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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093808
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法
(51)【国際特許分類】
   B61B 7/00 20060101AFI20220617BHJP
   B64C 37/00 20060101ALI20220617BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220617BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220617BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220617BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220617BHJP
【FI】
B61B7/00 A
B64C37/00
B64D47/08
B64C39/02
B64C27/08
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206487
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】500216466
【氏名又は名称】住重アテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 恭介
(72)【発明者】
【氏名】岡 正明
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA01
2G024BA11
2G024CA22
(57)【要約】
【課題】屋外でも被検査面に近接して安定飛行できる飛行体による検査システムを提供する。
【解決手段】飛行体としてのドローンによる検査システムは、検査対象物の被検査面Sに沿って飛行可能なドローン本体と、ドローン本体を囲む保護フレームと、ドローン本体に設けられ、被検査面Sを撮像する撮像装置と、被検査面Sに沿って配設され、保護フレームが移動可能に取り付けられるガイドロープ61と、ガイドロープ61と保護フレームを連結する第1バンド62および第2バンド63を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の被検査面に沿って飛行可能な飛行体と、
前記飛行体を囲む保護部材と、
前記飛行体に設けられ、前記被検査面を撮像する撮像装置と、
前記被検査面に沿って配設され、前記保護部材が移動可能に取り付けられるガイド部材と
を備える検査システム。
【請求項2】
前記保護部材は、複数の網目を有する網状の部材であり、
前記ガイド部材は、前記網目を介して前記保護部材に取り付けられる
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記保護部材の前記網目と前記ガイド部材を連結する連結部材が設けられる
請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記飛行体は、飛行のための推進力を生成する推進部を備え、
前記撮像装置は、前記推進部と反対側に設けられる
請求項1から3のいずれかに記載の検査システム。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記推進部と反対側に取り付けられる
請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記被検査面は、前記検査対象物の外周面である
請求項1から5のいずれかに記載の検査システム。
【請求項7】
検査対象物の被検査面に沿って飛行可能な飛行体と、
前記飛行体を囲む保護部材と、
前記飛行体に設けられ、前記被検査面を撮像する撮像装置と
を用いた検査方法であって、
前記被検査面に沿ってガイド部材を配設するステップと、
前記保護部材を前記ガイド部材に移動可能に取り付けるステップと、
前記飛行体を前記ガイド部材に沿って飛行させ、前記撮像装置で前記被検査面を撮像するステップと
