(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089710
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220609BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20220609BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20220609BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220609BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H01L29/78 656A
H01L29/78 653C
H01L29/78 655G
H01L29/78 655B
H01L29/78 655C
H01L29/78 652E
H01L29/78 652L
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/91 C
H01L29/91 L
H01L29/78 652K
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655F
H01L29/78 657G
H01L29/78 657E
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202329
(22)【出願日】2020-12-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクト/新世代Siパワーデバイス技術開発/新世代Si-IGBTと応用基本技術の研究開発事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】更屋 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 潔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一夫
(72)【発明者】
【氏名】高倉 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】福井 宗利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎一
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克己
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC01
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB01
5F048BB02
5F048BB03
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC02
5F048BC03
5F048BC12
5F048BC18
5F048BD07
5F048BD10
5F048BE09
5F048BF02
5F048BF07
5F048BF15
5F048BF16
5F048BF18
5F048CB01
5F048CB07
5F048CB10
(57)【要約】
【課題】導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】
エミッタp
-層11、コレクタp層23、ドリフト層10、エミッタ電極18、コレクタ電極28、エミッタ側ゲート電極17、エミッタn層12、コレクタp
-層23a、コレクタ側ゲート電極27、コレクタn層22により半導体装置1を構成し、エミッタ層p
-11とゲート絶縁膜15を介して対向している、エミッタ側ゲート電極17の第一対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計を、不純物層23aとコレクタ側ゲート絶縁膜25を介して対向している、コレクタ側ゲート電極27の第二対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計よりも長くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型のエミッタ層と、
第一導電型のコレクタ層と、
前記エミッタ層と前記コレクタ層との間に設けられた、第二導電型のドリフト層と、
前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタ電極と、
前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、
前記エミッタ層にエミッタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、一又は複数のエミッタ側ゲート電極と、
前記エミッタ電極と前記エミッタ層との間に設けられ、前記エミッタ層よりも不純物濃度が高い第二導電型の第一高濃度不純物層と、
前記ドリフト層と前記コレクタ電極との間に設けられた、第一導電型の不純物層と、
前記不純物層にコレクタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、一又は複数のコレクタ側ゲート電極と、
前記コレクタ電極と前記不純物層との間に設けられ、前記不純物層よりも不純物濃度が高い第二導電型の第二高濃度不純物層と、を備え、
前記エミッタ層と前記エミッタ側ゲート絶縁膜を介して対向している、前記エミッタ側ゲート電極の第一対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計が、前記不純物層と前記コレクタ側ゲート絶縁膜を介して対向している、前記コレクタ側ゲート電極の第二対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計よりも長い、半導体装置。
【請求項2】
前記第一高濃度不純物層と前記ドリフト層との間が導通し、かつ、前記第二高濃度不純物層と前記ドリフト層との間が非導通となるオン状態と、
少なくとも前記第二高濃度不純物層と前記ドリフト層とが導通する状態と、を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第一対向領域のゲート幅方向における長さの合計が、前記第二対向領域のゲート幅方向における長さの合計の2倍以上長い、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第一対向領域のゲート幅方向における長さの合計が、前記第二対向領域のゲート幅方向における長さの合計の4倍以上長い、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エミッタ側ゲート電極は、前記エミッタ層の表面に絶縁膜を介して配置されるプレーナ型のエミッタ側ゲート電極、又は、前記エミッタ層のトレンチ孔内に形成されるトレンチ型のエミッタ側ゲート電極のいずれかであり、
前記コレクタ側ゲート電極は、前記不純物層の表面に配置されるプレーナ型のコレクタ側ゲート電極、又は、前記不純物層のトレンチ孔内に形成されるトレンチ型のコレクタ側ゲート電極のいずれかである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
所定方向に向けて前記エミッタ側ゲート電極及び前記コレクタ側ゲート電極が所定間隔で配置されている素子領域の構成を1つのパターンとし、前記素子領域の構成が繰り返しパターンとして所定方向に所定周期で形成されており、
1つの前記素子領域において、前記第一対向領域のゲート幅方向における長さの合計が、前記第二対向領域のゲート幅方向における長さの合計よりも長い、
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記素子領域を有する主領域と、前記主領域と隣接した周辺領域と、が設けられており、
前記周辺領域には、前記主領域に形成されている前記エミッタ側ゲート電極が形成されておらず、前記コレクタ層と、前記コレクタ電極と、前記不純物層と、前記コレクタ側ゲート電極と、が形成されている、
請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスの一つに、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:以下、「IGBT」と称する)がある。IGBTは、入力部がMOSFET構造、出力部がバイポーラ構造の半導体装置である。IGBTは、MOSトランジスタの導通時損失が大きくなるという欠点を補うために提供されたものであるが、パワーMOSFETに比べてスイッチング損失が大きい傾向にある。このようなIGBTは、例えば、特許文献1、特許文献2で公知になっている。
【0003】
特許文献1に記載の電圧駆動型半導体装置では、第一のトランジスタの他、第一のトランジスタのドレインに極性の異なる第二のトランジスタを形成し、第二のトランジスタから第一のトランジスタのドレインにキャリアを供給している。このような構成により、特許文献1に記載の電圧駆動型半導体装置は、第一のトランジスタのドレインに伝導度変調を起こして導通時損失を低減し、オン電圧降下を小さくすることができる。
【0004】
特許文献2に記載の半導体装置は、半導体層の表面にメインゲート電極を備えるプレーナゲート型のIGBTである。また、この半導体装置は、半導体層の裏面にコントロールゲート電極を備えている。特許文献2の半導体装置は、ターンオフ動作の際に、ドリフト領域への正孔の注入を抑制し、ターンオフ損失(スイッチング損失)を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-37295号公報
