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特開2022-91935成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091935
(43)【公開日】2022-06-21
(54)【発明の名称】成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/04 20060101AFI20220614BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20220614BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20220614BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01B15/04 C
G01N21/3581
G01N21/21
G01B11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060119
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2021510139の分割
【原出願日】2020-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】515110122
【氏名又は名称】有限会社飯田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】三宅 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】梶原 優介
(72)【発明者】
【氏名】野渡 透一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晴一郎
(72)【発明者】
【氏名】野渡 潤也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】テラヘルツ波の偏光強度を利用して、成形品の経時的寸法変化が収束したことを予測するための方法等を提供すること
【解決手段】本発明は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法を提供し、前記方法は、成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射することであって、前記テラヘルツ波は、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射される、ことと、前記成形品を透過または反射した前記テラヘルツ波の偏光強度を測定することと、前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成型品などの成形品を切削加工などで製品として所定の寸法に加工することが行われているが、せっかく所定の寸法に加工した成型品が、経時的に変化してしまい、実際に使用する際には所定の寸法から外れてしまうという問題がある。
【0003】
ところで、近年、テラヘルツ波を用いて物体の内部状態を解析する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/059044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のテラヘルツ波を用いた物体の内部状態の解析では、内部の欠陥や歪みの状況については解析できても、物体の寸法が今後変化するのか否かについて予測することはできなかった。
【0006】
本発明は、成形品の経時的寸法変化が収束したことを予測するための方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、成形品の内部構造に起因して、テラヘルツ波が透過した後の偏光強度が変動するという知見から、偏光強度と成形品の経時的寸法変化との間に相関関係があることを初めて見出した。
【0008】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法であって、
成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射することであって、前記テラヘルツ波は、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射される、ことと、
前記成形品を透過または反射した前記テラヘルツ波の偏光強度を測定することと、
前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することと
を含む方法。
(項目2)
前記光軸周りの複数の向きは、前記偏光強度が極大となる複数の向きを含み、
前記所定の関係は、前記偏光強度が極大となる複数の向きのうちの1つでの前記複数の位置における前記偏光強度が、前記偏光強度が極大となる複数の向きのうちの他の1つでの前記複数の位置における前記偏光強度と相関することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記所定の関係は、前記偏光強度が極大となる複数の向きのうちの隣り合う向きのうちの1つでの前記複数の位置における前記偏光強度が、前記偏光強度が極大となる複数の向きのうちの前記隣り合う向きのうちの他の1つでの前記複数の位置における前記偏光強度と相関することを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記相関することは、相関係数が約0.9以上であることを含む、項目2または項目3に記載の方法。
(項目5)
前記成形品は、略円形の部材である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記複数の位置は、少なくとも4つの位置であり、前記少なくとも4つの位置は、前記略円形の部材の中心を原点と置いたときの(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)であり、
ここで、0<a<rであり、rは、前記略円形の部材の半径である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記略円形の部材は、中空である、項目5または項目6に記載の方法。
(項目8)
前記略円形の部材は、中実である、項目5または項目6に記載の方法。
(項目9)
前記光軸周りの複数の向きは、約0度、約90度、約180度、約270度を含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記測定された偏光強度に基づいて、前記成形品に加えられている圧縮力または引張力を予測することをさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記測定された偏光強度に基づいて、前記成形品に混合されている混合物の割合を予測することをさらに含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記混合物は、炭素、ガラス繊維、炭素繊維、モリブデンのうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記成形品は、樹脂を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのシステムであって、
成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射するための照射手段であって、前記テラヘルツ波は、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射される、照射手段と、
前記成形品を透過または反射した前記テラヘルツ波の偏光強度を測定する測定手段と、
前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定する判定手段と
を備えるシステム。
(項目16)
成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのコンピュータシステムであって、
成形品上の複数の位置に、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射されたテラヘルツ波が前記成形品を透過または反射したときの偏光強度を取得する取得手段と、
前記取得された偏光強度に基づいて、前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定する判定手段と
を備えるコンピュータシステム。
(項目17)
成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
成形品上の複数の位置に、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射されたテラヘルツ波が前記成形品を透過または反射したときの偏光強度を取得することと、
前記取得された偏光強度に基づいて、前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目18)
成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法であって、
成形品上の複数の位置に、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射されたテラヘルツ波が前記成形品を透過または反射したときの偏光強度を取得することと、
前記取得された偏光強度に基づいて、前記複数の位置における前記偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することと
を含む方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形品の経時的寸法変化が収束したことを予測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】成形品のテラヘルツ波偏光計測の概念を概略的に示す図
図2】成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのシステム100の構成の一例を示す図
図3A】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3B】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3C】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3D】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3E】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3F】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図3G】成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図
