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特開2022-89906ポリカーボネート樹脂組成物及び樹脂成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089906
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20220609BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20220609BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20220609BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20220609BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20220609BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/49
C08K5/13
C08K5/101
C08J5/00 CFD
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064741
(22)【出願日】2022-04-08
(62)【分割の表示】P 2021522558の分割
【原出願日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020103992
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都築 隼一
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 敏夫
(57)【要約】
【課題】樹脂成形体の長導光路での色調変化が少なく、かつ湿熱環境下でのLED照射時の劣化が少ないポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなり、光の入射する入射部と、入射した光が出射する出射部と、前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部とを備え、かつ、前記導光部が、入射した光が全反射する曲率の光路を有する光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)が0.055以下であり、かつ、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)が0.40以下である、樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物からなり、光の入射する入射部と、入射した光が出射する出射部と、前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部とを備え、かつ、前記導光部が、入射した光が全反射する曲率の光路を有する光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、
前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)が0.055以下であり、かつ、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)が0.40以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
酸化防止剤を更に含有し、該酸化防止剤の含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.005質量部以上0.5質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートが、前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記5mm厚プレート中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤の少なくとも1つを含む、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上30,000以下である、請求項1~4のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
脂肪酸エステルを更に含有し、該脂肪酸エステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下である、請求項1~5のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートの全光線透過率が80%以上である、請求項1~6のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートのYIが1.2以下である、請求項1~7のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートの波長340~400nmにおける平均分光光線透過率が85.5%以上である、請求項1~8のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
脂環式エポキシ化合物を更に含有し、該脂環式エポキシ化合物の含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下である、請求項1~9のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
【請求項12】
光学用部品である、請求項11に記載の樹脂成形体。
【請求項13】
前記樹脂組成物は酸化防止剤を更に含有し、
前記樹脂成形体は前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、請求項11又は12に記載の樹脂成形体。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1つに記載の樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形する工程を含む、請求項11~13のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項15】
芳香族ポリカーボネート樹脂及び酸化防止剤を含む樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形することにより樹脂成形体を得る工程を含み、
前記樹脂成形体は前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、樹脂成形体の製造方法。
【請求項16】
前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が0.0002ppm以下である、請求項15に記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、機械的性質、熱的性質、及び電気的性質等に優れ、その特性を活かして、導光板等の導光部材や、レンズ、光ファイバー等の各種光学成形品に使用されている。近年、ポリカーボネート樹脂組成物を車両等のデイタイムランニングライト(Daytime Running Lights)あるいはデイタイムランニングランプ(Daytime Running Lamps)(以下、「DRL」ともいう)の導光部を構成する導光部品に用いられている。DRLは、車両の被視認性向上のため、高出力LED光を部品全体に導入し、特定方向に取り出す部品として用いられる。車両用のDRLに用いられるポリカーボネート樹脂組成物には、成形後の初期の光学特性(色調)が良好であるとともに、長時間LEDを照射しても色調変化が小さいことが要求される。
【0003】
特許文献1には、樹脂組成物の特定の分光透過率比を用いることで、全光線透過率、熱変形温度、落錘衝撃強度を向上させる技術の開示がある。特許文献2には、特定成形条件を用いた導光部品用途の生産性改良の技術開示がある。特許文献3には、樹脂組成物のリン系酸化防止剤とポリブチレングリコールと脂環式エポキシ化合物を用いた、耐熱黄変抑制及び耐熱性に関する技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3516908号公報
