(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093075
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】CO2回収装置及びCO2回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20220616BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220616BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220616BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20220616BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/04 230
C01B32/50
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206169
(22)【出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】村上 真二
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4D002
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB19
4B065AA83X
4B065AC20
4B065BC07
4B065CA54
4D002AA09
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA46
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB04
4D012BA03
4D012CA03
4D012CB12
4D012CD02
4D012CE03
4D012CF03
4D012CG01
4D012CJ02
4D012CJ05
4G146JA02
4G146JB04
4G146JB09
4G146JC12
4G146JC18
4G146JC24
4G146JC25
4G146JC35
4G146JC39
(57)【要約】
【課題】藻類の培養に利用されるCO
2回収装置において、CO
2を適切に濃縮して、ガスの圧送やバブリングにかかるエネルギーを削減し、未利用の低品位廃熱の有効活用を行う。
【解決手段】CO
2回収装置は、内部にCO
2吸着剤3を充填した吸着筒2と、前記吸着筒2の上下に延びる原料ガス流通ライン4、5と、前記吸着筒2の上部に設けられる水蒸気供給ライン6と、前記吸着筒2の上部に設けられるCO
2回収ライン7と、前記吸着筒2の下部に設けられるドレン水排出ライン8とを備え、前記CO
2回収ライン7には背圧弁10が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスから当該原料ガス中に含まれるCO2を回収するCO2回収装置であって、
内部にCO2吸着剤を充填した吸着筒と、前記吸着筒の上下に延びる原料ガス流通ラインと、前記吸着筒の上部に設けられる水蒸気供給ラインと、前記吸着筒の上部に設けられるCO2回収ラインと、前記吸着筒の下部に設けられるドレン水排出ラインとを備え、
前記CO2回収ラインには背圧弁が設けられていることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項2】
前記背圧弁の設定圧力が100kPa(g)以上、1400kPa(g)以下であることを特徴とする請求項1記載のCO2回収装置。
【請求項3】
前記CO2回収ラインが藻類の培養装置に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載のCO2回収装置。
【請求項4】
前記原料ガスは、200℃未満の廃熱を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のCO2回収装置。
【請求項5】
原料ガスから当該原料ガス中に含まれるCO2を回収するCO2回収方法であって、
内部にCO2吸着剤を充填した吸着筒に、原料ガスを導入して吸着分離を行うCO2吸着工程と、
前記吸着筒に上部から水蒸気を導入して、前記CO2吸着剤に吸着されたCO2を脱離させ、吸着筒上部のCO2回収ラインから回収するCO2回収工程と、
前記水蒸気によって前記吸着筒下部に生じたドレン水を、前記吸着筒下部のドレン水排出ラインから排出するブロー工程と、