【特許文献2】特開2020-47789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のように、伝導度変調効果を使って導通時損失を低減する構成では、第一のトランジスタと第二のトランジスタのターンオフの後半にテール電流が発生し、スイッチング損失が大きくなる。この点を改善するため、特許文献2に記載のように、半導体層の片面にコントロールゲート電極を設けると、コレクタ電極を形成するスペースが制限されて伝導度変調を起こすためのキャリアの注入量が低減し、導通時損失が大きくなるという課題が生じる。つまり、IGBTにおいては、導通時損失とスイッチング損失の低減はトレードオフの関係にある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明の半導体装置は、第一導電型のエミッタ層と、第一導電型のコレクタ層と、前記エミッタ層と前記コレクタ層との間に設けられた、第二導電型のドリフト層と、前記エミッタ層と電気的に接続されたエミッタ電極と、前記コレクタ層と電気的に接続されたコレクタ電極と、前記エミッタ層にエミッタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、一又は複数のエミッタ側ゲート電極と、前記エミッタ電極と前記エミッタ層との間に設けられ、前記エミッタ層よりも不純物濃度が高い第二導電型の第一高濃度不純物層と、前記ドリフト層と前記コレクタ電極との間に設けられた、第一導電型の不純物層と、前記不純物層にコレクタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、一又は複数のコレクタ側ゲート電極と、前記コレクタ電極と前記不純物層との間に設けられ、前記不純物層よりも不純物濃度が高い第二導電型の第二高濃度不純物層と、を備え、前記エミッタ層と前記エミッタ側ゲート絶縁膜を介して対向している、エミッタ側ゲート電極の第一対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計が、前記不純物層と前記コレクタ側ゲート絶縁膜を介して対向している、コレクタ側ゲート電極の第二対向領域におけるゲート幅方向の長さの合計よりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エミッタ層にエミッタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、エミッタ側ゲート電極の第一対向領域におけるゲート幅方向の長さを、不純物層にコレクタ側ゲート絶縁膜を介して対向配置された、コレクタ側ゲート電極の第二対向領域におけるゲート幅方向の長さよりも長くすることにより、ドリフト層への電子の注入時における導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)は
図1中の線IIa―IIaに沿う断面図である。(b)は、
図1中の線IIb―IIbに沿う断面図である。
【
図3】エミッタp
-層内に形成される反転層と、コレクタp
-層内に形成される反転層とを説明するための模式図である。
【
図4】(a)は比較例となる従来のIGBTの評価回路を示す回路図である。(b)は第一実施形態に係る半導体装置の評価回路を示す回路図である。
【
図5】(a)は、ゲート密度比率と、スイッチング損失との関係を示したシミュレーション結果を示すグラフである。(b)は、ゲート密度比率と、オン電圧降下との関係を示したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図6】エミッタ側とコレクタ側のゲートオンタイミングのずれとスイッチング損失との関係を示したシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7A】(a)から(c)は第一実施形態の半導体装置の製造工程を説明するための図である。
【
図7B】(d)、(e)は
図7Aに続く第一実施形態の半導体装置の製造工程を説明するための図である。
【
図8】第一変形例の半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図9】(a)は、
図8に示す半導体装置の線IXa―IXaに沿う断面を上方から下方に向けて見た断面図である。(b)は、半導体装置の線IXb―IXbに沿う断面を下方から上方に向けて見た断面図である。
【
図10】第二変形例の半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図11】(a)は、
図10に示す半導体装置の線XIa―XIaに沿う断面を上方から下方に向けて見た断面図である。(b)は、半導体装置の線XIb―XIbに沿う断面を下方から上方に向けて見た断面図である。
【
図12】(a)、(b)、(c)、(d)は、いずれも第一実施形態の半導体装置の動作の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図13】(a)、(b)、(c)は、いずれも第一実施形態の半導体装置の動作のターンオン時の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図14】(a)、(b)、(c)、(d)は、いずれも第一実施形態の半導体装置の動作のターンオフ時の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図15】(a)は、エミッタ電極の上面を示す図である。(b)は、コレクタ電極の上面を示す図である。
【
図16】
図15(a)及び
図15(b)に示した半導体装置の
図15(a)中に示す範囲Rを、矢線XV、XVの間の一点鎖線で切断し、断面を矢線XVの方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一実施形態及び第二実施形態を説明する。第一実施形態、第二実施形態の図面において、同様の部材には同様の符号を付し、説明が重複する箇所についてはその説明を省略する。
【0012】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態を説明する。
(半導体装置の構成)
図1は、第一実施形態の半導体装置1の構成を示す断面図である。
図2(a)は、
図1に示す半導体装置1の線IIa―IIaに沿う断面部分を上方から下方に向けて見た断面図である。
図2(b)は、半導体装置1の線IIb―IIbに沿う断面部分を下方から上方に向けて見た断面図である。なお、
図1は、
図2(a)及び
図2(b)に後述するエミッタ電極18やコレクタ電極28等が設けられている構成において、
図2(a)に示す線I―Iの位置から見た半導体装置1の側断面構成を示している。
【0013】
図1、
図2(a)及び
図2(b)において、Z方向は、半導体装置1の厚み方向を示し、X方向は、半導体装置1の半導体基板(以下、単に「基板」と称する)5の第一面fa及びその裏面である第二面fbに平行な一方向で、かつ、当該Z方向と直交する方向を示す。Y方向は、当該第一面fa及び第二面fbに平行で、かつ、Z方向及びX方向に直交する方向を示す。なお、ここでは、説明の便宜上、
図1中、厚み方向であるZ方向の矢印方向を下方向と称し、Z方向の矢印とは逆方向を上方向と称する。
【0014】
半導体装置1は、IGBT型の半導体装置であり、例えば、Si結晶等からなる基板5を有している。基板5は、エミッタ層としてのエミッタp-層11と、コレクタ層としてのコレクタp層23と、エミッタp-層11とコレクタp層23との間に設けられるドリフト層10と、第一高濃度不純物層であるエミッタn層12と、エミッタp層13と、バッファ層29と、コレクタp-層23a及び第二高濃度不純物層であるコレクタn層22を有している。以下の説明において、ドリフト層10を挟んでエミッタ電極18側にある部に「エミッタ側」の用語を記し、コレクタ電極28側にある部に「コレクタ側」の用語を記す。
【0015】
第一実施形態において、エミッタp層13、エミッタp-層11及びコレクタp層23は導電型がp型(ここでは、第一導電型)の不純物層であり、エミッタn層12、ドリフト層10、バッファ層29及びコレクタn層22は導電型がn型(ここでは、第二導電型)の不純物層である。
【0016】
エミッタp-層11は、ドリフト層10の上面に形成されている。エミッタp-層11の上方には、エミッタn層12及びエミッタp層13が形成されている。エミッタn層12及びエミッタp層13は、基板5の第一面faに露出するように形成され、エミッタ電極18と電気的に接続されている。第一高濃度不純物層であるエミッタn層12は、エミッタ電極18とエミッタp-層11との間に設けられている。ただし、エミッタn層12の一部は層間絶縁層16とエミッタp-層11との間に配置されていてもよい。エミッタp層13は、エミッタ電極18とエミッタp-層11との間に設けられる。エミッタn層12及びエミッタp層13は、半導体装置1におけるエミッタp-層11へのコンタクト層になっていて、いずれもエミッタp-層11より高い不純物濃度を有している。
【0017】
エミッタn層12は、下層のエミッタp-層11に電子を注入するn+層である。また、エミッタp層13は、下層のエミッタp-層11から正孔を排出させるp+層である。基板5の第一面faには、エミッタn層12を貫通するトレンチ孔14(後述する)が形成されている。
【0018】
ドリフト層10は、n-層であり、不純物濃度が、例えば、2×1013cm-3程度である。なお、エミッタn層12及びエミッタp層13の不純物濃度は、例えば、1018~1021cm-3程度である。
【0019】
これにより、基板5の第一面faには、エミッタn層12が各トレンチ孔14に隣接して配置され、各トレンチ孔14に隣接して形成されたエミッタn層12の間にエミッタp層13が配置される。なお、エミッタn層12は、
図2(a)に示すように、上面視において帯状に形成されており、第一面faでY方向に延びるようにしてトレンチ孔14の両側に配置される。また、エミッタp層13も、上面視において帯状に形成されており、第一面faでY方向に延びるようにしてエミッタn層12間に配置される。
【0020】
基板5の第一面faには、
図2(a)に示すように、第一面faにおいてY方向に延びた複数のトレンチ孔14が設けられている。第一実施形態に係るトレンチ孔14は、同一構成であり、第一面faにおいて、互いにY方向に沿って平行に配置され、X方向に所定間隔で設けられている。トレンチ孔14は、
図1に示したように、基板5の第一面faからエミッタn層12及びエミッタp
-層11を貫通してドリフト層10まで到達している。
【0021】
各トレンチ孔14内には、それぞれ内面にエミッタ側ゲート絶縁膜であるゲート絶縁膜15が形成され、当該ゲート絶縁膜15に囲まれた領域内にトレンチ型のエミッタ側ゲート電極17が形成されている。ゲート絶縁膜15は、例えば、酸化膜により形成されており、エミッタ側ゲート電極17を基板5(ドリフト層10、エミッタp-層11及びエミッタn層12)から絶縁させている。
【0022】
エミッタ側ゲート電極17は、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)等により形成され、酸化膜等からなる層間絶縁層16によりその上端部が覆われている。各エミッタ側ゲート電極17には、エミッタ側ゲート配線(図示せず)がそれぞれ接続されており、当該エミッタ側ゲート配線を介して所定のゲート電圧Vgg1が印加される。なお、第一実施形態に係るエミッタ側ゲート電極17は、上端部が基板5の第一面faから突出せずにトレンチ孔14内に位置しており、層間絶縁層16がトレンチ孔14内にも設けられ、ゲート絶縁膜15と連接している。
【0023】
ここで、半導体装置1は、
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、Y方向に向けて互いに平行に延びた所定数のエミッタ側ゲート電極17がX方向において所定間隔で配置されている。ここでは、素子領域R0内の構成を1パターンとし、当該素子領域R0内の構成が繰り返しパターンとしてX方向に所定の周期で形成されている。以下、X方向に規定した素子領域R0に着目して、半導体装置1の構成について説明する。
【0024】
