(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008895
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220106BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20220106BHJP
C08J 7/02 20060101ALI20220106BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C55/02
C08J7/02 Z CEX
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164707
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2018528840の分割
【原出願日】2017-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2016142704
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 絵美
(72)【発明者】
【氏名】風藤 修
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F073
4F210
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB15
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2H291LA11
4F073AA05
4F073AA26
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4F210QG18
4F210QM15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄いPVAフィルムを用いた場合であっても延伸時や乾燥時などに破断が発生しにくく、偏光性能に優れた偏光フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも膨潤工程、染色工程および延伸工程を施す偏光フィルムの製造方法であって、原料として乾燥厚みBが0.001mm以上0.045mm以下であり、前記工程のうち少なくとも一つにおいて、ポリビニルアルコールフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して前記フィルムの両面から両端部に付着した水を除去する際に、前記フィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを28mm以下とし、
前記フィルムを一対のロールでニップすることによって前記フィルムの両端部に付着した水を除去し、
前記一対のロールの各回転軸間の距離a(cm)と各ロールの半径b1(cm)およびb2(cm)が下記式(2)を満足する。
0.5≦a/(b1+b2)≦0.90(2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールフィルムに対して、少なくとも膨潤工程、染色工程および延伸工程を施す偏光フィルムの製造方法であって、
原料として乾燥厚みBが0.001mm以上0.045mm以下であるポリビニルアルコールフィルムを用い、
前記工程のうち少なくとも一つにおいて、ポリビニルアルコールフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して前記フィルムの両面から両端部に付着した水を除去する際に、前記フィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを28mm以下とし、
前記フィルムを一対のロールでニップすることによって前記フィルムの両端部に付着した水を除去し、
前記一対のロールの各回転軸間の距離a(cm)と各ロールの半径b1(cm)およびb2(cm)が下記式(2)を満足することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
0.5≦a/(b1+b2)≦0.90 (2)
【請求項2】
水を除去する前記フィルムの両端部の幅が1cm以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記フィルム全面の水を除去する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
原料のポリビニルアルコールフィルムの乾燥厚みB(mm)と前記距離A(mm)が下記式(1)を満足する請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
A≦B×1000 (1)
【請求項5】
前記ロールがスポンジロールである請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記スポンジロールの保水率が50%以上95%以下である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
延伸工程の前に、前記フィルムの両端部に付着した水を除去する請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
さらに架橋工程又は固定処理工程を施す請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料として薄いポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は、偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有している。偏光板を構成する偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素(I3
-やI5
-等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして製造される。
【0003】
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範な用途において用いられている。近年、特に小型のノートパソコンや携帯電話などのモバイル用途へのLCDの需要が増えており、偏光板の薄型化が強く求められている。
【0004】
このようなことから偏光フィルムの薄膜化が求められており、その手段の一つとして、原料として薄いPVAフィルムを用いる方法が挙げられる。しかしながら、薄いPVAフィルムは延伸時や乾燥時などにフィルムの破断が発生しやすいため、偏光フィルムの生産速度の低下や不良品の増加によるコストの上昇を招きやすい。特に、膨潤工程や染色工程等において、PVAフィルムを水に浸漬した後にフィルム端部に折れ込みが生じて、これが原因で延伸時や乾燥時などにおいてPVAフィルムが破断して問題となっていた。
【0005】
