(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090625
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20220610BHJP
G01J 5/02 20220101ALI20220610BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20220610BHJP
【FI】
G01J1/02 Y
G01J5/02 J
G01J5/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195693
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020202706
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】海法 克享
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】千田 優大
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA11
2G065BA13
2G065BA32
2G065BC09
2G065BC33
2G065BC35
2G066AC13
2G066BA03
2G066BA04
2G066BA08
2G066BC15
(57)【要約】
【課題】被測定物から放射される赤外光を検出できる焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法を提供すること。
【解決手段】焦電センサは、一端が固定端でかつ他端が自由端であるカンチレバーと、カンチレバーの一主面に形成され、被測定物から放射される赤外光を検出する焦電素子と、カンチレバーを振動させる駆動部とを備え、カンチレバーが振動することによって、焦電素子に入射する赤外光が変調される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が固定端でかつ他端が自由端であるカンチレバーと、
前記カンチレバーの一主面に形成され、被測定物から放射される赤外光を検出する焦電素子と、
前記カンチレバーを振動させる駆動部と
を備え、
前記カンチレバーが振動することによって、前記焦電素子に入射する赤外光が変調される、焦電センサ。
【請求項2】
前記焦電素子の前記カンチレバーとは反対の面に形成され、前記被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する遮断部材
をさらに備える、請求項1に記載の焦電センサ。
【請求項3】
前記遮断部材は断熱材で構成されている、請求項2に記載の焦電センサ。
【請求項4】
前記遮断部材と前記焦電素子との間に形成される断熱材
をさらに備える、請求項2に記載の焦電センサ。
【請求項5】
前記遮断部材は、前記カンチレバーの前記一主面から前記赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状である、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項6】
前記遮断部材と前記焦電センサの土台とを伝熱可能に接続する一また複数の接続部材
をさらに備える、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項7】
前記遮断部材は、
前記カンチレバーの固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向に形成される一又は複数の第1遮断部材を有する、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項8】
前記遮断部材は、
前記カンチレバーの固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向に形成される一又は複数の前記第1遮断部材と伝熱可能に接続されている第2遮断部材を備え、さらに熱を排出することができる接続部材
を備える、請求項7に記載の焦電センサ。
【請求項9】
前記第2遮断部材は、前記第1遮断部材よりも薄い、請求項8に記載の焦電センサ。
【請求項10】
前記カンチレバーは、前記一端に複数の駆動部を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項11】
複数の前記駆動部の各々は個別に制御される、請求項10に記載の焦電センサ。
【請求項12】
前記カンチレバーは、前記一端に、互いが離間している複数の固定端を有し、複数の前記固定端にはそれぞれ前記駆動部が設けられている、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項13】
前記一端は長手方向を有し、
前記固定端は、前記長手方向の中心対称に形成されている、請求項12に記載の焦電センサ。
【請求項14】
前記焦電素子は、ポリフッ化ビニリデンを含んで構成される、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項15】
前記駆動部は、前記カンチレバーを振動させる圧電体
を含む、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項16】
前記駆動部を構成する圧電体は、前記焦電素子を構成する材料を含む、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項17】
前記カンチレバーは、前記カンチレバーが振動していない状態で、前記固定端から前記自由端の方向と、前記赤外光の入射方向とのなす角度が、30度以上60度未満の位置に設置される、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項18】
赤外光透過窓を開口させた外郭体
をさらに備え、
前記カンチレバーと前記焦電素子と前記駆動部とは、前記外郭体の内部に設置され、前記外郭体の内部は、真空雰囲気である、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の焦電センサ。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の焦電センサをアレイ状に複数配置し、
複数の前記焦電センサの各々に含まれる駆動部を制御する制御部と、
複数の前記焦電素子の各々が出力する電気信号を処理するセンサ信号処理部と
を備える、焦電センサシステム。
【請求項20】
カンチレバーの一主面に第1下部電極及び第2下部電極を離間して設ける工程と、
前記カンチレバーの一主面に設けられた前記第1下部電極上及び前記第2下部電極上の各々に圧電材及び焦電材を成膜する工程と、
前記圧電材及び前記焦電材の各々に第1上部電極及び第2上部電極を設ける工程と
を有し、
前記圧電材と前記焦電材とは同じ材料である、焦電センサの製造方法。
【請求項21】
外郭体の内部にカンチレバーを設置する工程と、
前記カンチレバーの位置に基づいて前記外郭体に赤外光透過窓を部分的に開口させる工程と
を有する、請求項20に記載の焦電センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏期の猛暑によって熱中症の発症数が増加している。熱中症は外部環境の高温化、高湿度化により身体の深部体温が上昇するため、様々な症状を引き起こす。深部体温は一般的には直腸の温度を計測することで得られるが、鼓膜の温度も深部体温と密接な関係があり、深部体温変化の指標として有用である。鼓膜の温度を計測するためには、耳の奥にある鼓膜及び鼓膜のごく近傍のみの温度を正確に検出する必要がある。耳介付近は外部環境の影響を大きく受けるため深部体温との相関が低い。
【0003】
鼓膜の温度を計測する手法が知られている。例えば赤外線検出による非接触温度センサに関して、サーモパイル式のセンサを用いた温度センサが知られている(例えば特許文献1参照)。これによれば、鼓膜にセンサを接触させることなく温度を検出することが可能となる。しかし、外耳道は湾曲しているため、耳介入口にセンサを設置した場合には鼓膜の温度を正確に検出できない。
また、鼓膜の温度を計測する手法に関して、センサを外耳道内部に設置する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。この技術では、耳介入口にセンサを設置した場合でも鼓膜の温度を正確に検出できるが、違和感や閉塞感が大きく、日常生活において常時装着することが難しい。
【0004】
センサをアレイ化して耳介入口から耳内の温度分布を取ることで鼓膜の温度を検出する方法も考えられるが、その場合にはセンサ素子の小型化が必要となる。センサ素子の感度は、センサ素子の大きさに比例するものであり、そのため小型化をすると鼓膜の温度を検出するのに十分な精度が得られないおそれがある。
一方、赤外線温度センサに焦電素子を用いたものも広く普及している。焦電素子はその原理上サーモパイルよりも高感度化が可能であるが、微分検出型のセンサであることから静止物体の温度を検出することができない。焦電素子を用いた赤外線温度センサに関して、入射する赤外線を断続的に所定の周波数で変調することによって、連続的に入射する赤外線をモニタリングするためのチョッパ構造を焦電素子の外部に設ける技術が知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-65854号公報
【特許文献2】特開2002-340681号公報
【特許文献3】特開2001-74550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焦電素子を用いた赤外線温度センサに関して、チョッパ構造を焦電素子の外部に設ける場合、焦電素子の小型化が困難であるため、鼓膜の温度の検出に適用するのは難しい。
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、被測定物から放射される赤外光を検出できる焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述の課題に鑑み、本開示の一態様に係る焦電センサは、一端が固定端でかつ他端が自由端であるカンチレバーと、前記カンチレバーの一主面に形成され、被測定物から放射される赤外光を検出する焦電素子と、前記カンチレバーを振動させる駆動部とを備え、前記カンチレバーが振動することによって、前記焦電素子に入射する赤外光が変調される、焦電センサである。
【0008】
本態様によれば、焦電効果を有する焦電素子をカンチレバー上に配置し、そのカンチレバーを振動させることでチョッピング(一定周期で焦電センサへの入射赤外光を遮るようにチョッパを駆動させること)と同様の効果を実現できる。それにより、焦電素子に入射する赤外光を変調できる。焦電素子は、変調された赤外光が照射されることによって温度に応じた電荷を発生できる。このため、発生した電荷に基づいて、電圧を取得できる。このため、焦電素子とアクチュエータとを一体化した効果を実現できる。焦電素子自体が振動することで、焦電素子の外部にチョッパ構造を不要にできるため、焦電センサを小型化できる。
【0009】
(2)上記(1)の態様の焦電センサにおいて、前記焦電素子の前記カンチレバーとは反対の面に形成され、前記被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する遮断部材をさらに備えるようにしてもよい。
本態様によれば、焦電素子のカンチレバーとは反対の面に被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する遮断部材をさらに備えることができる。カンチレバーが振動することによって被測定物から焦電素子に入射される赤外光の有効面積を大きく変えることができるため、焦電素子の被測定物から放射される赤外光の検出感度を向上できる。
【0010】
(3)上記(2)の態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材は断熱材で構成されてもよい。
