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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091814
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】研磨液および化学的機械的研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220614BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220614BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220614BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20220614BHJP
   C01B 33/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
C01B33/14
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038901
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2020507470の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2018057228
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、CMPに適用した場合、酸化珪素の研磨速度と窒化珪素の研磨速度が同程度であり、被研磨面の欠陥が発生しにくい研磨液および化学的機械的研磨方法の提供である。
【解決手段】本発明の研磨液は、化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカとリン酸を除く緩衝剤とを含む研磨液であって、上記緩衝剤が、上記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、上記研磨液中に存在する状態で測定される上記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、電気伝導度が200μS/cm以上であり、pHが2~6である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、
前記緩衝剤が、前記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200μS/cm以上であり、
pHが2~6である、研磨液。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの平均アスペクト比が、1.5~3.0である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの表面に拡散電気二重層が形成されており、
前記拡散電気二重層は、コロイダルシリカの表面側に形成された固定層と、前記固定層の外側に形成された拡散層と、を有し、
前記拡散層の厚みが、10~1000Åである、請求項1または2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記研磨液のpHをXとし、前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位をYとした場合において、
前記研磨液のpHをX+1にしたときのゼータ電位と、前記研磨液のpHをX-1としたときのゼータ電位とがいずれも、Y±5mVの範囲内にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項5】
透過率が60~95%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、15nm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項7】
前記電気伝導度が、200~5000μS/cmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項8】
スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基が、コロイダルシリカ表面に共有結合を介して連結している、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項9】
前記緩衝剤が有機酸を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項10】
窒素原子を2個以上有する複素環を有する化合物をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項11】
窒化珪素および酸化珪素の研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記酸化珪素の研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~4である、請求項1~10のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項12】
陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項13】
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記ポリシリコンの研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~8である、請求項12に記載の研磨液。
【請求項14】
陰イオン界面活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項15】
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記ポリシリコンの研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、10以上である、請求項14に記載の研磨液。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の研磨液を研磨定盤に取り付けられた研磨パッドに供給しながら、被研磨体の被研磨面を前記研磨パッドに接触させ、前記被研磨体および前記研磨パッドを相対的に動かして前記被研磨面を研磨して、研磨済み被研磨体を得る工程を含む、化学的機械的研磨方法。
【請求項17】
前記被研磨体が、窒化珪素および酸化珪素の少なくとも一方を含む、請求項16に記載の化学的機械的研磨方法。
【請求項18】
前記被研磨体が、ポリシリコンをさらに含む、請求項17に記載の化学的機械的研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液および化学的機械的研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI:large-scale integrated circuit)の製造において、ベアウェハの平坦化、層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成および埋め込み配線形成等に化学的機械的研磨(CMP:chemical mechanical polishing)法が用いられている。
このようなLSIの製造の中でも、半導体集積回路の製造の前工程であるFEOL(Front End of Line)において、CMPの利用増加が見込まれている。FEOLにおいてCMPの対象となる膜を構成する材料は、主に、窒化珪素、酸化珪素およびポリシリコンである。これらの材料をどのような選択比で研磨加工するかは、用途に応じて多様な要求がある。
