(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092075
(43)【公開日】2022-06-22
(54)【発明の名称】コーティング剤及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 157/10 20060101AFI20220615BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220615BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220615BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220615BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220615BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20220615BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C09D157/10
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/65
B32B27/20 Z
B65D65/42 A
C09J129/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019083909
(22)【出願日】2019-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄作
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 祐章
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
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4J040NA06
(57)【要約】
【課題】チクソトロピーインデックス、製膜性、及びブロッキング性に優れるとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れるコーティング剤を提供すること。
【解決手段】2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、2八面体型スメクタイトが、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトであり、シリカの含有量が、前記2八面体型スメクタイト及び前記シリカの合計量に対して、4~25質量%である、コーティング剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、
前記2八面体型スメクタイトが、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトであり、
前記シリカの含有量が、前記2八面体型スメクタイト及び前記シリカの合計量に対して、4~25質量%である、コーティング剤。
【請求項2】
溶剤を更に含有し、
前記溶剤がアルコールを含有し、前記アルコールの含有量が、前記溶剤全量に対して、20質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記2八面体型スメクタイトがモンモリロナイトである、請求項1又は2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量が、10meq/100g未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計が、50~120meq/100gである、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項6】
ポリカルボン酸を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記ビニル樹脂の水酸基価が、800~1500である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項8】
基材と、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング剤を前記基材上にコートしてなるコート層と、を有する、積層体。
【請求項9】
前記コート層の厚みが0.1~5μmである、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
包装材料として用いられる、請求項8又は9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の保護、耐レトルト性、耐熱性、透明性、加工性等の機能が要求される。内容物の品質保持のためには、特にガスバリア性が重要となる。最近では、包装材料だけでなく、太陽電池、半導体等の電子材料に用いられる材料についても、高いガスバリア性が要求されるようになっている。このような材料は、例えば、基材とガスバリア性を有するコート層とが積層されて構成されている。したがって、高いガスバリア性を有するコート層を形成可能なコーティング剤が求められる。
【0003】
特許文献1には、水酸基を有する樹脂及びイソシアネート化合物を、粘土鉱物等の板状無機化合物及び光遮断剤と組み合わせることで、ガスバリア性等の特性が向上することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には変性粘土を主要構成成分とする材料が記載されており、変性粘土を用い、必要に応じて添加剤を用い、変性粘土結晶を配向させ、緻密に積層させることにより、自立膜として利用可能な機械的強度、ガスバリア性、耐水性、熱安定性及びフレキシビリティーを備えた膜材が得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/027609号