エミッタ側ゲート電極17は、ゲート絶縁膜15を介してエミッタp
-層11と対向配置された第一対向領域(以下、エミッタ側対向領域と称する)を有する。
図1では、5個のエミッタ側ゲート電極17が図示されており、エミッタ側対向領域Jaとして、10個のエミッタ側対向領域Ja0~Ja8が示されている。
【0025】
第一実施形態では、
図1に示すように、図中左最端部にあるエミッタ側ゲート電極17の図中左側のエミッタ側対向領域Ja0は、繰り返しパターンとなる素子領域R0内に含まれておらず、図中右側のエミッタ側対向領域Ja1は、素子領域R0内に含まれている。また、図中右最端部にあるエミッタ側ゲート電極17の右側のエミッタ側対向領域Ja0は、繰り返しパターンとなる素子領域R0内に含まれておらず、図中左側のエミッタ側対向領域Ja8は、素子領域R0内に含まれている。よって、第一実施形態に係る1つの素子領域R0内には、エミッタ側ゲート電極17のエミッタ側対向領域Jaとして、合計8個のエミッタ側対向領域Ja1~Ja8が形成されている。なお、8個のエミッタ側対向領域Ja1~Ja8について特に区別しない場合には、単にエミッタ側対向領域Jaと称する。
【0026】
第一実施形態に係るエミッタ側ゲート電極17は、
図2(a)に示すように、上面視において、帯状に形成されており、基板5の第一面faでのY方向における長さ(XY面方向におけるエミッタ側ゲート電極17の延設方向の長さ)をWと規定することができる。延設方向であるY方向の長さWは、エミッタ側ゲート電極17のエミッタ側対向領域Jaにおけるゲート幅方向の長さであり、第1実施形態では、以下、「第一対向領域長」とも記す。第一実施形態では、1つのエミッタ側対向領域Jaのゲート幅方向の長さは全てWとなる。従って、第一実施形態において繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内における、8個のエミッタ側対向領域Ja1~Ja8の第一対向領域長の合計を、8・Wと規定することができる。
【0027】
第一実施形態では、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、エミッタ側ゲート電極17及びコレクタ側ゲート電極27がいずれも
図1中に示すY方向に延設されている。エミッタ側対向領域の長さL1は、Y方向と異なるZ方向に延びるエミッタ側ゲート電極17のチャネル長である。また、コレクタ側対向領域の長さL2は、Y方向と異なるX方向に延びるコレクタ側ゲート電極27のチャネル長である。
【0028】
これに加えて、基板5の第一面faには、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)によって形成され、第一面faの表面及び層間絶縁層16を覆ったエミッタ電極18が設けられている。トレンチ孔14内のエミッタ側ゲート電極17は、基板5上に設けられた層間絶縁層16によって、エミッタ電極18と絶縁されている。
【0029】
隣接する層間絶縁層16の間には、コンタクトホール16aが形成されており、基板5の第一面fa上に設けられたエミッタ電極18がコンタクトホール16a内にも設けられている。コンタクトホール16aにおいてエミッタ電極18がエミッタp層13と接しており、エミッタ電極18が、エミッタp層13を介してエミッタp-層11と電気的に接続されている。層間絶縁層16は、エミッタ側ゲート電極17の上面の全面を覆うと共に、トレンチ孔14に隣接したエミッタn層12の上面の一部領域を覆うようにして基板5の第一面faに設けられる。
【0030】
このように、層間絶縁層16は、エミッタ側ゲート電極17の上方だけでなく、エミッタ側ゲート電極17の周囲のエミッタn層12も覆うことで、エミッタ電極18とエミッタ側ゲート電極17との短絡を防いでいる。なお、
図2(a)に示すO
L1は、基板5の第一面faにおける層間絶縁層16の形成領域を示している。
【0031】
次に、基板5の第二面fb側(下面)について説明する。基板5には、ドリフト層10の他面10bに、バッファ層29が形成されている。バッファ層29の下方には、コレクタp層23と、コレクタp-層23aと、第二高濃度不純物層となるコレクタn層22と、が形成されている。コレクタn層22は、コレクタ電極28とコレクタp-層23aとの間に設けられ、コレクタp-層23aよりも不純物濃度が高いn+型の不純物層である。コレクタn層22とコレクタp-層23aは、コレクタ電極28と電気的に接続されている。
【0032】
バッファ層29は、ドリフト層10とコレクタp層23との間にあり、ドリフト層10よりも不純物濃度を高めて空乏層がコレクタp層23に達することを防いでいる。なお、空乏層がコレクタp層23まで到達しないようにドリフト層10が十分に厚い構成とした場合には、バッファ層29を形成しなくてもよい。コレクタp-層23aは、コレクタp層23よりも不純物濃度の低いp-層である。なお、コレクタp層23及びコレクタn層22の不純物濃度は、例えば1018cm-3から1021cm-3程度であり、バッファ層29の不純物濃度は、例えば1015cm-3から1018cm-3程度である。
【0033】
コレクタp-層23aは、例えばイオン注入で形成されたコレクタp層23よりも不純物濃度の低いp-層である。また、第二面fbにおいては、コレクタp層23中にコレクタn層22が形成されている。コレクタn層22は、これらコレクタp-層23a及びコレクタp層23を跨るようにして基板5の第二面fb側の一部領域に形成されている。
【0034】
なお、基板5の第二面fbにおけるコレクタp層23は、
図2(b)に示すように、下面視において、帯状に形成されており、第二面fbでY方向に延びるように配置される。また、コレクタp層23の両側には、下面視において、帯状に形成されたコレクタp
-層23a及びコレクタn層22が順に配置され、これらコレクタp
-層23a及びコレクタn層22が、第二面fbでY方向に延びるように配置される。
【0035】
かかる構成に加えて、基板5の第二面fbには、
図1に示すように、プレーナ型のコレクタ側ゲート電極27と、コレクタ側ゲート電極27の上面に形成される、コレクタ側ゲート絶縁膜であるゲート絶縁膜25と、コレクタ電極28と、が設けられている。基板5の第二面fb(第二面fbのX-Y平面)の表面に、ゲート絶縁膜25を介して配置されるプレーナ型のコレクタ側ゲート電極27は、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)等により形成されており、コレクタp層23及びコレクタp
-層23aの下方に、酸化膜等からなるゲート絶縁膜25を介して配置されている。コレクタ側ゲート電極27には、コレクタ側ゲート配線(図示せず)が接続されており、当該コレクタ側ゲート配線を介して所定のゲート電圧Vgg2が印加される。
【0036】
コレクタ側ゲート電極27は、ゲート絶縁膜25を介して、第二面fbのコレクタp
-層23aと対向配置された第二対向領域(以下、コレクタ側対向領域と称する)Jbを有する。
図1では、繰り返しパターンとなる素子領域R0内に1個のコレクタ側ゲート電極27が設けられており、当該素子領域R0内に2個のコレクタ側対向領域Jb1、Jb2が設けられている。なお、2個のコレクタ側対向領域Jb1、Jb2について特に区別しない場合には、単にコレクタ側対向領域Jbと称する。
【0037】
第一実施形態に係るコレクタ側ゲート電極27は、
図2(b)に示すように、下面視において、帯状に形成されており、基板5の第二面fbでのY方向における長さ(X-Y面方向におけるコレクタ側ゲート電極27延設方向の長さ)をWと規定することができる。延設方向であるY方向の長さWは、コレクタ側ゲート電極27のコレクタ側対向領域Jbにおけるゲート幅方向の長さであり、第一実施形態では、以下、「第二対向領域長」とも記す。従って、第一実施形態において繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内では、2個のコレクタ側対向領域Jb1、Jb2の第二対向領域長の合計は2・Wと規定することができる。
【0038】
基板5の第二面fbに設けられたゲート絶縁膜25は、コレクタ側ゲート電極27上に配置され、コレクタ側ゲート電極27の下方及び側方に層間絶縁層26が形成されている。コレクタ側ゲート電極27は、ゲート絶縁膜25と層間絶縁層26とにより全体が覆われている。また、基板5の第二面fbには、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)によって形成され、かつ、第二面fbの表面及び層間絶縁層26を覆うコレクタ電極28が設けられている。コレクタ電極28は、コレクタn層22及びコレクタp層23と隣接しており、コレクタn層22及びコレクタp層23と電気的に接続されている。コレクタ側ゲート電極27は、基板5の第二面fbに設けられたゲート絶縁膜25によってバッファ層29及びコレクタp-層23aと絶縁されている。
【0039】
ここで、第一実施形態において繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内では、エミッタ側対向領域Ja1~Ja8の第一対向領域長の合計が8・Wと規定され、コレクタ側対向領域Jb1、Jb2の第二対向領域長の合計の2・Wよりも長くなるように構成されている。
【0040】
第一実施形態では、エミッタ側ゲート電極17の1つの第一対向領域長と、コレクタ側ゲート電極27の1つの第二対向領域長との長さが等しいので、素子領域R0内において、第一対向領域長の合計を第二対向領域長の合計よりも長くするために、第一面faのエミッタ側ゲート電極17を、第二面fbのコレクタ側ゲート電極27よりも高密度に配置している。第一実施形態では、素子領域R0内の第二対向領域長の合計を1としたときの、素子領域R0内の第一対向領域長の合計と第二対向領域長の合計との比率を、ゲート密度比率と称する。
【0041】
第一実施形態に係る半導体装置1では、ゲート密度比率Ja:Jbが、4:1、つまり第一対向領域長の合計が、第二対向領域長の合計の4倍となっている。なお、本実施形態においては、第一対向領域長の合計が、第二対向領域長の合計の4倍となっている場合について説明しているが、本発明はこれに限らず、第一対向領域長の合計が第二対向領域長の合計よりも長ければよく、第一対向領域の合計は、例えば、第二対向領域長の合計の2倍以上長くてもよいし、さらには4倍以上長くてもよい。
【0042】
ゲート密度比率Ja:Jbは、1超:1から8未満:1であることが望ましい。また、ゲート密度比率Ja:Jbは、好ましくは2:1から7:1の範囲、より好ましくは3:1から5:1の範囲であることが望ましい。このようなゲート密度比率Ja:Jbにすることにより、半導体装置1のオンオフ動作時に導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させることができることが、シミュレーション結果から確認されており、その詳細については後述する。
【0043】
