(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091041
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】液晶表示素子、光変調器、液晶表示素子用液晶組成物及び液晶表示素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20220613BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20220613BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220613BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20220613BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20220613BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220613BHJP
C08F 222/18 20060101ALI20220613BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
G02F1/1334
G02F1/13 500
G02F1/1337
G02F1/1343
C09K19/38
C08F222/18
C08F2/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203726
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 英夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 陽生
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 宣
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 浩史
【テーマコード(参考)】
2H092
2H189
2H290
4H027
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2H092GA13
2H092GA14
2H092JA24
2H092PA01
2H092PA02
2H092PA03
2H092PA08
2H092PA11
2H092QA09
2H189AA04
2H189AA35
2H189AA64
2H189AA70
2H189CA08
2H189CA13
2H189DA07
2H189DA14
2H189EA04X
2H189EA06X
2H189FA16
2H189GA05
2H189JA07
2H189JA10
2H189JA14
2H189KA17
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA07
2H189LA10
2H189LA14
2H189LA17
2H189LA20
2H290BB46
2H290BF13
2H290BF23
2H290BF52
2H290CA31
4H027BA01
4H027BA12
4H027BC05
4H027BD02
4H027BD05
4H027BD07
4H027BD11
4H027BD24
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4H027CQ01
4H027CQ05
4H027CR05
4H027CT01
4H027CT05
4H027CU05
4H027CW01
4J011PA23
4J011PC02
4J100AL66P
4J100AL66Q
4J100AL67R
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BB07P
4J100BB07Q
4J100BB07R
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC43R
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA05
4J100JA39
(57)【要約】
【課題】低駆動電圧、高速応答を実現しつつ、曲げなどの変形が生じた場合にも良好な表示を実現することができる液晶表示素子を提供する。
【解決手段】液晶表示素子10Aは、電極11,12を有する基材13,14と、基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物を含有する液晶組成物を含む液晶層15及び重合性液晶化合物の硬化物で構成された高分子スペーサー16とを備える。液晶層15が、重合性液晶化合物の硬化物で構成され且つ基材13の法線方向に一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワーク17を有し、高分子スペーサー16が一軸性の屈折率異方性の光学軸を有している。高分子スペーサー16の光軸方向D
psが、ポリマーネットワーク17の光軸方向D
pnと一致し、且つ基材13,14上のラビング処理された配向膜20,21によって配向した液晶化合物中の低分子液晶18の配向容易軸A
LCと一致する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の基材に電極を有する一対の基材と、前記一対の基材の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物を含有する液晶組成物を含む液晶層及び重合性液晶化合物の硬化物で構成された高分子スペーサーとを備え、
前記液晶層が、重合性液晶化合物の硬化物で構成され且つ前記基材の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークを有し、
前記高分子スペーサーが、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有し、
前記高分子スペーサーの光軸方向が、前記ポリマーネットワークの光軸方向と略一致し、且つ、前記基材上のラビング処理された配向膜又は光配向膜によって配向した前記液晶化合物中の低分子液晶の配向容易軸と略一致するか、又は、
前記高分子スペーサーの光軸方向が、前記ポリマーネットワークの光軸方向と略一致し、且つ、前記基材の法線方向に対して、前記基材上にフィッシュボーン状パターンを有する電極を備える液晶表示素子における前記低分子液晶の配向容易軸傾斜角度θの2θ以内に傾斜している、液晶表示素子。
【請求項2】
前記一対の基材に設けられた一対の電極に電圧を印加していない状態で、前記ポリマーネットワークが、前記基材の法線方向からの光に対して光散乱を実質的に生じない、請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記高分子スペーサーが、前記一対の基材を連結している、請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記ポリマーネットワークが、前記一対の基材を連結している、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記低分子液晶の配向容易軸傾斜角度θが、前記基材の法線方向に対して0.1°以上5°以下である、請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記液晶層を構成する液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が、600ppm以下である、請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記重合性液晶化合物が、少なくとも2つの重合性基を有する、請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記重合性液晶化合物は、下記一般式(P)で表される重合性液晶化合物を更に1種又は2種以上含有する、請求項7に記載の液晶表示素子。
【化1】
(式中、
Z
p1は、フッ素原子、シアノ基、水素原子、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルキル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルコキシ基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニルオキシ基又は-Sp
p2-R
p2を表し、
R
p1及びR
p2は、それぞれ独立して、以下の式(R-I)~式(R-VIII):
【化2】
(式中、
*でSp
p1又はSp
p2と結合し、
R
2~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5個のアルキル基又は炭素原子数1~5個のハロゲン化アルキル基を表し、
Wは、単結合、-O-又はメチレン基を表し、
Tは、単結合又は-COO-を表し、
p、t及びqは、それぞれ独立して、0、1又は2を表す。)
のいずれかを表し、
Sp
p1及びSp
p2は、それぞれ独立して、スペーサー基又は単結合を表し、
L
p1及びL
p2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CO-、-C
2H
4-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH
2-、-CH
2OCOO-、-OCH
2CH
2O-、-CO-NR
a-、-NR
a-CO-、-SCH
2-、-CH
2S-、-CH=CR
a-COO-、-CH=CR
a-OCO-、-COO-CR
a=CH-、-OCO-CR
a=CH-、-COO-CR
a=CH-COO-、-COO-CR
a=CH-OCO-、-OCO-CR
a=CH-COO-、-OCO-CR
a=CH-OCO-、-(CH
2)
z-C(=O)-O-、-(CH
2)
z-O-(C=O)-、-O-(C=O)-(CH
2)
z-、-(C=O)-O-(CH
2)
z-、-CH
2(CH
3)C-C(=O)-O-、-CH
2(CH
3)C-O-(C=O)-、-O-(C=O)-C(CH
3)CH
2、-(C=O)-O-C(CH
3)-CH
2、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CF
2CH
2-、-CH
2CF
2-、-CF
2CF
2-又は-C≡C-(式中、R
aは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、zは、1~4の整数を表す。)を表し、
M
p1及びM
p2は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、アントラセン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、インダン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが、M
p1及びM
p2は無置換であるか又は炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は-Sp
p1-R
p1で置換されていてもよく、
M
p3は、単結合又は以下の式(i-13)~(ix-13):
【化3】
(式中、*でL
p2又はZ
p1と結合し、**でL
p2と結合する。)
のいずれかを表し、
m
p2は、それぞれ独立して0、1又は2を表し、
m
p1及びm
p3は、それぞれ独立して1、2又は3を表し、
Z
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Sp
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Sp
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、L
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、M
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記液晶組成物は、重合禁止剤及び任意に重合開始剤を含有し、
前記液晶組成物中の前記重合禁止剤の含有量が、0.3質量%以上10質量%以下である、請求項7又は8に記載の液晶表示素子。
【請求項10】
前記重合禁止剤は、キノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなる、請求項9に記載の液晶表示素子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶表示素子で構成され、視認側から見て他の液晶表示素子の背面に配置される、光変調器。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶表示素子又は請求項11に記載の光変調器に用いられる、液晶表示素子用液晶組成物。
【請求項13】
少なくとも一方の基材に電極を有する一対の基材の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物、重合性液晶化合物及び重合禁止剤を含有する重合性液晶組成物を狭持させる工程と、
光学マスクを用いてエネルギー線をパターン照射することにより、前記エネルギー線が照射された領域で、前記重合性液晶組成物に含まれる前記重合性液晶化合物を硬化させて、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する高分子スペーサーを形成する工程と、
前記光学マスクを取り除いてエネルギー線を照射することにより、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の領域で、前記重合性液晶組成物に残存する前記重合性液晶化合物を硬化させて、前記基材の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークを形成する工程と、
を有する、液晶表示素子の製造方法。
【請求項14】
高分子スペーサーを形成する工程において、前記光学マスクの開口部に対応する領域での前記重合禁止剤の作用による前記重合性液晶化合物の誘導時間が経過した後であって、前記光学マスクに対応する領域以外の領域での前記重合性液晶化合物の前記誘導時間が経過するまでに、エネルギー線のパターン照射を終了する、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項15】
前記重合性液晶組成物中の前記重合禁止剤の含有量が、0.3質量%以上10質量%以下である、請求項14に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項16】
前記重合禁止剤が、キノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなる、請求項14又は15に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項17】
エネルギー線をパターン照射する前の状態における、前記重合性液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、
前記高分子スペーサーを形成した後の状態における、前記重合性液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が1質量%以上6質量%以下であり、
前記ポリマーネットワークを形成した後の状態における、液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が600ppm以下である、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項18】
前記ポリマーネットワークを形成する際のエネルギー線の照射強度が、高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも大きい、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項19】
前記重合性液晶組成物を狭持させる工程の前に、前記基材上に配置した配向膜にラビング処理を施して、前記基材上にラビング処理された配向膜を形成する工程、又は光配向膜を形成する工程を有し、
前記配向膜を構成する材料の硬化温度が、前記基材を構成する材料のガラス転移温度Tgよりも低い、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項20】
一対の基材に設けられた一対の電極のうちの少なくとも一方が、フィッシュボーン状の電極パターンを有し、
前記高分子スペーサーを形成する工程の後であって前記ポリマーネットワークを形成する工程の前に、前記一対の電極間に電圧を印加しながらエネルギー線を照射して前記液晶化合物に配向容易軸傾斜角度を付与する工程を有し、
前記ポリマーネットワークを形成する工程において、前記エネルギー線を照射することにより、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の前記領域に前記ポリマーネットワークを形成する、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項21】
前記高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも大きい照射強度で前記ポリマーネットワークを形成した後、前記高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも小さい照射強度で、且つ当該エネルギー線よりも大きい照射量で、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の前記領域に残存する重合性液晶化合物に、エネルギー線を照射する工程を更に有する、請求項13に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、光変調器、液晶表示素子用液晶組成物及び液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負の誘電率異方性を有する液晶材料にモノマーを添加した垂直配向(VAモード)のPSA(Polymer Sustained Alignment)-LCD用液晶は、テレビ用に広く使用されており、着実な需要が見込まれている。一方、有機ELや、カンタムドット(QD)、マイクロLED等の新しい技術との競合により、PSA-LCDには、低コスト化の他に更なる広色域表示、高コントラスト化、高速応答化等の高性能化が求められており、このようなLCDの表示特性を向上させる技術が盛んに行われている。
【0003】
モバイル用途では、スマートフォンやタブレット等へ小型のLCDが用いられており、テレビ用LCDとは異なる技術が要求される。特に、タッチパネルからの外圧に対する変形による高い配向安定性が求められ、平行配向の高い配向安定性のIPSモードLCDが普及している。この分野では、同様に高速応答化、軽量化や高解像度の他に、近年の技術動向としてスマートフォン向けに折り曲げられるフレキシブルディスプレイの技術開発が行われている。液晶表示素子は、折り曲げ変形に因る配向の乱れで表示が乱れ易いため、この変形に因る表示の乱れが生じない有機EL素子が有望視されている。しかしながら、有機EL素子には耐久性、輝度、製造コスト等の観点で課題があることから、曲げなどの変形に因る表示の乱れが生じない液晶表示素子が望まれている。
【0004】
従来の液晶表示素子としては、例えば、高分子壁で液晶領域が囲まれた表示媒体が一対の基板の間に挟持された液晶表示素子であって、液晶材料と光重合性樹脂とを少なくとも含み、水分量を0.3%以下にした混合材料を、該一対の基板の間に注入して光照射することにより形成した該表示媒体を備える液晶表示素子がある(特許文献1)。
【0005】
また、電極を有する少なくとも一方が透明な一対の基板間に、高分子壁により液晶領域を取り囲んで表示媒体を挟持してなる液晶表示素子において、上記表示媒体は、液晶、光重合性樹脂、光重合性開始剤、光重合性熱重合禁止剤を少なくとも有する液晶表示素子がある(特許文献2)。
【0006】
また、少なくとも一方が透明な一対の基板と、該一対の基板の間に狭持され、高分子壁に実質的に包囲された複数の液晶領域を有する液晶層と、該液晶層の注入孔領域を除く周辺領域を包囲し、該一対の基板を互いに接着するシール剤と、該注入孔を封止する封止剤と、を有する液晶表示素子であって、該高分子壁は紫外線硬化型樹脂を含み、該封止剤は可視光硬化型樹脂を含む液晶表示素子がある(特許文献3)。
【0007】
また、上記のPSA方式では大幅な応答速度高速化が難しくなってきていることから、配向膜上だけでなく液晶領域にもポリマーネットワークを形成したNPS方式の研究が盛んに行われている。従来のNPS(Nano-Phase Separated)-LCDに用いられる重合性液晶化合物としては、例えば、一般式(LC3)~一般式(LC5)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を一種又は二種以上含む液晶組成物と、一般式(V)及び一般式(VI)(式中の全ての1,4-フェニレン基は、任意の水素原子が-CH3、-OCH3、フッ素原子、又はシアノ基に置換されていてもよい。)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の重合性化合物を、これらの合計に対して前記重合性化合物を1質量%以上40質量%未満となる割合で含有することを特徴とする重合性液晶組成物が提案されている(特許文献4)。
【0008】
また、従来のNPS-LCDとして、少なくとも一方に電極を有する2枚の透明基板間に挟持した、液晶化合物を含有する液晶組成物中に重合性化合物の重合体又は共重合体を含有し、重合体又は共重合体の含有量が液晶組成物及び重合体又は共重合体の合計の質量の1質量%以上40質量%未満であり、該重合体又は共重合体がポリマーネットワークを形成し、該ポリマーネットワークが一軸性の屈折率異方性を有し、該ポリマーネットワークの光軸方向又は配向容易軸方向と低分子液晶の配向容易軸方向が同一方向であり、前記液晶組成物中の液晶化合物が液晶セル基板にある配向膜の配向方向に対して平行配向しており、かつ、前記液晶化合物が、一般式(LC3)~一般式(LC5)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする液晶表示素子が提案されている(特許文献5)。