【特許文献2】特開2007-277078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーティング剤は、高いガスバリア性を有するとともに、チクソトロピーインデックス(TI値)、製膜性、及びブロッキング性に優れていることが望ましい。TI値が良好であるほど、塗工工程において、塗りやすく垂れにくい塗料となり、塗工面の均一性が優れたものとなる。
【0007】
本発明の目的は、チクソトロピーインデックス、製膜性、及びブロッキング性に優れるとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れるコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂とを組み合わせることによって、チクソトロピーインデックス、製膜性、及びブロッキング性に優れるとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れるコーティング剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、一側面において、2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、2八面体型スメクタイトが、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトであり、シリカの含有量が、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4~25質量%である、コーティング剤を提供する。
【0010】
コーティング剤は、溶剤を更に含有していてよい。コーティング剤において、溶剤はアルコールを含有していてよく、アルコールの含有量は、溶剤全量に対して、20質量%以上80質量%以下であってよい。
【0011】
2八面体型スメクタイトは、モンモリロナイトであってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量が、10meq/100g未満であってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、50~120meq/100gであってよい。
【0012】
コーティング剤は、ポリカルボン酸を更に含有していてよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸価は、800~1500であってよい。
【0013】
本発明は、一側面において、基材と、上記コーティング剤を基材上にコートしてなるコート層と、を有する、積層体を提供する。コート層の厚みは、0.1~10μmであってよい。積層体は、包装材料であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チクソトロピーインデックス、製膜性、及びブロッキング性に優れるとともに、酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れるコーティング剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0016】
<コーティング剤>
一実施形態のコーティング剤は、2八面体型スメクタイトと、シリカと、水酸基を有するビニル樹脂と、を含有し、2八面体型スメクタイトが、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトであり、シリカの含有量が、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4~25質量%である。
【0017】
本実施形態のコーティング剤は、高いガスバリア性を有することから、ガスバリア用コーティング剤として好適に利用可能である。
【0018】
<2八面体型スメクタイト>
粘土鉱物の基本構造は、Si-Oの四面体シートとAl-O等の八面体シートから構成され、八面体シートに入る陽イオンがAl3+など三価のイオンの場合に2八面体と呼ばれる。2八面体型スメクタイトの陽イオン交換容量は、通常60-150meq/100gである。2八面体型スメクタイトの具体的な構造としては、モンモリロナイト、バイデライトが知られている。
【0019】
実施形態における2八面体型スメクタイトは、層間イオンにアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する2八面体型スメクタイトである。
【0020】
2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、10meq/100g未満であってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、例えば、5meq/100g以下、又は2meq/100g以下であってよい。2八面体型スメクタイトのナトリウムイオン当量は、1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくる陽イオン量をイオンクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0021】
2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計が、50~120meq/100gであってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、50meq/100g以上、80meq/100g以上、又は100meq/100g以上であってよく、120meq/100g以下、又は110meq/100g以下であってよい。2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量は、1Nの塩化カリウム溶液に溶出してくる陽イオン量、リチウムイオン当量は、1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくる陽イオン量をそれぞれイオンクロマトグラフィーにより測定することで求めることができる。また、水素イオン当量はイオン交換前の陽イオン量とイオン交換後の陽イオン量の差から求めることができる。例えば、層間イオンがナトリウムであるモンモリトナイトを用いた場合は、イオン交換操作前後のモンモリロナイトから1Nの酢酸アンモニウム溶液に溶出してくるナトリウムイオン量をイオンクロマトグラフィー測定し、その差分から水素イオン当量を求めることができる。