図4】コンピュータシステム130の構成の一例を示す図
図5A】成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための手順500の一例を示すフローチャート
図5B】成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための手順500の一例を示すフローチャート
図6】成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのコンピュータシステムによる処理600の一例を示すフローチャート
図7】中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験1の結果を示す図
図8A】中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2の結果を示す図
図8B】中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2の結果を示す図
図8C】中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2の結果を示す図
図9】中空略円形PTFEに対する寸法計測実験の結果を示す図
図10】中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験1の結果を示す図
図11A】中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2の結果を示す図
図11B】中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2の結果を示す図
図12】中実略円形PTFEに対する寸法計測実験の結果を示す図
図13】圧縮力を加えたPTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験の結果を示す図
図14】炭素Cを混合したPTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(定義)
本明細書において、「テラヘルツ波」または「THz波」とは、波長約30μm~約1mmの光を意味する。「テラヘルツ波」または「THz波」は、パルス状の光であってもよいし、連続した光であってもよい。
【0012】
本明細書において、「テラヘルツ波の偏光強度」とは、テラヘルツ波が物体に照射されたときに物体から受けた偏光の程度を意味する。「テラヘルツ波の偏光強度」は、物体を透過したテラヘルツ波または物体から反射したテラヘルツ波から計測される。テラヘルツ波が何も物体を透過しないとき、テラヘルツ波の偏光強度はゼロである。
【0013】
本明細書において、成形品の経時的寸法変化の「収束」とは、ある測定時点における所定位置の寸法測定による測定値と、その後少なくとも7日経過した測定時点における所定位置の寸法測定による測定値との差が約10μm以下、好ましくは約5μm以下、さらに好ましくは約1μm以下であること、または測定値の変化率が約0.05%以下、好ましくは約0.03%以下、さらに好ましくは約0.001%以下であることをいう。
【0014】
なお、測定値の変化率は、ある測定時点における所定位置の寸法測定による測定値dに対する、ある測定時点における所定位置の寸法測定による測定値dと少なくとも7日経過した測定時点における所定位置の寸法測定による測定値dとの差の絶対値の割合、すなわち、
|d-d|/d
で表される。
【0015】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0016】
(本発明の実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、成形品のテラヘルツ波偏光計測の概念を概略的に示す。
【0018】
テラヘルツ波偏光計測は、テラヘルツ波光源110と、テラヘルツ波検出器120を用いて行われる。テラヘルツ波光源110は、テラヘルツ波を照射するように構成されており、テラヘルツ波検出器120は、テラヘルツ波の偏光強度を検出するように構成されている。テラヘルツ波光源110と、テラヘルツ波検出器120との間に成形品を置き、テラヘルツ波光源110から成形品にテラヘルツ波11を照射し、透過したテラヘルツ波11をテラヘルツ波検出器120によって検出することにより、成形品によるテラヘルツ波の偏光強度を測定することができる。
【0019】
図1に示される例では、成形品の内部の高分子結晶12が概略的に示されている。図1に示されるように、成形品の内部の高分子結晶12が特定の方向に配向している場合、成形品を透過したテラヘルツ波11のスペクトルに異方性が現れる。この異方性が、テラヘルツ波の偏光強度の原因であると考えられている。
【0020】
本発明の発明者は、成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射し、複数の位置のそれぞれにおいて、成形品を透過したテラヘルツ波を検出することにより、成形品によるテラヘルツ波の偏光強度を測定する。このとき、複数の位置のそれぞれにおいて、成形品自体を回転させるまたはテラヘルツ波光源を回転させることによって、成形品に照射されるテラヘルツ波の光軸周りの向きを変化させ、複数の向きのそれぞれにおいて成形品を透過したテラヘルツ波を検出する。すなわち、(位置の数)×(向きの数)のテラヘルツ波の偏光強度が測定されることになる。本発明の発明者は、このようにして測定された(位置の数)×(向きの数)のテラヘルツ波の偏光強度と、成形品の寸法の経時的変化との間に相関関係があることを見出した。すなわち、成形品の寸法の経時的変化が収束したときには、(位置の数)×(向きの数)のテラヘルツ波の偏光強度が所定の関係にあることを見出したのである。これにより、(位置の数)×(向きの数)のテラヘルツ波の偏光強度が所定の関係にあるか否かを判断することにより、成形品の寸法の経時的変化が収束したか否かを予測することが可能になる。
【0021】
これは、例えば、後述する成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのシステム100によって実装され得る。
【0022】
図2は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのシステム100の構成の一例を示す。
【0023】
システム100は、成形品10にテラヘルツ波を照射し、成形品10を透過したテラヘルツ波の偏光強度を計測することにより、成形品10の寸法の経時的変化が収束したことを予測することができるように構成されている。なお、成型品の寸法の経時的変化と成型品の残留応力とは関連性が高いと考えられるため、本発明の成型品の経時的寸法変化が収束したことを予測するシステムは、成型品の残留応力の有無などを予測することに応用することが可能と考える。
【0024】
成形品10を構成する材料は、任意であり得る。例えば、材料としては樹脂であり、樹脂は加工された際に樹脂内部に残留応力を生じ、残留応力の開放などの影響により寸法が経時的に変化し、一定時間経過後に寸法変化が収束する樹脂であり得る。このような樹脂は、例えば、フッ素樹脂を含む。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、または、これらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。樹脂成形品10は、例えば、切削加工後の樹脂成形品であり得る。切削加工により樹脂成形品10内には残留応力が発生するため、残留応力の解放に起因して寸法が経時的に変化する。本発明はこれに限定されない。例えば、金属材料、セラミック材料、およびそれらの複合材料からなる成形品であってもよい。
【0025】
システム100は、テラヘルツ波光源110と、テラヘルツ波検出器120と、コンピュータシステム130とを備えている。テラヘルツ波光源110およびテラヘルツ波検出器120はそれぞれ、コンピュータシステム130に接続されている。本発明では、テラヘルツ波光源110およびテラヘルツ波検出器120と、コンピュータシステム130との接続態様は問わない。例えば、テラヘルツ波光源110およびテラヘルツ波検出器120と、コンピュータシステム130とは、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。例えば、テラヘルツ波光源110およびテラヘルツ波検出器120と、コンピュータシステム130とは、任意のネットワーク(例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク)を介して接続され得る。
【0026】
テラヘルツ波光源110は、テラヘルツ波を照射することが可能な任意の機構であり得る。テラヘルツ波光源110は、例えば、特定の周波数または特定の周波数帯を有するTHz波のみを照射することが可能なように構成されてもよい。特定の周波数は、約0~約5.0THz等であり得る。テラヘルツ波光源110が、特定の周波数を有するテラヘルツ波のみを照射するようにすることにより、テラヘルツ波光源110は、広範なテラヘルツ波照射能力を有する必要がなく、テラヘルツ波光源110の構成を簡略化することができる。これは、システム100の低コスト化につながる。
【0027】
テラヘルツ波光源110から照射されたテラヘルツ波は、成形品10を透過し、テラヘルツ波検出器120に到達する。
【0028】
テラヘルツ波検出器120は、テラヘルツ波を検出するように構成された任意の機構であり得る。テラヘルツ波検出器120は、テラヘルツ波の偏光強度を測定するように構成されることができる。テラヘルツ波検出器120は、例えば、検出されたテラヘルツ波の偏光強度を電圧信号として出力することができる。
【0029】
コンピュータシステム130はさらに、成形品10上の複数の位置に照射されたテラヘルツ波からテラヘルツ波検出器120が測定したテラヘルツ波の偏光強度に基づいて、成形品10の偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定するように構成されている。コンピュータシステム130は、成形品10の偏光強度が所定の関係にある場合に、成形品10の経時的寸法変化が収束したと予測することができ、成形品10の偏光強度が所定の関係にない場合に、成形品10の経時的寸法変化がまだ収束していないと予測することができる。
【0030】
システム100は、成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台をさらに備えるようにしてもよい。
【0031】
図3A図3Gは、成形品10上のテラヘルツ波を照射する位置を変化させるためのワーク回転台300を上から見た図である。
【0032】