例えば、特許文献1には、窒化珪素の研磨速度を大きくするために、「(a)0.01~15質量%のコロイダルシリカ、(b)100万分の10から100万分の100,000部(ppm)の、pKaが1~4.5の範囲である少なくとも1種の酸性成分、および(c)これらのための水性担体を含む研磨組成物」を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-540575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、被研磨体の用途によっては、窒化珪素および酸化珪素の研磨速度を同程度にできるような研磨液が求められている。
本発明者は、特許文献1に記載されたようなコロイダルシリカを含む研磨液を用いた場合、酸化珪素と窒化珪素との研磨速度の差が大きく、酸化珪素または窒化珪素が選択的に研磨されてしまう場合があることを知見した。また、研磨後の被研磨体の被研磨面に多くの欠陥(特に、スクラッチと呼ばれる研磨傷)が生じる場合があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、CMPに適用した場合、酸化珪素および窒化珪素の研磨速度が同程度であり、被研磨面の欠陥が発生しにくい研磨液および化学的機械的研磨方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、上記研磨液のpHをXとした場合にX±1の範囲内のpKaをもつ化合物を緩衝剤として用い、上記研磨液中に存在する状態で測定される上記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、電気伝導度が200μS/cm以上であり、pHが2~6である研磨液を用いれば、酸化珪素および窒化珪素の研磨速度が同程度であり、被研磨面の欠陥が発生しにくいことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1]
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、
上記緩衝剤が、上記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
上記研磨液中に存在する状態で測定される上記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200μS/cm以上であり、
pHが2~6である、研磨液。
[2]
上記コロイダルシリカの平均アスペクト比が、1.5~3.0である、[1]に記載の研磨液。
[3]
上記コロイダルシリカの表面に拡散電気二重層が形成されており、
上記拡散電気二重層は、コロイダルシリカの表面側に形成された固定層と、上記固定層の外側に形成された拡散層と、を有し、
上記拡散層の厚みが、10~1000Åである、[1]または[2]に記載の研磨液。[4]
上記研磨液のpHをXとし、上記研磨液中に存在する状態で測定される上記コロイダルシリカのゼータ電位をYとした場合において、
上記研磨液のpHをX+1にしたときのゼータ電位と、上記研磨液のpHをX-1としたときのゼータ電位とがいずれも、Y±5mVの範囲内にある、[1]~[3]のいずれかに記載の研磨液。
[5]
透過率が60~95%である、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨液。
[6]
上記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、15nm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の研磨液。
[7]
上記電気伝導度が、200~5000μS/cmである、[1]~[6]のいずれかに記載の研磨液。
[8]
スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基が、コロイダルシリカ表面に共有結合を介して連結している、[1]~[7]のいずれかに記載の研磨液。
[9]
上記緩衝剤が有機酸を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の研磨液。
[10]
窒素原子を2個以上有する複素環を有する化合物をさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の研磨液。
[11]
窒化珪素および酸化珪素の研磨に上記研磨液を用いた場合において、
上記酸化珪素の研磨速度に対する、上記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~4である、[1]~[10]のいずれかに記載の研磨液。
[12]
陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤をさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の研磨液。
[13]
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に上記研磨液を用いた場合において、
上記ポリシリコンの研磨速度に対する、上記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~8である、[12]に記載の研磨液。
[14]
陰イオン界面活性剤をさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の研磨液。
[15]
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に上記研磨液を用いた場合において、
上記ポリシリコンの研磨速度に対する、上記窒化珪素の研磨速度の比が、10以上である、[14]に記載の研磨液。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載の研磨液を研磨定盤に取り付けられた研磨パッドに供給しながら、被研磨体の被研磨面を上記研磨パッドに接触させ、上記被研磨体および上記研磨パッドを相対的に動かして上記被研磨面を研磨して、研磨済み被研磨体を得る工程を含む、化学的機械的研磨方法。
[17]
上記被研磨体が、窒化珪素および酸化珪素の少なくとも一方を含む、[16]に記載の化学的機械的研磨方法。
[18]
上記被研磨体が、ポリシリコンをさらに含む、[17]に記載の化学的機械的研磨方法。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、CMPに適用した場合、酸化珪素および窒化珪素の研磨速度が同程度であり、被研磨面の欠陥が発生しにくい研磨液および化学的機械的研磨方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0010】
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味する。
また、本明細書において、1Å(オングストローム)は、0.1nmに相当する。
【0011】
[研磨液]
本発明の研磨液(以下、「本研磨液」ともいう。)は、化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカとリン酸を除く緩衝剤とを含む研磨液であって、上記緩衝剤が、上記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、上記研磨液中に存在する状態で測定される上記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、電気伝導度が200μS/cm以上であり、pHが2~6である。
本明細書において、リン酸を除く緩衝剤であって、上記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物(緩衝剤)を「特定緩衝剤」ともいう。
【0012】
本研磨液は、酸化珪素(以下、「SiO」ともいう。)の研磨速度と、窒化珪素(以下、「SiN」ともいう。)の研磨速度と、が同程度である。この理由の詳細は、未だ明らかになっていない部分もあるが、以下の理由によるものと推測される。
SiNの研磨は、SiNの表面電位がプラスである場合に進行しやすい。SiNの表面電位をプラスにするためには、研磨液のpHを酸性(具体的には、pHが2~6)にする方法が挙げられる。換言すれば、研磨液のpHが酸性であれば、SiNの表面電位がプラスとなる。