【0022】
2八面体型スメクタイトの層間イオン(陽イオン)をアンモニウムイオン、リチウムイオン、及び水素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種に交換する方法は、通常のイオン交換方法であってよく、例えば、2八面体型スメクタイトの水分散体を、水素イオン、アンモニウムイオン、又はリチウムイオンを予め保持させた陽イオン交換樹脂で処理する方法であってよい。当該方法は、イオン交換樹脂を充填したカラムへ上記水分散体を通液する方法であってよく、イオン交換樹脂と上記水分散体とを混合してバッチ攪拌する方法であってもよい。
【0023】
より具体的な例を挙げて説明すると、例えば、層間陽イオンをリチウムイオンに交換する場合、アンバーライトIR120B-Hを予め水酸化リチウムで処理して、イオン交換樹脂にリチウムイオンを保持させる。このリチウムイオンを保持したイオン交換樹脂が充填されたカラムに、2八面体型スメクタイトの濃度が2%の水分散体を1mL/分の速度で通液する。通液後の水分散体を110℃のオーブンで終夜乾燥することで、層間イオンがリチウムイオンである2八面体型スメクタイトを得ることができる。
【0024】
2八面体型スメクタイトの含有量は、コーティング剤中の不揮発分全量に対して、例えば、水蒸気バリア性及び酸素バリア性(例えば高湿度下での酸素バリア性)により一層優れる等の観点から、5質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、例えば、コーティング剤の成形性がより一層優れたものとなり、かつ、基材への密着性が向上する等の観点から、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。2八面体型スメクタイトの含有量は、コーティング剤中の不揮発分全量に対して、例えば、5~70質量%、20~60質量%、又は40~60質量%であってよい。不揮発分とは、コーティング剤中の溶剤以外の成分を意味する。
【0025】
<水酸基を有するビニル樹脂>
コーティング剤は、水酸基を有するビニル樹脂を含有する。水酸基を有するビニル樹脂は、例えば、重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物を重合した後、けん化処理をすることによって得ることができる。
【0026】
重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物は、例えば、ビニルエステルであってよい。ビニルエステルとしては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0027】
また、水酸基を有するビニル樹脂は、例えば、水酸基を有するビニルモノマーの重合若しくは共重合、又は水酸基を有するビニルモノマーと、水酸基を有しないビニルモノマーとの共重合によって得ることができる。水酸基を有するビニルモノマーは、重合性二重結合を有する基(例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、又は(メタ)アクリロイル基)及び水酸基をそれぞれ少なくとも一つ有するモノマーである。水酸基を有しないビニルモノマーは、重合性二重結合を有する基(例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、又は(メタ)アクリロイル基)を少なくとも一つ有し、かつ、水酸基を有しないモノマーである。(メタ)アリル基とは、アリル基又はメタリル基を意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0028】
水酸基を有するビニルモノマーとしては、公知慣用のモノマーを用いればよい。水酸基を有するビニルモノマー(水酸基含有ビニルモノマー)としては、例えば、(メタ)アリルアルコール、ビニルアルコール、;1-ブテン-3-オール等の炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール;2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等の末端に重合性二重結合を有するアルケニルエーテル;ヒドロキシスチレン;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル;ε-カプロラクトンを開環重合した化合物と(メタ)アクリル酸のモノエステル化物;等の水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0029】
水酸基を有しないビニルモノマー(水酸基非含有ビニルモノマー)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン;ジクロロエチレン、塩化ビニル、等のハロゲン化オレフィン;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルエステル;マレイン酸ジエステル;フマル酸ジエステル;イタコン酸ジエステル;(メタ)アクリルアミド;スチレン及びその誘導体;ビニルエーテル;ビニルケトン;マレイミド;アリル化合物;(メタ)アクリロニトリル;ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、N-ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等のビニル基が置換した複素環式基を有する化合物;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のビニルアミドなどが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸-2-フェニルビニル、(メタ)アクリル酸-1-プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸-2-アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸-γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0031】
