(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094286
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法及び発光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20220617BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H01L33/52
B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110531
(22)【出願日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2020206838
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021048016
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和代
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 匡也
【テーマコード(参考)】
4F204
5F142
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD19
4F204AH33
4F204EA06
4F204EB01
4F204EB11
5F142AA82
5F142CA11
5F142CE06
5F142CE08
5F142CE32
5F142CG03
5F142CG24
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA14
5F142DB16
5F142FA18
5F142FA36
5F142FA42
5F142FA46
(57)【要約】
【課題】発光装置及び発光モジュールを安価に製造することができる発光装置の製造方法及び発光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】第1面と、第1面の反対側の第2面と、第1面と第2面との間の側面とを含む半導体積層体と、半導体積層体の第2面に配置される電極と、を含む発光素子と、半導体積層体の側面が樹脂部材で覆われた発光装置の製造方法であって、支持体上にAステージの状態の樹脂層を形成する工程と、樹脂層の表面と、第1面とを対向させて、樹脂層の表面上に発光素子を載置する工程と、樹脂層を第1温度で加熱して、樹脂層の粘度を低下させるとともに発光素子の自重によって、半導体積層体の第2面が露出するように発光素子を沈ませる工程と、樹脂層を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して、第2面が露出した状態で硬化することで樹脂部材を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面との間の側面とを含む半導体積層体と、前記半導体積層体の前記第2面に配置される電極と、を含む発光素子を有し、前記半導体積層体の側面が樹脂部材で覆われた発光装置の製造方法であって、
支持体上にAステージの状態の樹脂層を配置する工程と、
前記樹脂層の上面と、前記第1面とを対向させて、前記樹脂層の上面上に前記発光素子を載置する工程と、
前記樹脂層を第1温度で加熱して、前記樹脂層の粘度を低下させるとともに、前記発光素子の自重によって、前記半導体積層体の前記第2面が露出するように前記発光素子を沈ませる工程と、
前記樹脂層を、前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して、前記第2面が露出した状態で硬化することで前記樹脂部材を形成する工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
樹脂層を形成した後、発光素子を載置する前に、
前記樹脂層の上面の発光素子を載置する位置に、発光素子を載置する底面と発光素子の側面に所定の間隔を隔てて対向する側面とを含む凹部を設ける工程を含み、
前記発光素子を載置する工程において、前記底面に発光素子を載置する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層を配置する工程の前に、前記樹脂層の上面の発光素子を載置する位置に底面と発光素子の側面に所定の間隔を隔てて対向する側面とを含む凹部を備えたAステージの状態の樹脂層を準備する工程を含み、
前記樹脂層を配置する工程において、前記凹部を備えたAステージの状態の樹脂層を前記支持体上に配置し、
前記発光素子を載置する工程において、前記底面に発光素子を載置する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層は、蛍光体を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層の厚みは、半導体積層体の厚みよりも大きい、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂層を形成する方法は、前記支持体上に硬化された第1光反射層を形成し、その上に前記樹脂層を形成する工程を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂層を硬化して前記樹脂部材を形成した後、さらに、前記第2面及び前記電極の側面を覆う第2光反射層を形成する工程を備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面との間の側面とを含む半導体積層体と、前記半導体積層体の前記第2面に配置される電極とを含む発光素子を備え、少なくとも前記第2面が外部に露出した光源を準備する工程と、
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを備え、前記第1主面に凹部を備える導光板を準備する工程と、
前記凹部内に、Aステージの状態の樹脂層を配置する工程と、
前記樹脂層の上面と、前記発光素子の前記第1面とを対向させて、前記樹脂層の上面上に前記光源を載置する工程と、