【特許文献2】特許第6575979号公報
【特許文献3】特開2018-141093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献に開示された技術では、車両用灯具の長尺化に伴う長導光路における導光の色調変化とLED照射時の耐久性(樹脂の劣化が少ない)に関する課題が認識されていない。一方、車両用灯具としては長寿命が求められており、車両用灯具の内部部品として有用な、導光性能に優れた樹脂成形体の開発が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、樹脂成形体の長導光路での色調変化が少なく、かつ湿熱環境下でのLED照射時の劣化が少ないポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に関する。
<1> 芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物からなり、光の入射する入射部と、入射した光が出射する出射部と、前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部とを備え、かつ、前記導光部が、入射した光が全反射する曲率の光路を有する光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、
前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)が0.055以下であり、かつ、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)が0.40以下である、樹脂組成物。
<2> 酸化防止剤を更に含有し、該酸化防止剤の含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.005質量部以上0.5質量部以下である、上記<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートが、前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記5mm厚プレート中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、上記<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤の少なくとも1つを含む、上記<2>又は<3>に記載の樹脂組成物。
<5> 前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上30,000以下である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> 脂肪酸エステルを更に含有し、該脂肪酸エステルの含有量が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートの全光線透過率が80%以上である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートのYIが1.2以下である、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> 前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートの波長340~400nmにおける平均分光光線透過率が85.5%以上である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 脂環式エポキシ化合物を更に含有し、該脂環式エポキシ化合物の含有量が、上記芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下である、上記<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> 上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
<12> 光学用部品である、上記<11>に記載の樹脂成形体。
<13> 前記樹脂組成物は酸化防止剤を更に含有し、
前記樹脂成形体は前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、上記<11>又は<12>に記載の樹脂成形体。
<14> 上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形する工程を含む、上記<11>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法。
<15> 芳香族ポリカーボネート樹脂及び酸化防止剤を含む樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形することにより樹脂成形体を得る工程を含み、
前記樹脂成形体は前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である、樹脂成形体の製造方法。
<16>
前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が0.0002ppm以下である、上記<15>に記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、長導光路での色調変化が少なく、LED照射時の耐久性に優れる。当該成形体は、車両用導光部品や各種導光板として好適であり、特に長導光路における導光の色調変化が抑制されたDRL部品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
加えて、以下において記載される本発明に係る態様の個々の実施形態のうち、互いに相反しないもの同士を2つ以上組み合わせることが可能であり、2つ以上の実施形態を組み合わせた実施形態もまた、本発明に係る態様の実施形態である。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物である。そして本発明は、前記樹脂組成物からなり、光の入射する入射部と、入射した光が出射する出射部と、前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部とを備え、かつ、前記導光部が、入射した光が全反射する曲率の光路を有する光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)が0.055以下であり、かつ、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)が0.40以下である樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明の樹脂組成物からなる成形体が、光学性能に優れ、かつ湿熱環境下でのLED照射時の劣化が少ない理由は定かではないが、次のように考えられる。
前記樹脂組成物からなる光学特性測定用成形体を用いて測色した際に、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)が0.055以下であり、かつ、前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)が0.40以下であることで、導光部における短波長領域の光の吸収が少なく、樹脂の劣化等を抑制できると考えられる。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物である。芳香族ポリカーボネート樹脂としては特に制限なく、公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0013】
例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法(界面重縮合法)又は溶融法(エステル交換法)により反応させて製造したもの、すなわち、末端停止剤の存在下に、二価フェノールとホスゲンとを反応させる界面重縮合法、又は末端停止剤の存在下に、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とをエステル交換法等により反応させて製造したものを芳香族ポリカーボネート樹脂として用いることができる。