ビニルエステルの例としては、上記例示したモノマーが挙げられる。
【0032】
マレイン酸ジエステルの例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0033】
フマル酸ジエステルの例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0034】
イタコン酸ジエステルの例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリルアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ニトロフェニルアクリルアミド、N-エチル-N-フェニルアクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、N-アリル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0036】
スチレン誘導体の例としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0037】
ビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0038】
ビニルケトンの例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等が挙げられる。
【0039】
マレイミドの例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0040】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、N-アリルアニリン、塩化アリル、臭化アリル等が挙げられる。
【0041】
水酸基を有するビニル樹脂は、水酸基価(単位:mgKOH/g)が例えば800~1500の範囲になるように、水酸基を含んでいてよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸基価は、例えば、800以上、又は1000以上であってよく、1500以下、又は1300以下であってもよい。水酸基を有するビニル樹脂の水酸基価は、例えば、800~1500、又は1000~1300であってよい。水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法により測定することができる。また、ビニル樹脂を合成して用いる場合には、使用するモノマー組成から水酸基価を算出することも可能である。
【0042】
水酸基を有するビニル樹脂が、重合性二重結合を有するアルコールのエステル化物の重合体をけん化処理して得られる樹脂である場合、水酸基を有するビニル樹脂の重量平均分子量は、けん化処理前のビニル樹脂の重量平均分子量から換算することができる。けん化処理前のビニル樹脂(アセトキシ基(CH3C(=O)O-)を有するビニル樹脂)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、特に限定されないが、300以上であってよく、4000以下であってよい。
【0043】
水酸基を有するビニル樹脂は、下記式(1)で表される構造単位A(部分構造Aともいう。)を有するビニル樹脂(以下、「ビニル樹脂A」ともいう。)であることが好ましい。この場合、ビニル樹脂Aが水酸基を有することから、水酸基間の相互作用によってビニル樹脂の凝集力が向上するだけでなく、2八面体型スメクタイトとの親和性が高くなり、それゆえより一層高いガスバリア性を発揮することとなる。また、ビニル樹脂が構造単位Aを有することにより、アルコールへの溶解性が向上するだけでなく、コーティング剤に耐水性を付与できることから、水蒸気バリア性、及び高湿度下での酸素バリア性の更なる向上が期待できる。
【化1】
【0044】
式(1)中、mは、0又は1を表し、*は、結合手を表す。mは、好ましくは0である。
【0045】
水酸基を有するビニル樹脂が構造単位Aを含む場合、構造単位Aの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、好ましくは99モル%以下である。構造単位Aの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは85モル%以上99モル%以下、より好ましくは90モル%以上99モル%以下である。mが0である構造単位Aの含有量が上記の範囲であることが好ましい。
【0046】
水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位A以外の構造単位(他の構造単位)を含んでいてもよい。他の構造単位は、例えば、下記式(2)で表される構造単位B(部分構造Bともいう。)であってよい。水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位Aを含み、更に、構造単位Bを含むことが好ましい。一実施形態において、水酸基を有するビニル樹脂は、構造単位A及び構造単位Bのみからなっていてもよい。水酸基を有するビニル樹脂が構造単位Bを含有することで、成形体としたときの成膜性、膜強度、及びコーティング剤の接着性がより一層向上する。
【化2】
【0047】
式(2)中、R1は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表し、nは、0又は1を表し、*は、結合手を表す。R1は、具体的には、水素原子、メチル基又はエチル基であり、nは、好ましくは0である。R2は、水素原子、又はアセチル基である。ここで、R1とR2が同時に水素原子とならない。
【0048】