前記樹脂層を第1温度で加熱して、前記樹脂層の粘度を低下させるとともに、前記光源の自重によって、前記半導体積層体の前記第2面が露出するように前記光源を沈ませる工程と、
前記樹脂層を、前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して、前記第2面が露出した状態で硬化することで前記樹脂部材を形成する工程と、
を含む発光モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記光源は、請求項1~7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法により製造された発光装置を含む請求項8に記載の発光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法及び発光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を含む発光装置及び発光モジュールが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-228657号公報
【特許文献2】特開2018-133304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子を含む発光装置及び発光モジュールの用途が拡大するに伴い、安価な発光装置及び発光モジュールが求められている。
【0005】
そこで、本開示は、発光装置及び発光モジュールを安価に製造することができる発光装置の製造方法及び発光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本開示に係る発光装置の製造方法は、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面との間の側面とを含む半導体積層体と、前記半導体積層体の前記第2面に配置される電極と、を含む発光素子を有し、前記半導体積層体の側面が樹脂部材で覆われた発光装置の製造方法であって、支持体上にAステージの状態の樹脂層を配置する工程と、前記樹脂層の上面と、前記第1面とを対向させて、前記樹脂層の上面上に前記発光素子を載置する工程と、前記樹脂層を第1温度で加熱して、前記樹脂層の粘度を低下させるとともに、前記発光素子の自重によって、前記半導体積層体の前記第2面が露出するように前記発光素子を沈ませる工程と、前記樹脂層を、前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して、前記第2面が露出した状態で硬化することで前記樹脂部材を形成する工程と、を含む。
また、本開示に係る発光モジュールの製造方法は、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面との間の側面とを含む半導体積層体と、前記半導体積層体の前記第2面に配置される電極とを含む発光素子を備え、少なくとも前記第2面が外部に露出した光源を準備する工程と、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを備え、前記第1主面に凹部を備える導光板を準備する工程と、前記凹部内に、Aステージの状態の樹脂層を配置する工程と、前記樹脂層の上面と、前記発光素子の前記第1面とを対向させて、前記樹脂層の上面上に前記光源を載置する工程と、前記樹脂層を第1温度で加熱して、前記樹脂層の粘度を低下させるとともに、前記光源の自重によって、前記半導体積層体の前記第2面が露出するように前記光源を沈ませる工程と、前記樹脂層を、前記第1温度よりも高い第2温度で加熱して、前記第2面が露出した状態で硬化することで前記樹脂部材を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
以上により、発光装置及び発光モジュールを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態1に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1B】実施形態1に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1C】実施形態1に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1D】実施形態1に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1E】実施形態1に係る発光装置の製造方法により得られる発光装置100の一例を示す模式断面図である。
【
図1F】実施形態1の変形例3に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1G】実施形態1の変形例3に係る発光装置の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図1H】実施形態1の変形例4に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図1I】実施形態1の変形例5に係る発光装置の製造方法により得られる発光装置の一例を示す模式断面図である。
【
図2A】実施形態2に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図2B】実施形態2に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図2C】実施形態2に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図2D】実施形態2に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図2E】実施形態2の発光装置の製造方法により得られる発光装置200の一例を示す模式断面図である。
【
図3A】実施形態1の変形例に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図3B】実施形態1の変形例に係る発光装置の製造方法により得られる発光装置の一例を示す模式断面図である。
【
