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特開2022-91109走査素子とこの走査素子を備えた誘導式位置測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091109
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】走査素子とこの走査素子を備えた誘導式位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220613BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G01D5/20 110H
G01D5/245 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021162581
(22)【出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】20212349
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ハイネマン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オリバー・ティーマン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077CC08
2F077FF03
2F077NN02
2F077NN16
2F077VV02
2F077WW04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】走査素子と、走査素子を備えた誘導式位置測定装置とを提供する。
【解決手段】多層プリント基板と、電子部品とを含む走査素子に関し、プリント基板は、第1の受信線を有する第1の検出器ユニットを含む。プリント基板は、第2の受信線を有する第2の検出器ユニットをさらに含む。プリント基板は、検出器ユニットの間に位置する幾何学的な中心面を有する。受信線は、それぞれ周期的な経路を有する第1および第2の受信導体路を含み、第1の受信線は、その延びに沿って第1の隙間を有し、第1の隙間は、第1の受信導体路によって画定されている。第2の受信線は第2の隙間を有し、第2の隙間は、第2の受信導体路によって画定されている。プリント基板はスルーホールを有し、このスルーホールは第1の隙間内にも第2の隙間内にも配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導式位置測定装置のための走査素子(1)であって、多層プリント基板(1.1)と、電子部品(1.2)とを含む走査素子において、前記プリント基板(1.1)は、
- 第1の励磁線(1.111)および第1の受信線(1.112)を有する第1の検出器ユニット(1.11)であって、前記第1の検出器ユニット(1.11)は、前記プリント基板(1.1)の第1の層(A)および第2の層(B)に配置されている、第1の検出器ユニット(1.11)と、
- 第2の励磁線(1.121)および第2の受信線(1.122)を有する第2の検出器ユニット(1.12)であって、前記第2の検出器ユニット(1.12)は、前記プリント基板(1.1)の第3の層(E)および第4の層(F)に配置されている、第2の検出器ユニット(1.12)と、を含み、
前記プリント基板(1.1)は、前記検出器ユニット(1.11、1.12)の間に位置する幾何学的な中心面(M)を有し、
前記受信線(1.112、1.122)は、軸(R)を中心に周方向に一周するように配置されており、
前記第1の受信線(1.112)は第1の受信導体路(1.1121)を含み、前記第2の受信線(1.122)は第2の受信導体路(1.1221)を含み、前記第1の受信導体路(1.1121)および前記第2の受信導体路(1.1221)はそれぞれ周期的な経路を有し、
前記第1の受信線(1.112)は、周方向での前記第1の受信線(1.112)の延びに沿って第1の隙間(U1)を有し、前記第1の隙間(U1)は、前記第1の受信導体路(1.1121)によって画定されており、
前記第2の受信線(1.122)は、周方向での前記第2の受信線(1.122)の延びに沿って第2の隙間(U2)を有し、前記第2の隙間(U2)は、前記第2の受信導体路(1.1221)によって画定されており、
前記プリント基板(1.1)はスルーホール(1.15)を有し、前記スルーホール(1.15)は前記第1の隙間(U1)内にも前記第2の隙間(U2)内にも配置されている、走査素子。
【請求項2】
請求項1に記載の走査素子(1)であって、
前記スルーホール(1.15)は、
前記第1の検出器ユニット(1.11)を前記第3の層(E)もしくは前記第4の層(F)と電気的に接続し、または