構造単位Bの含有量は、耐水性に優れる観点から、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、1モル%以上である。構造単位Bの含有量は、成形体としたときの成膜性、膜強度、組成物の接着性等に優れる観点から、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。構造単位Bの含有量は、水酸基を有するビニル樹脂中の水酸基全体のモル量に対し、好ましくは1モル%以上30モル%以下、より好ましくは1モル%以上15モル%以下であり、更に好ましくは1モル%以上10モル%以下である。R1が水素原子で、R2がアセチル基であり、nが0である構造単位Bの含有量が上記の範囲になることが好ましい。
【0049】
水酸基を有するビニル樹脂が構造単位A及びBを含む場合、構造単位Aと構造単位Bの含有量の合計に対する構造単位Aの含有量のモル%(A/(A+B)×100)は、ガスバリア性がより一層向上する観点から、85モル%以上、又は99モル%以下であることが好ましい。
【0050】
構造単位A及び/又は構造単位Bを有するビニル樹脂の製造方法としては特に限定されず、公知慣用の方法で製造することができる。例えば、構造単位A又はBに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物を重合した後、けん化処理をすることにより、水酸基を有するビニル樹脂を製造することができる。
【0051】
構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール等が挙げられる。構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物におけるエステルとは、上記例示したとおりのエステルであってよい。構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物の中でも好ましくは、酢酸エステルである酢酸ビニル、酢酸アリル、又は酢酸クロチルである。これらは1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
【0052】
構造単位Bに対応する水酸基含有ビニルモノマーとしては、イソプロペニルアルコール、メタリルアルコール、イソブテニルアルコール等が挙げられる。構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物におけるエステルとは、酢酸エステル、プロパン酸エステル、ブタン酸エステル、2-メチルプロパン酸エステル、ペンタン酸エステル、3-メチルブタン酸エステル、2,2-ジメチルプロパン酸エステル、ヘキサン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸エステル、安息香酸エステル等が挙げられる。構造単位Aに対応する水酸基含有ビニルモノマーのエステル化物の中でも好ましくは、酢酸エステルである酢酸イソプロペニル、酢酸メタリル、又は酢酸イソブテニルである。これらは1種類単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
【0053】
水酸基を有するビニル樹脂は、単一のモノマーを重合させて得られるホモポリマーであってもよく、複数種のモノマーを共重合させて得られるコポリマーであっても構わない。このとき、ビニルモノマーとして、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基のそれぞれを有するモノマーを組み合わせて用いても構わない。
【0054】
水酸基を有するビニル樹脂は、ビニルモノマーをラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等により重合することによって得られる。重合の際には重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及びカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0055】
熱ラジカル重合開始剤としては、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0056】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0057】
アニオン重合開始剤としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等の有機アルカリ金属;メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド等の有機アルカリ土類金属;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属などが挙げられる。
【0058】
カチオン重合開始剤としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二スズ、塩化第二鉄等のルイス酸などが挙げられる。
【0059】
実施形態では、1種のビニル樹脂を単独で用いてよく、複数のビニル樹脂を組み合わせて用いてもよい。ビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであってよく、分岐型ポリマーであってもよい。ビニル樹脂が分岐型ポリマーである場合、くし型であってよく、星型であってもよい。
【0060】
水酸基を有するビニル樹脂の含有量は、コーティング剤中の不揮発分全量に対し、水蒸気バリア性及び酸素バリア性がより一層優れたものとなる観点から、30質量%以上、又は40質量%以上であってよく、コーティング剤の成形性がより一層優れたものとなる観点から、95質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0061】
コーティング剤は、例えば、水酸基を有するビニル樹脂を合成し、合成されたビニル樹脂と、2八面体型スメクタイト、シリカ、並びに、必要に応じて、ポリカルボン酸、及び他の成分と、を混合して得られたものであってもよく、水酸基を有するビニル樹脂の前駆体と、2八面体型スメクタイト、シリカ、並びに、必要に応じて、ポリカルボン酸、及び他の成分と、を配合したのち、水酸基を有するビニル樹脂を合成して得られたものであってもよい。いずれの場合においても、上述の重合開始剤を用いてもよい。
【0062】
<シリカ>