以上説明したように、第一実施形態では、素子領域R0内における、第一対向領域長の合計と、第二対向領域長の合計とを比較して、導通時損失とスイッチング損失とを調整している。これは、半導体装置の駆動力がゲート電極のゲート幅に比例することに着目し、半導体装置1の第一面fa(上面)と第二面fb(下面)とで駆動力を調整するために行われるものである。また、駆動力は、ゲート長が短いほど強まるが、ゲート長に関する長さL1、L2の相違による駆動力への影響は、ゲート幅Wに比べて十分小さいために無視することが可能である。ただし、第一実施形態では、第一対向領域長の合計、第二対向領域長の合計による調整に加え、
図1、
図2(a)、
図2(b)に示した長さL1、長さL2をさらに長く、あるいは、さらに短くなるように設計し、エミッタの側とコレクタの側とで駆動力をさらに調整するようにしてもよい。
【0044】
(半導体装置のオンオフ動作)
次に、以上説明した半導体装置1のオンオフ動作について説明する。なお、半導体装置1には、エミッタ電極18及びコレクタ電極28間に正の電圧Vceが印加されているものとする。半導体装置1は、エミッタ側ゲート電極17に印加される第一ゲート電圧であるゲート電圧Vgg1と、コレクタ側ゲート電極27に印加される第二ゲート電圧であるゲート電圧Vgg2と、の印加状態により制御される。半導体装置1のオン状態にあっては、エミッタn層12とドリフト層10との間が導通し、かつ、コレクタn層22とドリフト層10との間が非導通となる。このとき、エミッタp-層11内に形成された反転層を介してエミッタ電極18からドリフト層10に電子が注入され、かつ、コレクタp層23からドリフト層10に正孔が注入される。また、半導体装置1をオフ状態に切り替えるターンオフ時にあっては、少なくともコレクタn層22とドリフト層10とが導通する。このとき、コレクタp-層23a内に形成された反転層及びコレクタn層22を介してドリフト層10からコレクタ電極28に電子が排出される。コレクタn層22とドリフト層10とが導通するタイミングにおいて、エミッタn層12とドリフト層10との間を非道通とすると、ドリフト層10への電子の注入が停止し、ドリフト層10からエミッタp-層11に正孔が排出される。以下、このオン動作、オフ動作について詳細に説明する。
【0045】
オン動作時、エミッタ側ゲート電極17にHigh(例えば、閾値以上)のゲート電圧Vgg1(オン電圧)が印加され、コレクタ側ゲート電極27にLow(例えば、0V)のゲート電圧Vgg2(オフ電圧)が印加される。これにより、半導体装置1には、
図3に示すように、エミッタ側対向領域Jaに沿ってエミッタp
-層11中に反転層(nチャネル)Laが形成される。
【0046】
半導体装置1は、オン動作時、エミッタn層12及びドリフト層10間が反転層Laにより導通状態となり、当該反転層Laを介してエミッタn層12からドリフト層10へ電子が注入される。なお、エミッタ側ゲート電極17に印加されるオン電圧は、エミッタ電極18を基準にした正の電圧であってもよい。
【0047】
また、半導体装置1では、コレクタ側ゲート電極27にゲート電圧Vgg1と異なるLow(例えば、0V)のゲート電圧Vgg2(オフ電圧)が印加されることにより、ゲート絶縁膜25を介してコレクタp-層23aと対向しているコレクタ側ゲート電極27のコレクタ側対向領域Jbに沿ったコレクタp-層23a中に反転層Lb(nチャネル)が非形成となる。従って、半導体装置1では、コレクタn層22とバッファ層29とが絶縁され非導通状態となり、コレクタp層23とバッファ層29によって形成されるpn接合が順バイアスされる。半導体装置1は、コレクタp層23とバッファ層29によって形成されるpn接合の順バイアスによって、コレクタp層23からバッファ層29を介してドリフト層10に正孔が注入される。なお、ここで、コレクタn層22とドリフト層10は、バッファ層29を介して電気的に接続されるから、コレクタn層22とバッファ層29との導通、非導通は、コレクタn層22とドリフト層10との導通、非導通と同義である。
【0048】
なお、上記したゲート電圧Vgg1と異なるゲート電圧Vgg2は、0Vに限定されるものでなく、例えば、負の電圧であってもよいし、コレクタ側ゲート電極27下に反転層が形成されない程度の正の電圧であってもよい。つまり、同時に印加されるゲート電圧Vgg1とゲート電圧Vgg2は、エミッタ側、コレクタ側のうちの一方の対向領域に反転層が形成され、他方の対向領域に反転層が形成されないものであればよい。
【0049】
以上により、オン動作時には、ドリフト層10に存在する電子及び正孔の密度が増加することで、伝導度変調が生じてドリフト層10の抵抗が減少する。なお、半導体装置1のオン電圧は、コレクタ電極28及びエミッタ電極18間のオン時の電圧降下分に相当する。
【0050】
次に、半導体装置1をオン状態からオフ状態に切り換えるオフ動作について説明する。この場合、半導体装置1には、エミッタ側ゲート電極17にLowのゲート電圧Vgg1がオフ電圧として印加され、コレクタ側ゲート電極27にHighのゲート電圧Vgg2がオン電圧として印加される。これにより、半導体装置1には、エミッタ側対向領域Jaに沿ってエミッタp-層11中に形成されていた反転層(nチャネル)Laが非形成となり、エミッタn層12及びドリフト層10間が非導通状態となる。これにより、半導体装置1は、オフ動作時に反転層の消失によってエミッタn層12からドリフト層10への電子の注入が停止する。なお、コレクタ側ゲート電極27に印加されるオン電圧は、コレクタ電極28を基準にした正の電圧であってもよい。
【0051】
また、
図3に示すように、半導体装置1では、オフ動作時、コレクタ側ゲート電極27にHighのゲート電圧Vgg2が印加されることにより、コレクタ側対向領域Jbに沿ってコレクタp
-層23a中に反転層Lbが形成される。この反転層Lbを介してバッファ層29とコレクタp層23とが同電位になり、コレクタ側ゲート電極27bの周囲において、コレクタp層23からドリフト層10への正孔の注入が停止する。
【0052】
ドリフト層10内に蓄積されている電子は、反転層Lbを介してバッファ層29からコレクタn層22へ排出され、さらにはコレクタn層22からコレクタ電極28へ排出される。また、ドリフト層10内の正孔は、エミッタp-層11及びエミッタp層13を介してエミッタ電極18へ排出される。さらに、エミッタp-層11とドリフト層10とのpn接合が空乏層化し、半導体装置1はオフ状態になる。
【0053】
このように、半導体装置1のオン動作時にエミッタp-層11内に形成される反転層Laは、エミッタ側対向領域Jaに沿ってエミッタp-層11内に形成される。また、半導体装置1のオフ動作時にコレクタp-層23a内に形成される反転層Lbは、コレクタ側対向領域Jbに沿ってコレクタp-層23a内に形成される。
【0054】
ここで、第一実施形態では、繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内において、エミッタ側対向領域Ja1~Ja8の第一対向領域長の合計が、コレクタ側対向領域Jb1、Jb2の第二対向領域長の合計よりも長くなるように構成されている。このため、半導体装置1では、素子領域R0内において、オン動作時にエミッタ側対向領域Jaに沿って形成される反転層Laのゲート幅方向の長さの合計を、オフ動作時にコレクタp-層23a内にコレクタ側対向領域Jbに沿って形成される反転層Lbのゲート幅方向の長さの合計よりも長くすることができる。
【0055】
半導体装置1は、素子領域R0内において、エミッタ側対向領域Jaの第一対向領域長の合計を、コレクタ側対向領域Jbの第二対向領域長の合計よりも長くする(すなわち、ゲート密度比率Ja:JbのJaの値をJbの値よりも大きくする)ことで、エミッタp-層11内の反転層Laのゲート幅方向の長さの合計を、コレクタp-層23a内の反転層Lbのゲート幅方向の長さの合計よりも長くするような構成とし、その結果、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させるようにしている。
【0056】
(シミュレーション結果)
次に、上記のような半導体装置1において、ゲート密度比率Ja:Jbを変えたときの導通時損失とスイッチング損失との関係についてシミュレーションにより調べた。ここで、
図4(a)及び
図4(b)は、シミュレーションに用いた評価回路を示す。
図4(a)に示した評価回路は、比較例であり、エミッタ側ゲート電極17が設けられ、コレクタ側ゲート電極27が設けられていない片面のIGBTの回路構成を示したものである。
図4(b)に示した評価回路は、第一実施形態に係る半導体装置1の回路構成を示したものである。
【0057】
図4(a)の比較例の評価回路は、負荷となるインダクタンスLとダイオードFWD1(Free Wheeling Diode)とが並列に接続され、IGBT部T
r1とダイオードFWD2とが並列に接続されている。FWD1及びFWD2は、IGBT部T
r1がオフされたときインダクタンスLに蓄えられたエネルギーを電源Vdcの側に還流するデバイスである。インダクタンスL及びダイオードFWD1の一端には電源Vdcが接続されている。
【0058】
IGBT部Tr1は、エミッタ側ゲート電極17に相当するゲート端子Gと、コレクタ電極28に相当するコレクタ端子Cと、エミッタ電極18に相当するエミッタ端子Eとを有し、ゲートをオン又はオフするパルス電圧がゲート電圧Vgg1として、抵抗Rgを介してゲート端子Gに印加される。また、コレクタ端子Cには、インダクタンスL及びダイオードFWD1の他端が接続されているとともに、ダイオードFWD1の一端が接続されている。エミッタ端子Eには、ダイオードFWD2の他端とアースとが接続されている。なお、Vceはエミッタ端子E及びコレクタ端子C間の電圧を示す。
【0059】
図4(b)に示す評価回路は、
図4(a)の評価回路とIGBT部T
r2の構成を変えている。なお、その他の構成については
図4(a)の評価回路と同じであるため説明は省略する。IGBT部T
r2には、エミッタ側ゲート電極17に相当するエミッタ側ゲート端子G1と、コレクタ側ゲート電極27に相当するコレクタ側ゲート端子G2とが設けられている。コレクタ側ゲート端子G2は、抵抗Rg等を介してコレクタ端子Cに接続されている。シミュレーションでは、抵抗R
g1を介したエミッタ側ゲート端子G1へのゲート電圧Vgg1の印加と、抵抗R
g2を介したコレクタ側ゲート端子G2へのゲート電圧Vgg2の印加とを交互に行った。
【0060】
そして、
図4(b)に示す評価回路において、ゲート密度比率Ja:Jbが1:1のときと、2:1のときと、4:1のときと、8:1のときと、についてそれぞれ導通時損失とスイッチング損失との関係についてシミュレーションにより調べた。その結果、
図5(a)及び
図5(b)に示すような結果が得らえた。
【0061】
図5(a)、
図5(b)は、エミッタ側とコレクタ側とのゲート密度比率が半導体装置1に与える影響を説明するための図である。
図5(a)は、ゲート密度比率Ja:Jbと、スイッチング損失との関係を調べたシミュレーション結果を示す図である。
図5(a)の横軸はゲート密度比率を示し、縦軸はスイッチング損失の