そのため、コロイダルシリカのゼータ電位がマイナス(具体的には、-20mV以下)であれば、電気的な関係によって、コロイダルシリカとSiNとは接触しやすくなると推測される。これにより、SiNが研磨されやすくなったと考えられる。
また、電気伝導度が高い研磨液を用いることで、コロイダルシリカとSiOとの相互作用が強まって、SiOの研磨速度が向上したと考えられる。
このように、ゼータ電位の低いコロイダルシリカを使用することで生じる効果、および、電気伝導度が高い研磨液を用いることで生じる効果が相乗的に作用して、SiOおよびSiNの研磨速度が高くでき、かつ、SiOおよびSiNの研磨速度を同程度にできたと考えられる。
【0013】
本研磨液による研磨後において、被研磨体の被研磨面は、欠陥(特に、スクラッチ)の発生が少ない。この理由の詳細は、未だ明らかになっていない部分もあるが、以下の理由によるものと推測される。
電気伝導度を向上させると、コロイダルシリカの拡散層(後述)が薄くなり、コロイダルシリカが凝集しやすくなる傾向にある。そこで、特定緩衝剤を添加することにより、pHの変動が抑えられて、シリカが凝集しづらくなり、粗大な凝集粒子による被研磨面の欠陥の発生が抑制できたと考えられる。
【0014】
以下において、本研磨液に含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。
【0015】
<コロイダルシリカ>
本研磨液は、コロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)を含む。コロイダルシリカは、被研磨体を研磨する砥粒として機能する。
【0016】
コロイダルシリカの平均一次粒子径は、SiOの研磨速度が向上してSiOおよびSiNの研磨速度をより近くできる点から、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましい。
コロイダルシリカの平均一次粒子径の上限値は、欠陥抑制という点から、100nm以下が好ましく、70nm以下がより好ましい。
平均一次粒子径は、日本電子(株)社製の透過型電子顕微鏡TEM2010(加圧電圧200kV)を用いて撮影された画像から任意に選択した一次粒子1000個の粒子径(円相当径)を測定し、それらを算術平均して求める。なお、円相当径とは、観察時の粒子の投影面積と同じ投影面積をもつ真円を想定したときの当該円の直径である。
ただし、コロイダルシリカとして市販品を用いる場合には、コロイダルシリカの平均一次粒子径としてカタログ値を優先的に採用する。
【0017】
コロイダルシリカの平均アスペクト比は、研磨力が向上するという点から、1.5~3.0が好ましく、1.6~2.9がより好ましく、1.6~2.8が特に好ましい。
コロイダルシリカの平均アスペクト比は、上述の透過型電子顕微鏡にて観察された任意の100個の粒子毎に長径と短径を測定して、粒子毎のアスペクト比(長径/短径)を計算し、100個のアスペクト比を算術平均して求められる。なお、粒子の長径とは、粒子の長軸方向の長さを意味し、粒子の短径とは、粒子の長軸方向に直交する粒子の長さを意味する。
ただし、コロイダルシリカとして市販品を用いる場合には、コロイダルシリカの平均アスペクト比としてカタログ値を優先的に採用する。
【0018】
コロイダルシリカの会合度は、研磨速度がより向上する点で、1~3が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。
本明細書において、会合度とは、会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径で求められる。平均二次粒子径は、凝集した状態である二次粒子の平均粒子径(円相当径)に相当し、上述した平均一次粒子径と同様の方法により求めることができる。
ただし、コロイダルシリカとして市販品を用いる場合には、コロイダルシリカの会合度としてカタログ値を優先的に採用する。
【0019】
スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基(以下、「表面修飾基」ともいう。)が、コロイダルシリカ表面に共有結合を介して連結していることが好ましい。これにより、コロイダルシリカのゼータ電位をより低くできるので、SiNの研磨速度をより向上できる。また、被研磨面の欠陥を少なくできること、および、本研磨液の経時安定性を向上できること等の利点がある。
表面修飾基の中でも、酸性領域でも酸乖離をするという点から、スルホン酸基が好ましい。なお、表面修飾基は、研磨液中で電離していてもよい。
表面修飾基を有するコロイダルシリカを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、特開2010-269985号公報に記載の方法が挙げられる。
【0020】
コロイダルシリカは、市販品を用いてもよく、例えば、PL07D、PL1D、PL2D、および、PL3D(いずれも製品名、扶桑化学工業社製)等の上述の表面修飾基を有するコロイダルシリカが挙げられる。
【0021】
コロイダルシリカとしては、上述の表面修飾基を有するコロイダルシリカと、表面修飾基を有しないコロイダルシリカと、を併用してもよいが、被研磨面の欠陥がより少なくなること、本研磨液の経時安定性がより向上すること等の点から、表面修飾基を有するコロイダルシリカのみを用いることが好ましい。
なお、上述の表面修飾基を有するコロイダルシリカと、表面修飾基を有しないコロイダルシリカと、を併用する場合、表面修飾基を有するコロイダルシリカの含有量は、コロイダルシリカ(すなわち、表面修飾基を有するコロイダルシリカと、表面修飾基を有しないコロイダルシリカとの合計)100質量部に対して、被研磨面の欠陥がより少なくなること、本研磨液の経時安定性がより向上すること等の点から、10質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、70質量部以上が特に好ましく、90質量部以上が最も好ましい。また、表面修飾基を有するコロイダルシリカの含有量の上限値は、コロイダルシリカ100質量部に対して、100質量部未満が好ましい。
【0022】
コロイダルシリカの含有量の下限値は、本研磨液の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。コロイダルシリカの含有量が0.1質量%以上であれば、SiOおよびSiNの研磨速度がより向上する。
コロイダルシリカの含有量の上限値は、本研磨液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。コロイダルシリカの含有量が10質量%以下であれば、コロイダルシリカの凝集を抑制できるので、被研磨面の欠陥を少なくできること、および、本研磨液の経時安定性を向上できること等の利点がある。
なお、コロイダルシリカは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のコロイダルシリカを併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0023】
<特定緩衝剤>
本研磨液は、特定緩衝剤を含む。特定緩衝剤を用いることで被研磨面の欠陥の発生が抑制できる。
特定緩衝剤は、リン酸を除く緩衝剤である。リン酸を緩衝剤として用いた場合、研磨液に含まれる成分が凝集しやすくなるという理由により、研磨液の経時安定性が低下すること、および、被研磨面の欠陥が多くなること等の問題がある。
【0024】
特定緩衝剤は、本研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物(緩衝剤)である。例えば、本研磨液のpHが2である場合、pKaが1~3の範囲内にある緩衝剤を用いる。
このように、pKaが上記範囲内の緩衝剤を用いると、本研磨液のpH変動が少なくなるので、コロイダルシリカの凝集を抑制できる結果、被研磨面の欠陥を少なくできる。
