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特開2022-92810セラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092810
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】セラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20220616BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220616BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220616BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220616BHJP
   C04B 35/44 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C04B35/117
C09K11/80
C09K11/08 J
C09K11/08 A
H01L33/50
C04B35/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205735
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大栗 裕史
(72)【発明者】
【氏名】平井 利幸
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001CF01
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA31
4H001XA39
4H001XA64
4H001XA65
4H001XA71
4H001YA58
5F142AA26
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CE03
5F142CE16
5F142DA12
5F142DA14
5F142DA73
(57)【要約】
【課題】発光の色調のばらつきを抑制することができるセラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相と、を含み、全体量に対して、前記第1結晶相の含有量が5体積%以上40体積%以下の範囲内であり、前記第2結晶相の含有量が57体積%以上95体積%以下の範囲内であり、特定の測定条件で測定した前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときの、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下であるセラミックス複合体である。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相と、を含み、
全体量に対して、前記第1結晶相の含有量が5体積%以上40体積%以下の範囲内であり、前記第2結晶相の含有量が57体積%以上95体積%以下の範囲内であり、
下記測定条件で測定した前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときに、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下である、セラミックス複合体。
測定条件
セラミックス複合体の断面における走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像において、粒界で区切られた結晶相の断面における最大幅と、前記最大幅の中心点を通る最小幅と、を測定し、前記最大幅と前記最小幅の平均を結晶径とし、同一倍率のSEM画像において特定の大きさの範囲における結晶径の算術平均値を、結晶径の平均値とする。
【請求項2】
前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体が、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の第1希土類元素Lnと、前記賦活元素であるCeと、Alと、を含み、必要に応じてGaを含んでいてもよく、前記第1希土類元素Lnと前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が、0を超えて0.22以下の範囲内の変数aと3の積であり、前記Alと前記Gaの合計のモル比が4.5以上5.5以下の範囲内であり、前記Alのモル比が0を超えて1.1以下の範囲内の変数cと5の積であり、必要に応じて含んでいてもよいGaのモル比が0以上0.4以下の範囲内の変数bと5の積である、第1希土類アルミン酸塩の組成を有する、請求項1に記載のセラミックス複合体。
【請求項3】
前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体が、下記式(I)で表される組成を有する、請求項1又は2に記載のセラミックス複合体。
(Ln 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Lnは、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【請求項4】
第2希土類元素を含有する第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を含み、前記第3結晶相の含有量が全体量に対して0.01体積%以上3体積%以下の範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載のセラミックス複合体。
【請求項5】
前記第2希土類アルミン酸塩が、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素Lnを含む、請求項4に記載のセラミックス複合体。
【請求項6】
前記第2希土類アルミン酸塩が、下記式(II)で表される組成を有する、請求項4又は5に記載のセラミックス複合体。
Ln Al12 (II)
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれか一項に記載されたセラミックス複合体を含む波長変換部材と、励起光源とを備えた発光装置。
【請求項8】
前記励起光源であり、前記波長変換部材が発光面に接合された発光素子と、前記発光素子を配置する実装基板と、前記発光素子および前記波長変換部材の側面を覆う被覆部材を備えた請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、酸化アルミニウム粒子と、を含む、原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を成形し、成形体を形成することと、
前記成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成し、焼結体を得ること、を含み、
前記原料混合物は、全体量に対して、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上95質量%以下の範囲内であり、
前記焼結体は、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む第1結晶相と、前記酸化アルミニウム粒子を含む第2結晶相を含み、
下記測定条件で測定した前記焼結体に含まれる前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの酸化アルミニウム結晶径の値をD25及びD75と表記したときにQD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下である、セラミックス複合体の製造方法。
測定条件
セラミックス複合体の断面における走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像において、粒界で区切られた結晶相の断面における最大幅と、前記最大幅の中心点を通る最小幅と、を測定し、前記最大幅と前記最小幅の平均を結晶径とし、同一倍率のSEM画像において特定の大きさの範囲における結晶径の算術平均値を、結晶径の平均値とする。
【請求項10】
前記原料混合物を準備する工程において、前記原料混合物は、第2希土類元素を含有する第2希土類酸化物粒子を含み、前記原料混合物は、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上94.99質量%以下の範囲内であり、前記第2希土類酸化物粒子の含有量が0.01質量%以上3質量%以下の範囲内である、請求項9に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項11】
前記原料混合物を準備する工程において、前記第2希土類酸化物粒子が、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素Lnを含む、請求項10に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項12】
前記原料混合物を準備する工程において、前記原料混合物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した原料混合物を準備すること、を含む、請求項9から11のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項13】
前記原料混合物を準備する工程において、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、前記酸化アルミニウム粒子を湿式混合する、請求項9から12のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項14】
前記原料混合物を準備する工程において、湿式混合して得られたスラリーを乾燥し、得られた乾燥物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した原料混合物を準備することを含む、請求項13に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項15】
前記焼結体を得る工程において、前記成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で1次焼成し、第1焼結体を得ることと、
熱間等方圧加圧(HIP)により、前記第1焼結体を1500℃以上1800℃以下の温度範囲で2次焼成し、第2焼結体を得ることと、を含み、
前記測定条件で測定した第2焼結体に含まれる第2結晶相の第2結晶径が12μm以下である、請求項9から14のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項16】
前記原料混合物を準備する工程において、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成が、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の第1希土類元素Lnと、前記賦活元素であるCeと、Alと、を含み、必要に応じてGaを含んでいてもよく、前記第1希土類元素Lnと前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が、0を超えて0.22以下の範囲内の変数aと3の積であり、前記Alと前記Gaの合計のモル比が4.5以上5.5以下の範囲内であり、前記Alのモル比が0を超えて1.1以下の範囲内の変数cと5の積であり、必要に応じて含んでいてもよいGaのモル比が0以上0.4以下の範囲内の変数bと5の積である、第1希土類アルミン酸塩の組成を有する、請求項9から15のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
【請求項17】
前記原料混合物を準備する工程において、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子が、下記式(I)で表される組成を有する、請求項9から16のいずれか1項に記載のセラミックス複合体の製造方法。