ワーク回転台300上には成形品10が載置されている。図3に示される例では、成形品10は、中空の略円形部材として示されているが、本発明で測定対象となる成形品10は、これに限定されない。成形品10の形状は、任意の形状であることができる。例えば、成形品10の形状は、断面が略円形、略楕円形、略多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)、略正多角形(略正三角形、略正方形、略正五角形、略正六角形等)等であり得る。さらに、成形品10の形状は、中実であってもよいし、中空であってもよい。中空である場合には、中空部分の形状は任意の形状であり得る。例えば、中空部分は、略円形、略楕円形、略多角形(略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等)、略正多角形(略正三角形、略正方形、略正五角形、略正六角形等)等であり得る。また、成形品は略柱状体であってもよいし、略筒体であってもよいし、略平板であってもよい。
【0033】
ワーク回転台300上のスポットSは、ワーク回転台300の中心であり、孔(不可視)があいている。スポットSにテラヘルツ波光源110からテラヘルツ波を照射する。テラヘルツ波光源110とワーク回転台300との位置関係が固定されているため、ワーク回転台300を回転させることによって、成形品10上にテラヘルツ波が照射される光軸周りの向きを変化させることができる。テラヘルツ波は、電場ベクトルおよび磁場ベクトルが振動する方向を有しており、成形品10上にテラヘルツ波が照射される光軸周りの向きを変化させることに伴って、成形品10上でのテラヘルツ波の電場ベクトルおよび磁場ベクトルの振動方向も変化し得る。例えば、図3A図3Dに示すように、成形品10上のテラヘルツ波が照射される位置を変化させることなく、ワーク回転台300を回転させることによって、成形品10上にテラヘルツ波が照射される向きを変化させることができる。
【0034】
さらに、ワーク回転台300に対する成形品10の位置および/または向きを変化させることによって、成形品10上にテラヘルツ波が照射される照射位置を変化させることができる。例えば、図3A図3E図3Gに示されるように、ワーク回転台に対する成形品10の方向を変化させることによって、成形品10上にテラヘルツ波が照射される位置を変化させることができる。
【0035】
図3Aは、第1の状態を示し、第1の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第1の位置に載置され、ワーク回転台300が第1の向きに位置する。紙面左右方向をx軸方向とし、紙面上下方向をy軸とする。図3Aに示される第1の状態において、便宜上、y座標が最大となる成形品10上の点をAとし、y座標が最大となるワーク回転台300上の点をBとする。
【0036】
図3Bは、図3Aに示される第1の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度回転させた第2の状態を示し、第2の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第1の位置に載置され、ワーク回転台300が第2の向き(点Bが、x座標が最大となる点となる向き)に位置する。
【0037】
図3Cは、図3Bに示される第2の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度回転させた第3の状態を示し、第3の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第1の位置に載置され、ワーク回転台300が第3の向き(点Bが、y座標が最小となる点となる向き)に位置する。
【0038】
図3Dは、図3Cに示される第3の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度回転させた第4の状態を示し、第4の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第1の位置に載置され、ワーク回転台300が第4の向き(点Bが、x座標が最小となる点となる向き)に位置する。
【0039】
図3Eは、図3Aに示される第1の状態から、成形品10を矢印βの方向に約90度回転させた第5の状態を示し、第5の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第2の位置(点Aが、x座標が最大となる点となる位置)に載置され、ワーク回転台300が第1の向きに位置する。例えば、図3Eに示される第5の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度、約180度、約270度回転させて、第6の状態(成形品10がワーク回転台300上の第2の位置に載置され、ワーク回転台300が第2の向きに位置する)、第7の状態(成形品10がワーク回転台300上の第2の位置に載置され、ワーク回転台300が第3の向きに位置する)、第8の状態(成形品10がワーク回転台300上の第2の位置に載置され、ワーク回転台300が第4の向きに位置する)となるようにすることができる。
【0040】
図3Fは、図3Eに示される第5の状態から、成形品10を矢印βの方向に約90度回転させた第9の状態を示し、第9の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第3の位置(点Aが、y座標が最小となる点となる位置)に載置され、ワーク回転台300が第1の向きに位置する。例えば、図3Fに示される第9の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度、約180度、約270度回転させて、第10の状態(成形品10がワーク回転台300上の第3の位置に載置され、ワーク回転台300が第2の向きに位置する)、第11の状態(成形品10がワーク回転台300上の第3の位置に載置され、ワーク回転台300が第3の向きに位置する)、第12の状態(成形品10がワーク回転台300上の第3の位置に載置され、ワーク回転台300が第4の向きに位置する)となるようにすることができる。
【0041】
図3Gは、図3Fに示される第9の状態から、成形品10を矢印βの方向に約90度回転させた第13の状態を示し、第13の状態において、成形品10がワーク回転台300上の第4の位置(点Aが、x座標が最小となる点となる位置)に載置され、ワーク回転台300が第1の向きに位置する。例えば、図3Fに示される第13の状態から、ワーク回転台300を矢印αの方向に約90度、約180度、約270度回転させて、第14の状態(成形品10がワーク回転台300上の第4の位置に載置され、ワーク回転台300が第2の向きに位置する)、第15の状態(成形品10がワーク回転台300上の第4の位置に載置され、ワーク回転台300が第3の向きに位置する)、第16の状態(成形品10がワーク回転台300上の第4の位置に載置され、ワーク回転台300が第4の向きに位置する)となるようにすることができる。
【0042】
上述した第1の状態~第16の状態のそれぞれにおいてテラヘルツ波を成形品10に照射し、透過したテラヘルツ波を検出することにより、複数の位置のそれぞれにおける複数の向きのそれぞれでのテラヘルツ波の偏光強度を測定することができる。
【0043】
上述した例では、複数の位置は、略円形中空の成形品10における4つの位置であり、4つの位置の座標は、略円形の成形品10の中心を原点と置いたときの(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)と表されることができ、ここで、0<a<rであり、rは、略円形の成形品10の半径である。
【0044】
上述した例では、約90度刻みにワーク回転台300を回転させることを説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、約90度以外の任意の角度刻みにワーク回転台300を回転させるようにしてもよい。例えば、約5度刻み、約10度刻み、約15度刻み、約30度刻み、約45度刻み、または約60度刻みでワーク回転台300を回転させるようにすることができる。図3A図3Gに示される中空略円形の成形品10の場合には、約90度刻みにワーク回転台300を回転させることが好ましい。なぜなら、図3A図3Gに示される中空略円形の成形品10の場合には外径方向を基準として約90度毎にテラヘルツ波の偏光強度のピーク(極大値)が現れるため、約90度刻みの光軸周りの向きでテラヘルツ波を照射することにより、成形品10の特性を効率的に分析することができ、かつ、測定にかかる負荷を小さく抑えられるからである。
【0045】
上述した例では、約90度刻みに成形品10自体をワーク回転台300上で回転させることを説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、約90度以外の任意の角度刻みに成形品10自体をワーク回転台300上で回転させるようにしてもよい。例えば、約5度刻み、約10度刻み、約15度刻み、約30度刻み、約45度刻み、または約60度刻みで成形品10自体をワーク回転台300上で回転させるようにすることができる。
【0046】
このように、テラヘルツ波光源110と、ワーク回転台300とを用いることにより、成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射することができる。すなわち、テラヘルツ波光源110およびワーク回転台300により、成形品上の複数の位置にテラヘルツ波を照射するための照射手段が構成される。
【0047】
再び図2を参照して、コンピュータシステム130は、データベース部200に接続され得る。
【0048】
データベース部200には、過去に行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果が格納され得る。あるいは、データベース部200には、過去に行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果を分析した結果が格納され得る。
【0049】
図4は、コンピュータシステム130の構成の一例を示す。
【0050】
コンピュータシステム130は、インターフェース部131と、プロセッサ部132と、メモリ部133とを備える。
【0051】
インターフェース部131は、インターフェース部131は、コンピュータシステム130の外部と情報のやり取りを行う。コンピュータシステム130のプロセッサ部120は、インターフェース部131を介して、コンピュータシステム130の外部から情報を受信することが可能であり、コンピュータシステム130の外部に情報を送信することが可能である。インターフェース部131は、任意の形式で情報のやり取りを行うことができる。
【0052】
インターフェース部131は、テラヘルツ波検出器120からの出力信号を受信することができる。インターフェース部131は、予測された、成形品の寸法の経時的変化が収束したことをコンピュータシステム130の外部に出力することができる。
【0053】
