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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093055
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】光学素子および光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220616BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220616BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206126
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 真丈
【テーマコード(参考)】
2H149
4J004
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB01
2H149BA04
2H149BA23
2H149BB28
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
4J004AB01
4J004FA04
(57)【要約】
【課題】偏光機能を有するナノ構造体を備えた光学素子において、粘着剤に起因したナノ構造体の劣化をより適切に抑制する。
【解決手段】光学素子100は、偏光機能を有するナノ構造14を含むナノ構造体10と、粘着剤層24Aの粘着剤によりナノ構造体10に取り付けられ、ナノ構造14を覆う第1保護フィルム20Aと、を備え、第1保護フィルム20Aは、ナノ構造14と重なる部分に非粘着領域3が形成されている。ナノ構造体10は、ナノ構造14上に設けられた多孔質層16を含み、非粘着領域3は、多孔質層16と重なる部分に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光機能を有するナノ構造を含むナノ構造体と、
粘着剤層を介して粘着することで前記ナノ構造体を覆う保護フィルムと、
を備え、
前記保護フィルムは、前記ナノ構造と重なる部分に非粘着領域が形成されている、
光学素子。
【請求項2】
前記ナノ構造体は、前記ナノ構造上に設けられた多孔質層を含み、
前記非粘着領域は、前記多孔質層と重なる部分に形成されている、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記非粘着領域は、前記粘着剤層と前記ナノ構造体との間に設けられた非粘着性基材である請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記非粘着領域は、前記粘着剤層と前記ナノ構造体との間に設けられた空間である請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項5】
前記保護フィルムは、前記ナノ構造体の出射面側を覆う第1保護フィルムと、前記ナノ構造体の入射面側を覆う第2保護フィルムとを含み、
前記第1保護フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムを前記出射面に粘着させる前記粘着剤層とを有し、
前記第2保護フィルムは、前記ナノ構造体の外側で、前記第1保護フィルムの前記粘着剤層に粘着して前記ナノ構造体に取り付けられ、前記非粘着領域を形成する、
請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項6】
前記粘着剤層は、前記第2保護フィルムに対する粘着力よりも、前記第1保護フィルムに対する粘着力が強い請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記ナノ構造は、ワイヤグリッド型偏光子である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
偏光機能を有するナノ構造を含むナノ構造体に、粘着剤層を介して、前記ナノ構造体を覆う保護フィルムを粘着させる光学素子の製造方法であって、
前記保護フィルムの前記ナノ構造と重なる部分に非粘着領域を形成する、
光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子および光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子に保護層を取り付ける技術が知られている。例えば、特許文献1には、偏光板本体に粘着剤を介してセパレータを取り付けた偏光板が記載されている。この偏光板では、セパレータに、例えば離型剤を塗布した離型処理領域を設けることで、セパレータを粘着剤から剥離しやすくしている。また、特許文献2には、保護フィルムで覆われたモスアイ構造を備えた反射防止フィルムが記載されている。この反射防止フィルムでは、モスアイ構造の周辺に保護フィルムを粘着させるための平坦面を作成し、粘着剤の粘着力を平坦面に対して粘着する程度に抑えることで、モスアイ構造に粘着剤が強く粘着することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-54981号公報