(Ln 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Lnは、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)やレーザーダイオード(LD:Laser Diode)と、LEDやLDの発光素子から発せられた光の波長を変換する蛍光体を含む波長変換部材を備えた発光装置が知られている。このような発光装置は、例えば車載用、一般照明用、液晶表示装置のバックライト、プロジェクターなどの光源に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Ceで賦活されたイットリウムアルミニウムガーネット蛍光体と、蛍光体粒子の間に存在する酸化アルミニウムからなる無機材料と、蛍光体粒子の表面の少なくとも一部を覆うように付着された蛍光体粒子よりも小さい粒径を有する添加材粒子と、を含むセラミックス複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-149394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体と、透光性の無機材料とを含むセラミックス複合体は、セラミックス複合体から発せられる光の色調のばらつきを抑制することが求められている。
そこで、本発明の一態様は、発光の色調のばらつきを抑制することができるセラミックス複合体、そのセラミックス複合体を用いた発光装置及びセラミックス複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相と、を含み、全体量に対して、前記第1結晶相の含有量が5体積%以上40体積%以下の範囲内であり、前記第2結晶相の含有量が57体積%以上95体積%以下の範囲内であり、下記測定条件で測定した前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときの、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下であるセラミックス複合体である。
測定条件
セラミックス複合体の断面における走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像において、粒界で区切られた結晶相の断面における最大幅と、前記最大幅の中心点を通る最小幅と、を測定し、前記最大幅と前記最小幅の平均を結晶径とし、同一倍率のSEM画像において特定の大きさの範囲における結晶径の算術平均値を、結晶径の平均値とする。
【0007】
本発明の第2態様は、セラミックス複合体を含む波長変換部材と、励起光源とを備えた発光装置である。
【0008】
本発明の第3態様は、賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、酸化アルミニウム粒子と、を含む、原料混合物を準備することと、原料混合物を成形して、成形体を準備することと、前記成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成し、焼結体を得ること、を含み、前記原料混合物は、全体量に対して、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上95質量%以下の範囲内であり、前記焼結体は、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む第1結晶相と、前記酸化アルミニウム粒子を含む第2結晶相を含み、前記測定条件で測定した前記焼結体に含まれる前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの酸化アルミニウム結晶径の値をD25及びD75と表記したときにQD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下である、セラミックス複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、発光の色調のばらつきを抑制することができるセラミックス複合体、そのセラミックス複合体を用いた発光装置及びセラミックス複合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、セラミックス複合体の製造方法の第1態様を示すフローチャートである。
図2A図2Aは、セラミックス複合体の製造方法の第2態様を示すフローチャートである。
図2B図2Bは、セラミックス複合体の製造方法の第3態様を示すフローチャートである。
図2C図2Cは、セラミックス複合体の製造方法の第4態様を示すフローチャートである。
図3図3は、セラミックス複合体の製造方法の第5態様を示すフローチャートである。
図4図4は、セラミックス複合体の製造方法の第6態様を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、発光装置の概略平面図である。
図5B図5Bは、発光装置の概略断面図である。
図6A図6Aは、実施例3に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真である。
図6B図6Bは、図6AのSEM写真の第1結晶相、第2結晶相及び第3結晶相の粒界を線で表した図である。
図7A図7Aは、実施例4に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真である。
図7B図7Bは、図7AのSEM写真の第1結晶相及び第2結晶相の粒界を線で表した図である。
図8A図8Aは、比較例1に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真である。
図8B図8Bは、図8AのSEM写真の第1結晶相及び第2結晶相の粒界を線で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、セラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下のセラミックス複合体、発光装置及びセラミックス複合体の製造方法に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、本明細書において、セラミックスは、1000℃以下の温度下において、あらゆる無機非金属材料をいう。
【0012】
セラミックス複合体
セラミックス複合体は、賦活元素と前記賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相と、を含み、全体量に対して前記第1結晶相の含有量が5体積%以上40体積%以下の範囲内であり、前記第2結晶相の含有量が57体積%以上95体積%以下の範囲内であり、下記測定条件で測定した前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときに、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下である。第2結晶径の粒度分布曲線は、粒界で区切られた1つの第2結晶相を1つの粒子と仮定し、下記測定条件によって測定した結晶径の分布曲線をいう。
測定条件
セラミックス複合体の断面における走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像において、粒界で区切られた結晶相の断面における最大幅と、前記最大幅の中心点を通る最小幅と、を測定し、前記最大幅と前記最小幅の平均を結晶径とし、同一倍率のSEM画像において特定の大きさの範囲における結晶径の算術平均値を、結晶径の平均値とする。
【0013】
第1結晶相
セラミックス複合体中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相の含有量は、5体積%以上40体積%以下の範囲内であり、好ましくは6体積%以上38体積%以下の範囲内であり、より好ましくは7体積%以上35体積%以下の範囲内である。セラミックス複合体は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相によって、入射した光を第1希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換し、出射させることができる。セラミックス複合体に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相の含有量が5体積%以上40体積%以下の範囲内であれば、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相で入射された光を効率よく波長変換し、母体となる第2結晶相で光を効率よく散乱させて、色調のばらつきを抑制した光をセラミックス複合体から出射させることができる。
【0014】
セラミックス複合体中の第1結晶相の含有量(体積%)と第2結晶相の含有量(体積%)は、セラミックス複合体の任意の数箇所の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によりSEM画像を撮影し、そのSEM画像から第1結晶相と第2結晶相の体積割合を算出し、数箇所の断面における第1結晶相と第2結晶相の体積割合の平均値から算出することができる。
【0015】
セラミックス複合体中の第1結晶相の含有量(体積%)と第2結晶相の含有量(体積%)は、セラミックス複合体を形成する原料混合物中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の質量割合の含有量及び真密度、及び酸化アルミニウム粒子の真密度から算出することができる。
【0016】
第1結晶相の含有量(体積%)
セラミックス複合体中の第1結晶相の含有量は、下記式(1)に基づき、算出することができる。下記式(1)における第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の質量割合(質量%)は、原料混合物中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の質量割合である。
【0017】
【数1】
【0018】
セラミックス複合体に含まれる第1結晶相の第1結晶径は、5μm以上40μm以下の範囲内であればよく、8μm以上35μm以下の範囲内でもよく、10μm以上30μm以下の範囲内でもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相の第1結晶径が5μm以上40μm以下の範囲内であれば、セラミックス複合体に入射した光を第1結晶相に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体が効率よく吸収して波長変換した光と、セラミックス複合体を透過する光の混色光をセラミックス複合体から出射させることができる。第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相が励起光源から発せられた光を吸収して波長変換し、輝度が高い光をセラミックス複合体から出射させることができる。第1結晶相の第1結晶径は、8μm以上35μm以下の範囲内でもよく、10μm以上30μm以下の範囲内でもよい。
【0019】
第2結晶相
セラミックス複合体の第2結晶相に含まれる酸化アルミニウムは、セラミックス複合体の形成時の熱によって溶融し、原料混合物中に含まれる酸化アルミニウム粒子同士が結合して酸化アルミニウムを含む第2結晶相が形成される。セラミックス複合体に含まれる酸化アルミニウムを含む第2結晶相は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を励起する光を透過する。第2結晶相の第2結晶径が大きくなると、第2結晶相を透過する光と、第1結晶相に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換された光と、の色調差が大きくなり、セラミックス複合体から出射される光の色調のばらつきが大きくなる。第2結晶相の第2結晶径の平均粒径が12μm以下であり、QD値が0.5以下であると、第2結晶相の第2結晶径が比較的小さく、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭くなり、第2結晶相の大きさが揃っているため、セラミックス複合体に入射された光が第2結晶相の粒界で散乱され、セラミックス複合体から出射される光の色調のばらつきを抑制することができる。