本態様によれば、遮断部材を断熱材で構成できるため、遮断部材から焦電素子への熱伝導を防ぐことができる。
【0011】
(4)上記(2)の態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材と前記焦電素子との間に形成される断熱材をさらに備えてもよい。
本態様によれば、遮断部材と焦電素子との間に断熱材を形成できるため、遮断部材から焦電素子への熱伝導を防ぐことができる。
【0012】
(5)上記(2)から上記(4)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材は、前記カンチレバーの前記一主面から前記赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状であってもよい。
本態様によれば、遮断部材を、カンチレバーの一主面から赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状にできるため、赤外光の角度を制限できる。このため、焦電素子の被測定物から放射される赤外光の感度を向上できる。
【0013】
(6)上記(2)から上記(5)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材と前記焦電センサの土台とを伝熱可能に接続する一または複数の接続部材をさらに備えてもよい。
本態様によれば、遮断部材と焦電センサの土台とを伝熱可能に接続する一または複数の接続部材を備えることができるため、焦電素子に遮断部材の熱を伝えずに排出できる。このため、焦電素子の被測定物から放射される赤外光の検出精度を上げることができる。
【0014】
(7)上記(2)から上記(6)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材は、前記カンチレバーの固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向に形成される一又は複数の第1遮断部材を有してもよい。
本態様によれば、遮断部材を、カンチレバーの固定端から自由端に向かう方向に垂直な方向に形成できるため、小さいカンチレバーの駆動で有効面積の変化を大きくすることができる。
【0015】
(8)上記(7)の態様の焦電センサにおいて、前記遮断部材は、前記カンチレバーの固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向に形成される一又は複数の前記第1遮断部材と伝熱可能に接続されている第2遮断部材備え、さらに熱を排出することができる接続部材を備えてもよい。
本態様によれば、一又は複数の第2遮断部材を、カンチレバーの固定端から自由端に向かう方向に平行な方向に形成できるため、遮断部材と接続部材とが熱的につながっていることでカンチレバー上の焦電素子に熱と伝えること無く排出できるため検出精度を上げることができる。
【0016】
(9)上記(7)の態様の焦電センサにおいて、前記第2遮断部材は、前記第1遮断部材よりも薄くてもよい。
本態様によれば、第2遮断部材を、第1遮断部材よりも薄くできるため、排熱効率を維持しつつ駆動への影響を緩和できる。
【0017】
(10)上記(1)から上記(9)のいずれか一項の態様の焦電センサにおいて、前記カンチレバーは、前記一端に複数の駆動部を有するようにしてもよい。
本態様によれば、カンチレバーを一様に変形させることができるため、カンチレバーがねじって曲げた状態(よじれた状態)となることを低減できる。このため、カンチレバーの姿勢の制御の精度を向上できる。
【0018】
(11)上記(10)の態様の焦電センサにおいて、複数の前記駆動部の各々は個別に制御されるようにしてもよい。
本態様によれば、制御の自由度を向上できるため、カンチレバーの姿勢の制御の精度をさらに向上できる。
【0019】
(12)上記(1)から上記(11)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記カンチレバーは、前記一端に、互いが離間している複数の固定端を有し、複数の前記固定端にはそれぞれ前記駆動部が設けられてもよい。
本態様によれば、カンチレバーを一か所で固定した場合よりも、一様に変形させることができる。複数の固定端の各々に駆動部が設けられるため、カンチレバーの姿勢の制御の精度を向上できる。
【0020】
(13)上記(12)の態様の焦電センサにおいて、前記一端は長手方向を有し、前記固定端は、前記長手方向の中心対称に形成されてもよい。
本態様によれば、カンチレバーの一端の長手方向の中心対象に形成された固定端に設けられた駆動部によって、カンチレバーを一様に変形させることができるため、カンチレバーの姿勢の制御の精度を向上できる。
【0021】
(14)上記(1)から上記(13)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記焦電素子は、ポリフッ化ビニリデンを含んで構成されてもよい。
本態様によれば、焦電素子をポリフッ化ビニリデンなどの樹脂材を含んで構成できるため、焦電素子を軽量化できるとともに、柔軟にできる。このため、焦電素子を樹脂材以外の材料で構成した場合と比較して、カンチレバーの駆動に対する機械的耐久性が向上できる。
【0022】
(15)上記(1)から上記(14)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記駆動部は、前記カンチレバーを振動させる圧電体を含むようにしてもよい。
本態様によれば、逆圧電効果を使用して、カンチレバーを振動させることができる。
【0023】
(16)上記(1)から上記(15)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記駆動部を構成する圧電体は、前記焦電素子を構成する材料を含むようにしてもよい。
本態様によれば、駆動部を構成する圧電体と焦電素子を構成する焦電体とを同じ材料で構成できるため、同じ工程で作製できる。このため、駆動部を構成する圧電体と焦電素子を構成する焦電体とを異なる材料で作製するよりも工程数を削減できる。
【0024】
(17)上記(1)から上記(16)のいずれかの態様の焦電センサにおいて、前記カンチレバーは、前記カンチレバーが振動していない状態で、前記固定端から前記自由端の方向と、前記赤外光の入射方向とのなす角度が、30度以上60度未満の位置に設置されるようにしてもよい。
本態様によれば、焦電センサは、カンチレバーを振動させる角度を減少させることができるため、消費電力を低減できる。
【0025】
(18)上記(1)から上記(17)のいずれかの態様の焦電センサは、赤外光透過窓を開口させた外郭体をさらに備え、前記カンチレバーと前記焦電素子と前記駆動部とは、前記外郭体の内部に設置され、前記外郭体の内部は、真空雰囲気であるようにしてもよい。
本態様によれば、カンチレバーと焦電素子と駆動部とを格納する外郭体の内部を真空雰囲気にできるため、真空雰囲気でない場合と比較して、断熱効果によって焦電素子の感度を上昇させることができる。また、カンチレバーを振動させたときの抵抗を低下できる。このため、焦電素子の消費電力を低減できる。
【0026】
(19)本開示の一態様に係る焦電センサシステムは、(1)から(18)のいずれか一つに記載の焦電センサをアレイ状に複数配置し、複数の前記焦電センサの各々に含まれる駆動部を制御する制御部と、複数の前記焦電素子の各々が出力する電気信号を処理するセンサ信号処理部とを備える。
本態様によれば、焦電センサをアレイ状に配置することで耳内の構造と温度マップを取得できるため、鼓膜の温度をピンポイントで計測できる。
【0027】
(20)本開示の一態様に係る焦電センサの製造方法は、カンチレバーの一主面に第1下部電極及び第2下部電極を離間して設ける工程と、前記カンチレバーの一主面に設けられた前記第1下部電極上及び前記第2下部電極上の各々に圧電材及び焦電材を成膜する工程と、前記圧電材及び前記焦電材の各々に第1上部電極及び第2上部電極を設ける工程とを有し、前記圧電材と前記焦電材とは同じ材料である、焦電センサの製造方法である。
本態様によれば、外郭体に赤外線透過窓を部分的に開口させて、開口部とカンチレバーとを位置合わせする場合と比較して、カンチレバーと外郭体の開口部とを個別のカンチレバーに対して対応する開口部の位置決めができるため、歩留まりを向上できる。
【0028】
(21)上記(20)の態様の焦電センサの製造方法において、外郭体の内部にカンチレバーを設置する工程と、前記カンチレバーの位置に基づいて前記外郭体に赤外光透過窓を部分的に開口させる工程とを有するようにしてもよい。
本態様によれば、外郭体とカンチレバーのある基板との位置合わせする場合と比較して、個別のカンチレバーに対して対応する開口部の位置決めができるため、処理を簡略化できるとともに、歩留まりを向上できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、被測定物から放射される赤外光を検出できる焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る焦電センサを示す側面図である。
【
図2】本実施形態に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図3A】本実施形態に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図3B】本実施形態に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図3C】本実施形態に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図3D】本実施形態に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5A】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図5B】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図5C】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図5D】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図5E】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図5F】本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る焦電センサの使用例を示す図である。
【
図7】実施形態の変形例1に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
【
図8】実施形態の変形例1に係る焦電センサの使用例を示す図である。
【
図9】実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図10】実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図11】実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図12】実施形態の変形例3に係る焦電センサシステムの一例を示す図である。
【
図13】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
【