【特許文献2】国際公開第2010113868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光機能を有するナノ構造体を備えた光学素子に、保護フィルムを粘着剤により粘着させると、粘着剤がナノ構造体の内部に入り込み偏光特性が変化したり、保護フィルムを剥がした後の粘着剤がナノ構造体に残留したりするなどに起因し、ナノ構造体に劣化が生じる可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、偏光機能を有するナノ構造体を備えた光学素子において、粘着剤に起因したナノ構造体の劣化をより適切に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる光学素子は、偏光機能を有するナノ構造を含むナノ構造体と、粘着剤層を介して粘着することで前記ナノ構造体を覆う保護フィルムと、を備え、前記保護フィルムは、前記ナノ構造と重なる部分に非粘着領域が形成されている。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる光学素子の製造方法は、偏光機能を有するナノ構造を含むナノ構造体に、粘着剤層を介して、前記ナノ構造体を覆う保護フィルムを粘着させる光学素子の製造方法であって、前記保護フィルムの前記ナノ構造と重なる部分に非粘着領域を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様にかかる光学素子および光学素子の製造方法は、偏光機能を有するナノ構造体を備えた光学素子において、粘着剤に起因したナノ構造体の劣化をより適切に抑制できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態にかかる光学素子の一例を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる光学素子の一例を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態の変形例にかかる光学素子の一例を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態の他の変形例にかかる光学素子の一例を示す断面図である。
図5図5は、第2実施形態にかかる光学素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる光学素子の一例を示す断面図である。図2は、第1実施形態にかかる光学素子の一例を示す平面図である。光学素子100は、例えば液晶ディスプレイといった種々の装置に用いられる偏光機能を有した素子である。光学素子100は、図示するように、ナノ構造体10と、第1保護フィルム20Aおよび第2保護フィルム20Bを含む保護フィルム20とを備えている。なお、図2においては、光学素子100の第1保護フィルム20Aの記載を省略している。
【0012】
本実施形態において、光学素子100は、偏光機能を有する本体としてのナノ構造体10が保護フィルム20によってパッケージングされた状態であり、この状態で次工程へと搬送される。光学素子100は、保護フィルム20が取り外され、かつ、ナノ構造体10のうち、図1および図2で破線により囲んだ有効領域2以外の部分がカットされた状態が最終製品となり、図示しない他の機器に取り付けられる。最終製品としての光学素子100は、ナノ構造体10の一方側の入射面10aから入射光L1が入射され、他方側の出射面10bから偏光後の出射光L2が出射される。以下の説明では、光学素子100に対する光の透過方向、すなわち光学素子100の厚み方向を「Z方向」と称し、Z方向と直交する光学素子100の幅方向を「X方向」および「Y方向」と称する。なお、有効領域2は、カットされる前の(最終製品となる前の)ナノ構造体10のうちの一部の領域を指すといえる。有効領域2は、図1に示すナノ構造体10の全範囲であってもよい。すなわち、最終製品としての光学素子100は、図1に示すナノ構造体10の状態からカットされなくてもよい。有効領域2は、Z方向から見た場合に、カットされる前の(最終製品となる前の)ナノ構造体10の全域の面積に対して、好ましくは0%より大きく100%以下、より好ましくは10%以上90%以下、さらに好ましくは20%以上80%以下であってよい。
【0013】
(ナノ構造体)