薄い偏光フィルムを製造する方法として、プラスチックフィルム上にコート法によって薄いPVA層を形成した後、得られた積層体を延伸する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2)。しかしながら、このような方法は、コート作業やその後の乾燥作業が煩雑であった。また、PVA層を不溶化させるために積層体の熱処理を行う必要があった。そのため、熱処理後も延伸可能なプラスチックフィルムを使用する必要があり、コスト高であった。さらに、プラスチックフィルムとPVA層との間の接着強度が比較的高いため、延伸時にPVA層の適度なネックインが妨げられて、偏光性能に優れる偏光フィルムを得ることが困難であった。
【0006】
また、各処理槽から取り出したPVAフィルムの片面の液を取り除いた後、PVAフィルムの幅方向の両端部をエキスパンダーロール等を用いて拡幅する処理を施す方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、エキスパンダーロール等を用いてPVAフィルムの両端部を拡幅する処理を施しても、薄いPVAフィルムを水に浸漬した後に発生する数mm幅の細い折れ込みを解消させるのは難しく、延伸時や乾燥時においてPVAフィルムの破断が生じた。また、PVAフィルムの両端部を拡幅する処理を施すことによって、PVAフィルムにシワが入りやすくなり、外観異常が発生しやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-133303号
【特許文献2】特開2012-73570号
【特許文献3】国際公開第2014/115897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、薄いPVAフィルムを用いた場合であっても延伸時や乾燥時などにおいてフィルムの破断が発生しにくく、偏光性能に優れたフィルムを容易に得ることができる偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、薄いPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造する場合には、PVAフィルムを水に浸漬した後、取り出した直後にその端部に折れ込みが発生しやすく、それが原因となって、後の延伸工程において延伸切れが発生しやすくなったり、乾燥工程においてフィルムの収縮による破断が発生しやすくなったりすることを突き止めた。そして、PVAフィルムを水に浸漬した後、取り出した直後に、PVAフィルムに付着した水を、その両面から除去することによって、当該PVAフィルムの端部における折れ込みの発生が抑制されて、フィルムの破断(延伸切れ等)を防ぐことができることを見出した。これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]ポリビニルアルコールフィルムに対して、少なくとも膨潤工程、染色工程および延伸工程を施す偏光フィルムの製造方法であって、
原料として乾燥厚みBが0.001mm以上0.045mm以下であるポリビニルアルコールフィルムを用い、
前記工程のうち少なくとも一つにおいて、ポリビニルアルコールフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して前記フィルムの両面から両端部に付着した水を除去する際に、前記フィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを28mm以下とする延伸フィルムの製造方法;
[2]水を除去する前記フィルムの両端部の幅が1cm以上である上記[1]の製造方法;
[3]前記フィルム全面の水を除去する上記[2]の製造方法;
[4]原料のポリビニルアルコールフィルムの乾燥厚みB(mm)と前記距離A(mm)が下記式(1)を満足する上記[1]~[3]のいずれかの製造方法;
A≦B×1000 (1)
[5]前記フィルムを一対のロールでニップすることによって前記フィルムの両端部に付着した水を除去する上記[1]~[4]のいずれかの製造方法;
[6]前記ロールがスポンジロールである上記[5]の製造方法;
[7]前記スポンジロールの保水率が50%以上95%以下である上記[6]の製造方法;
[8]一対のロールの各回転軸間の距離a(cm)と各ロールの半径b1(cm)およびb2(cm)が下記式(2)を満足する上記[5]~[7]のいずれかの製造方法;
0.1≦a/(b1+b2)≦0.97 (2)
[9]延伸工程の前に、前記フィルムの両端部に付着した水を除去する上記[1]~[8]のいずれかの製造方法;
[10]さらに架橋工程又は固定処理工程を施す上記[1]~[9]のいずれかの製造方法;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、薄いPVAフィルムを用いた場合であっても延伸時や乾燥時などにフィルムの破断が発生しにくく、偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】PVAフィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを示す概略図である。
【
図3】実施例1において、PVAフィルムを連続的に巻き出して、膨潤工程、染色工程および架橋工程を施すことを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の偏光フィルムの製造方法は、PVAフィルムに対して、少なくとも膨潤工程、染色工程および延伸工程を施す偏光フィルムの製造方法であって、原料として乾燥厚みBが0.001mm以上0.045mm以下であるPVAフィルムを用い、前記工程のうち少なくとも一つにおいて、PVAフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して前記フィルムの両面から両端部に付着した水を除去する際に、前記フィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを28mm以下とするものである。
【0014】
本発明において、PVAフィルムの製造に用いられるPVAは、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化する方法等によって製造することができる。前記ビニルエステルの中でも、PVAの製造が容易である点、入手が容易である点、コストが低減される点等から、分子中にビニルオキシカルボニル基(H2C=CH-O-CO-)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
【0015】
前記ポリビニルエステルは、単量体としてビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましい。このとき使用されるビニルエステルは2種以上でもよいが1種が好ましい。本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記ポリビニルエステルは、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
【0016】
前記ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等の炭素数2~30のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸またはその塩などを挙げることができる。前記ポリビニルエステルは、前記他の単量体に由来する構造単位を1種または2種以上有することができる。
【0017】