図6における最小値(mJ)を示している。スイッチング損失は、1回のスイッチングで消費するエネルギーであり、急峻なスイッチングにより半導体装置1に電圧がかかり、かつ電流が流れる時間を短くするほど減少する。スイッチング損失を減らすことによってスイッチング周波数を高めることができる。
【0062】
図5(b)は、ゲート密度比率Ja:Jbと、オン電圧降下との関係を調べたシミュレーション結果を示す図である。
図5(b)の横軸はゲート密度比率を示し、縦軸はオン電圧降下(V)を示している。オン電圧降下は、IGBTの導通時損失に係る物理量であり、オン電圧降下が小さいほど導通時損失が小さいことを示している。
【0063】
図5(a)及び
図5(b)に示すSは、基板5の片面にのみゲート電極を備える
図4(a)の評価回路におけるシミュレーション結果を示す。また、
図5(a)及び
図5(b)に示すDは、
図4(b)に示す基板5の両面にゲート電極を有する評価回路のシミュレーション結果を示す。
【0064】
図5(a)に示すように、比較例では、スイッチング損失が約185mJであった。一方、実線Dで示すように、第一実施形態の半導体装置1を示す評価回路では、ゲート密度比率が1:1のときスイッチング損失は約27mJとなり、ゲート密度比率が2:1のときのスイッチング損失は約30mJとなった。
【0065】
そして、さらに、
図4(b)に示す評価回路のパラメータを変更することによってゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を上げていった場合、スイッチング損失は上昇し、ゲート密度比率が4:1のときスイッチング損失は約68mJとなり、ゲート密度比率が8:1のときスイッチング損失は約122mJとなった。
図5(a)に示す結果から、第一実施形態に係る半導体装置1を示す評価回路では、ゲート密度比率によらず比較例よりもスイッチング損失が小さくなることが確認できた。
【0066】
ただし、スイッチング損失は、ゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を上げてゆくと、次第に大きくなることが確認できた。よって、スイッチング損失を低減させるためには、評価回路のエミッタ側ゲート電極17のゲート幅方向の長さの合計を小さくすること、すなわち、ゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を小さくすることが望ましいことが確認できた。
【0067】
上記の特性は、ゲート密度比率Ja:JbにおけるJaの値、すなわちエミッタ側対向領域Jaのゲート幅方向の長さの合計を短くする、換言すると、コレクタ側対向領域Jbのゲート幅方向の長さの合計を相対的に長くすることによってドリフト層10から電子を排出する効果が高まり、スイッチング速度が高まることによって損失が減るためによるものと考えられる。
【0068】
また、
図5(b)に示すように、比較例のオン電圧降下は約1.66Vであった。一方、第一実施形態の半導体装置1を示す評価回路では、ゲート密度比率が1:1のときオン電圧降下が約2.06Vとなり、ゲート密度比率が2:1のときのオン電圧降下は約1.86Vとなった。
【0069】
そして、さらに、
図4(b)に示す評価回路のパラメータを変更することによってゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を上げていった場合、オン電圧降下は低下していき、ゲート密度比率が4:1のときオン電圧降下は約1.77Vとなり、ゲート密度比率が8:1のときオン電圧降下は約1.72Vとなった。
図5(b)に示す結果から、第一実施形態に係る半導体装置1を示す評価回路は、ゲート密度比率によらず比較例よりもオン電圧降下が大きくなることが確認できた。
【0070】
そして、オン電圧降下は、評価回路のエミッタ側のゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を下げてゆくと、次第に大きくなることが確認できた。よって、オン電圧降下を低減させるためには、ゲート密度比率Ja:Jbにおけるエミッタ側対向領域Jaの値を大きくすることが望ましいことが確認できた。
【0071】
上記特性は、ゲート密度比率Ja:Jbにおいて、エミッタ側対向領域Jaに対するコレクタ側対向領域Jbの値を小さくすること、すなわち、正孔放出に寄与するコレクタp層23の領域の割合を相対的に大きくすることによって生じると考えられる。ゲート密度比率Ja:JbにおけるJbの値、つまりコレクタ側対向領域Jbのゲート幅方向の長さの合計が長くなると、コレクタ側の正孔注入面積が減少し、ドリフト層10の抵抗が高まるからである。
【0072】
以上のシミュレーション結果から、導通時損失の低減とスイッチング損失の低減とはトレードオフの関係にあることが確認できた。そして、ゲート密度比率Ja:Jbにおいて、コレクタ側対向領域Jbに対するエミッタ側対向領域Jaの割合を大きくすることで、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させることができる条件があることを確認できた。
【0073】
具体的には、以上のシミュレーション結果から、半導体装置1のオンオフ動作時に、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させるためには、ゲート密度比率Ja:Jbを1超:1から8未満:1とすること、好ましくは、ゲート密度比率Ja:Jbを2:1から7:1の範囲とすること、より好ましくは、3:1から5:1の範囲とすることが望ましいことが確認できた。
【0074】
次に、
図4(b)に示した半導体装置1の評価回路においてゲート密度比率Ja:Jbを変え、半導体装置1の評価回路をオン状態からオフ状態に切り換える際の、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングと、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングと、をずらしたときのスイッチング損失についてシミュレーションにより調べた。その結果、
図6に示すようなシミュレーション結果が得られた。
【0075】
図6の縦軸はスイッチング損失(mJ)を示し、横軸はコレクタ側ゲートオンタイミング(μs)を示している。コレクタ側ゲートオンタイミングは、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングを基準にして、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングを示している。横軸の値が負であることは、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングが、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングよりも早いタイミングであることを示している。また、横軸の値が正であることは、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングが、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングよりも遅いことを示している。
【0076】
図6のシミュレーション結果から、ゲート密度比率Ja:Jbが1:1及び2:1のときは、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングが、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングよりも早いと、スイッチング損失が急激に大きくなることが確認できた。このような現象は、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加することによってドリフト層10内のキャリアが急激に減少し、高抵抗の状態で半導体装置1が駆動するために起こると考えられる。
【0077】
一方、ゲート密度比率Ja:Jbが4:1、あるいは8:1のときは、コレクタ側ゲート端子G2にオン電圧を印加するタイミングが、エミッタ側ゲート端子G1にオフ電圧を印加するタイミングよりも早くても、急激なスイッチング損失は生じないことが確認できた。このような理由は、エミッタ側対向領域Jaのゲート幅方向の長さの合計に対してコレクタ側対向領域Jbのゲート幅方向の長さの合計が短いと、電導度変調を止めるのに十分な正孔注入抑制効果が得られず、ゲート電圧Vgg2をゲート電圧Vgg1より早くオンしてもドリフト層10への正孔注入は完全には止まらず、ドリフト層10の抵抗が極端に増加して大きなスイッチング損失が生じることを回避することができるからであると考えられる。
【0078】
以上のシミュレーション結果より、ゲート密度比率Ja:Jbを2超:1とすることで、コレクタ側ゲート電極27(コレクタ側ゲート端子G2)にオン電圧を印加するタイミングが、エミッタ側ゲート電極17(エミッタ側ゲート端子G1)にオフ電圧を印加するタイミングとがずれても、急激なスイッチング損失の発生を抑制できることが確認できた。
【0079】
(製造方法)
次に、第一実施形態の半導体装置1の製造方法を説明する。
図7A(a)から
図7A(c)、
図7B(d)
図7B(e)は、第一実施形態の半導体装置1を製造する製造方法の一例を説明するための図である。第一実施形態では、単結晶シリコン製のベア基板に不純物を注入し、ドリフト層10を有する基板を形成し、これに順次不純物を注入して基板5(
図7B(d))を形成する。
図7A(a)に示す不純物層のうち、エミッタp
-層11は、比較的不純物濃度の低いp
-層である。また、エミッタn層12は、エミッタp
-層11に対して相対的に高濃度のn
+層である。エミッタp層13は、エミッタp
-層11に対して相対的に高濃度のp
+層である。バッファ層29は、ドリフト層10に対して相対的に高濃度のn層である。エミッタp
-層11、エミッタn層12、エミッタp層13、コレクタp層23及びバッファ層29の形成は、例えばイオン注入によって行うことができる。
【0080】
次に、第一実施形態では、
図7A(b)に示すように、第一面faのエミッタn層12からエミッタp
-層11を貫通してドリフト層10に達するトレンチ孔14を形成する。トレンチ孔14の形成は、フォトリソグラフィによって行うことができる。次に、トレンチ孔14の内表面にゲート絶縁膜15を形成する。ゲート絶縁膜15の形成は、
図7A(b)に示す状態のウェハの全面に絶縁膜を形成することによって行われる。
次に、第一実施形態では、
図7A(c)に示すように、トレンチ孔14のゲート絶縁膜15の上からポリシリコンを充填し、トレンチ孔14内にエミッタ側ゲート電極17を形成する。
【0081】
次に、第一実施形態では、
図7B(d)に示すように、バッファ層29の裏面に層状のゲート絶縁膜25を形成した後、ポリシリコンを堆積し、フォトリソグラフィによりゲート絶縁膜25ごとエッチングして、バッファ層29の裏面にゲート絶縁膜25を介してプレーナ型のコレクタ側ゲート電極27を形成する。そして、コレクタ側ゲート電極27をマスクにしてバッファ層29の裏面にp型の不純物層を注入して、バッファ層29の裏面にコレクタp