前記第2の検出器ユニット(1.12)を前記第1の層(A)もしくは前記第2の層(B)と電気的に接続する、走査素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の走査素子(1)であって、
前記スルーホール(1.15)は前記電子部品(1.2)の1つに電気接触している、走査素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記スルーホール(1.15)はスルーホールビアとして使用されている、走査素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第1の隙間(U1)は周方向に第1の長さ(L1)で延び、前記第1の受信導体路(1.1121)は、第1の周期長(λ1)をもつ周期的な経路を有し、ここで、L1≧1/8・λ1が成立する、走査素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第2の隙間(U2)は周方向に第2の長さ(L2)で延び、前記第2の受信導体路(1.1221)は、第2の周期長(λ2)をもつ周期的な経路を有し、ここで、L2≧1/8・λ2が成立する、走査素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第1の受信導体路(1.1121)は、第1の周期長(λ1)をもつ周期的な経路を有し、前記第2の受信導体路(1.1221)は、第2の周期長(λ2)をもつ周期的な経路を有し、前記第2の周期長(λ2)は前記第1の周期長(λ1)以上の長さである、走査素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第2の検出器ユニット(1.12)と、前記電子部品(1.2)の少なくとも1つとは、前記プリント基板(1.1)の同じ側に配置されている、走査素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第1の検出器ユニット(1.11)は第3の受信線(1.114)を有し、前記第2の検出器ユニット(1.12)は第4の受信線(1.124)を有する、走査素子。
【請求項10】
請求項9に記載の走査素子(1)であって、
前記第3の受信線(1.114)は第3の受信導体路(1.1141)を含み、前記第3の受信導体路(1.1141)は周期的な経路を有し、前記第3の受信導体路(1.1141)の前記周期長は前記第1の受信導体路(1.1121)の前記第1の周期長(λ1)より小さい、走査素子。
【請求項11】
請求項9または10に記載の走査素子(1)であって、
前記第4の受信線(1.124)は第4の受信導体路(1.1241)を含み、前記第4の受信導体路(1.1241)は周期的な経路を有し、前記第4の受信導体路(1.1241)の前記周期長は前記第2の受信導体路(1.1221)の前記第2の周期長(λ2)より大きい、走査素子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
前記第1の検出器ユニット(1.11)は第3の励磁線(1.113)を有し、前記第2の検出器ユニット(1.12)は第4の励磁線(1.123)を有する、走査素子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の走査素子(1)であって、
第1のシールド層(1.13)は第5の層(D)に配置され、第2のシールド層(1.14)は第6の層(C)に配置され、前記スルーホール(1.15)は前記シールド層(1.13、1.14)を貫通する、走査素子。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の走査素子(1)と、第1のスケール素子(2)および第2のスケール素子(3)とを含む誘導式位置測定装置であって、前記スケール素子(2、3)は、前記中心面に直交に方向づけられた第3の方向(z)に、前記プリント基板(1.1)の両側に離間して配置されている、誘導式位置測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載の誘導式位置測定装置であって、
前記第1のスケール素子(2)は第1の直径(D1)を有し、前記第2のスケール素子(3)は第2の直径(d2)を有し、前記第1の直径(D1)は前記第2の直径(d2)より大きい、誘導式位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる速度で回転可能な2つのスケール素子に対する走査素子を位置決定するための請求項1に記載の誘導式位置測定装置用の走査素子と、このような走査素子を備えた位置測定装置に関する。
【0002】