【0009】
また、従来の他のNPS-LCDとして、少なくとも一方の基板に電極を有する一対の基板と、前記一対の基板の間に、液晶組成物を含有する液晶層及び高分子スペーサーとを備え、前記高分子スペーサーが、少なくとも1つの重合性基を有する化合物及び重合禁止剤を含有する重合性組成物の硬化物である液晶表示素子が提案されている(特許文献6)。本開示では、実施例において、モノマー濃度が20%以上であり、且つ単官能重合性液晶モノマーを含有している液晶組成物が用いられている。また、ポリマーネットワークが形成されると駆動電圧上昇、透過率低下が生じ、好ましくないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10-082982号公報
【特許文献2】特開平09-090326号公報
【特許文献3】特開平09-244004号公報
【特許文献4】特許第6439990号公報
【特許文献5】特許第6090482号公報
【特許文献6】特開2019-203970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、液晶表示素子に曲げ変形が生じると、側面視において山部や谷部が形成される。このとき、山部及び谷部の湾曲部分で、曲率中心を基準として内側の基板と外側の基板にせん断力が発生し、その結果、山部では圧縮力によって基板同士の間隔が狭くなり、谷部ではその逆向きの力が生じて基板同士の間隔が広くなる。このため、上記山部には通常時よりもセル厚の薄い薄肉部分が現れる。よって、上記のような液晶表示素子において基板間に一般的な高分子スペーサーが設けられていても、厚み方向の強度が十分とは言えず、曲げ変形に因ってセル厚が変形してしまい、表示の乱れが生じるという懸念がある。また、両基板を接合する高分子スペーサーの近傍において低分子液晶の配向が乱れ、この配向乱れに起因して表示の乱れが生じる懸念がある。
【0012】
本発明は、低駆動電圧及び高速応答を実現しつつ、曲げなどの変形が生じた場合であっても良好な表示を実現することができる液晶表示素子、光変調器、液晶表示素子用液晶組成物及び液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、一対の基板間に一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する高分子スペーサーを形成すると共に、液晶層に基材の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークを形成し、更に高分子スペーサーの光軸方向とポリマーネットワークの光軸方向を略一致させることにより、高速応答と、高分子スペーサーを透過する漏れ光や該高分子スペーサー近傍の漏れ光を抑制して表示画素との黒レベルを一致させることが可能になり高コントラストの表示を実現すると共に、曲げなどの外力が加えられた際に画素表示部分に形成したポリマーネットワークと高分子スペーサーの作用により一対の基板間の間隔の変動を抑制でき、液晶の流動による低分子液晶の配向乱れを抑制し、良好な表示品質を維持できることを見出した。また、ポリマーネットワークの光軸方向を低分子液晶の配向容易軸と略一致させるか、或いは低分子液晶の配向容易軸傾斜角度θに対して2θ以内に傾斜させることにより、視野角を広くすることができ、可撓性が高い液晶表示素子で、且つ低駆動電圧を維持しつつ高速応答を実現できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は以下の構成を提供する。
[1]少なくとも一方の基材に電極を有する一対の基材と、前記一対の基材の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物を含有する液晶組成物を含む液晶層及び重合性液晶化合物の硬化物で構成された高分子スペーサーとを備え、
前記液晶層が、重合性液晶化合物の硬化物で構成され且つ前記基材の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークを有し、
前記高分子スペーサーが、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有し、
前記高分子スペーサーの光軸方向が、前記ポリマーネットワークの光軸方向と略一致し、且つ、前記基材上のラビング処理された配向膜又は光配向膜によって配向した前記液晶化合物中の低分子液晶の配向容易軸と略一致するか、又は、
前記高分子スペーサーの光軸方向が、前記ポリマーネットワークの光軸方向と略一致し、且つ、前記基板の法線方向に対して、前記基材上にフィッシュボーン状パターンを有する電極を備える液晶表示素子における前記低分子液晶の配向容易軸傾斜角度θの2θ以内に傾斜している、液晶表示素子。
【0015】
[2]前記一対の基材に設けられた一対の電極に電圧を印加していない状態で、前記ポリマーネットワークが、前記基材の法線方向からの光に対して光散乱を実質的に生じない、上記[1]に記載の液晶表示素子。
【0016】
[3]前記高分子スペーサーが、前記一対の基材を連結している、上記[1]又は[2]に記載の液晶表示素子。
【0017】
[4]前記ポリマーネットワークが、前記一対の基材を連結している、上記[1]~[3]のいずれかに記載の液晶表示素子。
【0018】
[5]前記低分子液晶の配向容易軸傾斜角度θが、前記基材の法線方向に対して0.1°以上5°以下である、上記[1]に記載の液晶表示素子。
【0019】
[6]前記液晶層を構成する液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が、600ppm以下である、上記[1]に記載の液晶表示素子。
【0020】
[7]前記重合性液晶化合物が、少なくとも2つの重合性基を有する、上記[1]に記載の液晶表示素子。
【0021】
[8]前記重合性液晶化合物は、下記一般式(P)で表される重合性液晶化合物を更に1種又は2種以上含有する、上記[7]に記載の液晶表示素子。
【化1】
(式中、
Z
p1は、フッ素原子、シアノ基、水素原子、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルキル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルコキシ基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニルオキシ基又は-Sp
p2-R
p2を表し、
R
p1及びR
p2は、それぞれ独立して、以下の式(R-I)~式(R-VIII):
【化2】
(式中、
*でSp
p1又はSp
p2と結合し、
R
2~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5個のアルキル基又は炭素原子数1~5個のハロゲン化アルキル基を表し、
Wは、単結合、-O-又はメチレン基を表し、
Tは、単結合又は-COO-を表し、
p、t及びqは、それぞれ独立して、0、1又は2を表す。)
のいずれかを表し、
Sp
p1及びSp
p2は、それぞれ独立して、スペーサー基又は単結合を表し、
L
p1及びL
p2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CO-、-C
2H
4-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH
2-、-CH
2OCOO-、-OCH
2CH
2O-、-CO-NR
a-、-NR
a-CO-、-SCH
2-、-CH
2S-、-CH=CR
a-COO-、-CH=CR
a-OCO-、-COO-CR
a=CH-、-OCO-CR
a=CH-、-COO-CR
a=CH-COO-、-COO-CR
a=CH-OCO-、-OCO-CR
a=CH-COO-、-OCO-CR
a=CH-OCO-、-(CH
2)
z-C(=O)-O-、-(CH
2)
z-O-(C=O)-、-O-(C=O)-(CH
2)
z-、-(C=O)-O-(CH
2)
z-、-CH
2(CH
3)C-C(=O)-O-、-CH
2(CH
3)C-O-(C=O)-、-O-(C=O)-C(CH
3)CH
2、-(C=O)-O-C(CH
3)-CH
2、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CF
2CH
2-、-CH
2CF
2-、-CF
2CF
2-又は-C≡C-(式中、R
aは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、zは、1~4の整数を表す。)を表し、
M
p1及びM
p2は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、アントラセン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、インダン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが、M
p1及びM
p2は無置換であるか又は炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は-Sp
p1-R
p1で置換されていてもよく、
M
p3は、単結合又は以下の式(i-13)~(ix-13):
【化3】
(式中、*でL
p2又はZ
p1と結合し、**でL
p2と結合する。)
のいずれかを表し、
m
p2は、それぞれ独立して0、1又は2を表し、
m
p1及びm
p3は、それぞれ独立して1、2又は3を表し、
Z
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Sp
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Sp
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、L
p1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、M
p2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
[9]前記液晶組成物は、重合禁止剤及び任意に重合開始剤を含有し、
前記液晶組成物中の前記重合禁止剤の含有量が、0.3質量%以上10質量%以下である、上記[7]又は[8]に記載の液晶表示素子。
【0023】
[10]前記重合禁止剤は、キノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなる、上記[9]に記載の液晶表示素子。
【0024】
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の液晶表示素子で構成され、視認側から見て他の液晶表示素子の背面に配置される、光変調器。
【0025】
[12]上記[1]~[10]のいずれかに記載の液晶表示素子又は上記[11]に記載の光変調器に用いられる、液晶表示素子用液晶組成物。
【0026】
[13]少なくとも一方の基材に電極を有する一対の基材の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物、重合性液晶化合物及び重合禁止剤を含有する重合性液晶組成物を狭持させる工程と、
光学マスクを用いてエネルギー線をパターン照射することにより、前記エネルギー線が照射された領域で、前記重合性液晶組成物に含まれる前記重合性液晶化合物を硬化させて、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する高分子スペーサーを形成する工程と、
前記光学マスクを取り除いてエネルギー線を照射することにより、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の領域で、前記重合性液晶組成物に残存する前記重合性液晶化合物を硬化させて、前記基材の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークを形成する工程と、
を有する、液晶表示素子の製造方法。
【0027】
[14]高分子スペーサーを形成する工程において、前記光学マスクの開口部に対応する領域での前記重合禁止剤の作用による前記重合性液晶化合物の誘導時間が経過した後であって、前記光学マスクに対応する領域以外の領域での前記重合性液晶化合物の前記誘導時間が経過するまでに、エネルギー線のパターン照射を終了する、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0028】
[15]前記重合性液晶組成物中の前記重合禁止剤の含有量が、0.3質量%以上10質量%以下である、上記[14]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0029】
[16]前記重合禁止剤が、キノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなる、上記[14]又は[15]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0030】
[17]エネルギー線をパターン照射する前の状態における、前記重合性液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、
前記高分子スペーサーを形成した後の状態における、前記重合性液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が1質量%以上6質量%以下であり、
前記ポリマーネットワークを形成した後の状態における、液晶組成物中の前記重合性液晶化合物の含有量が600ppm以下である、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0031】
[18]前記ポリマーネットワークを形成する際のエネルギー線の照射強度が、前記高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも小さい、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0032】
[19]前記液晶組成物を狭持させる工程の前に、前記基材上に配置した配向膜にラビング処理を施して、前記基材上にラビング処理された配向膜を形成する工程、又は光配向膜を形成する工程を有し、
前記配向膜を構成する材料の硬化温度が、前記基材を構成する材料のガラス転移温度Tgよりも低い、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0033】
[20]一対の基材に設けられた一対の電極のうちの少なくとも一方が、フィッシュボーン状の電極パターンを有し、
前記高分子スペーサーを形成する工程の後であって前記ポリマーネットワークを形成する工程の前に、前記一対の電極間に電圧を印加しながらエネルギー線を照射して前記液晶化合物に配向容易軸傾斜角度を付与する工程を有し、
前記ポリマーネットワークを形成する工程において、前記エネルギー線を照射することにより、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の前記領域に前記ポリマーネットワークを形成する、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【0034】
[21]前記高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも大きい照射強度で前記ポリマーネットワークを形成した後、前記高分子スペーサーを形成する際のエネルギー線の照射強度よりも小さい照射強度で、且つ当該エネルギー線よりも大きい照射量で、前記高分子スペーサーが形成された領域以外の前記領域に残存する重合性液晶化合物に、エネルギー線を照射する工程を更に有する、上記[13]に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、低駆動電圧及び高速応答を実現しつつ、曲げなどの変形が生じた場合であっても良好な表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施形態に係る液晶表示素子の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態に係る液晶表示素子の他の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Bにおけるフィッシュボーン状パターンを有する電極の構成の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1Aの液晶表示素子を湾曲させた状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る光変調器の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る液晶表示素子の製造方法の一例に示す工程図である。
【
図5】
図5は、
図4における工程(A)の一例を説明するための部分断面図である。
【
図6】
図5は、
図4における工程(B)の一例を説明するための部分断面図である。
【
図7】
図7は、
図4の工程(B)で用いられる光学マスクの一例を示す平面図である。
【
図8A】
図8Aは、
図4の工程(B)において、液晶組成物が重合禁止剤を含有する場合における重合性液晶化合物の誘導時間を説明するためのグラフである。
【
図8B】
図8Aは、
図4の工程(B)において、エネルギー線のパターン照射を終了するタイミングを説明するためのグラフである。
【
図9】
図9は、
図4における工程(C)の一例を説明するための部分断面図である。
【
図10A】
図10Aは、比較例1で得られた液晶セルのラビング方向を斜め45度になるように配置した際の駆動電圧OFF状態の偏光顕微鏡写真である。
【
図10B】
図10Bは、比較例1で得られた液晶セルのラビング方向を90度になるように配置した際の駆動電圧OFF状態の偏光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
[液晶表示素子の構成]
図1Aは、本発明の実施形態に係る液晶表示素子の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
図1Aに示すように、液晶表示素子10Aは、電極11A,12Aを有する一対の基材13,14と、一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物を含有する液晶組成物を含む液晶層15及び該液晶組成物に含有されている重合性液晶化合物の硬化物で構成された高分子スペーサー16とを備えている。この液晶表示素子10Aの高分子スペーサー16以外は、典型的にはNPS-LCDである。
【0039】
また、液晶表示素子10Aは、特に、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、PSVAモード、PSAモード、IPS(イン・プレーン・スイッチング)モード、VA-IPSモード、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)モード又はECBモード用液晶表示素子にも適用できる。
【0040】
一対の基材13,14は、可撓性を有するものであることが好ましい。本実施形態の液晶表示素子10Aは、重合性液晶組成物の硬化物である高分子スペーサー16が一対の基材13,14の間の間隔を一定に保つ役割を果たし、高分子スペーサー16の両端が一対の向き合う基板の内側を連結するので、一対の基材13,14が可撓性を有する場合に、湾曲時に表示画像の品位低下を防止することができ、かつ、低電圧駆動性及びコントラスト比に優れるものとすることができる。
【0041】
一対の基材13,14は、同じ素材で構成されてもよいし、互いに異なる材料で構成されてもよい。一対の基材13,14は、プラスチック基材であってもよいし、可撓性を有するガラス基材であってもよい。また、一対の基材13,14のうちの一方がプラスチック基材で、他方が可撓性を有するガラス基材であってもよい。例えば、一対の基材13,14がプラスチック基材である場合、ロールトゥロール法による製造方法に適し且つ軽量化あるいはフレキシブル化に適しており好ましい。
【0042】
一対の基材13,14は、透明性を有することが好ましく、透明であることがより好ましい。更に、複屈折が無いことがより好ましい。一対の基材13,14がプラスチック基材である場合、プラスチックの材料としては、例えばセルロ-ス、トリアセチルセルロ-ス、ジアセチルセルロ-ス等のセルロ-ス誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレ-ト等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコ-ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレ-ト、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、などから選択される1種又は複数種が挙げられる。また、一対の基材13,14のうちの一方が透明性を有する材料で構成され、他方がシリコン等の不透明性を有する材料で構成されてもよい。
【0043】
電極11A,12Aの少なくとも一方は、透明電極であることが好ましい。例えば、透明な電極を有する基材として、プラスチック板等の透明基材上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより、透明電極層を有する透明基材を得ることができる。
【0044】
液晶表示素子10Aでは、一対の基材13,14に電極11A,12Aが設けられているが、これに限らず、一対の基材13,14のうちの一方に電極11A又は電極12Aが設けられてもよい。又、複数に区切られた画素電極と対極の共通電極であっても良く、画素電極にTFT(Thin Film Transistor)等の有機、又は無機半導体素子が接続されていてもよい。更に、画素電極の形状がフィッシュボーン型電極や櫛型電極であってもよい。