前記ポリビニルエステルに占める他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。
【0018】
本発明の効果を損なわない範囲内であれば、PVAは1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。このとき、ポリビニルエステル又はPVAに対してグラフト共重合を行うことができる。グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2~30のα-オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステルまたはPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルまたはPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。本発明で用いられるPVAはグラフト共重合されていないものが好ましい。
【0019】
前記PVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。また上記のPVAはその水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、アセタール構造を形成していなくてもよい。
【0020】
前記PVAの平均重合度は特に限定されないが、1,000以上であることが好ましい。PVAの平均重合度が1,000以上であることにより、得られる偏光フィルムの偏光性能をさらに向上させることができる。PVAの平均重合度が高すぎるとPVAの製造コストが上昇するおそれや製膜時における工程通過性が不良となるおそれがある。そのため、PVAの平均重合度は1,000~10,000であることがより好ましく、1,500~8,000であることが更に好ましく、2,000~5,000であることが特に好ましい。本発明において、PVAの平均重合度はJIS K6726-1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
【0021】
前記PVAのけん化度は得られる偏光フィルムの耐湿熱性が良好になる観点から、99.0モル%以上であることが好ましく、99.8モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることが更に好ましい。本発明において、PVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対する当該ビニルアルコール単位のモル数の割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726-1994の記載に準じて測定することができる。
【0022】
本発明で用いられる原料のPVAフィルム中の前記PVAの含有率は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、85~100質量%が更に好ましい。
【0023】
PVAフィルムは可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、取り扱い性や延伸性等が向上する。可塑剤として多価アルコールが好ましく用いられ、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらのうちでもPVAフィルムの延伸性がより向上する観点からグリセリンが好ましい。
【0024】
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して3~20質量部であることが好ましく、5~17質量部であることがより好ましく、7~14質量部であることが更に好ましい。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して3質量部以上であることによりPVAフィルムの延伸性がさらに向上する。一方、PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
【0025】
また、後述する製膜原液を用いてPVAフィルムを製造する場合に、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されるとともに、製膜に金属ロールやベルトを使用した際に、これらからPVAフィルムを剥離し易くなる点から、当該製膜原液に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を含有する製膜原液を用いてPVAフィルムを製造した場合には、得られるPVAフィルム中に界面活性剤が含有されることがある。前記界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからPVAフィルムを剥離し易い観点から、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。これらの界面活性剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
【0027】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
【0028】
製膜原液中の界面活性剤の含有量は、PVA100質量部に対して0.01~0.5質量部が好ましく、0.02~0.3質量部がより好ましい。界面活性剤の含有量が0.01質量部以上であることにより製膜性および剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量が0.5質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。PVAフィルム中における界面活性剤の含有量は、製膜原液中の界面活性剤の含有量として上述した範囲が好ましい。
【0029】
PVAフィルムはPVAのみからなるものであってもよいし、PVA並びに可塑剤および/または界面活性剤のみからなっていてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤などのPVA、可塑剤および界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。
【0030】
PVAフィルムの製造方法は特に限定されないが、厚みや幅が均一なフィルムが得られる点から、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが好ましく、キャスト製膜法、押出製膜法がより好ましい。これらの製膜方法の中でも、厚みおよび幅が均一であり、なおかつ物性も良好なPVAフィルムが得られる点から、押出製膜法が特に好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。
【0031】
PVAフィルムの製造に用いられる製膜原液として、PVA、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、その他の成分が液体媒体に溶解した製膜原液や、PVA、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、その他の成分、液体媒体を含み、PVAが溶融した製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液中の各成分が均一に混合されていることが好ましい。
