(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092829
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】イソインドリンボロン酸誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20220616BHJP
C07D 209/44 20060101ALN20220616BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C07F5/02 A
C07D209/44
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205764
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
【テーマコード(参考)】
4C204
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4C204BB04
4C204CB04
4C204DB03
4C204EB02
4C204FB27
4C204GB24
4H039CA91
4H039CD20
4H048AA02
4H048AB84
4H048AC80
4H048VA32
4H048VA75
4H048VA77
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産効率の高いイソインドリノン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態では、アルカリ金属アルコキシドを含む塩基化合物存在下、メタノールを含む溶媒中、式(1)で表されるイソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させて、式(1)中のXがB(OH)
2に置換されたイソインドリンボロン酸誘導体を製造する方法である。
(R
1、R
3は、H、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基;R
2は、アミノ基保護基であるtert-ブトキシカルボニル基、トリチル基、又はピバロイル基、Xは、ハロゲン原子である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属アルコキシドを含む塩基化合物存在下、メタノールを含む溶媒中、
下記式(1)で表されるイソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させて、下記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を製造することを含む、イソインドリンボロン酸誘導体の製造方法:
【化1】
前記式(1)において、
R
1及びR
3は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基であり、
R
2は、アミノ基保護基であり、
Xは、ハロゲン原子であり、
【化2】
前記式(2)において、
R
1、R
2及びR
3は、前記式(1)のものと同義である。
【請求項2】
前記式(2)において、アミノ基保護基であるR2は、tert-ブトキシカルボニル基、トリチル基、又はピバロイル基である、
請求項1に記載のイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属アルコキシドは、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、及びナトリウムメトキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、
請求項1又は2に記載のイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法により、前記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を製造した後、得られた該イソインドリンボロン酸誘導体と下記式(3)で表されるボロン酸保護剤とを接触させることにより、下記式(4)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体を製造することを含む、イソインドリンボロン酸保護誘導体の製造方法:
【化3】
前記式(3)において、
R
4は、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、又はアルキレンイミノアルキレン基(ただし、イミノ基の窒素原子にはアルキル基が置換されていてもよい)であり、
R
5は、ヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基であり、
【化4】
前記式(4)において、
R
1、R
2及びR
3は、前記式(1)のものと同義であり、
R
4は、前記式(3)のものと同義であり、
R
5’は、前記式(3)のR
5がヒドロキシル基の場合には酸素原子であり、前記式(3)のR
5がアミノ基である場合には-NH-基であり、前記式(3)のR
5がカルボキシル基である場合には-C(=O)O-基である。
【請求項6】
前記式(3)で表されるボロン酸保護剤は、ピナコール、カテコール、ネオペンチルグリコール、ピナンジオール、1-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルエチレングリコール、1,1’-ビシクロヘキサン-1,1’-ジオール、1,8-ジアミノナフタレン、及びN-メチルイミノ二酢酸からなるからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、