【0045】
液晶層15は、少なくとも負の誘電率異方性の液晶化合物を含有している。また、液晶層15は、上記液晶組成物と重合性液晶化合物の硬化物で構成され且つ基材13(或いは基材14)の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワーク17を有している。
「ポリマーネットワークが一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する」とは、ポリマーネットワークを形成している重合性液晶化合物が、それらの高分子鎖をなすメソゲン基の長軸が一定の方向に揃った状態で配列し、電圧が印加していない状態で低分子液晶18が一定方向へ配向した状態の光学軸と略一致する。その結果、重合性液晶化合物で形成されるポリマーネットワークの複屈折が示す光学軸が実質的に低分子液晶の複屈折の光学軸と重なって1つの値となるような光線の進行方向が存在していることを意味する。
【0046】
液晶層15を構成する液晶組成物中の上記重合性液晶化合物の含有量は、600ppm以下であるのが好ましく、300ppm以下が特に好ましい。液晶組成物中の重合性液晶化合物が600ppm以下であることは、後述する製造方法のポリマーネットワーク形成工程において液晶組成物中の重合性液晶化合物の大部分が重合されてポリマーネットワークが生成し、液晶組成物中に残存する重合性液晶化合物が極めて少ないことを意味する。これにより、経時的な表示品質の劣化を更に抑制することができる。
【0047】
液晶層15を構成する液晶組成物は、重合禁止剤及び任意に重合開始剤を更に含有していてもよい。この場合、該液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、0.3質量%以上10質量%以下とすることができる。液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上とすることができ、また、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とすることができる。
【0048】
一対の基材13,14に設けられた一対の電極11A,12Aに電圧を印加していない状態では、ポリマーネットワーク17は、上記基材の法線方向からの光に対して光散乱を実質的に生じないのが好ましい。「光散乱を実質的に生じない」とは、一対の電極11A,12Aに電圧を印加していない状態において、液晶領域にポリマーネットワークがポリマーネットワークの光学軸と低分子液晶の光学軸が略一致するように形成されているので、液晶表示素子のヘイズが、液晶領域にポリマーネットワークが形成されていない液晶表示素子のヘイズと同じであるか或いは同等であることを意味する。このように電圧非印加(OFF)状態で光散乱が起こらないため、直交ニコル(crossed nicols)における液晶表示素子10Aのセルの黒レベルを、ポリマーネットワークを形成していないVA型液晶表示素子のセルと同等とすることができる。電圧印加(ON)状態では、低分子液晶の長軸方向が一定方向へ揃いながらベンド配向やスプレイ配向等の傾斜配向状態になりポリマーネットワークの光学軸から外れる。この時、ポリマーネットワークの低分子液晶が充填されている空隙間隔が可視光の波長より小さくなるように形成すると光散乱が大きく抑制されON時の透過光量に比べ光散乱が極僅かなため表示のコントラストに殆ど影響を及ぼさないため好ましい。
【0049】
ポリマーネットワーク17は、一対の基材13,14を連結しているのが好ましい。本実施形態では、高分子スペーサー16は、後述する配向膜を介して一対の基材13,14を連結している。液晶分子のプレチルトを誘起させるPSA(Polymer Sustained Alignment)型液晶組成物では、一端を基材上に連結して固定端とし、他方を自由端とするポリマーの薄膜層、又は基板表面に微細なこぶ状の硬化物を設けており、本実施形態のポリマーネットワーク17は、その両端を一対の基材に連結している点で、PSA型液晶組成物の上記薄膜層とは大きく異なる。
【0050】
上記構造により、ポリマーネットワーク17内に分散した状態で存在する低分子液晶18に相互作用(アンカーリング力)を生じさせて緩和時間を短くすることができると共に、高分子スペーサー16が形成された部分以外の液晶領域19において曲げ変形に因る一対の基材13,14の相対的な位置ずれが基板との連結により抑制され、表示品質の劣化を抑制することができる。また、ポリマーネットワーク17が重合性液晶化合物によって、その間隔が可視光領域の波長より短くなるような高密度で形成されることにより、高速応答を実現することができる。
【0051】
高分子スペーサー16は、例えば、格子状に設けられた1又は複数の壁部で構成されている。高分子スペーサー16は、一対の基材13,14に挟持される液晶組成物に予め溶解されている重合性液晶化合物が光重合による分子量の増加で相分離が起こり、同時に重合性液晶化合物の凝集によって当該重合性液晶化合物が高密度で充てんされることにより、形成される。高分子スペーサー16は、一対の基材13,14の間にマトリックス状に設けられた複数の柱状部で構成されてもよい。画素電極が複数で構成されている液晶表示素子の場合は、画素電極間にある隙間に柱状、又は壁状の高分子スペーサーをフォトマスクを介して形成してもよい。
【0052】
この高分子スペーサー16は、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有している。本実施形態では、高分子スペーサー16は、基材13,14の法線方向(Y方向)に関して一軸性の屈折率異方性の光学軸を有している。
「高分子スペーサーが一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する」とは、高分子スペーサーを形成している重合性液晶化合物が、それらの高分子鎖を構成するメソゲン基が配向膜が規定する一定の方向に揃った状態で配列し、電圧が印加していない状態で低分子液晶18が一定方向へ配向した状態の光学軸と略一致する。その結果、重合性液晶化合物が架橋して形成される高分子スペーサーが示す複屈折の光学軸が低分子液晶18の複屈折の光学軸と重なって実質的に1つの値となるような光線の進行方向が存在していることを意味する。
【0053】
高分子スペーサー16は、一対の基材13,14を連結しているのが好ましい。本実施形態では、高分子スペーサー16は、後述する配向膜を介して一対の基材13,14を連結している。高分子スペーサー16では、重合性液晶化合物が重合相分離と凝集により高密度で充てんされ、該重合性液晶化合物の高分子鎖のメソゲン基が低分子液晶の配向と同様に基材の法線方向に揃った状態で配列している。このため、例えば重合性液晶化合物がランダムに充てんされたものと比較して、高分子スペーサー周囲にある低分子液晶の配向が一様で、高分子スペーサーによる配向の乱れを起こさなくなり、更に高分子スペーサー16の厚み方向の強度が高い。よってこの高分子スペーサー16が一対の基材13,14間に介在し、且つこれらを連結していることにより、高分子スペーサーの光軸が低分子液晶の光軸と一致して光学軸が均一になることで表示の黒レベルの差異が起こらないため表示のコントラストを低下させず、且つ液晶表示素子10Aの厚み方向の強度が向上する。
【0054】
本実施形態の液晶表示素子10Aは、一対の基材13,14の表面にラビング処理された配向膜20,21を有している。一対の基材13,14の少なくとも一方の表面にラビング処理された配向膜を形成することにより、低分子液晶の配向方向を規定し、垂直配向の場合はその傾斜方位方向を規定するプレチルト角を誘起し、基材に対して用いる配向膜の種類に依存して平行あるいは垂直に低分子液晶を並べることができる。配向膜にラビング処理を施すことにより、配向膜表面の高分子鎖が一定方向に延伸されるか、又は配向膜表面に一定方向の溝が無数に刻まれ、高分子膜状に異方性が生じ、これにより液晶分子の配向方向を規定することができる。配向膜20,21の材料は、特に制限されないが、ポリイミドやシランカップリング剤が挙げられる。これらの配向膜の他に、光配向膜を用いても良い。光配向膜は、光異性化反応型、光二量化反応型、光分解型の光応答材料で、これらは、平行光の紫外線や偏光の紫外線を照射して、偏光方向や紫外線の照射方向等による紫外線照射方法で低分子液晶の配向を制御するものであって、これらを光配向膜として用いることもできる。
【0055】
本実施形態では、高分子スペーサー16の光学軸の光軸方向Dpsが、ポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向Dpnと略一致し、且つ、基材13上のラビング処理、又は光配向処理された配向膜20(又は基材14上のラビング処理された配向膜21)によって配向した液晶化合物中の低分子液晶18の配向容易軸ALCと略一致する。NPS-LCDの場合、ポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向Dpnは、液晶化合物中の低分子液晶18の配向容易軸ALCと略一致している。また、高分子スペーサー16の光学軸の光軸方向Dpsがポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向Dpnと略一致することは、例えば液晶表示素子10Aを偏光顕微鏡で観察することで判別することができる。クロスニコルの偏光状態で液晶表示素子10Aの光学軸を動かすように回転させて観察すると、高分子スペーサー16の重合性液晶化合物の配向が低分子液晶18の配向とずれている場合、回転により黒の明るさの増減が異なり高分子スペーサー16の形状が視認される。また、高分子スペーサー16の周囲の配向が乱れていると高分子スペーサー16の周囲から光が漏れ出す箇所が観察される。一方、これらの配向が一致していると、黒の明るさが同等であり高分子スペーサー16の形状が視認できず、高分子スペーサー16と液晶層15とを区別することができない。
【0056】
高分子スペーサー16の光学軸の光軸方向Dpsは、基材13,14の法線方向(Y方向)と平行或いは略平行であってもよいし、基材13,14の法線方向(Y方向)に対して数度程度傾いていてもよい。同様に、ポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向Dpnは、基材13,14の法線方向(Y方向)と平行或いは略平行であってもよいし、基材13,14の法線方向(Y方向)に対して数度程度傾いていてもよい。更に、低分子液晶18の配向容易軸ALCも、基材13,14の法線方向(Y方向)と平行或いは略平行であってもよいし、基材13,14の法線方向(Y方向)に対して数度程度傾いていてもよい。
【0057】
本実施形態では、液晶表示素子10Aは、ラビング処理された配向膜20,21を有しているが、これに限らず、一対の基材13,14の表面に光配向膜を有していてもよい。この場合、高分子スペーサー16の光学軸の光軸方向Dpsが、ポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向Dpnと略一致し、且つ、基材13上の光配向膜によって配向した液晶化合物中の低分子液晶18の配向容易軸ALCと略一致する。
【0058】
また、液晶表示素子10Aは、一対の基材13,14の電極11A,12Aとは反対側の表面に偏光層22,23を有していてもよい。また、一対の基材13,14のうちの一方に偏光層22(又は偏光層23)を有していてもよい。液晶表示素子10Aに偏光層を設ける場合、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。また、2つの偏光層22,23がある場合、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラストが良好になるように調整することもできる。更に、偏光層22,23は位相差膜と組み合わせて視野角やコントラストが良好になるよう調整しても良い。
【0059】
液晶表示素子10Aは、カラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法または、染色法等によって作製することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作製方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基材上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱または光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作製することができる。その他、該基材上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0060】
液晶表示素子10Aがカラーフィルターを有する場合、表示光量を確保できる観点から、高分子スペーサー16が赤、緑、青のカラーフィルターの隔壁に重なる位置に設けられるのが好ましい。
【0061】
図1Bは、本実施形態に係る液晶表示素子の他の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
図1Bの液晶表示素子は、ラビング処理を施していない垂直の配向膜21を有し、フィッシュボーン型電極を有する点で、
図1Aの液晶表示素子10Aと異なる。
図1Bに示すように、液晶表示素子10Bは、電極11B,12Bを有する一対の基材13,14と、一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物を含有する液晶組成物を含む液晶層15及び該液晶組成物に含有されている重合性液晶化合物の硬化物で構成された高分子スペーサー16とを備えている。
【0062】
電極11B,又は12Bの一方には、
図1Cに示すように、一つの画素内を配向分割する目的のためフィッシュボーン状パターン電極を有しており、これに対向する電極は共通電極としてパターニングしていない電極であってもよい。尚、
図1Cの電極は、電圧印加により各線状方向へ液晶が傾斜配向するようになる為、4方向へ配向を分割ができるようにした電極の一例である。この電極11B,又は12Bは、複数の線状電極とスリットが交互に繰り返して配置された縞状模様の電極である。
【0063】
本実施形態の液晶表示素子10Bでは、高分子スペーサー16の光軸方向Dpsが、ポリマーネットワーク17の光軸方向Dpnと略一致し、且つ、基材13,14の法線方向に対して、基材13,14上にフィッシュボーン状パターンを有する電極が11B,又は12Bに備える液晶表示素子10Bにおける低分子液晶18の配向容易軸傾斜角度θの2θ以内に傾斜している。これは、一つの画素内を複数に分割して、各領域の配向容易軸傾斜角度θの方位方向を異なるように傾斜させて、且つ各領域の傾斜方位方向が基材13,14の法線方向に対して対称になるように傾斜させることが好ましい。その結果、高分子スペーサー16の光軸方向Dpsが2θ以内に範囲内になり、少なくとも基材13,14の法線方向と略一致しても良く、各配向分割した領域の何れかの配向容易軸傾斜角度方位方向と一致しても良い。
【0064】
低分子液晶18は、垂直配向と共に、傾斜方向方位を規定する配向容易軸傾斜角度θが付与されている。配向容易軸傾斜角度θとは、液晶配光軸に沿った低分子液晶の長軸と基材の法線方向とのなす角度を指す(
図1A参照)。低分子液晶18の配向容易軸傾斜角度θは、例えば後述する製造方法におけるポリマーネットワーク17の形成時に付与される。又、ラビング処理した垂直配向膜や、垂直配向の光配向膜でも付与される。
【0065】
低分子液晶18の配向容易軸傾斜角度θは、基材13,14の法線方向に対して0.1°以上5°以下であるのが好ましい。配向容易軸傾斜角度θが基材13,14の法線方向に対して0.1°以上5°以下であると、黒レベルが明るくなるのを抑制し、傾斜方位方向が規定されると液晶の傾斜配向が一斉に起こるのでスイッチング応答の緩和時間が短くすることができる。傾斜方位方向が規定されていない場合は、傾斜方位方向が任意になり周囲の傾斜する液晶と衝突してスイッチング応答の緩和時間が短くなるので好ましくない。配向容易軸傾斜角度が下限の0.1°に近いとより好ましく、傾斜角度0.1°ではスイッチング応答の緩和時間が短くなり好ましいが、液晶表示素子全面の均一性を確保するには、0.2°程度が好ましい。よって低分子液晶18の配向容易軸傾斜角度θは、基材13,14の法線方向に対して0.1°以上0.2°以下であるのがより好ましい。
【0066】
液晶表示素子10Bは、一対の基材13,14の表面に配向膜を有していてもよい。配向膜は、ラビング処理されていないものが用いられてもよいし、ラビング処理されているものが用いられてもよい。またこの場合、液晶表示素子10Aと同様、高分子スペーサー16は、上記配向膜を介して一対の基材13,14を連結してもよい。また、ポリマーネットワーク17は、上記配向膜を介して一対の基材13,14を連結してもよい。
【0067】
図2は、
図1Aの液晶表示素子10Aを湾曲させた状態を示す断面図である。尚、
図2では説明の便宜上、液晶表示素子10Aの一対の基材13,14、高分子スペーサー16及びポリマーネットワーク17のみを図示する。
同図に示すように、液晶表示素子10Aに曲げ変形が生じると、側面視において山部31が形成される。このとき、山部31の湾曲部分で、曲率中心Cを基準として内側の基材13と外側の基材14にせん断力が発生し、その結果一対の基材13,14が向かい合う方向に圧縮力が生じる。本実施形態では、高分子スペーサー16の光学軸の光軸方向D
psが、ポリマーネットワーク17の光学軸の光軸方向D
pnと略一致し、且つ、基材13上のラビング処理された配向膜20(又は基材14上のラビング処理された配向膜21)によって配向した液晶化合物中の低分子液晶18の配向容易軸A
LCと略一致するので、高分子スペーサー16の一定方向への配向、特に積層方向に関して配向性を有することにより、高分子スペーサー16近傍の低分子液晶18の配向が均一化し、電圧無印加時において光漏れが無く、高コントラストな表示を実現することができ、加えて、高分子スペーサー16の介在によって一対の基材13,14の間隔を安定的に維持することができる。また、ポリマーネットワーク17が一定方向への配向、特に積層方向に関して配向性を有することにより、一対の基材13,14の歪みによって液晶の流れが生じたときに、液晶の流動による低分子液晶18の配向乱れを抑制することができる。したがって、液晶表示素子10Aに曲げ変形が生じた場合であっても良好な表示品質を実現することが可能となる。更に、ポリマーネットワーク17が一対の基材13,14に対して垂直な配向を有することにより、液晶分子の流動を抑制して低分子液晶18の垂直配向の安定性が高められ、且つ高速応答を実現することができる。よって高速応答を実現しつつ、曲げ変形に強く、更には高コントラストを実現する液晶表示素子10Aを提供することができる。
【0068】
図1Bの液晶表示素子10Bでも同様、高分子スペーサー16の光軸方向D
psが、ポリマーネットワーク17の光軸方向D
pnと略一致し、且つ、基材13,14上にフィッシュボーン状パターンを有する電極11B,12Bを備える液晶表示素子10Bにおける低分子液晶18の配向容易軸傾斜角度θの2θ以内に傾斜しているので、高分子スペーサー16の一定方向への配向、特に積層方向に関して配向性を有することにより、高分子スペーサー16近傍の低分子液晶18の配向が均一化し、電圧無印加時において光漏れが無く、高コントラストな表示を実現することができ、加えて、高分子スペーサー16の介在によって一対の基材13,14の間隔を安定的に維持することができる。また、ポリマーネットワーク17が一定方向への配向、特に積層方向に関して配向性を有することにより、一対の基材13,14の歪みによって液晶の流れが生じたときに、液晶の流動による低分子液晶18の配向乱れを抑制することができ、加えて低分子液晶18の垂直配向の安定性向上及び高速応答を実現することができる。よって高速応答を実現しつつ、曲げ変形に強く、更には高コントラストを実現する液晶表示素子10Bを提供することができる。
【0069】
[光変調器の構成]
図3は、本実施形態に係る光変調器の構成の一例を概略的に示す部分断面図である。
図3に示すように、液晶表示装置は、光変調器40としての液晶表示素子10Aと、他の液晶表示素子10Cが積層された構成を有している。光変調器40は、例えば液晶表示素子10Aで構成され、視認側から見て液晶表示素子10Cの背面に配置されている。光変調器40は、例えば、カラーLCD(表示用)/輝度調整用LCD(バックライトの輝度をエリアで調整するローカルディミングLocal dimming用)/バックライトの構成において、上記輝度調整用LCDとして用いられる。
【0070】
光変調器40としての液晶表示素子10Aを構成する一対の基材13,14は、プラスチック基材であってもよいし、可撓性を有するガラス基材、又は固いガラス基材であってもよい。また、一対の基材13,14のうちの一方がプラスチック基材で、他方が可撓性を有するガラス基材であってもよい。更に、本実施形態では、複数の液晶表示素子10A,10Cがそれぞれ一対の基材13,14を有しているが、これに限られず、一の液晶表示素子10Aの基材13が、隣接する他の液晶表示素子10Cの基材14を兼ねてもよい。すなわち一の液晶表示素子10Aの液晶層15と、隣接する他の液晶表示素子10Cの液晶層15との間に一の基材が配置されてもよい。
【0071】
隣接する2つの液晶表示素子10A,10Cの間には、例えば透明性を有する接着層41が設けられている。本実施形態では、一方の液晶表示素子10Aの基材13と、他方の液晶表示素子10Cの基材14が対向配置されており、これら対向配置された2枚の基材が偏光層22,23を介して接着層41によって接着されている。必要に応じて、反射防止フィルムや位相差フィルム等も用いることができる。
【0072】
接着層41としては、特に制限されないが、例えば、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの透明樹脂(OCR(Optical Clear Resin))を含む粘着剤の硬化物、透明樹脂フィルムの両面にシリコーンエラストマーなどの透明接着剤(OCA(Optical Clear Adhesive))層が設けられた透明なシート状のものなどを用いることができる。又、屈折界面での反射を抑えるため基材との屈折率を可能な限り一致させるように調整した接着剤を用いることが好ましい。