【0020】
前記測定条件で測定した第2結晶相の第2結晶径の平均値は、12μm以下であり、11.95μm以下でもよく、11.94μm以下でもよく、11.93μm以下もよい。酸化アルミニウムを含む第2結晶相の第2結晶径は、同じ大きさの酸化アルミニウムを原料として用いた場合でも、製造条件等によって第2結晶径の大きさが異なる場合がある。第2結晶相の第2結晶径は、3μm以上でもよく、4μm以上でもよく、5μm以上でもよい。
【0021】
第2結晶相は、第2結晶径の平均値が12μm以下であり、粒度分布が狭く大きさが揃っている方が、セラミックス複合体に入射した光を均等に散乱しやすく、色調のばらつきを抑制しやすい。第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときに、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値は、0.5以下であり、好ましくは0.495以下であり、より好ましくは0.492以下であり、さらに好ましくは0.490以下である。QD値が小さい方が、粒度分布が狭く、結晶径が揃っている。第2結晶相の第2結晶径のQD値は、0.400以上でもよく、0.420以上でもよく、0.450以上でもよい。
【0022】
セラミックス複合体中の酸化アルミニウムを含む第2結晶相の含有量は、57体積%以上95体積%以下の範囲内であり、好ましくは57体積%以上94.99体積%以下の範囲内であり、より好ましくは58体積%以上94体積%以下の範囲内であり、さらに好ましくは60体積%以上90体積%以下の範囲内である。セラミックス複合体中に後述する第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を含む場合には、第2結晶相の含有量は57体積%以上94.9体積%以下の範囲内であることが好ましい。セラミックス複合体は、50体積%を超える酸化アルミニウムが含む第2結晶相が含まれ、第2結晶相がセラミックス複合体の母体を構成する。セラミックス複合体に光が入射されると、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相によって入射された光が波長変換されるとともに、第2結晶相によって、入射された光が散乱される。セラミックス複合体の母体を構成する酸化アルミニウムを含む第2結晶相の大きさは、セラミックス複合体から出射される光の色調に影響を及ぼす。
【0023】
第2結晶相の含有量(体積%)
セラミックス複合体中の第2結晶相の含有量は、下記式(2)に基づき、算出することができる。
【0024】
【数2】
【0025】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体
第1結晶相に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体は、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の第1希土類元素Lnと、前記賦活元素であるCeと、Alと、を含み、必要に応じてGaを含んでいてもよく、前記第1希土類元素Lnと前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が、0を超えて0.22以下の範囲内の変数aと3の積であり、前記Alと前記Gaの合計のモル比が4.5以上5.5以下の範囲内であり、前記Alのモル比が0を超えて1.1以下の範囲内の変数cと5の積であり、必要に応じて含んでいてもよいGaのモル比が0以上0.4以下の範囲内の変数bと5の積である、第1希土類アルミン酸塩の組成を有する、ことが、所望の色調の発光を得るために好ましい。
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子に含まれる第1希土類元素Lnは、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される2種以上の元素を含んでいてもよい。第1希土類元素Lnは、Y、Lu及びGdからなる群から選択される少なくとも1種でもよい。第1希土類元素Lnは、Y及びGdでもよく、Y及びLuでもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体中に、2種以上の第1希土類元素Lnを含み、第1希土類元素LnがY及びGdの場合、第1希土類アルミン酸塩蛍光体の組成中、Y及びGdのモル比(Y:Gd)は99.5:0.5から70:30の範囲であることが好ましく、99:1から80:20の範囲内でもよく、99:1から90:10の範囲内でもよい。
【0026】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Ceのモル比は3と変数aの積で表される。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Ceのモル比が0を超えて0.66であることが好ましく、0.001以上0.60以下の範囲内でもよく、0.003以上0.450以下の範囲内でもよく、0.006以上0.300以下の範囲内でもよく、0.012以上0.270以下の範囲内でもよく、0.015以上0.240以下の範囲内でもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、変数aは、0を超えて0.22以下の範囲内(0<a≦0.22)であり、0.0003以上0.20以下の範囲内(0.0003≦a≦0.20)でもよく、0.001以上0.150以下の範囲内(0.001≦a≦0.150)でもよく、0.002以上0.100以下の範囲内(0.002≦a≦0.100)でもよく、0.004以上0.090以下の範囲内(0.004≦a0.090)でもよく、0.005以上0.080以下の範囲内(0.005≦a≦0.080)でもよい。
【0027】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Alのモル比は5と変数cの積で表される。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Alのモル比は、0を超えて5.5以下の範囲内であり、0.54以上5.0以下の範囲内でもよく、0.63以上5.0以下の範囲内でもよい。第1希土類アルミン酸塩粒子の組成において、変数cは、0を超えて1.1以下の範囲内(0<c≦1.1)であり、0.6以上1.0以下の範囲内(0.6≦c≦1.0)でもよく、0.7以上1.0以下の範囲内(0.7≦c≦1.0)でもよい。
【0028】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Gaは含まれていなくてもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Gaのモル比は5と変数bの積で表される。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、Gaのモル比は、0以上2.0以下の範囲内であり、0.1以上1.5以下の範囲内でもよく、0.2以上1.2以下の範囲内でもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、変数bは、0以上0.4以下の範囲内(0≦b≦0.4)であり、0.02以上0.3以下の範囲(0.02≦b≦0.3)でもよく、0.04以上0.0.24以下の範囲内(0.04≦b≦0.24)でもよい。
【0029】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、AlとGaの合計のモル比は、4.5以上5.5以下の範囲内であり、5でもよい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の組成において、変数bと変数cの和は、0.9以上1.1以下の範囲内(0.9≦b+c≦1.1)であり、1でもよい(b+c=1)。
【0030】
前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
(Ln 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Lnは、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【0031】
第3結晶相
セラミックス複合体は、第2希土類元素を含有する第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を含んでいてもよい。原料混合物中に第2希土類元素を含む第2希土類酸化物粒子が含まれていると、成形体を焼成するときに第2希土類酸化物粒子が酸化アルミニウム粒子の周囲に集まり、酸化アルミニウム粒子と第2希土類酸化物粒子が反応し、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相が形成される。第2希土類酸化物粒子が酸化アルミニウム粒子と反応することによって、酸化アルミニウムの結晶成長が抑制され、酸化アルミニウムを含む第2結晶相の第2結晶径が小さくなり、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭くなり、大きさの揃った第2結晶相が形成される。第2希土類酸化物粒子と第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子が反応すると、第2希土類酸化物粒子と第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子とは、粒界を形成することなく一体となって、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相を形成する。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、酸化アルミニウム粒子と、第2希土類酸化物粒子と、が原料混合物中に含まれる場合、得られるセラミックス複合体は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相と、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相と、が形成される。
【0032】
セラミックス複合体中の第3結晶相の含有量は、セラミックス複合体の全体量に対して0体積%以上3体積%以下の範囲内でもよい。セラミックス複合体が第3結晶相を含む場合、第3結晶相の含有量は、セラミックス複合体の全体量に対して0.01体積%以上3体積%以下の範囲内であることが好ましく、0.05体積%以上2.5体積%以下の範囲内でもよく、0.1体積%以上2体積%以下の範囲内でもよい。セラミックス複合体に第3結晶相が含まれる場合、第1結晶相の含有量は5体積%以上40体積%以下の範囲内、第2結晶相の含有量が57体積%以上94.99体積%以下の範囲内、第3結晶相の含有量が0.01体積%以上3体積%以下の範囲内であることが好ましい。セラミックス複合体に第3結晶相が含まれる場合、第1結晶相の含有量は5体積%以上40体積%以下の範囲内、第2結晶相の含有量が57.5体積%以上94.95体積%以下の範囲内、第3結晶相の含有量が0.05体積%以上2.5体積%以下の範囲内であることが好ましい。セラミックス複合体に第3結晶相が含まれる場合、第1結晶相の含有量は5体積%以上40体積%以下の範囲内、第2結晶相の含有量が57.5体積%以上94.95体積%以下の範囲内、第3結晶相の含有量が0.05体積%以上2.5体積%以下の範囲内であることが好ましい。セラミックス複合体に第3結晶相が含まれる場合、第1結晶相の含有量は5体積%以上40体積%以下の範囲内、第2結晶相の含有量が58体積%以上94.9体積%以下の範囲内、第3結晶相の含有量が0.1体積%以上2.0体積%以下の範囲内であることが好ましい。
【0033】
第3結晶相の含有量(体積%)