特定緩衝剤のpKaは、被研磨面の欠陥がより少なくなる点から、X-1からX+1の範囲内にあるのが好ましく(すなわち、X-1≦pKa≦X+1)、X-0.5からX+1の範囲内にあるのがより好ましく(すなわち、X-0.5≦pKa≦X+1)、X-0.5よりも大きくX+0.5以下であるのがさらに好ましく(すなわち、X-0.5<pKa≦X+0.5)、X-0.3以上X+0.3以下であるのが特に好ましい(すなわち、X-0.3≦pKa≦X+0.3)。
【0025】
ここで、pKa(酸解離定数)とは、水溶液中でのpKaを意味し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
(ソフトウェアパッケージ1)Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)
【0026】
特定緩衝剤は、電荷調整剤を兼ねていてもよい。電荷調整剤とは、コロイダルシリカのゼータ電位を変化させる電荷調整能を持つ成分を意味する。
電荷調整剤としては、コロイダルシリカを1質量%含む水溶液に0.5質量%添加した場合に、コロイダルシリカのゼータ電位を±5mV以上変化させることができるものが好ましい。
電荷調整剤を兼ねることが可能な特定緩衝剤は、後述の有機ホスホン酸が好ましい。
表面修飾基を有しないコロイダルシリカを用いる場合、電荷調整剤を兼ねる特定緩衝剤(すなわち、電荷調整能をもつ特定緩衝剤)を用いるのが好ましい。
【0027】
特定緩衝剤は、被研磨面の欠陥がより少なくなる点から、有機酸を含むことが好ましい。すなわち、有機酸は、研磨液のpHをXとした場合にX±1の範囲内のpKaをもつ。
特に、特定緩衝剤は、有機酸であるのが好ましい。
有機酸の具体的としては、クエン酸、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、アジピン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、シュウ酸、2-ヒドロキシエタン酸(グリコール酸)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)およびテレフタル酸(TPA)等の有機カルボン酸、ならびに、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸等が挙げられ、研磨液のpHをXとした場合にX±1の範囲内のpKaをもつ有機酸を適宜選択すればよい。
【0028】
研磨液のpHをXとした場合、上述の通り有機酸のpKaはX±1の範囲内であるが、有機酸のpKaはXよりも大きいことが好ましい(研磨液のpH<有機酸のpKa)。有機酸のpKaが研磨液のpHよりも大きい場合、緩衝能が十分に働くことによって研磨中の粒子凝集が抑制できるという理由によって、被研磨面の欠陥の発生が少なくなる。
有機酸のpKaは、被研磨面の欠陥がより少なくなる点から、研磨液のpHよりも0.05以上大きいことが好ましく、0.1以上大きいことがより好ましい。
【0029】
特定緩衝剤の含有量は、研磨液の電気伝導度およびコロイダルシリカのゼータ電位を所定の範囲内に調整できるのであれば、特に限定されないが、本研磨液の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~2.5質量%が特に好ましい。
なお、特定緩衝剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の特定緩衝剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0030】
<特定含窒素複素環化合物>
本研磨液は、窒素原子を2個以上有する複素環を有する化合物(以下、「特定含窒素複素環化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。特定含窒素複素環化合物を用いれば、SiOおよびSiNの研磨速度をより高くでき、かつ、SiOおよびSiNの研磨速度をより近くできる。
特定含窒素複素環化合物が複素環中に有する窒素原子の数は、2個以上であり、2~4個が好ましい。特定含窒素複素環化合物は、複素環中に窒素以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子等)を有していてもよい。特定含窒素複素環化合物が有する含窒素複素環は、5~6員環が好ましく、5員環がより好ましい。
特定含窒素複素環化合物としては、イミダゾール骨格、ピラゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、チアジアゾール骨格またはオキサジアゾール骨格を有する化合物等が挙げられ、SiNの研磨速度がより向上する点から、イミダゾール骨格を有する化合物が好ましい。
さらに、特定含窒素複素環化合物は、縮合環を有する多環構造を有する化合物であってもよく、具体的には、プリン骨格、インダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ベンゾチアジアゾール骨格またはナフトイミダゾール骨格を有する化合物が挙げられる。
特定含窒素複素環化合物の具体例としては、ヒスチジン、イミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸、5-メチルベンゾトリアゾール、5-アミノベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾアトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルピラゾールおよびピラゾールが挙げられ、SiNの研磨速度がより向上する点から、イミダゾール骨格を有する化合物である、ヒスチジン、イミダゾールおよび4-イミダゾールカルボン酸が好ましい。
【0031】
特定含窒素複素環化合物の含有量は、SiOおよびSiNの研磨速度をより高くでき、かつ、SiOおよびSiNの研磨速度をより近くできる点から、本研磨液の全質量に対して、0.01~2質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
なお、特定含窒素複素環化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の特定含窒素複素環化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0032】
<界面活性剤>
本研磨液は、界面活性剤として、陽イオン界面活性剤もしくは両性界面活性剤を含むか、または、陰イオン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0033】
本研磨液が陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤を含む場合、ポリシリコン(多結晶シリコン。以下、「poly-Si」ともいう。)に対するSiNの研磨の選択性を小さくできる。
すなわち、poly-Siの表面は疎水性であるため、界面活性剤の疎水基がpoly-Siの表面側に配置され、界面活性剤の親水基が表面側とは反対側(poly-Siの表面から離れた位置)に配置される。ここで、本研磨液中のコロイダルシリカのゼータ電位はマイナスであるので、界面活性剤の親水基(カチオン性基)に引きつけられやすい。これにより、poly-Siの研磨速度が向上すると考えられる。その結果、poly-Siの研磨速度がSiNの研磨速度に近くなるので、poly-Siに対するSiNの研磨の選択性が小さくなると考えられる。
【0034】
陽イオン界面活性剤の具体例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩およびイミダゾリニウム塩等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤の含有量は、本研磨液の全質量に対して、0.0001~1質量%が好ましく、0.001~0.1質量%がより好ましい。
なお、陽イオン界面活性剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の陽イオン界面活性剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0035】
