を示す概略説明図(上面図)である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の電子部品の別の一態様を示す概略説明図(上面図)である。
【
図2F】
図2Fは、本発明の電子部品の別の一態様を示す概略説明図(上面図)である。
【
図2G】
図2Gは、本発明の電子部品の別の一態様を示す概略説明図(上面図)である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の電子部品がバッテリーである場合の概略説明図(断面図)である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の電子部品がバッテリーである場合の概略説明図(上面図)である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の電子部品がバッテリーである場合の別の一態様を示す概略説明図(断面図)である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の電子部品がテレビのディスプレイである場合の概略説明図(断面図)である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の電子部品がテレビのディスプレイである場合の概略説明図(上面図)である。
【
図5A】
図5Aは、実施例において耐衝撃性を評価する際の、粘着シート31のアクリル板32への貼付方法の概略説明図(断面図)である。
【
図5B】
図5Bは、実施例において耐衝撃性を評価する際に作製した試験片の概略説明図(上面図)である。
【
図5C】
図5Cは、実施例において耐衝撃性を評価する際の、コの字型測定台への試験片の設置方法に関する概略説明図(断面図)である。
【
図6A】
図6Aは、試験例1~11における貼付態様X及び伸張剥離試験における伸張方向(水平方向)の概略説明図(断面図)である。
【
図6B】
図6Bは、試験例1~11における貼付態様X及び伸張剥離試験における伸張方向(垂直方向)の概略説明図(断面図)である。
【
図6C】
図6Cは、比較試験例1~11における貼付態様Y及び伸張剥離試験における伸張方向(水平方向)の概略説明図(断面図)である。
【
図7A】
図7Aは、試験例1(貼付態様X)の水平方向への伸張剥離後のアクリル板の外観を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、試験例1(貼付態様Y)の水平方向への伸張剥離後のアクリル板の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(電子部品)
前記電子部品は、一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付された粘着シートを備えてなる。なお、本明細書において、第一の貼付対象又は第二の貼付対象を合わせて「被着体」と称することがある。
【0013】
本明細書において、前記電子部品には、前記電子機器を構成する、板金、外装、筐体、電池等の各種部品だけでなく、テレビ、家電製品、OA機器、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の電子機器自体も包含される。
【0014】
以下に、前記電子部品の構成について、図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0015】
図2A及び
図2Bに示すように、前記電子部品において、粘着シート21の一方の表面21aは、該電子部品を構成する第一の貼付対象22の一方の表面に、少なくとも一部が直線状になるように貼付される。次いで、粘着シート21の他方の表面21bは、前記電子部品を構成する第二の貼付対象23に貼付される。この時、粘着シート21の長さ方向の2つの端部は、第二の貼付対象23から露出した状態で貼付される。これにより、第二の貼付対象23から露出した粘着シート21の各端部は、それぞれその少なくとも一部が把持部として機能する。
図2Cは、前記電子部品の別の一態様を示す図である。
【0016】
上記
図2A~
図2Cでは、貼付対象に対して粘着シートが直線状になるように貼付され、前記粘着シートの端部が2つである例を示したが、前記粘着シートは、一方の表面が、前記第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付されていればよく、
図2D~
図2Gに示すように、前記粘着シートは、前記第一の貼付対象に対して、途中で分岐した形状や、途中で曲げられた形状で貼付されていてもよい。したがって、前記粘着シートの端部(把持部)の数としては、特に制限はなく、前記粘着シートの貼付形状などに応じて適宜選択することができる。この際、前記第二の貼付対象から露出する前記粘着シートの端部の数としては、少なくとも2つである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、全ての端部が、前記第二の貼付対象から露出していることが好ましい。以下、第二の貼付対象23から露出した粘着シート21の各端部を、第一の把持部A、第二の把持部B、第三の把持部C、第四の把持部Dなどと称することがある。
図2A~
図2Gにおいて、各把持部A~Dは、第一の貼付対象22からは露出していない例を示しているが、各把持部A~Dの少なくとも2つが、少なくとも第二の貼付対象23から露出している限り、特に制限はなく、各把持部A~Dの少なくともいずれかが第一の貼付対象22から露出していてもよい。
【0017】
<把持部>
前記把持部は、
図2A及び
図2Bに示すように、第一の貼付対象22上にそのまま配されていてもよく、
図2Cに示すように、第二の貼付対象23の側面(厚み方向の面)に配されていてもよく(
図2A~
図2Cにおける第一の把持部A及び第二の把持部B)、図には示さないが、第一の貼付対象22及び第二の貼付対象23の少なくともいずれかに隣接する、前記電子部品におけるその他の要素に接するように配されていてもよい。
【0018】
前記把持部は、前記粘着シートの端部であるが、前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の少なくともいずれかとの接着面における粘着層の数と、前記把持部における粘着層の数とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、前記粘着シートがその両面に粘着層を有する場合に、前記複数の把持部の少なくともいずれかにおける粘着層は、片面のみに配されていてもよい。また、前記複数の把持部における粘着層の数は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
また、前記把持部は、前記粘着シートの端部の少なくとも一部が加工されてなるものであってもよい。前記加工としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記粘着シートにおける粘着層を除く加工、前記粘着シートにおける粘着層の表面に剥離シートを配する加工、前記粘着シートにおける粘着層を離型剤等の公知の手段により非粘着性に修飾する加工などが挙げられる。
【0020】
前記剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記把持部の長さとしては、引き伸ばすことができる長さである限り、特に制限はなく、前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象に隣接する他の電子部品等との間隔などに応じて適宜選択することができるが、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上が更に好ましい。前記長さの上限値としては、特に制限はなく、電子部品の大きさなどに応じて適宜選択することができるが、20mm以下が好ましい。
前記各把持部の長さは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
前記把持部の幅としては、特に制限はなく、前記粘着シートの幅などに応じて適宜選択することができる。
【0023】
<伸張方向p>
前記電子部品における粘着シート21は、
図2B及び
図2Cに示す伸張方向pへ伸張することで容易に伸張剥離される。
図2Bは、粘着シート21の伸張方向pが、第一の貼付対象22及び第二の貼付対象23との貼付面に対して水平方向(180°方向)である態様を示し、
図2Cは、粘着シート21の伸張方向pが、第一の貼付対象22及び第二の貼付対象23との貼付面に対して垂直方向(90°方向)である態様を示すが、第一の貼付対象22及び第二の貼付対象23との貼付面に対する伸張方向pの角度としては、特に制限はなく、電子部品の周辺環境などに応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記電子部品における粘着シートは、前記複数の把持部を同時に伸張することで剥離されてもよく、前記複数の把持部のいずれか一つを伸張することで一部が剥離された後、他方を伸張することで残りの部分が剥離されてもよい。また、前記電子部品における粘着シートは、その少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出しているため、一方の端部(第一の把持部)から伸張剥離させる途中で粘着シートが千切れてしまった場合においても、他方の端部(第二の把持部)から伸長剥離して最後まで剥離することができる点で有利である。
【0025】
前記電子部品における前記粘着シートの再剥離性は、例えば、後述する試験例における<<再剥離性の評価1>>に記載の方法で確認することができる。前記再剥離性の評価において、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一端の把持部から伸長剥離させる途中で千切れても、他端の把持部から伸長剥離して最後まで剥離することができるものが再剥離性に優れるものである。
【0026】
<貼付面積の幅/貼付面積の長さ(X/Y)>
前記電子部品における前記粘着シートの貼付面積の幅をX(cm)とし、前記貼付面積の長さをY(cm)としたとき、[X/Y]で表される貼付面積の長さに対する貼付面積の幅の比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1/1~1/100,000が好ましく、1/1~1/10,000がより好ましく、1/1~1/1,000が更に好ましい。前記貼付面積の比が、1/1未満であると、粘着力が不十分となることがあり、1/100,000を超えると、伸張剥離時に粘着シートが千切れたり、剥離後に粘着剤による汚染が生じたりすることがある。
【0027】
<第一の貼付対象又は第二の貼付対象>
前記第一の貼付対象と、前記第二の貼付対象とは、同じ部品であってもよく、異なる部品であってもよい。また、前記第一の貼付対象と、前記第二の貼付対象とは入れ替えてもよい。
【0028】
前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の材質としては、特に制限はなく、電子部品の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、金属、合金、ガラス、プラスチック、セラミックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用されていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
【0029】
前記第一の貼付対象の具体例としては、バックシャーシ、ベゼル、板金、筐体、放熱シートなどが挙げられる。
【0030】
前記第二の貼付対象の具体例としては、ディスプレイ用ガラス、電池、ヒートシンク等の放熱部材、スピーカー、カメラ用レンズなどが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象は、回収部品であることが好ましい。前記回収部品とは、再利用又は再使用可能な部品である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子部品の製造工程中での不具合発生時の回収部品、廃棄時回収部品などが挙げられる。前記電子部品における粘着シートは、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができるため、前記回収部品としての前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の少なくともいずれかの回収を迅速に行うことができ、かつ、前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の少なくともいずれかが再利用又は再使用される際に、汚染がない点で有利である。
【0032】
以下に、前記電子部品のより具体的な実施態様について、図面を用いて説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0033】
前記電子部品がバッテリー等の小型部品である場合の実施態様について以下に具体的に説明する。
図3A及び
図3Bに示すように、粘着シート61の一方の表面61aは、バックシャーシ62のバッテリー63の固定部に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付される。次いで、粘着シート61の他方の表面61bは、バッテリー63に貼付される。この際、粘着シート61の長さ方向(伸長方向)の2つの端部(第一の把持部A及び第二の把持部B)は、バッテリー63の両端からそれぞれ露出した状態で貼付される。また、粘着シート61における第一の把持部A及び第二の把持部Bの貼付方法は、
図3Cで示すような態様であってもよい。
【0034】
また、前記電子部品がテレビのディスプレイ等の大型部品である場合の実施態様について以下に具体的に説明する。
図4A及び
図4Bに示すように、粘着シート71の一方の表面は、ベゼル72のディスプレイ73の固定部に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付される。次いで、粘着シート71の他方の表面は、ディスプレイ73に貼付される。この際、粘着シート71の長さ方向(伸長方向)の2つの端部(第一の把持部A及び第二の把持部B)は、ディスプレイ73の両端からそれぞれ露出した状態で貼付される。
【0035】
<粘着シート>
前記粘着シートは、粘着層を少なくとも有し、好ましくは基材層を有し、必要に応じて、更にその他の層を有する。
前記粘着シートの前記一方の表面及び前記他方の表面の少なくともいずれかが、前記粘着層からなることが好ましく、前記粘着シートの前記一方の表面及び前記他方の表面の両方が前記粘着層からなることがより好ましい。
【0036】
<<粘着層>>
前記粘着層は、粘着剤組成物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0037】