セラミックス複合体中の第3結晶相の含有量は、下記式(3)に基づき、算出することができる。
【0034】
【数3】
【0035】
セラミックス複合体中の第3結晶相の質量割合の含有量(質量%)は、下記式(4)及び(5)に基づき、原料混合物中の第2希土類酸化物粒子の質量割合の含有量(質量%)及び真密度から算出することができる。
【0036】
【数4】
【0037】
【数5】
【0038】
第3結晶相の第3結晶径
セラミックス複合体に含まれる第3結晶相の第3結晶径は、酸化アルミニウムを含む第2結晶相の結晶成長を抑制し、入射した光を均等に散乱させることが可能な第2結晶相を形成するために、0.5μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましく、0.6μm以上4μm以下の範囲内でもよく、0.7μm以上3μm以下の範囲内でもよい。第3結晶相の第3結晶径は、前記測定条件で測定することができる。
【0039】
第3結晶相に含まれる第2希土類アルミン酸塩は、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素を含んでいてもよい。第2希土類アルミン酸塩は、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素Lnを含んでいてもよい。第2希土類アルミン酸塩は、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素Lnと、Alと、を含み、第2希土類元素Lnのモル比が3であり、Alのモル比が5である、第2希土類アルミン酸塩の組成を有していてもよい。この組成を有する第2希土類アルミン酸塩は、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制し、第2結晶相の第2結晶径の平均値を小さくし、QD値を小さくして、狭い粒度分布を有し、結晶径が揃った第2結晶相を形成しやすくなる。
【0040】
第3結晶相は、酸化アルミニウムと第2希土類酸化物粒子が反応して形成された第2希土類アルミン酸塩を含む結晶相であるため、第3結晶相には、賦活剤となり得る元素は実質的に含まれていない。第3結晶相に賦活剤となり得る元素が実質的に含まれていないとは、第3結晶相に含まれる賦活剤となり得る元素の含有量が200質量ppm以下であることをいう。第1結晶相に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体の賦活元素がセリウム(Ce)である場合、第3結晶相中のセリウム(Ce)の含有量は200質量ppm以下である。第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相中の賦活剤となり得る元素の含有量は、セラミックス複合体の第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相の断面を、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectrometry)により、第3結晶相中の賦活剤となり得る元素、例えばセリウムの含有量を測定することができる。セラミックス複合体中の第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相に含まれる賦活剤となり得る元素の含有量は、200質量ppm以下であり、150質量ppm以下でもよく、100質量ppm以下でもよく、EDXによる測定限界以下でもよく、0質量ppmでもよく、0.1質量ppm以上でもよく、1質量ppm以上でもよい。
【0041】
第2希土類アルミン酸塩は、下記式(II)で表される組成を有することが好ましい。第3結晶相に含まれる第2希土類アルミン酸塩は、酸化アルミニウム粒子と第2希土類酸化物粒子が反応して生成され、酸化物粒子に含まれる第2希土類元素Lnが、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種である場合には、下記式(II)で表される組成を有する第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相が形成される。
Ln Al12 (II)
(前記式(II)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
【0042】
相対密度
セラミックス複合体の相対密度は98%以上であることが好ましい。セラミックス複合体の相対密度が98%以上であれば、結晶径が比較的小さく、大きさが揃っている母体となる第2結晶相によって、セラミックス複合体に入射された光を均等に散乱させて、第1結晶相に含まれる希土類アルミン酸塩蛍光体に効率よく吸収させて波長変換して出射させることができ、色調のばらつきを抑制することができる。セラミックス複合体の相対密度は、99%以上でもよく、99.5%以上でもよく、99.9%以上でもよく、100%でもよい。
【0043】
セラミックス複合体の相対密度は、セラミックス複合体の見掛け密度及びセラミックス複合体の真密度から下記式(6)により算出することができる。
【0044】
【数6】
【0045】
セラミックス複合体の見掛け密度は、セラミックス複合体の質量をセラミックス複合体の体積で除した値であり、下記式(7)により算出することができる。
【0046】
【数7】
【0047】
セラミックス複合体が第1結晶相と第2結晶相を含み、第3結晶相を含まない場合には、セラミックス複合体の真密度は、下記式(8)により算出することができる。
【0048】
【数8】
【0049】
セラミックス複合体が第1結晶相と、第2結晶相と、第3結晶相を含む場合には、セラミックス複合体の真密度は、下記式(9)により算出することができる。セラミックス複合体中の第3結晶相の含有量(質量%)は、前述の式(4)及び(5)に基づき算出することができる。
【0050】
【数9】
【0051】
なお、セラミックス複合体の製造方法によって得られる焼結体、第1焼結体及び第2焼結体も、前記式(6)から(9)におけるセラミックス複合体を、焼結体、第1焼結体又は第2焼結体に置き換えることによって、相対密度、見掛け密度、及び真密度を算出することができる。
【0052】
セラミックス複合体の製造方法
セラミックス複合体の製造方法は、賦活元素とは異なる第1希土類元素を含有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、酸化アルミニウム粒子と、を含む、原料混合物を準備することと、前記原料混合物を成形し、成形体を準備することと、前記成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成し、焼結体を得ること、を含み、前記原料混合物は、全体量に対して、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上95質量%以下の範囲内であり、前記焼結体は、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を含む第1結晶相と、前記酸化アルミニウム粒子を含む第2結晶相を含み、前記測定条件で測定した前記焼結体に含まれる前記第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、前記第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの酸化アルミニウム結晶径の値をD25及びD75と表記したときにQD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値が0.5以下である。
【0053】
図1は、セラミックス複合体の製造方法の第1態様を示すフローチャートである。図面を参照にして、セラミックス複合体の製造方法の工程を説明する。図1に示すように、セラミックス複合体の製造方法は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子と、酸化アルミニウム粒子と、必要に応じて第2希土類元素を含有する第2希土類酸化物粒子と、を含む原料混合物を準備する工程S101と、原料混合物を成形した成形体を準備する工程S102と、成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で焼成し、焼結体を得る工程S103とを含む。
【0054】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、前述の第1希土類アルミン酸塩蛍光体と同様の組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体を用いることができる。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも1種の第1希土類元素Lnと、前記賦活元素であるCeと、Alと、を含み、必要に応じてGaを含んでいてもよく、前記第1希土類元素Lnと前記Ceの合計のモル比が3であり、前記Ceのモル比が、0を超えて0.22以下の範囲内の変数aと3の積であり、前記Alと前記Gaの合計のモル比が4.5以上5.5以下の範囲内であり、前記Alのモル比が0を超えて1.1以下の範囲内の変数cと5の積であり、必要に応じて含んでいてもよいGaのモル比が0以上0.4以下の範囲内の変数bと5の積である、第1希土類アルミン酸塩の組成を有することが、所望の色調の発光を得るために好ましい。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、前記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
【0055】
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子は、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS」ともいう。)法により測定された平均粒径が4μm以上40μm以下の範囲内であることが好ましく、5μm以上35μm以下の範囲内であることがより好ましく、8μm以上30μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。FSSS法は、空気透過法の1種であり、空気の流通抵抗を利用して比表面積を測定し、主に一次粒子の粒径を求める方法である。FSSS法で測定された平均粒径は、フィッシャーサブシーブサイザーズナンバー(Fisher Sub-Sieve Sizer’s Number)である。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子のFSSS法により測定された平均粒径が4μm以上40μm以下の範囲内であれば、5μm以上40μm以下の範囲内の第1結晶径を有する第1結晶相を含むセラミックス複合体を製造することができる。
【0056】
酸化アルミニウム粒子
酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウムの純度が、99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることが好ましい。酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度が99.0質量%以上であると、不純物が少なく、輝度の高い光を出射できるセラミックス複合体を製造することができる。酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度は、カタログに記載された酸化アルミニウムの純度の値を参照することができる。酸化アルミニウム粒子の酸化アルミニウムの純度が不明である場合には、酸化アルミニウム粒子の質量を測定した後、酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、酸化アルミニウム粒子に付着又は吸着されている有機分や水分を除去し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を測定し、焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量を焼成前の酸化アルミニウム粒子の質量で除すことによって、酸化アルミニウム粒子の純度を測定することができる。