両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、および、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
両性界面活性剤の含有量は、本研磨液の全質量に対して、0.0001~1質量%が好ましく、0.001~0.1質量%がより好ましい。
なお、両性界面活性剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の両性界面活性剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
本研磨液が陰イオン界面活性剤を含む場合、ポリシリコン(以下、「poly-Si」ともいう。)に対するSiNの研磨の選択性を大きくできる。
すなわち、poly-Siの表面は疎水性であるため、界面活性剤の疎水基がpoly-Siの表面側に配置され、界面活性剤の親水基が表面側とは反対側(poly-Siの表面から離れた側)に配置される。ここで、コロイダルシリカのゼータ電位はマイナスであるので、界面活性剤の親水基(アニオン性基)と反発する。これにより、poly-Siの研磨速度が低下すると考えられる。その結果、poly-Siに対するSiNの研磨の選択性が大きくなると考えられる。
【0037】
陰イオン界面活性剤の具体例としては、カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸塩、硫酸エステル塩およびリン酸エステル塩等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤の含有量は、本研磨液の全質量に対して、0.0001~1質量%が好ましく、0.001~0.1質量%がより好ましい。
なお、陰イオン界面活性剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の陰イオン界面活性剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0038】
<水>
本研磨液は、水を含有することが好ましい。本研磨液が含有する水としては、特に制限されないが、イオン交換水または純水等を用いることができる。
水の含有量は、特に制限されないが、本研磨液の全質量に対して、90~99質量%が好ましい。
【0039】
<他の成分>
本研磨液は、本発明の上述した効果を損なわない範囲で、CMPにおける研磨液に用いる、上述した成分以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分の具体例としては、ポリマー成分が挙げられる。ポリマー成分としては、これに限定されないが、水溶性高分子が好ましい。
水溶性高分子としては、カルボキシル基を有するモノマーを基本構成単位とするポリマーおよびその塩、ならびに、それらを含む共重合体が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸およびその塩、ならびに、それらを含む共重合体;ポリメタクリル酸およびその塩、ならびに、それらを含む共重合体;ポリアミド酸およびその塩、ならびに、それらを含む共重合体;ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、および、ポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸およびその塩、ならびに、それらを含む共重合体;が挙げられる。
また、上記のほかに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマーが挙げられる。
ポリマー成分の含有量としては特に制限されず、本研磨液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましい。なお、ポリマー成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の水溶性高分子を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0040】
<物性>
以下において、本研磨液の物性について説明する。
【0041】
(ゼータ電位)
本研磨液中に存在する状態で測定されるコロイダルシリカのゼータ電位は、-20mV以下であり、-23mV以下が好ましく、-25mV以下がより好ましい。これにより、SiNの研磨の選択性が向上する。
本研磨液中に存在する状態で測定されるコロイダルシリカのゼータ電位の下限値は、-80mV以上が好ましく、-60mV以上がより好ましい。これにより、SiN基板上に研磨粒子が残渣として残ってしまう問題を避けられるという利点がある。
本研磨液中に存在する状態で測定されるコロイダルシリカのゼータ電位を上記範囲内にする方法としては、これに限定されないが、例えば、上述した表面修飾基を有するコロイダルシリカを用いる方法が挙げられる。
【0042】
本発明において、「ゼータ電位(ζ電位)」とは、液体(本研磨液)中の粒子(コロイダルシリカ)の周囲に存在する拡散電気二重層の「すべり面」における電位を意味する。「すべり面」とは、粒子が液体中で運動する際に、粒子の流体力学的な表面とみなせる面である。
拡散電気二重層は、粒子(コロイダルシリカ)の表面側に形成された固定層と、固定層の外側に形成された拡散層と、を有する。ここで、固定層は、表面が帯電した粒子(コロイダルシリカ)の周囲に、イオンが引き付けられて固定された状態の層である。拡散層は、イオンが熱運動により自由拡散している層である。
すべり面は、固定層と拡散層との境界領域に存在している。粒子が電気泳動した場合、すべり面の電位(ゼータ電位)によって泳動距離が変わる。そのため、電気泳動によって粒子のゼータ電位を測定できる。
本研磨液中のコロイダルシリカのゼータ電位(mV)および拡散層の厚み(Å)は、ゼータ電位測定装置DT-1200(製品名、Dispersion Technology社製、日本ルフト販売)を用いて測定できる。なお、測定温度は、25℃である。
【0043】
上記拡散電気二重層における拡散層の厚みは、10~1000Åが好ましく、10~800Åがより好ましい。
拡散層の厚みが上記範囲内にあれば、コロイダルシリカ同士の反発力を向上できるので、コロイダルシリカの凝集を抑制できる。
拡散層の厚みを上記範囲に調整する方法としては、これに限定されないが、例えば、電気伝導度を調節する方法が挙げられる。
【0044】
本研磨液のpHをXとし、本研磨液中に存在する状態で測定されるコロイダルシリカのゼータ電位をYとした場合において、本研磨液のpHをX+1にしたとき(つまり、pHをXから1大きくなるように調整すること)のゼータ電位と、本研磨液のpHをX-1としたとき(つまり、pHをXから1小さくなるように調整すること)のゼータ電位とがいずれも、Y±5[mV]の範囲内にあるのが好ましく、Y±3[mV]の範囲内にあるのがより好ましい。これにより、本研磨液の経時安定性がより向上する。
ここで、pHを変動させる方法(つまり、pHをX+1またはX-1にする方法)としては、公知のpH調整剤を本研磨液に添加する方法が挙げられる。
上記のように、本研磨液のpHが変動した場合において、本研磨液のゼータ電位の変動幅を小さくする方法としては、本研磨液の電気伝導度、本研磨液の透過率、本研磨液のpH、コロイダルシリカのゼータ電位、拡散層の厚み、コロイダルシリカの粒径、および、コロイダルシリカのアスペクト比等を調整する方法が挙げられる。
なお、本研磨液のpHであるXの測定方法は、後段で詳述する。
【0045】
(電気伝導度)
本研磨液の電気伝導度は、200μS/cm以上であり、350μS/cm以上が好ましく、500μS/cm以上がより好ましい。これにより、SiOの研磨速度が向上して、SiOおよびSiNの研磨速度がより近くなる。
電気伝導度の上限値は、コロイダルシリカの凝集をより抑制できるという点から、5000μS/cm以下が好ましく、3500μS/cm以下がより好ましく、2000μS/cm以下が特に好ましい。
本研磨液の電気伝導度は、電気伝導率計によって測定でき、測定温度は25℃である。なお、電気伝導率計には、「LAQUAシリーズ」(製品名、(株)堀場製作所製)に準ずる装置を使用できる。
電気伝導度を上記範囲に調整する方法としては、これに限定されないが、例えば緩衝剤の含有量を調節する方法が挙げられる。