-粘着剤組成物-
前記粘着剤組成物は、前記粘着剤樹脂を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0038】
前記粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、公知の物の中から適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、ウレタン系粘着剤樹脂、シリコーン系粘着剤樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記粘着剤樹脂としては、アクリル系粘着剤樹脂が好ましい。
【0039】
--アクリル系粘着剤樹脂--
前記アクリル系粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル重合体と、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤を含有するものなどが挙げられる。
【0040】
前記アクリル重合体は、例えば、(メタ)アクリル単量体を含有する単量体混合物を重合させることによって製造することができる。
前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
前記炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、n-ブチルアクリレートを使用することが、被着体に対する優れた密着性を確保する上で特に好ましい。
【0042】
前記炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、前記アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、80重量%~98.5重量%の範囲で使用することが好ましく、90重量%~98.5重量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0043】
前記アクリル重合体の製造に使用可能な単量体としては、上述のものの他に、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することができる。
前記高極性ビニル単量体としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル単量体等の(メタ)アクリル単量体、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記水酸基を有するビニル単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0045】
前記水酸基を有するビニル単量体は、前記粘着剤樹脂としてイソシアネート系架橋剤を含有するものを使用する場合に使用することが好ましい。具体的には、前記水酸基を有するビニル単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0046】
前記水酸基を有するビニル単量体は、前記アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、0.01重量%~1.0重量%の範囲で使用することが好ましく、0.03重量%~0.3重量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0047】
前記カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0048】
前記アミド基を有するビニルの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0049】
前記高極性ビニル単量体は、前記アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、1.5重量%~20重量%の範囲で使用することが好ましく、1.5重量%~10重量%の範囲で使用することがより好ましく、2重量%~8重量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性の点でバランスのとれた粘着層を形成できるため更に好ましい。
【0050】
前記アクリル重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法で重合させる方法などが挙げられる。これらの中でも、前記アクリル重合体は、溶液重合法、塊状重合法で製造することが好ましい。
【0051】
前記重合の際には、必要に応じて、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系熱重合開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾの熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤などを使用することができる。
【0052】
前記方法で得られたアクリル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、30万~300万であるものを使用することが好ましく、50万~250万であるものを使用することがより好ましい。
【0053】
ここで、GPC法による前記アクリル重合体の重量平均分子量の測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0054】
前記アクリル系粘着剤樹脂としては、被着体との密着性や面接着強度を向上させるため、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。
【0055】
前記アクリル系粘着剤樹脂が含有する前記粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、30℃~180℃のものが好ましく、70℃~140℃のものが、高い接着性能を備えた粘着層を形成するうえでより好ましい。なお、(メタ)アクリレート系の粘着付与樹脂を使用する場合には、そのガラス転移温度が30℃~200℃のものが好ましく、50℃~160℃のものがより好ましい。
【0056】
前記アクリル系粘着剤樹脂が含有する粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記粘着付与樹脂は、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好ましい。
【0057】
前記粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アクリル重合体100重量部に対して、5重量部~65重量部の範囲で使用することが好ましく、8重量部~55重量部の範囲で使用することが、被着体との密着性を確保しやすくいためより好ましい。
【0058】
前記アクリル系粘着剤樹脂としては、前記粘着層の凝集力をより一層向上させるうえで、架橋剤を含有するものを使用することが好ましい。
【0059】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記架橋剤は、アクリル重合体の製造後に混合し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、アクリル重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0060】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、3官能のポリイソシアネート系化合物である、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体、トリフェニルメタンイソシアネートが特に好ましい。
【0061】
架橋度合いの指標として、前記粘着層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。前記粘着層の前記ゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10重量%~70重量%が好ましく、25重量%~65重量%がより好ましく、35重量%~60重量%が、凝集性と接着性がともに良好な粘着層を得るうえで更に好ましい。
【0062】
なお、ゲル分率は、下記方法で測定された値を指す。剥離シート上に、乾燥後の厚みが50μmになるように前記粘着剤樹脂、更に必要に応じて前記添加剤を含有する粘着剤組成物を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日間エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め前記試料のトルエン浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の重量(G2)を測定し、下記式(4)に従ってゲル分率が求められる。なお、試料中の導電性微粒子の重量(G3)は、試料の重量(G1)と粘着剤組成物の組成から算出する。
ゲル分率(重量%)=(G2-G3)/(G1-G3)×100 ・・・式(4)
【0063】
--ゴム系粘着剤樹脂--
前記ゴム系粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、合成ゴム系粘着剤樹脂や天然ゴム系粘着剤樹脂等の一般的に粘着剤樹脂として使用できるゴム材料と、必要に応じて粘着付与樹脂等の添加剤を含有するものなどが挙げられる。
【0064】
前記ゴム材料としては、例えば、ポリ芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体;スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等のスチレン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記スチレン系樹脂が好ましく、前記スチレン系樹脂を2種以上併用することが、前記粘着シートに優れた接着物性と保持力を与えることができるためより好ましく、前記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0065】
前記スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐構造、又は多分岐構造の単一構造のものを使用してもよく、異なる構造のものを混合して使用してもよい。前記線状構造が豊富なスチレン系樹脂を前記粘着層に使用した場合は、前記粘着シートに優れた接着性能を与えることができる。一方、分岐構造や多分岐構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは、擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができるため、高い保持力を与えることができる。このため、前記スチレン系樹脂は、必要な特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
【0066】
前記スチレン系樹脂としては、該スチレン系樹脂の全重量に対して、下記化学式(1)で表される構造単位を、10重量%~80重量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、12重量%~60重量%の範囲で有するものを使用することがより好ましく、15重量%~40重量%の範囲で有するものを使用することが更に好ましく、17重量%~35重量%の範囲で有するものを使用することが特に好ましい。これにより、優れた接着性と耐熱性を得ることができる。
【0067】
【0068】
前記スチレン系樹脂として、前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計重量に対する、前記スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0重量%~80重量であることが好ましく、0重量%~77重量%であることがより好ましく、0重量%~75重量%であることが更に好ましく、0重量%~70重量%であることが特に好ましい。前記スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートに優れた接着性能と熱耐久性とを両立させることができる。
【0069】
また、前記スチレン-イソプレン共重合体としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、1万~80万の範囲であるものを使用することが好ましく、3万~50万の範囲であるものを使用することがより好ましく、5万~30万の範囲であるものを使用することが更に好ましい。前記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記好ましい範囲内であることで、加熱流動性や溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程における作業性が良好でありながら、熱耐久性を備えた前記粘着シートを得ることができるため好ましい。
【0070】
ここで、GPC法による前記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量の測定は、GPC装置(SC-8020、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:テトラヒドロフラン
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-H(20) 2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0071】
前記スチレン-イソプレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法などが挙げられる。
【0072】
前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法、リビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
【0073】
前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記方法で製造した前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを混合する方法などが挙げられる。
【0074】
また、前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、ひとつの重合工程で同時に前記混合物として製造することも可能である。