図4A】実施形態1の別の変形例に係る発光装置の製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図4B】実施形態1の別の変形例に係る発光装置の製造方法により得られる発光装置の一例を示す模式断面図である。
【
図5A】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5B】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5C】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5D】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5E】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5F】実施形態3に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図6】
図5Eに、発光素子の幅W1及び高さH1、凹部33の深さD33及び幅W33、隣接する凹部33間の壁部の幅W50を示す模式断面図である。
【
図7A】実施形態4に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図7B】実施形態4に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【
図7C】実施形態4に係る発光モジュールの製造工程の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する発光装置の製造方法及び発光モジュールの製造方法は、本開示に係る発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示に係る発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。また、断面図として切断面のみを示す端面図を用いる場合もある。
【0010】
<実施形態1>
本開示に係る実施形態1の発光装置の製造方法は、(i)例えば発光面である第1面11と、第1面11の反対側の第2面12と、第1面11と第2面12との間の側面13とを含む半導体積層体10と、半導体積層体10の第2面12に配置される第1電極21と第2電極22とを含む電極20と、を備えた発光素子1と、(ii)半導体積層体10の少なくとも側面13を覆う樹脂部材30と、を含む発光装置100の製造方法である。
そして、本開示に係る実施形態の発光装置の製造方法は、
(a)支持体35上にAステージの状態の樹脂層31を配置する工程と、
(b)支持体35上に配置されたAステージの状態の樹脂層31の上面と発光素子1の第1面11とを対向させて、樹脂層31の上面上に発光素子1を載置する工程と、
(c)樹脂層31を第1温度で加熱して、樹脂層31の粘度を低下させるとともに、発光素子1の自重によって、半導体積層体10の第2面12が前記樹脂層31から露出するように発光素子1を沈ませる工程と、
(d)樹脂層31を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して、第2面12が前記樹脂層から露出した状態で硬化することで樹脂部材30を形成する工程と、
を含む。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
(a)樹脂層31を配置する工程
ここでは、予め準備したAステージ状態の樹脂シートを支持体35上に貼り付けることにより、
図1Aに示すような、Aステージの状態の樹脂層31を配置する。樹脂シートの貼り付けは、例えば、真空ラミネータを使用することができる。具体的には、所定の真空度に減圧して、ダイアフラムで押しつけて加圧する。本工程における樹脂層31を配置は、樹脂シートの貼り付けに限定されるものではなく、例えば、未硬化の状態にある樹脂を支持体35の上に塗布することにより、Aステージの状態の樹脂層31を配置してもよい。ここで、Aステージの状態とは、未硬化の状態をいう。Aステージの状態、具体的には、未硬化状態における樹脂層31の粘度等は、樹脂層31の比重、及び発光素子1の自重に基づいて、半導体積層体10の第2面12が露出するように発光素子1が自重により沈むように調整される。さらに、Aステージは液体状ではなく、流動性を備えない状態である。例えば、シクロヘキサン等の溶剤を含む液体状の樹脂材料を支持体上に塗布し、その後、溶剤のほとんどを揮発させることで、支持体上において流動しない状態としたものをAステージ状態又は未硬化状態とする。
【0012】
また、樹脂層31を構成する樹脂としては、熱硬化性の樹脂、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。樹脂層31を配置する方法としては、例えば、ロールコーティング、スプレー、圧縮成形等を使用することができる。樹脂層31は、発光素子1の半導体積層体10の厚さt(第1面11と第2面12間の距離)より厚くすることが好ましい。あるいは、樹脂層31は、発光素子1の半導体積層体1の厚さtより薄くてもよい。樹脂層31が発光素子1の半導体積層体1の厚さtよりも薄い場合は、後述の発光素子1を沈ませる工程において、樹脂の側面13への濡れ上がりを利用することで発光素子1の半導体積層体10の側面13全体が樹脂層31で覆われるように配置することができる。
【0013】
(b)発光素子1を載置する工程
ここでは、支持体35上に配置された樹脂層31のAステージの状態を維持したまま、
図1Bに示すように、樹脂層31の上面と発光素子1の第1面11とを対向させて発光素子1を樹脂層31の上面に載置する。発光素子1は、目的とする発光装置100の大きさに応じて、所定の間隔で離隔させて載置する。具体的には、発光素子1の半導体積層体10の側面13を覆う樹脂部材30の厚さを考慮して所定の間隔で、例えば、発光素子1を行列状に配置する。
【0014】
また、樹脂層31の上面に発光素子1を載置する方法としては、特に限定されず、発光素子1を1つずつ順に載置してもよいし、複数の発光素子1を一括して載置してもよい。例えば、複数の発光素子1を一括して載置する場合、上述した樹脂層31が配置された支持体とは別の支持体(以下、第2支持体という)に、感光性の接着剤を介して配置された複数の発光素子を準備する。次に、レーザーを第2支持体側から接着剤に照射し、複数の発光素子を第2支持体から剥離させることにより、一括して樹脂層31の上面に発光素子1を移載することができる。