誘導式位置測定装置は、例えば、相対的にお互いに回転可能な機械部品の角度位置を決定するための角度測定器として使用される。誘導式位置測定装置では、多くは、励磁線および受信線が、導体路などの形態で、共通の、通常は多層のプリント基板に被着され、その基板は、例えば角度測定器のステータに固定接続されている。このプリント基板に対向して、ピッチ構造が施され、角度測定器のロータに回転不能に接続されたスケール素子がある。励磁線に時間的に変化する励磁電流を印加すると、ロータとステータが相対回転している間に、角度位置に依存した信号が受信コイルに発生する。これらの信号は、その後、評価用電子機器でさらに処理される。
【0003】
特に、ロボットの駆動装置では、駆動軸の角度位置を決定すると同時に、被動軸の角度位置を正確に決定するための測定器として、誘導式位置測定装置が頻繁に使用されており、駆動軸の動きが減速機によって被動軸に導入される。この場合、両側に対応する検出器ユニットを有するプリント基板を含む走査素子を用いて角度位置を測定し、その結果、プリント基板の両側に回転可能に配置されたスケール素子のそれぞれの角度位置を決定することができる。
【背景技術】
【0004】
特開2006208239では、特にこの特許文献での図6に従い、1つのステータを間に配置した2つのロータを備えた位置測定装置が開示されている。そこで説明されている位置測定装置は、例えばマイクロメータねじで使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006208239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2つのスケール素子の位置または角度位置の決定を可能にし、比較的正確に動作し、コンパクトで、安価に製造可能な、誘導式位置測定装置用の走査素子を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。
誘導式位置測定装置に適し、誘導式位置測定装置のために決定された走査素子は、第1の検出器ユニットおよび第2の検出器ユニットを備えた多層プリント基板と、電子部品とを含む。第1の検出器ユニットは、第1の励磁線および第1の受信線を有し、プリント基板の第1の層および第2の層に配置されている。第2の検出器ユニットは、第2の励磁線および第2の受信線を有し、プリント基板の第3の層および第4の層に配置されている。プリント基板は、検出器ユニットの間に位置する幾何学的な中心面を有し、第1の受信線および第2の受信線は、軸を中心に周方向に一周するように配置されている。第1の受信線は第1の受信導体路を含み、第2の受信線は第2の受信導体路を含む。これらの受信導体路はそれぞれ周期的な経路を有する。第1の受信線は、周方向でのその延びに沿って第1の隙間を有し、第1の隙間は、周方向には第1の受信導体路によって画定されている。第2の受信線は、周方向でのその延びに沿って第2の隙間を有し、第2の隙間は、周方向には第2の受信導体路によって画定されている。プリント基板はスルーホールを有し、このスルーホールは第1の隙間内にも第2の隙間内にも配置されている。したがって特に、スルーホールは周方向に関して、第1の受信導体路および第2の受信導体路の間に配置されている。
【0008】
発明対象の空間的な配置構成を規定することに関して、まず第1の方向xを定義することができる。第1の方向xは、求められた位置を測定する方向(測定方向)を表す。位置測定装置により、(回転)軸を中心とする回転運動または旋回運動に関し、それぞれ、第1のスケール素子と走査素子との第1の相対的な角度位置と同時に、第2のスケール素子と走査素子との第2の角度位置が測定されるべきなので、第1の方向xは周方向または接線方向である。
【0009】
さらに、第1の方向xと直交する第2の方向yを定義することができる。
第1の方向xに直交し、同時に第2の方向yに直交して第3の方向zが方向づけられている。第3の方向zは、スケール素子が走査素子に対して相対的に回転可能な(回転)軸に平行である。さらに、第3の方向zは、中心面に対して直交する方向にある。プリント基板の各層は、第3の方向zに互いにずれて配置されている。
【0010】
特に、スルーホールの一方の端、つまり一方の接触部は第1の隙間内に、およびもう一方の端、つまりもう一方の接触部は第2の隙間内に配置することができる。スルーホールは特に第3の方向zに延びることができる。
【0011】
通常は、1つのプリント基板の両方の最大面が互いに対して平行に方向づけられている。中心面は、特に、これらのプリント基板面の間の中心で、これらの面に平行に配置されているため、特に第3の方向zでは、プリント基板の一方の面と中心面との間隔が、プリント基板のもう一方の面と中心面との間隔とまったく同じ大きさである。
【0012】
本発明のさらなる形態では、第1の励磁線および第2の励磁線は、周方向または第1の方向xに沿って延びる。
有利には、第1の受信線および第2の受信線も、第1の励磁線および第2の励磁線も、周方向または第1の方向xに沿って延びる。
【0013】