【0046】
(pH)
本研磨液のpHは、2~6であり、被研磨面の欠陥をより抑制できる点から、2~5がより好ましく、2~3が特に好ましい。
本研磨液のpHは、pHメータによって測定でき、測定温度は25℃である。なお、pHメータには、製品名「LAQUAシリーズ」((株)堀場製作所製)を使用できる。
pHを上記範囲に調整する方法としては、これに限定されないが、例えば特定緩衝剤の含有量を調節する方法が挙げられる。
【0047】
(透過率)
本研磨液の透過率は、60~95%が好ましく、70~95%がより好ましい。透過率が60%以上であれば、被研磨面の欠陥の発生をより少なくできる。透過率が95%以下であれば、SiOおよびSiNの研磨速度をより向上できる。
本研磨液の透過率とは、本研磨液を用いて、光路長1cmにて測定した波長450nmの光の透過率(%)を意味する。透過率は、マルチチャンネル分光器を用いて測定でき、測定温度は25℃である。なお、マルチチャンネル分光器には、「MCPD-9800」(製品名、大塚電子社製)に準ずる装置を使用できる。必要に応じ、リファレンスとして純水の透過率を用いることができる。
透過率を上記範囲に調整する方法としては、これに限定されないが、例えばコロイダルシリカの含有量を調節する方法、および、電気伝導度を調節する方法が挙げられる。
【0048】
<研磨速度の比>
SiN、SiOおよびこれらの誘導体の研磨に本研磨液を用いた場合において、SiOおよびその誘導体の研磨速度に対する、SiNおよびその誘導体の研磨速度の比は、0.25~4が好ましく、0.5~3がより好ましく、0.8~2が特に好ましい。この範囲内にあれば、SiOおよびSiNの研磨速度が同程度であるといえる。
SiOおよびその誘導体の研磨速度に対する、SiNおよびその誘導体の研磨速度の比とは、SiOの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比、SiOの誘導体の研磨速度に対するSiNの研磨速度の比、SiOの研磨速度に対するSiNの誘導体の研磨速度の比、SiOの誘導体の研磨速度に対するSiNの誘導体の研磨速度の比、を意味する。
SiOの誘導体の具体例としては、SiOCおよびドーピング等を行ったSiOが挙げられる。
SiNの誘導体の具体例としては、SiONおよびドーピング処理を行ったSiNが挙げられる。
【0049】
本研磨液が上述した陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤を含み、SiN、poly-Siおよびこれらの誘導体の研磨に本研磨液を用いた場合において、poly-Siおよびその誘導体の研磨速度に対する、SiNおよびその誘導体の研磨速度の比は、0.25~8が好ましく、0.25~6がより好ましい。
一方で、本研磨液が上述した陰イオン界面活性剤を含み、SiN、poly-Siおよびこれらの誘導体の研磨に本研磨液を用いた場合において、poly-Siおよびその誘導体の研磨速度に対する、SiNおよびその誘導体の研磨速度の比は、10以上が好ましく、15以上がより好ましい。また、研磨速度の比の上限値は、特に限定されないが、5000以下が好ましい。
poly-Siおよびその誘導体の研磨速度に対する、SiNおよびその誘導体の研磨速度の比とは、poly-Siの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比、poly-Siの誘導体の研磨速度に対するSiNの研磨速度の比、poly-Siの研磨速度に対するSiNの誘導体の研磨速度の比、poly-Siの誘導体の研磨速度に対するSiNの誘導体の研磨速度の比、を意味する。
poly-Siの誘導体の具体例としては、ドーピング処理等を行ったpoly-Si(変性ポリシリコン)が挙げられる。
【0050】
<本研磨液の製造方法>
本研磨液の製造方法としては特に制限されず、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、上述した各成分を所定の濃度になるように混合して本研磨液を製造してもよいし、濃縮液を調製後に希釈して、本研磨液を製造してもよい。
【0051】
[化学的機械的研磨方法]
本発明の化学的機械的研磨方法(以下、「本CMP方法」ともいう。)は、上述した研磨液を研磨定盤に取り付けられた研磨パッドに供給しながら、被研磨体の被研磨面を上記研磨パッドに接触させ、上記被研磨体および上記研磨パッドを相対的に動かして上記被研磨面を研磨して、研磨済み被研磨体を得る工程を含む。
【0052】
<被研磨体>
被研磨体は、SiNおよびSiOの少なくとも一方を含むことが好ましく、poly-Siをさらに含むことがより好ましい。
被研磨体の具体例としては、基板と、基板上にSiN層およびSiO層と、を有する積層体が挙げられる。積層体の基板上には、さらにpoly-Si層が配置されていてもよい。なお、各層は、厚み方向に配置されていてもよいし、厚み方向と交差する方向に配置されていてもよい。
本CMP方法により、SiN層、SiO層およびpoly-Si層が研磨される。
【0053】
基板の具体例としては、単層からなる半導体基板、および、多層からなる半導体基板が挙げられる。
単層からなる半導体基板を構成する材料の具体例としては、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsのような第III-V族化合物、または、それらの任意の組み合わせが挙げられる。
多層からなる半導体基板の具体例としては、上述のシリコン等の半導体基板上に、金属線および誘電材料のような相互接続構造(interconnect features)等の露出した集積回路構造が配置された基板が挙げられる。
【0054】
<研磨装置>
本CMP方法を実施できる研磨装置は、公知の化学的機械的研磨装置(以下、「CMP装置」ともいう。)を用いることができる。
CMP装置としては、例えば、被研磨面を有する被研磨体を保持するホルダーと、研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤と、を有する一般的なCMP装置が挙げられる。CMP装置の市販品としては、Reflexion(アプライド・マテリアルズ社製)が挙げられる。
【0055】
<研磨圧力>
本CMP方法における研磨圧力は、3000~25000Paが好ましく、6500~14000Paがより好ましい。なお、研磨圧力とは、被研磨面と研磨パッドとの接触面に生ずる圧力を意味する。
【0056】
<研磨定盤の回転数>
本CMP方法における研磨定盤の回転数は、50~200rpmが好ましく、60~150rpmがより好ましい。
なお、被研磨体および研磨パッドを相対的に動かすために、ホルダーを回転および/または揺動させてもよいし、研磨定盤を遊星回転させてもよいし、ベルト状の研磨パッドを長尺方向の一方向に直線状に動かしてもよい。なお、ホルダーは、固定、回転または揺動のいずれの状態であってもよい。これらの研磨方法は、被研磨体および研磨パッドを相対的に動かすのであれば、被研磨面および/または研磨装置により適宜選択できる。
【0057】
<研磨液の供給方法>
本CMP方法では、被研磨面を研磨する間、研磨定盤上の研磨パッドに本研磨液をポンプ等で連続的に供給するのが好ましい。本研磨液の供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本研磨液で覆われていることが好ましい。
【実施例0058】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容または処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特に断らない限り「%」は「質量%」を意図する。
【0059】
[実施例1A~30A、比較例1A~4A]
表1に記載の各成分を混合し、実施例および比較例の各研磨液を調製した。なお、比較例3Aおよび4Aについては、水酸化ナトリウムを添加してpHを調節した。
表1で示した成分の概要を以下に示す。
【0060】
<コロイダルシリカ>
・PL07D(製品名、扶桑化学工業社製、表面にスルホン酸基を有するコロイダルシリカ、平均一次粒子径7nm、アスペクト比1.8、会合度2)