インターフェース部131は、例えば、コンピュータシステム130に情報を入力することを可能にする入力部を備える。入力部が、どのような態様でコンピュータシステム130に情報を入力することを可能にするかは問わない。例えば、入力部がタッチパネルである場合には、ユーザがタッチパネルにタッチすることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマウスである場合には、ユーザがマウスを操作することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がキーボードである場合には、ユーザがキーボードのキーを押下することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマイクである場合には、ユーザがマイクに音声を入力することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がデータ読み取り装置である場合には、コンピュータシステム130に接続された記憶媒体から情報を読み取ることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部が受信器である場合、受信器がネットワークを介してコンピュータシステム130の外部から情報を受信することにより入力してもよい。
【0054】
インターフェース部131は、例えば、コンピュータシステム130から情報を出力することを可能にする出力部を備える。出力部が、どのような態様でコンピュータシステム130から情報を出力することを可能にするかは問わない。例えば、出力部が表示画面である場合、表示画面に情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部がスピーカである場合には、スピーカからの音声によって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部がデータ書き込み装置である場合、コンピュータシステム130に接続された記憶媒体に情報を書き込むことによって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部が送信器である場合、送信器がネットワークを介してコンピュータシステム130の外部に情報を送信することにより出力してもよい。
【0055】
プロセッサ部132は、コンピュータシステム130の処理を実行し、かつ、コンピュータシステム130全体の動作を制御する。プロセッサ部132は、メモリ部133に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、コンピュータシステム130を所望のステップを実行するシステムとして機能させることが可能である。プロセッサ部132は、単一のプロセッサによって実装されてもよいし、複数のプロセッサによって実装されてもよい。このとき、複数のプロセッサは、同一のハードウェア部品内に位置してもよいし、近傍または遠隔の別個のハードウェア部品内に位置してもよい。
【0056】
プロセッサ部132は、インターフェース部131を介してテラヘルツ波検出器120から受信されたテラヘルツ波の偏光強度を取得することができる。あるいは、プロセッサ部132は、インターフェース部131を介してテラヘルツ波検出器120から受信された出力信号を分析することにより、テラヘルツ波の偏光強度を導出するようにしてもよい。
【0057】
プロセッサ部132は、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定するように構成されている。所定の関係は、過去に行われた成形品に対するテラヘルツ波偏光強度測定の結果と、成形品の寸法計測の結果とから導出される関係であり得る。所定の関係は、計測対象の成形品の形状および/または材料に応じて変動し得る。
【0058】
所定の関係は、例えば、成形品10上の複数の位置のうちの1つの位置でのテラヘルツ波の偏光強度が、成形品10上の複数の位置のうちの他の位置でのテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。相関することは、相関係数が閾値以上であることであり、例えば、相関係数が、約0.99以上であること、約0.98以上であること、約0.97以上であること、約0.96以上であること、約0.95以上であること、約0.94以上であること、約0.93以上であること、約0.92以上であること、約0.91以上であること、約0.90以上であること、約0.85以上であること、約0.80以上であること、約0.75以上であること、または約0.70以上であることのうちの1つであり得る。
【0059】
相関係数Correl(X,Y)は、
【数1】
で表され、
【化1】
は、{x}の相加平均であり、
【化2】
は、{y}の相加平均である。
【0060】
複数の相関係数を算出することができる場合には、相関することは、例えば、複数の相関係数のそれぞれが閾値以上であると定義されてもよいし、複数の相関係数の平均値が閾値以上であると定義されてもよいし、複数の相関係数の中間値が閾値以上であると定義されてもよいし、複数の相関係数の最大値または最小値が閾値以上であると定義されてもよい。
【0061】
一実施形態において、所定の関係は、例えば、テラヘルツ波が照射される光軸周りの複数の向きのうち、偏光強度が極大となる複数の向き(例えば、略円形の成形品の外径方向を基準軸として約90度刻みの複数の向き)のうちの1つ(例えば、略円形の成形品の外径方向を基準軸として約0度の向き、約90度の向き、約180度の向き、または約270度の向き)での、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの他の1つでの、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。相関することは、相関係数が閾値以上であることであり、例えば、相関係数が、約0.99以上であること、約0.98以上であること、約0.97以上であること、約0.96以上であること、約0.95以上であること、約0.94以上であること、約0.93以上であること、約0.92以上であること、約0.91以上であること、約0.90以上であること、約0.85以上であること、約0.80以上であること、約0.75以上であること、または約0.70以上であることのうちの1つであり得る。
【0062】
例えば、或る略円形の樹脂成形品A(焼成切削後20日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、2つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度)でテラヘルツ波を照射したときに、表1に示される偏光強度が得られたとする。
【0063】
【表1】
【0064】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7497となる。
【0065】
さらに、別の略円形の樹脂成形品B(焼成切削後50日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、2つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度)でテラヘルツ波を照射したときに、表1に示される偏光強度が得られたとする。
【0066】
【表2】
【0067】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9979となる。
【0068】
所定の関係における相関係数を0.8以上であるとすると、樹脂成形品Aは所定の関係を満たさず、樹脂成形品Bは所定の関係を満たすことになる。
【0069】
実際に、樹脂成形品Aおよび樹脂成形品Bの直径を経時的に計測したところ、樹脂成形品Aにおける直径の変化率は0.03%よりも大きかった一方で、樹脂成形品Bにおける直径の変化率は0.03%よりも小さかった。すなわち、樹脂成形品Bの寸法の経時的変化が収束しているといえる。
【0070】
例えば、或る略円形の樹脂成形品A(焼成切削後20日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、4つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度、180度、270度)でテラヘルツ波を照射したときに、表3に示される偏光強度が得られたとする。
【0071】
【表3】
【0072】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7497となる。向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7832となる。向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.3173となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7662となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.3173となる。向き180度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、-0.1078となる。
【0073】
これらの相関係数の平均値は、0.4710となる。
【0074】
さらに、別の略円形の樹脂成形品B(焼成切削後50日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、4つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度、180度、270度)でテラヘルツ波を照射したときに、表4に示される偏光強度が得られたとする。
【0075】
【表4】
【0076】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9979となる。向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.8811となる。向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9382となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9010となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9579となる。向き180度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9684となる。
【0077】
これらの相関係数の平均値は、0.9408となる。
【0078】
所定の関係における相関係数を0.8以上であるとすると、樹脂成形品Aは所定の関係を満たさず、樹脂成形品Bは所定の関係を満たすことになる。
【0079】
上述したように、実際に、樹脂成形品Aおよび樹脂成形品Bの直径を経時的に計測したところ、樹脂成形品Aにおける直径の変化率は0.03%よりも大きかった一方で、樹脂成形品Bにおける直径の変化率は0.03%よりも小さかった。すなわち、樹脂成形品Bの寸法の経時的変化が収束しているといえる。
【0080】
