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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022092861
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】セラミド含有リポソーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/164 20060101AFI20220616BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220616BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K31/164
A61P17/00
A61K9/127
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/28
A61Q19/00
A61K8/42
A61K8/44
A61K8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205820
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390010205
【氏名又は名称】協和ファーマケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】桑島 真美
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】堺井 哲郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD52
4C076DD63
4C076EE23
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF63
4C083AC071
4C083AC112
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC241
4C083AC262
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD572
4C083BB04
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD45
4C083EE01
4C083EE07
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA25
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA44
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA89
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、リポソームの安定性を向上できる新たな製剤技術を提供することである。
【解決手段】(A)セラミド及び(B)N-アシルアミノ酸モノエステルを含むリポソームは、向上した安定性を備える。好ましくは、当該リポソームは、さらに(C)高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される液状油並びに(D)非イオン性界面活性剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セラミド及び(B)N-アシルアミノ酸モノエステルを含むリポソーム。
【請求項2】
前記(A)成分1重量部当たりの前記(B)成分の含有量が0.3~15重量部である、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
さらに(C)高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される液状油を含む、請求項1又は2に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記(C)成分が高級脂肪酸である、請求項3に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量が0.4~22重量部である、請求項3又は4に記載のリポソーム。
【請求項6】
さらに(D)非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載のリポソーム。
【請求項7】
前記(D)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群より選択される、請求項6に記載のリポソーム。
【請求項8】
前記(D)成分のHLB値が10以上である、請求項6又は7に記載のリポソーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のリポソームを含む外用組成物。
【請求項10】
前記(A)成分の含有量が1.5~8重量%である、請求項9に記載の外用組成物。
【請求項11】
前記(C)成分の含有量が2~6重量%である、請求項9又は10に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に形成でき、優れた安定性を備える、セラミド含有リポソームに関する。また、本発明は、当該リポソームを使用した外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、皮膚を構成する重要な成分であり、外部刺激から肌内部を守る機能を有していると考えられている。このため、セラミドは、皮膚の保護を目的とする外用組成物に配合されて用いられている。しかしながら、セラミドは水及び油性成分のいずれに対しても相溶性が良くない。このため、セラミドを配合した外用組成物には、長期保存による不溶物の形成等の製剤上の課題がある。このため、セラミドを安定に配合することを目的として、乳化組成物の形態で外用組成物に配合されてきた。
【0003】
一方、近年のリポソーム化技術の発達により、リポソーム(リン脂質を用いて形成されるベシクル)にセラミドを内包させる技術も開発されている。例えば、非特許文献1では、セラミド脂質を挟み込んだラメラ構造中の親水部だけを膨潤させることで、直径
40nmの一枚膜のベシクルを調製し、これによって、セラミド脂質を1%の濃度まで透明な状態で製剤化する技術が記載されている。また、非特許文献2では、リン脂質スフィンゴミエリンをリポソーム素材として利用した技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"化粧水で角層バリア機能を高めることに成功したセラミドを高濃度含有する透明化粧水の開発"、[online]、2008年10月6日、特許学会、[令和2年11月3日検索]、インターネット〈URL:http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_2008_7.pdf