【0073】
本実施形態では、液晶表示装置は、2つの液晶表示素子10A,10Cが積層された構成を有しているが、これに限らず、3つの液晶表示素子10A,10B,10Cから選択された2つ以上が積層された構成を有していてもよい。
【0074】
また、光変調器40は、液晶表示素子10Aで構成されるが、これに限らず、液晶表示素子10Bで構成されてもよい。この場合にも、光変調器40は、視認側から見て液晶表示素子10Cの背面に配置される。また、液晶表示素子10Cは、液晶表示素子10Aと同様の構成を有していてもよいし、液晶表示装置10Aと異なる構成を有していてもよい。
【0075】
[液晶表示装置の製造方法]
図4は、本実施形態に係る液晶表示素子の製造方法の一例に示す工程図である。本実施形態の液晶表示素子の製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)及び工程(C)を有する。本液晶表示素子の製造方法は、上記工程に限らず、上記各工程の前後に他の工程を有していてもよい。
【0076】
図4に示すように、先ず、電極11,12を有する一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物51、重合性液晶化合物52及び重合禁止剤53を含有する重合性液晶組成物を狭持させる(工程(A)、
図5)。これにより、
図5に示す一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物51及び重合性液晶化合物52が混合された液晶層前駆体50-1が配置される。負の誘電率異方性の液晶化合物及び重合性液晶化合物の詳細については、後述する。
【0077】
一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物51、重合性液晶化合物52及び重合禁止剤53を狭持させる方法としては、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。又、片方の基材にバーコーター等を用いて重合性液晶組成物を塗布した後に他方の基材を上からラミネートして一対の基材の間に挟持する方法も用いることができる。一対の基材13,14の間に、負の誘電率異方性の液晶化合物51、重合性液晶化合物52及び重合禁止剤53を別個に狭持させることもできるが、負の誘電率異方性の液晶化合物51、重合性液晶化合物52及び重合禁止剤53を含有する重合性液晶組成物として、液晶組成物の各成分があらかじめ分散された状態で一対の基材13,14の間に狭持させることが好ましい。
【0078】
また、重合性液晶組成物は、不図示の重合開始剤を更に含有していてもよい。光重合開始剤が存在しない場合でも光重合が容易に起こる重合性液晶化合物を用いた場合は、重合は進行するので光重合開始剤が不要になるが、使用する重合性液晶化合物の種類に応じて重合を促進する観点から重合性液晶組成物が光重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤の詳細については、後述する。
【0079】
次に、
図6に示すように、光学マスクMを用いてエネルギー線E1をパターン照射することにより、エネルギー線E1が照射された領域P1(照射領域)で、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物52を硬化させて、一軸性の屈折率異方性の光学軸を有する高分子スペーサー16を形成する(工程(B)、
図4)。
【0080】
光学マスクMとしては、例えば
図7に示すようなマトリックス状の複数の開口部mを有する部材を用いることができる。これにより、高分子スペーサー16が格子状に形成される。本実施形態では高分子スペーサー16は格子状であるが、柱状であってもよい。高分子スペーサー16の形状は、光学マスクMの開口部mの形状や隣接する開口部m同士の間隔を変更することにより、調整することができる。エネルギー線E1としては、特に制限されないが、紫外線、電子線などの活性エネルギー線を用いることができる。また、エネルギー線E1は、漏れ光を低減する観点からコリメート光とすることができる。エネルギー線E1の照射量は、重合性液晶化合物の種類、濃度等にもよるが、例えば1J/m
2以上6J/m
2以下であり、2J/m
2以上5J/m
2以下であってもよい。
【0081】
本工程(B)を図示する
図6において、重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有していない場合、領域P1では、エネルギー線の照射直後に重合性液晶化合物52が重合を開始する。光学マスクMの開口部m(
図7)に照射されたエネルギー線E1で光重合が開始すると、相分離によって重合性液晶化合物52が領域P1に集まり、領域P1での重合反応の進行によって重合性液晶化合物52が硬化し、高分子スペーサー16が形成される。一方、光学マスクMの開口部m(
図7)に対応する照射領域P1(
図6)での光重合が進むにつれて、光学マスクMの遮光部分に対応する領域P2における重合性液晶化合物52の濃度は徐々に減少する。その結果、液晶層前駆体50-1は、重合性液晶化合物52の濃度が液晶層前駆体50-1よりも低い液晶層前駆体50-2となる。
【0082】
高分子スペーサー16の屈折率異方性は、例えば重合性液晶化合物が持つメソゲン基の分子構造とメソゲン基の配向性に影響される。又、低分子液晶組成物中に含有されている重合性液晶化合物のメソゲン基は低分子液晶の配向に大きく依存して配向する性質があるので、低分子液晶を配向させた状態で重合させることにより制御される。これにより、高分子スペーサー16に一軸性の屈折率異方性の光学軸を付与することができ、配向膜で配向した低分子液晶の光学軸と略一致させることができる。
【0083】
重合性液晶組成物は、負の誘電率異方性の液晶化合物51及び重合性液晶化合物52の他に、重合禁止剤53を含有する。重合禁止剤53は、特に制限されないが、例えばキノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなる。フェノール系化合物は、ヒンダードフェノール系化合物を含有していることが好ましい。
【0084】
図8Aは、
図6及び
図4の工程(B)において、重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有する場合における重合禁止剤の作用による重合性液晶化合物の誘導時間を説明するためのグラフである。
図8Aに示すように、例えば重合性液晶組成物が重合禁止剤Aを含有する場合、重合禁止剤Aは、重合性液晶化合物を架橋させる反応のうち成長反応を起こすフリーラジカルと反応することで、成長反応の起点としてのフリーラジカルの機能を失活させ、一定期間、成長反応の進行を停止する作用を有する。すなわちこの一定期間内は、重合禁止剤の作用により、重合性液晶化合物の重合反応が進まない。この一定期間が、重合禁止剤の作用による重合性液晶化合物の誘導時間に相当する(
図8A中の誘導時間T
A)。
【0085】
重合性液晶化合物自体も、誘導時間を有しているが、短時間であるため高分子スペーサー形成には有用ではない。よって本実施形態では、誘導時間は「重合禁止剤の作用による重合性液晶化合物の誘導時間(以下、単に「重合性液晶化合物の誘導時間)ともいう」を意味する。
【0086】
重合性液晶組成物が重合禁止剤Aを含有している場合、領域P1では、エネルギー線の照射を開始した時から、重合禁止剤Aの作用による重合性液晶化合物の誘導時間T
Aの経過後に、当該重合性液晶化合物が重合を開始する。同様にして、重合性液晶組成物が、重合禁止剤Aよりも長い誘導時間を有する重合禁止剤Bを含有している場合、領域P1では、エネルギー線の照射を開始した時から、重合禁止剤Bの作用による重合性液晶化合物の誘導時間T
Bの経過後に、当該重合性液晶化合物が重合を開始する。参考として、重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有していない場合の重合度nと、重合性液晶組成物が誘導時間を生じさせない重合抑制剤を含有している場合の重合度nの、それぞれの経時変化を
図8Aに示す。
【0087】
この重合禁止剤の作用を利用し、
図8Bに示すように、高分子スペーサー16を形成する工程(B)において、光学マスクMの開口部mに対応する領域P1での重合禁止剤53の作用による重合性液晶化合物52の誘導時間T
P1が経過した後であって、光学マスクMに対応する領域P1以外の領域P2での重合性液晶化合物52の誘導時間T
P2が経過するまでに、エネルギー線E1のパターン照射を終了するのが好ましい(図中の期間X)。これにより、領域P1と領域P2との境界部付近でエネルギー線E1の漏れ光が生じた場合であっても、領域P2での重合禁止剤53の作用によって重合性液晶化合物52の重合反応の発生が抑制され、高分子スペーサー16が領域P2にまで広がって線幅が膨らむのを抑制することできる。また、漏れ光によって高分子スペーサー16から横方向(
図1のX方向)に延出するポリマーネットワークの形成を防止することもできる。更に、この時のエネルギー線E1の強さを調整して誘導時間T
P2が長くなるようにすると線幅が広がらず好ましい。エネルギー線E1が強すぎたり、誘導時間T
P2を超える時間でエネルギー線E1を照射すると、不用意な延出が起こり、領域P1に向けて重合性液晶化合物が集まる途中で領域P2との境界付近に高密度のポリマーネットワークが形成され、低分子液晶がポリマーネットワークの隙間に入り込むので駆動電圧の高い領域を形成することになる。結果として、領域P1の外側の領域P2の画素部分で駆動電圧の均一性を損なう場合が起こるので好ましくない。これを避けるためには、エネルギー線E1の強度と照射時間を調整して最適照射条件で高分子スペーサーを形成させることが好ましい。
【0088】
重合禁止剤の作用による重合性液晶化合物の誘導時間は、例えば重合禁止剤の濃度、すなわち含有量に比例する。よって、重合禁止剤の含有量を調整することにより、形成しようとする高分子スペーサー周辺に、高分子塊や液晶表示特性に悪影響するポリマーネットワークが発生せず、マスクパターンに即した高分子スペーサーを形成することが可能となる。
【0089】
本工程(B)において、エネルギー線E1をパターン照射する前の状態における、重合性液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、0.3質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上とすることができ、また、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とすることができる。これにより、更に精度良く高分子スペーサーを形成することができる。
【0090】
本工程(B)において、エネルギー線E1をパターン照射する前の状態における、重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は1質量%以上10質量%以下であり、高分子スペーサーを形成した後の状態における、重合性液晶組成物中の上記重合性液晶化合物の含有量は1質量%以上6質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以上3.5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、重合性液晶化合物によって高分子スペーサー16を高密度に形成することができ、強度を向上することができる。
【0091】
次いで、光学マスクMを取り除いてエネルギー線E2を照射することにより、高分子スペーサー16が形成された領域P1以外の領域P2で、上記重合性液晶組成物に残存する重合性液晶化合物52を硬化させて、基材13(又は基材14)の法線方向に略一致するように一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワーク17を形成する(工程(C)、
図4、及び
図9)。これにより本実施形態の液晶表示素子を得る。
【0092】
この工程(C)において、光学マスクMを基材14上から取り除くことにより領域P2が露出し、基材14の全面が露出した状態となる。液晶層前駆体50-2には未重合の重合性液晶化合物(モノマー)が残っている。また、工程(B)での相分離と凝集に基づく重合性液晶化合物の移動により、領域P2のうちの領域P1に近い部分では重合性液晶化合物の濃度が低く、それ以外の部分では重合性液晶化合物の濃度が高くなることを避けるため、工程(B)ではこの状態にならないような強度のエネルギー線E2を調整して高分子スペーサーを形成することが好ましい。この状態で基材14の全体にエネルギー線E2を照射することにより、領域P2での残存する重合性液晶化合物の重合反応の進行によって当該重合性液晶化合物と低分子液晶との重合相分離を起こし、その結果、領域P2に対応する液晶領域19にポリマーネットワーク17が形成される。この時、成長反応を速くするようにエネルギー線E2をエネルギー線E1より数倍強く照射すると、微細な繊維状のポリマーネットワーク17が低分子液晶の配向に沿うように形成され、同時にポリマーネットワーク17が高密度に形成されるため、ポリマーネットワーク17の一軸性の光学軸は低分子液晶の一軸性の光学軸と一致するようになると共に、ポリマーネットワーク17の空隙間隔が可視光の波長より小さくなることに起因して光散乱が抑制され、ヘイズが表示コントラストに影響を及ぼさなくなるように低減され、高コントラストの表示を実現できる。更に、空隙間隔が微細になるため高速応答を得ることができる。
【0093】
本工程(C)において、重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有している場合には、領域P2での重合性液晶化合物の上記誘導時間が経過した後に、重合性組成物が重合を開始する。尚、重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有していない場合、領域P2では、エネルギー線E2の照射直後に重合性組成物が重合を開始する。
【0094】
ポリマーネットワーク17の屈折率異方性は、例えば重合性液晶化合物が持つメソゲン基の分子構造とメソゲン基の配向性に影響される。又、低分子液晶組成物中に含有されている重合性液晶化合物のメソゲン基は低分子液晶の配向方向へ配向する性質があるので、低分子液晶を配向させた状態で重合させることにより繊維状の微細なポリマーネットワークが低分子液晶の配向方向に沿うように形成される。繊維状のポリマーネットワークの長軸方向と短軸方向で屈折率差が起こり屈折率異方性が制御される。これにより、ポリマーネットワーク17に一軸性の屈折率異方性の光学軸を付与することができる。又、ポリマーネットワーク17に一軸性の屈折率異方性の光学軸を、配向した低分子液晶の屈折率異方性の一軸性の光学軸と略一致させることができる。
【0095】
本工程(C)において、エネルギー線E2をパターン照射する前の状態における重合性液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、本工程(B)で重合禁止剤はフリーラジカルと結合して成長反応を起こさなくなり重合禁止剤起因の誘導時間が略ゼロになる状態が好ましい。本工程中(C)を始める時には0.5質量%以下が残存していることが好ましい。これにより、高速応答を示し、且つ光散乱を起こさないポリマーネットワークを形成することができる。
【0096】
本工程(C)において、高分子スペーサー16を形成した後の状態における、液晶組成物中の重合性液晶化合物52の含有量は1質量%以上6質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以上3.5質量%以下がより好ましく、また、ポリマーネットワーク17を形成した後の状態における、液晶組成物中の重合性液晶化合物52の含有量が600ppm以下であるのが好ましい。これにより、ポリマーネットワーク17を高密度に形成することができるので、基材変形で起こる低分子液晶の流動を抑制し、ポリマネットワークの空隙が可視光の波長より小さくなるので光散乱が起こらず、且つ高速応答を示すようになると共に、液晶層15に残存する重合性液晶化合物52(モノマー)を極力少なくするか或いは無くすことができ、電圧-透過率特性の経時変化が起こらず高い信頼性を実現することができる。
【0097】
また、上記工程(C)において、ポリマーネットワーク17を形成する際のエネルギー線E2の照射強度は、高分子スペーサー16を形成する際のエネルギー線E1の照射強度よりも大きいことが好ましい。これにより、低分子液晶中に残存する重合性液晶化合物の成長反応が高められ高密度で微細なポリマーネットワーク17を形成させるので好ましい。
【0098】
エネルギー線E2としては、特に制限されないが、エネルギー線E1と同様、紫外線、電子線などの活性エネルギー線を用いることができる。また、エネルギー線E2は均等照射の観点からコリメート光であってもよい。エネルギー線E2の照射強度は、重合性液晶化合物の種類、濃度等にもよるが、例えば15mW/cm2以上100mW/cm2以下であり、20mW/cm2以上60mW/cm2以下であってもよい。また、これら場合のエネルギー線E2の照射量は、0.1J/m2以上7J/m2以下であってもよく、0.15J/m2以上2J/m2以下であってもよい。
【0099】
上記液晶組成物を狭持させる上記工程(A)の前に、基材13,14上に配置した配向膜にラビング処理を施して、基材13,14上にラビング処理された配向膜20,21を形成する工程を有していてもよい(
図1A参照)。配向膜の材料は、例えばポリアミック酸を溶媒で溶解させた液体であり、該液体を基材13,14上に塗布して熱硬化させることにより、ポリイミド等からなる配向膜を得る。そして、この配向膜の表面をローラ等の外周面に取り付けられた布等で一定方向に擦る(ラビング処理)。これにより液晶分子の配向を一定方向に制御することができる。この場合、配向膜20,21を構成する材料の硬化温度は、基材13,14を構成する材料のガラス転移温度Tgよりも低いことが好ましい。これにより、配向膜20,21を基材13,14上に形成する際に基材13,14の性状変化を防止することができ、基材13,14の強度を維持することができる。
【0100】
また、上記液晶組成物を狭持させる上記工程(A)の前に、一対の基材13,14の表面に光配向膜を形成する工程を有していてもよい。一対の基材13,14の表面に光配向膜を形成する場合、上記工程(A)の前において、低分子液晶の配向を規定する光配向処理工程を施せば良い。この時、光配向膜にエネルギー線E2を照射するが、エネルギー線の波の振動方向を変えて照射してもよく、エネルギー線の照射方向を目的に配向が得られるように調整しても良く、光配向膜に配向機能を持たせることにより、低分子液晶の配向を一定方向に制御するために適宜エネルギー線の照射方法を変更してもよい。又、マスク照射で配向方向をパターン化しても良く、これにより非接触で液晶配向処理を施すことができ、また、製造工程を簡略化することができる。
【0101】
また、一対の基材13,14に設けられた一対の電極11,12が、フィッシュボーン状の電極パターンを有する場合(
図1B参照)、配向膜20,21にラビング処理を施さなくてもよい。この場合、高分子スペーサー16を形成する工程(B)の後であってポリマーネットワーク17を形成する工程(C)の前に、一対の電極11,12間に電圧を印加しながらエネルギー線を照射して液晶化合物に配向容易軸傾斜角度を付与する工程を有しているのが好ましい。また上記工程を設けた場合、ポリマーネットワーク17を形成する工程(C)において、エネルギー線E2を数秒から数十秒程度照射することにより、高分子スペーサー16が形成された領域P1以外の領域P2の配向膜上に傾斜配向容易軸を形成させ、更に、電圧印加を止めた後に、エネルギー線E2のみを再び照射して傾斜配向容易軸を有したポリマーネットワーク17を形成することができる。これにより、電圧印加によって液晶分子の配向を一定方向に制御しつつ、ポリマーネットワーク形成における重合反応を進行させることができ、製造工程の簡略化を実現することができる。
【0102】
また、本工程(C)において高分子スペーサー16を形成する際のエネルギー線E1の照射強度よりも大きい照射強度でポリマーネットワーク17を形成した後、高分子スペーサー16を形成する際のエネルギー線E1の照射強度よりも小さい照射強度で、且つエネルギー線E1よりも大きい照射量で、高分子スペーサー16が形成された領域P1以外の領域P2に残存する重合性液晶化合物52に、エネルギー線E3を照射する工程を更に有していてもよい。これにより、低分子液晶に溶存している重合性液晶化合物は、二量体や三量体等を形成しながらポリマーネットワーク17又は高分子スペーサー16の壁へ凝集して重合するようになり液晶層15中の残存量が減少して600ppm以下にすることができる。エネルギー線E3の照射量は、重合性液晶化合物の種類、残存濃度等にもよるが、例えば0.5J/m2以上7J/m2以下であり、1J/m2以上6J/m2以下であってもよい。また、これらの場合のエネルギー線E3の照射強度は、0.2mW/cm2以上2mW/cm2以下であってもよい。これにより、液晶層15に残存する重合性液晶化合物52(モノマー)を無くすことができ、更なる高速応答を実現することができる。
【0103】
[重合性液晶組成物]
次に、本実施形態の液晶表示素子の製造方法で使用される重合性液晶組成物を説明する。
尚、本明細書においては、少なくとも負の誘電率異方性の液晶化合物が混合・分散された状態のものを重合性液晶組成物といい、液晶表示素子の製造方法で使用される重合性液晶組成物、又は、液晶表示素子の上記製造方法によって得られた液晶表示素子に含まれる液晶組成物を指す。
【0104】
[a]負の誘電率異方性の液晶化合物
本実施形態で使用される液晶組成物は、負の誘電率異方性の液晶化合物である。誘電率異方性が負であるとは、誘電率異方性Δεの値が-2よりも小さいことを指す(Δε<-2)。この液晶化合物は、一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)で表される複数の化合物からなる群から選択される1種又は複数種であるのが好ましい。
【0105】
【化4】
(式中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45及び、R
46はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
