(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092848
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】プローブ、及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
G01B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205793
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】島岡 敦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】音田 光一
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA01
2F062CC03
2F062CC07
2F062EE01
2F062EE62
2F062GG61
2F062GG90
2F062HH01
2F062HH50
(57)【要約】
【課題】測定子の振動を、測定子の形状や設置環境、使用条件等に応じて減衰できるプローブ、及び測定装置を提供する。
【解決手段】プローブ5は、測定子51と、測定子51を揺動可能に保持するホルダー52と、測定子51の揺動を減衰させる減衰機構6と、を有し、減衰機構6は、入力信号の信号値により減衰性能が変化する。これにより、測定子51の形状や設置環境、使用条件等に応じて、減衰機構6に入力する入力信号を変更することで、測定子51の振れに対する減衰性能を変化させることができ、測定子51の形状や設置環境、使用条件等に応じた最適な減衰性能でプローブを使用することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定子と、
前記測定子を揺動可能に保持するホルダーと、
前記測定子の揺動を減衰させる減衰機構と、を有し、
前記減衰機構は、入力信号の信号値により減衰性能が変化する、プローブ。
【請求項2】
前記減衰機構は、
前記ホルダー及び前記測定子の一方に設けられて、前記入力信号が入力される駆動体と、
前記ホルダー及び前記測定子の間に保持され、前記駆動体への前記入力信号の入力により粘度が変化する機能性流体と、
を備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記ホルダーは、
前記測定子を第一方向に揺動可能に保持する第一部材と、
前記第一部材及び前記測定子を、前記第一方向に交差する方向に揺動可能に保持する第二部材と、を備え、
前記減衰機構は、
前記第一部材及び前記第二部材の一方に設けられて、前記入力信号が入力される駆動体と、
前記第一部材及び前記第二部材の間に保持され、前記駆動体への前記入力信号の入力により粘度が変化する機能性流体と、を含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記機能性流体は、磁場により粘度が変化する磁性流体であり、
前記駆動体は、前記入力信号として電流信号が入力されることで磁力を発生する電磁石である、
請求項2または請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記磁性流体の粘度を所定値以上に保持する永久磁石を、さらに備える、
請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
前記駆動体は、前記入力信号に応じた電圧を前記機能性流体に印加する電極であり、
前記機能性流体は、前記駆動体により印加される前記電圧に応じて粘度が変化する電気粘性流体である、
請求項2または請求項3に記載のプローブ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプローブと、
前記プローブの状態を検出するセンサー部と、
前記センサー部により検出される前記プローブの状態に応じて、前記減衰機構に前記入力信号を入力する制御部と、
を備える測定装置。
【請求項8】
前記センサー部は、前記プローブの振動を検出する振動センサーを含み、
前記制御部は、前記振動センサーで検出される前記振動の振幅に応じた前記入力信号を前記減衰機構に入力する、
請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記センサー部は、前記プローブの温度を検出する温度センサーを含み、
前記制御部は、前記温度センサーで検出される前記温度に応じた前記入力信号を前記減衰機構に入力する、
請求項7または請求項8に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象を測定する測定子を備えたプローブ、及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定子を保持するプローブを備え、測定子を測定対象に対して接触させることで測定対象の形状や表面性状を測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような測定装置のプローブでは、測定子が揺動可能に保持されている。例えば、特許文献1のプローブでは、スタイラス(測定子)の周方向に沿って120°間隔でインサートが形成され、このインサートにスタイラスホルダーにボールを介して保持されたローラが挿入されることで、スタイラスホルダーの中心軸にスタイラスが位置決めされる。そして、スタイラスの一端には、スタイラスホルダーとの間にスタイラスを軸方向に付勢するスプリングが配置されている。さらに、スタイラスの一端には、スタイラスホルダーとの間にインサートが配置され、当該インサートは、スタイラスが軸方向に振れた場合に、スプリングの作用に抵抗して、その中立位置へのスタイラスホルダーの戻りを遅くする。インサートとしては、例えば、凹部に対してフランジを有するインサートを挿入し、凹部内の(空気等の)流体がフランジによってシールされる構成とするもの、フルオロカーボンラバーなどのヒステリシスを示す材料により構成されるもの等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定子の振れに対して求められる減衰性能は、測定子の形状や測定対象の表面形状、測定方法等に変化する。
例えば、測定子の重量が重い場合、測定子の重量が軽い場合に比べて臨界減衰係数が高くなるので、軽量の測定子を用いる場合と同等の減衰機能を得るためには、高い減衰性能が適している。
また、てこ式懸架機構のプローブでは、長さが短いスタイラスに比べ、長さが長いスタイラスは、モーメントの影響を受けて変位に対して敏感になるため、高い減衰性能が適している。
さらに、プローブの移動速度が遅い低速測定に比べて、プローブの移動速度を速めた高速測定では、プローブに振動が生じやすくなるので、高い減衰性能が適している。
さらには、測定対象の表面に凹凸が多い場合では、測定対象の表面が滑らかな場合に比べて、測定子を敏感に測定対象の表面に追従させるために、低い減衰性能が適している。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載の減衰機構では、減衰機構における減衰機能を制御することができない。つまり、特許文献1で示される、凹部内にフランジを有するインサートを挿入する構成では、凹部内の圧力によって定まる一定の減衰性能となり、また、ヒステリシスを示す材料によりインサートを形成する場合では、当該材料の物性に応じた一定の減衰性能となる。減衰機構としては、その他、オイルダンパを用いる方法等が知られているが、いずれの場合も、一定の減衰機能しか有さず、上記のように、測定子の形状や重量、測定対象の表面形状、プローブの移動速度等に応じて、減衰性能を変更することができない。
【0006】
本発明は、測定子の振動を、測定子の形状や設置環境、使用条件等に応じて減衰できるプローブ、及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第一態様のプローブは、測定子と、前記測定子を揺動可能に保持するホルダーと、前記測定子の揺動を減衰させる減衰機構と、を有し、前記減衰機構は、入力信号の信号値により減衰性能が変化する。
【0008】