一実施形態において、所定関係は、例えば、テラヘルツ波が照射される光軸周りの複数の向きのうち、偏光強度が極大となる複数の向き(例えば、略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として約90度刻みの複数の向き)のうちの隣り合う向き(例えば、略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として約0度の向きおよび約90度の向き、約90度の向きおよび約180度の向き、約180度の向きおよび約270度の向き、または約270度の向きおよび約0度の向き)のうちの1つでの、樹脂成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの隣り合う向きのうちの他の1つでの、樹脂成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。相関することは、相関係数が閾値以上であることであり、例えば、相関係数が、約0.99以上であること、約0.98以上であること、約0.97以上であること、約0.96以上であること、約0.95以上であること、約0.94以上であること、約0.93以上であること、約0.92以上であること、約0.91以上であること、約0.90以上であること、約0.85以上であること、約0.80以上であること、約0.75以上であること、または約0.70以上であることのうちの1つであり得る。
【0081】
例えば、或る略円形の樹脂成形品A(焼成切削後20日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、4つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度、180度、270度)でテラヘルツ波を照射したときに、上記表3に示される偏光強度が得られたとする。
【0082】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7497となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.7662となる。向き180度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、-0.1078となる。向き270度での複数の位置における偏光強度と、向き0度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.3173となる。
【0083】
これらの相関係数の平均値は、0.4314となる。
【0084】
さらに、別の略円形の樹脂成形品B(焼成切削後50日目)上の4つの位置(a,0)、(-a,0)、(0,a)、(0,-a)において、4つの向き(略円形の樹脂成形品の外径方向を基準軸として、0度、90度、180度、270度)でテラヘルツ波を照射したときに、表4に示される偏光強度が得られたとする。
【0085】
このとき、向き0度での複数の位置における偏光強度と、向き90度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9979となる。向き90度での複数の位置における偏光強度と、向き180度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9010となる。向き180度での複数の位置における偏光強度と、向き270度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9684となる。向き270度での複数の位置における偏光強度と、向き0度での複数の位置における偏光強度との相関係数は、0.9382となる。
【0086】
これらの相関係数の平均値は、0.9513となる。
【0087】
所定の関係における相関係数を0.8以上であるとすると、樹脂成形品Aは所定の関係を満たさず、樹脂成形品Bは所定の関係を満たすことになる。
【0088】
上述したように、実際に、樹脂成形品Aおよび樹脂成形品Bの直径を経時的に計測したところ、樹脂成形品Aにおける直径の変化率は0.03%よりも大きかった一方で、樹脂成形品Bにおける直径の変化率は0.03%よりも小さかった。すなわち、樹脂成形品Bの寸法の経時的変化が収束しているといえる。
【0089】
このように、プロセッサ部132が、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することにより、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測することが可能である。
【0090】
メモリ部133は、コンピュータシステム130の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等を格納する。メモリ部133は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための処理をプロセッサ部132に行わせるためのプログラム(例えば、後述する図6に示される処理を実現するプログラム)を格納してもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部133に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部133にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部133にインストールされるようにしてもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。メモリ部133は、任意の記憶手段によって実装され得る。
【0091】
データベース部200には、過去に行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果が格納され得る。あるいは、データベース部200には、過去に行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果を分析した結果が格納され得る。
【0092】
例えば、データベース部200には、テラヘルツ波検出器120によって測定された偏光強度と、そのときの成形品10上の位置および光軸周りの向きとが、関連付けられて格納される。
【0093】
例えば、データベース部200には、成形品10の寸法の経時的変化が収束していない場合のテラヘルツ波偏光強度測定の結果(例えば、成形品10上の複数の位置のうちの1つの位置でのテラヘルツ波の偏光強度と、成形品10上の複数の位置のうちの他の位置でのテラヘルツ波の偏光強度との相関係数)と、成形品10の寸法の経時的変化が収束した場合のテラヘルツ波偏光強度測定の結果(例えば、成形品10上の複数の位置のうちの1つの位置でのテラヘルツ波の偏光強度と、成形品10上の複数の位置のうちの他の位置でのテラヘルツ波の偏光強度との相関係数)が格納される。
【0094】
プロセッサ部132は、データベース部200に格納されたデータを利用することにより、成形品10の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための所定の関係(例えば、相関係数の閾値)を導出することができる。あるいは、所定の関係は、事前実験によって定義されるようにしてもよい。
【0095】
例えば、データベース部200には、テラヘルツ波検出器120によって測定された偏光強度と、そのときの成形品10に加えられている圧縮力とが関連付けられて格納され得る。これは、成形品10に複数の強度の圧縮力を加えたそれぞれの状態で行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果である。
【0096】
プロセッサ部132は、データベース部200に格納されたデータを利用することにより、偏光強度と、成形品10に加えられている圧縮力との関係(例えば、校正曲線)を導出することができる。あるいは、偏光強度と、成形品10に加えられている圧縮力との関係は、事前実験によって定義されるようにしてもよい。
【0097】
例えば、データベース部200には、テラヘルツ波検出器120によって測定された偏光強度と、そのときの成形品10に加えられている引張力とが関連付けられて格納され得る。これは、成形品10に複数の強度の引張力を加えたそれぞれの状態で行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果である。
【0098】
プロセッサ部132は、データベース部200に格納されたデータを利用することにより、偏光強度と、成形品10に加えられている引張力との関係(例えば、校正曲線)を導出することができる。あるいは、偏光強度と、成形品10に加えられている引張力との関係は、事前実験によって定義されるようにしてもよい。
【0099】
例えば、データベース部200には、テラヘルツ波検出器120によって測定された偏光強度と、そのときの成形品10に混合されている混合物の割合とが関連付けられて格納され得る。混合物は、成形品10を主として構築する材料(例えば、樹脂)以外の充填材であり、例えば、繊維系材料、セラミックス系材料、酸化物等を含む。混合物は、具体的には、例えば、炭素C、ガラス繊維、炭素繊維、モリブデンを含むが、これらに限定されない。データベース部200には、複数の割合で混合物(例えば、炭素C)を混合された成形品10それぞれに行われたテラヘルツ波偏光強度測定の結果が格納され得る。
【0100】
プロセッサ部132は、データベース部200に格納されたデータを利用することにより、偏光強度と、成形品10に混合されている混合物の割合との関係(例えば、校正曲線)を導出することができる。あるいは、偏光強度と、成形品10に混合されている混合物割合との関係は、事前実験によって定義されるようにしてもよい。
【0101】
なお、上述した例では、成形品10を透過したテラヘルツ波をテラヘルツ波検出器120を用いて検出することによってテラヘルツ波の偏光強度を計測することを説明したが、本発明はこれに限定されない。成形品10から反射したテラヘルツ波をテラヘルツ波検出器を用いて検出することによってテラヘルツ波の偏光強度を計測することも本発明の範囲内である。成形品10から反射したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器は、成形品10を透過したテラヘルツ波を検出するテラヘルツ波検出器120の構成と同様の構成であり得る。
【0102】
図2および図4に示される例では、データベース部200は、コンピュータシステム130の外部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。データベース部200の少なくとも一部をコンピュータシステム130の内部に設けることも可能である。このとき、データベース部200の少なくとも一部は、メモリ部133を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部133を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース部200の少なくとも一部は、コンピュータシステム130のための格納部として構成される。データベース部200の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース部200は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース部200は、システム100の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