図14】本実施形態の変形例4に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図15A】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図15B】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図15C】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図15D】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図16A】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図16B】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図16C】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図16D】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図17】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの他の一例を示す側面図である。
【
図18A】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図18B】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
【
図19】本実施形態の変形例4に係る焦電センサの有効面積の変化の一例を示す図である。
【
図20】本実施形態の変形例5に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
【
図21】本実施形態の変形例5に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図22】本実施形態の変形例6に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
【
図23】本実施形態の変形例6に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図24】本実施形態の変形例7に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
【
図25】本実施形態の変形例7に係る焦電センサを示す平面図である。
【
図26】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図27A】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図27B】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図27C】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図27D】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
【
図28】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図29A】本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図29B】焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本実施形態の焦電センサ、焦電センサシステム及び焦電センサの製造方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本開示が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、以下に述べる実施形態は、本開示の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0032】
[実施形態]
[焦電センサ]
図1は、本実施形態に係る焦電センサを示す側面図である。
本実施形態に係る焦電センサ1は、物体(被測定物)の温度を非接触で計測する。焦電センサ1は、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、支持部材17と、制御部CUとを備える。
【0033】
カンチレバー10は、一端が固定端でかつ他端が自由端である構造体である。カンチレバー10は、その固定端が支持部材17に支持されて設置される。カンチレバー10の一例は、樹脂材料を含んで構成される。樹脂材料の一例は、ポリイミドである。カンチレバー10の一例は、板状つまり直方体である。固定端から自由端へ向かう方向をX軸とし、鉛直上向きをZ軸とし、X軸とZ軸とに垂直な方向をY軸とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。カンチレバー10のZ方向の厚さの一例として、20μmとした場合について説明を続ける。
【0034】
カンチレバー10の一主面には、焦電素子18と、駆動部19とが形成される。具体的には、カンチレバー10において、X軸方向の中心から自由端側に焦電素子18が形成され、X軸方向の中心から固定端側に駆動部19が形成される。
焦電素子18は、被測定物から放射される赤外光を検出する。焦電素子18の一例は、カンチレバー10に対してZ軸の正方向に形成される。被測定物の一例は、鼓膜である。焦電素子18は、下部電極11と焦電体12と上部電極13とを含んで構成される。カンチレバー10の一主面に下部電極11が形成され、下部電極11上に焦電体12が形成され、焦電体12上に上部電極13が形成される。
下部電極11の一例は白金を含んで構成される。下部電極11のZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
【0035】
焦電体12の材料の一例はポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride)を含んで構成される。焦電体12のZ方向の厚さの一例として、1μmとした場合について説明を続ける。
上部電極13の一例は金を含んで構成される。上部電極13のZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
【0036】
駆動部19は、カンチレバー10を振動させる。駆動部19の一例は、カンチレバー10に対してZ軸の正方向に形成される。カンチレバー10が振動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。駆動部19は、下部電極14と圧電体15と上部電極16とを含んで構成される。カンチレバー10の一主面に下部電極14が形成され、下部電極14上に圧電体15が形成され、圧電体15上に上部電極16が形成される。
下部電極14の一例は白金を含んで構成される。下部電極14のZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
圧電体15の一例はポリフッ化ビニリデンを含んで構成される。圧電体15のZ方向の厚さの一例として、1μmとした場合について説明を続ける。
【0037】
上部電極16の一例は金を含んで構成される。上部電極16のZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
制御部CUは、配線W01と配線W06とを介して上部電極16と接続され、配線W02と配線W05とを介して下部電極14と接続され、配線W03と配線W08とを介して上部電極13と接続され、配線W04と配線W07とを介して下部電極11と接続される。制御部CUは、上部電極16と下部電極14との間に電圧を印加することによって、駆動部19を駆動する。制御部CUは、駆動部19を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を、上部電極13と下部電極11とを介して検出する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。制御部CUは、導出した電圧値を出力する。制御部CUが出力した電圧値は他の装置で記録されてもよい。
制御部CUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部(図示なし)に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0038】
図2は、本実施形態に係る焦電センサを示す平面図である。
図2は、
図1において、Z軸の正の方向から焦電センサ1を見た図である。
図2に示される例では、カンチレバー10は、一端に一か所の固定端FEを有している。その固定端には、駆動部19が設けられている。
カンチレバー10のX軸方向の長さの一例として、100μmとした場合について説明を続ける。カンチレバー10と支持部材17とを含んだX軸方向の長さの一例として、150μmとした場合について説明を続ける。カンチレバー10のY軸方向の長さの一例として、100μmとした場合について説明を続ける。以下同様である。
【0039】
(焦電センサの動作)
図3Aから
図3Dは、本実施形態に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
図3Aと
図3Bとはカンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する場合であり、
図3Cと
図3Dとはカンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する場合である。
カンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する場合について説明する。この場合、下部電極14と上部電極16との間には配線W01と配線W02とによって下部電極14を基準として、上部電極16に正の電圧が印加される。下部電極14と上部電極16との間に下部電極14を基準として、上部電極16に正の電圧が印加されることによって、
図3Aに示すように圧電体15は分極方向に伸張する。圧電体15が分極方向に伸張することによって、圧電体15の平面方向(X軸とY軸とによって表される平面)に圧縮力が発生する。圧電体15の平面方向に圧縮力が発生することによって、
図3Bに示すようにカンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する。
【0040】
カンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する場合について説明する。この場合、下部電極14と上部電極16との間には配線W01と配線W02とによって下部電極14を基準として、上部電極16に負の電圧が印加される。下部電極14と上部電極16との間に下部電極14を基準として、上部電極16に負の電圧印加されることによって、
図3Cに示すように圧電体15は分極方向に圧縮される。圧電体15が分極方向に圧縮されることによって、圧電体15の平面方向(X軸とY軸とによって表される平面)に伸張力が発生する。圧電体15の平面方向に伸張力が発生することによって、
図3Dに示すようにカンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する。
カンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向と負の方向との間で移動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。焦電素子18に入射する赤外光が変調されることによって、焦電素子18には電荷が発生する。制御部CUは、焦電素子18に発生した電荷を上部電極13に接続された配線W08と下部電極11に接続された配線W09とによって検出する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。
【0041】
(焦電センサの製造方法)
図4は、本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5Aから
図5Fは、本実施形態に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
図4と
図5Aから
図5Fとを参照して、焦電センサ1の製造方法を説明する。
(ステップS1)
基板SUBの一主面にカンチレバー10を構成する樹脂材料10Mが成膜される(
図5A)。樹脂材料10Mの一例は、ポリイミドである。具体的には、基板SUBの一主面に、成膜装置を使用して、ポリイミドが成膜される。