【非特許文献2】J Liposome Res. 2010 Mar; 20(1):49-54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の技術では、リポソームの安定性について十分な検討がなされておらず、また、リポソーム化することで化粧水に配合できるセラミドはせいぜい1%である。非特許文献2の技術では、スフィンゴミエリンという特殊なリポソーム素材を必須とする点で材料が制限される。しかしながら、セラミドのリポソーム化はいまだ発展途上にあり、既に開発されたリポソーム化方法以外では、リポソームの形成自体が困難であることが多く、また、リポソームが形成されたとしても、安定性の点で十分であるとは言えない場合が多い。
【0006】
そこで、本発明は、リポソームの安定性を向上できる新たな製剤技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、セラミドのリポソーム化にN-アシルアミノ酸モノエステルを用いることで、安定性に優れたリポソームが得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)セラミド及び(B)N-アシルアミノ酸モノエステルを含むリポソーム。
項2. 前記(A)成分1重量部当たりの前記(B)成分の含有量が0.3~15重量部である、項1に記載のリポソーム。
項3. さらに(C)高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される液状油を含む、項1又は2に記載のリポソーム。
項4. 前記(C)成分が高級脂肪酸である、項3に記載のリポソーム。
項5. 前記(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量が0.4~22重量部である、項3又は4に記載のリポソーム。
項6. さらに(D)非イオン性界面活性剤を含む、項1~5のいずれかに記載のリポソーム。
項7. 前記(D)成分が、前記(D)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群より選択される、項6に記載のリポソーム。
項8. 前記(D)成分のHLB値が10以上である、項6又は7に記載のリポソーム。
項9. 項1~8のいずれかに記載のリポソームを含む外用組成物。
項10. 前記(A)成分の含有量が1.5~8重量%である、項9に記載の外用組成物。
項11. 前記(C)成分の含有量が2~6重量%である、項9又は10に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、リポソームの安定性を向上できる新たな製剤技術が提供でされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.リポソーム
本発明のリポソームは、(A)セラミド(以下において、「(A)成分」とも記載する)及び(B)N-アシルアミノ酸モノエステル(以下において、「(B)成分」とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0011】
(A)セラミド
本発明のリポソームは、(A)成分としてセラミドを含有する。セラミドはスフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物群の総称として公知の成分である。
【0012】
セラミドは、スフィンゴシンの構造(N?アシル基の構造など)及び長鎖脂肪酸の構造の違いにより、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6I、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9、セラミド10等が挙げられる。これらのセラミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのセラミドの中でも、好ましくはセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド6I、及びセラミド6IIからなる群より選択されるセラミドが挙げられ、より好ましくはセラミド1、セラミド2、セラミド3からなる群より選択される2種以上のセラミドが挙げられ、さらに好ましくはセラミド1、セラミド2、及びセラミド3の組み合わせが挙げられる。
【0013】
本発明で使用されるセラミドの由来については、特に制限されず、セラミドの種類等に応じて適宜設定すればよく、例えば、動植物から抽出したもの、微生物醗酵法によって得られたもの、化学的に合成したもの等のいずれであってもよい。
【0014】
(B)N-アシルアミノ酸モノエステル
本発明のリポソームは、(B)成分としてN-アシルアミノ酸モノエステルを含有する。セラミドをリポソーム化するにあたりN-アシルアミノ酸モノエステルを用いることで、安定なリポソームを形成することができる。
【0015】
N-アシルアミノ酸モノエステルは、N-アシル化アミノ酸とアルコールとのモノエステル形態の化合物であれば特に限定されない。
【0016】
上記N-アシル化アミノ酸のアシル基としては、炭素数6~22の直鎖又は分岐鎖アシル基が挙げられ、具体的には、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、リノール酸、リノロイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、2-エチルへキサノイル基、ココイル基等が挙げられる。上記N-アシル化アミノ酸のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、βアラニン、アミノ酪酸、アミノプロピオン酸、サルコシン、N-メチル-β-アラニン等の中性アミノ酸が挙げられる。上記アルコールとしては、炭素数1~40、好ましくは2~8の直鎖又は分岐鎖アルコール、炭素数3~30の環状アルコール、ステロール等が挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、イソブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチル-ヘキサノール、デカノール;シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール;コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール等が挙げられる。
【0017】
N-アシルアミノ酸モノエステルとしては、上記のアシル基を有する上記のアミノ酸と上記のアルコールとの任意の組み合わせによる化合物群から1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのN-アシルアミノ酸モノエステルの中でも、リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはN-ラウロイルサルコシンと2~8の直鎖又は分岐鎖アルコールとのモノエステルが挙げられ、より好ましくはN-ラウロイルサルコシンイソプロピルが挙げられる。
【0018】
