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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093058
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】河床高測定装置および河床高測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 13/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
G01C13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206135
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】591260672
【氏名又は名称】中電技術コンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】林 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀和
(72)【発明者】
【氏名】細井 啓示
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有効応力を有する河床高を把握するために、水圧計を用いて土圧を計測可能とする河床高測定装置を提供する。
【解決手段】外部からの圧力を直接内部に伝える変形可能な中空袋状の被覆部材1と、第1水圧計21と、を備え、被覆部材1の中空部分は、液体で満たされるとともに、第1水圧計が配置されている河床高測定装置10を準備し、河床高測定装置と、第2水圧計22と、を河床内の略同じ高さに埋設し、第1水圧計21は、液体の圧力を、被覆部材1にかかる水圧および土圧の和として計測し、第2水圧計22は水圧を計測し、第1水圧計21で計測された第1計測値から、第2水圧計22で計測された第2計測値を差し引いて、河床の土圧を算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの圧力を直接内部に伝える変形可能な中空袋状の被覆部材と、水圧計と、を備え、
前記被覆部材の中空部分は、液体で満たされるとともに前記水圧計が配置されていることを特徴とする河床高測定装置。
【請求項2】
前記被覆部材の上部に載置される平板状のプレート部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の河床高測定装置。
【請求項3】
外部からの圧力を直接内部に伝える変形可能な中空袋状の被覆部材と、第1水圧計と、を備え、該被覆部材の中空部分は、液体で満たされるとともに該第1水圧計が配置されている河床高測定装置を準備し、
前記河床高測定装置と、第2水圧計と、を河床内の略同じ高さに埋設し、
前記第1水圧計は、前記液体の圧力を、該被覆部材にかかる水圧および土圧の和として計測し、
前記第2水圧計は水圧を計測し、
前記第1水圧計で計測された第1計測値から、前記第2水圧計で計測された第2計測値を差し引いて、河床の土圧を算出することを特徴とする河床高測定方法。
【請求項4】
前記河床高測定装置は、前記被覆部材の上部に載置される平板状のプレート部材をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の河床高測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河床高測定装置および河床高測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洪水等の水害を予防するために、一般的に水圧計を用いて河川の水位計測が行われている。しかしながら、洪水時、洗堀や堆積により河床高は絶えず変化するため、水位だけでなく河床高も計測することが重要である。
【0003】
流砂量を測定するための観測枡の中の河床高の測定に限ればいくつか方法がある。例えば、観測枡の底部に板を置き、板の上に堆積した土砂重量をロードセルが電気信号に変換して、連続測定する方法である。この方法は装置が高価であるとともに、原理的に河床高測定に応用することは難しい。防水カメラを観測枡の内部に設置し、インターバル撮影する方法もあるが、洪水時の乱流によりレンズが破損するおそれがある上に、高濃度土砂流中で河床面を撮影することは困難である。また、調査員が観測枡に棒状の観測具を差し込んで堆積厚を計測する方法は一般的であるが、洪水時の河床高測定は安全性の面でほぼ不可能である。したがって、これらのいずれの方法も、洪水時の河床高測定には応用できない。