(ステップS2)
樹脂材料10M上に下部電極(11、14)が形成される(
図5B)。下部電極(11、14)の材料一例は、白金である。具体的には、ポリイミド膜上に、成膜装置を使用して、白金(11M、14M)が成膜される。
【0042】
(ステップS3)
白金(11M、14M)に圧電体15と焦電体12とが形成される(
図5C)。白金(11M、14M)膜上に圧電材15M及び焦電材12Mが成膜される。圧電材15M及び焦電材12Mの一例は、PVDFである。具体的には、白金膜上に、成膜装置を使用して、PVDFが成膜される。圧電材15Mと焦電材12Mとを同じ材料とすることによって、同じ工程で圧電体15と焦電体12とを形成できる。
(ステップS4)
圧電材15M及び焦電材12M上に上部電極(13、16)が形成される(
図5D)。上部電極(13、16)の一例は、金である。具体的には、PVDF膜上に、成膜装置を使用して、金(13M、16M)が成膜される。金(13M、16M)の成膜後、エッチング処理によって、上部電極(13、16)、圧電体15と焦電体12、下部電極(11、14)が成型されることによって、焦電素子18と、駆動部19とが形成される。
【0043】
(ステップS5)
樹脂材料10Mが成形されることによって、カンチレバー10が形成される(
図5E)。カンチレバー10を樹脂材料で構成することによって、カンチレバー10を柔軟にできるとともに、軽量化できる。カンチレバー10を柔軟かつ軽量化できるため、駆動を容易にできるとともに、破壊を起きにくくできる。
(ステップS6)
カンチレバー10から基板SUBが剥離される(
図5F)。
以後、カンチレバー10は支持部材17に設置される。上部電極16と制御部CUとが配線W01と配線W06とによって接続される。下部電極14と制御部CUとが配線W02と配線W05とによって接続される。上部電極13と制御部CUとが配線W03と配線W08とによって接続される。下部電極11と制御部CUとが配線W04と配線W07とによって接続される。以上で、焦電センサ1の製造が終了する。
【0044】
焦電センサ1の使用例について説明する。焦電センサ1の使用例は、外郭体に格納して使用される。
図6は、本実施形態に係る焦電センサの使用例を示す図である。
図6に示すように、焦電センサ1は、外郭体20に格納されて使用されてもよい。外郭体20は、焦電センサ1を取り囲むように構成されている。外郭体20の一例は、6面体である。外郭体20はSi、Geなどの体温付近での赤外線波長(10μm前後)の透過率が高い材料で構成される。
外郭体20のX軸方向の長さの一例として、200μmとした場合について説明を続ける。外郭体20のZ軸方向の長さの一例として、500μmとした場合について説明を続ける。
【0045】
外郭体20の少なくとも一面は、焦電素子18に赤外線が入射できるようにするために、赤外線透過窓20Wを備えている。その一面の赤外線透過窓20W以外の部分には、遮光部22が形成されている。遮光部22が形成されていることによって、外郭体20の内部の温度上昇を低減できる。さらに、外郭体20の内部は、真空雰囲気にされている。ここで、真空雰囲気とは、大気圧よりも気圧が低いことである。このように構成することによって、外郭体20の内部を真空雰囲気としない場合と比較して、断熱効果によって焦電素子18の感度を上昇させることができる。また、カンチレバー10を振動させたときの抵抗を低下できる。このため、焦電素子18の消費電力を低減できる。
【0046】
前述した実施形態では、焦電体12の材料の一例として、PVDFを含んで構成される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、焦電体12の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、lead zirconate titanate)を含んで構成されてもよいし、チタン酸バリウム(BaTiO3)を含んで構成されてもよいし、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を含んで構成されてもよい。
前述した実施形態では、焦電素子18が、下部電極11と焦電体12と上部電極13とを含んで構成される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、焦電素子18が、下部電極11と焦電体12と上部電極13とに加えて、吸熱膜を含んで構成されてもよい。例えば、吸熱膜は、上部電極13上に形成される。このように構成することによって、焦電素子18の感度を向上させることができる。焦電素子18は温度差によって電荷を出すため、赤外線のエネルギーをできるだけ効率よく熱に変換し、焦電素子18の温度を上昇させて他の部分と温度差を作り出すことが望ましい。吸熱膜により焦電素子18に赤外線をほぼ100%の効率で熱として吸収させることができる。これに従い、焦電体12の温度が上昇することで電荷が発生する。以上から、焦電素子18に関しては温度上昇を促進させるほうが望ましい。
前述した実施形態では、カンチレバー10が、ポリイミドによって構成される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、カンチレバー10が、アクリルによって構成されてもよい。
前述した実施形態では、固定端に、駆動部19が設けられている場合について説明したが、この例に限られない。例えば、カンチレバー10を振動できる位置であれば、自由端側などの固定端以外の位置に設けられてもよい。
【0047】
本実施形態に係る焦電センサ1によれば、一端が固定端でかつ他端が自由端であるカンチレバー10と、カンチレバー10の一主面に形成され、被測定物から放射される赤外光(赤外線)を検出する焦電素子18と、カンチレバー10を振動させる駆動部19とを備える。カンチレバー10が振動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。このように構成することによって、焦電効果を有する焦電素子をカンチレバー上に配置し、そのカンチレバーを振動させることでチョッピングと同様の効果を実現できる。それにより、焦電素子18に入射する赤外光を変調できる。焦電素子18は、変調された赤外光が照射されることによって温度に応じた電荷を発生できる。このため、発生した電荷に基づいて、電圧を取得できる。
【0048】
焦電素子18とアクチュエータとを一体化した効果を実現できる。焦電素子18自体が振動することで、焦電素子18の外部にチョッパ構造を不要にできるため、焦電センサ1を小型化できる。焦電素子18の焦電効果によって、耳の入り口からの検出でも、サーモパイルを耳内に深く挿入した場合と同等以上の感度で鼓膜の温度を計測できる。耳の入り口から鼓膜温度が検出できるため、イヤホン程度の位置に焦電センサ1を配置できる。したがって、焦電センサ1を装着することによる違和感や閉塞感を低減できる。
【0049】
また、焦電素子18は、ポリフッ化ビニリデンを含んで構成される。このように構成することによって、焦電素子18をポリフッ化ビニリデンなどの樹脂材を含んで構成できるため、焦電素子18を軽量化できるとともに、柔軟にできる。このため、焦電素子18を樹脂材以外の材料で構成した場合と比較して、カンチレバーの駆動に対する機械的耐久性が向上できる。
また、駆動部19は、カンチレバー10を振動させる圧電体15を含む。このように構成することによって、逆圧電効果を使用して、カンチレバー10を振動させることができる。
また、駆動部19を構成する圧電体15は、焦電素子18を構成する材料を含む。このように構成することによって、駆動部19を構成する圧電体15と焦電素子18を構成する焦電体とを同じ材料で構成できるため、同じ工程で作製できる。このため、駆動部19を構成する圧電体15と焦電素子18を構成する焦電体12とを異なる材料で作製するよりも工程数を削減できる。
また、赤外光透過窓を開口させた外郭体20をさらに備える。カンチレバー10と焦電素子18と駆動部19とは、外郭体20の内部に設置され、外郭体20の内部は、真空雰囲気である。このように構成することによって、カンチレバー10と焦電素子18と駆動部19とを格納する外郭体20の内部を真空雰囲気にできるため、真空雰囲気でない場合と比較して、断熱効果によって焦電素子18の感度を上昇させることができる。また、カンチレバー10を振動させたときの抵抗を低下できる。このため、焦電素子18の消費電力を低減できる。
【0050】
(実施形態の変形例1)
[焦電センサ]
図7は、本実施形態の変形例1に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
本実施形態の変形例1に係る焦電センサ1aは、物体の温度を非接触で計測する。焦電センサ1aは、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、支持部材17とを備える。
図7において、制御部CUは省略される。
焦電センサ1aは、焦電センサ1と比較して、Y軸の負方向から見た場合に、カンチレバー10が、振動していない状態でX軸とY軸とからなる平面に対して所定の角度θを有するように設置されている点で異なる。換言すれば、カンチレバー10は、カンチレバーが振動していない状態で、固定端から自由端の方向と、赤外光の入射方向とが角度θを有するように設置される。角度θの一例は、30度以上60度未満であり、より好ましくは40度以上50度未満である。一例として、角度θを45度とした場合について説明を続ける。
【0051】
角度θを45度とした場合には、その45度を中心として、-45度から+45度の間で、カンチレバー10を振動させる(揺動させる)ことによって、焦電素子18に被測定物から放射される赤外光を検出させることができる。一方、前述した実施形態では、焦電センサ1は、焦電素子18に被測定物から放射される赤外光を検出させるには、0度から+90度の間の所定の角度範囲で、カンチレバー10を振動させることになる。このように、カンチレバー10を振動していない状態で、固定端から自由端の方向と、赤外光の入射方向とが45度を有するように設置させて構成することによって、焦電センサ1aは、一方向あたりのカンチレバー10を振動させる角度を減少させることができるため、消費電力を低減できる。
焦電センサ1aの動作は、
図3を参照して説明した内容を同じであるため、その説明を省略する。焦電センサ1aの製造方法は、
図4と
図5Aから
図5Fとを参照して説明した内容を同じであるため、その説明を省略する。
【0052】
実施形態の変形例1において、外郭体20に、焦電センサ1aを格納して使用してもよい。
図8は、本実施形態の変形例1に係る焦電センサの使用例を示す図である。
図7に示すように、焦電センサ1aは、外郭体20に格納されている。外郭体20は、焦電センサ1aを取り囲むように構成されている。外郭体20の一例は、6面体である。外郭体20の少なくとも一面は、焦電素子18に赤外線が入射できるようにするために、赤外線透過窓20Wを備えている。その一面の赤外線透過窓20W以外の部分には、遮光部22が形成されている。さらに、外郭体20の内部は、真空雰囲気にされている。
【0053】
本実施形態の変形例1に係る焦電センサ1aによれば、前述した実施形態に係る焦電センサ1において、カンチレバー10は、カンチレバー10が振動していない状態で、固定端から自由端の方向と、赤外光の入射方向とのなす角度が、30度以上60度未満の位置に設置される。このように構成することによって、焦電センサ1aは、カンチレバー10を振動させる角度を減少させることができるため、消費電力を低減できる。具体的には、仮に、固定端から自由端の方向と赤外光の入射方向とのなす角度を45度とした場合に、カンチレバー10の振動を±45度で完全なオンオフ駆動を可能にできる。また、固定端から自由端の方向と赤外光の入射方向とのなす角度を45度とした場合に、少ない角度変化で有効面積を大きく変化させることができる。そのため、カンチレバー10を完全に0度から90度の範囲で振動させることができない場合に、少ない角度変化で面積変化を大きくできる45度が有効となる。ここで、初期に45度とする方法は上部電極16の厚みを変化させ、膜応力で制御できる。また、予め上部電極16に一定電圧を印加しておくことによって初期に45度とすることができる。