【0057】
酸化アルミニウム粒子のFSSS法により測定した平均粒径は、0.1μm以上1.5μm以下の範囲内でもよく、0.2μm以上1.0μm以下の範囲内でもよい。酸化アルミニウムを含む第2結晶相は、原料である酸化アルミニウム粒子の大きさよりも、セラミックス複合体を製造する条件によって第2結晶相の第2結晶径が変化する傾向がある。酸化アルミニウム粒子の粒径は、カタログに記載された値を参照にしてもよい。
【0058】
第2希土類酸化物粒子
原料混合物を準備する工程において、前記原料混合物は、第2希土類元素を含有する第2希土類元素酸化物粒子を含んでいてもよい。原料混合物中に第2希土類酸化物粒子を含んでいると、後述する成形体を焼成するときに、第2希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応しやすく、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制しやすくなる。酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されると、第2結晶径が小さく、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭くなり、結晶径の揃った酸化アルミニウムを含む第2結晶相を含むセラミックス複合体を得ることができる。
【0059】
第2希土類酸化物粒子に含まれる第2希土類元素は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子に含まれる賦活元素とは異なる元素であることが好ましい。第2希土類酸化物粒子に含まれる第2希土類元素は、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。第2希土類酸化物粒子に含まれる第2希土類元素は、Y、La、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Y、La、Nd、Gd、Tb、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。第2希土類酸化物粒子は、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の第2希土類元素Lnを含むことがさらに好ましい。第2希土類酸化物粒子は、具体的には、Y、La、Pr11、Nd、Gd、Tb、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。第2希土類酸化物粒子は、Y、La、Nd、Gd、Tb、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Y、Gd、Tb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。第2希土類酸化物粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第2希土類酸化物粒子は、アルミニウムを含有していなくてもよい。アルミニウムを含有しない酸化物粒子は、アルミニウムの含有量が1質量%未満である酸化物粒子をいう。
【0060】
第2希土類酸化物粒子のFSSS法により測定した平均粒径は、0.05μm以上5μm未満の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上4μm以下の範囲内であることがより好ましい。第2希土類酸化物粒子の平均粒径が0.05μm以上5μm未満の範囲内であると、後述する成形体を焼成するときに、第2希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応しやすく、酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されやすくなる。
【0061】
原料混合物
原料混合物は、全体量に対して、前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上95質量%以下の範囲内である。原料混合物中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体の含有量及び酸化アルミニウム粒子の含有量がそれぞれ前記範囲内であると、励起光を照射することによって、所望の色調の発光が得られるセラミックス複合体を製造することができる。
【0062】
原料混合物の全体量は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び酸化アルミニウム粒子の合計量でもよい。原料混合物に第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び酸化アルミニウム粒子が含まれ、第2希土類酸化物粒子が含まれない場合には、全体量に対して、酸化アルミニウム粒子の含有量は、全体量から第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量を差し引いた残部でもよい。原料混合物は、全体量に対して、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、酸化アルミニウム粒子の含有量が60質量%以上95質量%以下の範囲内でもよい。原料混合物中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量は、全体量に対して、6質量%以上38質量%以下の範囲内でもよく、7質量%以上35質量%以下の範囲内でもよい。原料混合物中の酸化アルミニウム粒子の含有量は、全体量に対して、62質量%以上94質量%以下の範囲内でもよく、65質量%以上93質量%以下の範囲内でもよい。
【0063】
原料混合物に、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び第2希土類酸化物粒子が含まれる場合には、全体量に対して、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が5質量%以上40質量%以下の範囲内であり、酸化アルミニウム粒子の含有量が57質量%以上94.99質量%以下の範囲内であり、第2希土類酸化物粒子の含有量が0.01質量%以上3質量%以下の範囲内であることが好ましい。原料混合物中に前記範囲内の含有量で第2希土類酸化物粒子が含まれていると、後述する成形体を焼成するときに、第2希土類酸化物粒子と酸化アルミニウム粒子が反応して、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制することができる。酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されると、結晶径が小さく、結晶径の粒度分布が狭く、結晶径の揃った酸化アルミニウムを含む第2結晶相を含むセラミックス複合体を得ることができる。得られたセラミックス複合体は、母材となる第2結晶相の第2結晶径が小さく、第2結晶径の粒度分布が狭く、第2結晶径の揃っているため、セラミックス複合体に入射された光が第1結晶相に含まれる第1希土類アルミン酸塩蛍光体で波長変換されるとともに、を第2結晶相で散乱され、セラミックス複合体から出射される光の色調のばらつきを抑制することができる。
【0064】
原料混合物中に、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子及び第2希土類酸化物粒子を含む場合、原料混合物の全体量は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子及び第2希土類酸化物粒子の合計量でもよい。原料混合物中の酸化アルミニウム粒子の含有量は、全体量から第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び第2希土類酸化物粒子の合計量を差し引いた残部でもよい。原料混合物は、全体量に対して、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が6質量%以上38質量%以下の範囲内でもよく、第2希土類酸化物粒子の含有量が0.05質量%以上2.5質量%以下の範囲内でもよく、酸化アルミニウムの含有量が59.5質量%以上93.95質量%以下の範囲内でもよい。原料混合物は、全体量に対して、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子の含有量が7質量%以上35質量%以下の範囲内でもよく、第2希土類酸化物粒子の含有量が0.1質量%以上2質量%以下の範囲内でもよく、酸化アルミニウムの含有量が63質量%以上92.9質量%以下の範囲内でもよい。
【0065】
図2Aは、セラミックス複合体の製造方法の第2態様を示すフローチャートであり、図2Bは、セラミックス複合体の製造方法の第3態様を示すフローチャートであり、図2Cは、セラミックス複合体の製造方法の第4態様を示すフローチャートである。図2Aに示すように、セラミックス複合体の製造方法は、原料混合物を準備する工程S101において、原料の混合工程S101aと、原料混合物のふるい分け工程S101bを含んでいてもよい。図2Bに示すように、セラミックス複合体の製造方法は、原料混合物を準備する工程S101において、原料の湿式混合工程S101cを含んでいてもよい。図2Cに示すように、セラミックス複合体の製造方法は、原料混合物を準備する工程S101において、原料の湿式混合工程S101cと、湿式混合工程S101cの後に、得られたスラリーを乾燥する工程S101dと、得られた乾燥物のふるい分け工程S101e含んでいてもよい。
【0066】
原料混合物を準備する工程
原料の混合
原料混合物を準備する工程において、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び必要に応じて第2希土類酸化物粒子の原料を、湿式又は乾式で、混合機を用いて混合する。混合機は、工業的に通常に用いられるボールミル、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等を用いることができる。
【0067】
原料混合物のふるい分け
原料混合物を準備する工程において、原料混合物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した原料混合物を準備することを含むことが好ましい。ふるい分けに用いるふるいは、目開き160μm以下であることが好ましく、ふるいの目開きは、150μmでもよく、140μmでもよく、130μmでもよく、125μmでもよく、110μmでもよい。ふるい分けを短時間で行うために、ふるいは、目開き100μm以上のものを用いてもよい。ふるいは、目開き160μm、線径71μm、ナイロン#110メッシュを用いてもよい。このふるいとしては、例えばN-No.110S(株式会社NBCメッシュテック製)を用いることができる。原料混合物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した原料混合物を準備することによって、原料混合物中に含まれる酸化アルミニウムの凝集を抑制することができ、後述する成形体を焼成するときに、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制することができる。酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されると、第2結晶径が小さく、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭くなり、結晶径の揃った酸化アルミニウムを含む第2結晶相を含むセラミックス複合体を得ることができる。原料混合物のふるい分けは、少なくとも1回行うことが好ましく、2回以上行ってもよい。
【0068】
湿式混合