【0004】
現存の河床高測定方法として、特許文献1には、河川に電極センサを取り付けたベースプレートを立て、電極間の比抵抗値から河川の河床高を計測する方法が開示されている。また、特許文献2には、予め河床内に埋設されたセグメントが、土砂の洗堀により露出し、河床から離脱した際にセンサにより検知されることを利用して、河川の洗堀による経時変化を計測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-17228号公報
【特許文献2】特許第5538776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、装置自体が洪水時の流水抵抗になるおそれや、装置を設置したことによって局所洗堀が起こるおそれがある。また、構造物の安全性の観点から、構造物を支えることのできる力(有効応力)のある高さを河床高とし、その高さを維持できているかということを把握することが重要となるが、この方法では、水面側から河床側にかけて濃度に幅のある土砂において、どの範囲を河床高とするか定義が難しいという問題もある。
【0007】
特許文献2の発明は、河床内に埋設されたセグメントが流されることによって、有効応力を有する河床高の減少を検知することが可能である。しかしながら、特許文献2の発明は、河床高の減少を検知することは可能であるが、堆積による増加を検知することはできない。洪水時、河川には上流から大量の土砂が流れ込み、下流の河床に堆積し、水の流れが滞ることで河川が氾濫する危険性がある。これを予防するためには、河床高の減少だけでなく増加も含めた経時変化を把握することが重要である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有効応力を有する河床高を把握するために、水圧計を用いて土圧を計測可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、外部からの圧力を直接内部に伝える変形可能な中空袋状の被覆部材と、水圧計と、を備え、前記被覆部材の中空部分は、液体で満たされるとともに前記水圧計が配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、水圧計は、被覆部材中に満たされた液体の水圧を計測することで、被覆部材にかかる圧力を計測することが可能となる。この河床高測定装置を、例えば河床内に埋設すると、水圧計は、被覆部材中に満たされた液体の水圧を、被覆部材上に堆積する土砂の土圧および水圧の和として計測することが可能である。特殊な装置を用いず、水圧計により土圧を計測して、河床高の増減を把握するという画期的な装置を提供することができる。水圧計は、河川の水位計測に一般的に用いられている水圧計を用いることができるため、コストも低い。河床高の増減を監視して河川の氾濫を予測するだけでなく、河床における土砂の動きの解明に役立てることが可能となり、治水対策や河川事業に活用することができる。また、例えば、砂防施設の土砂の中に埋設すれば、土砂がどれだけ堆積したかを監視することが可能であるため、土石流による下流の被害軽減に活用できる。
【0011】
第1の発明において、前記被覆部材の上部に載置される平板状のプレート部材をさらに備えてもよい。
【0012】
被覆部材が外部からの圧力を受けた際、被覆部材において張力が発生する。被覆部材内に満たされた水圧は、その張力の大きさだけ減少する。上記の構成によると、このような張力の発生による内部水圧の低減を、プレート部材によって抑制することが可能となり、土圧の計測をより高精度に行うことができる。
【0013】
第2の発明では、外部からの圧力を直接内部に伝える変形可能な中空袋状の被覆部材と、第1水圧計と、を備え、該被覆部材の中空部分は、液体で満たされるとともに該第1水圧計が配置されている河床高測定装置を準備し、前記河床高測定装置と第2水圧計と、を河床内の略同じ高さに埋設し、前記第1水圧計は、前記液体の圧力を、該被覆部材にかかる水圧および土圧の和として計測し、前記第2水圧計は水圧を計測し、前記第1水圧計で計測された第1計測値から、前記第2水圧計で計測された第2計測値を差し引いて、河床の土圧を算出することを特徴とする。なお、第2の発明において、前記河床高測定装置は、前記被覆部材の上部に載置される平板状のプレート部材をさらに備えてもよい。