【0054】
(実施形態の変形例2)
[焦電センサ]
本実施形態の変形例2に係る焦電センサ1bは、物体の温度を非接触で計測する。焦電センサ1bは、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19bと、支持部材17とを備える。
焦電センサ1bは、焦電センサ1と比較して、カンチレバー10の一端に複数の駆動部を有する点で異なる。ここでは、一例として、カンチレバー10の一端に2個の駆動部を備える場合について説明を続ける。
【0055】
図9は、本実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
図9は、
図1において、Z軸の正の方向から焦電センサ1bを見た図である。
図9に示される例では、カンチレバー10は、一端に二か所の固定端(FE01、FE02)を有している。二か所の固定端のうち、固定端FE02には駆動部19b-1が設けられ、固定端FE02には駆動部19b-2が設けられている。
駆動部19b-1と駆動部19b-2との各々は、カンチレバー10を振動させる。カンチレバー10が振動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。駆動部19b-1と駆動部19b-2との各々が独立して、カンチレバー10を振動させてもよい。
駆動部19b-1は、下部電極14b-1と圧電体15b-1と上部電極16b-1とを含んで構成される。カンチレバー10の一主面において、短辺方向(Y軸方向)の中心から一方の方向でかつ固定端FE01を含む所定の領域に下部電極14b-1が形成され、下部電極14b-1上に圧電体15b-1が形成され、圧電体15b-1上に上部電極16b-1が形成される。
駆動部19b-2は、下部電極14b-2と圧電体15b-2と上部電極16b-2とを含んで構成される。カンチレバー10の一主面において、短辺方向の中心から他方の方向でかつ固定端FE02を含む所定の領域に下部電極14b-2が形成され、下部電極14b-2上に圧電体15b-2が形成され、圧電体15b-2上に上部電極16b-2が形成される。
【0056】
下部電極14b-1と下部電極14b-2との一例は白金を含んで構成される。下部電極14b-1と下部電極14b-2とのZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
圧電体15b-1と圧電体15b-2との一例はポリフッ化ビニリデンを含んで構成される。圧電体15b-1と圧電体15b-2とのZ方向の厚さの一例として、1μmとした場合について説明を続ける。
上部電極16b-1と上部電極16b-2との一例は金を含んで構成される。上部電極16b-1と上部電極16b-2とのZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
制御部CUは、上部電極16b-1と下部電極14b-1と上部電極16b-2と下部電極14b-2と上部電極13と下部電極11と接続される。
制御部CUは、駆動部19b-1を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、駆動部19b-2を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。制御部CUは、導出した電圧値を出力する。制御部CUが出力した電圧値は他の装置で記録されてもよい。
このように構成することによって、カンチレバー10一端の一か所に固定端を有している場合と比較して、カンチレバー10を一様に変形させることができるため、カンチレバー10がねじって曲げた状態(よじれた状態)となることを低減できる。
【0057】
前述した実施形態の変形例2では、カンチレバー10のY軸方向の長さが等しい場合について説明したが、この例に限られない。例えば、カンチレバー10において、自由端のY軸方向の長さと、固定端のY軸方向の長さとが異なってもよい。一例として、自由端のY軸方向の長さが、固定端のY軸方向の長さよりも長い場合について説明する。
図10は、本実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
図10は、
図1において、Z軸の正の方向から焦電センサ1b2を見た図である。
図10に示される例では、
図9において、自由端のY軸方向の長さを、固定端のY軸方向の長さよりも長くしたものである。
カンチレバー10b2は、支持部材17に一か所で固定され、一端に二か所の固定端(FE01、FE02)を有している。二か所の固定端のうち、固定端FE01には駆動部19b2-1が設けられ、固定端FE02には駆動部19b2-2が設けられている。
駆動部19b2-1と駆動部19b2-2との各々は、カンチレバー10b2を振動させる。カンチレバー10b2が振動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。駆動部19b2-1と駆動部19b2-2との各々が独立して、カンチレバー10b2を振動させてもよい。駆動部19b2-1と駆動部19b2-2との各々が独立して、カンチレバー10b2を振動させてもよい。
【0058】
駆動部19b2-1は、下部電極14b2-1と圧電体15b2-1と上部電極16b2-1とを含んで構成される。カンチレバー10b2の一主面において、短辺方向の中心から一方の方向でかつ固定端FE01を含む所定の領域に下部電極14b2-1が形成され、下部電極14b2-1上に圧電体15b2-1が形成され、圧電体15b2-1上に上部電極16b2-1が形成される。下部電極14b2-1と圧電体15b2-1と上部電極16b2-1とのY軸方向の長さは、
図9に示した下部電極14b-1と圧電体15b-1と上部電極16b-1とのY軸方向の長さよりも短い。
駆動部19b2-2は、下部電極14b2-2と圧電体15b2-2と上部電極16b2-2とを含んで構成される。カンチレバー10b2の一主面において、短辺方向の中心から他方の方向でかつ固定端FE02を含む所定の領域に下部電極14b2-2が形成され、下部電極14b2-2上に圧電体15b2-2が形成され、圧電体15b2-2上に上部電極16b2-2が形成される。下部電極14b2-2と圧電体15b2-2と上部電極16b2-2とのY軸方向の長さは、
図9に示した下部電極14b-2と圧電体15b-2と上部電極16b-2とのY軸方向の長さよりも短い。
【0059】
下部電極14b2-1と下部電極14b2-2との一例は白金を含んで構成される。下部電極14b2-1と下部電極14b2-2とのZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
圧電体15b2-1と圧電体15b2-2との一例はポリフッ化ビニリデンを含んで構成される。圧電体15b2-1と圧電体15b2-2とのZ方向の厚さの一例として、1μmとした場合について説明を続ける。
上部電極16b2-1と上部電極16b2-2との一例は金を含んで構成される。上部電極16b2-1と上部電極16b2-2とのZ方向の厚さの一例として、100nmとした場合について説明を続ける。
制御部CUは、上部電極16b2-1と下部電極14b2-1と上部電極16b2-2と下部電極14b2-2と上部電極13と下部電極11と接続される。
制御部CUは、駆動部19b2-1を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、駆動部19b2-2を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。制御部CUは、導出した電圧値を出力する。制御部CUが出力した電圧値は他の装置で記録されてもよい。
このように構成することによって、固定端のY軸方向の長さを減少させることができるため、
図9と比較して、カンチレバー10を拘束することによって振動の妨げとなる部分を減少させることができるため、カンチレバー10の変形が容易となる。このため、焦電センサ1b2の消費電力を減少させることができる。
【0060】
また、例えば、カンチレバー10において、自由端のY軸方向の長さと、固定端のY軸方向の長さとを異ならせるとともに、複数の固定端を有するようにしてもよい。一例として、自由端のY軸方向の長さが、固定端のY軸方向の長さよりも長く、かつ2か所の固定端を有する場合について説明する。
図11は、本実施形態の変形例2に係る焦電センサを示す平面図である。
図11は、
図1において、Z軸の正の方向から焦電センサ1b3を見た図である。
図11に示される例では、
図9において、自由端のY軸方向の長さを、固定端のY軸方向の長さよりも長くしたものである。また、カンチレバー10b3は、支持部材17に三か所で固定され、一端に二か所の固定端(FE01、FE02)を有している。二か所の固定端のうち、固定端FE01には駆動部19b3-1が設けられ、固定端FE02には駆動部19b3-2が設けられている。
駆動部19b3-1と駆動部19b3-2との各々は、カンチレバー10b3を振動させる。カンチレバー10b3が振動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。駆動部19b3-1と駆動部19b3-2との各々が独立して、カンチレバー10b3を振動させてもよい。
【0061】
駆動部19b3-1は、下部電極14b3-1と圧電体15b3-1と上部電極16b3-1とを含んで構成される。カンチレバー10b3の一主面において、短辺方向の中心から一方の方向でかつ固定端FE01を含む所定の領域に下部電極14b3-1が形成され、下部電極14b3-1上に圧電体15b3-1が形成され、圧電体15b3-1上に上部電極16b3-1が形成される。下部電極14b3-1と圧電体15b3-1と上部電極16b3-1とのY軸方向の長さは、
図9に示した下部電極14b-1と圧電体15b-1と上部電極16b-1とのY軸方向の長さよりも短い。
駆動部19b3-2は、下部電極14b3-2と圧電体15b3-2と上部電極16b3-2とを含んで構成される。カンチレバー10b3の一主面において、短辺方向の中心から他方の方向でかつ固定端を含む所定の領域に下部電極14b3-2が形成され、下部電極14b3-2上に圧電体15b3-2が形成され、圧電体15b3-2上に上部電極16b3-2が形成される。下部電極14b3-2と圧電体15b3-2と上部電極16b3-2とのY軸方向の長さは、
図9に示した下部電極14b-2と圧電体15b-2と上部電極16b-2とのY軸方向の長さよりも短い。
制御部CUは、上部電極16b3-1と下部電極14b3-1と上部電極16b3-2と下部電極14b3-2と上部電極13と下部電極11と接続される。
制御部CUは、駆動部19b3-1を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、駆動部19b3-2を駆動することによって焦電素子18に発生した電荷を検出する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。制御部CUは、導出した電圧値を出力する。制御部CUが出力した電圧値は他の装置で記録されてもよい。
このように構成することによって、固定端のY軸方向の長さを減少させることができるため、
図9と比較して、カンチレバー10を拘束することによって振動の妨げとなる部分を減少させることができるため、カンチレバー10の変形が容易となる。さらに、カンチレバー10の固定端を複数の箇所で固定することによって、カンチレバー10を一か所で固定した場合よりも、一様に変形させることができる。
【0062】
本実施形態の変形例2に係る焦電センサ(1b、1b2、1b3)によれば、前述した実施形態に係る焦電センサにおいて、カンチレバー(10、10b2、10b3)は、一端に複数の駆動部(19b-1、19b-2、19b2-1、19b2-2、19b3-1、19b3-2)を有する。このように構成することによって、カンチレバー(10、10b2、10b3)を一様に変形させることができるため、カンチレバー(10、10b2、10b3)がねじって曲げた状態(よじれた状態)となることを低減できる。このため、カンチレバー(10、10b2、10b3)の姿勢の制御の精度を向上できる。