【0014】
二価フェノールとしては様々なものを挙げることができるが、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物;4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。この他、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることもできる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンからなる群から選ばれる1種以上のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物が好ましく、特にビスフェノールAが好適である。
【0015】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等である。
【0016】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は分岐構造を有していてもよい。分岐構造を導入するために用いられる分岐剤としては、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸及び1,3-ビス(o-クレゾール)等がある。
【0017】
末端停止剤としては、一価のカルボン酸とその誘導体や、一価のフェノールを用いることができる。例えば、p-tert-ブチル-フェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-パーフルオロノニルフェノール、p-(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p-(パーフルオロキシルフェニル)フェノール、p-tert-パーフルオロブチルフェノール、1-(p-ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p-〔2-(1H,1H-パーフルオロトリドデシルオキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5-ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p-ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p-(1H,1H-パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H-パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール等を挙げることができる。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、主鎖が下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【化1】

(式中、RA1及びRA2は炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルコキシ基であり、RA1とRA2とは同一でも異なっていてもよい。Xは単結合、炭素数1以上8以下のアルキレン基、炭素数2以上8以下のアルキリデン基、炭素数5以上15以下のシクロアルキレン基、炭素数5以上15以下のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示し、a及びbはそれぞれ独立に0以上4以下の整数を示す。aが2以上の場合にはRA1は同一でも異なっていてもよく、bが2以上の場合にはRA2は同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
A1及びRA2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下、同様である。)、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。RA1及びRA2で示されるアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。
A1及びRA2は、いずれも、好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基である。
【0020】
Xで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1以上5以下のアルキレン基が好ましい。Xで示されるアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。Xで示されるシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基やシクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、炭素数5以上10以下のシクロアルキレン基が好ましい。Xで示されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、2-アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5以上10以下のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5以上8以下のシクロアルキリデン基がより好ましい。
a及びbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を示し、好ましくは0以上2以下、より好ましくは0又は1である。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、得られる成形体の透明性、機械的特性、熱的特性等の観点から、ビスフェノールA構造を有するポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。ビスフェノールA構造を有するポリカーボネート樹脂としては、具体的には前記一般式(I)において、Xがイソプロピリデン基のものが挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂中のビスフェノールA構造を有するポリカーボネート樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下、更に好ましくは85質量%以上100質量%以下である。
【0022】
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、様々な形状に成形加工するための流動性の観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは11,000以上、更に好ましくは12,000以上であり、そして、好ましくは30,000以下、より好ましくは25,000以下、更に好ましくは22,000以下である。
本明細書において粘度平均分子量(Mv)とは、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
【0023】
樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂の含有量は、本発明の効果を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上である。また、上限は、好ましくは99.995質量%以下である。
【0024】
樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂以外に任意の添加物を含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤や脂環式エポキシ化合物、脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0025】
(酸化防止剤)
樹脂組成物は、樹脂の酸化劣化による着色等を防止する観点から、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0026】