-層23aを有したコレクタp層23を、例えばイオン注入によって形成する。さらに、コレクタp層23にn型不純物を高濃度に注入し、コレクタ側ゲート電極27の周囲のコレクタp層23からコレクタp
-層23aにかけてコレクタn層22を形成する。以上の工程により、基板5が完成する。
【0082】
以上の処理の後、
図7B(e)に示すように、エミッタ側ゲート電極17上に層間絶縁層16を形成し、フォトリソグラフィによりコンタクトホールを形成して、基板5の第一面faに金属を堆積し、エミッタ電極18を形成する。また、同様に、コレクタ側ゲート電極27の周囲に層間絶縁層26を形成し、フォトリソグラフィによりコンタクトホールを形成して基板5の第二面fbに金属を堆積し、コレクタ電極28を形成する。
【0083】
以上により、第一実施形態の半導体装置1を製造することができる。ただし、半導体装置1は、以上説明した方法のみにより製造されるものではない。製造プロセスの手法や条件は、半導体装置1の設計や要求される条件により適宜選択される。
【0084】
[変形例]
次に、以上説明した第一実施形態の変形例を説明する。
(第一変形例)
図8は、第一変形例の半導体装置2の構成を示す断面図である。
図9(a)は、
図8に示す半導体装置2の線IXa―IXaに沿う断面部分を上方から下方に向けて見た断面図である。
図9(b)は、半導体装置2の線IXb―IXbに沿う断面部分を下方から上方に向けて見た断面図である。なお、
図8は、
図9(a)及び
図9(b)にエミッタ電極18やコレクタ電極28等が設けられている構成において、
図9(a)に示す線VIII―VIIIの位置から見た半導体装置2の側断面構成を示している。
【0085】
半導体装置2では、素子領域R0に5個のトレンチ孔14が形成されており、
図8中の右最端部及び左最端部にあるトレンチ孔14a内にはゲート絶縁膜15を介してダミーゲート電極17aが形成され、残り中央3個のトレンチ孔14内にはゲート絶縁膜15を介してエミッタ側ゲート電極17が形成されていて、ダミーゲート電極17aは、エミッタ層11と短絡させることが好ましい。
【0086】
第一変形例では、中央の3個のエミッタ側ゲート電極17の間の第一面faにそれぞれエミッタn層12及びエミッタp層13を形成し、ダミーゲート電極17a及びエミッタ側ゲート電極17の間の第一面faにはエミッタn層12及びエミッタp層13を形成することなくエミッタp
-層11を層間絶縁層16で覆っている。なお、
図9(a)中のO
L3は、各層間絶縁層16のX方向の長さを示す。
【0087】
図8及び
図9(a)に示すように、半導体装置2の第一面fa側には、素子領域R0において、エミッタ側ゲート電極17がゲート絶縁膜15を介してエミッタp
-層11に対向するエミッタ側対向領域Jaのうち、エミッタ側対向領域Jaに沿ってエミッタp
-層11内に反転層を形成させるエミッタ側対向領域Jaとして、4箇所のエミッタ側対向領域Ja11~Ja14が設けられている。
【0088】
なお、ダミーゲート電極17aと対向するエミッタ側ゲート電極17のエミッタ側対向領域Ja10側に形成される反転層には、基板5の第一面faにエミッタn層12が形成されていないことから、反転層中に電子が注入されることがない。以下、ここでのエミッタ側対向領域Jaとは、反転層が形成され、かつ、形成された反転層がエミッタn層12を介してエミッタ電極と接続されるエミッタ側対向領域Ja11~Ja14をいう。換言すると、第一実施形態でいう第一対向領域には、エミッタ電極18と電気的に接続するためのエミッタn層12を持たないものは含まれない。
【0089】
ここで、Y方向におけるエミッタ側対向領域Jaの長さをWとすると、繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内における、4個のエミッタ側対向領域Ja11~Ja14の第一対向領域長の合計は、4・Wとなる。
【0090】
第一変形例の他の実施形態としては、素子領域R0において、ダミーゲート電極17aを形成せずに、3つのエミッタ側ゲート電極17だけを形成するようにしてもよいが、このようにすると、マイクロローディング効果により素子領域R0の中央と周囲とでエッチングレートや選択比がばらつく恐れもある。第一変形例は、このようなばらつきを抑えるために、反転層の形成に与らないダミーゲート電極17aも形成し、素子領域R0におけるダミーゲート電極17aとエミッタ側ゲート電極17との密度を一様にしている。
【0091】
なお、このような第一変形例に係る半導体装置2は、エミッタn層12、エミッタp層13となる不純物層を注入する際のマスク及びコンタクトホールを形成する際のマスクを変更することによって実現することができる。
【0092】
また、第一変形例に係る半導体装置2は、基板5の第二面fbにトレンチ型のコレクタ側ゲート電極27を備える点で第一実施形態と相違している。この場合、素子領域R0には、第二面fbからコレクタn層22、コレクタp-層23a及びバッファ層29を貫通してドリフト層10まで到達した、1個のトレンチ孔14bが形成されている。このトレンチ孔14b内には、ゲート絶縁膜25を介して、トレンチ型のコレクタ側ゲート電極27が設けられている。ただし、コレクタ側ゲート電極27は、バッファ層29を貫通しないものであってもよい。
【0093】
半導体装置2は、コレクタp層23とバッファ層29との間にコレクタp
-層23aが形成され、コレクタp層23には、トレンチ孔14bに沿って当該トレンチ孔14bの両側面にコレクタn層22が形成されている。
図9(b)では、下面視において、帯状のコレクタ側ゲート電極27の長手方向の二辺に沿ってゲート絶縁膜25が形成され、ゲート絶縁膜25のコレクタ側ゲート電極27と隣接していない反対側にコレクタn層22が形成されている。
【0094】
なお、コレクタ側ゲート電極27の下には、層間絶縁層26が設けられている。また、基板5の第二面fbに配置されたコレクタn層22、コレクタp層23及び層間絶縁層26にはコレクタ電極28が設けられている。
【0095】
コレクタ側ゲート電極27をトレンチ型とする構成は、正孔を注入するコレクタp層23の面積を大きくすることに有利である。また、コレクタp-層23aを第二面fbと直交するZ方向に長くすることによって、コレクタp層23内に形成される反転層の大きさを決められるので、電子の排出に係る反転層の大きさを規定できるコレクタ側対向領域Jbの設計の自由度を高めることができる。
【0096】
ここで、Y方向におけるコレクタ側対向領域Jbの長さ(第二対向領域長)をWとすると、繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0における、2個のコレクタ側対向領域Jb10、Ja11の第二対向領域長の合計は、2・Wと規定される。
【0097】
第一変形例に係る半導体装置2では、素子領域R0内の第二対向領域長の合計の長さを1としたときの、素子領域R0内の、第一対向領域長の合計と第二対向領域長の合計の比(ゲート密度比率)Ja:Jbが、2:1となっている場合について説明している。
【0098】
以上の構成において、第一変形例に係る半導体装置2でも、上述した第一実施形態と同様に、素子領域R0内において、第一対向領域長の合計を第二対向領域長の合計よりも長くすることで、エミッタp-層11内の反転層のゲート幅方向の長さの合計が、コレクタp-層23a内の反転層のゲート幅方向の長さの合計よりも長くなるような構成とし、その結果、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させることができる。
【0099】
(第二変形例)
図10は、第二変形例の半導体装置3の構成を説明するための断面図である。
図11(a)は、
図10に示す半導体装置3の線XIa―XIaに沿う断面部分を上方から下方に向けて見た断面図である。
図11(b)は、半導体装置3の線XIb―XIbに沿う断面部分を下方から上方に向けて見た断面図である。なお、
図10は、
図11(a)及び
図11(b)にエミッタ電極18やコレクタ電極28等が設けられている構成において、
図11(a)に示す線X―Xの位置から見た半導体装置3の側断面構成を示している。
【0100】
半導体装置3は、第一面faに5つのエミッタ側ゲート電極17を備えている。5つのエミッタ側ゲート電極17では、合計10個のエミッタ側対向領域が形成される。ただし、半導体装置3の素子領域R0には、
図10中の右最端部及び左最端部にあるエミッタ側ゲート電極17のエミッタ側対向領域Ja0、Ja0が含まれないので、素子領域R0には8つのエミッタ側対向領域Ja21~Ja28が存在する。Y方向におけるエミッタ側対向領域Jaの長さをWとすると、繰り返しパターンとなる1つの素子領域R0内における、8個のエミッタ側対向領域Ja21~Ja28の第一対向領域長の合計は、8・Wとなる。
【0101】
また、
図10及び
図11(b)に示すように、半導体装置3の第二面fbには、コレクタ側ゲート電極27にコレクタ側対向領域Jb21、Jb22が形成されている。このため、1つの素子領域R0内における、2個のコレクタ側対向領域Jb21、Jb22の第二対向領域長の合計は、2・Wとなる。
【0102】
第二変形例に係る半導体装置3では、素子領域R0内のコレクタ側対向領域Jbの第二対向領域長の合計を1としたときの、素子領域R0内のエミッタ側対向領域Jaの第一対向領域長の合計と、コレクタ側対向領域Jbの第二対向領域長の合計との比率(ゲート密度比率)Ja:Jbが、4:1となっている場合について説明している。
【0103】
半導体装置3は、半導体装置2と同様に、第二面fbにトレンチ型のコレクタ側ゲート電極27を備えている。ただし、半導体装置3は、バッファ層29内にコレクタp-層23aを形成している点で半導体装置2と相違する。半導体装置3には、第二面fbからコレクタn層22、コレクタp-層23a及びバッファ層29を貫通してドリフト層10まで到達した、1個のトレンチ孔14bが形成されている。このトレンチ孔14b内には、ゲート絶縁膜25を介して、トレンチ型のコレクタ側ゲート電極27が設けられている。ただし、コレクタ側ゲート電極27は、バッファ層29を貫通しないものであってもよい。
【0104】
さらに、
図10に示すように、半導体装置3は、エミッタn層12及びエミッタp層13がエミッタ側ゲート電極17のゲート幅Wの方向(Y方向)に交互に形成されている点で半導体装置1、2と相違する。このような構成によれば、エミッタn層12及びエミッタp層13のパターンを幅広にでき、半導体装置3の製造を容易にすることができる。
【0105】
以上の構成の第二変形例においても、上述した第一実施形態と同様に、素子領域R0内において、エミッタ側対向領域Jaのゲート幅方向の長さの合計を、コレクタ側対向領域Jbのゲート幅方向の長さの合計よりも長くすることで、エミッタp-層11内の反転層のゲート幅方向の長さの合計が、コレクタp-層23a内の反転層のゲート幅方向の長さの合計よりも長くなるような構成とし、その結果、導通時損失を抑えながら、ターンオフ時のスイッチング損失を低減させることができる。
