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特開2022-89623アミド化合物の分解方法及びアミンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089623
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】アミド化合物の分解方法及びアミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/10 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
C07H15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202163
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】有福 征宏
(72)【発明者】
【氏名】曽根 圭太
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 久美子
(72)【発明者】
【氏名】山下 慎司
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 知里
(72)【発明者】
【氏名】木下 幹朗
(72)【発明者】
【氏名】宮下 和夫
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA02
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ12
(57)【要約】
【課題】グリコシド結合を有するアミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できるアミド化合物の分解方法、及び、アミド結合を有するアミンを高い収率で得ることができるアミンの製造方法を提供すること。
【解決手段】グリコシド結合を有するアミド化合物を含む原料及び水を含有する反応液を水熱処理することで、アミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを生成する分解工程を有し、反応液のpHが8.0以上である、アミド化合物の分解方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシド結合を有するアミド化合物を含む原料及び水を含有する反応液を水熱処理することで、前記アミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを生成する分解工程を有し、
前記反応液のpHが8.0以上である、アミド化合物の分解方法。
【請求項2】
前記アミド化合物が、スフィンゴ糖脂質を含む、請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
前記アミド化合物が、グルコシルセラミドを含む、請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
前記原料が植物原料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の分解方法。
【請求項5】
前記反応液中の前記アミド化合物の含有量が、反応液全量を基準として、0.05質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の分解方法。
【請求項6】
前記水熱処理は、温度110~300℃の条件で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の分解方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によりアミド化合物を分解する分解工程と、
前記分解工程で得られた分解生成物からグリコシド結合を有するアミンを抽出する抽出工程と、
を含む、アミンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物の分解方法及びアミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコシド結合を有するアミンとして、例えば、サイコシンが知られている。サイコシンは、生理活性を示し、例えば、分解酵素欠損症の病態発生に関与していると推察されている。
【0003】
このようなグリコシド結合を有するアミンの生理活性を明らかにするための研究の試薬等を得る観点から、グリコシド結合を有するアミンを製造することは重要である。
【0004】
グリコシド結合を有するアミンを得る方法として、例えば、特許文献1には、ウシの脳組織からサイコシン・酒石酸塩を抽出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-200691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、グリコシド結合を有するアミンのアミノ基と、脂肪酸のカルボキシル基とが脱水縮合することにより得られるアミド化合物は、天然に広く存在し、様々な植物の花、葉、根、茎、果実及び種子等に含まれている。そのため、このようなアミド化合物を分解して、グリコシド結合を有するアミンとして回収できれば、様々な原料からグリコシド結合を有するアミンを製造できると考えられる。
【0007】