M
41、M
42、M
43、M
44、M
45、M
46、M
47、M
48及びM
49はお互い独立して、
(g)トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(h)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)及び、
(i)1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(g)、基(h)又は基(i)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、
L
41、L
42、L
43、L
44、L
45、L
46、L
47、L
48及びL
49はお互い独立して単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-OCF
2-、-CF
2O-又は-C≡C-を表し、M
42、M
43、M
45、M
46、M
48、M
49、L
41、L
43、L
44、L
46、L
47及び/又はL
49が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、
X
41、X
42、X
43、X
44、X
45、X
46、X
47及びX
48はお互い独立して水素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表すが、X
41及びX
42の何れか一つはフッ素原子を表し、X
43、X
44及びX
45の何れか一つはフッ素原子を表し、X
46、X
47及びX
48の何れか一つはフッ素原子を表すが、X
46及びX
47は同時にフッ素原子を表すことはなく、X
46及びX
48は同時にフッ素原子を表すことはなく、Gはメチレン基又は-O-を表し、
u、v、w、x、y及びzはお互い独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下である。)
【0106】
また、一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)で表される化合物において、R41、R42、R43、R44、R45及びR46はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基、炭素数1~15の直鎖状アルキル基又は炭素数2~15のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されているもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されているものも含む。)が好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基又は炭素数2~10アルケニル基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基が特に好ましい。M41、M42、M43、M44、M45、M46、M47、M48及びM49はお互い独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられているものも含む。)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられているものも含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基で表す基(各々の基に含まれる水素原子がそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基が特に好ましい。L41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48及びL49はお互い独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCO-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CH2CH2-、-OCH2-又は-CH2O-がより好ましい。X41、X42、X43、X44、X45、X46及びX47はお互い独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Gはメチレン基又は-O-を表し、u、v、w、x、y及びzはお互い独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下で表す。
【0107】
上記の選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0108】
一般式(IVa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVa-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0109】
【0110】
(式中、R47及びR48はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L50、L51及びL52はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-を表し、M50は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、u1及びv1はそれぞれ独立して0又は1を表す。)
更に具体的には以下の一般式(IVa-2a)~一般式(IVa-3i)
【0111】
【0112】
【0113】
(式中、R47及びR48はそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましく、R47及びR48がそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルコキシル基が更に好ましい。
【0114】
一般式(IVa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVa-4)で示される構造を表すことが好ましい。
【0115】
【0116】
(式中、R41、R44はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。)
【0117】
一般式(IVa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVa-5)で示される構造を表すことが好ましい。
【0118】
【0119】
(式中、R41、R44はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。)
【0120】
一般式(IVa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVa-6)で示される構造を表すことが好ましい。
【0121】
【化10】
(式中、R
41、R
44はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。)
【0122】
一般式(IVb)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVb-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0123】
【0124】
(式中、R49及びR50はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L52、L53及びL54はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-を表し、M51、M52及びM53は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、
w1及びx1は独立して0、1又は2を表すが、w1+x1は2以下を表す。)
更に具体的には以下の一般式(IVb-2a)~(IVb-3l)
【0125】
【0126】
【0127】
(式中、R49及びR50はそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましい。
【0128】
一般式(IVc)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVc-1a)及び一般式(IVc-1b)で示される構造を表すことが好ましい。
【0129】
【0130】
(式中、R51及びR52はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L56、L57及びL58はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-を表し、M54、M55及びM56は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、y1及びz1は独立して0、1又は2を表すが、y1+z1は2以下を表す。)
更に具体的には、以下の一般式(IVc-2a)~(IVc-2g)
【0131】
【0132】
(式中、R51及びR52はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
【0133】
液晶組成物は、上記一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有するが、2種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することがより好ましい。
【0134】
液晶組成物は、上記一般式(IVa-2c)、一般式(IVa-3b)、一般式(IVa-3d)、一般式(IVa-6)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有するのが好ましく、一般式(IVa-2c)、一般式(IVa-3b)及び一般式(IVa-3d)で表される化合物を含有するのが好ましく、一般式(IVa-2c)、一般式(IVa-3b)、一般式(IVa-3d)及び一般式(IVa-6)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0135】
液晶組成物中の負の誘電率異方性の液晶化合物の含有量は、92質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、93質量%以上98.5質量%以下がより好ましく、94質量%以上98.5質量%以下が更に好ましい。
【0136】
また、本実施形態の液晶組成物は、一般式(LC)で表される液晶化合物を含有していてもよい。
【0137】
【0138】
一般式(LC)中、RLCは、炭素原子数1~15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよい。RLCのアルキル基は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0139】
一般式(LC)中、ALC1及びALC2は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)及び基(c)からなる群より選ばれる基を表す。
(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、
(c)1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はクロマン-2,6-ジイル基。
【0140】
前記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、フッ素原子、塩素原子、-CF3又は-OCF3で置換されていてもよい。
一般式(LC)中、ZLCは単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-COO-又は-OCO-を表す。
一般式(LC)中、YLCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1~15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0141】
一般式(LC)中、aは1~4の整数を表す。aが2、3又は4を表し、一般式(LC)中にALC1が複数存在する場合、複数存在するALC1は、同一であっても異なっていてもよく、ZLCが複数存在する場合、複数存在するZLCは、同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC1)及び一般式(LC2)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0142】
【0143】
一般式(LC1)又は(LC2)中、RLC11及びRLC21は、それぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよい。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、RLC11及びRLC21は、それぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基がより好ましく、直鎖状であることが更に好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましい。
【0144】
【化18】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
【0145】
一般式(LC1)又は(LC2)中、ALC11及びALC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表す。該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH2基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4-フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、-CF3又は-OCF3で置換されていてもよい。
【0146】
【0147】
一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、ALC11及びALC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造が好ましい。
【0148】
【0149】
一般式(LC1)又は(LC2)中、XLC11、XLC12、XLC21~XLC23は、それぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、-CF3又は-OCF3を表し、YLC11及びYLC21はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基、-CF3、-OCH2F、-OCHF2又は-OCF3を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、YLC11及びYLC21は、それぞれ独立してフッ素原子、シアノ基、-CF3又は-OCF3が好ましく、フッ素原子又は-OCF3がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0150】
一般式(LC1)又は(LC2)中、ZLC11及びZLC21は、それぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-COO-又は-OCO-を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、ZLC11及びZLC21は、それぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-が好ましく、単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、-OCF2-又は-CF2O-がより好ましく、単結合、-OCH2-又は-CF2O-が更に好ましい。
【0151】
一般式(LC1)又は(LC2)中、mLC11及びmLC21は、それぞれ独立して1~4の整数を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、mLC11及びmLC21は、それぞれ独立して1、2又は3が好ましく、低温での保存安定性、応答速度を重視する場合には1又は2がより好ましく、ネマチック相上限温度の上限値を改善する場合には2又は3がより好ましい。一般式(LC1)又は(LC2)中に、ALC11、ALC21、ZLC11及びZLC21が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0152】
一般式(LC1)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC1-a)から一般式(LC1-c)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0153】
【0154】
一般式(LC1-a)~(LC1-c)中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表す。一般式(LC1-a)から一般式(LC1-c)で表される化合物としては、RLC11はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基がより好ましい。また、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましく、YLC11はそれぞれ独立してフッ素原子、-CF3又は-OCF3が好ましい。
【0155】
一般式(LC1-a)~(LC1-c)中、ALC1a1、ALC1a2及びALC1b1は、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表す。また、一般式(LC1-a)~(LC1-c)中、XLC1b1、XLC1b2、XLC1c1~XLC1c4はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、-CF3又は-OCF3を表す。一般式(LC1-a)から一般式(LC1-c)で表される化合物としては、XLC1b1、XLC1b2、XLC1c1~XLC1c4はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0156】
また、一般式(LC1)は、下記一般式(LC1-d)から一般式(LC1-p)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
一般式(LC1-d)~(LC1-p)中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表す。一般式(LC1-d)~(LC1-p)で表わされる化合物としては、RLC11はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基がより好ましい。また、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。YLC11はそれぞれ独立してフッ素原子、-CF3又は-OCF3が好ましい。
【0162】
一般式(LC1-d)~(LC1-p)中、ALC1d1、ALC1f1、ALC1g1、ALC1j1、ALC1k1、ALC1k2、ALC1m1~ALC1m3はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表す。
【0163】
一般式(LC1-d)~(LC1-p)中、XLC1d1、XLC1d2、XLC1f1、XLC1f2、XLC1g1、XLC1g2、XLC1h1、XLC1h2、XLC1i1、XLC1i2、XLC1j1~XLC1j4、XLC1k1、XLC1k2、XLC1m1及びXLC1m2はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、-CF3又は-OCF3を表す。一般式(LC1-d)~(LC1-m)で表わされる化合物としては、XLC1d1~XLC1m2はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0164】
一般式(LC1-d)~(LC1-p)中、ZLC1d1、ZLC1e1、ZLC1j1、ZLC1k1、ZLC1m1はそれぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-COO-又は-OCO-を表す。一般式(LC1-d)~(LC1-p)で表わされる化合物としては、ZLC1d1~ZLC1m1はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CF2O-又は-OCH2-が好ましい。
【0165】
一般式(LC1-d)~(LC1-p)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC1-1)から一般式(LC1-45)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。一般式(LC1-1)から一般式(LC1-45)中、RLC11はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基を表す。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
一般式(LC2)は、下記一般式(LC2-a)から一般式(LC2-g)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0184】
【0185】
一般式(LC2-a)~(LC2-g)中、RLC21、YLC21、XLC21~XLC23はそれぞれ独立して前記一般式(LC2)におけるRLC21、YLC21、XLC21~XLC23と同じ意味を表す。一般式(LC2-a)~(LC2-g)で表わされる化合物としては、RLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基がより好ましい。また、XLC21~XLC23はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましく、YLC21はそれぞれ独立してフッ素原子、-CF3又は-OCF3が好ましい。