これにより、測定子の形状や設置環境、使用条件等に応じて、減衰機構に入力する入力信号を変更することで、測定子の振れに対する減衰性能を変化させることができ、測定子の形状や設置環境、使用条件等に応じた最適な減衰性能でプローブを使用することができる。
【0009】
本態様のプローブにおいて、前記減衰機構は、前記ホルダー及び前記測定子の一方に設けられて、前記入力信号が入力される駆動体と、前記ホルダー及び前記測定子の間に保持され、前記駆動体への前記入力信号の入力により粘度が変化する機能性流体と、を備えることが好ましい。
これにより、駆動体に入力信号を入力することで、機能性流体の粘度を入力信号に応じた粘度に変更でき、減衰機構の減衰性能を変更することができ、測定子のホルダーに対する揺動を適切に減衰させることができる。
【0010】
本態様のプローブにおいて、前記ホルダーは、前記測定子を第一方向に揺動可能に保持する第一部材と、前記第一部材及び前記測定子を、前記第一方向に交差する方向に揺動可能に保持する第二部材と、を備え、前記減衰機構は、前記第一部材及び前記第二部材の一方に設けられて、前記入力信号が入力される駆動体と、前記第一部材及び前記第二部材の間に保持され、前記駆動体への前記入力信号の入力により粘度が変化する機能性流体と、を含むことが好ましい。
本態様では、ホルダーが、測定子を揺動可能に保持する第一部材と、第一部材を揺動可能に保持する第二部材とを備える構成としてもよい。この場合、第一部材及び第二部材の一方に駆動体を設け、第一部材と第二部材との間に機能性流体を保持する。これにより、測定子を保持する第一部材の揺動に対する減衰性能を適切に制御することができる。
また、上述した態様のように、第一部材と測定子との間に減衰機構をさらに設けてもよく、これにより、測定子とホルダーの第一部材との間の減衰機構により第一方向への減衰性能を調整でき、第一部材と第二部材との間の減衰機構により第一方向に交差する方向への減衰性能を調整することができる。
【0011】
本態様のプローブにおいて、前記機能性流体は、磁場により粘度が変化する磁性流体であり、前記駆動体は、前記入力信号として電流信号が入力されることで磁力を発生する電磁石であることが好ましい。
これにより、駆動体である電磁石に対して、入力信号として入力する電流信号の電流値を変更することで、電磁石で励起させる磁力を変化させることができ、磁力の変化によって磁性流体(MR流体)の粘度を適切に調整することができる。
【0012】
本態様のプローブにおいて、前記磁性流体の粘度を所定値以上に保持する永久磁石を、さらに備えることが好ましい。
これにより、電磁石に電流信号を入力していない状態でも、磁性流体に一定の粘度を持たせることができ、磁性流体を定位置に保持することができる。
【0013】
本態様のプローブにおいて、前記駆動体は、前記入力信号に応じた電圧を前記機能性流体に印加する電極であり、前記機能性流体は、前記駆動体により印加される前記電圧に応じて粘度が変化する電気粘性流体である構成としてもよい。
このように、機能性流体として電気粘性流体(ER流体)を用いてもよく、駆動体として電気粘性流体に電圧信号を印加する電極を用いる。この場合でも、電気粘性流体に印加する電圧によって、電気粘性流体の粘度を変化させ、減衰性能を調整することができる。
【0014】
本発明の第二態様の測定装置は、上記第一態様のプローブと、前記プローブの状態を検出するセンサー部と、前記センサー部により検出される前記プローブの状態に応じて、前記減衰機構に前記入力信号を入力する制御部と、を備える。
これにより、センサー部によって検出されるプローブ状態に応じて、自動で減衰機構における減衰性能を調整することができる。
【0015】
本態様の測定装置において、前記センサー部は、前記プローブの振動を検出する振動センサーを含み、前記制御部は、前記振動センサーで検出される前記振動の振幅に応じた前記入力信号を前記減衰機構に入力することが好ましい。
この場合、プローブを高速移動させる場合等で振動振幅が大きくなる場合には、減衰性能を大きくすることができ、プローブを低速移動させる場合等では、減衰性能を小さくすることができる。
【0016】
本態様の測定装置において、前記センサー部は、前記プローブの温度を検出する温度センサーを含み、前記制御部は、前記温度センサーで検出される前記温度に応じた前記入力信号を前記減衰機構に入力することが好ましい。
環境温度の変化によってプローブの温度が変化する場合、減衰機構として機能性流体を用いる場合の当該機能性流体の粘度が変化する。これに対して、本態様では、温度センサーによって検出される温度に応じて機能性流体の粘度を変化させることができ、プローブが正常に作動するように、適切な減衰性能を制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、プローブを使用する環境に応じて、減衰機構に入力する入力信号を変更することで、測定子の振れに対する減衰性能を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態の形状測定装置の構成を模式的に示す斜視図。
【
図2】第一実施形態の形状測定装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】第一実施形態のプローブの概略構成を示す断面図。
【
図6】第一実施形態の第一減衰部の概略構成を示す断面図。
【
図7】第一実施形態の第二減衰部の概略構成を示す断面図。
【
図8】第一実施形態において、プローブをZ方向から見た投影視における、第一減衰部及び第二減衰部の配置位置を示す概略図。
【
図9】第二実施形態の第一減衰部の概略構成を示す断面図。
【
図10】第二実施形態の第二減衰部の概略構成を示す断面図。
【
図11】本発明に係る測定装置の他の構成例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態の形状測定装置1の構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、形状測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の形状測定装置1は、ワークWの形状等を測定する三次元測定機であり、ステージ3に設けられた移動機構4と、移動機構4により3軸方向(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向)に移動可能なプローブ5と、形状測定装置1の内部などに設けられたコントローラ8(
図2参照)と、を備える。
【0020】
ステージ3には、被測定物であるワークWが載置される。
【0021】
移動機構4は、プローブ5を三次元空間の任意の位置に移動させる。この移動機構4は、プローブ5を任意の位置に移動させる構成であれば、いかなる構成であってもよい、
例えば、本実施形態では、
図1に示すように、移動機構4は、プローブ5を移動させるための構成として、ガイド41、コラム42、サポータ43、ビーム44、Xスライダ45、およびZスライダ46を備える。
ガイド41は、ステージ3の+X側において、ステージ3に対してY軸方向に沿って設けられ、コラム42は、ガイド41に対してY軸方向にスライド移動可能に設けられる。サポータ43は、ステージ3の-X側において、ステージ3に対してエアベアリング等を介して設けられる。ビーム44は、コラム42とサポータ43との間にX方向に沿って架橋される。Xスライダ45は、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム44上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる。Zスライダ46は、Xスライダ45の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる。Zスライダ46の先端部には、プローブ5が固定される。
【0022】
また、移動機構4は、コラム42をY軸方向に駆動するY軸駆動部41Aと、Xスライダ45をX軸方向に駆動するX軸駆動部44Aと、Zスライダ46をZ軸方向に駆動するZ軸駆動部45Aと、を備える。Y軸駆動部41A、X軸駆動部44AおよびZ軸駆動部45Aは、それぞれ、図示略の駆動源、および、駆動源から供給される駆動力を伝達する駆動伝達機構を含んで構成される。