有利には、走査素子は、第1の励磁線および第2の励磁線が電気的に直列に接続されるように構成されている。
有利には、第1の励磁線および第2の励磁線に、通常は経時変化する電流強度を有する励磁電流(交流電流または混合電流)を通電することができる。励磁電流は、電子部品によって生成可能であり、すなわち、その経路は電子部品によって形成可能である。電流強度と電圧強度の間には物理的な関連性があるため、当然、励磁電圧についても同じように考えることができる。
【0014】
本発明のさらなる形態では、第1の受信線および第2の受信線によって生成可能な信号は、特に評価回路を形成する電子部品によってさらに処理可能である。
すなわち、電子部品は、異なる電子回路の素子であってもよいし、異なる回路に割り当てられていてもよい。例えば、ある電子部品は励磁電流を発生させるための回路素子であり、さらなる電子部品は信号を評価し、または信号をさらに処理するためのさらなる回路素子であってよい。
【0015】
有利には、プリント基板は、スルーホールが第1の検出器ユニットを第3の層または第4の層と電気的に接続するように構成されている。代替的に、スルーホールは第2の検出器ユニットを第1の層または第2の層と電気的に接続することができる。特に、スルーホールは、相応に第1、第2、第3、または第4の層に存在する導体路と接続することができる。
【0016】
本発明のさらなる形態では、スルーホールが電子部品の1つに電気接触しているため、特に、第1の検出器ユニットまたは第2の検出器ユニットによって、つまりその受信導体路によって生成された信号を、スルーホールを介して電子部品に供給することができる。
【0017】
本発明の有利な形態では、スルーホールがスルーホールビアとして使用されている。スルーホールは、特に、プリント基板を通り抜ける途切れ目のない穴によって作り出されている。この穴が、内壁に金属層、特に銅層を備えていることが好ましい。スルーホールの上および下の接触部は、プリント基板、導体層、または電子部品との電気接触を形成する。スルーホールという概念は、以下では、導電材料で満たされたかまたはコーティングされた複数の穴または中空空間が、互いに(特に半径方向または周方向に)ずれて配置された配置構成とも解釈され得る。このようなスルーホールは、しばしばスタッガード(または、千鳥配置の)ビアとも言う。
【0018】
本発明のさらなる形態では、第1の隙間は周方向に第1の長さで延び、第1の受信導体路は、第1の周期長λ1をもつ周期的な経路を有する。ここで、第1の長さは第1の周期長λ1の1/8以上であり、すなわち、L1(第1の周期長)≧1/8・λ1が成立する。
【0019】
有利には、走査素子は、第2の隙間が周方向に第2の長さで延び、第2の受信導体路が、第2の周期長λ2をもつ周期的な経路を有するように構成されている。この場合、第2の長さは第2の周期長λ2の1/8以上であり、すなわち、L2(第2の周期長)≧1/8・λ2が成立する。
【0020】
本発明のさらなる形態では、第1の受信導体路は、第1の周期長λ1をもつ周期的な経路を有し、第2の受信導体路は、第2の周期長λ2をもつ周期的な経路を有する。第2の周期長λ2は第1の周期長λ1以上である(λ2≧λ1)。
【0021】
本発明の有利な形態では、第2の検出器ユニットと、電子部品の少なくとも1つとが、プリント基板の同じ側に配置されている。すなわちこの構造方式では、第2の検出器ユニットおよび電子部品は、中心面に対して同じ方向にずれているため、中心面は第2の検出器ユニットと電子部品の間には配置されていない。
【0022】
有利には、第1の検出器ユニットは第3の受信線を有し、第2の検出器ユニットは第4の受信線を有する。そして、特に第3の受信線は第3の受信導体路を含むことができ、第3の受信導体路は周期的な経路を有し、第3の受信導体路の周期長は第1の受信導体路の第1の周期長λ1より小さい。さらに、第4の受信線は第4の受信導体路を含むことができ、第4の受信導体路は周期的な経路を有し、第4の受信導体路の周期長は第2の受信導体路の第2の周期長λ2より大きい。
【0023】
本発明のさらなる形態では、第1の検出器ユニットは第3の励磁線を有し、第2の検出器ユニットは第4の励磁線を有する。
有利な形態では、第1のシールド層はプリント基板の第5の層に配置され、第2のシールド層はプリント基板の第6の層に配置され、スルーホールは、特にシールド層に電気的に接触することなく、第1のシールド層および第2のシールド層を貫通する。中心面は第1のシールド層と第2のシールド層の間に位置しているため、シールド層は中心面の両側に配置されている。
【0024】
中心面は第3の方向zに関して、第1の検出器ユニットと第1のシールド層との間に位置する。したがって、同様に、中心面が第3の方向zに関して、第2の検出器ユニットと第2のシールド層との間に位置することも成立し、第2の検出器ユニットおよび第2のシールド層が中心面の両側に配置されていることも成立する。