前記CO2吸着剤の冷却と乾燥を行う冷却・乾燥工程とを繰り返して行うことを特徴とするCO2回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収装置及びCO2回収方法に関し、詳しくは、原料ガス(排ガス)中のCO2を吸着分離するCO2吸着筒を備えたCO2回収装置及び当該CO2回収装置を用いたCO2回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、石油化学工業、製紙業、窯業などでは、CO2が1~20%程度含まれる排ガスを大気中に放出している。CO2は代表的な温室効果ガスであり、排出量の削減を求められていることから、上記排ガス中のCO2の分離回収方法が各種検討されている。例えば、吸収液や吸着剤を用いた分離回収技術がある(特許文献1を参照。)。
【0003】
その一方で、分離回収したCO2の有効利用についても各種方法が検討されており、その一つとして、藻類の培養が挙げられる。藻類の培養を効率的に行う場合は、培養槽に5~20%程度のCO2を含むガスをバブリングして、水中にCO2を溶解させる。その際、バブリングには30~70kPa(g)程度の圧力が必要となる。そこで、圧力の小さい排ガスを利用する場合には、ブロア等で昇圧する必要があり、そのためのエネルギーが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、CO2濃度が1%程度の排ガスを用いた場合でも、当該排ガスをバブリングしての藻類の培養は可能ではある。しかしながら、CO2濃度が5%程度の排ガスを用いた場合と比べると、培養の効率は低下してしまう。また、濃度の薄いガスを用いて藻類の培養に必要なCO2の量を確保するためには、大量のガスを圧送しなければならなくなるため、ブロア等で必要となるエネルギーが増大してしまう。そのため、CO2を適切に濃縮して、ガスの圧送やバブリングにかかるエネルギーを削減することが求められている。
【0006】
また、火力発電所、石油化学工業、製紙業、窯業などでは、そのプロセスにおいて、様々な廃熱が発生している。特に、200℃未満の低品位廃熱はその大半が未利用となっており、エネルギー利用の観点から、有効活用が望まれている。
【0007】
以上の点に鑑みて、本発明は、CO2回収装置及びCO2回収方法において、CO2を適切に濃縮して、ガスの圧送やバブリングにかかるエネルギーを削減すること、得られるCO2を藻類の培養に利用すること、また、排ガスの有する未利用の廃熱の有効活用を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明は、原料ガスから当該原料ガス中に含まれるCO2を回収するCO2回収装置であって、内部にCO2吸着剤を充填した吸着筒と、前記吸着筒の上下に延びる原料ガス流通ラインと、前記吸着筒の上部に設けられる水蒸気供給ラインと、前記吸着筒の上部に設けられるCO2回収ラインと、前記吸着筒の下部に設けられるドレン水排出ラインとを備え、前記CO2回収ラインには背圧弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の発明は、前記背圧弁の設定圧力が100kPa(g)以上、1400kPa(g)以下であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第3の発明は、前記CO2回収ラインが藻類の培養装置に接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第4の発明は、前記原料ガスは、200℃未満の廃熱を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第5の発明は、原料ガスから当該原料ガス中に含まれるCO2を回収するCO2回収方法であって、内部にCO2吸着剤を充填した吸着筒に、原料ガスを導入して吸着分離を行うCO2吸着工程と、前記吸着筒に上部から水蒸気を導入して、前記CO2吸着剤に吸着されたCO2を脱離させ、吸着筒上部のCO2回収ラインから回収するCO2回収工程と、前記水蒸気によって前記吸着筒下部に生じたドレン水を、前記吸着筒下部のドレン水排出ラインから排出するブロー工程と、前記CO2吸着剤の冷却と乾燥を行う冷却・乾燥工程とを繰り返して行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、水蒸気の自圧を用いることで、吸着剤に吸着されたCO2を圧力が高い状態で回収できるため、ブロア等による昇圧が不要になり、その分のエネルギーを削減することができる。また、CO2回収ラインにおいてCO2回収時に背圧弁を通過するため、CO2を適切に濃縮することができる。
【0014】
第2の発明によれば、水蒸気の自圧を有効利用して、十分な圧力でCO2を圧送し、バブリングに用いることができる。