ナノ構造体10は、透明基材12と、ナノ構造14と、多孔質層16とを含む。透明基材12は、可視光を透過させる透明フィルムであり、ナノ構造体10から光を出射する出射面10bを形成する。透明基材12は、例えば光硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、ガラス等の材料により形成される。透明基材12としては、ガラス(石英ガラス、無アルカリガラス、アルカリガラス等)、樹脂(環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリジメチルシロキサン、透明フッ素樹脂、ポリエステル樹脂等)からなるフィルムが例示できる。なお、透明基材12の形状は、とくに限定されず、ブロック状、板状でもよい。透明基材12は、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。
【0014】
ナノ構造14は、透明基材12上に形成される。本実施形態において、ナノ構造14は、反射型偏光子の一つであるワイヤグリッド型偏光子である。ナノ構造14は、例えば、好ましくは80nm以上125nm以下、より好ましくは85nm以上120nm以下、さらに好ましくは90nm以上115nm以下の高さで形成される。ナノ構造14は、図1および図2に示すように、複数の金属細線141が互いに平行に並んで配置されたワイヤグリッド140を有する。より詳細には、ワイヤグリッド140は、光学素子100のY方向に沿って延びる複数の金属細線141が、X方向において、互いに一定のピッチを空けて平行に並んで配置される。なお、金属細線141の延在方向すなわち長手方向は、X方向であってもよい。金属細線141は、導電性の金属材料であればよく、耐蝕性の材料が好ましい。金属または金属化合物が例示できる。例えば、金属単体、合金、ドーパント又は不純物を含む金属が挙げられる。具体的には、アルミニウム、銀、クロム、マグネシウム、アルミニウム系合金、銀系合金が例示できる。これらは1種又は2種以上使用できる。隣り合う金属細線141同士のピッチは、光学素子100への入射光L1の波長よりも短く設定される。隣り合う金属細線141同士のピッチは、例えば、好ましくは60nm以上150nm以下、より好ましくは70nm以上130nm以下、さらに好ましくは80nm以上110nm以下である。
【0015】
この構成により、入射光L1のうち、金属細線141の延在方向すなわちY方向と直交する面で電場が振動する成分であるP偏光の光は、ナノ構造14を透過する。一方、入射光L1のうち、金属細線141の延在方向と平行な面で電場が振動する成分であるS偏光の光は、ナノ構造14で反射される。それにより、ナノ構造体10は、入射光L1を偏光させて出射光L2とする。このようなワイヤグリッド140は、例えばナノインプリント法により形成できる。なお、ナノ構造14は、入射光L1の波長よりも短いピッチで形成された形状を用いた偏光機能を有するものであれば、ワイヤグリッド型偏光子に限らない。ナノ構造14は、例えば、入射光L1の波長よりも短いピッチで形成された複数の突形状を有するモスアイ構造であってもよい。
【0016】
多孔質層16は、ナノ構造14の透明基材12とは反対側、すなわち光の入射側に設けられ、ナノ構造14を保護する保護層である。本実施形態では、多孔質層16は、ナノ構造体10に光を入射する入射面10aを形成する。多孔質層16は、例えば、好ましくは0.05μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上1μm以下の厚みに形成される。多孔質層16は、ナノ構造14に入射する光をできる限り屈折させないように、すなわち、できる限り屈折率が小さくなるように、複数の空孔を含む多孔質材料で形成される。多孔質材料は、特に限定されないが、単一の屈折率の材料であってもよく、複数の屈折率の材料を混合したものであってもよい。多孔質材料は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS:Poly Dimethylsiloxane)、メソポーラスシリカ等である。
【0017】
(第1保護フィルム)
第1保護フィルム20Aは、図1に示すように、ナノ構造体10を透明基材12とは反対側、すなわち多孔質層16側から覆う。本実施形態では、第1保護フィルム20Aは、基材フィルム22Aと、粘着剤層24Aとを含む。基材フィルム22Aは、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。基材フィルム22Aは、例えば光硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、ガラス等の材料により形成される。