より具体的な一態様としては、アニオンリビング重合法により、第一に、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いてスチレン単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリスチレンブロックを形成する。第二に、ポリスチレンブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合し、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を得る。第三に、前記リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を形成する。第四に、前記リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の残部を、重合停止剤を用いて、そのリビング性の活性末端を失活させ、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を形成させる。
【0075】
前記ゴム系粘着剤樹脂が含有する前記粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。これにより、優れた初期接着性と熱耐久性とを備えた前記粘着シートを得ることができる。
【0076】
前記粘着付与樹脂としては、常温(23℃)で固体状のものが好ましく、その具体例としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂等の石油樹脂や、重合ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン-フェノール樹脂、スチレン樹脂、クマロン-インデン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記粘着付与樹脂としては、前記C5系石油樹脂と重合ロジン系樹脂とを組み合わせて使用することが、より一層優れた初期接着性と熱耐久性とを両立するうえで好ましい。
【0077】
前記石油樹脂は、前記スチレン系樹脂を構成する前記化学式(1)で表される構造単位と相溶しやすく、その結果、前記粘着シートの初期接着力と熱耐久性とをより一層向上させることができる。
【0078】
前記C5系石油樹脂としては、例えば、エスコレッツ1202、エスコレッツ1304、エスコレッツ1401(以上、エクソンモービル社製)、ウイングタック95(グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー製)、クイントンK100、クイントンR100、クイントンF100(以上、日本ゼオン株式会社製)、ピコタック95、ピコペール100(理化ハーキュレス株式会社製)などが挙げられる。
【0079】
前記C9系石油樹脂としては、例えば、日石ネオポリマーL-90、日石ネオポリマー120、日石ネオポリマー130、日石ネオポリマー140、日石ネオポリマー150、日石ネオポリマー170S、日石ネオポリマー160、日石ネオポリマーE-100、日石ネオポリマーE-130、日石ネオポリマー130S、日石ネオポリマーS(以上、JX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ペトコール(登録商標)(東ソー株式会社製)などが挙げられる。
【0080】
前記C5系/C9系石油樹脂としては、前記C5系石油樹脂と、前記C9系石油樹脂との共重合体を使用することができ、例えば、エスコレッツ2101(エクソンモービル社製)、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製)、ハーコタック1149(理化ハーキュレス株式会社製)等を使用することができる。
【0081】
前記脂環族系石油樹脂としては、前記C9系石油樹脂に水素添加して得ることができ、例えば、エスコレッツ5300(エクソンモービル社製)、アルコンP-100(荒川化学工業株式会社製)、リガライトR101(理化ハーキュレス株式会社製)などが挙げられる。
【0082】
前記粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ゴム系粘着剤樹脂を構成する成分の全量に対して、0重量%~100重量%の範囲で使用することが好ましく、0重量%~70重量%の範囲で使用することがより好ましく、0重量%~50重量%の範囲で使用することが更に好ましく、0重量%~30重量%の範囲で使用することが特に好ましい。前記粘着付与樹脂を前記好ましい範囲内で使用することで、前記粘着層と前記基材層との界面密着性を高めながら前記粘着シートの優れた破断点伸度や熱耐久性とを両立させ易くなる。
【0083】
前記軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記スチレン系樹脂の全量に対して、3重量%~100重量%の範囲で使用することが好ましく、5重量%~80重量%の範囲で使用することがより好ましく、5重量%~80重量%の範囲で使用することが、より一層優れた接着性と優れた熱耐久性とを両立した前記粘着シートを得るうえで特に好ましい。
【0084】
また、定温環境での貼付性や初期接着性を得る目的で、前記軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂と組み合わせて、前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂を使用することもできる。
【0085】
前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、公知の前記粘着付与樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、室温で液状の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0086】
前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂の具体例としては、プロセスオイル、ポリエステル、ポリブテン等の液状ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂は、ポリブテンを使用することが、より一層優れた初期接着性を発現させるうえで好ましい。
【0087】
前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂は、前記粘着付与樹脂の全量に対して、0重量%~40重量%の範囲で使用することが好ましく、0重量%~30重量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0088】
また、前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂としては、前記スチレン系樹脂の全量に対して、0重量%~40重量%の範囲で使用することが好ましく、0重量%~30重量%の範囲で使用することが、初期接着力を向上させ良好に接着することができ、かつ、十分な熱耐久性を得ることができるためより好ましい。
【0089】
前記軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂と前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂との重量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂の重量/軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂の重量]で表される、前記軟化点が-5℃以下の粘着付与樹脂に対する前記軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂の重量比が、5~50となる範囲で使用することが好ましく、10~30となる範囲で使用することが、優れた初期接着性と優れた保持力とを両立した前記粘着シートを得るうえでより好ましい。
【0090】
前記スチレン系樹脂と前記粘着付与樹脂との重量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[スチレン系樹脂/粘着付与樹脂]で表される、前記粘着付与樹脂に対する前記スチレン系樹脂の重量比が、0.5~10.0となる範囲で使用することが好ましく、0.6~9.0となる範囲で使用することが、初期接着力を向上することができ、かつ、優れた熱耐久性を得ることができるためより好ましい。また、前記重量比[スチレン系樹脂/粘着付与樹脂]は、1よりも大きいことが、例えば、被着体の曲面部等に貼付した際に前記粘着シートの反発力に起因した剥がれを防止(耐反発性)するうえで好ましい。
【0091】
-その他の成分-
前記粘着剤組成物における前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、前記粘着剤樹脂以外のポリマー成分、フィラー粒子、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤等の添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記フィラー粒子を含むことが好ましい。
前記粘着層における前記その他の成分の含有量としては、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0092】
前記粘着層が前記フィラー粒子を含むことにより、前記粘着シートを伸長した際に前記フィラー粒子が該粘着層から露出し、これにより前記粘着層と被着体との接着面積が小さくなるため、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面(接着面)に対して垂直方向であっても容易に伸長剥離することができる点で有利である。
【0093】
前記フィラー粒子の種類としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、無機フィラー粒子であってもよく、有機フィラー粒子であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記無機フィラー粒子の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ホウ素化チタン、カーボン、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズ、酸化スズの水和物、硼砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム-カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、赤リン、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ジルコニア、酸化ジルコニア、セリウム、錫、インジウム、炭素、イオウ、テリウム、コバルト、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛、酸化錫、酸化インジウム、ダイヤモンド、マグネシウム、白金、亜鉛、マンガン、ステンレス、五酸化アンチモンなどが挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウム、ニッケルなどが好ましい。
また、前記無機フィラーは、前記粘着剤樹脂への分散性向上のため、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などの表面処理を施したものであってもよい。
【0095】
前記有機フィラー粒子の具体例としては、ポリスチレン系フィラー、ベンゾグアナミン系フィラー、ポリエチレン系フィラー、ポリプロピレン系フィラー、シリコーン系フィラー、尿素-ホルマリン系フィラー、スチレン/メタクリル酸共重合体、フッ素系フィラー、アクリル系フィラー、ポリカーボネート系フィラー、ポリウレタン系フィラー、ポリアミド系フィラー、エポキシ樹脂系フィラー、熱硬化樹脂系中空フィラーなどが挙げられる。
【0096】
前記フィラー粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、規則的な形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。前記フィラー粒子の形状の具体例としては、多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状などが挙げられる。これらの形状の前記フィラー粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの形状のフィラー粒子が凝集したものであってもよい。これらの中でも、前記フィラー粒子の形状としては、楕円状、球状、多角形状が好ましい。前記フィラー粒子形状が、楕円状、球状、多角形状などの形状であると、前記粘着シートを伸長した際に、前記粘着層の前記被着体に対する滑りが良好であり、前記粘着シートの伸長方向が該被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離することができる。
【0097】
前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5~20が好ましく、耐衝撃性の点で、2.5~15がより好ましく、2.5~5が更に好ましい。前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)が前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)が、2.5未満であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向である場合の伸長剥離性を損なうことがあり、20を超えると、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)は、例えば、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより前記フィラー粒子の粒子径を測定して、粒度分布に換算することで得られる。
【0098】
前記フィラー粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm~25μmが好ましく、5μm~20μmがより好ましく、5μm~14μmが更に好ましい。前記フィラー粒子の体積平均粒径が前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、前記フィラー粒子の体積平均粒径が、3μm未満であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向である場合に伸長剥離し難くなることがあり、25μmを超えると、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