【0186】
一般式(LC2-a)~(LC2-g)中、XLC2d1~XLC2d4、XLC2e1~XLC2e4、XLC2f1~XLC2f4及びXLC2g1~XLC2g4はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、-CF3又は-OCF3を表す。一般式(LC2-a)~(LC2-g)で表わされる化合物としては、XLC2d1~XLC2g4はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0187】
一般式(LC2-a)~(LC2-g)中、ZLC2a1、ZLC2b1、ZLC2c1、ZLC2d1、ZLC2e1、ZLC2f1及びZLC2g1はそれぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-COO-又は-OCO-を表す。一般式(LC2-a)~(LC2-g)で表わされる化合物としては、ZLC2a1~ZLC2g4はそれぞれ独立して-CF2O-又は-OCH2-が好ましい。
【0188】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC3)~一般式(LC5)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0189】
【0190】
(式中、RLC31、RLC32、RLC41、RLC42、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の-CH2-は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、ALC31、ALC32、ALC41、ALC42、ALC51及びALC52はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0191】
【0192】
(該構造中シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上の-CH2-は酸素原子で置換されていてもよく、1,4-フェニレン基中の1つ又は2つ以上の-CH-は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、-CF3又は-OCF3で置換されていてもよい。)のいずれかを表し、ZLC31、ZLC32、ZLC41、ZLC42、ZLC51及びZLC51はそれぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表し、Z5は-CH2-又は酸素原子を表し、XLC41は水素原子又はフッ素原子を表し、mLC31、mLC32、mLC41、mLC42、mLC51及びmLC52はそれぞれ独立して0~3を表し、mLC31+mLC32、mLC41+mLC42及びmLC51+mLC52は1、2又は3であり、ALC31~ALC52、ZLC31~ZLC52が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を一種又は二種以上含むことが好ましい。
RLC31~RLC52は、それぞれ独立して、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましく、
【0193】
【化46】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
A
LC31~A
LC52はそれぞれ独立して下記の構造が好ましく、
【0194】
【0195】
ZLC31~ZLC51はそれぞれ独立して単結合、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-又は-OCH2-が好ましい。
一般式(LC3)、一般式(LC4)、及び一般式(LC5)で表される化合物として、一般式(LC3-1)、一般式(LC4-1)、及び一般式(LC5-1)
【0196】
【0197】
(式中、R31~R33は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、R41~R43は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、Z31~Z33は単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表し、X41は水素原子又はフッ素原子を表し、Z34は-CH2-又は酸素原子を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
一般式(LC3-1)~一般式(LC5-1)において、R31~R33は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基又は炭素原子数2~4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3~5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0198】
R41~R43は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1~5のアルキル基あるいは炭素原子数1~5のアルコキシ基、又は炭素原子数4~8のアルケニル基あるいは炭素原子数3~8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
Z31~Z33は単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表すが、単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表すことが好ましく、単結合又は-CH2O-を表すことがより好ましい。
【0199】
液晶組成物において、一般式(LC3-1)、一般式(LC4-1)、及び一般式(LC5-1)で表される化合物群から選ばれる化合物を5質量%~50質量%含有することが好ましく、5質量%~40質量%含有することが好ましく、5質量%~30質量%含有することがより好ましく、8質量%~27質量%含有することがより好ましく、10質量%~25質量%含有することがさらに好ましい。
【0200】
一般式(LC3-1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC3-11)~一般式(LC3-15)で表される化合物が好ましい。
【0201】
【0202】
(式中、R31は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R41aは炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
一般式(LC4-1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC4-11)~一般式(LC4-14)で表される化合物が好ましい。
【0203】
【0204】
(式中、R32は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R42aは炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X41は水素原子又はフッ素原子を表す。)
一般式(LC5-1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC5-11)~一般式(LC5-14)で表される化合物が好ましい。
【0205】
【0206】
(式中、R33は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R43aは炭素原子数1~5のアルキル基を表し、Z34は-CH2-又は酸素原子を表す。)
一般式(LC3-11)、一般式(LC3-13)、一般式(LC4-11)、一般式(LC4-13)、一般式(LC5-11)、及び一般式(LC5-13)において、R31~R33は、一般式(LC3-1)~一般式(LC5-1)における同様の実施態様が好ましい。R41a~R41cは炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3-12)、一般式(LC3-14)、一般式(LC4-12)、一般式(LC4-14)、一般式(LC5-12)、及び一般式(LC5-14)において、R31~R33は、一般式(LC3-1)~一般式(LC5-1)における同様の実施態様が好ましい。R41a~R41cは炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
【0207】
一般式(LC3-11)~一般式(LC5-14)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(LC3-11)、一般式(LC4-11)、一般式(LC5-11)、一般式(LC3-13)、一般式(LC4-13)及び一般式(LC5-13)が好ましく、一般式(LC3-11)、一般式(LC4-11)、一般式(LC5-11)がより好ましい。
本発明の液晶表示素子における液晶層は、一般式(LC3-11)~一般式(LC5-14)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、1種又は2種含有することがより好ましく、一般式(LC3-1)で表される化合物を1種又は2種含有することが特に好ましい。
【0208】
また、一般式(LC3)、一般式(LC4)、及び一般式(LC5)で表される化合物として、一般式(LC3-2)、一般式(LC4-2)、及び一般式(LC5-2)
【0209】
【0210】
(式中、R51~R53は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、R61~R63は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、B1~B3はフッ素置換されていてもよい、1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、Z41~Z43は単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表し、X42は水素原子又はフッ素原子を表し、Z44は-CH2-又は酸素原子を表す。)
で表される化合物群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0211】
一般式(LC3-2)、一般式(LC4-2)、及び一般式(LC5-2)において、R51~R53は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基又は炭素原子数2~4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3~5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0212】
R61~R63は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1~5のアルキル基あるいは炭素原子数1~5のアルコキシ基、又は炭素原子数4~8のアルケニル基あるいは炭素原子数3~8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
B31~B33はフッ素置換されていてもよい、1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表すが、無置換の1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0213】
Z41~Z43は単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表すが、単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表すことが好ましく、単結合又は-CH2O-を表すことがより好ましい。
一般式(LC3-2)、一般式(LC3-3)、一般式(LC4-2)、及び一般式(LC5-2)で表される化合物は、液晶組成物において10~60質量%含有することが好ましいが、20~50質量%含有することがより好ましく、25~45質量%含有することがより好ましく、28~42質量%含有することがより好ましく、30~40質量%含有することがさらに好ましい。
【0214】
一般式(LC3-2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC3-21)~一般式(LC3-29)で表される化合物が好ましい。
また、一般式(LC3-3)で表される化合物として、次に記載する一般式(LC3-31)~一般式(LC3-33)で表される化合物も好ましい。
【0215】
【0216】
(式中、R51は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R61aは炭素原子数1~5のアルキル基を表すが、一般式(LC3-2)におけるR51及びR61と同様の実施態様が好ましい。)
一般式(LC4-2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC4-21)~一般式(LC4-26)で表される化合物が好ましい。
【0217】
【0218】
(式中、R52は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R62aは炭素原子数1~5のアルキル基を表し、X42は水素原子又はフッ素原子を表すが、一般式(LC4-2)におけるR52及びR62と同様の実施態様が好ましい。)
一般式(LC5-2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC5-21)~一般式(LC5-26)で表される化合物が好ましい。
【0219】
【0220】
(式中、R53は炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基を表し、R63aは炭素原子数1~5のアルキル基を表し、W2は-CH2-又は酸素原子を表すが、一般式(LC5-2)におけるR53及びR63と同様の実施態様が好ましい。)
【0221】
一般式(LC3-21)、一般式(LC3-22)、一般式(LC3-25)、一般式(LC4-21)、一般式(LC4-22)、一般式(LC4-25)、一般式(LC5-21)、一般式(LC5-22)、及び一般式(LC5-25)において、R51~R53は、一般式(LC3-2)、一般式(LC4-2)及び一般式(LC5-2)における同様の実施態様が好ましい。R61a~R63aは炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3-23)、一般式(LC3-24)及び一般式(LC3-26)、一般式(LC4-23)、一般式(LC4-24)及び一般式(LC4-26)、一般式(LC5-23)、一般式(LC5-24)及び一般式(LC5-26)においてR51~R53は、一般式(LC3-2)、一般式(LC4-2)及び一般式(LC5-2)における同様の実施態様が好ましい。R61a~R63aは炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
【0222】
一般式(LC3-21)~一般式(LC5-26)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(LC3-21)、一般式(Lc3-22)及び一般式(LC3-25)、一般式(LC4-21)、一般式(LC4-22)及び一般式(LC4-25)、一般式(LC5-21)、一般式(LC5-22)及び一般式(LC5-25)が好ましい。
一般式(LC3-2)、一般式(Lc4-2)及び一般式(LC5-2)で表される化合物は1種又は2種以上含有することができるが、B1~B3が1,4-フェニレン基を表す化合物、及びB1~B3がトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表す化合物をそれぞれ少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【0223】
また、一般式(LC3)で表される化合物として、他には、下記一般式(LC3-a)及び一般式(LC3-b)
【0224】
【0225】
(式中、RLC31、RLC32、ALC31及びZLC31はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31、RLC32、ALC31及びZLC31と同じ意味を表し、XLC3b1~XLC3b6は水素原子又はフッ素原子を表すが、XLC3b1及びXLC3b2又はXLC3b3及びXLC3b4のうちの少なくとも一方の組み合わせは共にフッ素原子を表し、mLC3a1は1、2又は3であり、mLC3b1は0又は1を表し、ALC31及びZLC31が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0226】
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基又は炭素原子数2~7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
ALC31は、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すことが好ましく、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基を表すことがより好ましい。
ZLC31は単結合、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
【0227】
一般式(LC3-a)としては、下記一般式(LC3-a1)を表すことが好ましい。
【0228】
【0229】
(式中、RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、RLC31が炭素原子数1~7のアルキル基を表し、RLC32が炭素原子数1~7のアルコキシ基を表すことがより好ましい。
一般式(LC3-b)としては、下記一般式(LC3-b1)~一般式(LC3-b12)を表すことが好ましく、一般式(LC3-b1)、一般式(LC3-b6)、一般式(LC3-b8)、一般式(LC3-b11)を表すことがより好ましく、一般式(LC3-b1)及び一般式(LC3-b6)を表すことがさらに好ましく、一般式(LC3-b1)を表すことが最も好ましい。
【0230】
【0231】
(式中、RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
RLC31及びRLC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、RLC31が炭素原子数2又は3のアルキル基を表し、RLC32が炭素原子数2のアルキル基を表すことがより好ましい。
また、一般式(LC4)で表される化合物は、下記一般式(LC4-a)から一般式(LC4-c)で表される化合物が好ましく、一般式(LC5)で表される化合物は、下記一般式(LC5-a)から一般式(LC5-c)で表される化合物が好ましい。
【0232】
【0233】
(式中、RLC41、RLC42及びXLC41はそれぞれ独立して前記一般式(LC4)におけるRLC41、RLC42及びXLC41と同じ意味を表し、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して前記一般式(LC5)におけるRLC51及びRLC52と同じ意味を表し、ZLC4a1、ZLC4b1、ZLC4c1、ZLC5a1、ZLC5b1及びZLC5c1はそれぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表す。)
RLC41、RLC42、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基又は炭素原子数2~7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
ZLC4a1~ZLC5c1はそれぞれ独立して単結合、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
【0234】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC6)で表される化合物(ただし、一般式(LC1)~一般式(LC5)で表される化合物を除く。)から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0235】
【0236】
一般式(LC6)中、RLC61及びRLC62は、それぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH2基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン置換されていてもよい。一般式(LC6)で表わされる化合物としては、RLC61及びRLC62は、それぞれ独立して、炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記のいずれかの構造を表すことが最も好ましい。
【0237】
【化61】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
【0238】
一般式(LC6)中、ALC61~ALC63はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表す。該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH2CH2基は-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-で置換されていてもよく、1,4-フェニレン基中1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。
【0239】
【化62】
一般式(LC6)で表わされる化合物としては、A