リン系酸化防止剤としては、高温で滞留しても変色等の発生を抑制し得る樹脂組成物を得る観点から、ホスファイト系酸化防止剤又はホスフィン系酸化防止剤が好ましい。
【0027】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製の商品名「Irgafos 168」又は(株)ADEKA製の商品名「アデカスタブ2112」等)、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(BASF社製の商品名「Irgafos 126」、(株)ADEKA製の商品名「アデカスタブPEP-24G」等)、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(BASF社製の商品名「Irgafos 38」等)、ビス-(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト((株)ADEKA製の商品名「アデカスタブPEP-36」等)、ジステアリル-ペンタエリスリトール-ジホスファイト((株)ADEKA製の商品名「アデカスタブPEP-8」、城北化学工業(株)製の商品名「JPP-2000」等)、[ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル(大崎工業(株)製の商品名「GSY-P101」等)、2-tert-ブチル-6-メチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d][1,3,2]ベンゾジオキサホスフェピン-6-イル)オキシプロピル]フェノール(住友化学(株)製の商品名「Sumilizer GP」等)、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン(BASF社製の商品名「Irgafos 12」等)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Dover Chemical Corporation製の商品名「Doverphos S-9228PC」)等が挙げられる。
【0028】
これらのホスファイト系酸化防止剤の中でも、着色等を防止する観点から、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(「アデカスタブPEP-36」)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(「Doverphos S-9228PC」)、2-tert-ブチル-6-メチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d][1,3,2]ベンゾジオキサホスフェピン-6-イル)オキシプロピル]フェノール(住友化学(株)製の商品名「Sumilizer GP」等)が好ましい。中でもビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(「アデカスタブPEP-36」など)が特に好ましい。
【0029】
ホスフィン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン(城北化学工業(株)社製の商品名「JC263」)が挙げられる。
【0030】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のヒンダードフェノール類が挙げられる。
【0031】
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、BASF社製の商品名「Irganox 1010」、「Irganox 1076」、「Irganox 1330」、「Irganox 3114」、「Irganox 3125」、武田薬品工業(株)製の商品名「BHT」、サイアナミド社製の商品名「Cyanox 1790」及び住友化学(株)製の商品名「Sumilizer GA-80」等を挙げることができる。
【0032】
樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、着色等を防止する観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.08質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下である。
【0033】
(脂環式エポキシ化合物)
樹脂組成物は、得られる成形体の長期耐湿熱性及び長期耐熱性を向上させ、湿熱環境下でのLED照射時の劣化を抑制する観点から、脂環式エポキシ化合物を更に含有してもよい。
【0034】
脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基、すなわち脂肪族環内のエチレン結合に酸素1原子が付加したエポキシ基を有する環状脂肪族化合物をいい、具体的には下記式(B-1)~(B-10)で表されるものが好適に用いられる。
【0035】
【化2】

(式中、RはH又はCHである。)
【化3】

(式中、RはH又はCHである。)
【化4】

(式中、a+b=1又は2である。)
【化5】

(式中、a+b+c+d=1以上3以下である。)
【化6】

(式中、a+b+c=n(整数)であり、Rは炭化水素基である。)
【化7】

(式中、nは整数である。)
【化8】

(式中、Rは炭化水素基である。)
【化9】

(式中、nは整数,Rは炭化水素基である。)
【0036】
上記脂環式エポキシ化合物の中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂への相溶性に優れ、透明性を損なうことがない点で、式(B-1)、式(B-7)及び式(B-10)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、式(B-1)及び式(B-10)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、式(B-1)で表される化合物が更に好ましい。例えば、式(B-1)で表される化合物は、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製「セロキサイド2021P」)として入手することができる。また、式(B-10)で表される化合物として、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物((株)ダイセル製「EHPE3150」)として入手することができる。また、「セロキサイド2021P」と「EHPE3150」との混合物として、(株)ダイセルから市販されている「EHPE3150CE」も好ましく用いることができる。
【0037】
樹脂組成物が脂環式エポキシ化合物を含有する場合、樹脂組成物中の脂環式エポキシ化合物の含有量は、湿熱環境下でのLED照射時の劣化を抑制する観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
【0038】
(脂肪酸エステル)
樹脂組成物は、得られる成形体の長期耐湿熱性及び湿熱環境下でのLED照射時の劣化を抑制する観点から、さらに脂肪酸エステルを含有してもよい。脂肪酸エステルは、脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合物である。脂肪酸エステルを含有することによって成形体の長期耐湿熱性及び湿熱環境下でのLED照射時の劣化を更に抑制できる理由は定かではないが、親水性ユニットを有する脂肪酸エステルが樹脂組成物中に存在する場合には、芳香族ポリカーボネート樹脂のエステル結合(カーボネート結合)の周囲にある水分子が脂肪酸エステル側に移動しやすくなり、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量低下が起こりにくいためと推定される。
【0039】
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられ、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。脂肪族カルボン酸は、鎖状脂肪族カルボン酸、環状脂肪族カルボン酸のいずれでもよいが、鎖状脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸の炭素数は、好ましくは6以上40以下、より好ましくは8以上32以下、更に好ましくは12以上24以下である。