前記フィラー粒子の体積平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより測定することができる。
【0099】
前記フィラー粒子の体積平均粒径と、後述する粘着層の平均厚みとの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[フィラー粒子の体積平均粒径/粘着層の平均厚み]で表される、前記粘着層の平均厚みに対する前記フィラー粒子の体積平均粒径との比率が、5/100以上であることが好ましく、5/100~95/100であることがより好ましく、10/100~75/100が更に好ましく、20/100~60/100が特に好ましい。前記比率が前記好ましい範囲内にあると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくい。また、前記比率が前記特に好ましい範囲内にあると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能もより優れる点で有利である。一方、前記比率が5/100未満であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向である場合の伸長剥離性を損なうことがあり、95/100を超えると、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
【0100】
前記粘着層における前記フィラー粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記粘着剤樹脂100重量部に対して、10重量部~90重量部であることが好ましく、15質量部~50質量部であることがより好ましく、20質量部~40質部であることが更に好ましい。前記粘着剤樹脂100重量部に対する前記フィラー粒子の含有量が10重量部未満であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向である場合に伸長剥離できないことや、前記粘着シートの千切れが生じ、前記粘着シートが伸長せず再剥離することができないことがある。また、前記粘着剤樹脂100重量部に対する前記フィラー粒子の含有量が90重量部を超えると、前記粘着シートが伸長しないこと、前記被着体に前記粘着剤組成物が残留すること、耐衝撃性が悪くなること、また、せん断接着力や割裂接着力が弱くなることなどがある。一方、前記フィラー粒子の含有量が前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる点で有利である。
前記粘着層における前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤組成物を調製する際に、適宜調製することができる。
【0101】
前記粘着層全体の体積に対する前記フィラー粒子の体積比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4%~40%が好ましく、5%~30%がより好ましく、5%~20%が更に好ましく、5%~15%が特に好ましい。前記フィラー粒子の体積比が、4%未満であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向である場合に伸長剥離できないことや、前記粘着シートの千切れが生じ、前記粘着シートが伸長せず再剥離することができないことがある。また、前記フィラー粒子の体積比が、40%を超えると、前記粘着シートが伸長しないこと、被着体に前記粘着剤組成物が残留すること、耐衝撃性が悪くなること、また、せん断接着力や割裂接着力が弱くなることなどがある。一方、前記フィラー粒子の体積比が前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートの伸長方向が被着体の貼付面に対して90°方向であっても容易に伸長剥離でき、前記粘着シートの基材の厚みが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる点で有利である。
【0102】
前記粘着層に対する前記フィラー粒子の体積比は、下記式(1)~(3)より算出することができる。
粘着剤樹脂*1の重量A(g)/粘着剤樹脂*1の密度A(g/cm3)=粘着剤樹脂*1の体積A(cm3) ・・・式(1)
フィラー粒子の重量B(g)/フィラー粒子の密度B(g/cm3)=フィラー粒子の体積B(cm3) ・・・式(2)
フィラー粒子の体積B(cm3)/(粘着剤樹脂*1の体積A(cm3)+フィラー粒子の体積B(cm3))×100=フィラー粒子の体積比(%) ・・・式(3)
なお、上記式(1)及び(3)において、*1で表される粘着剤樹脂は、後述する段落[0079]に記載のその他の成分を含んでいてもよい。
前記密度は、JIS Z 8804に準拠して測定した値である。
【0103】
前記粘着層の数としては、特に制限はなく、使用目的などに応じて適宜選択することができ、前記粘着シートの片面のみに配されていてもよく、両面に配されていてもよいが、両面に配されていることが好ましい。
【0104】
-粘着層の25%伸長時応力-
前記粘着層の25%伸長時応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.04MPa~0.4MPaが好ましく、0.05MPa~0.1MPaがより好ましい。前記粘着層の25%伸長時応力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、前記粘着層の25%伸長時応力が、0.04MPa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら前記粘着シートのせん断方向への荷重が生じた場合に前記粘着シートが剥がれてしまうことがあり、0.4MPaを超えると、前記粘着シートを引き剥がす際、該粘着シートを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
前記粘着層の25%伸長時応力は、前記粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0105】
-粘着層の破断点応力-
前記粘着層の破断点応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが0.5MPa~2.1MPaが好ましく、1.0MPa~2.1MPaがより好ましい。前記粘着層の破断点応力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際にも該粘着シートが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着シートを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、前記粘着層の破断点応力が、0.5MPa未満であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際に該粘着シートが千切れてしまうことがあり、2.1MPaを超えると、前記粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合に、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。なお、前記粘着シートを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着シートの厚みにも依存することになり、例えば、前記粘着シートの厚みが厚く破断点応力が高い粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。
前記粘着層の破断点応力は、前記粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0106】
-粘着層の破断点伸度-
前記粘着層の破断点伸度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、450%~1,300%が好ましく、500%~1,200%がより好ましく、600%~1,100%が更に好ましい。前記粘着層の破断点伸度が前記好ましい範囲内にあることで、好適な接着性と再剥離性を両立することができる。
前記粘着層の破断点伸度は、前記粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0107】
-粘着層の平均厚み-
前記粘着層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~150μmであることが好ましく、20μm~120μmであることがより好ましく、40μm~110μmであることが更に好ましく、50μm~100μmであることが特に好ましい。前記「粘着層の平均厚み」は、前記粘着シートにおける一方の面の粘着層の平均厚みを意味する。前記粘着シートの両面に前記粘着層を有する場合、前記一方の面の粘着層の平均厚みと、他方の面の粘着層の平均厚みとは、同じ厚みであってもよく、異なる厚みであってもよいが、同じ厚みであることが好ましい。
なお、本明細書において、「粘着層の平均厚み」とは、前記粘着シートを、長さ方向に100mm間隔で5箇所、幅方向に切断し、前記各切断面において幅方向に100mm間隔で5点の前記粘着層の合計厚みをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した、合計25点の厚みの平均値を指す。
【0108】
-粘着層の形成方法-
前記粘着層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材層の少なくとも一方の面に、ヒートプレス法、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などの方法により前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。これらの中でも、押し出し成型によるキヤスト法、溶液法が好ましい。
【0109】
前記溶液法としては、例えば、ロールコーター等で直接前記基材層に前記粘着剤組成物を含む溶液を塗布する方法、剥離シート上に前記粘着層を形成後、剥離して使用する方法などが挙げられる。
【0110】
前記剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
<<基材層>>
前記基材層としては、特に制限はなく、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で、粘着シートに使用し得る公知の材料の中から適宜選択することができるが、以下の基材用材料を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の成分を含んでいてもよい。
前記基材層は、単層構造であってもよく、2層、3層、又はそれ以上の複層構造であってもよい。
【0112】
-基材用材料-
前記基材用材料としては、例えば、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等のスチレン系樹脂;エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン等のポリウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルイミド;ポリイミドフィルム;フッソ樹脂;ナイロン;アクリル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
これらの中でも、前記スチレン系樹脂や、前記ポリウレタン樹脂は、好適な破断点伸度や破断点応力を得易いため好ましく、前記スチレン系樹脂がより好ましく、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0113】
--スチレン系樹脂--
前記スチレン系樹脂は、熱可塑性を示す樹脂であるため、押出成形や射出成形等の成形性に優れ、前記基材層を成形し易い。また、前記スチレン系樹脂は、一般的に熱可塑性樹脂と呼ばれる樹脂群の中でも特に優れた破断点伸度が得られ易く、前記粘着シートの基材として好適に使用できる。
【0114】
したがって、前記基材用材料において、全樹脂成分に対して前記スチレン系樹脂が占める割合としては、50%~100%が好ましく、60%~100%がより好ましく、65%~100%が更に好ましく、70%~100%が特に好ましい。前記スチレン系樹脂の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断点伸度や破断点応力が優れた基材層を得ることができる。
【0115】
前記スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐構造、又は多分岐構造の単一構造のものを使用してもよく、異なる構造のものを混合して使用してもよい。前記線状構造が豊富なスチレン系樹脂は、前記基材層に優れた破断点伸度を与えることができる。一方、分岐構造や多分岐構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは、擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができる。このため、前記スチレン系樹脂は、必要な機械特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
【0116】
前記スチレン系樹脂としては、該スチレン系樹脂の全重量に対して、前記化学式(1)で表される構造単位を13重量%~60重量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、15重量%~50重量%の範囲で有するものを使用することがより好ましく、15重量%~45重量%の範囲で有するものを使用することが更に好ましく、15重量%~35重量%の範囲で有するものを使用することが特に好ましい。前記スチレン系樹脂の全重量に対する下記化学式(1)で表される構造単位の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断点伸度や破断点応力が好適な範囲で得られ易くなる。
【0117】
前記スチレン系樹脂として、前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計重量に対する、前記スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0重量%~80重量%であることが好ましく、0重量%~70重量%の範囲であることがより好ましく、0重量%~50重量%であることが更に好ましく、0重量%~30重量%であることが特に好ましい。前記スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、優れた破断点伸度や破断点応力を維持しながら熱耐久性との両立が可能となる。
【0118】