【0023】
また、移動機構4には、コラム42、Xスライダ45、およびZスライダ46の各軸方向の位置、すなわちステージ3上におけるプローブ5の座標を検出するための座標検出機構48(
図2参照)が設けられている。
例えば、座標検出機構48は、コラム42に設けられたY軸スケールセンサと、Xスライダ45に設けられたX軸スケールセンサと、Zスライダ46に設けられたZ軸スケールセンサとを含む機構であり、各センサーからスケール信号Sx,Sy,Szを出力する。
【0024】
プローブ5は、ワークに接触可能な測定子51を有する。プローブ5の具体的構成については後述するが、プローブ5は、測定子51の先端球512AがワークWの表面形状に沿って接触した際、測定子51がXYZ方向に変位可能となるように保持する。
【0025】
[プローブの構成]
図3は、プローブ5の構成を示す断面図である。
プローブ5は、
図3に示すように、測定子51と、測定子51を揺動可能に保持するホルダー52と、ホルダー52に対する測定子51の変位を検出する変位検出機構53と、測定子51の揺動を減衰させる減衰機構6と、センサー部7(
図2参照)と、を備えている。
【0026】
(測定子51の構成)
測定子51は、移動部材511と、スタイラス512と、を備える。
移動部材511は、ホルダー52に設けられた収納空間において中心軸Cに沿って配置されている。この移動部材511は、主軸部511Aと、主軸部511Aの下端に設けられたスタイラス取付部511Bと、主軸部511Aの上端に設けられたセンサー取付部511Cと、を有する。
主軸部511Aは、中心軸Cに沿って長手となる略棒状部材である。
スタイラス取付部511Bは、スタイラス512を着脱可能に固定する部分である。
センサー取付部511Cは、変位検出機構53を構成するセンサー素子531(例えばデフレクタ)が固定される。
なお、本実施形態において、中心軸Cはスタイラス512が配置される軸であって、Z軸に平行な軸となるが、これに限定されない。例えば、プローブがZ軸に対する中心軸Cの角度を任意の角度に変更する角度調整部を備えていてもよい。
【0027】
スタイラス512は、ワークWの表面に接触させる先端球512Aを有する棒状部材である。スタイラス512は、上述のように、スタイラス取付部511Bに固定され、中心軸Cに沿って配置されている。
本実施形態は、後述する減衰機構6として磁界を用いて測定子51の振動を減衰させる機構を用いる。このため、測定子51である移動部材511及びスタイラス512は、磁界の影響を抑制するべく、非磁性部材により構成されていることが好ましい。
【0028】
(ホルダー52の構成)
ホルダー52は、外筒部521と、基部522と、内筒部523とを含んで構成されている。これらの外筒部521、基部522、及び内筒部523は、測定子51と同様、非磁性部材により構成されていることが好ましい。
外筒部521は、本発明の第二部材に相当し、中心軸Cを中心とする筒状に構成され、筒内部に内筒部523及び測定子51を収納する収納空間を形成する。外筒部521を中心軸Cに対して直交する方向(XY平面)で断面した場合の、外筒部521の断面形状は特に限定されず、円環状であってもよく、矩形枠状であってもよい。本実施形態では、外筒部521が円筒状である例を示す。
また、外筒部521は、筒内周面から径方向内側に突出する外筒フランジ521Aを備える。この外筒フランジ521Aは、外筒部521の筒内周面の周方向に亘って環状に形成されていてもよく、中心軸Cを中心として等角度間隔(回転対称)で複数配置されていてもよい。
【0029】
基部522は、外筒部521の中心軸Cに沿うZ方向の一端(上端である+Z側)に設けられ、当該一端を閉塞する。基部522は、プローブ固定部522Aを有し、当該プローブ固定部522Aは、Zスライダ46に固定される。
また、基部522の収容空間に臨む面と中心軸Cとの交点には、変位検出機構53を構成する検出器532が設けられている。
【0030】
内筒部523は、本発明の第一部材に相当し、中心軸Cを中心とする筒状に形成されている。内筒部523を中心軸Cに対して直交する方向で断面した場合の、内筒部523の断面形状は特に限定されず、円環状であってもよく、矩形枠状であってもよい。本実施形態では、内筒部523が円筒状である例を示す。内筒部523の中心軸Cに直交する方向(XY平面)の外径は、外筒部521の収容空間を形成する内周面の内径よりも小さい。
【0031】
この内筒部523は、外筒部521に対して、XYダイアフラム524により揺動可能に保持されている。
XYダイアフラム524は、弾性変形が可能な膜状または薄板状の部材であり、測定子51が変位していない状態で、XY平面に平行に配置され、測定子51を保持する内筒部523をXY方向に揺動可能に保持する。
【0032】
図4は、XYダイアフラム524の一例を示す平面図である。
例えば、XYダイアフラム524は、
図4に示すように、周方向で位相が180度異なる2つの円弧形状の切り抜き部524Aが設けられ、2つのヒンジ部524Bが形成されている。切り抜き部524Aの径方向内側には、更に周方向で位相が180度異なる2つの円弧形状の切り抜き部524Cが設けられ、2つのヒンジ部524Dが形成されている。切り抜き部524A,524Cにより、XYダイアフラム524の径方向外側から内側に向かって、外周部524Eとリム部524Fと524Gとが設けられている。
外周部524Eは、外筒部521の内周面に固定される。リム部524Fは、径方向の両側に設けられた切り抜き部524A,524Cにより周方向に帯状とされ、ヒンジ部524Bで外周部と連結され、ヒンジ部524Dで中心部524Gと連結されている。中心部524Gは、内筒部523の筒外周面に固定され、内筒部523を支持する。
切り抜き部524Aと切り抜き部524Cとは位相が90度異なる。これにより、XYダイアフラム524の中心(中心軸CとXYダイアフラム524が配置される平面との交点)を軸として、中心部524Gは互いに直交する2方向(例えばX方向、及びY方向)に傾斜可能、つまり、Z方向に直交するXY平面で揺動可能な構造となっている。なお、本実施形態において、Z方向は、本発明の第一方向に相当し、XY平面内のZ方向に直交する方向は、本発明の第二方向に相当する。
なお、
図4は、XYダイアフラム524の一例であり、内筒部523をZ方向に交差する方向に揺動可能に保持する構成であれば、いかなる形状に形成されていてもよい。
【0033】
図3に戻り、内筒部523は、筒外周面から径方向外側に突出する内筒フランジ523Aを備える。この内筒フランジ523Aは、内筒部523の筒外周面の周方向に亘って鍔状(環状)に形成されていてもよく、中心軸Cを中心として等角度間隔(回転対称)で複数配置されていてもよい。そして、内筒フランジ523Aは、外筒フランジ521Aに対し、中心軸Cと平行なZ方向で対向する。ここで、
図3では、外筒フランジ521Aが内筒フランジ523Aの上側(+Z側)に位置する例を示すが、外筒フランジ521Aが内筒フランジ523Aの-Z側に配置される構成としてもよい。
これらの内筒フランジ523Aと外筒フランジ521Aとの間には、測定子51のXY方向への揺動を減衰させる第一減衰部6Aが設けられている。第一減衰部6Aについての説明は後述する。
【0034】
内筒部523の筒内周側は、測定子51の移動部材511が挿通される収容空間を形成する。そして、内筒部523の中心軸Cに沿う方向の両端部、つまり、内筒部523の筒開口端には、それぞれZダイアフラム525が設けられている。そして、測定子51の移動部材511は、内筒部523に対して、Zダイアフラム525により揺動可能に保持されている。
Zダイアフラム525は、弾性変形が可能な膜状または薄板状の部材であり、測定子51が変位していない状態で、XY平面に平行に配置され、測定子51をZ方向に揺動可能に保持する。
なお、Zダイアフラム525が設けられる位置として、本実施形態では、内筒部523の開口端を例示するが、これに限定されず、開口端から離れた位置であってもよく、さらに、Zダイアフラム525が3つ以上設けられていてもよい。
【0035】
図5は、Zダイアフラム525の一例を示す平面図である。
例えば、Zダイアフラム525は、
図4に示すように、周方向で位相が120度ずれた3つの切り抜き部525Aが設けられ、切り抜き部525Aによって、Zダイアフラム525の径方向外側から内側に向かって、外周部525Bとリム部525Cと中心部525Dとが設けられている。