【0103】
なお、コンピュータシステム130の各構成要素は、単一のハードウェア部品で構成されていてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されていてもよい。複数のハードウェア部品で構成される場合は、各ハードウェア部品が接続される態様は問わない。各ハードウェア部品は、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。コンピュータシステム130は、特定のハードウェア構成には限定されない。プロセッサ部132をデジタル回路ではなくアナログ回路によって構成することも本発明の範囲内である。本発明のシステム100の構成は、その機能を実現できる限りにおいて上述したものに限定されない。
【0104】
図5Aおよび図5Bは、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための手順500の一例を示す。手順500は、システム100を用いて行われる。
【0105】
ステップS501では、テラヘルツ波光源110が、成形品10上の第1の位置に、光軸周りの第1の向きでテラヘルツ波を照射する。
【0106】
ステップS502では、テラヘルツ波検出器120が、成形品10を透過または反射したテラヘルツ波の偏光強度を測定する。あるいは、テラヘルツ波検出器120から出力された出力信号をコンピュータシステム130が分析することにより、テラヘルツ波の偏光強度を導出するようにしてもよい。
【0107】
ステップS502で測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、データベース部200に格納される。あるいは、測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、コンピュータシステム130に送信される。
【0108】
ステップS503では、テラヘルツ波光源110が、成形品10上の第1の位置に、光軸周りの第2の向きでテラヘルツ波を照射する。例えば、成形品10が載置されているワーク回転台300を回転させることによって、光軸周りの向きを変化させた後で、光軸周りの第2の向きで成形品10にテラヘルツ波を照射することができる。
【0109】
ステップS504では、テラヘルツ波検出器120が、成形品10を透過または反射したテラヘルツ波の偏光強度を測定する。あるいは、テラヘルツ波検出器120から出力された出力信号をコンピュータシステム130が分析することにより、テラヘルツ波の偏光強度を導出するようにしてもよい。
【0110】
ステップS504で測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、データベース部200に格納される。あるいは、測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、コンピュータシステム130に送信される。
【0111】
その後、光軸周りの複数の向きの全てでテラヘルツ波の偏光強度が測定されるまで、テラヘルツ波の照射ステップおよびテラヘルツ波の偏光強度の測定ステップが続く。
【0112】
光軸周りの複数の向きの全てでテラヘルツ波の偏光強度が測定されると、ステップS511に進む。
【0113】
ステップS511では、テラヘルツ波光源110が、成形品10上の第2の位置に、光軸周りの第1の向きでテラヘルツ波を照射する。例えば、ワーク回転台300に対する成形品10の位置および/または向きを変化させることによって、成形品10上のテラヘルツ波が照射される位置を変化させた後で、第2の位置にテラヘルツ波を照射することができる。
【0114】
ステップS512では、テラヘルツ波検出器120が、成形品10を透過または反射したテラヘルツ波の偏光強度を測定する。あるいは、テラヘルツ波検出器120から出力された出力信号をコンピュータシステム130が分析することにより、テラヘルツ波の偏光強度を導出するようにしてもよい。
【0115】
ステップS512で測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、データベース部200に格納される。あるいは、測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、コンピュータシステム130に送信される。
【0116】
ステップS513では、テラヘルツ波光源110が、成形品10上の第2の位置に、光軸周りの第2の向きでテラヘルツ波を照射する。例えば、成形品10が載置されているワーク回転台300を回転させることによって、光軸周りの向きを変化させた後で、光軸周りの第2の向きで成形品10にテラヘルツ波を照射することができる。
【0117】
ステップS514では、テラヘルツ波検出器120が、成形品10を透過または反射したテラヘルツ波の偏光強度を測定する。あるいは、テラヘルツ波検出器120から出力された出力信号をコンピュータシステム130が分析することにより、テラヘルツ波の偏光強度を導出するようにしてもよい。
【0118】
ステップS514で測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、データベース部200に格納される。あるいは、測定された偏光強度は、その成形品10上の位置および光軸周りの向きと関連付けられて、コンピュータシステム130に送信される。
【0119】
その後、光軸周りの複数の向きの全てでテラヘルツ波の偏光強度が測定されるまで、テラヘルツ波の照射ステップおよびテラヘルツ波の偏光強度の測定ステップが続く。
【0120】
光軸周りの複数の向きの全てでテラヘルツ波の偏光強度が測定されると、ステップS515に進む。
【0121】
ステップS515では、コンピュータシステム130が、複数の位置における偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定する。コンピュータシステム130は、複数の位置における偏光強度が所定の関係にある場合に、成形品10の経時的寸法変化が収束したと予測することができ、複数の位置における偏光強度が所定の関係にない場合に、成形品10の経時的寸法変化がまだ収束していないと予測することができる。
【0122】
上述した例では、成形品10上の2つの位置(第1の位置および第2の位置)にテラヘルツ波を照射してテラヘルツ波の偏光強度を測定することを説明したが、n個(nは3以上の整数)の位置にテラヘルツ波を照射してテラヘルツ波の偏光強度を測定するようにしてもよい。この場合は、ステップS515の前に、第nの位置において光軸周りの複数の向きのそれぞれについてテラヘルツ波の照射ステップおよびテラヘルツ波の偏光強度の測定ステップが行われる。
【0123】
上述した例では、特定の順序で手順500が行われることを説明したが、手順500の各ステップの順序は、説明されたものに限定されない。手順500の各ステップは、論理的に可能な任意の順序で行われることができる。
【0124】
図6は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するためのコンピュータシステムによる処理600の一例を示す。処理600は、コンピュータシステム130のプロセッサ部132において行われる。
【0125】
ステップS601では、プロセッサ部132が、インターフェース部131を介して、成形品上の複数の位置に、各位置に対して光軸周りの複数の向きで照射されたテラヘルツ波が成形品を透過または反射したときの偏光強度を取得する。取得される偏光強度は、図5Aおよび図5Bを参照して上述したステップS501~ステップS514で取得された偏光強度である。
【0126】
プロセッサ部132は、テラヘルツ波検出器120からインターフェース部131を介して受信された偏光強度を取得することができる。あるいは、プロセッサ部132は、データベース部200からインターフェース部131を介して受信された偏光強度を取得することができる。
【0127】
ステップS602では、プロセッサ部132が、ステップS601で取得された偏光強度に基づいて、複数の位置における偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定する。所定の関係は、過去に行われた成形品に対するテラヘルツ波偏光強度測定の結果と、成形品の寸法計測の結果とから導出される関係であり得る。
【0128】
所定の関係は、例えば、成形品10上の複数の位置のうちの1つの位置でのテラヘルツ波の偏光強度が、成形品10上の複数の位置のうちの他の位置でのテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。相関することは、相関係数が閾値以上であることである。
【0129】
一実施形態において、所定の関係は、例えば、テラヘルツ波が照射される光軸周りの複数の向きのうち、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの1つでの、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの他の1つでの、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。
【0130】
一実施形態において、所定関係は、例えば、テラヘルツ波が照射される光軸周りの複数の向きのうち、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの隣り合う向きのうちの1つでの、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が、偏光強度が極大となる複数の向きのうちの隣り合う向きのうちの他の1つでの、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度と相関することを含む。
【0131】
プロセッサ部132は、成形品10上の複数の位置におけるテラヘルツ波の偏光強度が所定の関係にあるか否かを判定することにより、成形品の寸法の経時的変化が収束したか否かを予測することが可能である。
【0132】
別の実施形態において、プロセッサ部132は、ステップS602に加えてもしくはステップS602に代えて、ステップS603で、ステップS601で取得された偏光強度に基づいて、成形品10に加えられている圧縮力または引張力を予測することができる。プロセッサ部132は、例えば、データベース部200に格納されている過去のテラヘルツ波偏光強度測定結果から導出された偏光強度と、成形品に加えられている圧縮力との関係(例えば、校正曲線)に基づいて、成形品10に加えられている圧縮力または引張力を予測することができる。あるいは、プロセッサ部132は、例えば、事前実験によって定義された偏光強度と成形品に加えられている圧縮力との関係(例えば、校正曲線)に基づいて、成形品10に加えられている圧縮力または引張力を予測することができる。これにより、テラヘルツ波偏光強度測定を行うことで成形品10に加えられている圧縮力または引張力を予測することができるので、テラヘルツ波の利用用途の幅が広がる。
【0133】