【0032】
製膜原液に使用される液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さい点や回収性の点から水が好ましい。
【0033】
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によって異なるが、50~95質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましく、60~85質量%が更に好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。製膜して得られたPVAフィルムを必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
【0034】
PVAフィルムの形状に特に限定はないが、偏光フィルムを生産性良く連続的に製造することができることから、長尺のPVAフィルムであることが好ましい。当該PVAフィルムの長さは特に限定されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5~20,000mとすることができる。当該PVAフィルムの幅は特に限定されないが、近年幅広の偏光フィルムが求められていることから50cm以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、4m以上であることが更に好ましい。当該PVAフィルムの幅の上限に特に限定されないが、広すぎると、実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に、均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
【0035】
本発明において、前記PVAフィルムの乾燥厚みBが0.001mm以上0.045mm以下である必要がある。このように従来使用されていたPVAフィルムよりも薄いものを偏光フィルムの原料として用いた場合、幅方向の端部に折れ込みが発生しやすく問題となっていた。それに対して、本発明の製造方法によれば、薄いPVAフィルムを用いた場合であっても、端部の折れ込みが防止されるため、延伸時や乾燥時などに破断が発生しにくく、高い延伸倍率で延伸できるため、偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造することができる。前記PVAフィルムの乾燥厚みBが0.035mm以下であることが好ましい。PVAフィルムの厚みの下限は特に限定されないが、偏光フィルムをさらに容易に製造することができることから、0.003mm以上であることが好ましい。また、PVAフィルムは単層であっても、PVAの層と他の層とが積層された積層体であってもよいが、本発明の効果がより顕著に奏されることから単層であることが好ましい。積層体の場合にはPVA層の厚みが上記範囲にあることが好ましい。
【0036】
こうして得られた原料のPVAフィルムに対して、少なくとも膨潤工程、染色工程および延伸工程を施すことによって偏光フィルムを製造する。このとき、PVAフィルムに対して、さらに架橋工程又は固定処理工程を施すことが好ましい。以下、これらの工程において具体的に説明する。
【0037】
[膨潤工程]
PVAフィルムの膨潤処理を行う膨潤工程は、PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。通常、原料のPVAフィルムに対して最初に膨潤工程が施される。PVAフィルムを膨潤処理する際の水の温度は、20~40℃が好ましく、22~38℃がより好ましく、25~35℃が更に好ましい。また、水に浸漬する時間としては、0.5~5分間が好ましく、1~3分間がより好ましい。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合物であってもよい。
【0038】
[染色工程]
PVAフィルムの染色処理を行う染色工程は、二色性色素を含む水溶液中にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。前記水溶液中の二色性色素の濃度は二色性色素の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば0.001~1質量%の範囲内とすることができる。前記水溶液としてヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液[ヨウ素(I2)とヨウ化カリウム(KI)を含む水溶液]を用いる場合には、ヨウ素系色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができる。当該水溶液中のヨウ素(I2)の濃度は0.01~1.0質量%が好ましく、ヨウ化カリウム(KI)の濃度は0.01~10質量%が好ましい。二色性色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができる点から、染色処理する際の二色性色素を含む水溶液の温度は、20~50℃が好ましく、25~40℃がより好ましい。PVAフィルムを前記水溶液に浸漬する時間は、0.1~10分間が好ましく、0.2~5分間がより好ましい。
【0039】
上記の二色性色素としては、ヨウ素系色素(I3
-やI5
-等)、二色性有機染料などが挙げられる。ヨウ素系色素は、例えば、ヨウ素(I2)とヨウ化カリウムとを接触させることにより得ることができる。また、二色性有機染料としては、ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などが挙げられる。これらの二色性色素の中でも、取り扱い性、入手性、偏光性能などの観点からヨウ素系色素が好ましい。なお、二色性色素は1種であっても2種以上であってもどちらでもよく、例えば、I3
-およびI5
-のように平衡混合物であってもよい。
【0040】
[架橋工程]
PVAフィルムの架橋処理を行う架橋工程は、PVAフィルムを架橋剤を含む水溶液に浸漬することにより行うことができる。PVAフィルムに架橋構造が導入されることによって、比較的高い温度で湿式延伸を行う場合においても、フィルム中のPVAが水へ溶出するのを効果的に防止することができる。このような観点から、架橋工程は染色工程の後に行うのが好ましい。架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物を1種または2種以上使用することができる。前記水溶液中の架橋剤の濃度は1~15質量%が好ましく、2~7質量%がより好ましい。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋処理の際の前記水溶液の温度は、20~50℃が好ましく、25~40℃がより好ましい。
【0041】