請求項5記載のイソインドリンボロン酸保護誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソインドリンボロン酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソインドリンボロン酸誘導体は、例えば、ガレノキサシン等の種々の医薬品の製造中間体として用いられる有用な化合物である。その製造方法として、パラジウムを含有する金属触媒下、イソインドリン誘導体とホウ素化剤とを反応させてイソインドリンボロン酸誘導体を得る方法が報告されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、パラジウムを含有する触媒として[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)の存在下、(R)-5-ブロモ-2-(2,2-ジメチルプロパノール)-1-メチル-イソインドリンと、ホウ素化剤としての4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランと、を接触させる方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法によると、パラジウムを含有する高価な金属触媒を使用しているにもかかわらず、目的物であるイソインドリンボロン酸誘導体(具体的には、(R)-2-(2,2-ジメチルプロパノール)-1-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)イソインドリン)の収率は、40%台に留まっている。このように、特許文献1に記載の製造方法では、触媒にコストをかけたとしても必ずしも高い収率でイソインドリンボロン酸誘導体を得られるとはいえず、この点において改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、低コストで収率の高いイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、イソインドリンボロン酸誘導体の製造工程において、アルカリ金属アルコキシドを含む塩基化合物及びメタノールを含む溶媒を用いることで、パラジウム含有触媒のような高価な金属触媒を使用することなく、イソインドリンボロン酸誘導体の高い収率を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態に係る、イソインドリンボロン酸誘導体の製造方法は、アルカリ金属アルコキシドを含む塩基化合物存在下、メタノールを含む溶媒中、下記式(1)で表されるイソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させて、下記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を製造することを含む。
【0009】
【0010】
前記式(1)において、R1及びR3は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基である。また、R2は、アミノ基保護基であり、Xは、ハロゲン原子である。
【0011】
【0012】
前記式(2)において、R1、R2及びR3は、前記式(1)のものと同義である。
【0013】
前記式(2)において、アミノ基保護基であるR2は、tert-ブトキシカルボニル基、トリチル基、又はピバロイル基であることが好ましい。最終生成物である医薬品の製造過程で、アミノ基保護基を窒素原子から切り離しやすくできる。
【0014】
前記アルカリ金属アルコキシドは、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、及びナトリウムメトキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0015】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、及びジエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。これらの溶媒をさらに用いると、反応に関与する原料をより溶解しやすくできる。
【0016】
本発明の他の実施形態に係るイソインドリンボロン酸保護誘導体の製造方法は、前記のイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法により、前記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を製造した後、得られた該イソインドリンボロン酸誘導体と下記式(3)で表されるボロン酸保護剤とを接触させることにより、下記式(4)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体を製造することを含む。
【0017】
【0018】
前記式(3)において、R4は、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、又はアルキレンイミノアルキレン基(ただし、イミノ基の窒素原子にはアルキル基が置換されていてもよい)である。また、R5は、ヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基である。
【0019】
【0020】