【0015】
発光素子1の半導体積層体10は、例えば、サファイア又は窒化ガリウム等の基板と、基板上に配置されるn型半導体層及びp型半導体層と、これらに挟まれた発光層と、を含む。さらに発光素子1は、n型半導体層と電気的に接続された第1電極と、p型半導体層に電気的に接続された第2電極と、を含む。なお、半導体積層体10は、基板を備えていなくてもよい。また、発光層の構造としては、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW)のように単一の活性層を持つ構造でもよいし、多重量子井戸構造(MQW)のようにひとまとまりの活性層群を持つ構造でもよい。発光層は、可視光又は紫外光を発光可能である。発光層は、可視光として、青色から赤色までを発光可能である。このような発光層を含む半導体積層体13としては、例えばInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)を含むことができる。半導体積層体13は、上述した発光が可能な発光層を少なくとも1つ含むことができる。例えば、半導体積層体13は、n型半導体層とp型半導体層との間に1つ以上の発光層を含む構造であってもよいし、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造であってもよい。半導体積層体13が複数の発光層を含む場合、発光ピーク波長が異なる発光層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ発光層を含んでいてもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがあってもよい。発光ピーク波長の組み合わせとしては適宜選択することができる。例えば、半導体積層体13が2つの発光層を含む場合、青色光と青色光、緑色光と緑色光、赤色光と赤色光、紫外光と紫外光、青色光と緑色光、青色光と赤色光、又は緑色光と赤色光などの組み合わせで発光層を選択することができる。また、発光層は、発光ピーク波長が異なる複数の活性層を含んでいてもよいし、発光ピーク波長が同じ複数の活性層を含んでいてもよい。
【0016】
(c)発光素子1を沈ませる工程
ここでは、樹脂層31を第1温度で加熱して、樹脂層31の粘度を低下させる。これにより、発光素子1の自重によって、半導体積層体10の第2面12が樹脂層31の上面から露出するように発光素子1を沈ませる。
樹脂層31を加熱する第1温度は、樹脂層31を構成する樹脂材料のAステージ状態での粘度が低下し、
図1Cに示すように、半導体積層体10の第2面12が露出しかつ半導体積層体10の側面13全体に樹脂層31の樹脂が接するように適宜設定される。例えば、第1温度は、樹脂層を構成する樹脂材料の種類及びAステージ状態のときの粘度、並びに発光素子の形状及び重さに対して、樹脂層を加熱する温度を変化させたときの発光素子の沈降状態を記憶させたデータベースを参照して所望の沈降状態となる温度に設定する。ここで、発光素子の沈降状態とは、発光素子間の樹脂層の上面と発光素子の電極形成面との位置関係等をいう。すなわち、参照するデータベースには、例えば、隣接して載置した発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面と実質的に同一平面上に位置するようになる温度、発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面を含む平面より下に位置するようになる温度、発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面を含む平面より上に位置するようになる温度、等が記憶されており、記憶された情報に基づき製造しようとする発光装置の最終形状を考慮して適宜選択される。例えば、熱硬化性のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂を含む樹脂層31では、第1温度は70℃~100℃の範囲の温度である。また加熱時間は、例えば10分以上とすることができる。
また、第1温度は特定の温度で所定時間維持する必要は必ずしもなく、連続して上昇させるようにしてもよい。すなわち、温度上昇を開始する温度から終了させる温度(例えば、第2温度)の範囲に、Aステージ状態の樹脂層に発光素子を沈ませることができる温度範囲を含んでいればよく、これにより目的とする沈降状態を達成することができる。例えば、後述の第2温度を150℃とした場合、60℃程度から150℃まで例えば1時間程度かけて上昇させるのが好ましく、特に第1温度が含まれる70℃から100℃までは徐々に上昇させるのが好ましい。
【0017】
(d)樹脂層31を硬化させて樹脂部材30を形成する工程
ここでは、樹脂層31を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して、第2面12が露出した状態で硬化する。これにより樹脂部材30を形成する。
樹脂層31を硬化する第2温度は、樹脂層31を構成する樹脂材料の硬化温度に基づいて適宜設定される。例えば、熱硬化性のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂を含む樹脂層31では、第2温度は150℃~200℃の範囲の温度である。加熱時間は、例えば1時間以上8時間以下とすることができる。
発光素子1を沈ませる工程の第1温度から本工程における第2温度への上昇は、温度を第1温度から低い温度にすることなく連続して第2温度に上昇させるようにしてもよい、又は、第1温度から一旦温度を下げた、例えば室温(20±5℃)まで下げた後、第2温度に上昇させるようにしてもよく、製造工程の効率等を考慮して適宜設定することができる。
【0018】
樹脂層31を硬化させた後、
図1Dに示すように、隣接する発光素子1間で樹脂部材30を切断する。各発光素子1の側面13は、発光素子1が隣接する方向における所定の厚さの樹脂部材30で覆われる。
次に、
図1Eに示すように、発光装置から支持体を除去する。
【0019】