外周部525Bは、内筒部523に固定される。リム部525Cは、隣接する切り抜き部525Aによって周方向に帯状となり、外周部525Bと中心部525Dとを連結する。中心部525Dは、移動部材511に固定され、移動部材511を支持する。
移動部材511のZ方向への揺動により、Zダイアフラム525の中心部525DがZ方向に沿って揺動し、リム部525Cが弾性変形する構造となる。
なお、
図5は、Zダイアフラム525の一例であり、移動部材511をZ方向に揺動可能に保持する構成であれば、いかなる形状に形成されていてもよい。
【0036】
図3に戻り、内筒部523の内周面と、移動部材511との間には、移動部材511のZ方向への揺動を減衰させる第二減衰部6Bが設けられている。第二減衰部6Bについての説明は後述する。
【0037】
変位検出機構53は、ホルダー52に対する測定子51のスタイラス512の位置を検出する。この変位検出機構53は、例えば、センサー取付部511Cに設けられるセンサー素子531(例えばデフレクタ)と、基部522に設けられる検出器532とにより構成される。この変位検出機構53では、検出器532からセンサー素子531に光を照射し、センサー素子531で反射された光を検出器532で検出することで、センサー素子531の位置を検出する。変位検出機構53は、従来技術(例えば特開2017-116520号公報参照)を利用可能であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0038】
(減衰機構6の構成)
減衰機構6は、測定子51の揺動を減衰させる装置であり、本実施形態では、減衰機構6は、第一減衰部6Aと、第二減衰部6Bとを含む。
図6は、第一減衰部6Aの概略構成を示す断面図である。
第一減衰部6Aは、上述したように、外筒部521の外筒フランジ521Aと、内筒部523の内筒フランジ523Aとの間に設けられ、Z方向に直交するXY平面内での測定子51の振動等の変位を減衰させる。
具体的には、第一減衰部6Aは、
図6に示すように、外筒フランジ521Aに設けられる第一ヨーク61Aと、第一電磁石62Aと、機能性流体であるMR流体63A(Magneto Rheological Fluid;磁性流体)と、を備える。
【0039】
第一ヨーク61Aは、鉄等の磁性部材により形成され、例えばベース部611A、突出部612A、及び芯部613Aを備えて構成され、内筒フランジ523Aに対向して配置される。
ベース部611Aは、外筒フランジ521Aの内筒フランジ523Aに対向する面に固定される。ベース部611Aの形状は特に限定されず、例えば円板状であってもよく、矩形板状であってもよい。
突出部612Aは、ベース部611Aの外周縁に沿って設けられ、内筒フランジ523Aに向かって突出する枠状の部分であり、内筒フランジ523Aに所定の第一寸法の隙間を介して対向する。
芯部613Aは、ベース部611Aの中心に設けられて内筒フランジ523Aに向かって突出する。この芯部613Aは、第一電磁石62Aの鉄芯を構成し、内筒フランジ523Aに対して所定の第二寸法の隙間を介して対向する。なお、第二寸法は、第一寸法と同一寸法であってもよく、第一寸法より小さくてもよく、大きくてもよい。すなわち、第一電磁石62Aにより磁力を励起させた際に、
図6に示すような閉じた磁気回路が形成されればよく、これらの寸法は特に限定されない。
【0040】
第一電磁石62Aは、第一ヨーク61Aの芯部613Aと、第一コイル621Aとにより構成され、本発明の駆動体に相当する部材である。第一コイル621Aは、第一電流制御回路91に接続されており、第一電流制御回路91から第一コイル621Aに入力信号(電流信号)が入力されることで、電流値に応じた磁力を励起させる。
なお、第一電流制御回路91は、第一コイル621Aに入力する電流信号の信号値(電流値)を変更可能な回路である。
【0041】
MR流体63Aは、液体中に強磁性体の微粒子が均一に分散している機能性流体であり、第一ヨーク61Aと内筒フランジ523Aとの間に保持されている。MR流体63Aは、第一電磁石62Aにより励起される磁力によって、粘度が変更される。つまり、第一電磁石62Aに入力する電流信号に応じて、測定子51がXY方向に変位する場合の減衰性能を変更することが可能となる。
【0042】
このような、本実施形態の第一減衰部6Aは、第一電磁石62Aで磁力を励起させると、芯部613A、MR流体63A、突出部612A、及びベース部611Aを経て、芯部613Aに戻る閉じた磁気回路が形成される。これにより、第一電磁石62Aで励起された磁力が、第二減衰部6B、変位検出機構53、及びスタイラス512等のプローブ5の他の部位に影響を及ぼす不都合を抑制できる。
【0043】
また、第一減衰部6Aとして、第一電磁石62Aへの電流を止めた場合に、MR流体63Aを定位置に保持させる永久磁石64Aを別途設けることが好ましい。第一電磁石62Aへの通電により芯部613Aの先端がN極となる場合、突出部612Aに対向する面がS極となるように、永久磁石64Aを配置する。これにより、第一減衰部6Aの外周部である、突出部612Aと内筒フランジ523Aとの間のMR流体63Aの粘度を高くすることで、MR流体63Aの流出を防止できる。
【0044】
図7は、第二減衰部6Bの概略構成を示す断面図である。
第二減衰部6Bは、上述したように、測定子51の移動部材511の外周面と、内筒部523の内周面との間に設けられ、Z方向の測定子51の振動等の変位を減衰させる。
具体的には、第二減衰部6Bは、
図7に示すように、内筒部523の内周面に設けられる第二ヨーク61Bと、第二電磁石62Bと、機能性流体であるMR流体63B(Magneto Rheological Fluid;磁性流体)と、を備える。
【0045】
第二ヨーク61Bは、鉄等の磁性部材により形成され、例えば内筒部523の内周面に沿った円弧曲面状のベース部611B、突出部612B、及び芯部613Bを備えて構成され、移動部材511に対向して配置される。
ベース部611Bは、内筒部523の内周面に固定される。ベース部611Bの形状は特に限定されず、例えば円板状であってもよく、矩形板状であってもよい。
突出部612Bは、ベース部611Bの外周縁に沿って設けられ、移動部材511に向かって突出する枠状の部分であり、移動部材511に所定の第三寸法の隙間を介して対向する。
芯部613Bは、ベース部611Bの中心に設けられて移動部材511に向かって突出する。この芯部613Bは、第二電磁石62Bの鉄芯を構成し、移動部材511に対して所定の第四寸法の隙間を介して対向する。なお、第四寸法は、第三寸法と同一寸法であってもよく、第三寸法より小さくてもよく、大きくてもよい。すなわち、第二電磁石62Bにより磁力を励起させた際に、
図7に示すような閉じた磁気回路が形成されればよく、これらの寸法は特に限定されない。
【0046】
第二電磁石62Bは、第二ヨーク61Bの芯部613Bと、第二コイル621Bとにより構成され、本発明の駆動体に相当する部材である。第二コイル621Bは、第二電流制御回路92に接続されており、第二電流制御回路92から第二コイル621Bに入力信号(電流信号)が入力されることで、電流値に応じた磁力を励起させる。
なお、第二電流制御回路92は、第二コイル621Bに入力する電流信号の信号値、つまり、電流値を変更可能な回路である。
【0047】
MR流体63Bは、第一減衰部6Aと同様、液体中に強磁性体の微粒子が均一に分散している機能性流体であり、第二ヨーク61Bと移動部材511との間に保持されている。このため、第二電磁石62Bに入力する電流信号に応じて、MR流体63Bの粘度が変化し、測定子51がZ方向に変位する場合の減衰性能を変更することが可能となる。
【0048】
このような、本実施形態の第二減衰部6Bは、
図7の矢印にて示すように、第二電磁石62Bで磁力を励起させると、芯部613B、MR流体63B、突出部612B、及びベース部611Bを経て、芯部613Bに戻る閉じた磁気回路が形成される。これにより、第二電磁石62Bの磁力が、第一減衰部6A、変位検出機構53、及びスタイラス512等のプローブ5の他の部位に影響を及ぼす不都合を抑制できる。
【0049】