前記式(4)において、R1、R2及びR3は、前記式(1)のものと同義である。また、R4は、前記式(3)のものと同義である。また、R5’は、前記式(3)のR5がヒドロキシル基の場合には酸素原子であり、前記式(3)のR5がアミノ基である場合には-NH-基であり、前記式(3)のR5がカルボキシル基である場合には-C(=O)O-基である。
【0021】
前記式(3)で表されるボロン酸保護剤は、ピナコール、カテコール、ネオペンチルグリコール、ピナンジオール、1-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルエチレングリコール、1,1’-ビシクロヘキサン-1,1’-ジオール、1,8-ジアミノナフタレン、及びN-メチルイミノ二酢酸からなるからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法によれば、低コストでイソインドリンボロン酸誘導体を高い収率で製造することができる。また、本発明に係るイソインドリンボロン酸保護誘導体の製造方法によれば、イソインドリンボロン酸保護誘導体を高い収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る製造方法は、(1)イソインドリン誘導体からイソインドリンボロン酸誘導体を製造する方法(以下、「第1の製造方法」とも称する。)、及び(2)イソインドリンボロン酸誘導体からイソインドリンボロン酸保護誘導体を製造する方法(以下、「第2の製造方法」とも称する。)を含む。以下、それぞれ詳細に説明する。
【0024】
(1)第1の製造方法
第1の製造方法に係るイソインドリンボロン酸誘導体の製造方法は、アルカリ金属アルコキシドを含む塩基化合物存在下、メタノールを含む溶媒中、イソインドリン誘導体とビスボロン酸(BBA)とを接触させて、イソインドリンボロン酸誘導体を製造することを含む。
【0025】
<イソインドリン誘導体>
イソインドリン誘導体は、第1の製造方法における基質である。イソインドリン誘導体は、下記式(1)で表される化合物、すなわち、ハロゲノイソインドリン誘導体である。
【0026】
【0027】
上記式(1)において、R1及びR3は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基である。R2は、アミノ基保護基である。Xは、ハロゲン原子である。
【0028】
式(1)において、R1及びR3は、好ましくは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、又は炭素数3~20のジアルキルアミノアルキル基である。なお、前記アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよく、この置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数7~30のアラルキル基等が挙げられる。また、R1及びR3は、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0029】
式(1)において、アミノ基保護基であるR2は、ハロゲン原子とホウ素原子との交換反応が促進するようにアミノ基をビスボロン酸から保護するものである。また、アミノ基保護基は、この第1の製造方法で得られる目的物であるイソインドリンボロン酸誘導体(式(2)参照。詳細は、後述する。)を製造中間体として用いて医薬品等を製造する過程で経るカップリング反応を促進する役割をさらに果たす。
【0030】
アミノ基保護基であるR2は、好ましくは、tert-ブトキシカルボニル基(Bоc)、トリチル基、又はピバロイル基であり、より好ましくは、トリチル基、又はtert-ブトキシカルボニル基である。トリチル基は、アミノ基から切り離しやすく、化合物の結晶性を向上させる点で、特に好ましい。イソインドリンボロン酸誘導体を製造中間体として用いて医薬品等を製造する際に、最終段階においてこのアミノ基保護基を窒素原子から切り離す必要があるためである。また、トリチル基を有する場合は、安価、かつHPLCなどで検出しやすい点でも、さらに好ましい。
【0031】
式(1)において、Xは、ハロゲン原子であり、具体的には、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。中でも、反応性と安定性とを考慮すると、Xは、臭素元素であることが好ましい。また、Xは、イソインドリン誘導体において1つ存在する。イソインドリン誘導体及び生成されるイソインドリンボロン酸誘導体の有効性を考慮すると、Xは、5位の位置に存在することが好ましい。
【0032】
すなわち、上記式(1)で表わされるイソインドリン誘導体としては、その有用性を考慮すると、下記式(1A)又は(1B)で表わされる化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0033】
【0034】
式(1A)において、Bocは、前記のとおり、tert-ブトキシカルボニル基である。また、式(1B)において、Phは、フェニル基であり、式(1)のR2がトリチル基であるイソインドリン誘導体の1種である。以下、同様の説明は、省略する場合がある。
【0035】
式(1A)及び(1B)のイソインドリン誘導体は、式(1)において、R2がそれぞれ、前記のとおりのアミノ基保護基であり、ハロゲン原子であるXが臭素原子であり、R1がメチル基であり、R3が水素原子である化合物である。
【0036】
<ビスボロン酸>