【0040】
飽和脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;等が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸としては、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リシノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
上記の中でも、脂肪族カルボン酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、及びベヘン酸からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸が更に好ましい。
【0041】
前記アルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましく、飽和脂肪族アルコールがより好ましい。飽和脂肪族アルコールは飽和鎖状脂肪族アルコール、飽和環状脂肪族アルコールのいずれでもよいが、飽和鎖状脂肪族アルコールが好ましい。これらアルコールは一価アルコール及び多価アルコールのいずれでもよい。また、当該アルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。アルコールの炭素数は、好ましくは1以上30以下、より好ましくは2以上24以下である。
【0042】
アルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0043】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、脂肪酸エステルとしてはステアリン酸エステルが好ましく、グリセリンモノステアレートがより好ましい。
【0044】
樹脂組成物が脂肪酸エステルを含有する場合、樹脂組成物中の脂肪酸エステルの含有量は、長期耐湿熱及び湿熱環境下でのLED照射時の劣化を抑制する観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.005質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上であり、そして、樹脂組成物から樹脂成形体を成形した時の色調変化を抑制する観点から、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.15質量部以下、更に好ましくは0.12質量部以下、更に好ましくは0.08質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以下である。
【0045】
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、芳香族ポリカーボネート樹脂及び必要に応じて添加剤を混合し、溶融混練を行うことで製造できる。溶融混練は、通常用いられている方法、例えば、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。溶融混練時の加熱温度(混錬温度)は、通常220~300℃の範囲で適宜選定される。
特に、樹脂組成物を得る方法としては二軸スクリュー押出機を用いて、製造する方法が好ましい。
樹脂組成物の製造方法としては、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂、及び必要に応じて添加される各種添加剤を、シリンダー温度(混錬温度)220℃以上350℃以下、滞留時間(溶融混練時間とも表現する)20秒以上300秒以下の条件下で溶融混練する方法が好ましい。
また、溶融混練時には継続的に窒素等の不活性ガスを供給し内部の空気を置換することが、優れた色調を有する樹脂組成物を得る観点から好ましい。
溶融混練条件として、シリンダー温度(混錬温度)は、好ましくは350℃以下、より好ましくは320℃以下、更に好ましくは300℃以下、更に好ましくは270℃以下であり、そして、好ましくは220℃以上、より好ましくは230℃以上、更に好ましくは250℃以上である。シリンダー温度を上記範囲とすることで、樹脂組成物及び樹脂成形体中の芳香族ポリカーボネート樹脂の劣化を抑制し、さらには添加剤の変性を抑制し光学特性を良好にすることができる。
溶融混練条件として、スクリュー回転数は好ましくは500rpm以下、より好ましくは400rpm以下、更に好ましくは200rpm以下であり、好ましくは30rpm以上、より好ましくは50rpm以上、更に好ましくは100rpm以上である。スクリュー回転数を上記範囲とすることで、樹脂組成物が均一となり均一な品質の樹脂組成物を得ることができる。
溶融混練時間は、樹脂組成物及び樹脂成形体中の添加剤の変性を抑制し光学特性を良好にする観点から、好ましくは300秒以下、より好ましくは200秒以下、更に好ましくは100秒以下、更に好ましくは90秒以下、更に好ましくは80秒以下である。また、溶融混練時間は短すぎると、樹脂組成物が均一な組成とならず、樹脂成形体の品質のバラツキが発生しやすくなる。そのため、溶融混練時間は、樹脂組成物及び樹脂成形体の均一組成を得て品質バラツキを抑える得る観点から、好ましくは20秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは50秒以上である。溶融混練時間は溶融混練装置のサイズや吐出量を適宜変えることで変更することができる。
本発明の樹脂組成物の形状は、例えば、ペレット状、ストランド状等であり、好ましくはペレット状である。
【0046】
(樹脂組成物の物性)
樹脂組成物を射出成形して得られる5mm厚プレートの全光線透過率は、車両用灯具の内部部品の長導光路における色調変化を抑制する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。前記全光線透過率は高いほど好ましいため、上限は特に限定されいなが、例えば100%以下であり、98%以下であってもよく、95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定される。
【0047】
樹脂組成物を射出成形して得られる5mm厚プレートのYIは、車両用灯具の内部部品の長導光路における色調変化を抑制する観点から、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.08以下、更に好ましくは1.06以下、更に好ましくは1.04以下、更に好ましくは1.03以下、更に好ましくは1以下である。前記YIは低いほど好ましいため、下限は特に限定されいなが、例えば0.1以上であり、0.5以上であってもよく、0.8以上であってもよい。
【0048】
樹脂組成物を射出成形して得られる5mm厚プレートの波長340~400nmにおける平均分光光線透過率は、車両用灯具の内部部品の長導光路における色調変化を抑制する観点から、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、更に好ましくは85.5%以上である。前記平均分光光線透過率は高いほど好ましいため、上限は特に限定されいなが、例えば100%以下であり、98%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
【0049】
上記の物性を満たす樹脂組成物を射出成形して得られる5mm厚プレートの製造条件としては、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒である。具体的には、後述の実施例に記載の方法によって5mm厚プレートを得る。
【0050】
本発明の樹脂組成物においては、樹脂組成物からなる光学特性測定用成形体を用いて測色を行う。光学特性測定用成形体は、光の入射する入射部と、入射した光が出射する出射部と、前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部とを備え、かつ、前記導光部が、入射した光が全反射する曲率の光路を有する。
【0051】