を備える検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛行体を用いた検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、屋内の検査に用いられるドローンが開示されている。このドローンは、プロペラを含むドローン本体にカメラが設けられ、それらを囲む球形の保護フレームで保護しながら近接距離から被検査面を撮像できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3239048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のドローンは、屋内検査用の小型ドローンであり、風の影響の大きい屋外では飛行の安定性を欠く。また、屋外検査用のドローンは、十分な風圧抵抗を得るためにプロペラを大型化する必要があり、特許文献1のような保護フレームを設けるのは現実的でなく、被検査面に近接した飛行は困難である。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋外でも被検査面に近接して安定飛行できる飛行体による検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の検査システムは、検査対象物の被検査面に沿って飛行可能な飛行体と、飛行体を囲む保護部材と、飛行体に設けられ、被検査面を撮像する撮像装置と、被検査面に沿って配設され、保護部材が移動可能に取り付けられるガイド部材とを備える。
【0007】
この態様によると、ガイド部材が保護部材を介して飛行体を支持するので、風の影響の大きい屋外でも飛行体は被検査面に近接して安定飛行できる。また、保護部材があるため、近接飛行する飛行体が被検査面に接触することも防止できる。
【0008】
本発明の別の態様は、検査方法である。この方法は、検査対象物の被検査面に沿って飛行可能な飛行体と、飛行体を囲む保護部材と、飛行体に設けられ、被検査面を撮像する撮像装置とを用いた検査方法であって、被検査面に沿ってガイド部材を配設するステップと、保護部材をガイド部材に移動可能に取り付けるステップと、飛行体をガイド部材に沿って飛行させ、撮像装置で被検査面を撮像するステップとを備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屋外でも被検査面に近接して安定飛行できる飛行体による検査システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の検査システムで用いられるドローンを示す正面図である。
図2】ドローンの機能ブロック図である。
図3】ドローンを用いた検査の態様を模式的に示す図である。
図4】ドローンを用いた検査の他の態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態の検査システムで用いられるドローン1を示す正面図である。ドローン1は、垂直離着陸(VTOL: Vertical Take-Off and Landing)型の球形ドローンであり、直径約400mmと小さいため、人が入れない狭い場所も飛行できる。また、小回りが利くため、図3に関して後述する鉄骨構造のような入り組んだ構造内も素早く飛行できる。ドローン1は、飛行のための推進力を生成する飛行体としてのドローン本体2と、飛行中のドローン本体2に固定されて検査対象物の被検査面を撮像する撮像装置3と、ドローン本体2および撮像装置3を囲んで保護する保護部材としての保護フレーム4を備える。
【0014】
ドローン本体2は、離着陸時に地面に平行となる面内(図1の水平面内)の正方形の頂点の位置に設けられる四つの推進部21と、これらの推進部21を互いに連結する支持構造としての支持フレーム22を備える。図1では、支持フレーム22によって左右に連結された二つの推進部21が示されるが、これらの後方にも同様の二つの推進部21が設けられる。
【0015】
各推進部21は、支持フレーム22よりも下方に設けられ離着陸時に地面と対向する主プロペラ211を有する。各推進部21は、支持フレーム22よりも上方で主プロペラ211と同軸上に設けられる副プロペラ212をさらに有してもよい。主プロペラ211は、それに取り付けられた主モータ213により回転駆動され、副プロペラ212は、それに取り付けられた副モータ214により回転駆動される。4つの主プロペラ211は、それらの回転面が同一の面Aに含まれ、それらの回転中心を頂点とする正方形を面A内に形成する。4つの副プロペラ212は、それらの回転面が同一の面Bに含まれ、それらの回転中心を頂点とする正方形を面B内に形成する。なお、面Aと面Bは互いに平行であり、各面内にプロペラ回転中心によって形成される正方形は互いに合同である。また、主プロペラ211および副プロペラ212の回転軸は面Aおよび面Bに垂直である。なお、変形例として、主プロペラ211の回転面を面Aからわずかに傾斜させてもよく、副プロペラ212の回転面を面Bからわずかに傾斜させてもよい。傾斜角度は任意であるが、典型的には1度から5度の間である。これにより、飛行時の安定性や制御性を向上できる。また、副プロペラ212を設けずに主プロペラ211のみを設けてもよい。主プロペラ211は飛行の最低限の安定性に鑑みて少なくとも三つ設けるのが好ましいが、それ以上であればいくつ設けてもよい。その際、各プロペラ回転中心が共通回転面内に線対称または点対称な図形(四角形であれば長方形や平行四辺形)を形成するのが好ましい。更に好ましくは線対称かつ点対称な図形(四角形であれば正方形や菱形)を形成する。
【0016】