ビスボロン酸は、第1の製造方法において、基質であるイソインドリン誘導体と反応してイソインドリンボロン酸誘導体を生成するホウ素化合物である。具体的には、ビスボロン酸は、イソインドリン誘導体からハロゲン原子を切り離してホウ素原子からなるボロン酸基(-B(OH)2)を結合させてイソインドリンボロン酸誘導体を生成する。すなわち、ビスボロン酸は、イソインドリン誘導体に対してホウ素化剤として作用する。
【0037】
ビスボロン酸の使用量は、特に限定されるものではない。イソインドリン誘導体1モルに対に対してビスボロン酸を、好ましくは、1モル以上20モル以下使用し、より好ましくは、1モル以上10モル以下使用する。
【0038】
<塩基;アルカリ金属アルコキシド>
イソインドリン誘導体とビスボロン酸との接触は、アルカリ金属アルコキシドの存在下で行われる。アルカリ金属アルコキシドは、塩基化合物の1種であり、特に、酸素を含有する塩基化合物の1種である。
【0039】
アルカリ金属アルコキシドにおけるアルカリ金属としては、反応性の高いナトリウム又はカリウムが好ましい。すなわち、アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、ナトリウムアルコキシド、又はカリウムアルコキシドである。
【0040】
また、アルカリ金属アルコキシドにおけるアルコキシドは、炭素数1~4のアルコキシド、すなわち、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、又はブトキシドが好ましい。この中でも、特に、メトキシド又はブトキシドが好ましい。
【0041】
以上を換言すると、アルカリ金属アルコキシドは、ナトリウムメトキシド(MeONa)、カリウムメトキシド(MeOK)、ナトリウムtert-ブトキシド(tert-BuONa)、及びカリウムtert-ブトキシド(tert-BuOK)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0042】
アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、tert-BuOKである。tert-BuOKを用いることにより、パラジウム含有触媒を使用しなくても、イソインドリン誘導体とビスボロン酸との反応を進めることができる。tert-BuOKは、塩基性に優れ、炭素原子とホウ素原子との間の結合をより活性化させると推定される。
【0043】
イソインドリン誘導体1モルに対してアルカリ金属アルコキシドを、好ましくは、1モル以上10モル以下使用し、より好ましくは、1モル以上3モル以下使用する。
【0044】
<溶媒>
アルカリ金属アルコキシドの存在下におけるイソインドリン誘導体とビスボロン酸との接触は、メタノールを含む溶媒中で実施される。メタノールは、基質であるイソインドリン誘導体を溶解し、イソインドリン誘導体とビスボロン酸との反応を促進する。メタノールは、アミノ基保護基であるR2がBocであるイソインドリン誘導体の溶解力に特に優れている。
【0045】
溶媒は、上述したメタノールに加えて、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-メチルTHF)、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系の溶媒をさらに含んでよい。上述したエーテル系の溶媒の中でも、反応に用いる原料に対する溶解力に優れている点で、THF、2-メチルTHF、又はTHF及び2-メチルTHFの混合溶媒がより好ましい。これら、さらに追加されるエーテル系の溶媒は、単独で、又はこれらの混合溶媒として用いることができる。
【0046】
すなわち、溶媒は、メタノールを単独で用いてもよく、又はメタノールと上記のエーテル系の溶媒(エーテル系の溶媒は、単独でも、混合溶媒でもよい)との混合溶媒として用いてよい。エーテル系の溶媒をさらに使用する場合には、メタノール1mLに対して、エーテル系の溶媒を0.01~5.0mL使用することが好ましく、0.1~2.0mL使用することがさらに好ましい。エーテル系の溶媒として、混合溶媒を使用する場合には、前記量の範囲は、エーテル系の溶媒の合計量がその範囲を満足すればよい。
【0047】
溶媒の使用量は、特に制限されるものではない。イソインドリン誘導体1gに対して、溶媒を、好ましくは、1~100mL使用し、より好ましくは、3~20mL使用する。なお、溶媒として混合溶媒を使用する場合には、混合溶媒の全量が前記範囲を満足すれば良い。
【0048】
<イソインドリンボロン酸誘導体の製造法>
上述したように、第1の製造方法では、アルカリ金属アルコキシドの存在下、メタノールを含む溶媒中、イソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させ、これらを反応させてイソインドリンボロン酸誘導体を得る。
【0049】
(各成分を接触させる(混合する)方法)
各成分を混合する方法は、特に制限されるものではない。例えば、撹拌機構を備えた反応容器内に、各成分を投入して混合してよい。各成分を混合することにより、アルカリ金属アルコキシドの存在下、メタノールを含む溶媒中、イソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させることができる。各成分を反応容器内に投入する手順は、特に制限されない。例えば、溶媒中にイソインドリン誘導体を溶解させた後、この溶解液にアルカリ金属アルコキシドを添加してさらに溶解させ、その後、ビスボロン酸を加えてもよい。
【0050】