原料混合物を準備する工程において、第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び必要に応じて第2希土類酸化物粒子の原料に、溶媒を加えて湿式混合することを含むことが好ましい。湿式混合するときに用いる溶媒としては、例えば脱イオン水、エタノール等が挙げられる。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び必要に応じて第2希土類酸化物粒子を湿式混合することによって、酸化アルミニウム粒子が溶媒中で分散され、酸化アルミニウム粒子の凝集を抑制して、後述する成形体を焼成するときに、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制することができる。酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されると、第2結晶径が小さく、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭くなり、結晶径の揃った酸化アルミニウムを含む第2結晶相を含むセラミックス複合体を得ることができる。湿式混合する時間は、用いる固体分散媒や溶媒によって異なるが、生産性を向上するために、好ましくは30分以上であり、より好ましくは60分以上であり、さらに好ましくは90分以上であり、好ましくは420分以内である。
【0069】
乾燥及び乾燥物のふるい分け
原料混合物を準備する工程において、湿式混合して得られたスラリーを乾燥し、得られた乾燥物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けし、ふるいを通過した原料混合物を準備することを含むことが好ましい。乾燥物のふるい分けに用いるふるいは、原料混合物をふるい分けするときに用いるふるいと同様のふるいを用いることができる。乾燥物のふるい分けは、少なくとも1回行うことが好ましく、2回以上行ってもよい。スラリーの乾燥時間は、15時間以上でもよく、20時間以上でもよく、30時間以内でもよい。乾燥温度は、溶媒が揮発する温度であればよく、例えば80℃以上105℃以下の範囲内でもよく、90℃以上100℃以下の範囲内でもよい。
【0070】
成形体を準備する工程
成形体を準備する工程は、原料混合物を成形して成形体を準備する。成形体を形成する方法としては、プレス成形法等の知られている方法を採用することができる。プレス成形する方法としては、例えば金型プレス成形、JIS Z2500:2000、No.2109で用語が定義されている、冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)等が挙げられる。その他に一軸で圧縮して、原料混合物を成形し成形体を得てもよい。原料混合物を成形して成形体を得る方法は、成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよく、例えば金型プレス成形をした後に、CIPを行ってもよく、ローラベンチ法により一軸で圧縮した後に、CIPを行ってもよい。CIPは、水を媒体とする冷間静水等方圧加圧法により成形体をプレスすることが好ましい。
【0071】
金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力は、好ましくは5MPa以上50MPa以下であり、より好ましくは5MPa以上30MPa以下である。金型プレス成形時の圧力又は一軸で圧縮して成形する場合の圧力が前記範囲であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
【0072】
CIPにおける圧力は、好ましくは50MPa以上200MPa以下であり、より好ましくは50MPa以上180MPa以下である。CIPにおける圧力が50MPa以上200MPa以下の範囲内であると、後述する1550℃以上1800℃以下の焼成により相対密度が95%以上であるセラミックス複合体を得ることが可能な成形体を形成することができる。
【0073】
焼結体を得る工程(1次焼成工程)
焼結体を得る工程は、成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲内で焼成して焼結体を得る。成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲内で1次焼成して第1焼結体を得てもよい。焼成の温度は、好ましくは1600℃以上1750℃以下の範囲内であり、より好ましくは1650℃以上1700℃以下の温度範囲内である。成形体を焼成する温度が1550℃以上1800℃以下の温度範囲内であれば、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を溶解させることなく、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相、酸化アルミニウムを含む第2結晶相、及び必要に応じて第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を含む
【0074】
成形体の焼成は、酸素含有雰囲気のもとで行うことができる。雰囲気中の酸素の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。成形体は、大気(酸素含有量が20体積%以上)雰囲気のもとで焼成してもよい。焼成の雰囲気は、大気圧(0.101MPa)でもよい。
【0075】
セラミックス複合体の製造方法は、焼結体を得る工程において、成形体を1550℃以上1800℃以下の温度範囲で1次焼成し、第1焼結体を得ることと、熱間等方圧加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)により、第1焼結体を1500℃以上1800℃以下の温度範囲で2次焼成し、第2焼結体を得ることと、を含み、前記測定条件で測定した第2焼結体に含まれる第2結晶相の第2結晶径が12μm以下である、セラミックス複合体を得ることが好ましい。
【0076】
図3は、セラミックス複合体の製造方法の第5態様を示すフローチャートである。図3に示すように、セラミックス複合体の製造方法は、焼結体を得る工程において、成形体を1次焼成して第1焼結体を得る工程S103aと、HIPにより第1焼結体を2次焼成して第2焼結体を得る工程S103bを含んでいてもよい。
【0077】
2次焼成工程
2次焼成工程は、熱間等方圧加圧(HIP)により、第1焼結体を、1500℃以上1800℃以下の温度範囲内で2次焼成して、第2焼結体を得る工程である。
2次焼成工程は、JIS Z2500:2000、No.2112で用語が定義されている、熱間等方圧加圧(HIP)により、1500℃以上1800℃以下の温度範囲内で2次焼成を行うことが好ましい。2次焼成工程を行うことにより、相対密度のより高いセラミックス複合体を得ることができる。2次焼成の温度は、より好ましく1550℃以上1800℃以下の温度範囲内であり、さらに好ましくは1600以上1750℃以下の温度範囲内であり、特に好ましくは1650℃以上1700℃以下の温度範囲内である。2次焼成は、アルゴン又は窒素雰囲気で行うことができる。
【0078】
2次焼成は、HIPにおける圧力が、好ましくは50MPa以上300MPa以下の範囲内であり、80MPa以上200MPa以下の範囲内であることがより好ましい。HIPにおける圧力が50MPa以上300MPa以下の範囲内であると、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相の結晶構造にダメージを与えることなく、第2焼結体の全体を均一に、より高い密度にすることができる。
【0079】
HIPによって行う2次焼成は、例えば0.5時間以上20時間以内であり、第2焼結体の全体を均一に高い密度にするために、1時間以上10時間以内で行うことが好ましい。
【0080】
セラミックス複合体の製造方法は、焼結体を得る工程の後に、アニール処理する工程、加工する工程、及び面処理する工程の少なくとも1つの工程を含んでいてもよく、2つ以上の工程を含んでいてもよく、3つの工程を含んでいてもよい。図4は、セラミックス複合体の製造方法の第6態様を示すフローチャートである。図4に示すように、セラミックス複合体の製造方法は、焼結体を得る工程S103の後に、アニール処理する工程S104を必要に応じて含んでいてもよい。また、セラミックス複合体の製造方法は、焼結体を得る工程S103の後に、得られた焼結体、第1焼結体又は第2焼結体を所望の大きさ又は厚さに切断して加工する工程S105を含んでいてもよく、さらに面処理する工程S106を必要に応じて含んでいてもよい。
【0081】
アニール処理
得られた焼結体、第1焼結体又は第2焼結体は、還元雰囲気でアニール処理してもよい。得られた焼結体を還元雰囲気でアニール処理することによって、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相中に含まれる酸化された賦活元素を還元することができ、発光中心となる賦活元素の酸化による波長変換効率の低下と輝度の低下を抑制することができる。還元雰囲気は、へリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種の希ガス又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含む雰囲気であればよく、雰囲気中に少なくともアルゴン又は窒素ガスと、水素ガス又は一酸化炭素ガスとを含むことがより好ましい。アニール処理は、焼結体又は第1焼結体に行ってよく、第2焼結体に行ってもよく、第1焼結体又は第2焼結体のいずか一方に行ってもよい。
【0082】
アニール処理の温度は、焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1500℃以下の範囲内であることが好ましい。アニール処理の温度は、より好ましくは1000℃以上1400℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは1100℃以上1350℃以下の範囲内である。アニール処理の温度が、焼成温度、1次焼成温度又は2次焼成温度よりも低い温度であり、1000℃以上1500℃以下の範囲内であれば、セラミックス複合体中の第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相に含まれる酸化された賦活元素を還元し、波長変換の効率の低下と輝度の低下を抑制することができる。
【0083】
加工工程
得られた焼結体は、所望の大きさ又は厚さに切断する加工を行ってもよい。切断する方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソーから選択された少なくとも1種の方法を用いて切断する方法が挙げられる。これらのうち、切断面の凹凸をより低減することができる点からワイヤーソーが好ましい。
【0084】
面処理工程
さらに以下に説明する面処理工程を追加してもよい。面処理工程は、得られた焼結体又は第2焼結体を切断して得た切断物の表面を面処理する工程である。この面処理工程により、セラミックス複合体の発光特性の向上のため、セラミックス複合体の表面を適切な状態とすることができるだけでなく、上述の加工工程と併せて、または単独で、セラミックス複合体を所望の形状、大きさ又は厚さにすることができる。面処理工程は、焼結体又は第2焼結体を所望の大きさ若しくは厚さに切断して加工する加工工程の前に行ってもよく、加工工程後に行ってもよい。面処理する方法としては、例えば、サンドブラストによる方法、機械研削による方法、ダイシングによる方法、化学的エッチングによるから選択された少なくとも1種の方法が挙げられる。
【0085】