入射部は、光学特性測定用成形体の始端面であり、その近傍に所定の波長域を有する光源を配置することにより、光源からの光がこの始端面から導光部内に入射されることになる。導光部は、入射部からの入射光を導光部内に伝播させて出射部から出射させるために、入射光を出射部へ導く光路を有している。出射部は、入射部から入射され光路内を伝播した光を、その伝播方向を制御することにより、導光路外に出射させる機能を有する。光源から入射部に入射された光は、光学特性測定用成形体の表面に賦形した構造の出射部(プリズム)から取り出す。出射部の形状は、縞状模様(プリズム形状)とする。
【0052】
光学特性測定用成形体において、入射部から導光末端の出射部までの導光路長は、少なくとも525mmを要し、入射部から導光末端の出射部までに、少なくとも2か所の出射光部分を設け、少なくとも入射部から125mm及び525mmでCIE 1931表色系でのyの値を測定する。
【0053】
光学特性測定用成形体としては、特開2016-090229号公報の記載を参照することができる。本発明において、光学特性測定用成形体の製造条件としては、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が40秒、滞留時間が415秒である。具体的には、後述の実施例に記載の方法によって光学特性測定用成形体を得る。
【0054】
本発明の樹脂組成物の測色では、光源として白色発光ダイオードを用いる。
【0055】
なお、本発明の樹脂組成物からなる成形体を車両用灯具の内部部品等に適用する場合、その際に使用される光源は特に限定されないが、例えば、ろうそく、たいまつ、ランプ、ライムライト、アセチレンランプ、白熱電球、蛍光灯、アーク灯、無電極放電灯、HIDランプ、低圧放電灯、発光ダイオード、冷陰極型蛍光管、外部電極型蛍光管、エレクトロルミネッセンスライト、レーザー、放射光、有機エレクトロルミネッセンス、夜光塗料等の人工光源や;太陽光、稲妻、オーロラ等の天然光源を用いることができる。これらの中でもエレクトロルミネッセンスライト、有機エレクトロルミネッセンス、発光ダイオード等を好適に使用することができる。光源の数は特に限定されず、少なくとも1つの光源を使用することができる。また、白色光であってもよく、有彩色であってもよい。
【0056】
前記光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)は、0.40以下であり、好ましくは0.395以下、より好ましくは0.39以下である。前記y(Y2)は小さいほど好ましいため、下限は特に限定されいなが、例えば0.10以上であり、0.20以上であってもよく、0.30以上であってもよく、0.35以上であってもよい。
【0057】
前記光学特性測定用成形体を用いて、光源として白色発光ダイオードを用いて測色した際に、前記光学特性測定用成形体の、導光路の前記入射部から125mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y1)と、導光路の前記入射部から525mmの位置におけるCIE 1931表色系でのy(Y2)との差(Y2-Y1)は、車両用灯具の内部部品の長導光路における色調変化を抑制する観点から、0.055以下であり、好ましくは0.050以下、更に好ましくは0.045以下、更に好ましくは0.042以下、更に好ましくは0.040以下である。前記(Y2-Y1)は小さいほど好ましいため、下限は特に限定されいなが、例えば0.010以上であり、0.020以上であってもよく、0.025以上であってもよく、0.030以上であってもよい。
【0058】
[樹脂成形体]
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物からなる。当該成形体は、上記樹脂組成物の溶融混練物又は溶融混練を経て得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により製造することができる。特に、得られたペレットを用いて、射出成形法又は射出圧縮成形法により成形体を製造することが好ましい。樹脂成形体の製造方法(「本発明の第一の態様の製造方法」ともいう。)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形する工程を含む方法が好ましい。また、成形時には継続的に窒素等の不活性ガスを供給し内部の空気を置換することが、優れた色調を有する樹脂成形体を得る観点から好ましい。
【0059】
射出成形条件として、シリンダー温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは270℃以下であり、そして、好ましくは220℃以上、より好ましくは230℃以上である。また、金型温度は、好ましくは70℃以上140℃以下である。
サイクル時間は、成形体の光学特性の観点から、好ましくは300秒以下、より好ましくは200秒以下、更に好ましくは150秒以下である。また、サイクル時間は短すぎると、成形体の内部まで充分に冷却されず成形体の表面が荒れやすくなる。そのため、サイクル時間は、成形体の良好な表面粗さを得る観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上である。後述の打ち切り成形にすることでサイクル時間は上記記載よりも短くすることができる。
滞留時間は、成形体の光学特性の観点から、好ましくは1800秒以下、より好ましくは1500秒以下、更に好ましくは1000秒以下、更に好ましくは500秒以下である。また、成形体の良好な表面粗さを得る観点から、好ましくは60秒以上、より好ましくは100秒以上である。
【0060】
一般に射出成形は、原料樹脂の可塑化・計量工程、射出工程、冷却工程、製品取出し工程からなり、これらの工程を1サイクルとして繰り返す。この1サイクルに要する時間をサイクル時間という。優れた光学特性を得る為には、前記の射出工程及び冷却工程を短縮することが求められる。冷却に必要な時間は製品肉厚に2乗に比例して長くなる為、厚肉成形品では冷却工程の短縮は困難である。そこで射出工程の短縮が重要となってくる。発明者らが鋭意検討を重ねた結果、射出工程の短縮の為にいわゆる打切り成形を行うことが好ましいことを見出した。射出工程は充填工程と保圧工程からなる。打切り成形とは、前記充填工程の時間を短くするために高速充填を行い、保圧工程時のスクリュー移動を無くし、ゲートシールの開始を早くすることで、保圧工程の時間を短縮するものである。具体的には、実際のショット量が少々ばらついた場合にもショット量のばらつきを吸収するための余裕となるべき溶融樹脂量(所謂クッション量)を本来射出すべき溶融樹脂量に加えるような設定は行わない成形方法である。このような打ち切り成形した場合には、特に厚肉複雑形状部品を成形する際に、ヒケや気泡などの不良現象も低減することができる。打切り成形することによって上記の不良現象を低減できる理由は定かではないが、保持時間完了時でも残圧が観測されており成形品が金型面と密着していること、保圧工程内でゲート圧力は降下しているが0MPaまで下がりきっていないために樹脂の逆流が抑制されていること、などがその一因として考えられる。
【0061】
なお、本明細書において、前記樹脂成形体の滞留時間は下式によって算出される。
滞留時間=最大射出容量(cc)/1ショットの容量(cc)×2×成形周期(秒)
=最大計量値(mm)/[計量値(mm)-クッション量(mm)]×2×成形周期(秒)
式中、成形周期はサイクル時間を表す。式中の実数の2は、実際の成形機を用いて算出した値である。
【0062】
上述のとおり、本発明の樹脂組成物は、その製造方法は特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂及び必要に応じて添加剤を混合し、溶融混練を行うことで製造できる。ここで、本発明者らは、酸化防止効果を有する添加剤は、組成物の製造工程や成形工程において特に熱による影響で分解しやすいことを見出した。さらにこの分解生成物(一次分解生成物)が分解して着色源化合物(二次分解生成物)が生成することを見出した。そして、本発明の樹脂組成物及び樹脂組成物からなる樹脂成形体にも、添加剤の分解生成物及び着色源化合物が含まれることを見出した。この分解生成物及び着色源化合物は樹脂組成物及び樹脂組成物からなる樹脂成形体に変色をもたらし、成形体外観さらには導光色調を悪化させる。この分解生成物及び着色源化合物は、高温及び湿熱環境において生成が加速する傾向にあることをも見出した。