アミド化合物を分解し、グリコシド結合を有するアミンとして回収する方法として、アミド化合物が有するアミド結合を加水分解する方法が考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、グリコシド結合を有するアミド化合物を加水分解すると、グリコシド結合の加水分解反応が進行してしまい、目的とするグリコシド結合を有するアミンが得られない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、グリコシド結合を有するアミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できるアミド化合物の分解方法、及び、アミド結合を有するアミンを高い収率で得ることができるアミンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、グリコシド結合を有するアミド化合物を含む原料及び水を含有する反応液を水熱処理することで、アミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを生成する分解工程を有し、反応液のpHが8.0以上である、アミド化合物の分解方法を提供する。
【0010】
上記方法によれば、グリコシド結合を有するアミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できる。
【0011】
本発明者らは、グリコシド結合を有するアミド化合物を水熱処理により分解した場合、グリコシド結合の加水分解反応が進行し、グリコシド結合を有するアミンの収率が低下することを見出した。例えば、グリコシド結合を有するアミド化合物として、グルコシルセラミドを用いた場合には、グリコシド結合の加水分解反応が進行することで、フリーセラミドが副生してしまう。この問題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、反応液のpHを8.0以上とすることで、グリコシド結合の加水分解反応が抑制され、且つ、アミド化合物が有するアミド結合の加水分解反応が促進されることを見出した。その結果、グリコシド結合を有するアミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できる。
【0012】
上記方法において、上記アミド化合物は、スフィンゴ糖脂質を含んでいてもよい。上記方法によれば、スフィンゴ糖脂質を特に効率的に分解することができる。
【0013】
上記方法において、上記アミド化合物は、グルコシルセラミドを含んでいてもよい。上記方法によれば、グルコシルセラミドを特に効率的に分解することができる。
【0014】
上記方法において、上記原料は、植物原料であってよい。
【0015】
上記方法において、上記反応液中の上記アミド化合物の含有量は、反応液全量を基準として、0.05質量%以上であってよい。上記アミド化合物の質量割合が0.05質量%以上であることにより、アミド化合物を特に効率的に分解することができる。
【0016】
上記方法において、上記水熱処理は、110~300℃の条件で行われてもよい。上記範囲内の温度であると、アミド化合物の分解をより促進することができる。
【0017】
本発明はまた、上記本発明の方法によりアミド化合物を分解する分解工程と、上記分解工程で得られた分解生成物からグリコシド結合を有するアミンを抽出する抽出工程と、を含む、アミンの製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、グリコシド結合を有するアミンを高い収率で製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グリコシド結合を有するアミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できるアミド化合物の分解方法、及び、アミド結合を有するアミンを高い収率で得ることができるアミンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
(アミド化合物の分解方法)
本実施形態に係るアミド化合物の分解方法は、グリコシド結合を有するアミド化合物(以下、単に「アミド化合物」ともいう。)を含む原料及び水を含む反応液を水熱処理することで、アミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを生成する分解工程を有する。反応液のpHが8.0以上である。
【0022】
アミド化合物は、グリコシド結合を有するアミンにおけるアミノ基(-NH)と、脂肪酸のカルボキシル基(-COOH)とがアミド結合(-CONH-)により結合した親水性の化合物である。本発明に供されるアミド化合物は、例えば、スフィンゴ糖脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
スフィンゴ糖脂質は、糖とスフィンゴシンとがグリコシド結合により結合している。スフィンゴ糖脂質としては、例えば、グルコシルセラミドが挙げられる。
【0024】
アミド化合物の元となる糖としては特に限定されない。上述したアミド化合物を形成することができる公知の糖が挙げられる。
【0025】