イソインドリン誘導体の溶解液にアルカリ金属アルコキシドを添加した後、ビスボロン酸を加える前に、イソインドリン誘導体の溶解液とアルカリ金属アルコキシドとを混合するために攪拌を行ってもよい。この時、イソインドリン誘導体の溶解液とアルカリ金属アルコキシドとを混合する時間は、例えば、0.1時間以上1時間としてよい。また、アルカリ金属アルコキシドを添加する際の溶解液の温度は、例えば、0℃以上20℃以下としてよい。
【0051】
(反応温度)
反応は、メタノールを含む溶媒中で、アルカリ金属アルコキシド、イソインドリン誘導体、及びビスボロン酸を混合(接触)させることにより実施できる。この時、これら各成分を攪拌混合する際の反応温度は、-20℃以上70℃以下であることが好ましく、-10℃以上40℃以下であることがより好ましい。
【0052】
反応温度は、反応開始(各成分を攪拌混合し始めて)から終了(攪拌混合を止める)までの間において、必ずしも一定に保たなくてもよく、上述した温度範囲において段階的に変えてもよい。一例として、反応の途中で温度を切り替えて2段階で上がるようにしてもよい。具体的には、初め(例えば、0.1時間以上8時間以下)、-20℃以上15℃未満の温度範囲とし、その後(例えば、10時間以上40時間以下)、15℃以上70℃以下としてもよい。温度が低いことによって基質が溶解しない場合に、温度を上げることによって、基質を溶解させることができる。
【0053】
(反応時間)
反応時間は、イソインドリンボロン酸誘導体への転化率を確認し、反応が完結する時間に適宜決定すればよい。通常、0.1時間以上48時間以下であればよく、好ましくは0.2時間以上24時間以下である。
【0054】
(反応の環境)
反応雰囲気は、特に制限されない。上記反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素やアルゴン等)の雰囲気下で行ってよい。また、上記反応は、蛍光灯等、室内の照明下で行ってもよい。この場合、反応容器は、容器の内部の反応系に前記の照明の光が照射される透明な容器(例えば、ガラス製の容器等)を用いてもよい。
【0055】
<反応終了後の後処理工程>
反応終了後は、以下の方法でイソインドリンボロン酸誘導体を精製することが好ましい。まず、反応液に、水及び酢酸エチルを加えた後、酢酸を加えて酸性度を調整する。反応により析出した不純物を溶解するためである。次に、有機層を分離後、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上乾燥し、減圧濃縮し、濃縮残渣を得る。濃縮残渣は、後述する第2の製造方法において、基質として使用する。
【0056】
イソインドリンボロン酸誘導体が合成されていることは、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析、赤外(IR)分光分析、及び融点測定により確認できる。また、イソインドリンボロン酸誘導体の転化率は、例えば、濃縮残渣を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析することにより確認できる。
【0057】
<イソインドリンボロン酸誘導体>
上述した方法でイソインドリン誘導体とビスボロン酸とを接触させると、下記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体が得られる。
【0058】
【0059】
式(2)において、R1、R2及びR3は、式(1)のものと同義である。
【0060】
(好適なイソインドリンボロン酸誘導体)
前記の通り、好適な原料である前記式(1A)又は(1B)で表わされる化合物を使用した場合、下記式(2A)又は(2B)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を得ることができる。
【0061】
【0062】
以上のような方法に従えば、金属触媒、例えば、パラジウムを含む金属触媒を使用しなくても、イソインドリン誘導体とビスボロン酸とを反応させて、イソインドリンボロン酸を製造することができる。高価な金属触媒を使用しなくてもよいため、低コストでの製造が可能となる。加えて、金属触媒を使用しなくてもよいため、それを除去する必要がなく、本発明の方法は、高純度品が求められる医薬中間体の製造に好適な方法である。
【0063】
(2)第2の製造方法
次に、第2の製造方法に係るイソインドリンボロン酸保護誘導体の製造方法について説明する。この製造方法は、上述した第1の製造方法によりイソインドリンボロン酸誘導体を製造した後、得られた該イソインドリンボロン酸誘導体とボロン酸保護剤とを接触させることにより、イソインドリンボロン酸保護誘導体を製造することを含む。
【0064】
<ボロン酸保護剤>
ボロン酸保護剤は、イソインドリンボロン酸誘導体に含まれる2つの-ОR4に作用してホウ素原子を保護し、イソインドリンボロン酸保護誘導体を生成する化合物である。ボロン酸保護剤は、下記式(3)で表される。
【0065】
【0066】
式(3)において、R4は、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、又は置換基を有してもよいアルキレンイミノアルキレン基(ただし、イミノ基の窒素原子にはアルキル基が置換されていてもよい。)である。R5は、ヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基である。
【0067】