LC61~A
LC63は、それぞれ独立して下記のいずれかの構造が好ましい。
【0240】
【0241】
一般式(LC6)中、ZLC61及びZLC62はそれぞれ独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-を表し、mLC61は0~3を表す。一般式(LC6)で表わされる化合物としては、ZLC61及びZLC62はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又は-CF2O-が好ましい。
【0242】
一般式(LC6)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC6-a)から一般式(LC6-v)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。一般式(LC6-a1)~一般式(LC6-p1)の式中、RLC61及びRLC62はそれぞれ独立して炭素原子数1~7のアルキル基、炭素原子数1~7のアルコキシ基、炭素原子数2~7のアルケニル基又は炭素原子数2~7のアルケニルオキシ基を表す。
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
液晶組成物は、式(LC6-a1)、式(LC6-b1)、式(LC6-c1)、式(LC6-e1)、式(LC6-f1)、式(LC6-p1)からなる群から選択される化合物を1種または2種以上含有するのが好ましい。
また、液晶組成物は、式(LC6-a1)、式(LC6-c1)、式(LC6-e1)、式(LC6-f1)、式(LC6-p1)からなる群から選択される化合物を1種または2種以上含有するのが好ましい。
なかでも、式(LC6-a1)、式(LC6-c1)、式(LC6-e1)及び式(LC6-f1)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0248】
[b]重合性液晶化合物
本実施形態で使用される重合性液晶化合物は、下記一般式(P)で表される重合性液晶化合物を更に1種又は2種以上含有するのが好ましい。
【0249】
【0250】
(式中、
Zp1は、フッ素原子、シアノ基、水素原子、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルキル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルコキシ基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1~15のアルケニルオキシ基又は-Spp2-Rp2を表し、
Rp1及びRp2は、それぞれ独立して、以下の式(R-I)~式(R-VIII):
【0251】
【0252】
(式中、
*でSpp1又はSpp2と結合し、
R2~R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5個のアルキル基又は炭素原子数1~5個のハロゲン化アルキル基を表し、
Wは、単結合、-O-又はメチレン基を表し、
Tは、単結合又は-COO-を表し、
p、t及びqは、それぞれ独立して、0、1又は2を表す。)
のいずれかを表し、
Spp1及びSpp2は、それぞれ独立して、スペーサー基又は単結合を表し、
Lp1及びLp2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-CO-、-C2H4-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH2-、-CH2OCOO-、-OCH2CH2O-、-CO-NRa-、-NRa-CO-、-SCH2-、-CH2S-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-(CH2)z-C(=O)-O-、-(CH2)z-O-(C=O)-、-O-(C=O)-(CH2)z-、-(C=O)-O-(CH2)z-、-CH2(CH3)C-C(=O)-O-、-CH2(CH3)C-O-(C=O)-、-O-(C=O)-C(CH3)CH2、-(C=O)-O-C(CH3)-CH2、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF2-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-又は-C≡C-(式中、Raは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、zは、1~4の整数を表す。)を表し、
Mp1及びMp2は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、アントラセン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、インダン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すが、Mp1及びMp2は無置換であるか又は炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は-Spp1-Rp1で置換されていてもよく、
Mp3は、単結合又は以下の式(i-13)~(ix-13):
【0253】
【0254】
(式中、*でLp2又はZp1と結合し、**でLp2と結合する。)
のいずれかを表し、
mp2は、それぞれ独立して0、1又は2を表し、
mp1及びmp3は、それぞれ独立して1、2又は3を表し、
Zp1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rp1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rp2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Spp1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Spp2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Lp1が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよく、Mp2が複数存在する場合にはそれらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0255】
重合性液晶化合物は、少なくとも2つの重合性基を有することが好ましい。これにより、成長反応が高まることで低分子液晶中に残存する量が大幅に減少し、式(P)のMp1~Mp3、及びLp1~Lp2から成る構造式はメソゲン基として表し、このメソゲン基を配向させて重合すると二つの重合性基によりメソゲン基の配向が安定化され、屈折率異方性の一軸性の光学軸を示す高分子スペーサー及びポリマーネットワークを形成できる。又、外力による変形や熱に対しても、メソゲン基の配向を安定させることができ好ましい。更に、架橋により一対の基材同士を強固に連結することができる。
【0256】
また、重合性液晶化合物は、複屈折率が低い脂環式炭化水素構造を有する化合物を含んでいてもよく、一般式(i)で表される重合性液晶化合物を含んでいてもよい。
【化71】
(式中、R
1は、水素原子、炭素原子数1~5個のアルキル基又は炭素原子数1~5個のハロゲン化アルキル基を表し、Spはスペーサー基、又は単結合を表し、Sp中の-CH
2-は-O-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH=CH-、-CF
2-又は-C≡C-に置き換わっても良く、Xは脂肪族環状基を表し、nは1~4の整数を表す)
【0257】
また、一般式(i)のXが、コレステリル基、イソボロニル基、アダマンチル基、炭素数6~16のシクロアルキレン基、ビシクロヘキシレン基、ビシクロペンタニル基、ビシクロペンテニル基又はビシクロオクチル基から選ばれる構造であってもよい。
【0258】
液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、2.0質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上6.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上5.5質量%以下が更に好ましい。
【0259】
[c]重合開始剤
本実施形態の液晶組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。特にアセトフェノン類、ベンジルケタール類が好ましく、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「オムニラッド184」、2,2-ジメソキシ-2-フェニルアセトフェノン「オムニラッド651」、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン「オムニラッド1173」、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モリホリノプロパン-1「オムニラッド907」、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン「オムニラッド369」)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン「オムニラッド379」、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド「オムニラッドTPO」、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-フォスフィンオキサイド「オムニラッド819」(IGM Resins株式会社製)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)],2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン「イルガキュア651」、エタノン「イルガキュアOXE01」)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)「イルガキュアOXE02」、「イルガキュアOXE04」(BASF株式会社製)、「アデカアークルズNCI-831」、「アデカアークルズNCI-930」、「アデカアークルズN-1919」(ADEKA社製)、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ-ドプレキンソップ社製「カンタキュア-ITX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、「エサキュア ONE」、「エサキュアKIP150」、「エサキュアKIP160」、「エサキュア1001M」、「エサキュアA198」、「エサキュアKIP IT」、「エサキュアKTO46」、「エサキュアTZT」(lamberti株式会社製)、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」(LAMBSON社製)等が挙げられる。さらに、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物などが挙げられる。電圧保持率、高信頼性の観点からは。重合性基を有する下記(PI-1)及び(PI-2)の化合物を用いてもよい。
【0260】
【0261】
重合開始剤の含有量は、液晶化合物、重合性液晶化合物、光重合開始剤及び重合禁止剤の合計を100質量%としたとき、0.001質量%以上0.24質量%以下であるのが好ましく、0.002質量%以上0.18質量%以下がより好ましく、0.002質量%以上0.15質量%以下が更に好ましい。
【0262】
[d]重合禁止剤
本実施形態の液晶組成物は、重合禁止剤を含有している。重合禁止剤としては、重合性液晶化合物の分野において公知のものが使用できる。
【0263】
例えば、4-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、等のフェノール系化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、tert-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン、等のキノン系化合物、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、2-シアノフェノチアジン、ビス(α-メチルベンジル)フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、ビス(α、α-ジメチルベンジン)フェノチアジン等のフェノチアジン系化合物、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、4.4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、等のアミン系化合物、ジステアリルチオジプロピオネート、等のチオエーテル系化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、N-ニトロソジナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N,N-ジメチル-p-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N -n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、ニトロソベンゼン、2,4.6-トリ-tert-ブチルニトロンベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、等のニトロソ系化合物が挙げられる。
【0264】
重合禁止剤は、キノン系化合物及びフェノール系化合物のうちの1種又は2種からなるのが好ましい。また、重合禁止剤としては、液晶の抵抗を下げないものが好ましいことから、極性が小さい化合物を選択することができる。
具体的には、重合禁止剤としては、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンなどが挙げられる。
【0265】
重合性液晶組成物中の重合禁止剤の含有量は、0.3質量%以上7.0質量%以下であるのが好ましく、0.4質量%以上6.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下が更に好ましい。
【0266】
[e]安定剤
本実施形態の液晶組成物は、その保存安定性を向上させるために、安定剤を含有していいてもよい。安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等や下記(AD-1)~(AD-11)等のヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類が挙げられる。
【0267】
光安定剤としては例えば、「TINUVIN 111FDL」、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 144」、「TINUVIN 152」、「TINUVIN 292」、「TINUVIN 622」、「TINUVIN 770」、「TINUVIN 765」、「TINUVIN 780」、「TINUVIN 905」、「TINUVIN 5100」、「TINUVIN 5050」、「TINUVIN 5060」、「TINUVIN 5151」、「CHIMASSORB 119FL」、「CHIMASSORB 944FL」、「CHIMASSORB 944LD」(以上、BASF株式会社製)、「アデカスタブLA-52」、「アデカスタブLA-57」、「アデカスタブLA-62」、「アデカスタブLA-67」、「アデカスタブLA-63P」、「アデカスタブLA-68LD」、「アデカスタブLA-77」、「アデカスタブLA-82」、「アデカスタブLA-87」(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0268】
安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物の総量に対して、0.001質量%以上0.7質量%以下の範囲が好ましく、0.001質量%以上0.6質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上0.06質量%以下が更に好ましい。安定剤の具体的構造の一例を下記の(AD-1)~(AD-11)に示す。
【0269】
【0270】
【0271】
液晶組成物において、(AD-1)~(AD-11)で表される化合物から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、その含有量は、液晶組成物の総量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上0.05質量%以下が更に好ましい。
【0272】
[f]紫外線吸収剤
本実施形態の液晶組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール「チヌビン PS」、「TINUVIN 234」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 477」、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール「TINUVIN 900」、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール「TINUVIN 928」、「TINUVIN 1130」、「TINUVIN 400」、「TINUVIN 405」、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン「TINUVIN 460」、「チヌビン 479」、「TINUVIN 5236」(以上、BASF株式会社製)、「アデカスタブLA-32」、「アデカスタブLA-34」、「アデカスタブLA-36」、「アデカスタブLA-31」、「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0273】
紫外線吸収剤の添加量は、液晶組成物の総量に対して、0.01質量%以上0.09質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.06質量%以下であることがより好ましい。
【0274】
[g]連鎖移動剤
液晶組成物は、高分子スペーサーと基材との密着性をより向上させるため、または、高分子スペーサーを均一に重合させるため、連鎖移動剤を含有することができる。連鎖移動剤としては、芳香族炭化水素類、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、
【0275】
オクチルメルカプタン、n―ブチルメルカプタン、n―ペンチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメル、n―ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t―ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等のチオール化合物、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のスルフィド化合物、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジビニルアニリン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、アクロレイン、アリルアルコール、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルビネン、ジペンテン、等が挙げられるが、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、チオール化合物がより好ましい。
【0276】
具体的には下記一般式(9-1)~(9-12)で表される化合物が好ましい。
【0277】
【0278】
【0279】
式中、R95は炭素原子数2~18のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であっても良く、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-、又は-CH=CH-で置換されていてもよく、R96は炭素原子数2~18のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-、又は-CH=CH-で置換されていてもよい。
【0280】
連鎖移動剤は、重合性組成物の各成分を混合し加熱攪拌して重合性組成物を調製する工程において添加することが好ましいが、その後の、重合性組成物及び液晶組成物を混合する工程においてに添加してもよいし、両方の工程において添加してもよい。
連鎖移動剤の添加量は、重合性液晶組成物の総量に対して、0.05質量%以上0.9質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましい。
【0281】
[h]色材
重合性組成物は、必要に応じて染料や顔料等の色材を含有することができる。
【実施例0282】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は、特段の記載がない限り、「質量%」を意味する。
【0283】
[液晶セルの作製]
基材として、ITOの透明電極が蒸着してある80μmのポリカーボネート基材を用い、日産化学社製のSE-4811を垂直配向膜として基材のITO膜表面に塗布した。塗布膜硬化後に配向容易軸傾斜角度が基材の法線方向に対して1度になるようにラビング処理を行い、直径3μmのビーズスペーサーを配向膜上に散布して、ラビング方向が180°反対方向で配向膜が向かい合う(アンチラビング)ように二枚の基材を貼り合わせて液晶空セル(アンチラビングセル)を作製した。表1に示す物性を有するLCN1~LCN4のうちのいずれかの液晶化合物と、MM-1~MM-6のうちの1種又は複数種の重合性液晶化合物と、PI1~PI2のうちのいずれかの重合開始剤と、IH1~IH9のうちいずれかの重合禁止剤とを、表2-1~表2-3に記載の配合量で調整し、得られた重合性液晶組成物を液晶空セルに真空注入した。各実施例で使用した重合性液晶組成物を表2-1~表2-3に示す。重合開始剤は、重合性液晶化合物の添加量に対して0.02%になるように調整した。