得られるセラミックス複合体は、賦活剤となり得る元素の含有量が200質量ppm以下である、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を含んでいてもよい。原料混合物に含まれる第2希土類酸化物粒子は、酸化アルミニウム粒子と反応して、酸化アルミニウム粒子の結晶成長を抑制し、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相を形成する。セラミックス複合体中の第3結晶相は、1550℃以上1800℃以下の温度範囲の焼成により酸化アルミニウム粒子と反応した形成された第2希土類アルミン酸塩を含むため、第3結晶相中には、賦活剤となり得る元素を実質的に含まず、賦活剤となり得る元素の含有量が200質量ppm以下である。第1希土類アルミン酸塩蛍光体の賦活元素がセリウム(Ce)である場合、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相中のセリウム(Ce)の含有量は200質量ppm以下である。第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相中の賦活剤となり得る元素の含有量は、セラミックス複合体の第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相の断面を、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectrometry)により、第3結晶相中の賦活剤となり得る元素、例えばセリウムの含有量を測定することができる。セラミックス複合体中の第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相に含まれる賦活剤となり得る元素の含有量は、200質量ppm以下であり、150質量ppm以下でもよく、100質量ppm以下でもよく、EDXによる測定限界以下でもよく、0質量ppmでもよく、0.1質量ppm以上でもよく、1質量ppm以上でもよい。
【0086】
第3結晶相に含まれる第2希土類アルミン酸塩は、前記式(II)で表される組成を有するものでもよい。
【0087】
発光装置
前述のセラミックス複合体は、光源と組み合わせて、発光装置の波長変換部材を構成する部材として用いることができる。セラミックス複合体を用いた発光装置の一例について説明する。
【0088】
発光装置は、セラミックス複合体を含む波長変換部材と、励起光源とを備える。
図5Aは、発光装置の一例を示し、発光装置100の概略平面図であり、図5Bは、図5Aに示す発光装置100のVB-VB’線の概略断面図である。発光装置100は、LED又はLDからなる発光素子20と、発光素子20からの光により励起されて発光するセラミックス複合体からなる波長変換部材30とを備える。発光素子20は、実装基板10上に導電部材60であるバンプを介してフリップチップ実装されている。発光素子20は、発光装置100の励起光源であり、発光素子2の発光面に波長変換部材30が接合される。発光素子20と波長変換部材30は、接着層40を介して接合されていてもよい。発光素子20及び波長変換部材30は、その側面が光を反射する被覆部材50によって覆われている。発光素子20は、実装基板10上に形成された配線及び導電部材60を介して、発光装置100の外部からの電力の供給を受けて、発光装置100を発光させることができる。発光装置100は、発光素子20を過大な電圧の印加による破壊から防ぐための保護素子等の半導体素子70を含んでいてもよい。被覆部材50は、例えば半導体素子70を覆うように設けられる。被覆部材50は、樹脂51と、着色剤、蛍光体及びフィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加材52を含んでいてもよい。以下、発光装置に用いる各部材について説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報の開示を参照することもできる。
【0089】
発光素子
発光素子は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子である、LEDチップ又はLDチップを用いることができる。
【0090】
発光素子は、好ましくは380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、より好ましくは390nm以上495nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、さらに好ましくは400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、特に好ましくは420nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子は、p電極及びn電極が設けられている。発光素子のp電極及びn電極は、発光素子の同じ側の面に形成されていてもよく、異なる側の面に設けられていてもよい。発光素子は、フリップチップ実装されていてもよい。
【0091】
波長変換部材
波長変換部材は、前述のセラミックス複合体を用いることができる。波長変換部材として用いるセラミックス複合体の厚さは、50μm以上500μm以下の範囲内でもよく、60μm以上450μm以下の範囲内でもよく、70μm以上400μm以下の範囲内でもよい。波長変換部材として用いるセラミックス複合体の大きさは、発光素子の光の取り出し面を全て覆う大きさであればよい。発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在してもよく、接着層で発光素子と波長変換部材とを固着してもよい。波長変換部材は、前述のセラミックス複合体と、他の部材、例えば透光性部材を備えたものでもよい。
【0092】
発光装置の実装基板は、絶縁性材料であって、発光素子からの光や外光を透過し難い材料からなることが好ましい。実装基板の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂を上げることができる。セラミックスは耐熱性が高いため、実装基板の材料として好ましい。
発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在する場合、接着層を構成する接着剤は、発光素子と波長変換部材を光学的に連結できる材料からなることが好ましい。接着層を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
発光装置に必要に応じて設けられる半導体素子は、例えば発光素子を制御するためのトランジスタや、過大な電圧印加による発光素子の破壊や性能劣化を抑制するための保護素子が挙げられる。保護素子としてはツェナーダイオード(Zener Diode)やコンデンサーが挙げられる。
被覆部材の材料としては、絶縁材料を用いることが好ましい。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。被覆部材には、必要に応じて着色剤、蛍光体及びフィラーからなる群から選択される少なくとも1種の添加材が含まれていてもよい。
導電部材としては、バンプを用いることができ、バンプの材料としては、Auあるいはその合金、他の導電部材として、共晶ハンダ(Au-Sn)、Pb-Sn、鉛フリーハンダ等を用いることができる。
【0093】
発光装置の製造方法
発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報、又は、特開2017-117912号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程、必要に応じて半導体素子の配置工程、セラミックス複合体を含む波長変換部材の形成工程、発光素子と波長変換部材の接着工程、被覆部材の形成工程を含むことが好ましい。
発光素子の配置工程において、実装基板上に発光素子を配置し、実装する。発光素子と半導体素子とは、例えば、実装基板上にフリップチップ実装される。
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材を発光素子の発光面に対向させて、発光素子上に波長変換部材を接着層により接合する。
被覆部材の形成工程において、発光面を除く、発光素子、及び波長変換部材の側面が、被覆部材用組成物で覆われ、発光面を除く発光素子及び波長変換部材の側面に被覆部材が形成される。この被覆部材は、発光素子から出射された光を反射させるためのものであり、波長変換部材の発光面を覆うことなく側面を覆い、かつ半導体素子を埋設するように形成される。
以上のようにして、図5A及び図5Bに示す発光装置を製造することができる。
【実施例0094】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
実施例1
原料混合物の準備工程
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子
賦活元素としてCeを含有し、第1希土類元素としてY及びGdを含有する、(Y0.806Gd0.16Ce0.034Al12の組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を準備した。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子のFSSS法による平均粒径は15μmであった。
酸化アルミニウム粒子
酸化アルミニウム粒子として、酸化アルミニウムの純度が99質量%の酸化アルミニウム(Al)粒子を準備した。酸化アルミニウム粒子のFSSS法による平均粒径は0.6μmであった。
第2希土類酸化物粒子
第2希土類元素としてYを含む、第2希土類酸化物粒子として、酸化イットリウム(Y)粒子を準備した。酸化イットリウム粒子のFSSS法による平均粒径は0.1μmであった。
原料混合物の準備
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を11g、酸化アルミニウム粒子を88.9g、酸化イットリウム粒子を0.1g、それぞれ秤量し、乾式ボールミルで混合し、混合媒体であるボールを除き、原料混合物を準備した。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子、及び酸化イットリウム粒子の合計からなる原料混合物100質量%に対する各粒子の含有量を表1に記載した。
【0096】
成形体の準備工程
原料混合物を金型に充填し、10MPa(102kgf/cm)の圧力で、直径100mm、厚さ12mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を、包装容器に入れて真空包装し、冷間静水等方圧加圧装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて176MPaでCIPを行い、成形体を得た。
【0097】
焼結体を得る工程
1次焼成工程
得られた成形体を、焼成炉(丸祥電気株式会社製)を用いて、大気雰囲気(0.101MPa、酸素濃度20体積%)で、1650℃の温度で1次焼成し、第1焼結体を得た。
2次焼成工程
得られた第1焼結体を、熱間等方圧加圧(HIP)装置(株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(99.99体積%以上)のもとで、1650℃の温度、195MPaの圧力で、2時間、HIPによる2次焼成を行い、第2焼結体を得た。この第2焼結体を、ワイヤーソーを用いて、所定の形状及び大きさに切断し、その切断面の表面を平面研削機で研磨し、厚さが180μmの板状の実施例1のセラミックス複合体を得た。実施例1のセラミックス複合体中には、酸化アルミニウム粒子と酸化イットリウム粒子が反応して形成されたYAl12で表される第2希土類アルミン酸塩の第3結晶相が形成された。セラミックス複合体の断面の第2結晶相を、波長分散型X線分析EPMA(WDS)装置(JXA-8230、日本電子株式会社製)を用いて、第3結晶相中のCeの含有量を測定したところ、Ceの含有量は、100質量ppm以下であった。
【0098】
実施例2から3
原料混合物中に含まれる酸化アルミニウム粒子及び酸化イットリウム粒子の含有量を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2から3の各セラミックス複合体を得た。
【0099】
実施例4
実施例1で用いた第1希土類アルミン酸塩蛍光体と、実施例1で用いた酸化アルミニウム粒子を用いて、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を11g、酸化アルミニウム粒子を89g、それぞれ秤量し、乾式ボールミルで混合し、混合媒体であるボールを除き、目開き160μm、線径71μm、ナイロン#110メッシュ(N-No.110S、株式会社NBCメッシュテック製)を用いて、ふるい分けし、メッシュを通過した原料混合物を準備した。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び酸化アルミニウム粒子の合計からなる原料混合物100質量%に対する各粒子の含有量を表1に記載した。準備した原料混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のセラミックス複合体を得た。