後述する延伸工程とは別に、上述した各工程中や工程間において、PVAフィルムを延伸してもよい。このような延伸(前延伸)をすることにより、PVAフィルムにしわが入るのを防止することができる。前延伸の総延伸倍率(各工程における延伸倍率を掛け合わせた倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能などの観点から、延伸前の原料のPVAフィルムの元長に基づいて、4倍以下であることが好ましく、1.5~3.5倍がより好ましい。膨潤工程における延伸倍率としては、1.1~3倍が好ましく、1.2~2.5倍がより好ましく、1.4~2.3倍が更に好ましい。染色工程における延伸倍率としては、2倍以下が好ましく、1.8倍以下がより好ましく、1.1~1.5倍が更に好ましい。架橋工程における延伸倍率としては、2倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましく、1.05~1.3倍が更に好ましい。
【0042】
[延伸工程]
PVAフィルムを延伸する延伸工程において、延伸方法は特に限定されず、湿式延伸法および乾式延伸法のうちのいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した二色性色素を含む水溶液中や後述する固定処理で使用される水溶液中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温でPVAフィルムを延伸してもよいし、熱をかけながらPVAフィルムを延伸してもよい。また、PVAフィルムに吸水させた後に延伸してもよい。これらの中でも、得られる偏光フィルムにおける幅方向の厚みの均一性の点から湿式延伸法が好ましい。湿式延伸法として、ホウ酸水溶液中で延伸する方法が好ましい。当該水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5~6.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましく、1.5~4.0質量%が更に好ましい。上記したホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0043】
延伸工程においてPVAフィルムを延伸する際の温度は、30~90℃が好ましく、40~80℃がより好ましく、50~70℃が更に好ましい。
【0044】
延伸工程における延伸倍率は、より優れた偏光性能を有する偏光フィルムが得られることなどから、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが更に好ましい。また、上記した前延伸の延伸倍率も含めた総延伸倍率(各工程における延伸倍率を掛け合わせた倍率)は、延伸前の原料のPVAフィルムの元長に基づいて、5.5倍以上であることが好ましく、5.7倍以上であることがより好ましく、5.8倍以上であることが更に好ましく、5.9倍以上であることが特に好ましい。総延伸倍率を上記の範囲内にすることで、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られる。上記総延伸倍率の上限は特に限定されないが、8倍以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の延伸工程において、得られる偏光フィルムの性能の観点からPVAフィルムを一軸延伸することが好ましい。一軸延伸の方向は特に限定されず、長尺のPVAフィルムにおける長さ方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができる。なかでも、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られる点から長さ方向への一軸延伸が好ましい。長さ方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
【0046】
[固定処理工程]
固定処理工程における固定処理は、主として、延伸されたPVAフィルムへの二色性色素の吸着を強固にするために施される。延伸されたPVAフィルムを固定処理液中に浸漬することにより固定処理を行うことができる。固定処理液としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物を1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。当該水溶液における、ホウ素化合物の濃度は、一般に2~15質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。固定処理液の温度は、15~60℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。また、必要に応じて、固定処理液中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。
【0047】
本発明の製造方法では、上述した膨潤工程、染色工程および延伸工程のうち、少なくとも一つにおいて、PVAフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して前記PVAフィルムの両面から両端部に付着した水を除去する必要がある。そして、前記PVAフィルムを水から取り出して、当該PVAフィルムに付着した水を除去する際に、当該PVAフィルムが水から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを28mm以下とする必要がある。
【0048】
PVAフィルムを水に浸漬した後、水から取り出して当該フィルムに付着した水を所定の方法により除去する本発明の製造方法について、以下、膨潤工程を例に用いて説明する。
図1は、膨潤工程5の一例を示す概略図である。
図2は、本発明の製造方法において、PVAフィルム1が水6から出る位置8から、水が除去される位置9までの距離Aを示す概略図である。膨潤工程5では、通常PVAフィルム1を水6に浸漬することにより、当該PVAフィルム1に対して膨潤処理が行われる。そして、前記PVAフィルム1を水6から取り出して当該PVAフィルム1の両面から幅方向両端部に付着した水を除去する。PVAフィルム1の両面から水の除去を行うことによって、PVAフィルム1の端部における折れ込みの発生が抑制される。
【0049】
PVAフィルム1に付着した水を除去する方法として、PVAフィルム1を一対のロール2でニップすることによって、前記PVAフィルム1の両端部に付着した水を除去する方法が好ましい。
【0050】
本発明において使用されるロール2の外径(軸方向に径が変化する場合には最大径)は、前記距離Aを短縮し易い点から、10cm以下であることが好ましく、8cm以下であることがより好ましく、6cm以下であることが更に好ましい。ロール2外径の下限は特に限定されないが、通常1cm以上である。ロール2として、後述するスポンジロール2を用いた場合、外径が1cm未満の場合には、スポンジロール2の吸水量が不十分になるおそれがある。ロール2の一部又は全部が水6に浸かっていても構わない。ロール2でPVAフィルム1をニップする際に、PVAフィルム1から除去された水やロール2に吸収された水はPVAフィルム1の流れ方向とは逆側に絞り出されて水6中に排出される。したがって、ロール2が水6に浸かっていても、PVAフィルム1に付着した水を問題なく除去することができる。水の除去効率がさらに向上する観点からは、ロール2が水に浸かっていないことが好ましい。
【0051】
ロール2は、非回転式のものであっても、回転式のものでもどちらでもよいが、PVAフィルム1とロール2との摩擦が少ない方が得られる偏光フィルムにおける傷等の外乱を低減することができる点から、後者が好ましい。
【0052】