本発明のリポソームにおいて、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.3~15重量部が挙げられる。リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量としては、好ましくは0.3~5重量部、より好ましくは0.4~3.1重量部、さらに好ましくは0.5~2.6重量部、一層好ましくは0.6~2.1重量部、より一層好ましくは0.65~1.6重量部、0.75~1.26重量部、又は0.8~1.1重量部が挙げられる。また、(A)成分の生きた皮膚の角層への浸透性を向上させる観点から、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量としては、好ましくは0.3~5重量部、より好ましくは0.3~3.1重量部、さらに好ましくは0.3~2.6重量部、一層好ましくは0.3~2.1重量部、より一層好ましくは0.3~1.6重量部、特に好ましくは0.3~1.26重量部、最も好ましくは0.3~1.1重量部が挙げられる。
【0019】
(C)所定の液状油
本発明のリポソームは、他の成分の配合組成を多様化する観点、セラミドの配合量を増量する観点、及び/又はリポソームの安定性をより一層向上する観点から、(C)成分として、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される液状油を含むことが好ましい。高級脂肪酸及び高級アルコールにおける「高級」としては、炭素数16~24が挙げられる。液状油とは、25℃において液状の形態を保つ油である。
【0020】
液状高級脂肪酸としては、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。これらの液状高級脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの液状高級脂肪酸の中でも、好ましくはイソステアリン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0021】
液状高級アルコールとしては、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらの液状高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの液状高級アルコールの中でも、好ましくはイソステアリルアルコールが挙げられる。
【0022】
本発明においては、高級脂肪酸及び高級アルコールのうち、いずれか一方のみを用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは高級脂肪酸が挙げられ、より好ましくはイソステアリン酸及びオレイン酸が挙げられ、さらに好ましくはイソステアリン酸が挙げられる。
【0023】
本発明リポソームにおいて、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.4~22重量部が挙げられる。リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては、好ましくは0.6~22重量部、より好ましくは0.68~22重量部、さらに好ましくは0.75~22重量部、一層好ましくは0.83~22重量部、より一層好ましくは0.9~22重量部、特に好ましくは0.97~22重量部、1~22重量部、1.1~22重量部、又は1.2~22重量部が挙げられる。また、(A)成分の生きた皮膚の角層への浸透性を向上させる観点から、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては、好ましくは0.4~15重量部、より好ましくは0.4~10.5重量部、さらに好ましくは0.4~7.5重量部、一層好ましくは0.4~4.5重量部、より一層好ましくは0.4~2.3重量部、特に好ましくは0.4~2.0重量部、0.4~1.8重量部、又は0.4~1.7重量部が挙げられる。
【0024】
(D)非イオン性界面活性剤
本発明のリポソームは、リポソームの安定性をより一層向上する観点から、(D)成分として、非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0025】
非イオン性界面活性剤としては特に限定されない。非イオン性界面活性剤の具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、イソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、リポソームの安定性をより一層向上する観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルから選択されることが好ましい。
【0027】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12~24、脂肪酸の付加数が1~5、グリセリンの付加数が2~12モルのポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンステロールエーテルとしては、酸化エチレンの付加数が5~50モル、ステロールがフィトステロール、コレステロール及びそれらの水素添加物(つまり、フィトスタノール及びコレスタノール)からなる群より選択されるポリオキシエチレンステロールエーテルが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、酸化エチレンの付加数が1~50モル、酸化プロピレンの付加数が2~16モル、アルキルの炭素数が12~24のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0028】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、HLB値としては、好ましくは10以上が挙げられ、より好ましくは11~19.5、さらに好ましくは14~19、一層好ましくは15~18.5、より一層好ましくは15.5~18、特に好ましくは16~18が挙げられる。HLB値(親水性-親油性のバランス)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
【0029】
好ましい非イオン性界面活性剤の具体例としては、HLB値10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとして、モノオレイン酸ポリグリセリル-5(HLB値12.5)、モノラウリン酸ポリグリセリル-6(HLB値14.5)、モノミリスチン酸ポリグリセリル-6(HLB値11.0)、モノラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB値15.5)、モノミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB値14.0)、モノステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値12.0)、モノイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値12.0)、モノオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB値12.0)