また、第二減衰部6Bとして、第二電磁石62Bへの電流を止めた場合に、MR流体63Bを定位置に保持させる永久磁石64Bを別途設けることが好ましい。永久磁石64Bを設ける位置としては特に限定されない。例えば、
図7のように、永久磁石64Bは、第二ヨーク61Bの突出部612Bの先端に配置することが好ましい。このような構成では、第二減衰部6Bの外周部である、突出部612Bと移動部材511との間のMR流体63Bの粘度を高くすることができ、MR流体63Bの流出を防止できる。
【0050】
図8は、プローブ5をZ方向から見た投影視における、第一減衰部6A及び第二減衰部6Bの配置位置を示す概略図である。
図8に示すように、プローブ5には、複数の第一減衰部6Aが配置されており、複数の第一減衰部6Aは、測定子51の中心、つまり、中心軸Cに対して対称となる位置に配置されている。
例えば、本実施形態では、
図8に示すように、X軸上に一対の第一減衰部6Aが、中心軸Cを挟んで点対称に配置され、Y軸上に他の一対の第一減衰部6Aが、中心軸Cを挟んで点対称に配置されている。つまり、4つの第一減衰部6Aが中心軸Cに対して90°間隔の回転対称に配置される。
なお、第一減衰部6Aの配置としては、上記に限定されない。第一減衰部6Aが中心軸Cに対して等角度間隔で配置されていれば、その角度は特に限定されず、例えば30°間隔等で配置されていてもよい。さらには、第一減衰部6Aが、中心軸Cを中心とした環状に形成されていてもよい。
このような構成とすることで、第一電磁石62Aへの電流信号の入力によって第一電磁石62Aに熱が発生した場合でも、当該熱の影響がプローブ5に均一に伝搬され、熱による影響を低減できる。つまり、プローブ5が熱変形する場合があるが、当該熱が均一に伝搬されることで、プローブの熱変形量も中心軸Cを中心として対称となり、熱変形による誤差を相殺することができる。
【0051】
第二減衰部6Bについても同様であり、複数の第二減衰部6Bが中心軸Cを中心として、対称に配置されている。例えば、本実施形態では、
図8に示すように、第二減衰部6Bは、中心軸Cを中心として120°間隔となる回転対称に配置される。なお、第二減衰部6Bの配置としては、上記に限定されない。第二減衰部6Bが中心軸Cに対して等角度間隔で配置されていれば、その角度は特に限定されず、例えば30°間隔等で配置されていてもよい。さらには、第二減衰部6Bが、中心軸Cを中心とした環状に形成されていてもよい。
これにより、第二電磁石62Bに電流信号を入力することで、第二電磁石62Bで熱が発生した場合でも、当該熱の影響がプローブ5に均一に伝搬され、熱による影響を低減できる。
【0052】
(センサー部7の構成)
センサー部7は、プローブ5の状態を検出する複数のセンサーを備える。
例えば、本実施形態では、
図2に示すように、プローブ5の温度を検出する温度センサー71、プローブ5の振動を検出する振動センサー72を備える。
温度センサー71が設けられる位置は、プローブ5内であれば特に限定されず、例えば、第一減衰部6Aや第二減衰部6Bの近傍位置に設けられていてもよく、第一減衰部6Aと第二減衰部6Bとの間に設けられていてもよい。
振動センサー72は、例えば加速度センサー等により構成され、プローブ5の振動を検出する。振動センサー72が設けられる位置は特に限定されず、プローブ5のホルダー52に設けられていてもよく、測定子51に設けられていてもよい。また、プローブ5を保持するZスライダ46や、Zスライダ46を保持するXスライダ45に振動センサー72が設けられていてもよい。
【0053】
(コントローラ8の構成)
コントローラ8は、本発明の制御部に相当し、形状測定装置1の動作を制御する。例えば、形状測定装置1は、図示略の外部コンピュータに接続されており、コントローラ8は、当該外部コンピュータから入力される測定指令に基づいて、測定処理を実施する。
このコントローラ8は、例えば、移動機構4の駆動を制御する制御ドライバ回路、座標検出機構48の各スケールセンサ、変位検出機構53、第一減衰部6Aを制御する第一電流制御回路91、第二減衰部6Bを制御する第二電流制御回路92、及びセンサー部7の各種センサーと通信可能に接続されている。
そして、コントローラ8は、
図2に示すように、移動制御部81、座標検出部82、接触判定部83、測定部84、減衰制御部85、及び記憶部86を備えている。これらの移動制御部81、座標検出部82、接触判定部83、測定部84、及び減衰制御部85は、回路等のハードウェアにより構成されていてもよく、CPU(Central Processing Unit))などの演算手段が、記憶部86に記憶されたソフトウェアプログラムを読み込み実行することで機能する機能構成であってもよい。
【0054】
移動制御部81は、形状測定装置1に接続された外部コンピュータから入力される測定指示などに従って移動機構4の動作を制御する。例えば、ワークWをタッチ測定する場合、移動制御部81は、測定経路に設定された測定点ごとに先端球512AがワークWに接触するように、移動機構4の動作を制御する。なお、測定経路は、形状測定装置1に接続される外部コンピュータがCADデータ等に基づいて算出してもよく、移動制御部81が算出してもよい。
【0055】
座標検出部82は、座標検出機構48から入力されるスケール信号Sx,Sy,Szをカウントすることで、プローブ5の座標を検出する。
【0056】
接触判定部83は、変位検出機構53から入力される検出信号(X-Y回転位置検出信号Sd-xy、Z位置検出信号Sd-z)に基づいて、先端球512AのワークWへの接触を検出する。
【0057】
測定部84は、ワークWに先端球512Aが接触したタイミングでの、変位検出機構53からの検出信号と、座標検出部82に検出されたプローブ5の座標とに基づいて、ワークWの先端球512Aが接触した測定点の座標を測定する。測定値は、記憶部86に記憶される。
【0058】
減衰制御部85は、センサー部7の各種センサーにより検出されたプローブの状態に基づいて、第一減衰部6A及び第二減衰部6Bにおける減衰性能を制御する。
例えば、温度が高くなる程、MR流体63A,63Bの粘度が低下する場合、減衰制御部85は、温度センサー71で検出される温度が高くなるにしたがって、第一減衰部6A及び第二減衰部6Bの減衰性能を高める(減衰率を高くする)。すなわち、減衰制御部85は、第一電流制御回路91から第一減衰部6Aの第一電磁石62Aに入力する電流信号、及び、第二減衰部6Bの第二電磁石62Bに入力する電流信号を大きくする。温度センサー71で検出される温度に対して、第一電磁石62Aに入力する電流信号、及び、第二電磁石62Bに入力する電流信号は、それぞれ、記憶部86にテーブルデータとして記憶しておけばよい。
【0059】
また、形状測定装置1において、ワークWの測定を行う場合、ワークWの設計データに基づいて移動経路を設定した設計値倣い測定と、設計データがないワークWに対してプローブ5を接触させる自律倣い測定とを行う場合がある。設計値倣い測定では、プローブ5を高速で移動させる高速測定を実施できるが、自律倣い測定では、プローブ5やワークWの破損を防止するため、設計値倣い測定に比べて、プローブ5の移動速度を低速にした低速測定を実施する。設計値倣い測定では、プローブ5を高速で移動させることから、低速移動の自律倣いに比べて、プローブ5に発生する振動も大きくなる。
本実施形態では、振動センサー72により、プローブ5に加わる振動を検出でき、減衰制御部85は、振動センサー72により検出される振動の大きさ(振幅)に応じて、振動が大きくなる程、第一減衰部6A及び第二減衰部6Bの減衰性能を高くする。振動センサー72で検出される振動に対して、第一電磁石62Aに入力する電流信号、及び、第二電磁石62Bに入力する電流信号は、それぞれ、記憶部86にテーブルデータとして記憶しておけばよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、第一減衰部6Aを制御する第一電流制御回路91と、第二減衰部6Bを制御する第二電流制御回路92とが、それぞれ独立している。したがって、減衰制御部85は、第一電流制御回路91及び第二電流制御回路92にそれぞれ異なる指令を出力し、第一減衰部6Aと第二減衰部6Bとの減衰性能を個別に制御することができる。例えば、第一減衰部6Aの近傍、及び第二減衰部6Bの近傍のそれぞれに温度センサー71を配置し、各々の温度センサー71の検出温度に基づいて、第一減衰部6Aの減衰性能と、第二減衰部6Bの減衰性能をそれぞれ異なる値としてもよい。