基材フィルム22Aとしては、ガラス(石英ガラス、無アルカリガラス、アルカリガラス等)、樹脂(環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリジメチルシロキサン、透明フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等)からなるフィルムが例示できる。粘着剤層24Aは、基材フィルム22Aをナノ構造体10に粘着させる。粘着剤層24Aは、例えば、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上75μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下の厚みに形成される。粘着剤層24Aは、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の粘着剤により形成されており、基材フィルム22Aの一方側の面に貼着されている。基材フィルム22Aおよび粘着剤層24Aは、図1に示すように、ナノ構造体10の入射面10aと、側面10cとの全体を覆う大きさに形成されている。それにより、第1保護フィルム20Aは、基材フィルム22Aが粘着剤層24Aを介してナノ構造体10の入射面10aおよび側面10cに粘着することで、ナノ構造体10に着脱自在に取り付けられる。
【0018】
ここで、第1保護フィルム20Aは、図1に示すように、非粘着性基材26Aを含んでいる。図2では、非粘着性基材26Aが配置される箇所を一点鎖線で示している。非粘着性基材26Aは、粘着剤層24Aとナノ構造体10の多孔質層16との間に介在する。非粘着性基材26Aは、X方向およびY方向において、少なくともナノ構造体10の有効領域2よりも大きく形成される。非粘着性基材26Aは、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。非粘着性基材26Aは、非粘着性の材料で形成されればよく、例えば光硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、ガラス等の材料により形成される。非粘着性基材26Aとしては、ガラス(石英ガラス、無アルカリガラス、アルカリガラス等)、樹脂(環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリジメチルシロキサン、透明フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等)からなるフィルムが例示できる。非粘着性基材26Aは、ナノ構造14の有効領域2と重なる部分に形成された非粘着領域3となる。非粘着領域3は、粘着剤層24Aの粘着剤がナノ構造体10に接触しない領域である。非粘着領域3は、X方向およびY方向において、有効領域2よりは大きく形成されるが、ナノ構造体10の全体よりは小さく形成されている。それにより、第1保護フィルム20Aは、非粘着領域3以外の範囲では粘着剤層24Aを介してナノ構造体10に粘着するため、第1保護フィルム20Aをナノ構造体10に安定的に粘着させることができる。
【0019】
(第2保護フィルム)
第2保護フィルム20Bは、図1に示すように、ナノ構造体10を透明基材12側から覆う。本実施形態では、第2保護フィルム20Bは、基材フィルム22Bを含む。基材フィルム22Bは、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。基材フィルム22Bは、例えば光硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、ガラス等の材料により形成される。基材フィルム22Bとしては、ガラス(石英ガラス、無アルカリガラス、アルカリガラス等)、樹脂(環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリジメチルシロキサン、透明フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等)からなるフィルムが例示できる。基材フィルム22Bは、図1および図2に示すように、X方向およびY方向において、ナノ構造体10よりも大きく形成されている。それにより、第2保護フィルム20Bは、透明基材12と当接した状態で、X方向およびY方向におけるナノ構造体10の外側で第1保護フィルム20Aの粘着剤層24Aに粘着する。その結果、第2保護フィルム20Bがナノ構造体10に着脱自在に取り付けられる。
【0020】
光学素子100を製造する際には、ナノ構造体10の入射面10a側を覆うように第1保護フィルム20Aを配置し、第1保護フィルム20Aの粘着剤層24Aを入射面10aおよび側面10cに粘着させる。このとき、予め第1保護フィルム20Aの粘着剤層24Aに非粘着性基材26Aを粘着させておき、第1保護フィルム20Aをナノ構造体10に粘着させると同時に、ナノ構造体10と粘着剤層24Aとの間に非粘着性基材26Aを配置する。そして、ナノ構造体10の出射面10b側を覆うように第2保護フィルム20Bを配置し、ナノ構造体10の外側で、第1保護フィルム20Aの粘着剤層24Aに第2保護フィルム20Bを粘着させる。これにより、図1に示す光学素子100が形成される。