また、複数の駆動部(19b-1、19b-2、19b2-1、19b2-2、19b3-1、19b3-2)の各々は個別に制御される。このように構成することによって、制御の自由度を向上できるため、カンチレバー(10、10b2、10b3)の姿勢の制御の精度をさらに向上できる。
また、カンチレバー(10、10b2、10b3)は、一端に、互いが離間している複数の固定端を有し、複数の固定端にはそれぞれ駆動部が設けられている。このように構成することによって、カンチレバー10を一か所で固定した場合よりも、一様に変形させることができる。複数の固定端(FE01、FE02)の各々に駆動部(19b-1、19b-2、19b2-1、19b2-2、19b3-1、19b3-2)が設けられるため、カンチレバー(10、10b2、10b3)の姿勢の制御の精度を向上できる。
また、一端は長手方向を有し、固定端(FE01、FE02)は、長手方向の中心対称に形成されている。このように構成することによって、カンチレバー10の一端の長手方向の中心対象に形成された固定端に設けられた駆動部によって、カンチレバー(10、10b2、10b3)を一様に変形させることができるため、カンチレバー(10、10b2、10b3)の姿勢の制御の精度を向上できる。
【0063】
(実施形態の変形例3)
[焦電センサシステム]
図12は、実施形態の変形例3に係る焦電センサシステムの一例を示す図である。
本実施形態の変形例に係る焦電センサシステム3は、前述した焦電センサ1、焦電センサ1a、焦電センサ1b、焦電センサ1b2、及び焦電センサ1b3のいずれかを複数含んで構成される。ここでは、一例として、焦電センサシステム3が、複数の焦電センサ1を含んで構成される場合について説明を続ける。
図12に示すように、焦電センサシステム3は、センサアレイ部30と、センサアレイ部30と接続されるカンチレバー駆動部31と、センサ信号処理部32とを備える。焦電センサシステム3は、センサ信号処理部32と接続される温度情報出力部33を備える。焦電センサシステム3は、センサアレイ部30とカンチレバー駆動部31とセンサ信号処理部32と温度情報出力部33とへ電源を供給する電源34を備える。
センサアレイ部30は、複数の焦電センサ1を含んで構成される。
図12に示される例では、センサアレイ部30は、25個の焦電センサ1を含んで構成される。ここで、複数の焦電センサ1の各々は、外郭体20に格納されて構成されてもよい。
カンチレバー駆動部31は、センサアレイ部30に含まれる複数の焦電センサ1の各々に接続される。カンチレバー駆動部31は、電源34が供給する電源を使用して、複数の焦電センサ1の各々に含まれる駆動部19を制御部CUに駆動させる。
【0064】
センサ信号処理部32は、センサアレイ部30に含まれる複数の焦電センサ1の各々に接続される。センサ信号処理部32は、電源34が供給する電源を使用して、複数の焦電センサ1の各々に含まれる制御部CUが出力する電圧値を取得し、取得した電圧値に基づいて、温度を導出する。
温度情報出力部33は、センサ信号処理部32が導出した複数の焦電センサ1の各々に該当する温度情報を取得する。温度情報出力部33は、取得した温度情報を出力する。
【0065】
カンチレバー駆動部31、センサ信号処理部32、及び温度情報出力部33は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサが記憶部(図示なし)に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。コンピュータプログラムは、予めHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
実施形態の変形例3に係る焦電センサシステム3によれば、焦電センサ1をアレイ状に複数配置し、複数の焦電センサの各々に含まれる駆動部を制御するカンチレバー駆動部31としての制御部と、複数の焦電素子の各々が出力する電気信号を処理するセンサ信号処理部とを備える。このように構成することによって、焦電センサ1をアレイ状に配置することで耳内の構造と温度マップを取得できるため、鼓膜の温度をピンポイントで計測できる。
【0066】
(実施形態の変形例4)
[焦電センサ]
図13は、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
図14は、本実施形態の変形例4に係る焦電センサを示す平面図である。
本実施形態の変形例4に係る焦電センサ1cは、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、遮断部材40から遮断部材43と、支持部材17と、制御部CUとを備える。
焦電センサ1cは、焦電センサ1と比較して、Z軸方向において焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に遮断部材40から遮断部材43が形成されている点で異なる。遮断部材40から遮断部材43は、被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する。遮断部材40から遮断部材43の一例は、断熱材、特に樹脂材、具体的にはシリコーン・エポキシ樹脂・永久レジスト(SU-8)等によって構成される。
【0067】
遮断部材40から遮断部材43の各々は、直方体の形状を有する。遮断部材40から遮断部材43の各々は、その長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向となるように形成される。
図14において、カンチレバー10の駆動方向はZ軸方向であり、遮断部材40から遮断部材43の各々はその長手方向がY軸方向となるように形成される。
【0068】
(焦電センサの動作)
図15Aから
図15Dは、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
図15Aと
図15Bとはカンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する場合であり、
図15Cと
図15Dとはカンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する場合である。
カンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する場合について説明する。この場合、下部電極14と上部電極16との間には配線W01と配線W02とによって下部電極14を基準として、上部電極16に正の電圧が印加される。下部電極14と上部電極16との間に下部電極14を基準として、上部電極16に正の電圧が印加されることによって、
図15Aに示すように圧電体15は分極方向に伸張する。圧電体15が分極方向に伸張することによって、圧電体15の平面(X軸とY軸とによって表される平面)方向に圧縮力が発生する。圧電体15の平面方向に圧縮力が発生することによって、
図15Bに示すようにカンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向に移動する。
【0069】
カンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する場合について説明する。この場合、下部電極14と上部電極16との間には配線W01と配線W02とによって下部電極14を基準として、上部電極16に負の電圧が印加される。下部電極14と上部電極16との間に下部電極14を基準として、上部電極16に負の電圧印加されることによって、
図15Cに示すように圧電体15は分極方向に圧縮される。圧電体15が分極方向に圧縮されることによって、圧電体15の平面(X軸とY軸とによって表される平面)方向に伸張力が発生する。圧電体15の平面方向に伸張力が発生することによって、
図15Dに示すようにカンチレバー10の自由端がZ軸の負の方向に移動する。
カンチレバー10の自由端がZ軸の正の方向と負の方向との間で移動することによって、焦電素子18に入射する赤外光が変調される。焦電素子18に入射する赤外光が変調されることによって、焦電素子18には電荷が発生する。制御部CUは、電荷の検出結果に基づいて、電圧値を導出する。
カンチレバー10上に遮断部材40から遮断部材43が形成されていることによって、遮断部材40から遮断部材43が形成されていない場合と比較して、カンチレバー10が移動することによって焦電素子18に入射される赤外線の一部が遮断部材40から遮断部材43によって遮断されるため、赤外線が入射する焦電素子18の面積(以下「有効面積」という)を大きく変えることができる。遮断部材40から遮断部材43は、カンチレバー10の平面(X軸とY軸とによって表される平面)に垂直に入射される赤外線に加え、カンチレバー10の平面に斜め方向から入射する赤外線も遮断する。
【0070】
図16Aから
図16Dは、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。
図16Aと
図16Bとは焦電素子18に遮断部材40から遮断部材43を形成しない場合について示し、
図16Cと
図16Dとは焦電素子18に遮断部材40から遮断部材43を形成した場合について示す。ここでは、説明の便宜のため、焦電素子18のY軸方向の長さを1とした場合について説明を続ける。
焦電素子18に遮断部材40から遮断部材43を形成しない場合について説明する。
図16Aに示すように、焦電素子18がZ軸方向に移動していない水平の場合には、有効面積はXで表される。
図16Bに示すように、焦電素子18が駆動していることによってZ軸の正の方向に角度θ移動している場合には、有効面積はXcosθで表される。したがって、焦電素子18がZ軸方向に移動していない場合と焦電素子18がZ軸の正の方向に角度θ移動している場合との有効面積の変化率は、Xcosθ/Xで表される。
焦電素子18に遮断部材40から遮断部材43を形成した場合について説明する。ここでは、一例として、焦電素子18がZ軸方向に移動していない場合に、X軸方向の長さがB、Y軸方向の長さが1、Z軸方向の長さがAである遮断部材がn(nは、n>0の整数)個形成されている場合について説明する。
図16Cに示すように、焦電素子18がZ軸方向に移動していない水平の場合には、有効面積はX-n×Bで表される。
図16Dに示すように、焦電素子18が駆動していることによってZ軸の正の方向に角度θ移動している場合には、有効面積はXcosθ-n(Asinθ+Bcosθ)で表される。したがって、焦電素子18がZ軸方向に移動していない場合と焦電素子18がZ軸の正の方向に角度θ移動している場合との有効面積の変化率は、((X-nB)cosθ-nAsinθ)/(X-nB)で表される。
【0071】
図17は、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの他の例を示す側面図である。
本実施形態の変形例4に係る焦電センサ1c2は、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、遮断部材40aから遮断部材43aと、支持部材17と、制御部CUとを備える。
焦電センサ1c2は、焦電センサ1と比較して、Z軸方向において焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に遮断部材40aから遮断部材43aが形成されている点で異なる。遮断部材40aから遮断部材43aの各々は、カンチレバー10がZ軸方向に移動していない場合において、一主面から赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状である。遮断部材40aから遮断部材43aは、被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する。遮断部材40aから遮断部材43aの一例は、断熱材、特に樹脂材、具体的にはシリコーン・エポキシ樹脂・永久レジスト(SU-8)等によって構成される。
本実施形態の変形例4に係る焦電センサ1c2の平面図は、