以上のようにして、例えば、それぞれ1つの発光素子1を含み発光素子1の側面13が所定の厚さの樹脂部材で覆われた発光装置を製造することができる。
尚、この切断工程は、必要に応じて実施される。例えば、発光素子1を1つ含むように樹脂部材を切断することで、1つの発光素子を備える発光装置とすることができる。あるいは、複数の発光素子1を含むように樹脂部材30を切断することで、複数の発光素子1を備える発光装置とすることができる。発光素子1を複数備える場合は、複数の発光素子1が一列に並んで配置される線状の発光装置とすることができる。あるいは、複数の発光素子が行列状に配置される面状の発光装置とすることができる。
【0020】
以上の実施形態1の発光装置の製造方法によれば、樹脂層が硬化する硬化温度である第2温度より低い第1温度で加熱して、樹脂層の粘度を低下させて発光素子の自重によって、半導体積層体の第2面12が露出するように発光素子を沈ませるようにしている。これにより、例えば、加重等の特別な設備を用いることなく、温度を変化させるだけで、発光素子の積層構造体の一つの面を除く表面が樹脂層によって覆われた発光装置を製造することができるため、安価に製造することができる。
また、実施形態1の発光装置の製造方法は、以下のような種々の変形が可能であり、種々の発光装置を製造することができる。
【0021】
変形例1
変形例1の発光装置の製造方法は、発光素子1と発光素子1からの光を波長変換する蛍光体を含む樹脂部材30を含む発光装置の製造方法である。
具体的には、実施形態1の変形例1に係る発光装置の製造方法では、樹脂層31として蛍光体の粒子を含む樹脂を用いる。蛍光体の粒子を含む樹脂層31に発光素子1を沈ませて硬化することにより、第2面12を除いた半導体積層体の表面が波長変換部材で覆われた発光装置を製造することができる。
【0022】
尚、蛍光体等の粒子を含む樹脂層31は、樹脂に含有させる蛍光体の粒子の粒径、粒度分布、含有量等に応じて、比重及び/又は粘度が変化する。そのため、これらを考慮してAステージ状態を適宜設定するようにすればよい。
【0023】
蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(PO4)6Cl2:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、Sr4Al14O25:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)、αサイアロン系蛍光体(例えば、Mz(Si,Al)12(O,N)16:Eu(但し、0<z≦2であり、MはLi、Mg、Ca、Y、及びLaとCeを除くランタニド元素))、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl3N4:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、K2(Si,Al)F6:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K2Si0.99Al0.01F5.99:Mn)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I)3)、又は、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInS2又はAgInSe2)等を用いることができる。樹脂部材30に添加する蛍光体としては、1種類の蛍光体を用いてもよく、複数種類の蛍光体を用いてもよい。
【0024】
また、KSAF系蛍光体としては、下記式(I)で表される組成を有していてよい。
M2[SipAlqMnrFs] (I)
【0025】
式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。p、q、r及びsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q≦0.1、0<r≦0.2、5.9≦s≦6.1を満たしていてよい。好ましくは、0.95≦p+q+r≦1.05又は0.97≦p+q+r≦1.03、0<q≦0.03、0.002≦q≦0.02又は0.003≦q≦0.015、0.005≦r≦0.15、0.01≦r≦0.12又は0.015≦r≦0.1、5.92≦s≦6.05又は5.95≦s≦6.025であってよい。例えば、K2[Si0.946Al0.005Mn0.049F5.995]、K2[Si0.942Al0.008Mn0.050F5.992]、K2[Si0.939Al0.014Mn0.047F5.986]で表される組成が挙げられる。このようなKSAF系蛍光体によれば、輝度が高く、発光ピーク波長の半値幅の狭い赤色発光を得ることができる。
【0026】
変形例2
変形例2の発光装置の製造方法は、発光素子1と発光素子1からの光を反射する光拡散剤を含む樹脂部材30を含む発光装置の製造方法である。
具体的には、実施形態1の変形例2に係る発光装置の製造方法では、樹脂層31として、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の光拡散剤の粒子を含む樹脂を用いる。光拡散剤の粒子を含む樹脂層31に発光素子1を沈ませて硬化することにより、例えば、第2面12を除いた表面に光反射層が設けられた発光装置を製造することができる。
【0027】
以上の変形例2の製造方法により製造された発光装置は、例えば、電極が配置された第2面12側から光を出射する発光装置の製造に適用することができる。
【0028】
また、変形例2の製造方法において、発光素子1の第1面11上に配置された樹脂部材30を除去する、又は、発光素子1の第1面11が支持体35と接するように発光素子1を樹脂層31に沈ませて硬化することにより、発光素子1の第1面11上に樹脂部材30が配置されない発光装置を製造することができる。このように製造された発光装置は、発光素子1の側面から出射される光を反射して、発光素子1の第1面11から出射するようにできる。
尚、光拡散剤等の粒子を含む樹脂層31は、樹脂に含有させる光拡散剤の粒子の粒径、粒度分布、含有量等に応じて、比重及び/又は粘度が変化する。そのため、これらを考慮してAステージ状態を適宜設定するようにすればよい。
【0029】
変形例3