【0014】
上記の構成によると、第1の発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0015】
有効応力を有する河床高を把握するために、水圧計を用いて土圧を計測可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の河床高測定装置の分解図である。
図2】本実施形態の河床高測定装置の機能を確認するための実験のデータである。
図3】本実施形態の河床高測定装置の機能を確認するための実験のデータである。
図4】本実施形態の河床高測定装置の使用状態を示す河川の断面模式図である。
図5】河川の断面と水圧および土圧を説明する概略図である。
図6】本実施形態の河床高測定装置を用いた検証実験の断面模式図である。
図7】本実施形態の河床高測定装置を用いた検証実験の断面模式図である。
図8】実施例1における計測値の時間変化を示すグラフである。
図9】実施例1における土圧の時間変化を示すグラフである。
図10】実施例2における計測値の時間変化を示すグラフである。
図11】実施例2における土圧の時間変化を示すグラフである。
図12】実施例1および2における土圧の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1は、本実施形態の河床高測定装置10の分解図である。河床高測定装置10は、外部からの応力により変形可能な中空袋状の被覆部材1と、水圧計2と、を備える。
【0019】
被覆部材1は、内部に中空部を有していれば、形状は特に限定されず、外部からの圧力を直接被覆部材1の内部に伝えることのできる変形可能な柔軟性を有していれば、素材も特に限定されない。本実施形態では、被覆部材1としてゴム製のタイヤチューブ(Φ30cm)が用いられている。また、被覆部材1として、例えば防破性のあるプラスチック製の密閉袋を用いることも可能である。
【0020】
被覆部材1の中空部分は、液体3で満たされるとともに水圧計2が配置されている。液体3は、圧縮性のない液体であれば特に限定されず、本実施形態では液体3として水が用いられている。被覆部材1は、中空部分に液体3を満たすとともに水圧計2を配置して、密閉される。
【0021】
水圧計2は、公知のものを用いることが可能であり、水圧計2は水圧式水位計、圧力式水位計、投げ込み式水位計等と呼ばれるものであってもよい。本実施形態では、ペン型の水圧計である応用地質株式会社製のS&DLminiが用いられている。水圧計2は、端部に電気素子である圧力センサを備え、圧力センサが液体圧を受けると、その液体圧を半導体圧力変換素子により電気信号に変換する。水圧計2は、回収した後データを取り込むものや、設置した状態のまま外部と通信して測定結果を送信可能なもの等、様々な仕様のものを使用可能である。
【0022】
本実施形態の河床高測定装置10は、被覆部材1の上部に載置される平板状のプレート部材4をさらに備える。プレート部材4は、例えば金属製の平板部材である。プレート部材4は、被覆部材1の上部だけでなく、被覆部材1を上下から挟み込むように、下部にも載置されてもよい。プレート部材4は移動しないよう、被覆部材1に固定されていることが望ましい。このプレート部材4を用いることによって、被覆部材1の表面が平らになり、被覆部材1が圧力を受けた際、被覆部材1に張力が発生するのを防止し、張力による内部水圧の低減を防止することができる。
【0023】
本実施形態の河床高測定装置10は、荷重を電気信号に変換するロードセルとして使用可能であることを確認した。図2は空気中に、図3は水中に、河床高測定装置10を設置し、段階的に河床高測定装置10に重りを載せ、水圧計2が示した値を下記式1,2に当てはめ、実際の重りの重量との比較を行った結果を示すグラフである。
【0024】
空気中における水圧計2の上昇量ΔPは、重りの重力ρgV(ρは重りの密度、Vは重りの体積)とプレート部材4と被覆部材1の間の断面積Aを用いて式1であらわされる。
【0025】
【数1】
【0026】
水中の場合は、式2であらわされる。
【0027】
【数2】
【0028】
式1が水中重量になり、周囲の水圧変化によっても水圧計2が変化するため、Δhを水圧計2で計測すれば重りの水中重量が求まる。
【0029】
【数3】