式(3)において、R4は、好ましくは、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数6~14のアリーレン基、又は置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキレンイミノアルキレン基である。前記の炭素数は、置換基の炭素数は含まないものとする。そして、上述の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基(好適にはメチル基)、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリール基(好適には4-メトキシフェニル基)が挙げられる。アルキレンイミノアルキレン基のイミノ基が有する置換基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基が好ましい。
【0068】
また、R4の前記アルキレン基は、置換基として、アルキレン基を構成する炭素原子を含めてシクロアルキル環を形成する基となってもよく、そのシクロアルキル環は、好ましくはシクロヘキシル環である。さらに、R4の前記アルキレン基は、アルキレン基を構成する2つの炭素原子が有する置換基が相互に結合して炭素数3~10(アルキレン基の炭素原子を含む)の環を形成してもよい。該環は縮環していてもよく、さらにはメチル基を有していてもよい。R4は、より好ましくは、下記化学式(3a)~(3h)のいずれかで表される2価の基である。
【0069】
【0070】
好適な前記式(3a)~(3h)で表されるR4には、R5として、ヒドロキシル基、アミノ基、又はカルボキシル基が結合する。
【0071】
すなわち、式(3)で表されるボロン酸保護剤は、より好ましくは、ピナコール(式(3)においてR4が(3a)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)、カテコール(式(3)においてR4が(3b)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)、ネオペンチルグリコール(式(3)においてR4が(3c)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)、ピナンジオール(式(3)においてR4が(3d)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)、1-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルエチレングリコール(式(3)においてR4が(3e)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)、1,1’-ビシクロヘキサン-1,1’-ジオール(式(3)においてR4が(3f)で示される2価の基であり、R5がヒドロキシル基である化合物)等のアルコール化合物が挙げられる。
【0072】
また、式(3)で表されるボロン酸保護剤は、より好ましくは、1,8-ジアミノナフタレン(式(3)においてR4が(3g)で示される2価の基であり、R5がアミノ基である化合物)、N-メチルイミノ二酢酸(式(3)においてR4が(3h)で示される2価の基であり、R5がカルボキシル基である化合物)等のアミノ化合物が挙げられる。
【0073】
以上を換言すれば、式(3)で表されるボロン酸保護剤は、より好ましくは、ピナコール、カテコール、ネオペンチルグリコール、ピナンジオール、1-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルエチレングリコール、1,1’-ビシクロヘキサン-1,1’-ジオール、1,8-ジアミノナフタレン、及びN-メチルイミノ二酢酸からなるからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0074】
ボロン酸保護剤は、上記の中でも、ピナコールが特に好ましい。ピナコールは、上記のボロン酸保護剤の中でも相対的に分子量が小さく、また処理が複雑にならない点で有利である。
【0075】
イソインドリンボロン酸誘導体1モルに対してボロン酸保護剤を、好ましくは、1.0モル以上10モル以下使用し、より好ましくは、1.0モル以上5.0モル以下使用する。
【0076】
<イソインドリンボロン酸保護誘導体の製造法>
上述したように、第2の製造方法では、イソインドリンボロン酸誘導体とボロン酸保護剤とを接触させ、これらを反応させてイソインドリンボロン酸保護誘導体を得る。本実施形態においては、イソインドリンボロン酸誘導体とボロン酸保護剤とを接触させる際は、溶媒中で実施することが好ましい。
【0077】
<溶媒>
溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;THF、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングルコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)等のエーテル類、ジクロロメタン(塩化メチレン)、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等の酢酸類等を用いることができる。また、これらの溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0078】
溶媒は、好ましくは、エタノール、メタノール、塩化エチレン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶媒である。塩化メチレンは、基質となるイソインドリンボロン酸誘導体に対する溶解力に優れるため、特に好ましい。
【0079】