アミド化合物の分解処理に処する原料は、アミド化合物以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、グリコシド結合を有するアミン、水溶性食物繊維、難溶性食物繊維、糖類、タンパク質、有機酸等が挙げられる。原料におけるアミド化合物の含有量は、原料の固形分全量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25~30質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましい。原料がグリコシド結合を有するアミンを更に含む場合、アミド化合物の含有量は、当該アミンの含有量1質量部に対して、0.25質量部以上であることが好ましく、0.5~100質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましい。
【0026】
原料としては、例えば、植物及び海草が挙げられる。具体的には、植物並びに海草の花、葉、根、茎、果実及び種子等を用いることができる。植物としては、例えば、ダイズ等のマメ科植物、メロン等のウリ科植物、イネ、トウモロコシ等のイネ科植物、ビート等のヒユ科の植物、クリ等のブナ科の植物、ひまわり等のキク科植物、モモ等のバラ科の植物が挙げられる。本実施形態に係るアミド化合物の分解方法は、アミド化合物を分解するため、グリコシド結合を有するアミンの含有量が少ない原料であっても、原料として用いることができる。
【0027】
反応液は、水以外の溶媒を含んでいてもよい。水以外の溶媒としては、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。反応液が水以外の溶媒を含む場合、水及び水以外の溶媒に占める水の割合は、5質量%以上であってよい。
【0028】
水熱処理は、原料を水と共に耐圧性の密閉容器内に封入し、密閉したまま100℃を超える温度で加熱することで行うことができる。上記原料及び水を含む反応液が密閉容器内で加熱されることで、密閉容器内が加熱及び加圧環境となり、亜臨界状態の水による水熱処理(水熱合成)が行われる。水熱処理は、反応液を撹拌しながら行ってもよい。耐圧性の密閉容器としては、水熱処理に使用可能な公知の容器を特に制限なく用いることができる。密閉容器における反応液の充填率は、高い分解効率を得る観点から、密閉容器の容積を基準として20体積%以上であることが好ましく、40~80体積%であることがより好ましい。
【0029】
反応液中のアミド化合物の含有量は、特に限定されないが、反応液全量を基準として、例えば、0.05質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。反応液中のアミド化合物の含有量が上記範囲内であると、アミド化合物の分解を効率的に行うことができる。
【0030】
水熱処理の反応条件は特に限定されないが、例えば、110~300℃で0.5~20時間とすることができる。反応温度は、120~200℃であることが好ましく、140~195℃であることがより好ましい。反応温度が110℃以上であると、アミド結合の加水分解反応がより良好に進行しやすい傾向があり、300℃以下であると、原料及びグリコシド結合を有するアミンの炭化が進行しにくく、収率がより向上する傾向がある。反応時間は、0.2~20時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましい。反応時間が0.2時間以上であると、反応がより進みやすくなる傾向があり、20時間以下であると、反応の進行とコストとのバランスがとりやすくなる傾向がある。
【0031】
水熱処理時の容器内の圧力は、上記反応温度に対応する飽和蒸気圧又はそれ以上であればよいが、装置の耐圧性の観点から、飽和蒸気圧であることが好ましい。密閉容器内に水蒸気を供給する場合、上述した反応温度の飽和水蒸気を供給することが好ましい。水熱処理時の密閉容器内の圧力は、例えば、0.2~1.6MPaとすることができる。
【0032】
上記反応液のpHは、8.0以上であり、アミド化合物を分解し、グリコシド結合を有するアミンを一層効率的に生成することから、9.0以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましく、11.0以上であることが更に好ましい。上記反応液のpHは、13.5以下であってよい。
ってよい。
【0033】
反応液のpHの調整は、所定のアミド化合物を含む原料紛の水溶液に酸、塩基を溶解させることで可能となる。使用する酸、塩基には食品添加物として認められている物質を使用することが好ましい。酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、リンゴ酸等を挙げることができる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。
【0034】
上記条件で水熱処理を行うことで、アミド化合物を分解してグリコシド結合を有するアミンを効率的に生成できる。
【0035】
(グリコシド結合を有するアミンの製造方法)
本実施形態に係るアミンの製造方法は、アミド化合物を分解する分解工程と、分解工程で得られた分解生成物からグリコシド結合を有するアミンを抽出する抽出工程と、を含む。分解工程は、上述した本実施形態に係るアミド化合物の分解方法によりアミド化合物を分解する工程である。
【0036】
抽出工程では、分解工程で得られた分解生成物からグリコシド結合を有するアミンを抽出する。分解生成物には、グリコシド結合を有するアミンの他に、糖、分解させずに残ったアミド化合物、水溶性及び難溶性セルロース並びにその分解物等が含まれている。グリコシド結合を有するアミンは、例えば、60℃に加温したエタノールにより抽出できる。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