【0021】
以上説明したように、第1実施形態にかかる光学素子100は、偏光機能を有するナノ構造14を含むナノ構造体10と、粘着剤層24Aを介して粘着することでナノ構造体10を覆う第1保護フィルム20A(保護フィルム)と、を備え、第1保護フィルム20Aは、ナノ構造14と重なる部分に非粘着領域3が形成されている。
【0022】
この構成により、ナノ構造14と重なる部分において、粘着剤層24Aの粘着剤がナノ構造体10と接触しないようにできる。それにより、粘着剤層24Aに含まれる粘着剤がナノ構造体10の内部に入り込んだり、第1保護フィルム20Aをナノ構造体10から剥がしたときに、ナノ構造体10に粘着剤が残留したりすることを抑制できる。その結果、ナノ構造体10の偏光特性が粘着剤に起因して変わってしまうことや、光学素子100の外観の見栄えが悪くなることを抑制することが可能となる。したがって、第1実施形態によれば、偏光機能を有するナノ構造体10を備えた光学素子100において、粘着剤に起因したナノ構造体10の劣化をより適切に抑制できる。
【0023】
また、ナノ構造体10は、ナノ構造14上に設けられた多孔質層16を含み、非粘着領域3は、多孔質層16と重なる部分に形成されている。この構成により、粘着剤が多孔質層16の空孔に浸透することを抑制できる。その結果、多孔質層16の屈折率が変化してしまうことを抑制し、ひいてはナノ構造体10の偏光特性が変化することを抑制できる。
【0024】
なお、ナノ構造体10は、多孔質層16を含まないものであってもよい。この場合、非粘着性基材26Aは、粘着剤層24Aとナノ構造14との間に設けられればよい。この構成においても、粘着剤がナノ構造14の隙間に入り込んだり、粘着剤を剥がすときにナノ構造14に粘着剤が残留したりすることを抑制し、ナノ構造体10の劣化を抑制することが可能となる。
【0025】
また、非粘着領域3は、粘着剤層24Aとナノ構造体10との間に設けられた非粘着性基材26Aである。この構成により、非粘着領域3を容易に形成できる。
【0026】
なお、非粘着領域3は、粘着剤層24Aとナノ構造体10との間に設けられた空間であってもよい。図3は、第1実施形態の変形例にかかる光学素子の一例を示す断面図である。図3に示す光学素子200は、図1に示す光学素子100に対して、非粘着性基材26Aを取り除き、空間4としたものである。この構成により、光学素子100の部品点数を削減できる。なお、非粘着領域3としての空間4を粘着剤層24Aとナノ構造体10との間に形成するには、当該空間4が画成されるように第1保護フィルム20Aの基材フィルム22Aを予め窪ませておけばよい。このとき、空間4すなわち窪みが維持されるように、基材フィルム22Aを比較的に硬質な材料で形成しておくことが好ましい。
【0027】
図4は、第1実施形態の他の変形例にかかる光学素子の一例を示す断面図である。図4に示す光学素子300は、図1に示す光学素子100に対して、第2保護フィルム20Bを省略したものである。また、図4に示す光学素子200は、図1に示す光学素子100に対して、X方向およびY方向においてナノ構造体10の外側に位置する第1保護フィルム20Aを省略したものである。この構成により、第1保護フィルム20Aによってナノ構造体10の入射面10a側を保護しつつ、光学素子300の厚みを小さくすることが可能となる。
【0028】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態にかかる光学素子の一例を示す断面図である。第2実施形態にかかる光学素子400は、第1実施形態の光学素子100の保護フィルム20に代えて、第1保護フィルム40Aおよび第2保護フィルム40Bを含む保護フィルム40を備えている。光学素子400の他の構成は、光学素子100と同様であるため、説明を省略し、同一の構成には同一の符号を付す。
【0029】
(第1保護フィルム)
第1保護フィルム40Aは、ナノ構造体10の透明基材12側の面である出射面10bを覆う。第1保護フィルム40Aは、基材フィルム42Aと、粘着剤層44Aとを有する。基材フィルム42Aは、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。基材フィルム42Aは、第1実施形態の基材フィルム22Aまたは基材フィルム22Bと同じ材料で形成されればよい。粘着剤層44Aは、基材フィルム22Aの一方側の面に粘着されている。粘着剤層44Aは、ナノ構造体10の透明基材12の出射面10bに基材フィルム42Aを粘着させる。それにより、第1保護フィルム40Aがナノ構造体10に対して着脱自在に取り付けられる。粘着剤層24Aは、例えば、粘着剤層44Aは、例えば、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上75μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下の厚みに形成される。また、粘着剤層44Aは、第1実施形態の粘着剤層24Aと同じ材料で形成されればよい。基材フィルム42Aおよび粘着剤層44Aは、図5に示すように、X方向およびY方向において、ナノ構造体10よりも大きく形成されている。