前記ロール2としては、スポンジロール、ゴムロール等が好ましく、なかでもスポンジロールがより好ましい。スポンジロールの外層として用いられるスポンジは特に限定されないが、例えば、ポリウレタンスポンジ、PVAスポンジ、ポリ塩化ビニル系スポンジなどが挙げられ、なかでも、ポリウレタンスポンジが好ましい。
【0053】
前記スポンジロール2の下記式により求められる保水率は、特に限定されないが、連続的な水の除去を行える期間がさらに伸びる点から、50%以上であることが好ましく、67%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。一方、前記スポンジロールに吸収された水を容易に絞り出すことができて、PVAフィルム1に付着した水をさらに効率的に除去できる観点から、前記スポンジロールの保水率は95%以下であることが好ましく、92%以下であることがより好ましく、90%以下であることが更に好ましい。当該保水率は、スポンジロールの吸水性能の指標となる。保水率は、スポンジロール2のスポンジ部分の一部を切り取ったスポンジ片を用いて、吸水前のスポンジ質量aと、吸水後スポンジ質量bから、下式を用いて求めることができる。吸水後スポンジ質量bは、吸水前のスポンジ片を23℃の水に24時間浸漬し、ピンセットを用いて取り出した後、1分間水をしたたり落とした後のスポンジ質量を測定することで、得られる。
保水率(%)=100×(b-a)/b
【0054】
式中、aは吸水前スポンジ質量(g)を示し、bは吸水後スポンジ質量(g)を示す。なお、aおよびbはスポンジロールの芯金部分の質量を除いた質量である。
【0055】
本発明において、一対のロール2でニップする際の圧力は特に限定されないが、ニップ圧力が低すぎる場合には、PVAフィルム1に付着した水を十分に除去することができないおそれがある。ニップ圧力は、1kgf/cm以上であることが好ましく、3kgf/cm以上であることがより好ましく、5kgf/cm以上であることが更に好ましい。前記ニップ圧力の上限は特に限定されないが、偏光フィルムにおける傷等の外乱を低減される点から、ニップ圧力は、15kgf/cm以下が好ましい。
【0056】
前記一対のロール2の各回転軸間の距離a(cm)と各ロールの半径b1(cm)およびb2(cm)から算出されるロール2の圧縮比[a/(b1+b2)]が下記式(2)を満足することが好ましい。この場合、一対のロール2が相互に接触して圧縮されることになる。下記式(2)を満足するように一対のロール2を配置することにより、PVAフィルム1に付着した水がロール2にさらに吸水され易くなるとともに、前記ロール2に吸収された水をさらに容易に絞り出すことができるようになるため、水の除去効率がさらに向上する。水の除去効率がさらに向上する観点からは、圧縮比[a/(b1+b2)]は、0.95以下がより好ましく、0.90以下が更に好ましい。一方、得られる偏光フィルムにおける傷等の外乱がさらに低減される観点から、圧縮比[a/(b1+b2)]は、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。なお、各ロールの半径b1およびb2は、ロール外径の半分である。ロール2が芯金を有する場合の半径b1およびb2は、芯金部分も含んだ値である。
0.1≦a/(b1+b2)≦0.97 (2)
【0057】
本発明の製造方法において、前記PVAフィルム1から水を除去するに際して、当該PVAフィルム1の両面から両端部に付着した水を除去する必要がある。前記PVAフィルム1の端部に水が付着した場合、水の表面張力によって端部の折れ込みが発生する。ここで、PVAフィルム1端部の両面から水を除去することが重要である。PVAフィルム1端部の一面のみに水が付着している場合でも折れ込みが発生する。折れ込みの発生がより効果的に抑制される観点から、水を除去する前記PVAフィルム1の各端部の幅が、端部から中央部に向かって、それぞれ1cm以上であることが好ましく、3cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることが更に好ましい。また、水を除去する前記PVAフィルム1の各端部の幅が、それぞれ当該PVAフィルム1の幅に対して、1/100以上であることが好ましく、1/20以上であることがより好ましく、1/10以上であることが更に好ましい。
【0058】
前記PVAフィルム1全面の水を除去することが特に好ましい。これにより、折れ込みの発生がさらに効果的に抑制される。また、下流に配置されたガイドロール3や引き取りロール4への水の付着が防止されて、当該ガイドロール3や引き取りロール4から水が垂れなくなるため、再びPVAフィルム1に水が付着することを避けることができる。さらに、延伸工程において、PVAフィルム1の幅方向における膨潤性斑や延伸性斑などの物性斑の発生を低減できるため、延伸切れや得られる偏光フィルムの光学斑の発生などを抑制することができる。
【0059】
本発明において、PVAフィルム1端部に付着した水を除去する際に、当該PVAフィルム1が水6から出る位置8から、当該PVAフィルム1から水が除去される位置9までの距離Aを28mm以下とする必要がある。当該PVAフィルム1が水から出る位置8から水が除去される位置9までの間は、端部に水が付着したPVAフィルム1が単独で搬送されることになる。本発明者らは、端部に水が付着したPVAフィルム1が単独で搬送されると短時間で折れ込みが生じることを突き止めた。距離Aが28mmを超える場合、PVAフィルム1端部の折れ込みの発生が急増する。
図2および3に示されているように、ロール2でPVAフィルム1をニップすることによって水を除去する場合には、PVAフィルム1が一対のロール2のどちらかに最初に接触した位置をPVAフィルム1から水が除去される位置9とする。
【0060】
前記距離Aは25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることが更に好ましい。当該距離Aは0mmであっても構わない。例えば、ロール2の少なくとも一部を水6中に配置して、水6中のPVAフィルム1を直接ロール2でニップすることにより、予め水を除去してから、水から取り出したPVAフィルム1の搬送を開始した場合、距離Aが0mmとなる。PVAフィルムの表面に随伴する水の量は距離Aが長くなるほど少なくなるため、PVAフィルム表面の水をより効率よく除去して、PVAフィルム1の幅方向の端部における折れ込みの発生をより効果的に抑制することができる点から、当該距離Aは1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが更に好ましい。
【0061】
原料のPVAフィルム1の乾燥厚みB(mm)と前記距離A(mm)が下記式(1)を満足することが好ましい。これにより、極めて薄いPVAフィルム1であっても折れ込みの発生をより効果的に抑制することができる。
A≦B×1000 (1)
【0062】