変形例3の発光装置の製造方法は、発光素子1と、発光素子1の第1面11上方に設けられた光反射層(以下、第1反射層という。)と、発光素子1の側面13を覆うように設けられた透光性の樹脂部材30を含む発光装置の製造方法である。
【0030】
具体的には、実施形態1の発光装置の製造方法において、
図1Fに示すように、支持体35の上面上に硬化された第1光反射層25を配置し、その第1光反射層25の上に樹脂層31を配置する。第1光反射層25は、あらかじめ硬化された状態のものを形成又は購入して準備し、支持体上に配置することができる。あるいは、第1光反射層25は、液状の光反射部材を支持体上に配置した後、加熱等により硬化することで準備することができる。
【0031】
次に、
図1Gに示すように、樹脂層31に発光素子1を沈ませて硬化させ、第1光反射層25を発光素子1の第1面11の上方に残した状態で個片化する。
これにより、発光素子1の第1面11の上方に出射される光を抑えて発光素子1の側面13から効率よく光を出射する、いわゆるバットウィング配光の発光装置を製造することができる。
尚、この変形例3の製造方法では、樹脂層31に蛍光体を含有させて波長変換機能を有する樹脂部材30を用いてもよい。
【0032】
また、変形例3の発光装置の製造方法は、樹脂層31の厚さを変更したり、樹脂層31の粘度等を調整することにより樹脂層31内に発光素子1を沈ませる位置を調整することにより、光反射層25と発光素子1の第1面11間の距離を変更することが可能である。
これにより、バットウィング配光特性の異なる発光装置を製造することが可能になる。
【0033】
変形例4
変形例4の製造方法は、実施形態1又は変形例1~3に係る発光装置の製造方法において、樹脂部材30を形成した後に、
図1Hに示すように、さらに、第2面12及び電極20の側面を覆う光反射層24(以下、第2光反射層という。)を配置する工程を備えている。第2光反射層24を配置する工程は、例えばロールコーティング、スプレー、圧縮成形等を用いて、
図1Hに示すように、第2光反射層24を樹脂部材30の上面及び発光素子1の第2面12に配置する。このとき、第2光反射層24は、電極20の側面を覆うとともに、電極20の上面が露出するように配置する。または、第2光反射層24は、電極20の側面及び上面を覆うように配置した後、第2光反射層24の上面から研削することにより、電極20の一部及び第2光反射層24の一部を除去し、第2光反射層24から電極20の表面を露出させてもよい。なお、第2光反射層24から露出された電極20の表面は、新たに電極20の上面となる。
【0034】
以上の変形例4の製造方法により製造された発光装置は、第2面12及び電極20の側面を覆う第2光反射層24を含むことにより、第2面12側に進む光を反射して第1面11から出射することができ、発光した光を効率よく出射することが可能になる。
【0035】
変形例5
変形例5の製造方法は、変形例3の製造方法において、変形例4の第2面12及び電極20の側面を覆う第2光反射層を配置する工程をさらに備えている。
【0036】
以上の変形例5の製造方法により製造された発光装置100Aは、
図1Iに示すように、発光素子1の上方に設けられた第1光反射層25と、発光素子1の発光面及び側面を覆うように設けられた透光性の樹脂部材30と、発光素子の電極が形成された面及び電極21、22の側面を覆う第2光反射層24とを備えている。
【0037】
また、発光装置100Aにおいて、光反射層24、25は、例えば、光拡散剤として酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等を含有させた樹脂により形成することができる。このような樹脂の材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。また、光反射層24、25は、例えば白金、銀、ロジウム、アルミニウム等の金属層、又は分布ブラッグ反射膜(Distributed Bragg Reflector:DBR)であってもよい。また、光反射層24、25は、無機部材であってもよい。
また、発光素子1の側面から樹脂層30の外側面までの距離d1は、発光素子1の上面から樹脂層30の上面までの距離d2よりも長いことが好ましい。これにより、発光素子1の側面から出射された光が樹脂層30の上面側よりも側面側に伝搬しやすくなり、発光装置100Aの側方から取り出される光の割合を増やすことができる。なお、発光素子1の側面から樹脂層30の側面までの距離d1は、発光素子1の上面から樹脂層22の上面までの距離d2の1.5以上2.5倍以下程度の距離であるのが好ましく、さらに好ましくは、距離d1は距離d2の2倍程度の距離である。
【0038】
また、発光装置100Aは、その上方に、上述した蛍光体を含有するシート状の波長変換部材(以下、波長変換シートという)を配置することにより、白色光を得ることができる。例えば、青色の発光が可能な発光装置と、黄色の発光が可能な蛍光体を含有する波長変換シートと、を組み合わせて白色光を得ることができる。また他には、青色の発光が可能な発光装置と、赤色の発光が可能な蛍光体(以下、赤色蛍光体という)及び緑色の発光が可能な蛍光体(以下、緑色蛍光体という)を含有する波長変換シートとを組み合わせてもよい。また、青色の発光が可能な発光装置と、複数の波長変換シートとを組み合わせてもよい。複数の波長変換シートとしては、例えば、赤色蛍光体を含有する波長変換シートと、緑色蛍光体を含有する波長変換シートと、を選択することができる。また、青色の発光が可能な発光素子と、赤色蛍光体を含有する透光性部材とを有する発光装置と、緑色蛍光体を含有する波長変換シートとを組み合わせてもよい。
【0039】
<実施形態2>
本開示に係る実施形態2の発光装置の製造方法は、実施形態1の変形例1に係る製造方法により製造した樹脂部材30に蛍光体(以下、第1蛍光体という。)を含む発光装置100を有し、該発光装置100の樹脂部材30の上にさらに第1蛍光体とは異なる第2蛍光体を含む樹脂層130が配置された発光装置200の製造方法である。
【0040】
まず、実施形態1の変形例1に係る製造方法により樹脂部材30に第1蛍光体を含む発光装置100を準備する。
発光装置100を準備と並行して、実施形態1の(a)樹脂層31を配置する工程と同様にして、第2蛍光体を含んで未硬化の状態にある樹脂を、支持体35の上に配置し、