【0025】
さらなる側面によると、本発明は、走査素子と、第1のスケール素子および第2のスケール素子とを備える誘導式位置測定装置も含む。スケール素子は、第3の方向z(中心面に直交する方向)に、プリント基板の両側に離間して配置されている。
【0026】
有利には、第1のスケール素子は第1の直径D1を有し、第2のスケール素子は第2の直径d2を有し、第1の直径D1は第2の直径d2より大きい(D1>d2)。
さらに、スケール素子は、走査素子に対して共通の軸を中心に回転可能に配置されていてもよい。
【0027】
さらに、電子部品の少なくとも1つは、第2のスケール素子の外輪郭より軸からさらに離間して配置することができる。すなわち少なくとも1つの電子部品が、第2のスケール素子より半径方向の外側に配置されている。
【0028】
本発明の有利な構成は、従属請求項からわかる。
本発明にかかる走査素子のさらなる詳細および利点は、添付の図を参照して、1つの実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】走査素子、第1のスケール素子および第2のスケール素子を含む位置測定装置の斜視図。
図2】走査素子の第1の側面の平面図。
図3】走査素子の第1の側面の詳細平面図。
図4】走査素子の第2の側面の平面図。
図5】走査素子の第2の側面の詳細平面図。
図6】走査素子のP-Pでの詳細断面図。
図7】スルーホールの領域での走査素子の詳細断面図。
図8】第1のスケール素子の平面図。
図9】第2のスケール素子の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、第1のスケール素子2の角度位置と、第2のスケール素子3の角度位置の両方を検出するために使用できる走査素子1を有する位置測定装置を参照して、図1に従って説明される。2つのスケール素子2、3は、走査素子1に対して軸Rを中心に回転可能に配置されている。このような位置測定装置は、例えば、ロボットの駆動装置で使用することができる。そして、第2のスケール素子3は、例えば、モータの駆動軸に回転不能に接続されている。これが、他方では被動軸を有する減速機につながっている。この被動軸とともに第1のスケール素子2は回転する。このようにして、例えば、モータの転流のための角度位置を第2のスケール素子3を用いて行い、ロボットの位置決めのための比較的高精度の角度位置を第1のスケール素子2を用いて行うことができる。
【0031】
走査素子1は、複数の層を有するプリント基板1.1と、プリント基板1.1上に取り付けられた電子部品1.2とを含む。走査素子1は、第1のスケール素子2の走査と同時に、第2のスケール素子3の走査にも使用される。本実施例では、電子部品1.2は第2の面にのみ取り付けられている。しかし、代替的または追加的に、プリント基板1.1の第1の面に電子部品を実装することも可能である。
【0032】
角度情報を決定するために、プリント基板1.1の第1の面には第1の検出器ユニット1.11が配置され、プリント基板1.1の第2の面には第2の検出器ユニット1.12が配置されている。図1では、第2の検出器ユニット1.12のうち、外側の第4の層F(図6および図7を参照)上にある構造だけが見えている。
【0033】
図2および図3図3は、図2に従う第1の検出器ユニット1.11の拡大された詳細図である)では、なかでも、第1の検出器ユニット1.11のうち、プリント基板1.1の外側の第1の層Aおよびプリント基板1.1の第2の層Bにある構造が示されている。第1の検出器ユニット1.11は、第1の励磁線1.111、第1の受信線1.112、第3の励磁線1.113、第3の受信線1.114、および第5の励磁線1.115を含む。第1の受信線1.112は第1の受信導体路1.1121を含む。
【0034】
図4および図5では、プリント基板1.1のもう一方の面が示されているため、第2の検出器ユニット1.12が見えている。図5は、第2の検出器ユニット1.12の細部を拡大して示している。図4および図5では、なかでも、第2の検出器ユニット1.12のうち、プリント基板1.1の外側の第4の層Fおよびプリント基板1.1の第3の層Eにある構造が示されている。第2の検出器ユニット1.12は、第2の励磁線1.121、第2の受信線1.122、第4の励磁線1.123、第4の受信線1.124、および第6の励磁線1.125を含む。第2の受信線1.122は第2の受信導体路1.1221を含む。
【0035】