上記のように、PVAフィルム1を水6から取り出して前記PVAフィルム1の両面から両端部に付着した水を除去するとともに、当該PVAフィルム1が水6から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを所定の範囲とすることが本発明の大きな特徴である。従来から用いられている比較的厚いPVAフィルムでは、端部の折れ込みによるフィルムの破断の問題はなかった。そのため、偏光フィルムの製造において、PVAフィルムの搬送や保持の目的でガイドロールやニップロールが用いられることはあったが、端部の折れ込みの防止のために用いられることや、これらを処理浴の水面近傍に配置されることはなかった。一方、薄いPVAフィルム端部の折れ込みを防止する方法として、PVAフィルムの片面の液を取り除いた後、PVAフィルムの幅方向の両端部を拡幅する処理を施す方法(特許文献3)が知られているが、なお端部の折れ込みによるPVAフィルムの破断が生じる場合があり、改善が必要であった。このような問題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、PVAフィルム1が薄い場合、PVAフィルム1を水6から取り出した直後に端部の折れ込みが生じること、またPVAフィルムの片面からのみ水を除去した場合には、他方の面に残存した水の表面張力によって端部の折れ込みが発生することを突き止めた。そして、PVAフィルム1両面から水を除去するとともに、当該PVAフィルム1が水6から出る位置から水が除去される位置までの距離Aを所定の範囲とすることにより、このような折れ込みの発生が抑制されて、延伸時や乾燥時などにおけるPVAフィルム1の破断の発生が低減されることを見出した。
【0063】
本発明の製造方法において、原料のPVAフィルムに対して、少なくとも前記膨潤工程、前記染色工程および前記延伸工程を施すことによって偏光フィルムを製造する。このとき、PVAフィルムに対して、さらに前記架橋工程又は前記固定処理工程を施すことが好ましく、前記架橋工程および前記固定処理工程を施すことがより好ましい。また、本発明の製造方法において、1つの処理浴中でPVAフィルムに対して複数の工程を施してもよい。例えば、1つの処理浴中で前記架橋工程と前記延伸工程を行うこと等ができる。
【0064】
本発明の製造方法において、前記延伸工程の前に、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することが好ましい。偏光フィルムの製造に際して、PVAフィルムの破断は延伸時に特に発生しやすいことから、前記延伸工程よりも前の工程において、PVAフィルムを水に浸漬した後に、水から取り出してPVAフィルムの両端部に付着した水を上述した方法を用いて除去することによって、PVAフィルムの破断がさらに抑制される。前記延伸工程の前に行う工程としては、前記膨潤工程および前記染色工程が挙げられ、これらのうちの少なくとも一方において、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することが好ましく、両方において、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することがより好ましい。本発明の製造方法がさらに前記架橋工程を含む場合、前記延伸工程の前に行う工程としては、前記膨潤工程、前記染色工程および前記架橋工程が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つにおいて、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することが好ましく、前記膨潤工程および前記染色工程において、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することがより好ましく、前記膨潤工程、前記染色工程および前記架橋工程において、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することがさらに好ましい。
【0065】
後述する乾燥工程における収縮によるフィルムの破断の発生をさらに低減させる観点からは、前記延伸工程又はその後の工程(例えば、前記固定処理工程)において、PVAフィルムの両端部に付着した水を除去することが好ましい。
【0066】
本発明の製造方法の好適な態様としては、PVAフィルムに対して、前記膨潤工程、前記染色工程、前記架橋工程および前記延伸工程をこの順で施し、前記膨潤工程、前記染色工程および前記架橋工程のうち少なくとも1つにおいて、PVAフィルムを水に浸漬した後に、水から取り出してPVAフィルムの両端部に付着した水を上述した方法を用いて除去する方法が挙げられる。このとき、前記膨潤工程および前記染色工程において、PVAフィルムに付着した水を除去することが好ましく、前記膨潤工程、前記染色工程および前記架橋工程において、PVAフィルムに付着した水を除去することがより好ましい。また、PVAフィルムに対して、前記膨潤工程、前記染色工程、前記架橋工程、前記延伸工程および前記固定化処理工程をこの順で施すことも好ましい。
【0067】
[乾燥工程]
PVAフィルムに対して、前記延伸工程を施し、更に必要に応じて固定処理工程を施した後、通常当該PVAフィルムを乾燥することにより偏光フィルムを製造することができる。乾燥温度は特に限定されないが、30~150℃が好ましく、50~130℃がより好ましい。このような温度で乾燥を行うことで偏光フィルムの寸法安定性が向上する。
【0068】
[偏光板]
以上のようにして得られた偏光フィルムの少なくとも片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。偏光フィルムや保護膜に対する接着剤の接着性を向上させるために、偏光フィルムや保護膜の貼合面に、けん化処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー処理などの表面処理を施してもよい。偏光フィルムと保護膜を貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤、および紫外線硬化型接着剤などが用いられる。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された各測定方法および評価方法を以下に示す。
【0070】
[連続運転可能な延伸倍率]
以下の実施例、比較例および参考例において、延伸工程における延伸倍率を調整することにより総延伸倍率を0.1倍ずつ段階的に上げていき、フィルムの破断が発生したときの総延伸倍率の直前に設定した総延伸倍率を、連続運転可能な延伸倍率とした。
【0071】
[偏光フィルムの偏光性能]
(a)透過率Tsの測定
以下の実施例、比較例および参考例において、得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長さ方向に3cm、幅方向に2cmの長方形のサンプルを2枚採取した。積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z8722:2009(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行い、1枚のサンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の光の透過率と-45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts1(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても同様にして、45°傾けた場合の光の透過率と-45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts2(%)を求めた。下記式によりTs1とTs2を平均し、偏光フィルムの透過率Ts(%)とした。