振動センサー72についても同様であり、XY平面での振動を検出する振動センサー72と、Z方向の振動を検出する振動センサー72とをそれぞれ設ける構成としてもよい。この場合、減衰制御部85は、XY平面での振動の大きさに基づいて、第一減衰部6Aの減衰性能を制御し、Z方向での振動の大きさに基づいて、第二減衰部6Bの減衰性能を制御してもよい。
【0061】
記憶部86は、上述したように、減衰制御部85で減衰機構6(第一減衰部6A、第二減衰部6B)を制御する際のテーブルデータが記憶される。例えば、各温度、各振動の大きさに対して、第一電磁石62Aに入力する電流信号、第二電磁石62Bに入力する電流信号がそれぞれ記憶されたテーブルデータが記憶される。
【0062】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態のプローブ5は、測定子51と、測定子51を揺動可能に保持するホルダー52と、測定子51の揺動を減衰させる減衰機構6と、を有し、減衰機構6は、入力信号の信号値により減衰性能が変化する。
このため、プローブ5を使用する環境に応じて、減衰機構6に入力する入力信号を変更することで、測定子51の振れに対する減衰性能を変化させることができ、測定子の振動を、測定子の形状や設置環境、使用条件等に応じた最適な減衰性能でプローブ5を使用することができる。
【0063】
本実施形態では、減衰機構6の第二減衰部6Bは、ホルダー52の内筒部523に設けられた駆動体として第二電磁石62Bと、ホルダー52の内筒部523及び測定子51の移動部材511の間に保持されて、第二電磁石62Bへの電流信号の入力により粘度が変化する機能性流体であるMR流体63Bと、を備える。
これにより、第二電磁石62Bに電流信号を入力することで、MR流体63Bの粘度を変更でき、第二減衰部6Bの減衰性能を変更することができ、測定子51のZ方向の振動を適切に減衰させることができる。
【0064】
本実施形態では、ホルダー52は、測定子51をZ方向に揺動可能に保持する第一部材としての内筒部523と、内筒部523及び測定子51をZ方向に直交するXY平面に沿う方向に揺動可能に保持する第二部材としての外筒部521とを備える。そして、減衰機構6の第一減衰部6Aは、外筒部521の外筒フランジ521Aに設けられた駆動体としての第一電磁石62Aと、外筒フランジ521A及び内筒部523の内筒フランジ523Aの間に保持されて、第一電磁石62Aへの電流信号の入力により粘度が変化する機能性流体であるMR流体63Aと、を備える。
これにより、第一電磁石62Aに電流信号を入力することで、MR流体63Aの粘度を変更でき、第一減衰部6Aの減衰性能を変更することができ、測定子51のXY平面に沿った振動を適切に減衰させることができる。
【0065】
本実施形態では、上述したように、機能性流体として、MR流体63A,63Bを用い、駆動体として電磁石62A,62Bを用いる。このような構成では、電磁石62A,62Bに入力する電流信号を変更するだけで、電磁石62A,62Bで励起させる磁力を容易に変更でき、MR流体63A,63Bの粘度を容易に変更することができる。したがって、減衰機構6の構成を簡素化でき、配置スペースが限られるプローブ5のホルダー52内に収納することができる。
【0066】
本実施形態では、第一減衰部6Aには、MR流体63Aの粘度を所定値以上に保持する永久磁石64Aが設けられ、第二減衰部6Bには、MR流体63Bの粘度を所定値以上に保持する永久磁石64Bが設けられている。
これにより、電磁石62A,62Bに電流信号を入力していない状態でも、MR流体63A,63Bに一定の粘度を持たせることができ、MR流体63A,63Bの流出を抑制できる。
【0067】
また、本実施形態の形状測定装置1は、プローブ5の状態を検出するセンサー部7と、コントローラ8とを備え、コントローラ8は、センサー部7により検出されるプローブ5の状態に応じて、減衰機構6に入力信号を入力する減衰制御部85と、を有する。
これにより、センサー部7によって検出されるプローブの状態に応じて、自動で、減衰機構6における減衰性能を適切な値に調整することができる。
【0068】
より具体的には、センサー部7は、プローブの振動を検出する振動センサー72を含む。そして、減衰制御部85は、振動センサー72で検出される振動の振幅に応じた電流信号を第一減衰部6Aや第二減衰部6Bに入力する。
これにより、例えば、プローブを高速移動させる等によって、プローブの振動の振幅が大きくなる場合に、減衰性能を高めることができ、プローブの振動を抑制できる。また、プローブを低速移動させる場合等では、減衰性能を低減させることができ、例えば、自律倣い測定で、ワークWの表面に沿ってスタイラス512を移動させる時に、スタイラスを高い追従性でワークWの表面上を移動させることができる。
【0069】
また、センサー部7は、プローブ5の温度を検出する温度センサー71を含む。そして、減衰制御部85は、温度センサー71で検出される温度に応じた電流信号を第一減衰部6A及び第二減衰部6Bに入力する。
MR流体63A,63Bは、環境温度の変化によって粘度が変化する。これに対して、本実施形態では、温度センサー71によって検出される温度に応じてMR流体63A、63Bの粘度を変化させることができる。例えば、温度が変化してもMR流体63A,63Bの粘度を一定値に維持するように制御することもでき、プローブ5の動作を安定させることができる。
【0070】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、機能性流体としてMR流体を用い、減衰機構6における減衰性能を電磁石62A,62Bで励起させる磁力により制御した。これに対して、第二実施形態では、機能性流体として、電気粘性流体を用いる点で、上記第一実施形態と相違する。
なお、以降の説明にあたり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0071】
図9は、本実施形態の第一減衰部6Cの概略構成を示す図である。
本実施形態の第一減衰部6Cは、第一実施形態の第一減衰部6Aの代わりに用いられ、外筒部521の外筒フランジ521Aと、内筒部523の内筒フランジ523Aとの間に設けられ、Z方向に直交するXY平面内での測定子51の振動等を減衰させる。
具体的には、第一減衰部6Cは、
図7に示すように、外筒フランジ521Aに設けられる第一電極66Aと、内筒フランジ523Aに設けられる第二電極67Aと、機能性流体であるER流体68A(Electro-Rheology Fluid;電気粘性流体)と、を備える。
【0072】
第一電極66Aは、導電性部材により形成され、第二電極67Aに対向して配置される。第一電極66Aは、外筒フランジ521Aの内筒フランジ523Aに対向する面に固定される。本実施形態では、測定子51やホルダー52への帯電を防止するため、これらの測定子51やホルダー52を非導電部材により形成する、或いは、絶縁部材を介して、第一電極66Aを外筒フランジ521Aに固定することが好ましい。
第一電極66Aの形状は特に限定されず、例えば円板状であってもよく、矩形板状であってもよい。
【0073】
第二電極67Aは、内筒フランジ523Aにおいて、第一電極66Aに対して隙間を介して対向して配置される導電性部材である。第二電極67Aは、Z方向から見た平面視において、第一電極66Aよりも大きく形成されている。つまり、Z方向からの平面視において、第二電極67Aの外周縁の内側に、第一電極66Aの外周縁が位置する。Z方向から見た平面視における、第二電極67Aの外周縁と第一電極66Aの外周縁との距離は、例えば、測定子51のXY方向への変位許容量に設定されている。これにより、測定子51がXY方向に変位した場合でも、第二電極67Aは、第一電極66Aに対向する。
第一電極66A及び第二電極67Aは、本発明の駆動体を構成する。
【0074】
ER流体68Aとしては、第一電極66Aと第二電極67Aとの間に保持されており、第一電極66Aと第二電極67Aとの間に電圧を印加することで、粘度が変更される。このようなER流体としては、液晶等が例示でき、電圧の印加によって液晶配向性を変化させることで、粘度が変化する。