【0100】
実施例5
実施例1で用いた第1希土類アルミン酸塩蛍光体と、実施例1で用いた酸化アルミニウム粒子を用いて、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を11g、酸化アルミニウム粒子を89g、それぞれ秤量し、第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び酸化アルミニウム粒子の合計に対して、溶媒として脱イオン水を50g添加し、湿式ボールミルで混合し、混合媒体であるボールを除き、スラリーを得た。得られたスラリーを、100℃で24時間乾燥し、乾燥物を得た。得られた乾燥物を、で規定された、目開き160μm、線径71μm、ナイロン#110メッシュ(N-No.110S、株式会社NBCメッシュテック製)を用いて、ふるい分けし、メッシュを通過した原料混合物を準備した。第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子及び酸化アルミニウム粒子の合計からなる原料混合物100質量%に対する各粒子の含有量を表1に記載した。準備した原料混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のセラミックス複合体を得た。
【0101】
比較例1
実施例1で用いた第1希土類アルミン酸塩蛍光体と、実施例1で用いた酸化アルミニウム粒子を用いて、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を11g、酸化アルミニウム粒子を89g、それぞれ秤量したこと以外は、実施例1と同様にして原料混合物を得て、この原料混合物用いて、実施例1と同様にして、比較例1のセラミックス複合体を得た。
【0102】
原料の平均粒径の測定
第1希土類アルミン酸塩蛍光体粒子、酸化アルミニウム粒子及び第2希土類酸化物粒子である酸化イットリウム粒子について、以下のようにそれぞれの平均粒径を測定した。
各粒子についてFisher Sub-Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、気温25℃、相対湿度70%の環境下において、1cm分の各粒子の試料物原料)をそれぞれ計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読み取り、FSSS法による粒径を算出した。結果は上述のとおりである。
【0103】
セラミックス複合体の測定
第1結晶相及び第2結晶相の含有量
第1結晶相の含有量(体積%)、第2結晶相の含有量(体積%、質量%)を、前記式(1)から(5)に基づき求めた。
【0104】
相対密度の測定
実施例及び比較例の各セラミックス複合体の相対密度を、前記式(6)から(9)に基づき求めた。第1希土類アルミン酸塩蛍光体((Y0.806Gd0.16Ce0.034Al12)の真密度は4.67g/cm、酸化アルミニウム粒子の真密度は3.98g/cm、セラミックス複合体中の第2希土類アルミン酸塩(YAl12)の真密度は4.60g/cmとして算出した。
【0105】
SEM画像-2次電子像
走査型電子顕微鏡(SEM)(SU3500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、実施例及び比較例の各セラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM画像を得た。
【0106】
結晶径の測定
実施例及び比較例のセラミックス複合体の断面を研磨した面のSEM画像から、下記の測定条件により、酸化アルミニウムを含む第2結晶相の第2結晶径を測定した。
測定条件
セラミックス複合体の断面における走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM画像において、粒界で区切られた結晶相の断面における最大幅と、前記最大幅の中心点を通る最小幅と、を測定し、前記最大幅と前記最小幅の平均を結晶径とし、同一倍率のSEM画像において特定の大きさの範囲における結晶径の算術平均値を、結晶径の平均値とする。
無作為に選択した20個の第2結晶相の第2結晶径の平均値を算出した。また、無作為に選択した20個の第2結晶相を粒子と仮定して第2結晶径の粒度分布曲線を作成し、第2結晶径の粒度分布曲線の小径側からの積算値が25%及び75%のときの第2結晶径の値をD25及びD75と表記したときに、QD=(D75-D25)/(D75+D25)で表されるQD値を算出した。
【0107】
発光装置の作製
得られた実施例及び比較例の各セラミックス複合体について、図5A及び図5Bに示す発光装置100を以下のようにして発光装置を作製した。発光素子20及び半導体素子70を実装基板10に載置した。具体的には、サファイア基板上に窒化物半導体が積層されて形成された、厚みが約0.11mmで、平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、主波長が450nmである発光素子20を、半導体成長基板であるサファイア基板側が光出射面となるように、発光素子2及び半導体素子7を一列に配置して、Auからなる導電部材60を用いて、実装基板10に形成させた導電パターンにフリップチップ実装した。
次に、発光素子20の上面に、接着剤40としてシリコーン樹脂を配置して、実施例及び比較例の各セラミックス複合体を板状に形成した波長変換部材30と発光素子20のサファイア基板の上面とを接着させた。
次に、発光素子20、波長変換部材30及び半導体素子70の周囲に被覆部材50を配置した。発光素子20、波長変換部材30の側面に沿って被覆部材50を配置するとともに、半導体素子70を被覆部材50の中に完全に埋没させた。被覆部材50に含まれる樹脂51は、ジメチルシリコーン樹脂を使用し、光反射性材料52として平均粒径が0.28μmの酸化チタン粒子を、樹脂51に対して60質量%含有させた。このような工程により、図5A及び図5Bに示される発光装置100を作製した。
実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた各発光装置について、以下のように評価を行った。その結果を表1に示す。
【0108】
色度座標(x、y)及び標準偏差
実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた発光装置をそれぞれ40個作製し、イメージング色彩輝度計(ProMetric I8、Radiant Vision Systems社製)を用いて、CIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclarirage)1931色度図の色度座標系における色度座標(x、y)を求めた。実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた40個の発光装置の色度座標(x、y)の平均値を、実施例及び比較例のセラミックス複合体の色度座標(x、y)とした。また、実施例及び比較例の各セラミックス複合体を用いた40個の発光装置の色度座標(x、y)の標準偏差(1σ)を、色調のばらつきを評価する指標として求めた。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例1から5に係るセラミックス複合体は、前記測定条件で測定した第2結晶相の第2結晶径の平均値が12μm以下であり、QD値が0.5以下であった。実施例1から5に係るセラミックス複合体に含まれる第2結晶相の第2結晶径の平均値は比較例に係るセラミックス複合体の第2結晶相の第2結晶径の平均値よりも小さく、第2結晶相を粒子と仮定したときの粒度分布が狭く、第2結晶相の大きさが揃っていた。実施例1から5に係るセラミックス複合体を用いた発光装置は、出射した光の色度座標(x、y)の標準偏差(xσ、yσ)が、比較例に係るセラミックス複合体を用いた発光装置から出射した光の色度座標(x、y)の標準偏差(xσ、yσ)よりも小さくなっており、色調のばらつきが抑制されていた。
【0111】
図6Aは、実施例3に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真であり、図6Bは、図6AのSEM写真の第1結晶相、第2結晶相及び第3結晶相のそれぞれの粒界を線で表した図である。実施例3に係るセラミックス複合体は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相1と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相2と、酸化アルミニウム粒子と第2希土類酸化物が反応して生成された第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相3を含んでいた。実施例3に係るセラミックス複合体中の第2結晶相の第2結晶径の平均値は、後述する比較例1に係るセラミックス複合体の第2結晶相の第2結晶径の平均値よりも小さくなっていることが確認できた。
【0112】
図7Aは、実施例4に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真であり、図7Bは、図7AのSEM写真の第1結晶相及び第2結晶相のそれぞれの粒界を線で表した図である。実施例4に係るセラミックス複合体は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相1と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相2を含んでいた。実施例4に係るセラミックス複合体は、第2希土類アルミン酸塩を含む第3結晶相が存在しない。実施例4に係るセラミックス複合体は、原料混合物を目開き160μm以下のふるいでふるい分けしているため、実施例4に係るセラミックス複合体中の第2結晶相の第2結晶径の平均値は、後述する比較例1に係るセラミックス複合体の第2結晶相の第2結晶径の平均値よりも小さくなっていることが確認できた。
【0113】
図8Aは、比較例1に係るセラミックス複合体の断面(研磨面)の2次電子像のSEM写真であり、図8Bは、図8AのSEM写真の第1結晶相及び第2結晶相のそれぞれの粒界を線で表した図である。比較例1に係るセラミックス複合体は、第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む第1結晶相1と、酸化アルミニウムを含む第2結晶相2を含んでいた。比較例1に係るセラミックス複合体中の第2結晶相の第2結晶径の平均値は、実施例3及び4に係るセラミックス複合体の第2結晶相の第2結晶径の平均値よりも大きくなった。比較例1に係るセラミックス複合体は、実施例3と同じ酸化アルミニウム粒子を用いているが、原料混合物中に第2希土類酸化物を含んでいないため、酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されていなかった。また、比較例1に係るセラミックス複合体は、実施例4と同じ配合及び同じ原料を含む原料混合物用いているが、原料混合物をふるい分けしていないため、酸化アルミニウム粒子の結晶成長が抑制されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の一態様のセラミックス複合体の製造方法によって得られたセラミックス複合体は、LEDやLDの励起光源と組み合わせて、車載用光源や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源の波長変換部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1:第1結晶相、2:第2結晶相、3:第3結晶相、10:実装基板、20:発光素子、30:波長変換部材、40:接着層、50:被覆部材、60:導電部材、70:半導体素子、100:発光装置。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B