【0015】
第3の発明によれば、CO2回収装置によって回収されたCO2を藻類の培養に好適に用いることができる。
【0016】
第4の発明によれば、排ガスの有する未利用の200℃未満の低品位廃熱を用いて、当該排ガスからCO2を回収するだけでなく、廃熱のエネルギーを水蒸気の発生に利用することができるので、火力発電所、石油化学工業、製紙業、窯業などにおいて放出される排ガスの有効活用を行うことができる。
【0017】
第5の発明によれば、第1の発明と同様に、水蒸気の自圧を用いることで、CO2を圧力が高い状態で回収できるため、ブロア等による昇圧が不要になり、その分のエネルギーを削減することができる。また、CO2回収時に背圧弁を通過するため、CO2を適切に濃縮することができる。さらに、工程を繰り返すことでCO2の回収を連続的に行うことができる。
【0018】
以上より、本発明のCO2回収装置及びCO2回収方法によれば、CO2を適切に濃縮して、ガスの圧送やバブリングにかかるエネルギーを削減することができる。また、得られるCO2を藻類の培養に利用することができる。また、排ガスの有する未利用の廃熱の有効活用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のCO
2回収装置の一形態例を示す図である。
【
図2】上記CO
2回収装置を用いたCO
2回収プロセスの工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明を適用したCO
2回収装置の一形態例を示すものである。
【0021】
CO
2回収装置1は、
図1に示されるように、内部にCO
2吸着剤3を充填した吸着筒2と、前記吸着筒2の上下に延びる原料ガス流通ライン(上部原料ガス流通ライン4、下部原料ガス流通ライン5)と、前記吸着筒2の上部に設けられる水蒸気供給ライン6と、前記吸着筒2の上部に設けられるCO
2回収ライン7と、前記吸着筒2の下部に設けられるドレン水排出ライン8とを備えている。
【0022】
上部原料ガス流通ライン4は、原料ガス(火力発電所、石油化学工業、製紙業、窯業などにおいて放出される排ガス)を吸着筒2に導入するためのものであり、その上流側には、原料ガスを必要に応じて昇圧するためのブロア9が設けられており、当該ブロア9の下流側には、ラインの開閉を制御する上部原料ガス流通バルブV1が設けられている。
【0023】
下部原料ガス流通ライン5は、吸着筒2でCO2を吸着した後の原料ガスを排気するためのものであり、その途中にはラインの開閉を制御する下部原料ガス流通バルブV2が設けられている。
【0024】
吸着筒2は、原料ガス中のCO2を回収するためのものであり、中にCO2吸着剤3が充填されている。原料ガスがCO2吸着剤3を通過すると、その中のCO2が吸着され、CO2以外のガス成分と分離される。前記CO2吸着剤3の材質としては、活性炭や活性アルミナなど、100℃程度の加熱でCO2を容易に脱離できるとともに、水蒸気の流通に耐える性質のものが良い。特に、疎水性の吸着剤である活性炭が好ましい。
【0025】
水蒸気供給ライン6は、CO2吸着剤3を再生してCO2を回収する際に用いられる水蒸気を供給するためのものであり、吸着筒2の上部に設けられている。その途中にはラインの開閉を制御する水蒸気供給バルブV3が設けられている。水蒸気は、原料ガスの持つ200℃未満の低品位廃熱を利用して作られ、ある程度の圧力(自圧)を有している。
【0026】
CO2回収ライン7は、CO2吸着剤3の再生によって当該吸着剤3から脱離したCO2を回収するためのものであり、吸着筒2の上部に設けられている。当該CO2回収ライン7の上流には、ラインの開閉を制御するCO2回収バルブV4が設けられており、当該CO2回収バルブV4の下流には、背圧弁10が設けられている。また、CO2回収ライン7は、藻類の培養装置(図示せず)に接続されており、回収したCO2を藻類の培養に使用するようになっている。
【0027】
ドレン水排出ライン8は、CO2吸着剤3の再生において水蒸気が凝縮して生成したドレン水を排出するためのものであり、吸着筒2の下部に設けられている。その途中にはラインの開閉を制御するドレン水排出バルブV5が設けられている。
【0028】
以上のように構成されたCO
2回収装置1を用いた原料ガスからのCO
2回収プロセスは、
図2に示されるように、以下の第1工程~第4工程からなる。
【0029】
[第1工程:CO2吸着工程]
上部原料ガス流通バルブV1及び下部原料ガス流通バルブV2を開くと、原料ガス源(図示せず)から上部原料ガス流通ライン4に導入された原料ガスは、ブロア9及び上部原料ガス流通バルブV1を通過して、吸着筒2に導入され、CO2吸着剤3においてCO2が吸着分離される。吸着分離後の原料ガスは、下部原料ガス流通バルブV2を通過して、下部原料ガス流通ライン5から排気される。