【0030】
水中土圧を計測する場合は、プレート部材4の上の土砂体積がΔZ(1-λ)Aであらわされる。AとAは一定であり、これをほぼ等しいとして消去すると、ΔPとΔhを用いて式3からΔZが計算できる。
【0031】
図2に示すように、空気中では、理論値とほとんど差は生じなかった。また、図3に示すように、水中においても理論値との間に大きな差は生じなかった。これらの誤差はA、あるいは重りの体積による誤差と考えられ、本実施形態の河床高測定装置10は水中においてもロードセルとして使用可能であることが確認できた。
【0032】
図4に示すように、本実施形態の河床高測定装置10を用いて土圧を測定する際には、別途、水圧計2を使用する。なお、図4中、Hは河川の水面高(水位)を示し、Bは河床面高を示す。河床高測定装置10に用い被覆部材1の中空内部に設置する水圧計2を第1水圧計21とし、別途用いる水圧計を第2水圧計22とする。第1水圧計21と第2水圧計22は同様の水圧計である。第2水圧計は、河床高測定装置10の近傍において、直接河床に埋設される。図4では、被覆部材1の厚みおよびプレート部材4の厚みを誇張しているが、実際は、河床高測定装置10内の第1水圧計21と第2水圧計22は河床内において略同じ高さに埋設される。
【0033】
(河川における水圧および土圧の関係と計測方法)
次に、図5を用いて、河川における水圧と土圧との関係を説明する。水圧は、水面高Hから下方に向かって大きくなる。河床における土砂内においても、間隙水圧として水圧が発生している。土圧は、河床において堆積した土砂によって発生する。土圧は、土砂の堆積厚が増加するほど大きくなる。
【0034】
土砂内に直接設置される第2水圧計22においては、間隙水圧を含めた水圧のみが計測される。第2水圧計の上部に存在する土砂は、隣り合う土砂の粒子が互いにその重量を支え合っているため、第2水圧計の計測値にはその土圧が反映されない。
【0035】
一方、河床高測定装置10は、その上部に存在する土砂および水の圧力が被覆部材1へ応力として加わり、その応力が被覆部材1中の液体3の水圧として第1水圧計21に計測される。よって、河床高測定装置10は、第1水圧計21が、液体3の圧力を計測することにより、河床高測定装置10より上部に存在する水および土砂による水圧および土圧の和を計測することが可能である。
【0036】
よって、河床高測定装置10の第1水圧計21によって計測された第1計測値から、第2水圧計22で計測された第2計測値を差し引くことにより、水中重量による土圧を算出でき、土砂の堆積厚さを計算することが可能となる。
【0037】
(検証実験:実施例1および実施例2)
本実施形態の河床高測定装置10の実用性を確認するため、検証実験として実施例1および実施例2を行った。実施場所は、広島県広島市安佐南区可部根谷川4.8km地点の東原頭首堰である。
【0038】
この検証実験では、図6および図7に示すように流砂桝5(100cm×100cm×100cm)を用いて行った。流砂桝5の内部に、河床高測定装置10および第2水圧計22を略同じ高さに設置した。河床高測定装置10は、下部に配置するプレート部材4の底面にボルトを打ち込み、流砂桝5へ固定した。さらに、上部に配置するプレート部材4は移動しないよう被覆部材1と針金で固定した。また、第2水圧計22は、土嚢袋に入れ、河床高測定装置10を固定した針金を用いて、大きく移動しないように固定した。また、大気圧補正用の大気圧計を、河川付近に設置した。
【0039】
(実施例1)
実施例1において、河床高測定装置10は、被覆部材1に液体3として2.8Lの河川の水を満たし、その中に第1水圧計21を入れて密閉したものを準備した。
【0040】
そして、上記の方法で、河床高測定装置10および第2水圧計22を流砂桝5へ設置した後、土砂を流し込み、図6に示すように、初期堆積厚を約0cm、流砂桝5の底部から水面までを約60cmとした。
【0041】
図6に示す初期状態から、流砂桝5内に土砂を約10cm流し込み、5分間静置した状態で、第1水圧計21および第2水圧計22によって、それぞれ水圧を計測した。この作業を複数回行い、段階的に土砂の堆積厚を増やし、水圧の変化を計測した。なお、実施例1において、水位Hは、土砂の堆積厚が50cm以下の時は、流砂桝5の底部から水面までが約60cmで一定とし、土砂の堆積厚が50cmを超すと、土砂の流入とともに約10cmずつ上昇するようにした。
【0042】
(実施例2)