【0030】
(第2保護フィルム)
第2保護フィルム40Bは、ナノ構造体10のナノ構造14側の面である入射面10aを覆う。すなわち、第2保護フィルム40Bは、多孔質層16の入射面10aを覆う。第2保護フィルム40Bは、ナノ構造体10と粘着しない基材フィルム42Bを含む。基材フィルム42Bは、例えば、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上300μm以下、さらに好ましくは20μm以上200μm以下の厚みに形成される。また、基材フィルム42Bは、第1実施形態の基材フィルム22Aまたは基材フィルム22Bと同じ材料で形成されればよい。基材フィルム42Bは、図5に示すように、ナノ構造体10の入射面10aと、側面10cとの全体を覆う大きさに形成されている。そして、基材フィルム42Bは、X方向およびY方向において、ナノ構造体10の外側で第1保護フィルム40Aの粘着剤層44Aに粘着する。これにより、第2保護フィルム40Bがナノ構造体10に着脱自在に取り付けられる。
【0031】
光学素子400を製造する際には、ナノ構造体10の出射面10b側を覆うように第1保護フィルム40Aを配置し、第1保護フィルム40Aの粘着剤層44Aを出射面10bに粘着させる。そして、ナノ構造体10の入射面10aおよび側面10c側を覆うように第2保護フィルム40Bを配置し、ナノ構造体10の外側で、第1保護フィルム40Aの粘着剤層44Aに第2保護フィルム40Bを粘着させる。これにより、図5に示す光学素子400が形成される。
【0032】
以上説明したように、第2実施形態にかかる光学素子400において、保護フィルム40は、ナノ構造体10の出射面10b側を覆う第1保護フィルム40Aと、ナノ構造体10の入射面10a側を覆う第2保護フィルム40Bとを含み、第1保護フィルム40Aは、基材フィルム42Aと、基材フィルム42Aを出射面10bに粘着させる粘着剤層44Aとを有し、第2保護フィルム40Bは、ナノ構造体10の外側で、第1保護フィルム40Aの粘着剤層44Aに粘着して、ナノ構造体10に取り付けられ、非粘着領域3を形成する。
【0033】
すなわち、第2保護フィルム40Bは、粘着剤を介することなく、ナノ構造体10の入射面10aを覆う。その結果、図5に示すように、第2保護フィルム40B自体が、ナノ構造14と重なる部分に設けられた非粘着領域3を形成することなる。つまり、第2保護フィルム40Bの基材フィルム42Bのうち、多孔質層16と当接する部分が非粘着領域3となる。そのため、第1実施形態と同様に、粘着剤層44Aに含まれる粘着剤がナノ構造体10の内部に入り込んだり、第2保護フィルム40Bをナノ構造体10から剥がしたときに、ナノ構造体10に粘着剤が残留したりすることを抑制できる。その結果、ナノ構造体10の偏光特性が粘着剤に起因して変わってしまうことや、光学素子400の外観の見栄えが悪くなることを抑制することが可能となる。したがって、第2実施形態によれば、偏光機能を有するナノ構造体10を備えた光学素子400において、粘着剤に起因したナノ構造体10の劣化をより適切に抑制できる。
【0034】
また、第2実施形態において、粘着剤層44Aは、第2保護フィルム40Bに対する粘着力よりも、第1保護フィルム40Aに対する粘着力が強いことが好ましい。この構成により、ナノ構造体10から保護フィルム40を剥がすとき、第2保護フィルム40Bを第1保護フィルム40Aよりも先に剥がすことができる。その結果、第1保護フィルム40Aによって、ナノ構造体10の透明基材12を次のプロセスの直前まで保護することが可能となる。
【0035】
なお、第2実施形態においても、多孔質層16は、省略されてもよい。この場合でも、第2保護フィルム40Bが非粘着領域3を形成するため、粘着剤がナノ構造14の隙間に入り込んだり、粘着剤を剥がすときにナノ構造14に粘着剤が残留したりすることを抑制し、ナノ構造体10の劣化を抑制することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
2 有効領域
3 非粘着領域
10 ナノ構造体
14 ナノ構造
20,40 保護フィルム
20A,40A 第1保護フィルム
20B,40B 第2保護フィルム
24A 粘着剤層
100,200,300,400 光学素子
図1
図2
図3
図4
図5