また、前記スチレン-イソプレン共重合体としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、1万~80万の範囲であるものを使用することが好ましく、3万~50万の範囲であるものを使用することがより好ましく、5万~30万の範囲であるものを使用することが更に好ましい。前記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記好ましい範囲内であることで、加熱流動性や溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程における作業性が良好でありながら、熱耐久性を備えた前記基材層を得ることができるため好ましい。
前記GPC法による前記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量の測定は、前記「-ゴム系粘着剤樹脂-」の項目で記載した方法と同様である。
【0119】
前記スチレン-イソプレン共重合体、前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、及び前記スチレン-イソプレン共重合体と前記スチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記「-ゴム系粘着剤樹脂-」の項目で記載した方法と同様の方法などが挙げられる。
【0120】
--ポリウレタン樹脂--
前記ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上の軟化点を有するものが好ましく、50℃以上の軟化点を有するものがより好ましい。また、前記軟化点の上限としては、100℃以下であることが好ましい。前記軟化点は、JIS K 2207(乾球式)に準拠して測定した値を指す(以下、軟化点については同様である)。
【0121】
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応物を好適に使用することができる。
【0122】
前記ポリオール(b1-1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ポリオール(b1-1)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが、前記基材層の機械特性を得ることができるため好ましい。前記基材層において、耐熱性が必要となる場合はポリエステルポリオールを使用することが好ましく、耐水性や耐生分解性が必要な場合はポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0123】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステル、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0124】
前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能な前記低分子量のポリオールとしては、例えば、概ね重量平均分子量が50~300程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノールなどを使用することができる。
【0125】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びそれらの無水物又はエステル化物などが挙げられる。
【0126】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0127】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、後述する低分子量のポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
【0128】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0129】
前記ポリカーボネートポリオールの製造に使用可能な、前記炭酸エステル及び/又はホスゲンと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノールなどが挙げられる。
【0130】
前記ポリイソシアネート(b1-2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記ポリオール(b1-1)と前記ポリイソシアネート(b1-2)とを反応させてポリウレタン樹脂(b1)を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、反応容器に仕込んだ前記ポリオール(b1-1)を、常圧又は減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、前記ポリイソシアネート(b1-2)を一括又は分割して供給し反応させる方法などが挙げられる。
【0133】
前記ポリオール(b1-1)と前記ポリイソシアネート(b1-2)との反応は、前記ポリイソシアネート(b1-2)が有するイソシアネート基(NCO)と、前記ポリオール(b1-1)が有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH当量比)が、1.0~20.0の範囲で行うことが好ましく、1.1~13.0の範囲で行うことがより好ましく、1.2~5.0の範囲で行うことが更に好ましく、1.5~3.0の範囲で行うことが特に好ましい。
【0134】
前記ポリオール(b1-1)と前記ポリイソシアネート(b1-2)との反応条件としては、特に制限はなく、安全、品質、コスト等の諸条件を考慮して適宜選択することができるが、反応温度としては70℃~120℃が好ましく、反応時間としては30分間~5時間が好ましい。
【0135】
前記ポリオール(b1-1)と前記ポリイソシアネート(b1-2)とを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒、有機金属系触媒などを使用することができる。
【0136】
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行ってもよく、有機溶剤の存在下で行ってもよい。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤は、前記ポリウレタン樹脂(b1)の製造途中又は前記ポリウレタン(b1)を製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
【0137】
--その他の成分--
前記基材層における前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与樹脂;前記基材用材料以外のポリマー成分;架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記基材層における前記その他の成分の含有量としては、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0138】
前記粘着付与樹脂は、前記粘着シートにおける前記粘着層と、前記基材層との密着性を高めることや耐熱性を高める目的で使用することができる。
【0139】
前記粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、80℃以上のものが好ましく、90℃以上のものがより好ましく、100℃以上のものが更に好ましく、110℃以上のものが特に好ましい。
【0140】
前記粘着付与樹脂としては、例えば、前記「-ゴム系粘着剤樹脂-」の項目で記載したものなどを使用することができ、好ましい態様等も同様である。
【0141】
前記老化防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤(「加工安定剤」と称することもある)、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤が好ましく、これらを組み合わせて使用することが、前記基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着シートを得ることができるため好ましい。なお、前記リン系老化防止剤は、高温環境下において経時的にわずかに変色(黄変)する場合があるため、その使用量は、前記初期接着性と熱耐久性と変色防止とのバランスを考慮し適宜設定することが好ましい。
【0142】
前記フェノール系老化防止剤としては、一般に立体障害性基を有するフェノール系化合物を使用することができ、モノフェノール型、ビスフェノール型、ポリフェノール型が代表的である。具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
前記フェノール系老化防止剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基材用材料100重量部に対し、0.1重量部~5重量部の範囲で使用することが好ましく、0.5重量部~3重量部の範囲で使用することが、前記基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着シートを得ることができる。
【0144】
-基材層の25%伸長時応力-
前記基材層の25%伸長時応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2MPa~10.0MPaが好ましく、0.2MPa~5.0MPaがより好ましく、0.2MPa~3.0MPaが更に好ましく、0.2MPa~2.0MPa特に好ましい。前記基材層の25%伸長時応力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、前記基材層の25%伸長時応力が、0.2MPa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら前記粘着シートのせん断方向への荷重が生じた場合に前記粘着シートが剥がれてしまうことがあり、10.0MPaを超えると、前記粘着シートを引き剥がす際、該粘着シートを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
前記基材層の25%伸長時応力は、前記基材層を、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0145】
-基材層の破断点応力-
前記基材層の破断点応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5MPa~100.0MPaが好ましく、7.0MPa~50.0MPaがより好ましく、7.0MPa~40.0MPaが更に好ましく、8.0MPa~35.0MPaが特に好ましい。前記基材層の破断点応力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際にも該粘着シートが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着シートを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、前記基材層の破断点応力が、1.5MPa未満であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際に該粘着シートが千切れてしまうことがあり、100.0MPaを超えると、前記粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合に、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。なお、前記粘着シートを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着シートの厚みにも依存することになり、例えば、前記粘着シートの厚みが厚く破断点応力が高い粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。
前記基材層の破断点応力は、前記基材層を、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0146】
-基材層の破断点伸度-
前記基材層の破断点伸度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200%~1,300%が好ましく、400%~1,300%がより好ましく、700%~1,300%が更に好ましい。前記基材層の破断点伸度が200%以上であると、前記粘着シートが強固に被着体に接着している場合でも、該粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばすための応力が大きくなり過ぎず、引き剥がす際においても該粘着シートが過剰に伸びすぎることなく容易に引き剥がすことができる。また、前記破断点伸度が1,300%以下であると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎず小スペースでの作業が可能となる。一方、前記破断点伸度が、200%未満であると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばして剥がす際に破断を伴って剥がせないことがあり、1,300%を超えると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎるため作業性が悪くなることがある。
前記基材層の破断点伸度は、前記基材層を、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0147】
-基材層の平均厚み-
前記基材層の平均厚みとしては、特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができるが、10μm~500μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましく、20μm~200μmであることが更に好ましく、20μm~100μmであることが特に好ましい。前記基材層の平均厚みが前記好ましい範囲内であると、被着体の歪みに対して粘着シートが追従し易く高い接着強度を得易く、前記基材層を有する粘着シートを、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向に引き伸ばしながら再剥離する際に必要な応力が大きくなりすぎないため好ましい。
なお、本明細書において、「基材層の平均厚み」とは、前記基材層を、長さ方向に100mm間隔で5箇所、長さ方向に対して垂直な方向(「幅方向と称することもある」)に切断し、前記各切断面において幅方向に100mm間隔で5点の厚みをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した、合計25点の厚みの平均値を指す。
【0148】