図6には、走査素子1またはプリント基板1.1の、切断線P-Pに従う概略的な部分断面図が示されており、見易くするために、プリント基板1.1の電気絶縁材料のハッチングは省略されている。さらに、図6の部分断面図は、本発明にかかる走査素子1をよりよく説明するために、縮尺通りには記載されていない。すでに上述したように、プリント基板1.1は多層構造になっている。幾何学的に見ると、プリント基板1.1に対していわゆる中心面Mを定義することができ、この中心面Mは、プリント基板1.1の第1の側面に平行に、また第2の側面に平行に、それぞれ第1の側面と第2の側面との間の中心に配置されている。さらに、個々の素子の相互の幾何学的な関係は、座標系を用いて定義することができる。ここで、第1の方向xは、位置または角度の測定が意図した通りに行われるべき方向である。本実施例では、第1の方向xは周方向に相当する。スケール素子2、3が周囲を回転可能な軸Rは、第3の方向zに平行に延び、この第3の方向zは、ここでは軸方向とも定義できる。第3の方向zおよび第1の方向xに直交して第2の方向yが方向づけられており、第2の方向yは、半径方向とも呼ぶことができる。したがって、x軸およびy軸で構成される平面は中心面Mに平行に方向づけられ、第3の方向zと軸Rは中心面Mと直交して延びている。
【0036】
プリント基板1.1の第1の層Aおよびプリント基板1.1の第2の層Bには第1の検出器ユニット1.11が配置され、一方、第3の層Eおよび第4の層Fには第2の検出器ユニット1.12が配置されている。第1の層Aは、プリント回路基板1.1の第1の面に最も近い位置にあり、第2の層Bは、プリント回路基板1.1の第1の面に2番目に近い位置にある。プリント回路基板1.1の第2の面に関して、第4の層Fおよび第3の層Eについても同様である。
【0037】
第1の検出器ユニット1.11の励磁線1.111、1.113、1.115は、第1の層Aに延びる励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151を含む。これと同様に、第2の検出器ユニット1.12の励磁線1.121、1.123、1.125は、第4の層Fに延びる励磁導体路1.1211、1.1231、1.1251を含む。
【0038】
さらに、プリント基板1.1はまた、第5の層Dおよび第6の層Cを含んでいる。第5の層Dには第1のシールド層1.13があり、第6の層Cには第2のシールド層1.14がある。ここで、シールド層1.13、1.14は、比較的面積の大きい銅層である。
【0039】
第1の検出器ユニット1.11の励磁線1.111、1.113、1.115は、第1の受信線1.112または第3の受信線1.114を囲む。
第2の検出器ユニット1.12の励磁線1.121、1.123、1.125は、第2の受信線1.122または第4の受信線1.124を囲む。励磁線1.111、1.113、1.115、1.121、1.123、1.125と受信線1.112、1.114、1.122、1.124の両方は、周方向または第1の方向xに沿って延びる。
【0040】
受信線1.112、1.114、1.122、1.124は、本実施例では、それぞれ、受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241を含み、これらの受信導体路は周方向にずれて配置されているため、ずれに対応して位相のずれた4つの信号を供給することができる。図では、1つの同じ受信線1.112、1.114、1.122、1.124に属する受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241に1つだけの符号を付している。したがって、例えば第1の受信線1.112のすべての受信導体路1.1121に1つだけの符号を付している。さらに、第1の検出器ユニット1.11の第1の受信導体路1.1121は、ビアと接続して、プリント基板1.1の異なる層において延びるため、交差箇所での望ましくない短絡が回避される。第2の検出器ユニット1.12の受信導体路1.1221、1.1241についても同様である。厳密に言えば、第1および第2の受信導体路1.1121、1.1221の各々が、それぞれ2つの平面または層に割り振られて並んでいる多くの導体片から成るのではあるが、以下ではこのような構造をまとめて、1つの受信導体路1.1221、1.1241と言う。
【0041】
受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、略正弦波または正弦波状である空間的に周期的な経路を有する。第1の受信線1.112の受信導体路1.1121は周期長λ1(図3)を有し、一方、第2の受信線1.122の受信導体路1.1221は周期長λ2(図5)を有する。本実施例では、1つの受信線1.112、1.114、1.122、1.124内で隣接する受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、完全な正弦周期の1/8だけ(周方向または第1の方向xに沿ってπ/4または45°だけ)互いにずれて配置されている。受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、1つには0°および90°の信号、もう1つには45°および135°の信号を供給するように電気的に接続されている。0°および90°の信号から第1の位置信号を決定でき、45°および135°の信号から第1の位置信号に対して冗長な第2の位置信号を決定することができる。