本実施形態の第一減衰部6Cでは、第一電極66A及び第二電極67Aは、それぞれ、第一電圧制御回路93に接続されており、第一電圧制御回路93から、第一電極66A及び第二電極67Aの間に印加される電圧信号によって、測定子51がXY方向に変位する場合の減衰性能を変更することが可能となる。
したがって、本実施形態のコントローラ8における減衰制御部85は、センサー部7により検出されたプローブの状態に基づいて、第一電圧制御回路93に指令信号を出力し、第一減衰部6Cの減衰性能を適宜変更する。
【0075】
図10は、本実施形態の第二減衰部6Dの概略構成を示す断面図である。
第二減衰部6Dは、第一実施形態の第二減衰部6Bの代わりに用いられ、測定子51の移動部材511の外周面と、内筒部523の内周面との間に設けられ、Z方向の測定子51の振動等の変位を減衰させる。
具体的には、第二減衰部6Dは、
図10に示すように、内筒部523の内周面に設けられる第三電極66Bと、移動部材511の外周面に設けられる第四電極67Bと、第三電極66B及び第四電極67Bの間に保持されるER流体68Bと、を備える。
【0076】
第三電極66Bは、導電性部材により形成され、例えば内筒部523の内周面に沿った円弧曲面状に形成され、当該内筒部523の内周面に固定される。
第四電極67Bは、移動部材511の外周面において、第三電極66Bに対して隙間を介して対向して配置される導電性部材である。第四電極67Bは、Z方向の寸法が、第三電極66Bよりも大きく形成されており、測定子51がZ方向に変位した場合でも、第三電極66Bと第四電極67Bとが対向するように構成されている。
第三電極66B及び第四電極67Bは、本発明の駆動体を構成する。
ER流体68Bは、第一減衰部6Cと同様、液晶等により構成されており、第三電極66Bと第四電極67Bとの間に電圧を印加することで、粘度が変化する。
本実施形態の第二減衰部6Dでは、第三電極66B及び第四電極67Bは、それぞれ、第二電圧制御回路94に接続されており、第二電圧制御回路94から、第三電極66B及び第四電極67Bの間に印加される電圧信号によって、測定子51がZ方向に変位する場合の減衰性能を変更することが可能となる。
したがって、本実施形態のコントローラ8における減衰制御部85は、センサー部7により検出されたプローブの状態に基づいて、第二電圧制御回路94に指令信号を出力し、第二減衰部6Dの減衰性能を適宜変更する。
【0077】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、第一減衰部6Cは、外筒フランジ521Aに設けられる第一電極66A、及び内筒フランジ523Aに設けられる第二電極67Aを駆動体として備える。また、第一電極66A及び第二電極67Aの間には、機能性流体としてER流体68Aが保持されている。
同様に、第二減衰部6Dは、内筒部523の内周面に設けられる第三電極66B、及び移動部材511に設けられる第四電極67Bを駆動体として備え、第三電極66B及び第四電極67Bの間に機能性流体としてER流体68Bが保持されている。
これにより、駆動体である第一電極66A及び第二電極67Aの間に電圧信号を入力することで、機能性流体であるER流体68Aの粘度を変更することができる。また、駆動体である第三電極66B及び第四電極67Bの間に電圧信号を入力することで、機能性流体であるER流体68Bの粘度を変更することができる。したがって、第一実施形態と同様、プローブ5を使用する環境に応じて、減衰機構6に入力する入力信号を変更することで、測定子51の振れに対する減衰性能を変化させることができ、環境に応じた最適な減衰性能でプローブ5を使用することができる。
また、電極間に印加する電圧信号を変更するだけで、ER流体68A,68Bの粘度を容易に変更することができ、第一減衰部6Cや第二減衰部6Bの構成を簡素化でき、配置スペースが限られるプローブ5のホルダー52内に収納することができる。
【0078】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0079】
[変形例1]
上記実施形態では、第一減衰部6A,6Cが測定子51のXY方向の振動を減衰させ、第二減衰部6B,6Dが測定子51のZ方向の振動を減衰させているが、これに限定されない。
例えば、外筒部521と、内筒部523との間に設けられる第一減衰部として、測定子51を保持する内筒部523のZ方向の振動を抑制する構成としてもよい。つまり、外筒部521の内周面と、内筒部523の外周面との間にMR流体を保持させ、径方向に沿って磁力を発生させる電磁石を配置してもよい。或いは、外筒部521の内周面に沿った電極と、内筒部523の外周面に沿った電極とを対向配置させ、これらの電極間にER流体を保持させ、径方向に沿って電圧を印加する構成としてもよい。
【0080】
同様に、移動部材511と、内筒部523との間に設けられる第二減衰部として、測定子51のXY平面での振動を抑制する構成としてもよい。つまり、内筒部523から移動部材511に向かって径方向に伸びる第一フランジを形成し、移動部材511から内筒部523に向かって径方向に伸びる第二フランジを形成し、第一フランジと第二フランジの間にMR流体を保持させ、Z向に沿って磁力を発生させる電磁石を配置してもよい。或いは、第一フランジに設けられた電極と、第二フランジに設けられた電極とを対向配置させ、これらの電極間にER流体を保持させ、Z方向に沿って電圧を印加する構成としてもよい。
【0081】
[変形例2]
上記実施形態では、減衰機構として、第一減衰部6A(第一減衰部6C)と、第二減衰部6B(第二減衰部6D)の2つの減衰部が設けられる例を示したが、いずれか一方のみが設けられる構成としてもよい。
また、XY方向の振動に対して、減衰性能を変更可能な第一減衰部6A(第一減衰部6C)を用い、Z方向の減衰に対して、一定の減衰率を有するオイルダンパなどの従来の減衰構成を用いる構成としてもよい。或いは、Z方向の振動に対して、減衰性能を変更可能な第二減衰部6B(第二減衰部6D)を用い、XY平面に対する振動の減衰に対して、一定の減衰率を有するオイルダンパなどの従来の減衰構成を用いてもよい。
【0082】
[変形例3]
第一実施形態では、MR流体を用いた第一減衰部6A及び第二減衰部6Bを備えたプローブ5を例示し、第二実施形態では、ER流体を用いた第一減衰部6C及び第二減衰部6Dを備えたプローブ5を例示した。これに対して、例えば、XY平面の振動に対して、MR流体を用いた第一減衰部6Aを適用し、Z方向の振動に対して、ER流体を用いた第二減衰部6Dを適用する構成としてもよい。或いは、XY平面の振動に対して、ER流体を用いた第一減衰部6Cを適用し、Z方向の振動に対して、MR流体を用いた第二減衰部6Bを適用する構成としてもよい。
【0083】
[変形例4]
第一実施形態において、永久磁石64A,64Bの配置位置として、第一ヨーク61Aの突出部612A、第二ヨーク61Bの突出部612Bを例示したが、これに限定されない。例えば、第一ヨーク61Aの芯部613Aや、第二ヨーク61Bの芯部613Bに永久磁石64A,64Bを配置してもよい。この場合でも、第一減衰部6Aにおいて、第一電磁石62Aへの電流を止めた場合に、永久磁石64A、MR流体63A、突出部612A、ベース部611A、芯部613Aを通って永久磁石64Aに戻る、閉じた磁気回路が形成される。したがって、突出部612Aと内筒フランジ523Aとの間のMR流体63Aの粘度を高めることができ、MR流体63Aの流出を防止できる。同様に、第二減衰部6Bにおいて、第二電磁石62Bへの電流を止めた場合でも、永久磁石64B、MR流体63B、突出部612B、ベース部611B、芯部613Bを通って永久磁石64Bに戻る、閉じた磁気回路が形成される。したがって、突出部612Bと移動部材511との間のMR流体63Bの粘度を高めることができ、MR流体63Bの流出を防止できる。
【0084】
[変形例5]
第一実施形態において、第一ヨーク61A及び第一電磁石62Aが、外筒フランジ521Aに設けられる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、内筒フランジ523Aに、第一ヨーク61A及び第一電磁石62Aが設けられる構成としてもよい。
第二減衰部6Bにおいても同様であり、第二ヨーク61B及び第二電磁石62Bが、移動部材511に設けられてもよい。