図2Aに示す、Aステージの状態の樹脂層131を配置する。未硬化状態における樹脂層131の粘度等は、樹脂層131の比重、発光装置100の自重に基づいて、半導体積層体10の第2面12が露出するように発光装置100が自重により沈むように調整される。また、樹脂層131に含まれる樹脂は、実施形態1と同様のものを用いることができる。好ましくは実施形態1の樹脂層31を構成する樹脂と同様の樹脂を用いる。
【0041】
次に、実施形態1の(b)発光素子1を載置する工程と同様にして、支持体35上に配置された樹脂層131のAステージの状態を維持した状態で、
図2Bに示すように、樹脂層131の上面と発光装置100の発光面とを対向させて発光装置100を載置する。発光装置100は、目的とする発光装置200において、発光装置100の側面を覆う樹脂部材130の厚さを考慮して所定の間隔で、例えば、行列状に配置する。
【0042】
次に、実施形態1の(c)発光素子1を沈ませる工程と同様にして、
図2Cに示すように、樹脂層131を第1温度で加熱して、樹脂層131の粘度を低下させて発光装置100の自重によって、発光装置100の電極形成面が露出するように発光装置100を沈ませる。
以下、実施形態1の(d)樹脂層31を硬化させて樹脂部材30を形成する工程と同様にして、樹脂層131を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して硬化し、
図2Dに示すように、隣接する発光装置100間で、各発光装置100の側面を所定の厚さで覆う樹脂部材130が配置されるように切断する。
図2Eには、それぞれ支持体を除去した後の発光装置200の断面を示す。
【0043】
以上の実施形態2の発光装置の製造方法によれば、発光素子1と、発光素子1の第2面12を除いて覆う樹脂部材30と、樹脂部材30を覆う第2樹脂部材130とを含む発光装置200を、加重等に係る特別な設備を用いることなく発光装置を製造することができ、安価に製造することができる。
【0044】
以上の実施形態1及び2の発光装置では、(c)発光素子1又は発光装置100を沈ませる工程において、隣接する発光素子1間又は発光装置100間の樹脂層30又は130の表面が実質的に平坦になるように、発光素子1又は発光装置100を沈ませる例を示している。
しかしながら、本開示に係る発光装置の製造方法はこれに限定されるものではない。
例えば、
図3Aに示すように、隣接する発光素子1間又は発光装置100間の樹脂層30又は130の表面が窪んだ曲面になるように、発光素子1又は発光装置100を沈ませてもよい。
このような状態になるように沈ませるには、樹脂層31又は131のAステージ状態での粘度、加熱する第1温度、発光素子1又は発光装置100の側面に対する樹脂層31又は131の濡れ性を適宜調整すればよい。
尚、
図3Bには、
図3Aの状態から樹脂層30を硬化させて、切断し、支持体35を除去した後の発光装置の断面を示す。
また、
図3Bに示す発光装置は発光素子の第2面及び電極の側面を覆いさらに発光素子の第2面から連続して樹脂層30の傾斜した表面を覆う光反射層(
図1Iに示す第2光反射層24に相当)を備えていてもよい。以上のように構成すると樹脂層30を透光性を有する樹脂で構成した場合に、光反射層で覆われた樹脂層30の傾斜した表面で光を反射して外部に取り出すことができる。かかる発光装置を製造するためには、
図3Aに示す個片化前の段階で発光素子の第2面及び電極の側面、樹脂層30の窪んだ表面を覆う光反射層を配置して硬化させた後に個片化するようにすればよい。
【0045】
また、
図4Aに示すように、発光素子1又は発光装置100を、発光素子1の側面又は発光装置100の側面の途中まで樹脂層30又は130が覆うように沈ませるようにしてもよい。
このような状態になるように沈ませるには、発光素子1又は発光装置100の重量、樹脂層31又は131の粘度、加熱する第1温度、発光素子1又は発光装置100の側面に対する樹脂層31又は131の濡れ性を適宜調整すればよい。
尚、
図4Bには、
図4Aの状態から樹脂層30を硬化させて、切断し、支持体35を除去した後の発光装置の断面を示す。
【0046】
<実施形態3>
本開示に係る実施形態3の発光装置の製造方法は、凹部33を有する樹脂層31を準備する工程を含んでいる点で実施形態1の発光装置の製造方法とは異なっている。実施形態3において、凹部33は、発光素子1を載置する底面33aと載置した発光素子1の側面13に所定の間隔を隔てて対向する側面33bとを含み、発光素子を載置する工程において、底面33aに発光素子1を載置する。
以上の点を除いて、実施形態3の発光装置の製造方法は、実施形態1の発光装置の製造方法と同様に構成される。
以下、実施形態3の発光装置の製造方法について、実施形態1の発光装置の製造方法と異なる点を中心に詳細に説明する。
【0047】
(a)凹部33を有する樹脂層31を準備する工程
凹部33を有する樹脂層31を準備する工程は、凹部33を有する樹脂層31を購入することで準備してもよいし、以下の工程(a1)及び(a2)により、樹脂層31に凹部33を設けることで準備してもよい。
(a1)樹脂層31を配置する工程
ここでは、予め準備したAステージ状態の樹脂シートを支持体35上に貼り付けることにより、
図5Aに示すような、Aステージの状態の樹脂層31を配置する。樹脂シートの貼り付けは、例えば、真空ラミネータを使用することができる。また、例えば、未硬化の状態にある樹脂を支持体35の上に塗布することにより、Aステージの状態の樹脂層31を配置してもよい。ここで、Aステージの状態とは、実施形態1において説明した未硬化の状態である。
【0048】
(a2)樹脂層31の上面に凹部33を設ける工程
ここでは、支持体35の上に樹脂層31を配置した後、発光素子1を載置する前に、樹脂層31の上面の発光素子1を載置する位置に凹部を設ける。例えば、Aステージの状態の樹脂層31の上面から、
図5B、5Cに示すように型50を所定の深さまで押し込んだ後、型50を除去することにより、
図5Dに示すように樹脂層31に凹部33を設ける。凹部33は、複数の型50を一体化した金型で形成するようにしてもよいし、ダイボンディング装置のコレットの先端に吸着した型50を順次移動させながら所定の位置(発光素子を載置する位置)で所定の深さまで押し込むようにして形成してもよい。