-粘着層の平均厚み/基材層の平均厚み-
前記粘着層と前記基材層との厚みの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[粘着層の平均厚み/基材層の平均厚み]で表される、前記基材層の平均厚みに対する前記粘着層の平均厚みの比率が、1/5~5/1であることが好ましく、1/3~3/1であることがより好ましく、1/1~2/1であることが更に好ましい。前記基材層の平均厚みに対する前記粘着層の平均厚みの比率が前記好ましい範囲内にあると、前記粘着シートの優れた接着性と再剥離性を得ることができる。一方、前記比率が5/1より大きいと、前記粘着シートの再剥離工程で前記粘着層のみが被着体に残存してしまう可能性がある。また、前記比率が1/5より小さいと、被着体の表面が凹凸形状などの場合に粘着層が追従できずに顕著に接着強度が低下してしまう懸念がある。
【0149】
-基材層の形成方法-
前記基材層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、前記粘着シートに必要な機械的強度などに応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートプレス法、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、押し出し成型によるキヤスト法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法が、前記基材層に好適な柔軟性や伸張性を付与する上で好ましい。
【0150】
なお、前記基材層は、前記粘着層との密着性をより一層向上させることを目的として、表面処理が施されたものであってもよい。
前記表面処理法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、前記粘着シートの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、表面研磨・摩擦法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線照射処理法、酸化処理法などが挙げられる。
【0151】
<<その他の層>>
前記粘着シートにおける前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プライマー層、帯電防止層、不燃層、加飾層、導電層、熱伝導層、離型層などが挙げられる。
【0152】
-粘着シートの25%伸長時応力-
前記粘着シートの25%伸長時応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.15Mpa~82Mpaが好ましく、0.15Mpa~10Mpaがより好ましく、0.15Mpa~5Mpaが更に好ましく、0.15Mpa~2Mpaが特に好ましい。前記粘着シートの25%伸長時応力が0.15Mpa~82Mpaであると、前記粘着シートとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、前記粘着シートの25%伸長時応力が、0.15Mpa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら前記粘着シートのせん断方向への荷重が生じた場合に前記粘着シートが剥がれてしまうことがある。また、前記粘着シートの25%伸長時応力が、82Mpaを超えると、前記粘着シートを引き剥がす際、該粘着シートを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
前記粘着シートの25%伸長時応力は、前記粘着シートを、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0153】
-粘着シートの破断点応力-
前記粘着シートの破断点応力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5MPa~100.0MPaが好ましく、5.0MPa~50.0MPaがより好ましく、5.0MPa~40.0MPaが更に好ましく、5.0MPa~35.0MPaが特に好ましい。前記粘着シートの破断点応力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際にも該粘着シートが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着シートを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、前記粘着シートの破断点応力が、1.5MPa未満であると、前記粘着シートを引き伸ばして剥がす際に該粘着シートが千切れてしまうことがあり、100.0MPaを超えると、前記粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合に、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。なお、前記粘着シートを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着シートの厚みにも依存することになり、例えば、前記粘着シートの厚みが厚く破断点応力が高い粘着シートを引き伸ばして再剥離しようとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。
前記粘着シートの破断点応力は、前記粘着シートを、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0154】
-粘着シートの破断点伸度-
前記粘着シートの破断点伸度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500%~2,000%が好ましく、600%~1,800%がより好ましく、800%~1,800%が更に好ましい。前記粘着シートの破断点伸度が500%以上であると、前記粘着シートが強固に被着体に接着している場合でも、該粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばすための応力が大きくなり過ぎず、引き剥がす際においても該粘着シートが過剰に伸びすぎることなく容易に引き剥がすことができる。また、前記破断点伸度が2,000%以下であると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎず小スペースでの作業が可能となる。一方、前記破断点伸度が、500%未満であると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばして剥がす際に破断を伴って剥がせないことがあり、1,300%を超えると、前記粘着シートを再剥離する際に、前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎるため作業性が悪くなることがある。
前記粘着シートの破断点伸度は、前記粘着シートを、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0155】
-粘着シートの耐衝撃性-
前記粘着シートは、耐衝撃性に優れるものである。前記耐衝撃性は、例えば、後述する実施例における<<耐衝撃性の評価>>に記載の方法で確認することができる。前記耐衝撃性の評価において、粘着シートの剥がれ又は破壊が生じる撃芯の高さとしては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、30cm以上であることが好ましく、40cm以上であることがより好ましく、50cm以上であることが更に好ましく、60cm以上であることが特に好ましい。前記高さが30cm未満であると、十分な耐衝撃性を得ることができない。
【0156】
-粘着シートの180°ピール接着力-
前記粘着シートの180°ピール接着力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3N/20mm~35N/20mmが好ましく、4N/20mm~30N/20mmがより好ましく、5N/20mm~25N/20mmが更に好ましい。前記180°ピール接着力が、前記好ましい範囲内であると、被着体からの剥がれやズレを引き起こさず適度な接着力を有しながら、該粘着シートを前記被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばして再剥離する際に、容易に引き剥がすことができる。
前記粘着シートの180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定して測定した値を指す。
【0157】
-粘着シートのせん断接着力-
前記粘着シートは、該粘着シートのせん断方向への荷重が生じた場合であっても剥がれにくく、優れたせん断接着力を有するものである。なお、前記せん断方向とは、前記粘着シートの厚み方向に対して垂直な方向であれば特に制限はない。
前記粘着シートのせん断接着力としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、100N/4cm2以上が好ましく、120N/4cm2以上がより好ましく、150N/4cm2以上が更に好ましく、200N/4cm2以上が特に好ましい。前記せん断接着力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートで固定する被着体にせん断方向の応力が掛かった場合のズレを抑制することができる。
前記粘着シートのせん断接着力は、例えば、後述する実施例における<<せん断接着力の測定>>に記載の方法で確認することができる。
【0158】
-粘着シートの割裂接着力-
前記粘着シートは、該粘着シートの割裂方向(「厚み方向」と称することもある)への荷重が生じた場合であっても剥がれにくく、優れた割裂接着力を有するものである。前記粘着シートの割裂接着力としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、80N/4cm2以上が好ましく、100N/4cm2以上がより好ましく、120N/4cm2以上が更に好ましい。前記割裂接着力が、前記好ましい範囲内であると、前記粘着シートで固定する被着体に割裂方向の応力が掛かった場合の剥がれを抑制することができる。
前記粘着シートの割裂接着力は、例えば、後述する実施例における<<割裂接着力の測定>>に記載の方法で確認することができる。
【0159】
-粘着シートの平均厚み-
前記粘着シートの平均厚みとしては、特に制限はなく、前記粘着層及び前記基材層の平均厚みなどに応じて適宜選択することができるが、15μm~800μmであることが好ましく、30μm~540μmであることがより好ましく、60μm~320μmであることが更に好ましく、70μm~250μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「粘着層の平均厚み」とは、前記粘着シートを、長さ方向に100mm間隔で5箇所、幅方向に切断し、前記各切断面において幅方向に100mm間隔で5点の前記粘着層の厚みをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した、合計25点の厚みの平均値を指す。
【0160】
-粘着シートの平均幅-
前記粘着シートの平均幅としては、特に制限はなく、電子部品の種類に応じて適宜選択することができる。貼付対象の前記電子部品が、ディスプレイ、スピーカー、バッテリーなどであり、これらを固定する場合の前記粘着シートの平均幅としては、表示画面の有効性や貼付スペースにあわせて適宜調整することができるが、1mm~50mmが好ましく、1mm~25mmがより好ましく、0.5mm~10mmが更に好ましい。
なお、本明細書において、「粘着シートの平均幅」とは、前記粘着シートを、長さ方向に100mm間隔で5箇所の幅を、直尺(スケール)、巻尺、コンベックス等の公知のメジャーを用いて測定した、合計5点の幅の平均値を指す。
【0161】
<<粘着シートの製造方法>>
前記粘着シートを製造する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができるが、粘着層形成工程と、基材層形成工程と、積層工程とを含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の層形成工程を含む。また、前記粘着層形成工程と、前記基材層形成工程とを同時に行う多層同時形成工程により製造することもできる。
【0162】
-粘着層形成工程-
前記粘着層形成工程は、前記粘着層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「粘着層の形成方法」に記載した方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0163】
-基材層形成工程-
前記基材層形成工程は、前記基材層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「基材層の形成方法」に記載した方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0164】
-積層工程-
前記積層工程は、前記基材層と、前記粘着層とを積層する工程である。前記基材層と前記粘着層とを積層する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記基材層と前記粘着層とを加圧してラミネートする方法などが挙げられる。
【0165】
<電子部品の製造方法>
前記電子部品の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、貼付工程と、固定工程とを含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0166】
<<貼付工程>>
前記貼付工程は、粘着シートの一方の表面を、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付する工程である。
前記粘着シート、前記第一の貼付対象、及び少なくとも一部が直線状になるように貼付する態様としては、上述の通りである。
【0167】
<<固定工程>>
前記固定工程は、粘着シートの他方の表面を、第二の貼付対象に貼付し、かつ、前記粘着シートの少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付する工程である。
前記第二の貼付対象、及び少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態としては、上述の通りである。
【0168】
前記電子部品は、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備えているため、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の大型の電子機器や、それを構成する部品、また、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の小型の電子機器や、それを構成する部品など、電子部品の大きさにかかわらず、幅広い電子部品として利用可能である。