コーティング剤は、シリカを更に含有する。本明細書において、「シリカ」とは、二酸化ケイ素(SiO2)、又は、二酸化ケイ素によって構成される物質の総称を意味する。シリカは、結晶性シリカであってもよく、非晶質シリカであってもよい。また、天然鉱物中に含まれているものであってもよく、2八面体型スメクタイトに後添加してもよい。結晶性シリカとは、結晶構造(結晶を構成する原子、イオン又は分子が三次元の周期性をもって配列し空間格子を形成しているもの)を持つ固体物質をいう。非晶質シリカとは、原子(又は分子)が規則正しい空間的配置を持つ結晶をつくらずに集合した固体状態の物質をいう。
【0063】
シリカの含有量は、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4~25質量%である。シリカの含有量は、チクソトロピーインデックスがより良好になる観点から、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、4質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、酸素バリア性及び水蒸気バリア性により一層優れる観点から、2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0064】
2八面体型スメクタイト及びシリカの合計含有量は、コーティング剤の不揮発分全量を基準として、例えば、5質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよく、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0065】
<溶剤>
コーティング剤は、使用用途に応じて溶剤を更に含有してもよい。溶剤としては有機溶剤が挙げられる。溶剤としては、例えば、アルコール、水、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤の種類及び使用量は使用用途によって適宜選択すればよい。
【0066】
溶剤は、塗膜の乾燥性により一層優れる観点から、アルコールを含有することが好ましい。溶剤は、アルコールのみを含有するものであってよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、メトキシプロパノール(1-メトキシー2-プロパノール等)が挙げられる。アルコールは、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0067】
コーティング剤が溶剤としてアルコールを含有する場合、アルコールの含有量は、ブロッキング性により一層優れる観点、及び製膜性により優れる観点から、溶剤全量に対して、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよく、ヘイズにより一層優れる観点から、溶剤全量に対して、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。コーティング剤が溶剤としてアルコールを含有する場合、アルコールの含有量は、溶剤全量に対して、20質量%以上80質量%以下、25質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下、又は40質量%以上50質量%以下であってよい。
【0068】
アルコールは、乾燥性(ブロッキング性)により一層優れる観点から、エタノールを含有していてよい。アルコールは、エタノールのみを含有していてよく、エタノール及びエタノール以外のアルコールを含有していてよい。エタノール以外のアルコールは、例えば、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及びメトキシプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。アルコール中のエタノールの含有量は、アルコール全量に対して、50質量%以上、80質量%以上、又は95質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
【0069】
コーティング剤の不揮発分の含有量は、樹脂組成物全量を基準として、1~10質量%であってよく、好ましくは2~8質量%であり、より好ましくは4~7質量%である。
【0070】
<ポリカルボン酸>
コーティング剤は、ポリカルボン酸を更に含有する。本明細書において、ポリカルボン酸とは、カルボキシル基を2個以上有する化合物を意味する。ポリカルボン酸としては、カルボキシル基を2個以上有する樹脂(但し、水酸基及びカルボキシル基を有するビニル樹脂を除く。)を用いることができる。ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアスパラギン酸、又はポリアクリル酸とポリマレイン酸との共重合体が挙げられる。
【0071】
ポリカルボン酸の含有量は、水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸の合計含有量を基準として、5質量%以上、10質量%、又は15質量%であってよく、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%であってよい。コーティング剤が水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸以外の樹脂(他の樹脂)を含有する場合、ポリカルボン酸の含有量は、水酸基を有するビニル樹脂、ポリカルボン酸及び他の樹脂の合計含有量に対して、上記範囲内であってよい。
【0072】
<他の成分>
コーティング剤は、更に修飾剤を含有してもよい。修飾剤としては、カップリング剤、シラン化合物、酸無水物等が挙げられる。コーティング剤がこれらの修飾剤を含有する場合、2八面体型スメクタイトの濡れ性が向上し、コーティング剤への分散性がより一層向上する。修飾剤は、1種を単独で用いてよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミカップリング剤等が挙げられる。
【0074】
シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤としては、例えば3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、例えば3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0076】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0077】
アルミカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0078】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラザンとしてはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサンとしては加水分解性基含有シロキサン等が挙げられる。
【0079】
酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸アルケニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0080】
修飾剤の配合量としては、2八面体型スメクタイト全量に対し、0.1~30質量%であることが好ましい。修飾剤の配合量が0.1質量%以上であれば、2八面体型スメクタイトのコーティング剤への分散性がより良好なものとなる。また、修飾剤の配合量が30質量%以下であれば、コーティング剤に対する修飾剤の機械物性への影響をより抑えることができる。修飾剤の配合量は、好ましくは0.3~20質量%であり、より好ましくは0.5~15質量%である。
【0081】
コーティング剤は、各種の添加剤(水酸基を有するビニル樹脂、2八面体型スメクタイト、シリカ、修飾剤及び溶剤に該当する化合物は除く。)を含有してもよい。添加剤としては、例えば、有機フィラー、無機フィラー、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤、酸素捕捉剤(酸素捕捉機能を有する化合物)、粘着付与剤等が例示できる。これらの各種添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0082】
添加剤のうち、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、樹脂、鉱物等の無機物及びこれらの複合物が挙げられる。無機フィラーの具体例としては、アルミナ、チタン、ジルコニア、銅、鉄、銀、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、粘土鉱物等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性を向上させる目的で、粘土鉱物を併用してもよい。
【0083】
酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0084】
粘着付与剤としては、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を添加することで塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させることができる。粘着性付与剤の添加量はコーティング剤全量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
【0085】
<積層体>
実施形態の積層体は、基材と、上述したコーティング剤を基材上にコートしてなるコート層と、を有する。積層体は、例えば、包装材料、工業材料等に好適に用いられる。実施形態の積層体は、様々な分野における包装材料として好適に利用することができる。
【0086】
コーティング剤を基材上にコートする方法は特に限定されない。具体的な方法としては、ロールコート、グラビアコート等の各種コーティング方法を例示することができる。また、コーティング装置についても特に限定されない。例えば、基材上に、コーティング剤を塗工し、必要に応じて、乾燥処理を行うことによって、基材と、基材上に形成されたコート層とを備える積層体を得ることができる。乾燥条件は、例えば、コーティング剤が溶剤を含む場合には、溶剤の種類、使用量等に応じて適宜設定してよい。乾燥は、例えば、50~100℃の条件で、0.5分~10分保持することによって実施してよい。
【0087】
基材は、例えば、板状、シート状、又はフィルム状であってよい。基材の材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)を挙げることができる。
【0088】
基材は、コーティング剤を塗工する面上を表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理が挙げられる。基材の厚みは、例えば、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、20μm以下、又は15μm以下であってよい。
【0089】
コート層の厚みは、例えば、0.1~5μmであってよい。コート層の厚みは、例えば、0.5μm以上、又は1μm以上であってよく、10μm以下、5μm以下、又は2μm以下であってよい。
【実施例0090】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
ビニル樹脂として、以下のビニル樹脂1~2を準備した。
・ビニル樹脂1(ポリビニルアルコール、水酸基価:1250、日本酢ビ・ポバール株式会社製、JF-03)
・ビニル樹脂2(ポリビニルアルコール、水酸基価:1000、日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-05)
【0092】
<コーティング剤の調製>
(樹脂溶液の調製)
イオン交換水65質量部と1-プロパノール25質量部を混合し、そこにポリビニルアルコール(水酸基価1250)8.1質量部及びポリアクリル酸(東亞合成株式会社製、製品名:ジュリマーAC-10L)1.9質量部を加えて85℃で5時間加熱し、樹脂溶液1を得た。同様にして、表1に示す配合(単位:質量部)にて樹脂溶液2~5を作製した。