図14を適用できるため、ここでの説明は省略する。
遮断部材40aから遮断部材43aの各々は、四角柱の形状を有する。遮断部材40aから遮断部材43aの各々は、その長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向となるように形成される。カンチレバー10の駆動方向はZ軸方向であり、遮断部材40aから遮断部材43aの各々はその長手方向がY軸方向となるように形成される。
【0072】
(焦電センサの動作)
図18Aと
図18Bとは、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの動作を説明するための図である。ここでは、説明の便宜のため、焦電素子18のY軸方向の長さを1とした場合について説明を続ける。
焦電素子18に遮断部材40aから遮断部材43aを形成した場合について、一例として、焦電素子18がZ軸方向に移動していない水平の場合に、X軸方向において、焦電素子18に接している部分の長さがB、焦電素子18に接していない部分の長さがCであり、Y軸方向の長さが1、Z軸方向の長さがAである遮断部材がn(nは、n>0の整数)個形成されている場合について説明する。
図18Aに示すように、焦電素子18がZ軸方向に移動していない水平の場合には、有効面積はX-n×Cで表される。
図18Bに示すように、焦電素子18が駆動することによってZ軸の正の方向に角度θ移動している場合には、有効面積はXcosθ-n(Asinθ+Bcosθ)で表される。したがって、焦電素子18がZ軸方向に移動していない場合と焦電素子18がZ軸の正の方向に角度θ移動している場合との間で有効面積の変化率は、((X-nB)cosθ-nAsinθ)/(X-nB)で表される。これは、遮断部材を逆テーパ形状にしない場合と同じである。
遮断部材を逆テーパ形状にすることによって、入射光の角度を制限することができるため、感度を向上できる。
【0073】
図19は、本実施形態の変形例4に係る焦電センサの有効面積の変化の一例を示す図である。
図19は、遮断部材がある場合とない場合とについて、焦電素子18がZ軸方向に移動していない水平の場合と焦電素子18が駆動していることによってZ軸方向に移動している場合との間で有効面積の変化率を示す。
図19によれば、遮断部材がない場合において、焦電素子18をZ軸方向に移動させない水平の場合と焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に45度移動させた場合との間で有効面積の変化率は70.7[%]であり、焦電素子18をZ軸方向に移動させない水平の場合と焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に30度移動させた場合との間で有効面積の変化率は86.6[%]である。
遮断部材がある場合において、焦電素子18をZ軸方向に移動させない水平の場合と焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に45度移動させた場合との間で有効面積の変化率は48.8[%]であり、焦電素子18をZ軸方向に移動させない水平の場合と焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に30度移動させた場合との間で有効面積の変化率は71.1[%]である。
遮断部材を形成することによって、遮断部材を形成しない場合と比較して、遮断部材を形成しない焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に45度移動させた場合と同等の有効面積の変化率を、遮断部材を形成した焦電素子18を駆動することによってZ軸方向に30度移動させた場合に得ることができる。
【0074】
遮断部材40から遮断部材43の各々を焦電素子18より熱伝導率が低い材料(断熱材)によって構成することによって、遮断部材40から遮断部材43の各々から、焦電素子18への熱伝導を防ぐことができる。焦電素子18への熱による影響を低減できるので精度が向上する。
実施形態の変形例4において、遮断部材40から遮断部材43との各々と焦電素子18との間に、断熱材を備えるようにしてもよい。遮断部材40から遮断部材43の各々から、焦電素子18への熱伝導を防ぐことができる。このため、精度が向上する。
実施形態の変形例4において、前述した外郭体20に、焦電センサ1cを格納して使用してもよい。
前述した実施形態の変形例4では、一例として遮断部材40から遮断部材43の4個の遮断部材が焦電素子18に形成される場合について説明したがこの例に限られない。例えば、1個から3個の遮断部材を焦電素子18に形成してもよいし、5個以上の遮断部材を焦電素子18に形成してもよい。遮断部材40aから遮断部材43aの各々についても同様である。
遮断部材上に、遮断部材よりも熱電伝導率が高い膜が形成されていても良い。
【0075】
本実施形態の変形例4に係る焦電センサ1cによれば、焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に形成され、被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する遮断部材40から遮断部材43をさらに備える。
このように構成することによって、焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する遮断部材40から遮断部材43をさらに備えることができる。カンチレバー10が振動することによって被測定物から焦電素子18に入射される赤外光の有効面積を大きく変えることができるため、焦電素子18の被測定物から放射される赤外光の検出感度を向上できる。
焦電センサ1cにおいて、遮断部材40から遮断部材43は断熱材で構成される。このように構成することによって、遮断部材40から遮断部材43の各々を断熱材で構成できるため、遮断部材40から遮断部材43の各々から焦電素子18への熱伝導を防ぐことができる。焦電素子18への熱による影響を低減できるので精度が向上する。
焦電センサ1cにおいて、遮断部材40から遮断部材43の各々と焦電素子18との間に形成される断熱材をさらに備えてもよい。
このように構成することによって、遮断部材40から遮断部材43の各々と焦電素子18との間に断熱材を形成できるため、遮断部材40から遮断部材43の各々から焦電素子18への熱伝導を防ぐことができる。このため、精度が向上する。
焦電センサ1cにおいて、遮断部材40から遮断部材43の各々は、カンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向に形成される。
このように構成することによって、遮断部材40から遮断部材43の各々を、カンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に垂直な方向に形成できるため、遮断部材40から遮断部材43の各々を、小さいカンチレバー10の駆動で有効面積の変化を大きくすることができる。
本実施形態の変形例4に係る焦電センサ1c2によれば、遮断部材40aから遮断部材43aの各々は、カンチレバー10の一主面から赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状である。
このように構成することによって、遮断部材40aから遮断部材43aの各々を、カンチレバー10の一主面から赤外光の入射面に向かって断面積が広がる逆テーパ状にできるため、被測定物から焦電素子18に入射される赤外光の角度を制限できる。このため、焦電素子18の被測定物から放射される赤外光の感度を向上できる。
【0076】
(実施形態の変形例5)
[焦電センサ]
図20は、本実施形態の変形例5に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
図21は、本実施形態の変形例5に係る焦電センサを示す平面図である。
本実施形態の変形例5に係る焦電センサ1dは、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、遮断部材40から遮断部材43と、遮断部材45から遮断部材46と、接続部材50と、支持部材17と、制御部CUとを備える。
焦電センサ1dは、焦電センサ1と比較して、Z軸方向において焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に遮断部材40から遮断部材43と遮断部材45から遮断部材46とが形成されている点で異なる。遮断部材45から遮断部材46は、遮断部材40から遮断部材43と伝熱可能に接続され、さらに、遮断部材45から遮断部材46は、接続部材50と伝熱可能に接続される。接続部材50は、遮断部材40から遮断部材46の熱を排出する。遮断部材45から遮断部材46は、被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する。遮断部材45から遮断部材46の一例は、断熱材、特に樹脂材、具体的にはシリコーン・エポキシ樹脂・永久レジスト(SU-8)等によって構成される。
遮断部材45から遮断部材46の各々は、その長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように形成される。
図21において、カンチレバー10の駆動方向はZ軸方向であり、遮断部材45から遮断部材46の各々はその長手方向がX軸方向となるように形成される。
【0077】
また、遮断部材40から遮断部材46と支持部材17とは、接続部材50によって伝熱可能に接続される。このように構成することによって、遮断部材40から遮断部材46の熱を支持部材17に伝熱することができる。このため、カンチレバー10へ伝熱される熱量を低減できる。接続部材50は一個に限らず、複数であってもよい。
焦電センサ1dの動作は、
図15Aから
図15Dを参照して説明した内容を同じであるため、その説明を省略する。
実施形態の変形例5において、前述した外郭体20に、焦電センサ1dを格納して使用してもよい。
前述した実施形態の変形例5では、一例として遮断部材45から遮断部材46の2個の遮断部材が、長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように焦電素子18に形成される場合について説明したがこの例に限られない。例えば、1個の遮断部材を長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように焦電素子18に形成してもよいし、3個以上の遮断部材を長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように焦電素子18に形成してもよい。遮断部材上に、遮断部材よりも熱電伝導率が高い膜が形成され、その膜と接続部材が接続されていても良い。
【0078】
本実施形態の変形例5に係る焦電センサ1dによれば、遮断部材45と焦電センサ1の支持部材17としての土台とを伝熱可能に接続する一または複数の接続部材50をさらに備える。
このように構成することによって、遮断部材45と焦電センサ1dの土台とを伝熱可能に接続する一または複数の接続部材を備えることができるため、焦電素子18に遮断部材40から遮断部材43と遮断部材45から遮断部材46の熱を伝えずに排出できる。このため、精度が向上する。
焦電センサ1dにおいて、遮断部材45から遮断部材46は、カンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向に形成される。
このように構成することによって、遮断部材45から遮断部材46を、カンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向に形成できるため、垂直方向に形成された遮断部材40から遮断部材43を接続して一様に熱を排出できる。
【0079】
(実施形態の変形例6)
[焦電センサ]
図22は、本実施形態の変形例6に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
図23は、本実施形態の変形例6に係る焦電センサを示す平面図である。