【実施例0169】
以下に試験例などを挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0170】
以下の製造例1~11の粘着シート(1)~(11)の製造において、基材層における樹脂組成物(1)~(3)及び粘着層における粘着剤組成物(1)~(8)は、以下のものを使用した。
【0171】
<樹脂組成物(1)>
前記樹脂組成物(1)としては、スチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物(以下、「SIS」と称することがある)であり、下記化学式(1)で表されるスチレン由来の構造単位25重量%、及び前記樹脂組成物(1)の全量に対するスチレン-イソプレン共重合体の割合が17重量%のものを使用した。
【0172】
【0173】
<樹脂組成物(2)>
前記樹脂組成物(2)としては、エステル系ポリウレタン化合物(モビロンフィルムMF100T、日清紡テキスタイル株式会社製)を使用した。
【0174】
<樹脂組成物(3)>
前記樹脂組成物(3)としては、スチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物(SIS)であり、前記化学式(1)で表されるスチレン由来の構造単位15重量%、及び前記樹脂組成物(3)の全量に対するスチレン-イソプレン共重合体の割合が12重量%のものを使用した。
【0175】
(調製例1:粘着剤組成物(1)の調製)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート75.94重量部、2-エチルヘキシルアクリレート5重量部、シクロヘキシルアクリレート15重量部、アクリル酸4重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06重量部、及び酢酸エチル200重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら65℃まで昇温させて混合物(1)を得た。次に、前記混合物(1)に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビスイソブチロニトリル溶液4重量部(固形分2.5重量%)を添加し、攪拌下、65℃で10時間ホールドして混合物(2)を得た。次に、前記混合物(2)を酢酸エチル98重量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量160万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(1)溶液を得た。次に、前記アクリル共重合体溶液(1)100重量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(D-125、荒川化学工業株式会社)5重量部と石油系粘着付与樹脂(FTR(登録商標)6125、三井化学株式会社製)15重量部使用とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31重量%の粘着剤樹脂溶液(1)を得た。次に、前記粘着剤樹脂溶液(1)100重量部に対し、カーボンブラック(MA220、三菱化学株式会社製)1質量部、架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7重量%、不揮発分40重量%)1.3重量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって固形分31.1重量%の粘着剤樹脂(1)を得た。
【0176】
(調製例2:粘着剤組成物(2)の調製)
前記調製例1で得られた粘着剤樹脂(1)の固形分100重量部に対して、フィラー1(水酸化アルミニウム、BW153、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を30重量部添加し、粘着剤組成物(2)を得た。
なお、前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)は、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより前記フィラー粒子の粒子径を測定して、粒度分布に換算することで得られた値である。
【0177】
(調製例3:粘着剤組成物(3)の調製)
前記調製例2において、フィラーの種類及び添加量を下記表1に示す種類及び添加量に変更したこと以外は、前記調製例2と同様の方法で粘着剤組成物(3)を調製した。
なお、フィラー2は、ニッケルパウダー(Type123、インコ社製、体積平均粒径:11.9μm)であり、前記フィラー1と同様の方法で測定した粒度分布(D90/D10)は、4.2である。
【0178】
(調製例4:粘着剤組成物(4)の調製)
前記調製例2において、フィラーの種類を下記表2に示す種類に変更したこと以外は、前記調製例2と同様の方法で粘着剤組成物(4)を調製した。
なお、フィラー3は、水酸化アルミニウム(B303、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:23μm)であり、前記フィラー1と同様の方法で測定した粒度分布(D90/D10)は、18.5である。
【0179】
(調製例5:粘着剤組成物(5)の調製)
前記調製例2において、フィラーの種類を下記表2に示す種類に変更したこと以外は、前記調製例2と同様の方法で粘着剤組成物(5)を調製した。
なお、フィラー4は、水酸化アルミニウム(BE033、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:3μm)であり、前記フィラー1と同様の方法で測定した粒度分布(D90/D10)は、5.8である。
【0180】
(調製例6:粘着剤組成物(6)の調製)
前記調製例2において、フィラーの添加量を下記表2に示す添加量に変更したこと以外は、前記調製例2と同様の方法で粘着剤組成物(6)を調製した。
【0181】
(調製例7:粘着剤組成物(7)の調製)
前記調製例2において、フィラーの添加量を下記表2に示す添加量に変更したこと以外は、前記調製例2と同様の方法で粘着剤組成物(7)を調製した。
【0182】
(調製例8:粘着剤組成物(8)の調製)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート97.97重量部、アクリル酸2.0重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.03重量部、及び重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を、酢酸エチル100重量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、重量平均分子量が200万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(2)を得た。次に、前記アクリル共重合体溶液(2)100重量部に対して、不均化ロジンのグリセリンエステル(スーパーエステルA100、荒川化学工業株式会社)25重量部と、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル(ペンセルD135、荒川化学工業株式会社製、)5重量部と、スチレン系石油樹脂(FTR(登録商標)6100、三井化学株式会社製)20重量部とを添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合し、固形分31重量%の粘着剤溶液(2)を得た。次に、前記粘着剤溶液(2)100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(コロネートL-45、日本ポリウレタン工業株式会社製、不揮発分45重量%)1.3重量部を添加し、均一になるよう攪拌混合することで固形分31.1重量%の粘着剤樹脂(2)を得た。
次に、得られた粘着剤樹脂(2)の固形分100重量部に対して、フィラー1(水酸化アルミニウム、BW153、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を30重量部添加し、粘着剤組成物(8)を得た。
【0183】
(製造例1:粘着シート(1)の製造)
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが25μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E-0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。
次に、前記樹脂組成物(1)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが100μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって基材層を作製した。
前記基材層の離型ライナーを剥離後、該基材層の両面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせ、前記基材層と前記粘着層との積層構造物に対して0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、粘着シート(1)を製造した。
【0184】
(製造例2:粘着シート(2)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層の厚み、粘着剤組成物の種類、及び粘着層の厚みを表1に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(2)を製造した。
【0185】
(製造例3:粘着シート(3)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、粘着剤組成物の種類を表1に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(3)を製造した。
【0186】
(製造例4:粘着シート(4)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、粘着剤組成物の種類を表1に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(4)を製造した。
【0187】
(製造例5:粘着シート(5)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層における樹脂組成物の種類及び粘着剤組成物の種類を表1に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(5)を製造した。
【0188】
(製造例6:粘着シート(6)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層における樹脂組成物の種類、基材層の厚み、粘着剤組成物の種類、及び粘着層の厚みを表1に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(6)を製造した。
【0189】
(製造例7:粘着シート(7)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、粘着剤組成物の種類を表2に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(7)を製造した。
【0190】
(製造例8:粘着シート(8)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層の厚み、粘着剤組成物の種類、及び粘着層の厚みを表2に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(8)を製造した。
【0191】
(製造例9:粘着シート(9)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層の厚み及び粘着剤組成物の種類を表2に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(9)を製造した。
【0192】
(製造例10:粘着シート(10)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層の厚み及び粘着剤組成物の種類を表2に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(10)を製造した。
【0193】
(製造例11:粘着シート(11)の製造)
製造例1の粘着シート(1)の製造において、基材層の厚み及び粘着剤組成物の種類を表2に記載の条件に変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で粘着シート(11)を製造した。
【0194】
製造例1~11の粘着シート(1)~(11)における基材層の25%伸長時応力、破断点応力、及び破断点伸度;製造例1~11の粘着シート(1)~(11)における粘着層の25%伸長時応力、破断点応力、破断点伸度、及びフィラーの体積比;並びに、製造例1~11の粘着シート(1)~(11)の25%伸長時応力、破断点応力、破断点伸度、耐衝撃性、180°ピール接着力、せん断接着力、及び割裂接着力は以下の方法で測定又は評価した。結果を下記表1及び2に示す。
【0195】
<<粘着シート又は基材層の25%伸長時応力、破断点応力、及び破断点伸度の測定>>
各粘着シート又は各基材層を、標線長さ20mm、幅6mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張ることで、各粘着シート又は各基材層の25%伸長時応力、破断点応力、及び破断点伸度を測定した。
【0196】
<<粘着層の25%伸長時応力、破断点応力、及び破断点伸度の測定>>
各粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張ることで、各粘着層の25%伸長時応力、破断点応力、及び破断点伸度を測定した。
【0197】
<<粘着層のフィラー粒子の体積比の測定>>
各粘着層のフィラーの体積比は、下記式(1)~(3)より算出した。
粘着剤樹脂の重量A(g)/粘着剤樹脂の密度A(g/cm3)=粘着剤樹脂の体積A(cm3) ・・・式(1)
フィラー粒子の重量B(g)/フィラー粒子の密度B(g/cm3)=フィラー粒子の体積B(cm3) ・・・式(2)
フィラー粒子の体積B(cm3)/(粘着剤樹脂の体積A(cm3)+フィラー粒子の体積B(cm3))×100=フィラー粒子の体積比(%) ・・・式(3)