【0042】
本実施例では、第2の周期長λ2は第1の周期長λ1より大きい。
図2および図3に示したように、第1の受信線1.112は、周方向(x方向)でのその延びに沿って第1の隙間U1を有する。第1の隙間U1の領域は、第1の受信導体路1.1121によって画定されるため、画定している受信導体路1.1121の間には検出構造が存在しない。すなわち第一近似では、第1の隙間U1は、幾何学的に見るとリング切片である領域でもある。第1の隙間U1の領域の、2つの第1の受信導体路1.1121の間の周方向の最小間隔L1は、本実施例では5/8・λ1(U1=5/8・λ1)である。すなわち第1の隙間U1の領域では、周期的に延びる第1の受信導体路1.1121は配置されていない。
【0043】
図4および図5によれば、第2の受信線1.122は、周方向でのその延びに沿って第2の隙間U2を有する。この第2の隙間U2は、第2の受信導体路1.1221によって画定される。第2の隙間U2の領域の、2つの第2の受信導体路1.1221の間の周方向の最小間隔L2は、本実施例では13/8(U2=13/8・λ2)である。すなわち第2の隙間U2では、周期的に延びる第2の受信導体路1.1221は配置されていない。
【0044】
プリント基板1.1は、スルーホール1.15、1.16をさらに有する。図7では、スルーホール1.15、1.16の領域での走査素子1またはプリント基板1.1の概略的な部分断面図を示している。スルーホール1.15、1.16は、ここではスルーホールビアとして実施されており、したがってプリント基板1.1をその厚さ全体にわたって貫通している。よってスルーホール1.15、1.16は第3の方向zに平行に延びている。これに従い、プリント基板1.1は、スルーホール1.15、1.16が第1の隙間U1内にも第2の隙間U2内にも配置されるように構成されている。
【0045】
スルーホール1.15により、第1の受信線1.112の第1の受信導体路1.1121が、中心面Mの向こう側に配置された電子部品1.2と電気的に接続される。このために、第2の層Bに延びる導体路により、図7では見えない第1の受信導体路1.1121とスルーホール1.15が電気接触される。スルーホール1.15は、第1のシールド層1.13および第2のシールド層1.14を貫通し、ここで、シールド層1.13、1.14は電気的にスルーホール1.15と接続しないように構造化されている。第3の層Eでは、この層Eに延びる導体路に接触している。この導体路は、さらなるビア、ここではブラインドビアまたはマイクロビアと電気的に接続されており、このさらなるビアにより最終的に電子部品1.2に接触する。
【0046】
さらなるスルーホール1.16は、第1の層Aに延びる第1の受信導体路1.1121を第4の層Fと接続する。図では見えていない導体路を介し、電子部品1.2に電気接触される。
【0047】
第1の受信線1.112は、第2の方向yでは、第2の受信線1.122に重なって配置されている。
図8では、第1のスケール素子2が平面図で示されている。また、図9には、第2のスケール素子3が同様に平面図で示されている。スケール素子2、3は円板状の形状を有し、ここで第1のスケール素子2は第1の直径D1を有し、第2のスケール素子3は第2の直径d2を有する。第1の直径D1は第2の直径d2より大きい(D1>d2)。
【0048】
スケール素子2、3は、図示の実施例ではエポキシ樹脂製の基板でそれぞれ構成されており、その上にそれぞれ2つのピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2が配置されている。ピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2はリング状に構成されており、基板上に、異なる直径で軸Rに対して同心円状に配置されている。ピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2は、それぞれ、交互に配置された導電性のピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21と、非導電性のピッチ領域2.12、2.22;3.12、3.22の周期的なシーケンスで構成されたピッチ構造を含む。導電性のピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21の材料として、図示の例では銅を基板に塗布した。一方、非導電性のピッチ領域2.12、2.22;3.12、3.22では、基板はコーティングされなかった。それぞれ2つのピッチ線2.1、2.2;3.1、3.2を有する配置構成によって、スケール素子2、3の角度位置は、それぞれ絶対的に決定することができる。第1のスケール素子2の最も外側のピッチ線2.2は、円周線に沿って最大数のピッチ領域2.21、2.22を有しているため、これによって角度位置の測定に関する最大の解像度を得ることができる。