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値10.0)等が挙げられ;HLB値10以上のポリオキシエチレンステロールエーテルとして、POE(10)フィトステロール(HLB12.5)、POE(20)フィトステロール(HLB15.5)、POE(30)フィトステロール(HLB18.0)、POE(25)フィトスタノール(HLB14.5)、POE(30)コレスタノール(HLB17.0)等が挙げられ;HLB値10以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとして、POE(10)POP(4)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB値16.5)、POE(20)POP(8)セチルエーテル(HLB値12.5)、POE(20)POP(6)テトラデシルエーテル(HLB値11.0)、POE(30)POP(6)テトラデシルエーテル(HLB値12.0)、POE(7)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値10.0)、POE(10)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値12.0)、POE(12)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値12.0)、POE(15)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値13.0)、POE(20)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値14.0)、POE(30)POP(2)テトラデシルエーテル(HLB値15.0)等が挙げられる。
【0030】
本発明リポソームにおいて、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量としては特に限定されないが、例えば0.5~20重量部が挙げられる。リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量としては、好ましくは1~10重量部、より好ましくは1.5~5重量部、さらに好ましくは1.8~2.2が挙げられる。
【0031】
その他の膜構成成分
本発明のリポソームは、前述する成分以外に、本発明の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて、その他の膜構成成分が含まれていてもよい。このような膜構成成分としては、例えば、リン脂質、リン脂質重合体、ステロール、(B)成分以外の荷電物質等が挙げられる。
【0032】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然リン脂質、ジオレオイルホスファチジルコリン等の合成リン脂質;大腸菌等の微生物から抽出されるリン脂質;これらのリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質等が挙げられる。これらリン脂質は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
リン脂質重合体としては、例えば、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体等が挙げられる。これらのリン脂質重合体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
ステロールとしては、例えば、コレステロール、フィトステロール、酢酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、パルミトレイン酸フィトステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、硬質ラノリン脂肪酸コレステリル、長鎖分岐脂肪酸コレステリル、長鎖α-ヒドロキシ脂肪酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等が挙げられる。これらのステロールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
荷電物質としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、エライジン酸、エレオステアリン酸等の脂肪酸;これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の脂肪酸塩;ホスファチジン酸、ジセチルホスフェート等が挙げられる。これらの荷電物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
これらの他の膜構成成分の中でも、好ましくはリン脂質が挙げられ、より好ましくは水素添加リン脂質が挙げられる。(A)成分1重量部当たりのリン脂質の含有量としては、例えば1~25重量部が挙げられ、好ましくは1.2~10重量部、より好ましくは1.4~5重量部、さらに好ましくは1.6~4重量部、一層好ましくは2~3重量部が挙げられる。
【0037】
その他の含有成分
本発明のリポソームには、必要に応じて、香粧学的活性又は薬理活性を示す活性成分が含まれていてもよい。このような活性成分としては、特に制限されないが、例えば、水溶性のビタミン及びその誘導体、油溶性のビタミン及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、α-リポ酸、セラミド又はその類似物質、リノール酸、アルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、酵素、ペプチド、ホルモン、各種サイトカイン、ヒアルロン酸、これらの塩等のグリコサミノグリカン類及びその塩類或いはその誘導体、ヒアルロン酸加水分解物又はその塩、コラーゲン又はその加水分解物、エラスチン又はその加水分解物、糖類等の生理活性物質、各種動植物抽出物、微生物による発酵で得られる物質、ステロイド剤、抗ヒスタミン、局所麻酔剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進剤、ステロール類等が挙げられる。これらの活性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの活性成分は、内水相(リポソームの内相)、外水相(リポソームの外相)、及び膜内部(リポソーム膜内)のいずれか1つに含まれていればよい。
【0038】
また、本発明のリポソームには、内水相及び外水相を形成する水以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、皮膚外用組成物に配合される添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール;スクワラン、ワセリン等の油剤;ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩等の酸化防止剤;フェノキエタノール、オクトキシグリセリン、パラベン等の防腐剤;顔料、パール化剤、増粘剤、界面活性剤、安定化剤、キレート剤、着色料、香料、緩衝剤、pH調整剤等が挙げられる。これらの添加剤は、本発明のリポソームにおける内水相(リポソームの内相)、外水相(リポソームの外相)、及び膜内部(リポソーム膜内)のいずれに含まれていてもよい。