実施例2において、河床高測定装置10は、被覆部材1に液体3として3.1Lの河川の水を満たし、その中に第1水圧計21を入れて密閉したものを準備した。
【0043】
実施例1と同様に河床高測定装置10および第2水圧計22を流砂桝5へ設置した後、土砂を流し込み、図7に示すように、初期堆積厚を約0cm、流砂桝5の底部から水面までを約100cmとした。
【0044】
図7に示す状態から、流砂桝5内に土砂を約10cm流し込み、5分間静置した状態で、第1水圧計21および第2水圧計22によって、それぞれ水圧を計測した。この作業を複数回行い、段階的に土砂の堆積厚を増やし、水圧の変化を計測した。なお、実施例2において、水位Hは検証開始時から常に満水の状態とした。
【0045】
(検証結果)
実施例1の計測結果を図8に示し、実施例2の計測結果を図10に示す。いずれの計測結果においても、河床高測定装置10の第1水圧計21によって計測された第1計測値は、土圧および水圧の和の値を示し、第2水圧計22によって計測された第2計測値は水圧の値を示す。
【0046】
実施例1の計測結果をもとに、第1計測値から第2計測値を差し引き、土圧を算出して時間変化のグラフにしたものを図9に示し、実施例2の計測結果をもとに、第1計測値から第2計測値を差し引き、土圧を算出して時間変化に対するグラフにしたものを図11に示す。
【0047】
また、図12は、実施例1および実施例2において算出された土圧の平均値を土砂堆積厚に対してプロットしたものである。
【0048】
図8から図12に示すように、実施例1および実施例2とも、土砂の堆積厚を変化させるに従い、第1計測値および土圧は上昇した。これにより、本実施形態の河床高測定装置10を用いれば、土砂の堆積による河床高の時間変化を土圧の計測により把握することが可能であることが確認できた。
【0049】
図9図11および図12に示すように、実施例2と比して、実施例1の方が土圧の変化量が少なかった。実施例1は実施例2よりも、被覆部材1内の液体3の量が少ないが、室内における予備実験によって、被覆部材1内の液体量の違いは実験結果には影響しないことが確認できているため、この違いは実験条件による影響であると考えられる。よって、実際の計測条件に近い実施例2の方が河床高測定装置10の感度が高いと言える。
【0050】
実施例1および実施例2ともに、土砂投入後に静置した状態で、第1計測値はやや減少する傾向にある。これは、土砂の自重による締固めによって、間隙水が抜け、上向きのせん断力が大きくなっているためであると考えられる。
【0051】
また、土砂の体積厚が厚くなると、計測値の増加量が小さくなっていた。これは、土砂の堆積厚が厚くなると、張力が大きくなるためであると考えられる。また、堆積厚が薄い時、土砂のせん断力は小さく、河床高測定装置10は塊としての土砂の荷重を受けるため、計測値の増加量は大きく、堆積厚が厚くなった時、土砂の自重によりせん断力が大きくなり、河床高測定装置10は粒子としての土砂の荷重を受けるため、計測値の増加量が小さくなると考えられる。しかし、実際の計測においては護岸極近傍以外においてはせん断力の影響は小さいと考えられる。
【0052】
以上のように構成した本実施形態の河床高測定装置10によれば、第1水圧計21から第2水圧計22の値を差し引くことで、計測した水圧をもとに土圧のみを算出することが可能となる。特殊な装置を用いず、水圧計により土圧を計測することで、河床高の増減を把握するという画期的な方法を提供することができる。第1水圧計21および第2水圧計22は、河川の水位計測に一般的に用いられている水圧計を用いることができるため、コストも低い。河床高の増減を監視して河川の氾濫を予測するだけでなく、河床における土砂の動きの解明に役立てることが可能となり、治水対策や河川事業に活用することができる。また、例えば、砂防施設の土砂の中に河床高測定装置10および第2水圧計22を埋設すれば、土砂堆積厚の経時変化を監視することが可能であり、砂防施設の現堆積容量をリアルタイムで把握し、土石流の発生時の危険度を早期検知することにも有効に活用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 被覆部材
2 水圧計
3 液体
4 プレート部材
5 流砂桝
10 河床高測定装置
21 第1水圧計
22 第2水圧計
H 水面高(水位)
B 河床面高
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12