【0284】
実施例、比較例で使用した液晶化合物LCN1~LCN4、重合性液晶化合物MM-1~MM-6、重合開始剤PI1~PI2、及び重合禁止剤IH1~IH9の構造式を以下に示す。
【0285】
次に、光学マスクとして、高分子スペーサーに対応する格子の線幅10μm、画素領域(液晶領域)に対応する開口部の幅100μmの格子パターンを有するものを用い、波長365nmでUV強度1mW/cm2の紫外線を基準として表3に示す条件で紫外線露光を行った。液晶を注入したセルにマスク露光して格子状の高分子スペーサーを形成した。露光量(積算光量)は全ての実施例で5.4J/cm2とした。マスク露光した後に光学マスクを取り除き、365nmで表3に示す条件で紫外線露光して、画素部に光軸が基材に対して垂直、又は配向膜の配向容易軸傾斜角度で傾斜したポリマーネットワークを形成し、液晶セルを得た。リ綱領(積算光量)は全ての実施例で12J/cm2とした。
【0286】
(実施例1~4)
重合性液晶組成物に含有する液晶化合物の種類をそれぞれLCN-1、LCN-2、LCN-3及びLCN-4とし、液晶セルを得た。
【0287】
(実施例5~8)
重合禁止剤IH-1を重合禁止剤IH-3に変えたこと以外は、実施例1~4と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0288】
(実施例9)
重合禁止剤IH-3の含有量を1%から2.5%に増加させたこと以外は、実施例8と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0289】
(実施例10)
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物MM-1の含有量(モノマー濃度)を3.503%から4.379%に増加させたこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0290】
(実施例11)
重合性液晶化合物MM-1を重合性液晶化合物MM-3に変更してモノマーの炭素数を2から4に変え、重合性液晶化合物MM-3の含有量(モノマー濃度)を5.838%に増加させたこと以外は、実施例10と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0291】
(実施例12)
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量(モノマー濃度)は同じで重合性液晶化合物MM-1と重合性液晶化合物MM-3を6:4の質量比で加えたこと以外は、実施例6と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0292】
(実施例13)
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量(モノマー濃度)は同じで重合性化合物のMM-1と重合性化合物MM-4を8:2の質量比で加えたこと以外は、実施例12と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0293】
(実施例14)
重合開始剤PI-1の代わりに重合性液晶化合物MM-6を5.838%で加えたこと以外は、実施例12と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0294】
(実施例15)
液晶化合物LCN-1の代わりに液晶化合物LCN-4を使用し、且つ重合開始剤PI-1の代わりに重合性液晶化合物MM-5を0.035%で加えたこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0295】
(実施例16)
液晶化合物LCN-1の代わりに液晶化合物LCN-3を使用したこと以外は、実施例15と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0296】
(実施例17)
液晶化合物LCN-4の代わりに液晶化合物LCN-3を使用し、且つ重合禁止剤IH-3の代わりに重合禁止剤IH-4を使用したこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0297】
(実施例18~22)
重合禁止剤IH-4の代わりに、重合禁止剤IH-5、重合禁止剤IH-6、重合禁止剤IH-7、重合禁止剤IH-8又は重合禁止剤IH-9を使用したこと以外は、実施例17と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
また、実施例18では、高分子スペーサー形成の際のUV強度を0.5mW/cm2とし、実施例19~22と比較して低くして、液晶セルを作製した。
【0298】
(実施例23)
重合性液晶化合物MM-1の代わりに重合性液晶化合物MM-2を使用したこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0299】
(実施例24)
重合開始剤PI-1の代わりに重合性化合物MM-5及び重合性化合物MM-6を1:1の質量比で加え、且つ高分子スペーサー形成の際のUV強度を2.0mW/cm2から1.0mW/cm2に減少させたこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0300】
(実施例25)
重合開始剤PI-1の代わりに重合開始剤PI-2を使用したこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0301】
(実施例26)
重合禁止剤IH-3の含有量を2.5%から5%へ増加させたこと以外は、実施例9と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0302】
(参考例)
液晶化合物LCN-4のみを含有する液晶組成物を用いたこと以外は、実施例26と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0303】
次に、上記で得られた実施例1~26を、以下の方法で測定、評価した。
【0304】
[評価]
上記実施例、比較例で作製した液晶セルを、液晶の傾斜方位方向を直交ニコルの斜め45度方向へ揃えて5Vの電圧を印加して偏光顕微鏡(ニコンソリューションズ社製、ECLIPSE LV100N POL)で観察した。また、格子状の高分子スペーサーの線幅を偏光顕微鏡(ニコンソリューションズ社製、DSFi-3)に取り付けてあるCCDカメラのデジタル画像処理で二点間の距離を測定して評価した。
【0305】
画素部分の特性は、駆動電圧は、電圧-透過率特性を測定して、透過率変化量の内、最大透過率を100%、最小透過率を0%とした時、透過率量が90%に変化させるのに必要な印加電圧を駆動電圧として定義した。
OFF応答は、上述で定義した駆動電圧を印加してON状態にした後、ON状態から印加電圧を0Vにした時のOFF状態への透過率の時間変化を測定して、透過率の時間変化量の内、90%から10%に変化する時間をOFF応答として定義した。
OFFヘイズ又はONヘイズは、駆動電圧を印加したON状態又は駆動電圧を印加していないOFF状態で、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて、拡散透過率Tdと全光線透過率Ttの割合から求めた。結果を表3に示す。
ヘイズ(%)=Td/Tt * 100
(液晶化合物)
【0306】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【化82】
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0313】
【化83】
2,2-ジメソキシ-2-フェニルアセトフェノン
(重合禁止剤)
【0314】
【化84】
2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン
又は
【0315】
【0316】
【化86】
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール
又は
【0317】
【化87】
3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル
又は
【0318】
【0319】
【0320】
【化90】
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル
又は
【0321】
【0322】
【化92】
1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル
【0323】
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
先ず、表3の結果から、実施例1~26のいずれでも、重合禁止剤の濃度とUV露光時間を適切に設定すると、直交ニコルの暗さと同等の格子状の綺麗な高分子スペーサーが形成され、また、光学マスクの格子パターンの線幅10μmに対して線幅10.9μm~14.6μmの高分子スペーサーが得られた。駆動電圧も8.1V~10.8Vの値であり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。また、高分子スペーサーの周囲で高電圧印加による透過率変化が観察されることから、高分子スペーサーの線幅が減少すると駆動電圧も減少する傾向が見られた。
【0328】
更に、実施例1~26のいずれでも、液晶領域としての画素部に、基材に対して垂直な一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークが形成されており、駆動電圧OFF時の応答時間(OFF応答)が参考例の約1/2に短くなり、高速応答性が得られることが分かった。
【0329】
また、参考例として、液晶化合物LCN-4のみを上記の方法で作製した空セルに注入して特性を測定した結果を表3に示す。実施例1~26と参考例を比較すると、ポリマーネットワークが形成されている実施例1~26のいずれでも、駆動電圧OFF時のヘイズ(OFFヘイズ)が、ポリマーネットワークが形成されていない参考例のOFFヘイズと同レベルであった。このことから、実施例1~26では、基材に対して垂直な一軸性の屈折率異方性の光学軸を有するポリマーネットワークが形成されており、液晶分子及びポリマーネットワークによる光散乱が生じていないことが確認された。
【0330】
また、駆動電圧ON時のヘイズ(ONヘイズ)は、駆動電圧ON時の液晶配向の影響を受け、実施例1~26の駆動電圧ONのヘイズは、参考例と比べて僅かに増加したものの、コントラストに殆ど影響を及ぼしておらず、液晶セルのコントラストが良好であることが確認された。
【0331】
詳細には、実施例1~4では、液晶組成を変えても、平均線幅13.5μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は、液晶物性により誘電率異方性Δεの影響で多少増減するものの、9.8V以内の値であり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0332】
実施例5~8では、液晶組成を変えても平均線幅13.4μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は、液晶物性により誘電率異方性Δεの影響で多少増減するものの、10V以内の値であり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0333】
実施例9では、重合禁止剤MM-3の含有量を実施例8よりも増加させると、線幅12.2μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0334】
実施例10では、重合性液晶化合物MM-1の含有量を実施例9よりも増加させると、線幅11.8μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は10.3Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0335】
実施例11では、重合性液晶化合物MM-3のモノマーの炭素数を2から4に変え、且つその含有量を増加させて高分子スペーサーの長さを変えても、線幅12.4μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は11Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。尚、重合性液晶化合物の含有量を増加させると高分子スペーサーの線幅が広がる傾向があるが、UV露光強度を0.5mW/cm2に低くすることにより、高分子スペーサーの線幅の増加を抑制させることができた。
【0336】
実施例12では、重合性液晶化合物MM-1と、駆動電圧を下げるのに有用な重合性液晶化合物MM-3とを6:4の質量比で加えると、線幅11.1μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は8.1Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0337】
実施例13では、重合性化合物のMM-1と、駆動電圧を上げるのに有用な重合性化合物MM-4を8:2の質量比で加えると、線幅13.6μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は10.8Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0338】
実施例14では、重合性液晶化合物MM-1,MM-3に、これら重合性液晶化合物MM-1,MM-3を連鎖反応によって架橋させることができる重合性液晶化合物MM-6を加えると、線幅13.2μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は10.3Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0339】
実施例15では、液晶化合物LCN-1及び重合性液晶化合物MM-1,MM-5を用いると、線幅14.1μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.4Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0340】
実施例16では、液晶化合物LCN-3及び重合性液晶化合物MM-1,MM-5を用いると、線幅13.5μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.1Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0341】
実施例17では、液晶化合物LCN-3、重合性液晶化合物MM-1及び重合禁止剤IH-4を用いると、線幅14.8μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.7Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0342】
実施例18~22では、重合禁止剤IH-5、重合禁止剤IH-6、重合禁止剤IH-7、重合禁止剤IH-8又は重合禁止剤IH-9を用いると、線幅10.9μm、13.6μm、12.2μm、13.1μm、14.6μm又は14.6μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は、9.3V以内の値であり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0343】
実施例23では、重合性液晶化合物MM-2を用いると、線幅14.1μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.4Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0344】
実施例24では、重合性液晶化合物MM-2に、更に重合性化合物MM-5,MM-6を加え、且つ高分子スペーサー形成の際のUV強度を1.0mW/cm2に減少させると、重合性化合物MM-5,MM-6は重合開始剤PI-1と比べて反応性が遅いことから、光学マスクからの漏れ光影響が受け難くなり、その結果線幅11.5μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.4Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0345】
実施例25では、重合開始剤PI-2を用いると、重合開始剤PI-2は、重合開始剤PI-1と比べて365nmの波長で反応性が高くなる傾向があることから、実施例9よりも若干大きい線幅13.4μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.4Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0346】
実施例26では、重合禁止剤IH-3の含有量を増加させると、重合禁止剤IH-3の誘導時間がその増量分だけ長くなり、光学マスクからの漏れ光の影響を受け難くなることから高分子スペーサーの線幅の増大が抑制され、その結果実施例9よりも小さい線幅11.3μmの高分子スペーサーが形成された。駆動電圧は9.2Vであり、良好な低駆動電圧特性が得られることが分かった。
【0347】
(比較例1)
表4に示すように、液晶化合物LCN-4を80%、非液晶性の重合性液晶化合物NOA-65(ノーランド社製、光学用光重合接着剤メルカプト-エステルアクリレート)を20%の含有量で混合し、重合禁止剤を使用せず、且つ温度及びUV露光条件を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを作製した。光学マスクを通してUV強度2.5mW/cm2で36分間露光して、露光量5.4J/cm2で高分子スペーサを形成させた後、光学マスクを取り外してセル全面にUV強度20mW/cm2で10分間露光して、露光量12J/cm2でポリマーネットワークを形成した。
【0348】
(比較例2)
重合禁止剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0349】
(比較例3)
重合性液晶化合物MM-1の含有量を3.593%から4.990%に増加させたこと以外は、比較例2と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0350】
(比較例4)
重合性液晶化合物MM-1の含有量を3.593%から2.495%に減少させ、且つUV強度5mW/cm2で18分間露光して高分子スペーサーを形成したこと以外は、比較例2と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0351】
(比較例5)
重合禁止剤を使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして重合性液晶組成物を調整し、液晶セルを得た。
【0352】
上記で得られた比較例1~5を、実施例1~26と同様にして測定、評価した。結果を表5に示す。
【0353】
【0354】
【0355】
先ず、比較例1で得られた液晶セルを、直交ニコルの偏光顕微鏡で観察した。駆動電圧OFF状態の偏光顕微鏡写真を
図10A及び
図10Bに示す。偏光方向に対し液晶セルのラビング方向を斜め45度と90度になるように配置して観察すると、いずれも格子状の高分子スペーサー周囲に、線幅約2μm程度の光抜けする部分が観察された。これは、高分子スペーサーと液晶が接している界面で液晶の配向が乱れており、コントラスト低下や光散乱発生を引き起こしていることを示している。
【0356】
また、比較例1では、液晶化合物LCN-4及び非液晶性重合化合物NOA-65を用いると、高分子スペーサーの線幅が31.6μmと大きく広がった。また、高分子スペーサー部分を除く液晶領域としての画素部に垂直配向性のポリマーネットワークが殆ど形成されていないため、駆動電圧OFF時の応答時間が参考例と同等レベルであり、応答特性が劣った。
【0357】
比較例2では、重合禁止剤が含有されていないと、高分子スペーサーの線幅が27.7μmと大きく広がった。これは、重合禁止剤の作用による誘導時間の影響が無いため、遮光領域の重合性液晶化合物が光学マスクからの漏れ光に反応し、高分子スペーサーの線幅が増加した。また、駆動電圧は14.3Vであり、実施例1~26と比較して駆動電圧特性が劣った。
【0358】
比較例3では、重合性液晶化合物MM-1の含有量を増加させると、高分子スペーサーの線幅が34.6μmと大きく広がった。これは、系の反応性が高まって遮光領域の重合性液晶化合物が光学マスクからの漏れ光に反応し易くなるため、高分子スペーサーの線幅が大幅に増加した。また、ポリマーネットワークによる液晶化合物の配向の乱れが生じ、ONヘイズが増加してコントラスト低下の原因になった。駆動電圧は18.7Vであり、実施例1~26と比較して駆動電圧特性が大きく劣った。
【0359】
比較例4では、重合性液晶化合物MM-1の含有量を減少させ、且つ高分子スペーサー形成の際のUV強度を5mW/cm2に増大させると、高分子スペーサーの線幅が34.6μmと大きく広がった。これは、系の反応性が低下して遮光領域の重合性液晶化合物が光学マスクからの漏れ光に対して反応し難くなるものの、UV強度が強く重合禁止剤が含有されていないため、高分子スペーサーの線幅が増加した。駆動電圧は13.6Vであり、実施例1~26と比較して駆動電圧特性が劣った。
【0360】
比較例5では、重合禁止剤が含有されていないと、高分子スペーサーの線幅が25.8μmに広がった。比較例2と同様、重合禁止剤の作用による誘導時間の影響が無いため、遮光領域の重合性液晶化合物が光学マスクからの漏れ光に反応し、高分子スペーサーの線幅が増加した。駆動電圧は11.6Vであり、実施例1~26と比較して駆動電圧特性が劣った。