イソインドリンボロン酸誘導体1gに対して、溶媒を、好ましくは、1mL以上100mL以下使用し、より好ましくは、3mL以上40mL以下使用する。
【0080】
(反応温度及び反応時間)
反応温度は、-10℃以上70℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。反応時間は、0.1時間以上17時間以下であればよく、好ましくは1時間以上5時間以下である。
【0081】
<イソインドリンボロン酸保護誘導体>
上述した方法でイソインドリンボロン酸誘導体とボロン酸保護剤とを接触させると、下記式(4)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体が得られる。
【0082】
【0083】
前記式(4)において、R1、R2及びR3は、式(1)のものと同義である。また、R4は、式(3)のものと同義である。また、R5’は、式(3)のR5から水素原子が1つ外れた2価の基である。具体的には、R5’は、式(3)のR5がヒドロキシル基の場合には酸素原子であり、式(3)のR5がアミノ基である場合には-NH-基であり、式(3)のR5がカルボキシル基である場合には-C(=O)O-基である。
【0084】
(好適なイソインドリンボロン酸保護誘導体)
一例として、好適な原料である前記式(1A)から得られる前記式(2A)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を使用し、ボロン酸保護剤としてピナコールを使用した場合、下記式(4A)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体を得ることができる。なお、下記(4A)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体は、式(4)において、R1がメチル基であり、R2がtert-ブトキシカルボニル基であり、R3が水素原子であり、R4が上記式(3a)で示される2価の基であり、R5’が酸素原子である化合物である。
【0085】
【0086】
他の例として、前記式(2A)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体を使用し、ボロン酸保護剤として1,8-ジアミノナフタレン又はN-メチルイミノ二酢酸を使用した場合、それぞれ下記式(4B)及び(4C)で表されるイソインドリンボロン酸保護誘導体を得ることができる。
【0087】
【0088】
上記式(4B)のイソインドリンボロン酸保護誘導体は、式(4)において、R1がメチル基であり、R2がtert-ブトキシカルボニル基であり、R3が水素原子であり、R4が上記式(3g)で示される2価の基であり、R5’が-NH-基である化合物である。また、記式(4C)のイソインドリンボロン酸保護誘導体は、式(4)において、R1がメチル基であり、R2がtert-ブトキシカルボニル基であり、R3が水素原子であり、R4が上記式(3h)で示される2価の基であり、R5’が-C(=O)O-基である化合物である。
【0089】
イソインドリンボロン酸保護誘導体が合成されていることは、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析、赤外(IR)分光分析、及び融点測定により確認できる。また、イソインドリンボロン酸誘導体の収率(すなわち、アッセイ収率。)は、反応液をHPLCで分析することにより確認できる。
【0090】
(3)第1の製造方法及び第2の製造方法について
なお、上述の実施形態では、説明の便宜上、第1の製造方法(すなわち、イソインドリン誘導体からイソインドリンボロン酸誘導体を製造する方法。)、及び第2の製造方法(すなわち、イソインドリンボロン酸誘導体からインドリンボロン酸保護誘導体を製造する方法)を別々の製造方法としてそれぞれを分けて説明したが、これらは必ずしも別々に実施しなくてもよい。すなわち、上記の第1の製造方法で得られたイソインドリンボロン酸誘導体を単離精製することなく、第2の製造方法の原料として使用することもできる。
【実施例0091】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、下記に示す実施例は、例示的な具体例であって、本発明は、これらにより限定されるものではない。また、以下に示す例において、実施例1及び3は、上述した第1の製造方法に係る実施例であり、実施例2は、上述した第2の製造方法に係る実施例である。
【0092】
<実施例1>
(イソインドリンボロン酸誘導体の合成)
以下の方法で、前記式(1)で表されるイソインドリン誘導体として、下記反応式(1A)に表されるN-Boc-ブロモイソインドリン誘導体を使用して、式(2A)で表されるN-Boc-フリーボロン酸誘導体を合成した。
【0093】
【0094】
室内の照明下において、式(1A)に表されるN-Boc-ブロモイソインドリン誘導体(0.50g、1.60mmol)のメタノール(5mL、10v/w)溶液に、7℃で、tert-BuOK(0.36g、3.21mmol、2.0eq)を加え10分攪拌し溶解させた。その後、ビスボロン酸(BBA、0.72g、8.03mmol、5.0eq)を同温で加え、7℃で、4時間、25℃で、18時間それぞれ攪拌した。ここで、「v/w」は、式(1A)に示すN-Boc-ブロモイソインドリン誘導体1gに対する溶媒の体積(mL)を示す。以下、同様の説明は省略する場合がある。
【0095】