推進部21が主プロペラ211に加えて副プロペラ212を有する場合、各プロペラを個別に回転駆動できるので、外部環境の変化に柔軟に対応できる。例えば、屋内検査の場合や、風の少ない屋外検査の場合は、主プロペラ211および副プロペラ212を同じ方向(時計回り方向または反時計回り方向)に回転駆動することにより、両プロペラからの推進力を合わせた大きな推進力を得ることができる。また、風の多い屋外検査の場合は、主プロペラ211で主な推進力を得つつ、副プロペラ212を主プロペラ211と同じ方向または逆の方向に適宜回転駆動することで、風の影響を補正する補助的な推進力を発生させることもできる。
【0017】
撮像装置3は、ドローン本体2の上方(離着陸時の鉛直方向の上方)に固定され、後述する保護フレーム4の撮像窓42から露出するように設けられる。撮像装置3は、高解像度カメラ31と、赤外線カメラ32と、照明装置としてのLEDライト33を備える。高解像度カメラ31は、可視光に基づく検査対象物の高解像度(例えば4K)の画像を撮像する。赤外線カメラ32は、検査対象物の温度に応じて放射される赤外線に基づく熱画像を撮像する。高解像度カメラ31と赤外線カメラ32は、検査対象物を同時に撮影する。同一の被検査面について一度に異なる種類の画像を取得できるため、一方の画像では見つけづらい異常を他方の画像では見つけられる等、効果的な検査を行える。LEDライト33は、主に暗所において検査対象物を照明し、高解像度カメラ31による撮像を支援する。撮像装置3により撮像する画像は動画でも静止画でもよい。なお、撮像装置3は、図1の水平方向の回転軸Cを中心として回転可能である。これにより、被検査面に正対するように撮像装置3を回転させ、高解像度カメラ31、赤外線カメラ32、LEDライト33によって所望の検査画像を撮像できる。なお、撮像装置3の下方には推進部21を含むドローン本体2があり、その検査画像への映り込みを予防するために、撮像装置3がドローン本体2に向かないように撮像装置3の回転を規制してもよい。
【0018】
保護フレーム4は、サスペンションを介してドローン本体2と接続され、ドローン本体2および撮像装置3の外周を囲んで保護する直径約400mmの球形の保護部材である。保護フレーム4の表面は、炭素繊維等の高強度素材からなる多数の棒状部材41の組合せにより網状に形成される。各棒状部材41は、保護フレーム4の表面の構成単位としての三角形の一辺を構成し、その三角形の内部が中空の網目になっている。図示されるように、保護フレーム4の表面の大部分は網目で占められており、外気の流通がほとんど妨げられない。したがって、保護フレーム4がドローン1の飛行に及ぼす影響は軽微である。なお、図から明らかなように、保護フレーム4は、主プロペラ211および副プロペラ212と接触または干渉しないように設けられるため、推進部21における推進力の生成を妨げない。なお、保護フレーム4は球形に限らず、ドローン本体2の外周を囲んで保護できるものであれば、どのような形状でもよく、例えば、直方体形状や回転楕円体形状でもよい。
【0019】
図1において、保護フレーム4の正面には撮像装置3を露出する撮像窓42が設けられる。撮像窓42は、保護フレーム4の表面の他の網目よりも広い面積に亘って棒状部材41が設けられておらず、ここから撮像装置3を露出させることで、棒状部材41の映り込みのない検査画像を撮像できる。ただし、棒状部材41は細く、検査画像内に映り込んでも大きな問題はないため、撮像装置3を撮像窓42より内部に配置して、撮像装置3の保護を重視してもよい。なお、撮像窓42の枠は棒状部材41よりも太く高強度の金属で形成され、撮像装置3周りの補強が図られている。また、球形の保護フレーム4において、撮像窓42は、球形の内側に引っ込んだ位置に設けられる。これにより、撮像窓42が物体に衝突しづらくなり、撮像装置3の保護が図られる。また、図1において、保護フレーム4の下面が水平方向に平らな接地面43となっている。これによって、離陸前および着陸後に、接地面43が接地した状態でドローン1が安定して自立できる。
【0020】
保護フレーム4があることで、ドローン1は検査対象物に安全に接近でき、近接距離から被検査面を撮像できる。保護フレーム4が被検査面に接触したとしても、高い弾性を持つ炭素繊維からなる棒状部材41が弾性変形して衝撃を吸収するため、保護フレーム4および被検査面の両方の破損を防止できる。また、弾性変形した棒状部材41によりドローン1が被検査面から跳ね返るため、再度の接触を防止できる。なお、図1において、保護フレーム4の内部に設けられる推進部21は、保護フレーム4の弾性変形も考慮して配置するのが好ましい。すなわち、保護フレーム4が弾性変形したとしても、推進部21に接触しないように、少なくとも弾性変形分の余裕を持った配置とするのが好ましい。
【0021】
図2は、ドローン1の機能ブロック図である。ドローン1は、図1で説明したドローン本体2(推進部21)および撮像装置3に加え、コントローラ51と、通信部52と、センサ群53と、メモリ54と、モータ駆動部55と、撮像制御部56を備える。
【0022】