別の実施形態において、プロセッサ部132は、ステップS602に加えてもしくはステップS602に代えて、または、ステップS603に加えてもしくはステップS603に代えて、ステップS601で取得された偏光強度に基づいて、成形品10に混合されている混合物の割合を予測することができる。混合物は、例えば、炭素Cである。プロセッサ部132は、例えば、データベース部200に格納されている過去のテラヘルツ波偏光強度測定結果から導出された偏光強度と、成形品に混合されている混合物の割合との関係(例えば、校正曲線)に基づいて、成形品10に混合されている混合物の割合を予測することができる。あるいは、プロセッサ部132は、例えば、事前実験によって定義された偏光強度と成形品に混合されている混合物との関係(例えば、較正曲線)に基づいて、成形品10に混合されている混合物の割合を予測することができる。これにより、テラヘルツ波偏光強度測定を行うことで成形品10に混合されている混合物の割合を予測することができるので、テラヘルツ波の利用用途の幅が広がる。
【0134】
図6を参照して上述した例では、図6に示される各ステップの処理は、プロセッサ部132とメモリ部133に格納されたプログラムとによって実現することが説明されたが、本発明はこれに限定されない。図6に示される各ステップの処理のうちの少なくとも1つは、制御回路などのハードウェア構成によって実現されてもよい。
【実施例0135】
(中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験1)
中空略円形PTFEに対して、テラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0136】
中空略円形PTFEは、外径20.4mm、内径6.4mm、厚さ3.0mmの寸法を有する。PTFEは、焼成切削後1日目のものを使用した。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0137】
中空略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0138】
次いで、ワーク回転台を15度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0139】
次いで、中空略円形PTFEを中空略円形PTFE中心まわりに30度回転させ、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(a))。
【0140】
次いで、ワーク回転台を15度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(b))。
【0141】
上記ステップ(a)およびステップ(b)を中空略円形PTFEを中空略円形PTFE中心まわりに360度回転するまで繰り返した。
【0142】
このときの結果を図7に示す。図7は、ワーク回転台を15度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示すレーダーチャートである。円周方向がワーク回転台の角度を示し、半径方向がテラヘルツ波の偏光強度を示す。(a)が中空略円形PTFEのワーク回転台に対する基準位置での測定結果であり、(b)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から30度回転させた位置での測定結果であり、(c)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から60度回転させた位置での測定結果であり、(d)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から90度回転させた位置での測定結果であり、(e)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から120度回転させた位置での測定結果であり、(f)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から150度回転させた位置での測定結果であり、(g)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から180度回転させた位置での測定結果であり、(h)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から210度回転させた位置での測定結果であり、(i)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から240度回転させた位置での測定結果であり、(j)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から270度回転させた位置での測定結果であり、(k)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から300度回転させた位置での測定結果であり、(l)は、中空略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から330度回転させた位置での測定結果である。
【0143】
(a)~(l)から見て取れるように、各位置において、約0度、約90度、約180度、約270度(すなわち、外径方向および内径方向、ならびにそれらに直交する方向)でテラヘルツ波の偏光強度がピーク(極大値)を取っている。
【0144】
上記実験から、中空略円形の樹脂成形品10の場合には外径方向を基準として約90度毎にテラヘルツ波の偏光強度のピーク(極大値)が現れることが理解される。
【0145】
(中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2)
中空略円形PTFEに対して、テラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0146】
中空略円形PTFEは、外径20.4mm、内径6.4mm、厚さ3.0mmの寸法を有する。PTFEは、焼成切削後1日目のもの、焼成切削後20日目のもの、焼成切削後50日目のものを使用した。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0147】
中空略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0148】
次いで、ワーク回転台を90度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0149】
次いで、中空略円形PTFEを中空略円形PTFE中心まわりに90度回転させ、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(a))。
【0150】
次いで、ワーク回転台を90度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(b))。
【0151】
上記ステップ(a)およびステップ(b)を中空略円形PTFEを中空略円形PTFE中心まわりに360度回転するまで繰り返した。
【0152】
このときの結果を表5~表7、図8A図8Cに示す。表5は、焼成切削後1日目のものについて、4つの位置のそれぞれで、ワーク回転台を90度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示し、図8Aは、これをレーダーチャート化したものである。表6は、焼成切削後20日目のものについて、4つの位置のそれぞれで、ワーク回転台を90度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示し、図8Bは、これをレーダーチャート化したものである。表7は、焼成切削後50日目のものについて、4つの位置のそれぞれで、ワーク回転台を90度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示し、図8Cは、これをレーダーチャート化したものである。図8A図8Cにおいて、円周方向がワーク回転台の角度を示し、半径方向がテラヘルツ波の偏光強度を示す。
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
図8A図8Bでは、4つの位置のそれぞれのレーダーチャートの形状が不ぞろいの形状をしている一方で、図8Cでは、4つの位置のそれぞれのレーダーチャートの形状が相似形を有していた。
【0157】
また、テラヘルツ波の偏光強度の隣り合う角度での相関係数の平均値は、焼成切削後1日目のものでは、0.8395であり、焼成切削後20日目のものでは、0.4318であり、焼成切削後50日目のものでは、0.9514であった。
【0158】
(中空略円形PTFEに対する寸法計測実験)
上記中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2で使用した中空略円形PTFEについて寸法計測実験を行った。
【0159】
寸法計測は、外径20.4mmで焼成切削された中空略円形PTFEの外径を4か所(或る外径を基準として、45度刻みの計4か所)で計測した。寸法計測は、ミツトヨ社製ディジマチックID-H0530を使用して行った。
【0160】
このときの結果を図9に示す。縦軸が外径寸法(mm)を示し、横軸が時間を示す。外径寸法は、焼成切削後に収縮する方向に変形し、或る時期を過ぎると、特定の値に収束する傾向が見て取れる。実験では、焼成切削後50日後に各測定箇所の測定値は外径20.395mm付近となり、図示しないが、その後の測定においても各測定箇所の測定値の変化の幅は約0.01μm以下となった。したがって、焼成切削後50日後に経時的変化が収束したことが分かる。
【0161】
このように、中空略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2と、寸法計測実験との結果から、テラヘルツ波の偏光強度の隣り合う角度での相関係数の平均値が所定の閾値(例えば、0.90)を超える場合に、寸法の経時的変化が収束していることが分かる。
【0162】
(中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験1)
中実略円形PTFEに対して、テラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0163】
中実略円形PTFEは、外径20.4mm、厚さ3.0mmの寸法を有する。PTFEは、焼成切削後20日目のものを使用した。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0164】
中実略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中実略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0165】
次いで、ワーク回転台を15度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0166】