本実施形態の変形例6に係る焦電センサ1eは、カンチレバー10と、焦電素子18と、駆動部19と、遮断部材40から遮断部材43と、遮断部材45aと、接続部材50と、支持部材17と、制御部CUとを備える。
焦電センサ1eは、焦電センサ1と比較して、Z軸方向において焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に遮断部材40から遮断部材43と遮断部材45aと接続部材50とが形成されている点で異なる。遮断部材45aは、遮断部材40から遮断部材43と伝熱可能に接続され、さらに、遮断部材40から遮断部材45aは、接続部材50と伝熱可能に接続される。接続部材50は、遮断部材40から遮断部材45aの熱を排出する。遮断部材45aのZ軸方向の長さは、遮断部材40から遮断部材43のZ軸方向の長さよりも短い。遮断部材40から遮断部材45aとは、被測定物から放射される赤外光を部分的に遮断する。遮断部材40から遮断部材45aとの一例は、断熱材、特に樹脂材、具体的にはシリコーン・エポキシ樹脂・永久レジスト(SU-8)等によって構成される。
遮断部材45aは、有効面積が変化する方向に平行なため駆動を阻害する、ただし、遮断部材45aは、遮断部材40から遮断部材43を一つにつないで排熱の効率を上げるのに寄与する。遮断部材45aを遮断部材40から遮断部材43よりも低背化(薄く)することで、排熱効率を維持しつつ駆動への影響を緩和できる。
遮断部材45aのZ軸方向の長さを、遮断部材40から遮断部材43のZ軸方向の長さよりも短くすることによって、カンチレバー10の駆動方向において、遮断部材45aによるカンチレバー10の駆動への影響の緩和できる。
【0080】
焦電センサ1eの動作は、
図15Aから
図15Dを参照して説明した内容を同じであるため、その説明を省略する。
実施形態の変形例6において、前述した外郭体20に、焦電センサ1eを格納して使用してもよい。
前述した実施形態の変形例6では、一例として遮断部材45aの1個の遮断部材が、長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように焦電素子18に形成される場合について説明したがこの例に限られない。例えば、複数の遮断部材45aを長手方向がカンチレバー10の固定端から自由端へ向かう方向に平行な方向となるように焦電素子18に形成してもよい。
【0081】
(実施形態の変形例7)
[焦電センサ]
図24は、本実施形態の変形例7に係る焦電センサの一例を示す側面図である。
図25は、本実施形態の変形例7に係る焦電センサを示す平面図である。
本実施形態の変形例7に係る焦電センサ1gは、カンチレバー10と、焦電素子18aと、駆動部19と、遮断部材40から遮断部材43と、支持部材17とを備える。
図24において、制御部CUは省略されている。
焦電センサ1gは、焦電センサ1と比較して、第1電極11aと、第2電極13aとがカンチレバー10の一主面に離間して形成され、第1電極11aと第2電極13aとカンチレバー10の上に焦電体12aが形成される点で異なる。第1電極11aと、第2電極13aとは電位が異なる。焦電素子18aは、第1電極11aと焦電体12aと第2電極13aとを含んで構成される。第1電極11aと第2電極13aとが焦電体12aの上に形成されてもよい。
さらに、焦電センサ1gは、Z軸方向において焦電素子18のカンチレバー10とは反対の面に遮断部材40から遮断部材43が形成されている。
【0082】
(焦電センサの製造方法)
本実施形態の変形例7に係る焦電センサの製造方法について説明する。
基板SUBの一主面にカンチレバー10を構成する樹脂材料が成膜される。樹脂材料の一例は、ポリイミドである。具体的には、基板SUBの一主面に、成膜装置を使用して、ポリイミドが成膜される。
樹脂材料に第1電極(11a、14)と第2電極13aとが形成される。第1電極(11a、14)の材料一例は白金であり、第2電極13aの材料の一例は白金である。具体的には、ポリイミド膜上に、成膜装置を使用して、白金が成膜される。
白金の成膜後、エッチング処理によって、第1電極と第2電極とが成型される。第1電極と第2電極とを同じ材料とすることによって、同じ工程で第1電極(11a、14)と第2電極13aとを形成できる。
第1電極11a上、焦電体12a上及び第2電極13a上に圧電材及び焦電材が成膜される。圧電材及び焦電材の一例は、PVDFである。具体的には、第1電極11a上、焦電体12a上及び第2電極13a上に、成膜装置を使用して、PVDFが成膜される。圧電材と焦電材とを同じ材料とすることによって、同じ工程で圧電体15と焦電体12aとを形成できる。
【0083】
PVDFの成膜後、エッチング処理によって、圧電体15と焦電体12aが成型されることによって、焦電素子18aが形成される。
圧電体15上に上部電極16が形成されることによって、駆動部19が形成される。
樹脂材料が成形されることによって、カンチレバー10が形成される。カンチレバー10を樹脂材料で構成することによって、カンチレバー10を柔軟にできるとともに、軽量化できる。カンチレバー10を柔軟かつ軽量化できるため、駆動を容易にできるとともに、破壊を起きにくくできる。
カンチレバー10から基板SUBが剥離される。
以後、カンチレバー10は支持部材17に設置される。配線の接続が行われ、焦電センサ1gの製造が終了する。
【0084】
(実施形態の変形例8)
(焦電センサの製造方法)
図26は、本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図27Aから
図27Dは、本実施形態の変形例8に係る焦電センサの製造方法を説明するための図である。
図26と
図27Aから
図27Dとを参照して、焦電センサ1の製造方法を説明する。
(ステップS1a)
焦電センサ1が作成される(
図27A)。
(ステップS2a)
焦電センサ1のZ軸のプラス側に外郭体20が用意される(
図27B)。外郭体20のZ軸方向のプラス側の面には、赤外線が透過しない遮光部材が形成されている。赤外線遮光部材の一例は、反射率の高い光沢のある金属、酸化チタン・酸化クロム等の赤外線吸収率の高い金属酸化物、赤外線波長8μm以上で透過率が低くなるガラスなどである。焦電センサ1に外郭体20が接合される(
図27C)。
(ステップS3a)
外郭体20が接合された焦電センサ1において、カンチレバー10を基準として、Z軸のプラス方向からレーザLAを照射し、遮光部材の一部が取り除かれることによって赤外線透過窓20Wが形成される。
仮に、外郭体20を焦電センサ1に接合する前に遮光部材を取り除くことによって赤外線透過窓20Wを形成した場合、外郭体20を焦電センサ1に接合する場合に、外郭体20とカンチレバー10との位置決めが必要となる。ここで、赤外線透過窓20Wの面積が広い場合には、焦電素子18の温度が上昇し、感度が低下するおそれがある。また、焦電素子18の可動部分と赤外線透過窓20Wとの位置がずれると、焦電素子18の駆動による有効面積の変化が小さくなる。本実施形態の変形例8では、焦電センサ1に外郭体20を接合した後に、赤外線透過窓20Wが形成されるため、個別のカンチレバーに対して対応する開口部の位置決めができるため、歩留まりを向上できる。
【0085】
また、実際のプロセスでは、外郭体20を焦電センサ1に接合する場合に、カンチレバー10に対して外郭体20の位置がずれるおそれがある。カンチレバー10を基準にして赤外線透過窓20Wを形成することによって、カンチレバー10に対して外郭体20の位置ずれを吸収できる。
前述した本実施形態の変形例10においては、遮光部材が外郭体20の外部に形成される場合について説明したがこの例に限られない。例えば、遮光部材が外郭体20の内部に形成されるようにしてもよい。この場合、遮光部材にTiなどのゲッター材を併用してもよい。このように構成することによって、遮光部材除去時にゲッター材が残留気体を吸着する事によって外郭体20の内部の真空度を向上できる。
【0086】
図28は、本実施形態の変形例9に係る焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
図28は、複数の焦電センサ1が製造された焦電センサ基板SSと複数の外郭体20が形成された外郭体基板OSとを使用して製造する場合を示す。この場合、焦電センサ基板SSに外郭体基板OSが接合される(貼り合わされる)。
貼り合わせ後の基板では、焦電センサ1と外郭体20との位置ずれが大きい部分と小さい部分とが存在する場合がある。
図29Aは、本実施形態の変形例9に係る焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
図29Aは、焦電センサ基板SSに外郭体基板OSが接合された後に、赤外線透過窓20Wが形成される場合を示す。この場合、焦電センサ1の受光部分(焦電素子18)と赤外線透過窓20Wとの位置決めをすることなく、焦電素子18の上部に赤外線透過窓20Wを形成できる。
図29Bは、焦電センサの製造方法の一例を説明するための図である。
図29Bは、外郭体20を焦電センサ1に接合する前に遮光部材を取り除くことによって赤外線透過窓20Wを形成した場合を示す。この場合、外郭体20を焦電センサ1に接合するために、赤外線透過窓20Wとカンチレバー10との位置決めが必要となる。ここで、赤外線透過窓20Wの位置がずれていた場合には、焦電素子18の駆動による有効面積が変わってしまう。その結果、焦電素子18の駆動による有効面積の変化が小さくなり、感度が変わる。
本実施形態の変形例9では、一例として焦電センサ1の製造方法について説明したが、前述した全ての焦電センサに適用できる。
本実施形態の変形例9に係る焦電センサの製造方法によれば、外郭体20の内部にカンチレバー10を設置する工程と、カンチレバー10の位置に基づいて外郭体20に赤外線透過窓20Wを部分的に開口させる工程とを有する。
このように構成することによって、外郭体20に赤外線透過窓20Wを部分的に開口させて、開口部とカンチレバー10とを位置合わせする場合と比較して、カンチレバー10と外郭体20の開口部とを個別のカンチレバーに対して対応する開口部の位置決めができるため、歩留まりを向上できる。
【0087】
以上、本実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、開示の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。例えば、本実施形態と本実施形態の変形例1から実施形態の変形例8の各々が適宜組み合わされてもよい。
例えば、上述した制御部CU、カンチレバー駆動部31、センサ信号処理部32、温度情報出力部33の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0088】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してコンピュータプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0089】
1、1b、1b2、1b3、1c、1c2、1d、1e、1g…焦電センサ、 3…焦電センサシステム、 10、10a、10b2、10b3…カンチレバー、 10M…樹脂材料、 11、11a…下部電極、 11M…白金、 12、12a…焦電体、 12M…焦電材、 13、13a…上部電極、 13M…金、 14、14b-1、14b-2、14b2-1、14b2-2、14b3-1、14b3-2…下部電極、 14M…白金、 15、15b-1、15b-2、15b2-1、15b2-2、15b3-1、15b3-2…圧電体、 15M…圧電材、 16、16b-1、16b-2、16b2-1、16b2-2、16b3-1、16b3-2…上部電極、 16M…金、 17…支持部材、 18、18a…焦電素子、 19、19b、19b-1、19b-2、19b2、19b2-1、19b2-2、19b3、19b3-1、19b3-2、…駆動部、 20…外郭体、 20W…赤外線透過窓、 22…遮光部、 30…センサアレイ部、 31…カンチレバー駆動部、 32…センサ信号処理部、 33…温度情報出力部、 34…電源、 40、40a、41、41a、42、42a、43、43a、45、45a、46…遮断部材