【0063】
例えば、ビス-(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト((株)ADEKA製の商品名「アデカスタブPEP-36」)の場合、熱分解や加水分解により、2個の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール類似構造が変性した共役構造を有する化合物を挙げることができ、具体的には下記のキノンメチド(共役数=3)及びスチルベンキノン(共役数=6)が示される。
【化10】

【化11】
【0064】
例えば、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Dover Chemical Corporation製の商品名「Doverphos S-9228PC」)の場合、熱分解や加水分解により、下記構造を有する化合物が示される(共役数=2)。
【化12】
【0065】
例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製の商品名「Irgafos 168」又は(株)ADEKA製の商品名「アデカスタブ2112」)の場合、熱分解や加水分解により、下記構造を有する化合物が示される(共役数=2)。
【化13】
【0066】
例えば、2-tert-ブチル-6-メチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d][1,3,2]ベンゾジオキサホスフェピン-6-イル)オキシプロピル]フェノール(住友化学(株)製の商品名「Sumilizer GP」)の場合、熱分解や加水分解により、下記構造を有する3個の化合物が示される(いずれも共役数=2)。
【化14】
【0067】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、このようなπ共役している化合物は着色源化合物として成形品自体を黄色くさせることに加え、導光の色調変化の原因の一つとなっていると推定される。そして、特にこのような化合物の共役数が多い場合には、低濃度の生成量でも長導光路の試験片(成形片ともいう。)の導光色調に影響を及ぼすことを見出した。このような酸化防止剤由来の着色源化合物の共役数は、10以下が好ましく、6以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
なお、本明細書において、共役数とは、化合物の中で不飽和結合と単結合が交互に連なり、隣接している2重結合の数を指す。すなわち、二重結合―単結合は共役数1、二重結合―単結合―二重結合の構造は共役数2とする。例えば、エチレンは共役数が1、ブタジエンは共役数が2、ヘキサトリエンは共役数が3、1,3-ペンタジエンは共役数2である。
【0068】
本発明の樹脂組成物からなる樹脂成形体又は前記樹脂組成物を、シリンダー温度が260℃、金型温度が80℃、サイクル時間が50秒、滞留時間が230秒の条件で射出成形して得られる5mm厚プレートが酸化防止剤由来の着色源化合物を含有する場合、樹脂成形体又は前記5mm厚プレート中の着色源化合物の含有量は、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下、更に好ましくは0.01ppm以下、更に好ましくは0.001ppm以下、更に好ましくは0.0002ppm以下である。樹脂成形体の導光色調には、着色源化合物の共役数と含有量の組み合わせで影響を及ぼすため、着色源化合物の共役数が10以下であり、かつその含有量が0.01ppm以下であることが好ましく、共役数が6以下であり、かつその含有量が0.1ppm以下であることがより好ましく、共役数が6以下であり、かつその含有量が0.05ppm以下であることが更に好ましく、共役数が6以下であり、かつその含有量が0.01ppm以下であることが更に好ましく、共役数が6以下であり、かつその含有量が0.001ppm以下であることが更に好ましく、共役数が6以下であり、かつその含有量が0.0002ppm以下であることが更に好ましい。前記着色源化合物の含有量は少ないほど好ましいため、下限は特に限定されいなが、例えば0.00001ppm以上であってもよい。ここで、樹脂成形体又は前記5mm厚プレートに含まれる着色源化合物の種類は特に限定されず、異なる種類の化合物を2つ以上種類含むことがある。
樹脂組成物、樹脂成形体、及び前記5mm厚プレート中の着色源化合物の含有量は、GC/MS又はLC/MS、及びUV-visにより測定することができる。
【0069】
本発明の樹脂成形体は、光学性能に優れ、かつ湿熱環境下でのLED照射時の劣化が少ないことから、その特長を活かすため、光学用部品であることが好ましい。光学用部品としては、例えば車両用照明部品を挙げることができ、特にDRL部品が好ましい。中でも入射部から出射部までの導光路長は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、更に好ましくは500mm以上、更に好ましくは700mm以上、更に好ましくは1000mm以上である。樹脂成形体に出射部は複数設けてもよい。
【0070】
[樹脂成形体の製造方法]
本発明の第二の実施形態に係る樹脂成形体の製造方法(「本発明の第二の態様の製造方法」ともいう。)は、芳香族ポリカーボネート樹脂及び酸化防止剤を含む樹脂組成物を、シリンダー温度220℃以上300℃以下、滞留時間60秒以上1800秒以下の条件下で射出成形することにより樹脂成形体を得る工程を含む。そして、得られる前記樹脂成形体は前記酸化防止剤由来の着色源化合物を含有し、前記着色源化合物の共役数が10以下であり、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量が1ppm以下である。
本発明の第二の態様の製造方法によれば、長導光路での色調変化が少なく、LED照射時の耐久性に優れる樹脂成形体を得ることができる。当該成形体は、車両用導光部品や各種導光板として好適であり、特に長導光路における導光の色調変化が抑制されたDRL部品として有用である。
また、本発明の第二の態様の製造方法における樹脂組成物の製造方法及びその好適態様、並びに樹脂組成物に含まれる各成分の種類や配合割合及びそれらの好適態様は、前述した本発明の第一の態様の製造方法における態様と同様である。
本発明の第二の態様の製造方法における前記樹脂成形体を得る工程の射出成形条件及び及びその好適態様は、前述した本発明の第一の態様の製造方法における態様と同様である。
また、本発明の第二の態様の製造方法により得られる前記樹脂成形体中の前記酸化防止剤由来の着色源化合物及びその好適態様、並びに、前記樹脂成形体中の前記着色源化合物の含有量及びその好適態様は、前述した本発明の第一の態様の製造方法における態様と同様である。
【実施例0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
芳香族ポリカーボネート樹脂(a):「タフロン FN1500」(出光興産(株)製、粘度平均分子量(Mv)=14,400)
酸化防止剤(b-1):「アデカスタブ PEP-36」((株)ADEKA製、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト)
酸化防止剤(b-2):「アデカスタブ 2112」((株)ADEKA製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)
酸化防止剤(b-3):「Doverphos S-9228PC」(Dover Chemical Corporation製、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)
酸化防止剤(b-4):「Sumilizer GP」(住友化学(株)製、2-tert-ブチル-6-メチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d][1,3,2]ベンゾジオキサホスフェピン-6-イル)オキシプロピル]フェノール)
脂環式エポキシ化合物(c-1):「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)
脂肪酸エステル(d-1):「S-100A」(理研ビタミン(株)製、グリセリンモノステアレート)