次いで、中実略円形PTFEを中実略円形PTFE中心まわりに30度回転させ、ワーク回転台の中心にくる中実略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(a))。
【0167】
次いで、ワーク回転台を30度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(b))。
【0168】
上記ステップ(a)およびステップ(b)を中実略円形PTFEを中実略円形PTFE中心まわりに360度回転するまで繰り返した。
【0169】
このときの結果を図10に示す。図10は、ワーク回転台を30度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示すレーダーチャートである。円周方向がワーク回転台の角度を示し、半径方向がテラヘルツ波の偏光強度を示す。(a)が中実略円形PTFEのワーク回転台に対する基準位置での測定結果であり、(b)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から30度回転させた位置での測定結果であり、(c)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から60度回転させた位置での測定結果であり、(d)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から90度回転させた位置での測定結果であり、(e)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から120度回転させた位置での測定結果であり、(f)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から150度回転させた位置での測定結果であり、(g)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から180度回転させた位置での測定結果であり、(h)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から210度回転させた位置での測定結果であり、(i)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から240度回転させた位置での測定結果であり、(j)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から270度回転させた位置での測定結果であり、(k)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から300度回転させた位置での測定結果であり、(l)は、中実略円形PTFEをワーク回転台に対して基準位置から330度回転させた位置での測定結果である。
【0170】
(a)~(l)から見て取れるように、各位置において、約0度、約90度、約180度、約270度(すなわち、外径方向および内径方向、ならびにそれらに直交する方向)でテラヘルツ波の偏光強度がピーク(極大値)を取っている。
【0171】
上記実験から、中実略円形の樹脂成形品10の場合には外径方向を基準として約90度毎にテラヘルツ波の偏光強度のピーク(極大値)が現れることが理解される。
【0172】
(中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2)
中実略円形PTFEに対して、テラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0173】
中実略円形PTFEは、外径20.4mm、厚さ3.0mmの寸法を有する。PTFEは、焼成切削後20日目のもの、焼成切削後40日目のものを使用した。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0174】
中実略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中実略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0175】
次いで、ワーク回転台を90度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0176】
次いで、中実略円形PTFEを中実略円形PTFE中心まわりに90度回転させ、ワーク回転台の中心にくる中実略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(a))。
【0177】
次いで、ワーク回転台を90度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した(ステップ(b))。
【0178】
上記ステップ(a)およびステップ(b)を中実略円形PTFEを中実略円形PTFE中心まわりに360度回転するまで繰り返した。
【0179】
このときの結果を表8~表9、図11A図11Bに示す。表8は、焼成切削後20日目のものについて、4つの位置のそれぞれで、ワーク回転台を90度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示し、図11Aは、これをレーダーチャート化したものである。表9は、焼成切削後40日目のものについて、4つの位置のそれぞれで、ワーク回転台を90度刻みで回転させて測定したときのテラヘルツ波の偏光強度を示し、図11Bは、これをレーダーチャート化したものである。図11A図11Bにおいて、円周方向がワーク回転台の角度を示し、半径方向がテラヘルツ波の偏光強度を示す。
【0180】
【表8】
【0181】
【表9】
【0182】
図11Aでは、4つの位置のそれぞれのレーダーチャートの形状が図11Bに比べて不ぞろいの形状をしている一方で、図11Bでは、4つの位置のそれぞれのレーダーチャートの形状が図11Aに比べて相似形を有していた。
【0183】
また、テラヘルツ波の偏光強度の隣り合う角度での相関係数の平均値は、焼成切削後20日目のものでは、0.9722であり、焼成切削後40日目のものでは、0.9936であった。
【0184】
(中実略円形PTFEに対する寸法計測実験)
上記中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2で使用した中実略円形PTFEについて寸法計測実験を行った。
【0185】
寸法計測は、外径20.4mmで焼成切削された中実略円形PTFEの外径を4か所(或る外径を基準として、45度刻みの計4か所)で計測した。寸法計測は、ミツトヨ社製ディジマチックID-H0530を使用して行った。
【0186】
このときの結果を図12に示す。縦軸が外径寸法(mm)を示し、横軸が時間を示す。外径寸法は、焼成切削後に収縮する方向に変形し、或る時期を過ぎると、特定の値に収束する傾向が見て取れる。実験では、焼成切削後35日後に各測定箇所の測定値は外径20.260mm付近となり、その後の測定においても各測定箇所の測定値の変化の幅は約1μm以下となった。したがって、遅くとも焼成切削後35日後に経時的変化が収束したことが分かる。
【0187】
このように、中実略円形PTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験2と、寸法計測実験との結果から、テラヘルツ波の偏光強度の隣り合う角度での相関係数の平均値が所定の閾値(例えば、0.98)を超える場合に、寸法の経時的変化が収束していることが分かる。
【0188】
(圧縮力を加えたPTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験)
中実略円形PTFEに対して圧縮力を加えた状態で、テラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0189】
中実略円形PTFEは、外径20.4mmの寸法を有する。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0190】
プレスクランプを使用して中実略円形PTFEに圧縮力を加えた。クランプで挟んだだけの状態(圧縮なし)、クランプの圧縮ネジを1回転させて圧縮力(圧縮力1)を加えた状態、クランプの圧縮ネジを2回転させて圧縮力(圧縮力2)を加えた状態のそれぞれについてテラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0191】
中実略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0192】
このときの結果を図13に示す。縦軸がテラヘルツ波偏光強度を示し、横軸が圧縮力を示す。
【0193】
図13から、テラヘルツ波の偏光強度と、圧縮力との間には略線形の関係があることがわかる。
【0194】
(炭素Cを混合したPTFEに対するテラヘルツ波偏光強度測定実験)
炭素Cを混合した中実略円形PTFEに対してテラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0195】
中実略円形PTFEは、外径20.4mmの寸法を有する。テラヘルツ波光源として、T-Ray(R) 5000 HTS4002 Transmitter(Advanced Photonix, Inc.製)を使用し、テラヘルツ波検出器として、T-Ray(R) 5000 HRS4001(Advanced Photonix, Inc.製)を使用した。
【0196】
炭素Cを混合しないPTFE、炭素Cを1%混合したPTFE、炭素Cを2%混合したPTFEのそれぞれについてテラヘルツ波偏光強度測定実験を行った。
【0197】
中実略円形PTFEをワーク回転台に載置し、ワーク回転台の中心にくる中空略円形PTFE上の1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0198】
次いで、ワーク回転台を30度刻みで回転させ、それぞれの場合で、1点にテラヘルツ波を照射し、透過したテラヘルツ波の偏光強度を測定した。
【0199】
このときの結果を図14に示す。図14(a)において縦軸がテラヘルツ波偏光強度を示し、横軸がワーク回転台の回転角度を示し、最上のグラフが炭素を混合しないPTFEの結果であり、中央のグラフが炭素を1%混合したPTFEの結果であり、最下のグラフが炭素を2%混合したPTFEの結果である。図14(b)は、図14(a)の各グラフを平均化して得られた校正曲線である。縦軸がテラヘルツ波偏光強度を示し、横軸が炭素の混合率を示す。
【0200】
図14(b)から、テラヘルツ波の偏光強度と、炭素の混合率との間には略線形の関係があることがわかる。
【0201】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明は、成形品の寸法の経時的変化が収束したことを予測するための方法等を提供することができるという点で有用である。
【符号の説明】
【0203】
11 テラヘルツ波
12 高分子結晶
100 システム
110 テラヘルツ波光源
120 テラヘルツ波検出器
130 コンピュータシステム
200 データベース部
300 ワーク回転台
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14