なお、粘着剤樹脂の密度Aは1.2g/cm3、フィラー粒子の密度Bとして、水酸化アルミニウムの密度は2.42g/cm3、ニッケルの密度は8.90g/cm3として算出した。
【0198】
<<耐衝撃性の評価>>
各粘着シートを長さ20mm、幅5mmに切断したものを、それぞれ2枚用意した。
図5Aに示すように、アクリル板32(長さ50mm、幅50mm、厚さ2mm、アクリライトL、色調:無色、三菱レイヨン株式会社製)に、前記粘着シート31を40mmの間隔をあけて平行に貼付した。次に、
図5Bに示すように、前記粘着シート31を貼付したアクリル板32を、ABS板33(長さ150mm、幅100mm、厚さ2mm、タフエースR、住友ベークライト社製、色相:ナチュラル、シボなし)の中央部に貼付し、前記アクリル板32と、前記粘着シート31と、前記ABS板33との積層構造物に対して2kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気40℃、50%RHの条件下で24時間静置したものを試験片とした。
デュポン衝撃試験機(テスター産業株式会社製)の台座の上に、
図5Cに示すように、コの字型測定台34(長さ150mm、幅100mm、高さ45mm、厚さ5mmのアルミ製)を設置し、その上に前記試験片を、該試験片におけるアクリル板32が下向きになるようにして載せた。雰囲気23℃、50%RHの条件下で、ステンレス製の撃芯(直径25mm、重量300g)35を、ABS板33側からABS板33の中心部分に落下させた。このとき、撃芯35の高さを10cmから開始して10cmずつ変化させながら、高さ毎に10秒間隔で撃芯35を5回落下させ、前記試験片における粘着シートの剥がれ又は破壊が認められた時の高さを測定した。なお、30cm以上から落下させた場合に、粘着シートの剥がれ又は破壊がないものが、使用上問題のないものである。
【0199】
<<180°ピール接着力の測定>>
各粘着シートの180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定した。具体的には、各粘着シートを、長さ150mm、幅20mmに切断し、該粘着シートの一方の面に、厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちした。次に、前記粘着シートの他方の面を、雰囲気23℃、50%RHの条件下でステンレス板(長さ100mm、幅30mm、厚さ3mm)に貼付し、前記粘着シートと、前記ステンレス板との積層構造物に対して2kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で1時間静置したものを試験片とした。
前記試験片における粘着シートを、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、180°方向(水平方向)にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度300mm/分間の速度で引き伸ばし、前記粘着シートの180°ピール接着力を測定した。
【0200】
<<せん断接着力の測定>>
各粘着シートをそれぞれ長さ20mm、幅20mmに切断した。雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記粘着シートの一方の面に、耐水研磨紙(360番)でヘアライン研磨処理を施した清潔なステンレス板A(長さ100mm、幅30mm、厚さ3mm)の表面に、貼付面積が20mm×20mmになるように貼付した。次に、前記粘着シートにおける前記ステンレス板Aを貼付した面とは反対側の面に、耐水研磨紙(360番)でヘアライン研磨処理を施した清潔で表面が平滑なステンレス板B(長さ100mm、幅30mm、厚さ3mm)を貼付し、前記ステンレス板Aと、前記粘着シートと、前記ステンレス板Bとの積層構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で24時間静置したものを試験片とした。
雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記試験片を構成するステンレス板Aを固定した状態で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、前記試験片を構成するステンレス板Bを粘着シートのせん断方向に、引張速度50mm/分間の速度で引き伸ばし、せん断接着力を測定した。
【0201】
<<割裂接着力の測定>>
各粘着シートをそれぞれ長さ20mm、幅20mmに切断した。雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記粘着シートの一方の面に、清潔で表面平滑なアルミ板(合金番号A1050、長さ50mm、幅40mm、厚さ3mm)の表面に、貼付面積が20mm×20mmになるように貼付した。次に、前記粘着シートにおける前記アルミ板を貼付した面とは反対側の面に、清潔で表面が平滑なアルミ板(合金番号A1050、長さ50mm、幅40mm、厚さ3mm)を貼付し、前記2枚のアルミ板と、前記粘着シートとの積層構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で24時間静置したものを試験片とした。
雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記試験片を構成するアルミ板Aを固定した状態で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、前記試験片を構成するアルミ板Bを粘着シートの割裂方向(厚み方向)に、引張速度50mm/分間の速度で引き伸ばし、割裂接着力を測定した。
【0202】
【0203】
【0204】
(試験例1~11)
製造例1~11の粘着シート(1)~(11)をそれぞれ幅10mm、長さ60mmに切断し、
図6Aに示すように、粘着シート41の一方の表面41aを清潔で表面平滑なアルミ板42(合金番号A1050、長さ50mm、幅40mm、厚さ3mm)に対して直線状になるように貼付した。次いで、粘着シート41の他方の表面41bを清潔で表面平滑なアクリル板43(長さ40mm、幅40mm、厚さ3mm、アクリライトL、色調:無色、三菱レイヨン株式会社製)に貼付した。この際、アクリル板43の両端からそれぞれ粘着シート41の長さ方向(伸長方向)の両端(第一の把持部A及び第二の把持部B)を、それぞれ幅10mm、長さ10mm露出した状態で貼付した。次いで、アルミ板42と、粘着シート41と、アクリル板43との積層物構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で3日間静置した。
試験例1~11で使用した各粘着シートは、下記表3に示す通りである。なお、下記表3において、この貼付態様を、「X」として示す。
【0205】
(比較試験例1~11)
製造例1~11の粘着シート(1)~(11)をそれぞれ幅10mm、長さ70mmに切断し、
図6Cに示すように、粘着シート44の一方の表面44aを清潔で表面平滑なアルミ板42(合金番号A1050、長さ50mm、幅40mm、厚さ3mm)に対して直線状になるように貼付した。次いで、粘着シート44の他方の表面44bを清潔で表面平滑なアクリル板43(長さ40mm、幅40mm、厚さ3mm、アクリライトL、色調:無色、三菱レイヨン株式会社製)に貼付した。この際、アクリル板43の一端から粘着シート44の長さ方向(伸長方向)の一方の端部(把持部A’)を、幅10mm、長さ10mm露出した状態で貼付した。次いで、アルミ板42と、粘着シート44と、アクリル板43との積層物構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で3日間静置した。
比較試験例1~11で使用した各粘着シートは、下記表3に示す通りである。なお、下記表3において、この貼付態様を、「Y」として示す。
【0206】
<<再剥離性の評価1>>
試験例1~11及び比較試験例1~11の各積層物構造物について、以下の方法で水平方向の再剥離性について評価した。
試験例1~11で使用した各粘着シートにおける第一の把持部A及び第二の把持部B、及び比較試験例1~11で使用した各粘着シートにおける把持部A’を、それぞれ雰囲気23℃、50%RHの条件下で、180°方向(水平方向)(
図6Aの伸張方向p又は
図6Cの伸張方向pで示す方向)にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度300mm/分間の速度で引き伸ばし、伸張剥離試験を行った。前記伸長剥離試験は、前記水平方向への伸張剥離試験を5回(n=5)、及び前記垂直方向への伸張剥離試験を5回(n=5)の合計10回行った。なお、試験例1~11の貼付態様Xの場合は、第一の把持部A及び第二の把持部Bのいずれか一方から伸張剥離した後、もう一方から伸長剥離し、これを1回(n=1)の試験とした。
この伸張剥離試験で、粘着シート剥離後の被着体(アクリル板)への粘着剤の残留の程度を目視にて確認し、下記評価基準に基づき評価した。また、伸張剥離時の粘着シートの千切れ、及びアルミ板とアクリル板との解体性について、下記評価基準に基づき評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0207】
[粘着剤の残留の評価基準]
○:粘着剤の残留がなかった
×:粘着剤の残留があった
なお、粘着剤の残留の評価基準において、「○」が使用上問題のないものである。
【0208】
なお、前記伸長剥離試験における粘着剤の残留の程度の一例として、試験例1の水平方向への伸張剥離後のアクリル板の外観を
図7Aに、比較試験例1の水平方向への伸張剥離後のアクリル板の外観を
図7Bに示す。
図7Aにおいて、「410」は粘着シートを貼付していた場所を示し、「p」は粘着シートの伸張方向を示す。また、
図7Bにおいて、「440」は粘着シートを貼付していた場所を示し、「p」は粘着シートの伸張方向を示す。この結果からも明らかなように、貼付態様Xで貼付した場合は、粘着剤の残留がなかったのに対し、貼付態様Yで貼付した場合は、粘着シートの明らかな残留が認められた。
【0209】
[千切れの評価基準]
◎:千切れた回数が、0回であった
○:千切れた回数が、1回~2回であった
△:千切れた回数が、3回~4回であった
×:千切れた回数が、5回であった
なお、千切れの評価基準において、「○」及び「◎」が使用上問題のないものである。
【0210】
[解体性の評価基準]
◎:解体できた回数が、5回であった
○:解体できた回数が、3回~4回であった
△:解体できた回数が、1回~2回であった
×:解体できた回数が、5回であった
なお、解体性の評価基準において、「○」及び「◎」が使用上問題のないものである。
【0211】
【0212】
上記表3の結果より、試験例1~11の貼付態様がXの場合は、いずれも剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部(第一の把持部)から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部(第二の把持部)から伸長剥離して最後まで剥離することができることがわかった。一方、比較試験例1~11の貼付態様がYの場合は、伸張剥離できたとしても、被着体上に粘着剤が残留しており、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れてしまった場合は、最後まで剥離することができず、アルミ板とアクリル板とを解体することができなかった。
【0213】
<<再剥離性の評価2>>
試験例1~11の各積層物構造物について、以下の方法で垂直方向の再剥離性について評価した。
前記<<再剥離性の評価1>>において、試験例1~11で使用した各粘着シートにおける第一の把持部A及び第二の把持部Bの引き伸ばし条件を、180°方向(水平方向)(
図6Aの伸張方向pで示す方向)から、粘着シートの貼付面に対して90°方向(垂直方向)(
図6Bの伸張方向pで示す方向)に変更したこと以外は、前記<<再剥離性の評価1>>と同様の方法で伸張剥離試験を行い、前記<<再剥離性の評価1>>と同様の方法で、粘着シート剥離後の被着体(アクリル板)への粘着剤の残留の程度、伸張剥離時の粘着シートの千切れ、及びアルミ板とアクリル板との解体性について評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0214】
【0215】
上記表4の結果より、試験例2~11の粘着シート(2)~(11)は、粘着シートの貼付面に対して90°方向(垂直方向)に伸張剥離した場合であっても、剥離後に粘着剤による汚染がないことがわかった。
【0216】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付された粘着シートを備えたことを特徴とする電子部品である。
<2> 第一の貼付対象及び第二の貼付対象の少なくともいずれかが、回収部品である前記<1>に記載の電子部品である。
<3> 回収部品が、ディスプレイ用ガラス及び電池の少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子部品である。
<4> 電子部品における粘着シートの貼付面積の幅をX(cm)とし、前記貼付面積の長さをY(cm)としたとき、前記貼付面積の長さに対する前記貼付面積の幅の比(X/Y)が1/100,000~1/1である前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子部品である。
前記電子部品は、迅速に剥離することができ、剥離後に粘着剤による汚染がなく、一方の端部から伸長剥離させる途中で千切れても、他方の端部から伸長剥離して最後まで剥離することができ、かつ、使用時においては好適な粘着力を有する粘着シートを備えているため、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の大型の電子機器や、それを構成する部品、また、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の小型の電子機器や、それを構成する部品など、電子部品の大きさにかかわらず、幅広い電子部品として利用可能である。
一方の表面が、第一の貼付対象に対して少なくとも一部が直線状になるように貼付され、他方の表面が、第二の貼付対象に貼付され、かつ、少なくとも2つの端部が前記第二の貼付対象から露出した状態で前記第二の貼付対象に貼付された伸長剥離可能な粘着シートを備え、
前記第二の貼付対象から露出した少なくとも2つの前記端部は、それぞれ把持して引き伸ばすことが可能であり、
前記第一の貼付対象及び前記第二の貼付対象の少なくともいずれかが回収部品であり、前記回収部品が、ディスプレイ用ガラス及び電池の少なくともいずれかであることを特徴とする電子部品。
前記粘着シートの貼付面積の幅をX(cm)とし、前記貼付面積の長さをY(cm)としたとき、前記貼付面積の長さに対する前記貼付面積の幅の比(X/Y)が1/100,000~1/1である請求項1に記載の電子部品。