【0085】
[変形例6]
第一実施形態では、第一減衰部6Aに第一ヨーク61Aを用いて閉じた磁気回路を形成し、第二減衰部6Bに第二ヨーク61Bを用いて閉じた磁気回路を形成することで、互いの磁力の影響を抑制する構成とした。これに対して、第一減衰部6Aと第二減衰部6Bとの距離を所定値以上離間させることで、互いの磁力の影響を抑制する構成としてもよい。
【0086】
[変形例7]
第一実施形態において、第一減衰部6Aに永久磁石64Aを設け、第二減衰部6Bに永久磁石64Bを設けることで、第一電磁石62Aや第二電磁石62Bに電流信号を入力していない状態でもMR流体63A,63Bが定位置に保持されるように構成した。これに対して、永久磁石64A,64Bが設けられず、MR流体63A,63Bの粘度を所定値以上に保持するために、常時、電流信号が第一電磁石62A及び第二電磁石62Bに入力される構成としてもよい。
【0087】
[変形例8]
第一実施形態において、センサー部7が、温度センサー71及び振動センサー72を備え、減衰制御部85が、これらの温度センサー71及び振動センサー72により検出される温度や振動に基づいて、第一減衰部6A及び第二減衰部6Bの減衰性能を自動で調整する構成を例示した。
これに対して、センサー部7としては、その他のセンサーを備えていてもよい。
例えば、センサー部7として、ワークWの表面やスタイラス512の先端位置を撮像する撮像センサー、スタイラス512の重量を検出する重量センサー等が設けられていてもよい。
【0088】
この場合、減衰制御部85は、これらのセンサーにより検出される各種情報に基づいて減衰機構6の減衰性能を制御する。例えば、撮像センサーにより、ワークWの表面が撮像された場合、減衰制御部85は、撮像画像の画像解析により、ワークWの表面に含まれる凹凸を判定し、当該凹凸の量や、凹凸の高低差に基づいて、減衰性能を変化させてもよい。これにより、減衰制御部85は、凹凸が多いワークWや凹凸の高低差が大きいワークWの表面に沿ってスタイラス512を移動させる場合に、減衰機構6における減衰性能を低減させ、スタイラス512の追従性を良好にすることができる。
また、スタイラス512の長さによって、振動による先端球512Aの変位量が大きくなる。これに対して、減衰制御部85は、撮像画像に基づいてスタイラス512の長さを判定でき、スタイラス512の長さに応じて減衰機構6の減衰性能を制御して、先端球512Aの変位量を抑制することができる。
【0089】
また、スタイラス512の重量によって、スタイラス512の振動のしやすさも変化し、振動時の振動周波数も変化する。これに対して、センサー部7として、重量センサーを設け、減衰制御部85がスタイラス512の重量に応じて、減衰機構6の減衰性能を変化させる構成とすることで、スタイラス512の重量によらず、スタイラス512に発生する振動発生率を一定にすることができる。
【0090】
さらに、減衰制御部85は、センサー部7により検出されるプローブの状態に限らず、形状測定装置1の動作モードに応じて減衰機構6の減衰性能を変更してもよい。例えば、形状測定装置1により、設計値倣いを実施する場合等、プローブ5を高速で移動させる場合に、振動センサー72の値によらず減衰性能を高めてもよい。また、自律倣いを実施する場合等、プローブ5を低速で移動させる場合に、振動センサー72の値によらず、減衰性能を低減させてもよい。
【0091】
[変形例9]
上記実施形態では、Z方向と平行な軸を有する測定子51を備えたプローブ5を三次元空間内の任意の位置に移動させ、変位検出機構53の検出値に基づいて、ワークWの表面への測定子51の先端球512Aの接触を検知する形状測定装置1を例示したが、本発明のプローブはこのような形状に限定されない。
図11は、本発明に係る測定装置の構成例を示す模式図である。
図11に示す測定装置100は、移動機構101によって三次元空間内の任意の位置に移動可能なプローブ102を備える。このプローブ102は、X方向に長手となる測定子103を備える。当該測定子103は、X方向に長手となるアーム103Aと、アーム103Aの先端に装着されるスタイラス103Bとを備え、支点103Cを中心にX方向に直交するZ方向に対して揺動可能に、プローブ102のホルダー104に保持されている。また、プローブ102は、測定子103をZ方向に揺動させる揺動機構105を備える。
このような測定装置100では、スタイラス103Bの先端103B1がワークWに接触した際の、測定子103の揺動量の変化から、スタイラス103BのワークWへの接触を検出、つまりワークWの形状を測定する。
【0092】
このように、支点103Cを中心としてスタイラス103Bを揺動させるてこ式機構のプローブ102では、測定子103のZ方向の揺動を減衰させる減衰機構106を設ける。減衰機構106としては、例えば、第一減衰部6A,6Cのように、アーム103Aからホルダー104に向かってZ方向に延設される測定子フランジ103Dと、ホルダー104から測定子103に向かってZ方向に延設されるホルダフランジ104Aとを対向させる。そして、これらの測定子フランジ103Dとホルダフランジ104Aとの間に機能性流体106Aを保持させ、機能性流体106Aの粘度を変更する駆動体106Bを設ける。
例えば、機能性流体106AとしてMR流体を用いる場合では、第一減衰部6Aと同様に、測定子フランジ103D及びホルダフランジ104Aのいずれかに駆動体106Bとして電磁石を設ければよい。また、機能性流体106AとしてER流体を用いる場合では、第一減衰部6Cと同様に、測定子フランジ103D及びホルダフランジ104Aのそれぞれに電極を設け、これらの電極によりER流体を挟み込む構成とすればよい。
【0093】
上記のようなてこ式懸架機構のプローブ102を用いる場合では、スタイラス103Bの長さやスタイラス103Bの重量によって、測定子103の振動状態が変化する。これに対して、上記のような減衰機構106を設けることで、駆動体106Bに入力する入力信号により、減衰機構106での減衰性能を調整することができ、スタイラス103Bによらず、測定子103の振動状態を一定の振動状態に維持することができる。
例えば、スタイラス103Bの重量や長さを検出するセンサーを設け、当該センサーにより検出されるスタイラス103Bの重要や長さに応じて、コントローラ(図示略)が減衰機構106に入力する入力信号を制御する。これにより、用いるスタイラス103Bに応じた最適な減衰性能で、減衰機構106を機能させることができる。また、上記各実施形態と同様、コントローラは、プローブ102の温度や振動を検出し、これらの温度や振動に応じて減衰機構106の減衰性能を変化させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、測定子を有するプローブ、及び当該プローブを用いた測定を実施する測定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1…形状測定装置(測定装置)、5…プローブ、6…減衰機構、6A…第一減衰部、6B…第二減衰部、6C…第一減衰部、6D…第二減衰部、7…センサー部、8…コントローラ(制御部)、51…測定子、52…ホルダー、61A…第一ヨーク、61B…第二ヨーク、62A…第一電磁石(駆動体)、62B…第二電磁石(駆動体)、63A,63B…MR流体(機能性流体、磁性流体)、64A,64B…永久磁石、66A…第一電極(駆動体)、66B…第三電極(駆動体)、67A…第二電極(駆動体)、67B…第四電極(駆動体)、68A,68B…ER流体(機能性流体、電気粘性流体)、71…温度センサー、72…振動センサー、85…減衰制御部、91…第一電流制御回路、92…第二電流制御回路、93…第一電圧制御回路、94…第二電圧制御回路、100…測定装置、102…プローブ、103…測定子、103A…アーム、103B…スタイラス、103D…測定子フランジ、104…ホルダー、104A…ホルダフランジ、105…揺動機構、106…減衰機構、106A…機能性流体、106B…駆動体、511…移動部材、512…スタイラス、521…外筒部(第一部材)、521A…外筒フランジ、522…基部、522A…プローブ固定部、523…内筒部(第二部材)、523A…内筒フランジ、524…XYダイアフラム、525…Zダイアフラム、C…中心軸、W…ワーク。