・PL1D(製品名、扶桑化学社工業製、表面にスルホン酸基を有するコロイダルシリカ、平均一次粒子径10nm、アスペクト比1.8、会合度2)
・PL2D(製品名、扶桑化学工業社製、表面にスルホン酸基を有するコロイダルシリカ、平均一次粒子径20nm、アスペクト比1.8、会合度2)
・PL3D(製品名、扶桑化学工業社製、表面にスルホン酸基を有するコロイダルシリカ、平均一次粒子径35nm、アスペクト比1.8、会合度2)
・PL3(製品名、扶桑化学工業社製、コロイダルシリカ、平均一次粒子径35nm、アスペクト比1.8、会合度2)
【0061】
<緩衝剤>
・クエン酸
・リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)
・アジピン酸
・2,2-ジメチルプロパン酸
・シュウ酸
・グリコール酸(2-ヒドロキシエタン酸)
・HEDP(1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸)
・アミノトリ(メチレンホスホン酸)
・エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
・DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)
・TPA(テレフタル酸)
・リン酸
なお、表中の緩衝剤のpKaは、上述したソフトウェアパッケージ1を用いて測定した。
【0062】
<界面活性剤>
・DBSA(ドデシルベンゼンスルホン酸、陰イオン界面活性剤)
・Takesurf-A43-N(製品名、竹本油脂社製、陰イオン界面活性剤)
・セチルトリメチルアンモニウムクロリド(陽イオン界面活性剤)
・塩化セチルピリジニウム(陽イオン界面活性剤)
【0063】
<水>
・水(純水)
【0064】
[物性測定]
<pH>
研磨液の25℃におけるpHをpHメータ(製品名「LAQUAシリーズ」、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。
【0065】
<ゼータ電位および拡散層の厚み>
研磨液中のコロイダルシリカのゼータ電位(mV)および拡散層の厚み(Å)について、ゼータ電位測定装置DT-1200(製品名、Dispersion Technology社製、日本ルフト販売)を用いて測定した。なお、測定時の研磨液の温度は、25℃である。
【0066】
<pH変動時のゼータ電位変動>
上記のようにして測定した研磨液のpHが1大きくなるようにpH調整剤として水酸化カリウム水溶液を添加して得た測定サンプルA(例えば、実施例1においては、研磨液のpHを3に調整する)と、上記のようにして測定した研磨液のpHが1小さくなるようにpH調整剤として塩酸を添加して得た測定サンプルB(例えば、実施例1においては、研磨液のpHを1に調整する)と、を調製した。測定サンプルAおよび測定サンプルBを用いて、上述したゼータ電位の測定と同様の方法で、ゼータ電位を測定した。
pHを変動させる前のゼータ電位の値を基準としたときの、pHを変動させた後(測定サンプルAおよび測定サンプルB)のゼータ電位の値の変動値(下記式参照)を算出し、変動値が最大となる値をpH変動時のゼータ電位変動値(mV)とした。
ゼータ電位の変動値=|(pHを変動させる前のゼータ電位の値)-(pHを変動させた後のゼータ電位の値)|
【0067】
<電気伝導度>
研磨液の25℃における電気伝導率(μS/cm)を電気伝導率計(製品名「LAQUAシリーズ」、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。
【0068】
<透過率>
研磨液の25℃おける波長450nmの透過率について、マルチチャンネル分光器(製品名「MCPD-9800」、大塚電子社製)を用いて測定した。なお、透過率の測定には、光路長が1cmとなるようなセルを用いた。
そして、純水を用いて測定した波長450nmの透過率に対する、測定した研磨液の透過率の割合(%)を求めた。このようにして得られた値を透過率とした。
【0069】
[評価試験]
<研磨速度>
研磨速度の算出:SiN、SiO、poly-Siのブランケットウェハをそれぞれ60秒間研磨し、ウェハ面上の均等間隔の49箇所に対し、研磨前後での膜厚差を求めて、膜厚差を研磨時間で割って求めた値を研磨速度(単位:nm/分)とした。結果を表1に示す。
・研磨装置:Reflexion(アプライド・マテリアルズ社製)
・研磨パッド:IC1010(ロデール社製)
・研磨条件;
研磨圧力(被研磨面と研磨パッドとの接触圧力):1.5psi(なお、本明細書においてpsiとは、pound-force per square inch;重量ポンド毎平方インチを意図し、
1psi=6894.76Paを意図する。)
研磨液供給速度:200ml/分
研磨定盤回転数:110rpm
研磨ヘッド回転数:100rpm
【0070】
<選択比>
上記のようにして算出した各ウェハの研磨速度から、SiOの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比(選択比(SiN/SiO))、および、poly-Siの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比(選択比(SiN/poly-Si))をそれぞれ求めた。
【0071】
<欠陥>
上記研磨速度の算出と同様にして、60秒間研磨した後のSiNのブランケットウェハについて、ウェハ検査装置であるSurfscan SP2(製品名、KLA社製)によって、被研磨面の欠陥(スクラッチ)の評価を行った。
A:研磨後の欠陥数が、20個以下
B:研磨後の欠陥数が、21~30個
C:研磨後の欠陥数が、31~50個
D:研磨後の欠陥数が、51~60個
E:研磨後の欠陥数が、61~80個
F:研磨後の欠陥数が、81個以上
【0072】
<経時安定性>
各研磨液を40℃で30日間保管した。粒度分布計SALD-2300(島津製作所製)を用いて、調製直後(初期)のコロイダルシリカ、および、保管後のコロイダルシリカの各粒度分布を測定して、各平均粒子径(体積平均を算出して求められる50%径の値:D50)を求め、下記式から算出した比により、研磨液の経時安定性の評価を行った。
T3=(保管後のコロイダルシリカの平均粒子径)/(初期のコロイダルシリカの平均粒子径)
A:T3が1.1以下
B:T3が1.1超、1.3以下
C:T3が1.3超、1.5以下
D:T3が1.5超、1.8以下
E:T3が1.8超、2.0以下
F:T3が2.0を超える
【0073】
以上のようにして測定した各物性値および各評価試験の結果を表1に示す。なお、表中、「A<」(Aは数値を表す。)はAよりも大きいことを意味し、「<A」はAよりも小さいことを意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表1に示すように、特定緩衝剤とコロイダルシリカを含み、研磨液中に存在する状態で測定されるコロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、電気伝導度が200μS/cm以上であり、pHが2~6である研磨液を用いると、SiOとSiNとの研磨速度が同程度であり、被研磨面の欠陥が発生しにくく、研磨液の経時安定性にも優れることが示された(実施例)。
実施例1Aと実施例2Aとの対比から、特定含窒素複素環化合物を用いた場合(実施例2A)、SiNの研磨速度が上がることが示された。
実施例1A、3A~6Aの対比から、研磨液のpHが2~5の範囲にあれば(実施例1A~4A)、被研磨面の欠陥がより発生しにくくなることが示された。
実施例1Aと、実施例7A~9Aとの対比から、表面修飾基を有するコロイダルシリカを使用した場合(実施例1A)、被研磨面の欠陥がより発生しにくくなることが示された。
実施例1Aと、実施例10A~12Aとの対比から、平均一次粒子径が15nm以上のコロイダルシリカを使用した場合(実施例1A、12A)、SiOおよびSiNの研磨速度がより近くなることが示された。
実施例1Aと、実施例13A~16Aとの対比から、コロイダルシリカの含有量が3質量%以下であれば(実施例1A、13A~15A)、被研磨面の欠陥がより発生しにくくなることが示された。