<サイコシンの製造>
(実施例1)
フリーセラミド含有量0.5質量%、グルコシルセラミド含有量3質量%であるニップンセラミドCP(商品名、日本製粉株式会社製)3gを超純水147gに溶解/分散させ、水酸化ナトリウム粉末(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.134gを更に加え、反応液を得た。得られた反応液のpHをpHメータで測定したところ、12.0であった。この反応液を容量200mlのテフロン(登録商標)容器に入れた。次いで、槽内容積2mの熱風循環式オートクレーブ(株式会社芦田製作所製)に容器を収容し、180℃で1時間、反応液を水熱処理した。水熱処理は、ボイラーからオートクレーブの槽(圧力容器)内に180℃の飽和水蒸気を供給し、槽内圧力が180℃の水の飽和水蒸気圧である1MPaになるように水蒸気の供給量及び圧力弁を調整しながら行った。水熱処理後の槽内の圧力は、圧力0.9MPa、槽内の温度は180℃であった。槽内の圧力が0.7MPa、槽内の温度が165℃となるまで、オートクレーブを10分間自然冷却した。自然冷却後、バルブを開き、装置に取り付けられているコンプレッサーを用いて、圧力1MPaの圧縮空気を槽内に送り込んだ。圧縮空気を送り込んだ直後の槽内の圧力は、1MPaを超えていたため、排気弁の開閉を手動で行うことにより、0.75MPaを下回らない圧力を維持しながら、圧縮空気を槽内に導入し、圧縮空気による冷却を開始した。冷却中、適宜、その時点での飽和水蒸気圧を下回らないよう槽内圧力を低下させながら冷却を行った。圧縮空気による冷却開始から2時間後に、溶液の温度が100℃を下回った(水分散液の飽和水蒸気圧が常圧(0.1MPa)を下回った)ため、槽の蓋を開けて容器を取り出し、常温(25℃)まで自然冷却した。冷却後、容器内面に析出又は付着したアミド化合物の分解物を、薬さじを用いて取り出した。
【0039】
次に、容器内の溶液及び固形分を目開き0.2μmの親水化PTFE製メンブレンフィルター(Omnipore 0.2μm JG(メルク-ミリポア社、商品名))を用いて、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過した。得られた固形物を、オーブンで120℃にて5時間乾燥して、アミド化合物の分解物の粉末を得た。次いでアミド化合物の分解物をエタノールにて5%分散液になるよう調整し、還流下60℃で1時間処理し、目開き0.2μmの親水化PTFE製メンブレンフィルター(Omnipore 0.2μm JG(メルク-ミリポア社、商品名))を用いて、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過した。得られた溶液を60℃加温下でダイアフラムポンプを用いて真空乾燥し、サイコシン濃縮物の粉末を0.04g得た。
【0040】
(比較例1)
反応液を調整する際に水酸化ナトリウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、サイコシン濃縮物の粉末を0.115g得た。反応液のpHは、7.0であった。
【0041】
(比較例2)
反応液として、ニップンセラミドCP(商品名、日本製粉株式会社製)3gを超純水147gに溶解/分散させ、クエン酸を0.005g更に添加した溶液を反応液として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、サイコシン濃縮物の粉末を0.156g得た。反応液のpHは、4.0であった。
【0042】
(比較例3)
反応液として、ニップンセラミドCP(商品名、日本製粉株式会社製)3gを超純水147gに溶解/分散させ、クエン酸を0.266g更に添加した溶液を反応液として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、サイコシン濃縮物の粉末を0.115g得た。反応液のpHは、2.6であった。
【0043】
<サイコシン、グルコシルセラミド及びフリーセラミドの含有量の測定>
(実施例1及び比較例1~3)
得られたサイコシン濃縮物の粉末について、サイコシン、グルコシルセラミド及びフリーセラミドの含有量を以下の方法により測定した。まず、サイコシン濃縮物の粉末20mgを希釈倍率が50倍となるようにクロロホルム:メタノール=2:1の混合溶媒により希釈し、溶液を得た。得られた溶液0.1mLを薄層クロマトグラフィー(TLC)によりサイコシン、グルコシルセラミド及びフリーセラミドをそれぞれ分離した。展開溶媒は、フリーセラミド及びグルコシルセラミドを分離する際には、クロロホルム:メタノール=95:12の混合溶媒を、サイコシンを分離する際には、クロロホルム:メタノール:2Nアンモニア水溶液=80:20:2の混合溶媒を用いた。分離されたサイコシン、グルコシルセラミド及びフリーセラミドについて、ガスクロマトグラフィーを用いて定量分析した。標準物質として、市販のフリーセラミド、グルコシルセラミド及びサイコシン標準生成試料に内部標準物質として構成スフィンゴイド塩基を添加し、内部標準法にて定量分析した。結果を表1に示した。表1に示す含有量は、サイコシン濃縮物の粉末100gに含まれる、フリーセラミド、グルコシルセラミド及びサイコシンの物質量(mmol)である。また、サイコシンの収率を表1に示した。サイコシンの収率は、得られたサイコシン濃縮物の粉末中のサイコシンの物質量を原料中のグルコシルセラミドの物質量で除した値である。
【0044】
【表1】