【0106】
(その他)
なお、第一実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。以上説明した第一実施形態では、エミッタ側ゲート電極17を、基板5の第一面faに形成されたトレンチ孔14内に形成されたトレンチ型のゲート電極とした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、エミッタ側ゲート電極17をプレーナ型のゲート電極としても良い。なお、エミッタの側に形成されるプレーナ型のエミッタ側ゲート電極は、第一面faの表面にゲート絶縁膜となる絶縁膜を介して配置されるゲート電極をいう。さらに、第一実施形態は、コレクタ側ゲート電極27がプレーナ型のゲート電極であっても良いし、第二面fbのトレンチ孔内に形成されたトレンチ型のコレクタ側ゲート電極であってもよい。また、基板5の第一面fa及び第二面fbに、トレンチ型のゲート電極とプレーナ型のゲート電極とを混在して形成するようにしてもよい。
【0107】
また、以上説明した構成は、いずれも、素子領域R0に一つのコレクタ側ゲート電極27を備えているが、第一実施形態はコレクタ側ゲート電極27を1つにするものに限定されず、素子領域R0に複数のコレクタ側ゲート電極27を備えるものであってもよい。また、第一実施形態は、素子領域R0にエミッタ側ゲート電極17を複数設ける例に限定されるものでなく、素子領域R0にエミッタ側ゲート電極17を1つ備えるものであってもよい。また、エミッタ側ゲート電極17及びコレクタ側ゲート電極27は、ゲート幅方向(すなわち、Y方向)の長さが同一のものに限定されるものでなく、互いに異なるゲート幅を有するものであってもよい。また、素子領域R0は、必ずしも素子の主領域R1(
図15(a)、
図15(b))の全領域において周期的に繰り返し形成されるものでなくてもよい。さらに、第一実施形態は、半導体装置の設計や用途によって適宜他の不純物層や他の素子を備えるものであってもよい。
【0108】
また、上述した第一実施形態の構成と、第一変形例の構成と、第二変形例の構成と、第三変形例の構成とを、適宜組み合わせた構成の半導体装置であってもよい。
【0109】
さらに、以上説明した第一実施形態の半導体装置1、及び第一変形例の半導体装置2、第二変形例の半導体装置3は、いずれも上記の動作により駆動するものに限らない。以下、第一実施形態の半導体装置1~3(以下、「半導体装置1等」と記す)の動作の変形例について説明する。
図12(a)、
図12(b)は、それぞれ半導体装置1等のターンオン時、ターンオフ時に係るエミッタ電極18、コレクタ電極28間の電圧Vceと、コレクタ電極28を流れるコレクタ電流Icを示す図である。
図12(a)は半導体装置1等のターンオン時の電圧Vceとコレクタ電流Icとを示し、
図12(b)は半導体装置1等のターンオフ時の電圧Vceとコレクタ電流Icとを示している。
【0110】
図12(c)は、
図12(a)に示すターンオン時にエミッタ側ゲート電極17、コレクタ側ゲート電極27に印加される電圧を説明するための図である。
図12(d)は、
図12(b)に示すターンオフ時にエミッタ側ゲート電極17、コレクタ側ゲート電極27に印加されるゲート電圧を説明するための図である。なお、
図12(c)、
図12(d)は、上記した半導体装置1等の動作として説明したもののタイミングチャートである。
【0111】
図12(a)、
図12(b)のいずれにあっても、横軸は時間、縦軸は電圧または電流を示している。
図12(a)、
図12(b)中の実線は電圧Vce、破線はコレクタ電流Icを示す。また、
図12(c)、(d)のいずれにあっても、横軸は時間、縦軸は電圧を示している。
図12(c)、(d)中の実線はエミッタ側ゲート電極17に印加されるゲート電圧Vgg1、破線はコレクタ側ゲート電極27に印加されるゲート電圧Vgg2を示している。
【0112】
図12(a)に示すように、ターンオン時において、半導体装置1等は、オフ状態からオン状態に切り替わる。このとき、
図12(c)に示すように、オフ状態にあってはゲート電圧Vgg2がコレクタ側ゲート電極27に印加されていて、エミッタ側ゲート電極17、コレクタ側ゲート電極27間には一定の電圧Vceが印加されている。ゲート電圧Vgg2は、オン状態へのスイッチングのタイミングTswで0Vとなり、代わってゲート電圧Vgg1がエミッタ側ゲート電極17に印加される。このとき、エミッタ側ゲート電極17がオンすることよってドリフト層10が低抵抗化し、電圧Vceは立下りを開始して0V近傍の一定の最小値をとるようになる。コレクタ電流Icは、半導体装置1等のオン状態にあっては一定の最大値をとる。
【0113】
また、
図12(b)に示すように、ターンオフ時において、半導体装置1等は、オン状態からオフ状態へ切り替わる。このとき、
図12(d)に示すように、オン状態にあってはゲート電圧Vgg1がエミッタ側ゲート電極17に印加されていて、電圧Vceは一定の最小値をとる。ゲート電圧Vgg1は、オフ状態へのスイッチングのタイミングTswで0Vとなり、代わってゲート電圧Vgg2がコレクタ側ゲート電極27に印加される。このとき、コレクタ側ゲート電極27がオンすることよってドリフト層10が高抵抗化し、電圧Vceは立上りを開始して一定の最大値をとるようになる。
【0114】
次に、
図12(c)、
図12(d)と異なるエミッタ側ゲート電極17、コレクタ側ゲート電極27へのゲート電圧を印加する動作を説明する。
図13(a)、
図13(b)、
図13(c)は、いずれもターンオン時にエミッタ側ゲート電極17に印加されるゲート電圧Vgg1、コレクタ側ゲート電極27に印加されるゲート電圧Vgg2を説明するための図である。
図13(a)から
図13(c)のいずれにあっても、ゲート電圧Vgg1は、
図12(c)に示すゲート電圧Vgg1と同様のタイミングでエミッタ側ゲート電極17に印加されるものである。
図13(a)は、半導体装置1等のオフ時にコレクタ側ゲート電極27のゲート電圧Vgg2が0V(0バイアス)である動作の例を示す図である。この場合、半導体装置1等は、コレクタ側ゲート電極27が無いシングル型のIGBTと同様の動作を行うことになる。
【0115】
ただし、エミッタ側ゲート電極17と共にコレクタ側ゲート電極27を設けた半導体装置1等に対して
図13(a)に示すようにゲート電圧を印加した場合、コレクタ側ゲート電極27を設けたことにより正孔の注入に寄与するコレクタp
-層23の面積が少なくなる。このため、
図13(a)に示すゲート電圧Vgg1、ゲート電圧Vgg2を半導体装置1等に印加すると、シングル型のIGBTよりも導通時損失が大きくなる恐れがある。
【0116】
図13(b)は、半導体装置1等のオフ時にコレクタ側ゲート電極27を0バイアスにする一方、半導体装置1等のオン時にコレクタ側ゲート電極27に負のゲート電圧Vgg2を印加する動作の例を示す図である。このような動作によれば、コレクタ側ゲート電極27下のコレクタp
-層23aがドリフト層10への正孔の注入に寄与するようになり、半導体装置1等の導通時損失を小さくすることができる。
【0117】
図13(c)は、半導体装置1等のオフ時にコレクタ側ゲート電極27を0バイアスにする一方、半導体装置1等のオン時にコレクタ側ゲート電極27に負のゲート電圧Vgg2を
図13(b)に示す例よりも早期に印加する動作の例を示す図である。このような動作によれば、ターンオフの以前にコレクタp
-層23aからドリフト層10へ注入される正孔の量を増やして半導体装置1等の導通時損失をいっそう小さくすることができる。
【0118】
図14(a)、
図14(b)、
図14(c)、
図14(d)は、いずれもターンオフ時にエミッタ側ゲート電極17に印加されるゲート電圧Vgg1、コレクタ側ゲート電極27に印加されるゲート電圧Vgg2を説明するための図である。
図14(a)は、半導体装置1等のターンオフ時、ゲート電圧Vgg1が立ち下がるタイミングよりも前に正のゲート電圧Vgg2をコレクタ側ゲート電極27に印加する動作の例を示す図である。なお、
図14(a)に示す例において、ゲート電圧Vgg1は、
図12(d)に示すゲート電圧Vgg1と同様のタイミングでエミッタ側ゲート電極17に印加される。このような動作によれば、半導体装置1等がオフする以前にコレクタp層23からドリフト層10への正孔の注入を抑止し、ゲート電圧Vgg1のオフからコレクタ電流Icが最小値をとるまでの時間を短くする、つまりスイッチング損失を小さくすることができる。
【0119】
図14(b)は、半導体装置1等のターンオフ時、エミッタ側ゲート電極17に印加されるゲート電圧Vgg1が正から負に切り替わる動作の例を示す図である。なお、
図14(b)に示す例において、コレクタ側ゲート電極27に印加されるゲート電圧Vgg2は、
図12(d)に示すゲート電圧Vgg2と同様のタイミングでコレクタ側ゲート電極27に印加される。このような動作によれば、コレクタ側ゲート電極27のエミッタ側対向領域Jaに形成されていた反転層Laが早期に消失し、ターンオフ時のドリフト層10への電子の注入を早急に抑えることができる。このため、
図14(b)に示す動作の例は、半導体装置1等のスイッチング損失を小さくすることができる。
【0120】
図14(c)は、半導体装置1等のターンオフ時、エミッタ側ゲート電極17に印加されるゲート電圧Vgg1が0V、または負の電圧に立下がり(
図14(c)に示す例では負の電圧になる)、正のゲート電圧Vgg1が印加されている間に正のゲート電圧Vgg2をコレクタ側ゲート電極27に印加する動作の例を示す図である。すなわち、正のゲート電圧Vgg1は、半導体装置1がターンオンするタイミングでエミッタ側ゲート電極17に印加される。正のゲート電圧Vgg2は、ゲート電圧Vgg1の印加開始後に立ち上がり、ゲート電圧Vgg1が立下がる(ターンオフする)以前のタイミングで0Vに立下る。このような動作によれば、半導体装置1等がターンオフする以前にドリフト層10への正孔の注入を抑止することができる。
【0121】
さらに、
図14(c)に示す動作の例において、半導体装置1等のターンオフの後に負のゲート電圧Vgg1をエミッタ側ゲート電極17に印加するようにすれば、ドリフト層10中に蓄積された正孔をエミッタ電極18に引き抜いて、ドリフト層10中の正孔の量を短時間のうちに減らすことができる。このような
図14(c)に示す動作によれば、高いスイッチング損失低減の効果を得ることができる。なお、
図14(c)に示す動作の例では、エミッタn層12とドリフト層との間が導通し、かつコレクタn層22とドリフト層との間が非導通である状態と、エミッタn層12とドリフト層との間と、コレクタn層22とドリフト層との間の両方が導通する状態と、エミッタn層12とドリフト層との間と、コレクタn層22とドリフト層との間の両方が非導通の状態とを有している。
【0122】