【0049】
図1にかかる組み立て状態では、走査素子1およびスケール素子2、3は、それぞれ軸方向の間隔や空隙を持って対向しているため、スケール素子2、3と走査素子1との間で相対的な回転が生じる場合、受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241において、誘導効果によってそれぞれの角度位置に依存した信号を生成することができる。対応する信号を形成するための前提条件は、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251が、それぞれ走査されたピッチ構造の領域で経時変化する電磁励磁フィールドを生成することである。図示の実施例では、励磁用導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251は、複数の平行平面の通電個別導体路として構成されている。走査素子1は、層E、Fを介して互いに電気的に接続された電子部品1.2を備えた電子回路を有する。電子回路は、例えば、ASICモジュールを含んでもよい。この走査素子1の電子回路は、評価素子としてだけでなく、励磁制御素子としても動作し、その制御下で、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251を流れる励磁電流が生成される。したがって、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251は、1つの同じ励磁制御素子によって通電される。ここで、第1の励磁線1.111および第2の励磁線1.121は電気的に直列に接続されている。
【0050】
励磁線1.111、1.113、1.115、1.121、1.123、1.125が通電されると、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251の周囲に筒状または円筒状に配向した電磁界が形成される。結果として生じる電磁場の磁力線は、励磁線1.111、1.113、1.115、1.121、1.123、1.125の周囲に延び、磁力線の方向は、励磁導体路1.1111、1.1131、1.1151、1.1211、1.1231、1.1251の電流の方向に、既知の方法で依存している。導電性ピッチ領域2.11、2.21;3.11、3.21の領域に渦電流が誘導され、それによってそれぞれ角度位置に依存したフィールドの変調が達成される。したがって、受信線1.112、1.114、1.122、1.124によって、相対的な角度位置をそれぞれ測定することができる。一対の受信導体路1.1121、1.1141、1.1221、1.1241は、それぞれが90°位相のずれた信号を供給するように、その受信線1.112、1.114、1.122、1.124内に配置されており、その結果、回転方向の決定も可能となる。受信線1.112、1.114、1.122、1.124によって生成された信号は、評価回路を形成する電子部品1.2の一部によってさらに処理される。
【0051】
第1のシールド層1.13と第2のシールド層1.14により、2つの検出器ユニット1.11、1.12による測定精度への悪影響をほぼ防ぐことができる。特に、許容できないほど高いレベルのクロストーク信号が防止されると同時に、励磁場の過度な減衰が回避される。さらに、電子部品1.2によるまたは外部からの検出器ユニット1.11、1.12の電磁干渉も防止される。
【符号の説明】
【0052】
1 走査素子
1.1 プリント基板
1.11 第1の検出器ユニット
1.111 第1の励磁線
1.112 第1の受信線
1.1121 第1の受信導体路
1.113 第3の励磁線
1.114 第3の受信線
1.1141 第3の受信導体路
1.12 第2の検出器ユニット
1.121 第2の励磁線
1.122 第2の受信線
1.1221 第2の受信導体路
1.123 第4の励磁線
1.124 第4の受信線
1.1241 第4の受信導体路
1.13 第1のシールド層
1.14 第2のシールド層
1.15 スルーホール
1.2 電子部品
2 第1のスケール素子
3 第2のスケール素子
A 第1の層
B 第2の層
C 第6の層
D 第5の層
E 第3の層
F 第4の層
D1 第1の直径
d2 第2の直径
L1 第1の長さ
L2 第2の長さ
M 中心面
R 軸
U1 第1の隙間
U2 第2の隙間
z 第3の方向
λ1 第1の周期長
λ2 第2の周期長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】