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1~12及び比較例1~6
(樹脂組成物の製造)
二軸押出機(東芝機械(株)製、「TEM-26SS」、L/D=48、ベント付き)を用いて、シリンダー温度を260℃に設定し、表6に示す各成分を一括混合し、押出機のメインスロート部より定量フィーダーを用いて供給して、表2に示す混練条件A又はBで樹脂混練物をストランド状に押出し、ストランドバスにて急冷し、ストランドカッターで切断し、ペレット形状の樹脂組成物を得た。ここで、溶融混練時には窒素を二軸押出機内に継続的に供給しシリンダー内部の空気を窒素に置換した。
【0075】
【表2】
【0076】
(光学特性測定用成形体の作製)
上記で得られたペレット形状の樹脂組成物を、射出成形機((株)ニイガタマシンテクノ製、「MD350S7000」:スクリュー径35mm)を用いて、幅10mm×厚み3mm×長さ1100mmのアルキメデス螺旋型の光学特性測定用成形体を得た。また、樹脂ペレットは吸湿が起きるため、成形直前に120℃、5時間の乾燥を行った。
試験片の製造では、導光部(成形体内部の光が通る部分)表面に相当する金型部分を粒度が1000メッシュの研磨剤により表面を研磨され、鏡面仕上げ加工された金型を使用した。
光学特性測定用成形体の出射光部分(125mm,525mm)は、金型表面加工を行い、微細な縞状模様(プリズム形状)をつけた(表面粗さSa=4μm)。各試験片は表3の成形条件A1又はB1で成形を行い、各試験片は120℃5時間でアニール処理を行った。試験片形状を表4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
(5mm厚プレートの作成)
上記で得られたペレット形状の樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、「ES1000」:スクリュー径26mm)を用いて、50mm×90mm×厚さ5mmの5mm厚プレート試験片を得た。また、樹脂ペレットは吸湿が起きるため、成形直前に120℃、5時間の乾燥を行った。各試験片は表5の成形条件A2又はB2で成形を行った。
【0080】
【表5】
【0081】
[評価]
(光学特性測定用成形体の酸化防止剤由来の着色源化合物の種類及び含有量)
下記「(樹脂成形体の酸化防止剤由来の着色源化合物の種類及び含有量)」に記載の方法にて、測定を行った。この時、試験片は光学特性測定用成形体を用いて行った。
(光学特性測定用成形体の色調変化)
光学特性測定用成形体について、以下の装置を用いて測定を行った。
<LED照射条件>
光学特性測定用成形体中心部の試験片端部とLED間距離を2mmとし、LED光源(日亜化学工業(株)、「NSFW036CT」)を使用し、0.35A×3.5V、23ルーメン(1m)に設定し、光学特性測定用成形体端面から照射を行った。
<導光色調測定>
先の<LED照射条件>にて照射している光学特性測定用成形体の出射光を、分光放射輝度計(コニカミノルタ(株)製、「CS-2000」)を用いて、輝度及び色度を測定した。入光部から125mm及び525mmのところから出射光を取り出し、評価を行った。得られた値は、CIE 1931表色系で表現し、yは0.4よりも大きいと黄色味が増加していると判断した。
【0082】
(5mm厚プレートの全光線透過率)
得られた試験片について、JIS K7361-1:1997に準拠し、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製、型式:「HGM-2DP」)を用いて、全光線透過率を測定した。
【0083】
(5mm厚プレートの平均分光光線透過率)
得られた試験片について、分光光度計((株)日立ハイテク製、「U-4100」)を用いて、波長340~400nmにおける平均分光光線透過率(%)をそれぞれ測定した。
【0084】
(5mm厚プレートのYI)
得られたペレットを射出成形して平板状の試験片を成形し、日本電色工業株式会社製の「SZ-Σ90」を用い、JIS K7373:2006に準拠して、イエローインデックス(YI)値を測定した。この数値が高いほど黄色度が高く、着色していることを示す。
【0085】
(5mm厚プレートについての耐LED評価)
<LED照射条件>
得られた試験片とLED間距離を2mmとし、LED光源としてOpto Supply社製OSW4XAHAEIE を使用し、LED消費電力を10W(1A×10V)、LED照射強度を850ルーメン(1m)に設定し、照射を行った。この時のLED照射を80℃20%試験環境で200時間行った。
<FT-IR測定>
LED照射後の試験片表面を以下の条件でFT-IR測定を行った。
装置:顕微FT-IR装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、型式「Nicolet 8700」(IR照射部)、「CONTINUUM」(顕微部))
測定方法:全反射法(ATR)
測定波数範囲:650~4000cm-1
分解能:4cm-1
測定条件:ゲルマニウムクリスタルを用い、入射角29°で照射
測定範囲:平板状試験片(成形体(1))のLED照射部中心の約100μm×100μmの範囲
積算回数:200回
得られたFT-IR測定チャートにおいて、縦軸をAbsorbance、横軸を波数とし、波数1950cm-1におけるAbsorbanceをベースラインとした際の、波数1776cm-1のピーク強度に対する波数1686cm-1のピーク強度の比(波数1686cm-1のピーク強度/波数1776cm-1のピーク強度)を求め、下記基準で評価した。
A:上記ピーク強度比が0.3以下
B:上記ピーク強度比が0.3超、0.5以下
C:上記ピーク強度比が0.5超、0.8以下
D:上記ピーク強度比が0.8超、1.2以下
E:上記ピーク強度比が1.2超、2.0以下
本評価はアルファベットの若い文字の方が性能に優れると判断した。
【0086】
(樹脂成形体(5mm厚プレート試験片)の酸化防止剤由来の着色源化合物の種類及び含有量)
得られた試験片をギアオーブンに入れ、140℃で1000時間、2000時間、3000時間、5000時間経過させた。この時、試験片は前述の5mm厚プレートを用いた。また、その時各試験片のYI値を、前記「(5mm厚プレートのYI)」の項に記載の方法で測定した。各耐熱試験後の試験片を粉砕してクロロホルムに溶解させたのち、アセトンを加え、沈殿した樹脂分を除去した。樹脂分を除去した後の溶液を濃縮し、濃縮溶液について分取GPCを用いて、肉眼又はUV検出器にて着色が確認された成分について分離を行った。得られた各成分について真空乾燥を行い乾固し、乾燥重量を測定した。これらを再び可溶な溶媒に溶解させ、UV-vis測定を行い、着色源化合物の最大吸収波長と吸光度を測定した。また、得られた各成分を高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)のUV検出器を用いて着色源化合物の分子量を定性した。また、着色成分の分子量と乾固時の重量(測定時の溶液濃度)、測定時の光路長、測定結果の吸光度を用いて、ランベルトベールの法則式からモル吸光係数を算出した。
これらUV-visと高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)から得られた情報から、化合物を定性・定量化し耐熱試験後の試験片中に存在する濃度を算出した。得られた試験片中の着色源化合物濃度及びYI値の点をグラフにプロットした。
前記耐熱試験前の試験片のYI値を、前記「(5mm厚プレートのYI)」の項に記載の方法で測定した。先の耐熱試験後の試験片YI値と着色源化合物濃度のグラフ上に得られた耐熱試験前の試験片のYIの値をプロットし、耐熱試験前の試験片の着色源化合物生成物量を算出した。例えば、b-1の分解後の着色源化合物の共役数6の化合物は、Tetrahedron,62(2006)1536-1547を参考に構造を導いた。
【0087】
【表6-1】
【0088】
【表6-2】
【0089】
【表6-3】
【0090】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、長導光路での色調変化が少なく、LED照射時の耐久性に優れる。当該成形体は、車両用導光部品や各種導光板として好適であり、特に長導光路における導光の色調変化が抑制されたDRL部品として有用である。