反応液へ、水(15mL)、及び酢酸エチル(15mL)を加えた後(pH7.9)、酢酸でpH:5.2に調整した。有機層を分離後、食塩水(10mL)で洗浄、硫酸マグネシウム上乾燥、減圧濃縮した。濃縮残渣をHPLC分析した結果、式(1A)に表されるN-Boc-ブロモイソインドリン誘導体は未検出となり、式(2A)に表されるN-Boc-フリーボロン酸誘導体が検出された(転化率100%)。なお、HPLC分析の詳細は、以下の通りである。
【0096】
(HPLC分析)
装置:ACQUITY UPLC(登録商標) H-CLASS PLUS (Waters)
サンプル濃度:0.5%THF
サンプル注入量:5μL
検出器:紫外可視吸光光度計(検出波長:210nm)
流速:1.0mL/分
カラム温度:30℃
移動相:10~10~100% アセトニトリル(0~10~15分)。
充填剤:X-Bridge C18 5μm、4.6×150mm
【0097】
また、各対象成分の保持時間は下記表1の通りとした。
【0098】
【0099】
<実施例2>
(N-Boc-ピナコールボロン酸誘導体の合成)
以下の方法で、前記式(2)で表されるイソインドリンボロン酸誘導体として、下記反応式(2A)に表されるN-Boc-フリーボロン酸誘導体を使用して、式(4A)に表されるN-Boc-ピナコールボロン酸保護誘導体を合成した。
【0100】
【0101】
室内の照明下において、実施例1で得た濃縮残渣(理論量0.44g、1.0eq、1.58mmol)の塩化メチレン(10mL、22.7v/w)溶液にピナコール(0.56g、3.0eq、4.73mmol)を加え25℃で2時間攪拌することにより、式(4A)に表されるN-Boc-ピナコールボロン酸保護誘導体を得た(アッセイ収率:N-Boc-ブロモイソインドリン誘導体から93%)。
【0102】
(NMR分光分析)
式(4A)で表されるN-Boc-ピナコールボロン酸保護誘導体のNMR分光の分析結果は、以下のとおりであった。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.10~8.0(m,3H)、4.40~5.30(m, 3H)、0.90~2.00(m,24H)。
【0103】
(HPLC分析)
実施例2で得られた式(4A)に表されるN-Boc-ピナコールボロン酸保護誘導体の収率を、HPLCを用いて測定した。なお、移動相を70~100% アセトニトリル(0~15分)とし、各対象成分の保持時間を下記表2の通りとしたこと以外は、実施例1で用いたものと同様の条件を用いた。
【0104】
【0105】
<実施例3>
(N-トリチル-ピナコールボロン酸誘導体の合成)
以下の方法で、前記式(1)で表されるイソインドリン誘導体として、下記反応式(1B)に表されるN-トリチル-ブロモイソインドリン誘導体を使用して、式(2B)に表されるN-トリチル-フリーボロン酸誘導体を合成した。
【0106】
【0107】
室内の照明下において、式(1B)に表されるN-トリチル-ブロモイソインドリン誘導体(0.10g、0.22mmol)のメタノール(0.76mL、7.6v/w)溶液にTHF(0.56mL、5.6v/w)を加えた。その後、7℃でtert-BuOK(50mg、0.44mmol、2.0eq)を加え15min攪拌した。次いで、25℃でBBA(100mg、1.11mmol、5.0eq)を加え氷温で2時間攪拌した。反応液をHPLC分析することにより、式(2B)に表されるN-トリチル-フリーボロン酸誘導体が検出された(転化率:50%)。
【0108】
(NMR分光分析)
式(2B)で表されるN-トリチル-フリーボロン酸誘導体の1H-NMRの分析結果は、以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3)δ:6.60~7.80(m,18H)、4.10~4.80(m, 3H)、1.40(d,J=6.3Hz,3H)。
【0109】
(HPLC分析)
実施例3で得られた式(2B)に表されるN-トリチル-フリーボロン酸誘導体の収率を、HPLCを用いて測定した。なお、各対象成分の保持時間を下記表3の通りとしたこと以外は、実施例2で用いたものと同様の条件を用いた。
【0110】
【0111】
<比較例1>
実施例3において、tert-BuOKの代わりに、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAOAc、0.59g、4.4mmol、2.0equiv.)を用いたこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、反応を行った。しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0112】
<比較例2>
実施例3において、反応溶媒をメタノール-THFからエタノールへと変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0113】
<比較例3>
実施例3において、反応溶媒をメタノール-THFからイソプロパノールへと変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0114】
<比較例4>
実施例3において、反応溶媒をメタノール-THFからエチレングリコールへと変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0115】
<比較例5>
実施例3において、反応溶媒をメタノール-THFからメチルセロソルブへと変更したこと以外は、実施例3と同様の操作で反応を行った。しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0116】
実施例1、3、及び比較例1~5の製造条件及び結果を下記の表4にまとめる。
【0117】