【0093】
【0094】
(粘土分散液の作製)
イオン交換水43質量部とエタノール53質量部とを混ぜて攪拌し、そこにアンモニウム型ベントナイト(クニミネ工業株式会社製)4質量部を加えて30分間攪拌保持して粘土分散液1を得た。該ベントナイトには82質量%のアンモニウム型モンモリロナイト(NH4-MMT)と18質量%のシリカが含まれている。同様にして、表2に示す配合(単位:質量部)にて粘土分散液2~9を作製した。
【0095】
粘土分散液4ではアンモニウム型ベントナイトを精製することにより、95質量%のアンモニウム型モンモリロナイトと5質量%のシリカを含むこととした以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。
【0096】
粘土分散液5ではアンモニウム型ベントナイトの前駆体であるナトリウム型ベントナイトのナトリウムイオンをリチウムイオンに交換することにより得られたリチウム型ベントナイト(Li-MMT)を使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該リチウム型ベントナイトには、82質量%のリチウム型モンモリロナイトと18質量%のシリカが含まれている。
【0097】
粘土分散液6ではアンモニウム型ベントナイトの前駆体であるナトリウム型ベントナイト(Na-MMT)を使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該ナトリウム型ベントナイトには、82質量%のナトリウム型モンモリロナイトと18質量%のシリカが含まれている。
【0098】
粘土分散液8ではナトリウム型ベントナイト(ビックケミー・ジャパン株式会社CLOISITE-Na+)のナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換することにより得られたアンモニウム型ベントナイトを使用したこと以外は粘土分散液1と同様の方法にて作製した。該アンモニウム型ベントナイトには、99質量%のアンモニウム型モンモリロナイトと1質量%のシリカが含まれている。なお、上述した各種ベントナイトに含まれるシリカは、結晶性シリカである。
【0099】
2八面体型スメクタイトのアンモニウムイオン当量、リチウムイオン当量、及び水素イオン当量の合計は、アンモニウム型モンモリロナイトでは72meq/100g、リチウム型モンモリロナイトでは72meq/100g、ナトリウム型モンモリロナイトでは72meq/100gであった。
【0100】
アンモニウム型モンモリロナイト及びリチウム型モンモリロナイトのナトリウムイオン当量は、10meq/100g未満であった。
【0101】
【0102】
(実施例1)
10質量部の樹脂溶液1に対して、20質量部の粘土分散液1を加えて30分間攪拌し、塗工液1を調製した。得られた塗工液1を、コロナ処理された12μmのPETフィルム(商品名:E-5100、東洋紡(株)製)のコロナ処理面に、バーコーターを用いて、乾燥後の塗工量が0.5g/m2になるように塗工し製膜性を評価した。塗工後のPETフィルムを、塗工後直ぐに60℃の乾燥機中で5秒間加熱処理した後すぐに3つ折りにして、24時間5kgfの加重をかけ、ブロッキング性評価用積層フィルムを得た。また、塗工後のPETフィルムを、塗工後直ぐに80℃の乾燥機中で1分間加熱処理し、酸素透過率、水蒸気透過率、及び、ヘイズ測定用積層フィルムを得た。
【0103】
(実施例2~10、比較例1~2)
樹脂溶液10質量部に対して粘土分散液20質量部を、表3~4に示すような組み合わせにて混合し塗工液を作製し、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0104】
実施例1~7及び10並びに比較例において、コーティング剤中のポリカルボン酸の含有量(ポリアクリル酸の含有量)は、水酸基を有するビニル樹脂及びポリカルボン酸の合計含有量を基準として、19質量%であった。実施例及び比較例において、コーティング剤中の2八面体型スメクタイト及びシリカの合計含有量は、不揮発分(溶剤以外の成分)全量に対して、44質量%であった。2八面体型スメクタイト及びシリカの合計量に対して、シリカの含有量は、実施例1~6及び8~10並びに比較例1では、18質量%、実施例7では、5質量%、比較例2では、1質量%であった。溶剤全量に対するアルコールの含有量及びアルコール全量に対するエタノールの含有量は、表3~4に示すとおりであった。実施例及び比較例において、コーティング剤中の不揮発分(溶剤以外の成分)の含有量は、6質量%であった。
【0105】
<評価>
実施例及び比較例の塗工液のチクソ性と、得られた積層フィルムについて、ブロッキング性、酸素透過率・水蒸気透過率、及び、ヘイズを評価した。評価結果を表3~4に示す。なお、塗工液のチクソ性、製膜性、ブロッキング性及び酸素透過率・水蒸気透過率、ヘイズの評価は以下の方法で実施した。
【0106】
(製膜性)
積層フィルムの塗工面が平滑である場合は「A」、塗工面が平滑でない場合は「B」、製膜できない場合は「C」と評価した。
【0107】
(ブロッキング性)
塗工後のPETフィルムを、塗工後直ぐに60℃の乾燥機中で5秒間加熱処理した後すぐに3つ折りにした積層フィルムを開くとき、塗工面とPET面の間で抵抗や音がない場合は「A」、抵抗はないが音がする場合は「B」、フィルムが張り付いてしまっている場合は「C」と評価した。
【0108】
(酸素透過率)
JIS-K7126(等圧法)に準じモコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN1/50を用いて、温度23℃、湿度75%RHの雰囲気下で実施した。なおRHとは、湿度を表す。
【0109】
(水蒸気透過率)
「防湿包装材料の透過湿度試験方法」JIS Z 0208 に順じ、透湿カップを用いて40℃90%RHの雰囲気下で評価を行った。
【0110】
(ヘイズ)
ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH5000)を用いてヘイズを測定した。評価は次の3段階評価とした。
A:ヘイズが、3以上、15未満
B:ヘイズが、15以上、30未満
C:ヘイズが、30以上
【表3】
【0111】