コントローラ51は、ドローン1全体を制御する中央演算処理装置である。通信部52は、ドローン1専用のリモートコントローラや、スマートフォン、タブレット、コンピュータ等の通信機能を有する汎用の通信機器と通信する。周波数帯域に応じた各種の無線通信技術が利用できるが、例えば、2.4GHz帯の周波数帯域を利用する。通信部52は、受信した各種指令に基づき、推進部21での推進力の生成や、撮像装置3での撮像をコントローラ51に行わせる。また、通信部52は、ドローン1の動作や状態に関する情報や、撮像装置3で撮像された画像を送信する。通信部52は、一旦メモリ54に格納した画像を後からまとめて送信してもよいし、撮像装置3で撮像した画像をリアルタイムで送信してもよい。
【0023】
センサ群53は、コントローラ51での制御に用いられる各種の情報を測定するセンサから構成される。例えば、ドローン1の動きや姿勢を検知するために、加速度を測定する加速度センサや姿勢(角度)、角速度、角加速度等を測定するジャイロスコープが設けられる。加速度や角加速度を測定することで、ドローン1が障害物や検査対象物に衝突したことも検知できる。また、光、超音波、電波の反射によって物体との距離を測定する距離センサや、電磁気の作用により近接した物体を検出する近接センサを設けてもよい。これらのセンサを用いることで、ドローン1と物体の衝突を防止できる。さらに、これらのセンサの測定値に基づくフィードバック制御により、ドローン1と被検査面との距離を一定に保ちながら被検査面の一連の画像を撮像できる。
【0024】
また、センサ群53は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを利用して、ドローン1の地球上の現在位置を測定する位置センサを備えてもよい。ただし、後述するように、本実施形態のドローン1の主な用途は、構造が既知の検査対象物の被検査面に沿って飛行させることであり、地球上の現在位置を測定する必要性は低い。むしろ、通信部52を介して検査対象物の構造をコントローラ51に予め学習させ、その上で上記の加速度センサやジャイロスコープによって検査対象物との相対的な動きや姿勢を検知し、かつ上記の距離センサや近接センサで被検査面との距離を制御しながらドローン1を飛行させることで、GPSが使用できない環境下でも安定した検査ができる。また、GPSに依存しないため、GPSエラーの出やすい鉄製品付近でもドローン1は安定飛行できる。そのため、図3に関して後述する鉄骨構造等の検査に特に好適である。
【0025】
メモリ54は、コントローラ51での制御に用いられる各種の情報を格納する。例えば、通信部52で受信した各種の情報や、センサ群53で測定した各種の情報を格納する。通信部52から送信する各種の情報や撮像装置3で撮像された画像を格納してもよい。また、コントローラ51は、メモリ54に格納されたプログラムを実行することで、モータ駆動部55を介して推進部21を制御し、撮像制御部56を介して撮像装置3を制御する。
【0026】
モータ駆動部55は、コントローラ51の指令に基づき、四つの主モータ213と四つの副モータ214を駆動する。これらのモータにより、四つの主プロペラ211と四つの副プロペラ212が回転駆動され、ドローン1に所望の推進力が生成される。
【0027】
撮像制御部56は、コントローラ51の指令に基づき、撮像装置3の回転角度(図1の回転軸C周りの回転角度)を制御し、必要に応じてLEDライト33で被検査面を照明しながら、高解像度カメラ31および赤外線カメラ32で被検査面を撮像する。
【0028】
図3は、以上で説明したドローン1を用いた検査の態様を模式的に示す。本図は検査対象物の例として屋外の鉄骨構造を示す。まず、鉄骨構造の外周面である被検査面Sに沿ってガイド部材としてのガイドロープ61を配設する。以下で述べるように、ガイドロープ61は、ドローン1の保護フレーム4が移動可能に取り付けられ、ドローン1の被検査面Sに沿った飛行をガイドする紐状の部材である。
【0029】
続いて、ガイドロープ61に連結部材としての環状の第1バンド62が取り付けられる。第1バンド62は、ドローン1がガイドロープ61にガイドされて飛行する際の被検査面S(厳密にはガイドロープ61)との最大距離を決定する。ドローン1と被検査面Sの距離に応じて、ドローン1が撮像できる画角あるいは視野が決まり、また、ガイドロープ61に垂直な面内(図3の水平面内)でガイドロープ61を中心としてドローン1が検査対象物の周囲を回り込める範囲が決まる。したがって、第1バンド62の大きさは、検査で撮像したい範囲に応じて適宜定めればよく、大きさが可変な結束バンドを用いると便利である。例えば、図3に示されるものと同様の鉄骨構造が、紙面の表側と裏側のそれぞれに間隔Lで設けられる場合、第1バンド62による最大距離を、前記間隔の半分程度のL/2程度とするのが好ましい(第1バンド62の周長はLになる)。このようにすれば、ドローン1は紙面の表側においても裏側においても隣接する鉄骨構造に接触することなく回り込むことができ、しかも、回り込んだ際に隣接する鉄骨構造も併せて撮像できるので、効率的に検査できる。
【0030】