【0039】
製造方法・形態
本発明のリポソームの製造方法については、特に制限されないが、例えば次の製造方法が挙げられる。多価アルコール等の分散媒に、水添レシチン、上記(B)成分、又は更に任意の上記(C)成分及び/又は任意の上記他の膜構成成分(界面活性剤以外)、並びに上記(A)成分を溶解し、水を添加し、さらに必要に応じ、任意の上記(D)成分及び/又は任意の上記界面活性剤以外を添加し、撹拌(例えば、ホモミキサー処理等)を行うことでリポソーム液として調製することができる。
【0040】
本発明のリポソームは、上記の製造方法で得られたリポソーム液の形態で使用してもよいし、公知の粉末化処理に供して得た粉末リポソームの形態で使用してもよい。
【0041】
2.外用組成物
上記の本発明のリポソームは、化粧料、外用医薬品等の外用組成物に添加される原料として使用することができる。したがって、本発明は、上記のリポソームを含む外用組成物も提供する。
【0042】
本発明の外用組成物において、リポソームを構成する上記(A)成分の外用組成物中の含有量としては、例えば0.01~8重量%が挙げられる。上記の本発明のリポソームは安定性に優れるため、外用組成物中の(A)成分の量が多くても、優れた安定性を保つことができる。このような観点から、外用組成物中の(A)成分の好適な例としては、好ましくは1~8重量%、より好ましくは1.5~8重量%、さらに好ましくは1.8~8重量%、一層好ましくは2~6重量%が挙げられる。また、リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.01~4.5重量%、さらに好ましくは0.01~4重量%、一層好ましくは0.01~3.5重量%、より一層好ましくは0.01~3.2重量%が挙げられる。
【0043】
また、本発明の外用組成物中のリポソームが上記(C)成分を含む場合、リポソームを構成する上記(C)成分の外用組成物中の含有量としては、例えば0.5~6重量%が挙げられる。上記の本発明のリポソームは安定性に優れるため、液状油である外用組成物中の(C)成分の量が多くても、優れた安定性を保つことができる。このような観点から、外用組成物中の(C)成分の好適な例としては、好ましくは2~6重量%、より好ましくは2.5~6重量%、さらに好ましくは2.8~6重量%が挙げられる。また、リポソームの安定性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.5~4.5重量%、より好ましくは0.5~3.5重量%、さらに好ましくは0.5~3.2重量%が挙げられる。
【0044】
本発明のる外用組成物の剤型としては、液状、固形状、クリーム状、ジェル状等のいずれであってもよい。
【0045】
本発明の外用組成物の製剤形態として、例えば、クリーム、化粧水、美容液、乳液、ジェル、口紅、ファンデーション等の化粧料;液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤等の外用医薬品が挙げられる。
【0046】
また、本発明の外用組成物は、その製剤形態に応じて、香粧学的活性又は薬理活性を示す活性成分、所定の製剤形態に調製するための添加剤、水等が含まれていてもよい。このような活性成分や添加剤の種類については、上記の本発明のリポソームの内水相、外水相又は膜内部に含有させ得る成分として例示したものと同様である。
【実施例0047】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
試験例
表1及び表2に示す外用組成物を調製した。具体的には、水添レシチンを1,3-ブチレングリコール(BG)で加熱(80℃)溶解し、(B)成分又は(b)成分、(C)成分、及び(A)成分をこの順に添加して加熱(80℃)溶解した。さらに、加熱した(80℃)水をゆっくり滴下し、加熱した(D)成分を添加し、その後、ホモミキサーで撹拌し乳化した。メンブレンフィルターによりろ過し、冷却し、リポソームが分散された外用組成物を得た。得られた外用組成物について、以下の評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0049】
<調剤性>
リポソームの形成性を以下の基準で評価した。
○:調剤中に分離は認められず、難なくろ過が可能であった。
△:調剤中に不所望の分離が少し認められたが、一応ろ過は可能であった。
×:調剤中に固液分離又は粘性のある液体の分離等により、ろ過ができなかった。
これらの評価のうち、○の評価のみがリポソームを良好に形成したと判断した。
【0050】
<安定性>
上記の調剤性試験で○の評価となった外用組成物について、外観及び粒子径について以下の基準で評点した。なお、室温とは25℃である。
6:室温で少なくとも18か月安定
5:室温で少なくとも2か月安定
4:室温で少なくとも1か月安定
3:室温で少なくとも2週間安定
2:室温で少なくとも1週間安定
1:室温で少なくとも3日間安定
【0051】
<浸透性>
(1)試験用サンプル液調製
上記の調剤性試験で○の評価となった外用組成物を、調製直後に、セラミド含量が1重量%となるように調製した。得られたセラミド1重量%液を試験用サンプル液とした。
【0052】
(2)使用機器
in vivo共焦点ラマン分光装置gen2-SCA(RiverD International B.V.)を用いた。この装置は、生きたヒトの腕などで、角質層の深さごとの物質量を、非侵襲で測定可能である。
【0053】
(3)塗布条件
生きたヒトの上腕(健常な男女9名の、任意の腕9本)内側に試験用サンプル液を含ませたコットン(4層中の1層分を割いて用い、且つ6等分した大きさで用いた。)を貼り付け30分放置した。その後皮膚表面を拭き取り、10分間自然放置した。
【0054】
(4)評価方法
無塗布部位及び試験用サンプル液を塗布した部位において、皮膚深さ方向2μm~20μmのセラミドの量を測定した。部位ごとに5点測定し、その平均値をその深さでの値とした。さらに腕9本での結果を平均化した。無塗布部における平均値を100%とした場合の塗布部における平均値の相対値(%)算出し、以下の基準にもとづいて評価した。
◎:112%以上
○:108%以上112%未満
△:100%以上108%未満
当該相対値が大きいほど、生きた皮膚の角層への浸透量が多いことを示す。
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
比較例1~5に示すように、b成分を用いた場合にはセラミドを含むリポソームは形成できなかったが、実施例1~15に示すように、ラウロイルサルコシンイソプロピルを用いた場合(実施例1~15)にはセラミドを含むリポソームが形成できた。中でも、実施例1~4、11と実施例12との対比に示されるように、。C成分として脂肪酸を用いた場合には安定性がより一層向上した。また、実施例1~4、13と実施例14、15、10との対比に示されるように、D成分として所定の高いHLB値の比イオン性界面活性剤を用いた場合にも安定性がより一層向上した。