図14(d)は、半導体装置1等のターンオフ時、ゲート電圧Vgg1が0V、または負の電圧に立下がった後に正のゲート電圧Vgg2がコレクタ側ゲート電極27に印加される動作の例を示す図である。このような動作によれば、半導体装置1等のターンオン、ターンオフのループの中で発生する還流電流の一部を、オフ状態中にエミッタ電極18からコレクタ電極28へ流し、還流動作をサポートすることができる。
【0123】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図15(a)及び
図15(b)は、第二実施形態の半導体装置6を説明するものである。
図15(a)は半導体装置6が形成されている半導体チップ60を上方から見たときの上面構成を示す概略図であり、
図15(b)は半導体装置6が形成されている半導体チップ60を下方から見たときの下面構成を示す概略図である。
【0124】
図15(a)に示すように、第二実施形態に係る半導体装置6では、エミッタ電極18が形成される主領域R1と、主領域R1の周辺を囲む周辺領域Reと、が半導体チップ60に形成されている。なお、周辺領域Reには、エミッタ電極18が形成されている一方の面側に、横方向の電界を緩和するためのFLR(Field Limiting Ring)構造などが形成される。
図16は、
図15(a)に示す半導体チップ60の線XV―XVの断面部分のうち、主領域R1と周辺領域Reとの境界部分の領域Rにおける側断面構成を示した断面図である。
【0125】
主領域R1は、上述した素子領域R0が繰り返しパターンとして形成されている領域であり、例えば、上述した第一実施形態に示したエミッタ側ゲート電極17やエミッタ電極18、コレクタ側ゲート電極27、コレクタ電極28が所定間隔で繰り返し配置されている。なお、主領域R1には、上述した第一実施形態に係る半導体装置1(
図1)や、第一変形例に係る半導体装置2(
図8)、第二変形例に係る半導体装置3(
図10)又は第三変形例に係る半導体装置4のうちいずれかの素子領域R0が設けられる。
【0126】
なお、
図16は、例えば、第一実施形態に係る半導体装置1の素子領域R0(
図1)とはコレクタ側ゲート電極27の形成位置が異なるが、当該第一実施形態に係る半導体装置1の素子領域R0を設けた例を示しており、ここでは説明の重複を避けるため以下その説明は省略する。
【0127】
図15(a)に示すように、半導体装置6の周辺領域Reには、例えば、エミッタ電極18を囲むようにして、エミッタ側ゲート配線18aが設けられている。エミッタ側ゲート配線18aは、エミッタ側ゲートパッド18bによって内部の各エミッタ側ゲート電極17と電気的に接続され、当該ゲート電圧をエミッタ側ゲート電極17に印加する。周辺領域Reは、主領域R1において、基板5の第一面faに設けられているエミッタ電極18や、基板5内に形成されるエミッタ側ゲート電極17等が上面側に形成されていない領域である。
【0128】
半導体チップ60の下面には、
図15(b)に示すように、主領域R1にコレクタ電極28が設けられているとともに、当該主領域R1のコレクタ電極28が周辺領域Reまで延設されている。すなわち、半導体チップ60の下面側に設けたコレクタ電極28の形成領域は、半導体チップ60の上面側に設けたエミッタ電極18の形成領域よりも大きく形成されている。
図15(b)に示すコレクタ電極28中に、
図15(a)に示す主領域R1を二点鎖線で示す。
【0129】
半導体チップ60の下面の周辺領域Reには、例えば、コレクタ電極28を囲むように、コレクタ側ゲート配線28aが設けられている。コレクタ側ゲート配線28aは、コレクタ側ゲートパッド28bによって内部の各コレクタ側ゲート電極27と電気的に接続され、ゲート電圧をコレクタ側ゲート電極27に印加する。なお、コレクタ電極28が設けられた他方の面側のコレクタ側ゲート配線28aの外側に、コレクタ電極28と同電位となる電極をさらに設けてもよい。
【0130】
ここで、
図15(a)及び
図15(b)に示す直線e1は、半導体チップ60の下面に設けた、下面視で略正方形状のコレクタ電極28において、対向する一辺及び他辺の位置を示すものである。一方、
図15(a)に示す直線e2は、半導体チップ60の上面に設けた、上面視で略正方形状のエミッタ電極18において、対向する一辺及び他辺の位置、すなわち、主領域R1の一辺及び他辺の位置を示すものである。
【0131】
コレクタ電極28の一辺及び他辺に沿う直線e1は、いずれもエミッタ電極18の一辺及び他辺に沿う直線e2よりも外側に位置しており、主領域R1に形成されているコレクタ電極28が周辺領域Reにまで延設され、コレクタ電極28がエミッタ電極18よりも大きく形成されている。
【0132】
第二実施形態では、例えば、コレクタ電極28の一辺に沿う直線e1と、エミッタ電極18の一辺に沿う直線e2との差分Y1だけ、コレクタ電極28が大きく形成されている。ここでは、コレクタ電極28の四辺を構成する各辺が、エミッタ電極18の四辺を構成する各辺よりも差分Y1だけ離れており、全体的にコレクタ電極28がエミッタ電極18よりも大きくなるように形成されている。
【0133】
なお、第二実施形態では、全体的にコレクタ電極28がエミッタ電極18よりも大きくなるように形成しているが、本発明はこれに限らず、コレクタ電極28の四辺のうち、少なくともいずれか1つの辺が、エミッタ電極18の辺より差分Y1だけ離して、コレクタ電極28をエミッタ電極18よりも大きくするようにしてもよい。
【0134】
次に、第二実施形態に係る半導体装置6の周辺領域Reの断面構成について説明する。周辺領域Reには、
図16に示すように、主領域R1に設けられた基板5が設けられており、基板5のドリフト層10が延設されている。また、周辺領域Reの基板5の第一面faには、主領域R1に形成されたエミッタp
-層11が延設されており、ドリフト層10の上にエミッタp
-層11が設けられている。
【0135】
周辺領域Reには、主領域R1と異なり、基板5の第一面faにエミッタ側ゲート電極17が設けられておらず、ドリフト層10の極性と異なるp型不純物層131が設けられている。エミッタp-層11及びp型不純物層131が形成された基板5の第一面faには、絶縁膜132が形成されている。p型不純物層131に形成された絶縁膜132の所定位置には、エミッタ側ゲート配線18aが配置されている。
【0136】
一方、周辺領域Reの基板5の第二面fbは、主領域R1における基板5の第二面fbと同様の構成を有しており、バッファ層29、コレクタp層23、コレクタp-層23a、コレクタn層22及びコレクタ側ゲート電極27等が設けられている。第二実施形態では、周辺領域Reに複数のコレクタ側ゲート電極27が設けられているが、コレクタ側ゲート電極27やその周囲の構成はいずれも同一構成を有する。
【0137】
この場合、周辺領域Reにおける基板5の第二面fbは、上述した第一実施形態に係る半導体装置1の基板の第二面fbと同様の構成を有している。具体的に、周辺領域Reには、主領域R1に設けられたバッファ層29及びコレクタp層23が延設されており、コレクタp層23にはコレクタn層22及びコレクタp-層23aが形成されている。
【0138】
基板の第二面fbには、バッファ層29の一部が露出しており、バッファ層29の両側にコレクタp-層23aが形成されている。また、基板の第二面fbには、コレクタp-層23aとコレクタp層23との境界にコレクタn層22が形成されており、これら基板の第二面fbに露出したバッファ層29及びコレクタp-層23aの下方にゲート絶縁膜25を介してコレクタ側ゲート電極27が設けられている。コレクタ側ゲート電極27の周囲には層間絶縁層26が設けられている。
【0139】
基板の第二面fbには、当該第二面fbに露出したコレクタn層22の下に、層間絶縁層26とコレクタ電極28とが配置されている。周辺領域Reのコレクタ電極28は、主領域R1のコレクタ電極28と同様に、基板の第二面fbと層間絶縁層26とを覆うように第二面fbに設けられている。
【0140】
以上の構成において、第二実施形態に係る半導体装置6では、素子領域R0を有する主領域R1と、主領域R1と隣接した周辺領域Reと、が設けられている。周辺領域Reには、主領域R1に形成されているエミッタ側ゲート電極17が形成されておらず、主領域R1に設けられたバッファ層29、コレクタp層23、コレクタp-層23a、コレクタn層22、コレクタ側ゲート電極27及びコレクタ電極28が形成されている。
【0141】
これにより、第二実施形態に係る半導体装置6では、オン動作時、主領域R1だけでなく、周辺領域Reにおいても、正電圧によってコレクタp層23とバッファ層29との間に順方向のバイアスがかかり、正孔をドリフト層10内に注入させることができる。この際、半導体装置6では、主領域R1だけでなく周辺領域Reからも正孔をドリフト層10内に注入させることができるので、主領域R1からのみ正孔をドリフト層10内に注入させる構成よりも、一段と多くの正孔をドリフト層10内に注入させることができる。
【0142】
なお、コレクタ電極28の辺とエミッタ電極18の辺との差分Y1は、基板5の厚さ程度以上であることが好ましい。その理由としては、コレクタ電極27によって形成される伝導度変調領域は、エミッタ電極18の端部から基板5の厚さ分程度基板面の方向に広がるため、電導度変調領域が広がる範囲の第二面fbにコレクタ電極27を設けることが導通時損失の増大を防ぐことために望ましいからである。
【0143】
また、第二実施形態によれば、半導体装置6のターンオフ時において、周辺領域Reから主領域R1のドリフト層への正孔の注入を効率的に止め、スイッチング損失を小さくすることができる。
【0144】
なお、上述した実施形態においては、p型を第一導電型とし、n型を第二導電型としているが、本発明はこれに限らず、p型を第二導電型とし、n型を第一導電型としてもよい。
【0145】
なお、上述した実施形態においては、不純物層として、コレクタp層23よりも不純物濃度の低いコレクタp-層23aを別途設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、コレクタp層23とコレクタp-層23aとで不純物濃度を変えることなく、単に、コレクタp層23の一部をコレクタp-層23a(不純物層)としてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1、2、3、4、6 半導体装置(半導体装置)
5 基板
10 ドリフト層(ドリフト層)
11 エミッタp-層(エミッタ層)
12 エミッタn層(第一高濃度不純物層)
13 エミッタp層
14、14a、14b トレンチ孔
15 ゲート絶縁膜(エミッタ側ゲート絶縁膜)
17 エミッタ側ゲート電極
18 エミッタ電極(エミッタ電極)
22 コレクタn層(第二高濃度不純物層)
23 コレクタp層(コレクタ層)
23a コレクタp-層(不純物層)
25 ゲート絶縁膜(コレクタ側ゲート絶縁膜)
27 コレクタ側ゲート電極
28 コレクタ電極(コレクタ電極)
29 バッファ層
Ja エミッタ側対向領域(第一対向領域)
Jb コレクタ側対向領域(第二対向領域)
R0 素子領域
R1 主領域