Ts = (Ts1+Ts2)/2
【0072】
(b)偏光度Vの測定
上記透過率Tsの測定で採取した2枚のサンプルを、その長さ方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率T∥(%)、および、長さ方向が直交するように重ねた場合の光の透過率T⊥(%)を、上記「(a)透過率Tsの測定」の場合と同様にして測定し、下記式により偏光度V(%)を求めた。
V = {(T∥-T⊥)/(T∥+T⊥)}1/2×100
【0073】
[折れ込みの発生の評価]
以下の実施例、比較例および参考例において、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11それぞれにおいて、ガイドロール3に接触する直前のPVAフィルムの端部を目視で観察し、折れ込みの発生の有無を評価した。次のAおよびBを合格と判定し、Cを不合格と判定した。
A:いずれの工程を通過した後にも、PVAフィルムの幅方向の端部に折れ込みの発生はみられなかった。
B:架橋工程11を通過した後にのみ、PVAフィルムの一方の端部に幅0.5mm程度の折れ込みがわずかに発生した。
C:架橋工程11を通過した後やその他の工程を通過した後において、PVAフィルムの両端部に0.5~3mm程度の折れ込みが多数発生した。
【0074】
実施例1
乾燥時の厚みが0.030mmで幅が65cmの長尺のPVAフィルム1[PVA(重合度2,400、けん化度99.9モル%である酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)100質量部、グリセリン12質量部および界面活性剤0.03質量部を含む]を、そのフィルムロール7から連続的に巻き出し、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11に、この順で連続的に供した。
図3に、フィルムロール7からPVAフィルム1を連続的に巻き出して、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11を施すことを示した概略図を示す。
【0075】
ここで、膨潤工程5として、PVAフィルム1を蒸留水(温度:30℃)中に1分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率2.0倍で一軸延伸した。また染色工程10として、PVAフィルム1をヨウ素系色素を含有する水溶液(ヨウ素の濃度:0.05質量%、ヨウ化カリウムの濃度:1.2質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率1.2倍で一軸延伸した。更に架橋工程11として、PVAフィルム1をホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.6質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率1.1倍で一軸延伸した。
【0076】
また、
図3に示すように、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11において、水面近傍に、平行に並んだ一対のスポンジロール2(株式会社エー・シーケミカル製ACスポンジU;ウレタンスポンジ、保水率78%、ロール外径50mm、芯金外径10mm、ロール幅80cm、回転軸間距離44mm、圧縮比88%)を設置した。このとき、各スポンジロール2の回転軸が、PVAフィルム1の幅方向と平行になるとともに、各スポンジロール2の回転軸を含む平面とPVAフィルム1とが垂直となるようにスポンジロール2の位置を調整した。そして、水から出たPVAフィルム1を幅方向全域に渡りニップして、当該PVAフィルム1に付着した水の除去を行った。ここで、
図2に示すように、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11において、PVAフィルム1が水6から出る位置8と、PVAフィルムから水が除去される位置9との間の距離Aを20mmとした。なお、PVAフィルム1が2つのスポンジロール2のいずれかに最初に接する位置をPVAフィルムから水が除去される位置9とした。また、各工程において、上記のとおり、水が除去されたPVAフィルム1がガイドロール3(当該PVAフィルム1の幅方向全域にわたり接触するロール)に接触した後、一対の引き取りロール4(当該PVAフィルム1の幅方向全域にわたり接触するロール)に接触するように、ガイドロール3および引き取りロール4をスポンジロール2の下流に設置した。
【0077】
上記の架橋工程11に続いて延伸工程、固定処理工程および乾燥工程をこの順で連続的に行い偏光フィルムを製造した。延伸工程は、PVAフィルム1をホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.8質量%、ヨウ化カリウム濃度:5質量%、温度:57℃)中で長さ方向に延伸倍率1.9倍で一軸延伸することにより行った(前延伸の延伸倍率をも含めた総延伸倍率は5.0倍)。また固定処理工程は、延伸されたPVAフィルム1をホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.6質量%、ヨウ化カリウム濃度:5質量%、温度:22℃)中に2分間浸漬することにより行った。更に乾燥工程は、延伸されたPVAフィルム1を60℃で1分間乾燥することにより行い、偏光フィルムを得た。
【0078】
実施例2~5、比較例3
PVAフィルム1の厚みや距離Aを表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0079】
[実施例6]
架橋工程11において、一対のスポンジロール2を設置せずに、PVAフィルム1に付着した水の除去を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0080】
[比較例1]
膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11において、一対のスポンジロール2を設置せずに、PVAフィルム1に付着した水の除去を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
【0081】
[比較例2]
膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11において、一対のスポンジロール2のうち、下側のスポンジロール2のみ設置して、PVAフィルム1の一方の面のみにスポンジロール2を接触させることにより、当該PVAフィルムに付着した水の除去を行ったこと以外は、実施例2と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0082】
[参考例1]
PVAフィルム1の厚みを0.060mmにし、膨潤工程5、染色工程10および架橋工程11において、一対のスポンジロール2を設置せずに、PVAフィルム1に付着した水の除去を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。
【0083】
上記実施例1~6、比較例1~3および参考例の製造条件と評価結果を表1にまとめて示す。
【0084】