実施例17A~20Aとの対比から、電気伝導度が大きくなると、SiOの研磨速度が向上して、SiOおよびSiNの研磨速度がより近くなることが示された。
実施例21A~25Aの対比によれば、表面修飾基を有しないコロイダルシリカの含有量に対する、表面修飾基を有するコロイダルシリカの含有量の割合が高くなるにつれて、被研磨面の欠陥の発生が少なくなること、および、研磨液の経時安定性が向上することが示された。
実施例1Aと、実施例26A~30Aとの対比から、有機酸のpKaが研磨液のpHよりも大きい場合(実施例1A)、被研磨面の欠陥の発生が少なくなることが示された。
実施例4Aと、実施例31Aおよび32Aとの対比から、陰イオン界面活性剤を用いれば(実施例31Aおよび32A)、poly-Siに対するSiNの選択性が高くなることが示された。
実施例4Aと、実施例33Aおよび34Aとの対比から、陽イオン界面活性剤を用いれば(実施例33Aおよび34A)、poly-Siに対するSiNの選択性が低くなることが示された。
【0078】
一方で、電気伝導度が200μS/cm未満の研磨液を用いた場合、SiOおよびSiNの研磨速度がいずれも遅く、被研磨面の欠陥が多くなることが示された(比較例1A)。
また、ゼータ電位が-20mVよりも大きい研磨液を用いた場合、SiOの研磨速度が遅くなりすぎてしまうこと、および、被研磨面の欠陥も多くなることが示された(比較例2A)。
また、pHが6よりも大きい研磨液を用いた場合、SiOに対するSiNの研磨の選択性が高くなりすぎてしまうこと、被研磨面の欠陥が多くなることが示された(比較例3A)。
また、研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲外のpKaをもつ緩衝剤を用いた場合、被研磨面の欠陥が多くなることが示された(比較例4A)。
また、緩衝剤としてリン酸を用いた場合、被研磨面の欠陥が多くなること、および、研磨液の経時安定性も劣ることが示された(比較例5A)。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、
前記緩衝剤が、前記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200~1852μS/cmであり、
pHが2~6である、研磨液。
【請求項2】
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、
前記コロイダルシリカが、表面修飾基を有するコロイダルシリカと、表面修飾基を有しないコロイダルシリカと、を含み、
前記表面修飾基が、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基であり、かつ、前記表面修飾基を有するコロイダルシリカの表面に共有結合を介して連結しており、
前記表面修飾基を有するコロイダルシリカの含有量が、前記表面修飾基を有するコロイダルシリカと、前記表面修飾基を有しないコロイダルシリカとの合計100質量部に対して、50質量部以上であり、
前記緩衝剤が、前記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200~1852μS/cmであり、
pHが2~6である、研磨液。
【請求項3】
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤と、を含む研磨液であって、
前記緩衝剤が、前記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200μS/cm以上であり、
pHが2~6である、研磨液。
【請求項4】
化学的機械的研磨に用いられ、コロイダルシリカと、リン酸を除く緩衝剤と、を含む研磨液であって、
前記緩衝剤が、前記研磨液のpHをXとした場合に、X±1の範囲内のpKaをもつ化合物であり、
前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位が-20mV以下であり、
電気伝導度が200~1852μS/cmであり、
pHが2~6であり、
前記緩衝剤がクエン酸である、研磨液。
【請求項5】
前記コロイダルシリカの平均アスペクト比が、1.5~3.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記コロイダルシリカの表面に拡散電気二重層が形成されており、
前記拡散電気二重層は、コロイダルシリカの表面側に形成された固定層と、前記固定層の外側に形成された拡散層と、を有し、
前記拡散層の厚みが、10~1000Åである、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項7】
前記研磨液のpHをXとし、前記研磨液中に存在する状態で測定される前記コロイダルシリカのゼータ電位をYとした場合において、
前記研磨液のpHをX+1にしたときのゼータ電位と、前記研磨液のpHをX-1としたときのゼータ電位とがいずれも、Y±5mVの範囲内にある、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項8】
透過率が60~95%である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項9】
前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、15nm以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項10】
前記電気伝導度が、200~5000μS/cmである、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項11】
スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基が、コロイダルシリカ表面に共有結合を介して連結している、請求項1、3または4に記載の研磨液。
【請求項12】
前記緩衝剤が有機酸を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項13】
窒素原子を2個以上有する複素環を有する化合物をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項14】
窒化珪素および酸化珪素の研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記酸化珪素の研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~4である、請求項1~13のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項15】
陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤をさらに含む、請求項1、2または4に記載の研磨液。
【請求項16】
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記ポリシリコンの研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、0.25~8である、請求項3または15に記載の研磨液。
【請求項17】
陰イオン界面活性剤をさらに含む、請求項1、2または4に記載の研磨液。
【請求項18】
窒化珪素およびポリシリコンの研磨に前記研磨液を用いた場合において、
前記ポリシリコンの研磨速度に対する、前記窒化珪素の研磨速度の比が、10以上である、請求項17に記載の研磨液。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の研磨液を研磨定盤に取り付けられた研磨パッドに供給しながら、被研磨体の被研磨面を前記研磨パッドに接触させ、前記被研磨体および前記研磨パッドを相対的に動かして前記被研磨面を研磨して、研磨済み被研磨体を得る工程を含む、化学的機械的研磨方法。
【請求項20】
前記被研磨体が、窒化珪素および酸化珪素の少なくとも一方を含む、請求項19に記載の化学的機械的研磨方法。
【請求項21】
前記被研磨体が、ポリシリコンをさらに含む、請求項20に記載の化学的機械的研磨方法。