第1バンド62は、それより小径の連結部材としての環状の第2バンド63によって、ドローン1の保護フレーム4に取り付けられる。図1に示されるように、保護フレーム4には多数の網目があるため、任意の網目に第2バンド63を挿入して取り付けられる。ここで、第2バンド63は、推進部21と反対側、すなわち、図1の上側の網目に取り付けるのが好ましい。このようにすれば、第2バンド63および第1バンド62から受ける張力によって、第2バンド63の取り付け部分(図1の上側)がガイドロープ61あるいは被検査面Sに自然と対向する。したがって、同じく図1の上側に設けられる撮像装置3が、被検査面Sに自然と対向するので、効率的に検査画像を撮像できる。この趣旨に則り、第2バンド63は、ドローン1の正面側(すなわち撮像装置3の正面側)の網目、より好ましくは撮像窓42の近傍の網目に取り付けるのがよい。なお、検査画像にはガイドロープ61、第1バンド62、第2バンド63が映り込むこともあるが、いずれも細い紐状の部材であるため大きな問題はない。
【0031】
以上のようにガイドロープ61、第1バンド62、第2バンド63を取り付けた状態で、ドローン1を被検査面Sに沿って飛行させ、撮像装置3で被検査面Sを撮像する。このとき、ガイドロープ61が、第1バンド62および第2バンド63を介して、ドローン1の保護フレーム4を支持するので、風の影響の大きい屋外でもドローン1は安定飛行できる。また、保護フレーム4があるため、近接飛行するドローン1の推進部21が被検査面Sに接触することも防止できる。
【0032】
以上のように撮像された検査画像に基づき、人間の目による目視検査やコンピュータによる自動検査を行える。検査の内容は、検査対象物の被検査面Sによって様々だが、図3で例示した屋外の鉄骨構造の場合、例えば、鉄骨連結部分のボルトやナットの緩み、塗装の剥離、損傷等を検査できる。
【0033】
なお、図3の例では、ガイドロープ61と保護フレーム4を連結する第1バンド62および第2バンド63が設けられたが、これらのバンドは設けずにガイドロープ61を保護フレーム4の任意の網目に挿入して取り付けてもよい。この場合、ドローン1はガイドロープ61から離れることはできない。しかし、ガイドロープ61に一定の弛みないし余裕を持たせておくことにより、ドローン1はガイドロープ61ごと引っ張る形で被検査面Sから離れて飛行できるので、所望の画角で検査画像を撮像できる。また、図3の例では、連結部材として、環状の第1バンド62および第2バンド63を用いたが、ガイドロープ61と保護フレーム4を連結できるものであれば、環状に限らず、どのような形状のものでもよい。また、図3の例では、鉛直方向にガイドロープ61を配設したが、水平方向や斜め方向にガイドロープ61を配設してもよい。また、一本のガイドロープ61を曲げることで、各部の配設方向を変えてもよい。なお、ガイド部材は、紐状のガイドロープ61に限らず、被検査面Sに沿って配設される支柱などの柱状の部材でもよい。
【0034】
図4は、他の検査対象物の例として、ガーダ71と支柱72とを含む産業機械としてのクレーン7の一部を模式的に示す。この例では、ガーダ71と支柱72の接続部分が被検査面Sである。被検査面Sはガーダ71の下面側にあり、ドローン1をそこまでガイドするために、ガイドロープ61の二つの端はガーダ71の上面に固定され、ガイドロープ61がガーダ71全体を取り囲むように配設される。これにより、ドローン1は、ガーダ71の下面側においても、ガイドロープ61、第1バンド62、第2バンド63に支持されて安定飛行でき、被検査面Sに近接して検査画像を撮像できる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0036】
実施形態では、ドローン1の検査対象物として、鉄骨構造(図3)およびクレーン(図4)を例示したが、検査対象物はこれに限定されない。例えば、検査対象物は、ボイラー、建設機械など各種の産業機械、橋梁、桟橋などの社会インフラ、環境プラントや水処理施設など各種の産業構造物、またはその他の産業設備でもよく、被検査面は、こうした産業設備の屋内または屋外の被検査面でもよい。本発明の検査システムを利用すれば、これらの産業設備の配管、ダクト、塗装面その他の検査部位の異常、損傷、劣化、老朽化等を効率的に検査できる。
【0037】
実施形態では、サスペンションを介して保護フレーム4をドローン本体2に取り付けていたが、ジンバル等の回転機構を介して保護フレーム4をドローン本体2に取り付けてもよい。これにより、保護フレーム4の回転と、ドローン本体2およびそれに取り付けられた撮像装置3の回転が独立したものとなるので、保護フレーム4が物体に衝突した場合も、安定した飛行状態を維持できる。
【0038】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 ドローン、2 ドローン本体、3 撮像装置、4 保護フレーム、21 推進部、42 撮像窓、51 コントローラ、52 通信部、53 センサ群、55 モータ駆動部、56 撮像制御部、61 ガイドロープ、62 第1バンド、63 第2バンド。
図1
図2
図3
図4