【0030】
[第2工程:CO2回収工程]
CO2の吸着分離を行った後で、吸着されたCO2を回収するために、CO2吸着剤3の再生を行う。当該再生には、水蒸気が用いられる。上部原料ガス流通バルブV1及び下部原料ガス流通バルブV2を閉じて、水蒸気供給バルブV3及びCO2回収バルブV4を開くと、水蒸気供給ライン6から、水蒸気が吸着筒2の上部に導入され、当該水蒸気によってCO2吸着剤3に吸着されているCO2が脱離する。なお、上記水蒸気は、原料ガスの生成において生じた廃熱を有効利用して生成されたものである。
【0031】
CO2吸着剤3から脱離したCO2は、CO2含有ガス(回収ガス)としてCO2回収ライン7から回収される。この際に、上記水蒸気が自圧を有しており、その自圧によって回収ガスの圧力が自然と高まって圧送されるので、ブロアや昇圧機等の装置は不要である。その後、上記CO2回収ライン7に設けられている背圧弁10によって、回収ガスの圧力が調整される。そこで、回収ガス中のCO2濃度も調整されたものとなる。CO2濃度が調整されることで、圧送するガスの量を低減することができるため、圧送に係るエネルギーを削減することができる。なお、回収ガスには水蒸気も多く含まれているが、藻類の培養においては、水分も必要な成分として用いられるので、特に問題とはならず、そのまま使用することができる。
【0032】
このとき、上記背圧弁10の設定圧力は100kPa(g)以上、1400kPa(g)以下とする。下限値を100kPa(g)とするのは、藻類培養槽でのバブリングを行うためには30~70kPa(g)程度の圧力が必要であり、100kPa(g)以上とすることでCO2含有ガスを好適に圧送することができるからである。なお、水蒸気の温度が120℃程度であれば100kPa(g)以上の圧力を得ることができる。また、上限値を1400kPa(g)とするのは、排ガスの持つ200℃未満の低品位廃熱で発生させる水蒸気の持つ圧力の上限が1400kPa(g)程度であり、背圧弁の設定圧力として、同圧力以下に設定することが望ましいからである。
【0033】
[第3工程:ブロー工程]
上記CO2吸着剤3の再生において、吸着剤の加熱や系外への放熱により、一部の水蒸気は凝縮して水滴となり、吸着筒2の下部に落下し、ドレン水となる。なお、本発明において、水蒸気供給ライン6及びCO2回収ライン7は吸着筒2の上部に設けられているので、ドレン水によって各ラインが閉鎖しないようになっている。
【0034】
水蒸気供給バルブV3及びCO2回収バルブV4を閉じて水蒸気の供給を停止し、ドレン水排出バルブV5を開いて、ドレン水をドレン水排出ライン8から排出する。この排出は、吸着筒2内部の残圧を利用して行うことができる。なお、上記ドレン水には大量のCO2が溶解しているため、回収して藻類の培養装置に供給することもできる。
【0035】
[第4工程:冷却・乾燥工程]
ドレン水排出バルブV5を閉じて、上部原料ガス流通バルブV1及び下部原料ガス流通バルブV2を開いて原料ガスを流すと、吸着筒2内部でCO2吸着剤3の冷却と乾燥が行われる。なお、この工程では、CO2吸着剤3のCO2吸着性能を低下させるものでなければ、原料ガスの代わりに、ドライエアーや窒素ガス等のガスを使用することもできる。
【0036】
上記第4工程(冷却・乾燥工程)が終了したら、上記第1工程(CO2吸着工程)を再び行う。そのようにして、上記第1工程~第4工程を繰り返して、原料ガスからのCO2回収プロセスが行われる。
【0037】
なお、上記形態例に示されるCO2回収装置1は吸着筒2を1つ備えるものであるが、当該吸着筒2の数は必ずしも1つである必要はなく、CO2回収を行う状況に応じて複数としてもよい。また、上記形態例において、原料ガスは上から下に、上部原料ガス流通ライン4から供給されて下部原料ガス流通ライン5から排気されるものとして示したが、逆方向の下から上に流通するものであっても構わない。また、原料ガスの圧力が高ければ、ブロア9等を用いた昇圧は不要である。また、必要に応じて、装置の前に、スクラバーなどの微量不純物除去装置、粉塵フィルター、精製器等を設けることができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・CO2回収装置、2・・・吸着筒、3・・・CO2吸着剤、4・・・上部原料ガス流通ライン、5・・・下部原料ガス流通ライン、6・・・水蒸気供給ライン、7・・・CO2回収ライン、8・・・ドレン水排出ライン、9・・・ブロア、10・・・背圧弁、V1・・・上部原料ガス流通バルブ、V2・・・下部原料ガス流通バルブ、V3・・・水蒸気供給バルブ、V4・・・CO2回収バルブ、V5・・・ドレン水排出バルブ