【0049】
凹部33の形状は、樹脂層31を形成する樹脂材料の種類及びAステージ状態のときの粘度、並びに発光素子の形状及び重さに対して、樹脂層31を第1温度にしたときに発光素子1が所望の沈降状態になるように設定される。すなわち、樹脂層31の凹部33底面に発光素子1を載置した状態で第1温度としたときの発光素子1の沈降状態は、樹脂層31を形成する樹脂材料の種類及びAステージ状態のときの粘度、並びに発光素子1の形状及び重さに加え、凹部33の形状及び隣接する凹部33間の間隔等により変化する。また、発光素子1の沈降状態は、樹脂層を形成する樹脂材料、当該樹脂材料のAステージ状態のときの粘度及び第1温度が同じであっても、凹部33の形状及び隣接する凹部33間の間隔等に依存する場合がある。発光素子1の沈降状態としては、例えば、隣接して載置した発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面と実質的に同一平面上に位置するような状態(以下、状態1という)になったりする。また、発光素子1の沈降状態としては、例えば、発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面を含む平面より下に位置するような状態(以下、状態2という)になったりする。さらにまた、発光素子1の沈降状態としては、例えば、発光素子間の樹脂層の上面が発光素子の電極形成面を含む平面より上に位置するような状態(以下、状態3という)になったりする。
この凹部の具体的な設定方法については、第1温度等との関係もあるので後述する。
【0050】
(b)発光素子1を載置する工程
ここでは、樹脂層31のAステージの状態を維持した状態で、
図5Eに示すように、凹部33の底面33aにそれぞれ発光素子1を載置する。発光素子1は、例えば、その中心軸(底面に垂直な中心軸)が凹部33の中心軸(底面33aに垂直な中心軸)に一致するように載置するのが好ましい。ここで、中心軸間のずれが発光素子1を載置する際のばらつき範囲内のものであれば一致するものとする。
【0051】
また、凹部33の底面33aにそれぞれ発光素子1を載置する方法としては、特に限定されず、発光素子1を1つずつ順に載置してもよいし、複数の発光素子1を一括して載置してもよい。例えば、複数の発光素子1を一括して載置する場合、上述した樹脂層31が配置された支持体とは別の支持体(以下、第2支持体という)に、感光性の接着剤を介して配置された複数の発光素子を準備する。次に、レーザーを第2支持体側から接着剤に照射し、複数の発光素子を第2支持体から剥離させることにより、一括して凹部33の底面33aにそれぞれ発光素子1を移載することができる。
【0052】
(c)発光素子1を沈ませる工程
ここでは、樹脂層31を第1温度で加熱して、樹脂層31の粘度を低下させ、
図5Fに示すように、軟化した凹部33を囲む側壁の樹脂が半導体積層体10の側面を覆い、半導体積層体10の第2面12が樹脂層31の上面から露出するように発光素子1を沈ませる。
【0053】
(d)樹脂層31を硬化させて樹脂部材30を形成する工程
ここでは、樹脂層31を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して、第2面12が露出した状態で硬化する。これにより樹脂部材30を形成する。
【0054】
以下、実施形態1と同様にして、隣接する発光素子1間で樹脂部材を切断し、発光装置を支持体から分離する。
【0055】
第1温度及び凹部の形状設定
第1温度及び凹部33の形状は、樹脂層31を形成する樹脂材料の種類及びAステージ状態のときの粘度、並びに発光素子の形状及び重さを考慮して、状態1~状態3の所望の状態になるように設定する。例えば、この凹部33の形状の設定は、樹脂層31を形成する樹脂材料の種類及び発光素子の形状及び重さを考慮して、状態1~状態3の所望の状態になるようにそれぞれ最適化された、当該樹脂材料のAステージ状態のときの粘度、第1温度、凹部33の形状及び隣接する凹部33間の間隔を記憶させたデータベースを参照して設定することができる。このデータベースには、例えば、用いる発光素子に対して、樹脂材料ごとに、状態1~3になるように最適化された、Aステージ状態のときの粘度、第1温度、凹部33の形状及び隣接する凹部33間の間隔等のパラメータが記憶されている。各パラメータは、実験等により求めることができる。尚、データベースには、例えば、使用するであろう複数の樹脂材料、使用するであろう複数の発光素子の組み合わせに対してそれぞれ最適化されたパラメータが記憶されていることが好ましく、これにより、樹脂材料と発光素子の組み合わせを種々選択することが可能になり、さらに目的に応じて状態1~3の選択が可能になる。
【0056】
また、この実施形態3の発光装置の製造方法は、凹部33の形状に依存して、発光素子1を凹部33の底面に載置したときの位置精度が、発光素子1を樹脂層31に沈ませて硬化させた後にも維持できることが確認された。
【0057】
この位置精度の維持は、主として、
図6に示す、発光素子1の幅W1及び高さH1、凹部33の深さD33及び幅W33、隣接する凹部33間の壁部の幅W50に依存する。言い換えれば、この位置精度を維持するために、凹部33の深さD33及び幅W33、隣接する凹部33間の壁部の幅W50は、発光素子1の幅W1及び高さH1、凹部33の深さD33及び幅W33を考慮して適宜設定するが、この位置精度の維持効果を効果的に得るために、凹部33の深さD33は、発光素子1の高さH1より大きくすることが好ましい。凹部33は、例えば、100μm~200μmの深さに形成され、発光素子を配置したときの位置精度を維持するために発光素子の厚みより深くすることが好ましい。例えば、150μmの厚みの発光素子を配置する場合には、凹部33は150μmより深く形成する。ここで、発光素子の厚みとは、電極の厚みを除いた部分の厚さをいう。
【0058】
以上説明したように実施形態3の発光装置の製造方法において、凹部33の形状及び凹部間の間隔を調整することにより、載置したときの発光素子の位置精度を、樹脂層を硬化させた後にも維持できる。
したがって、第1温度及び凹部の形状設定は、樹脂層31を形成する樹脂及び発光素子の形状及び重さを考慮して、状態1~状態3の所望の状態になりかつ位置ずれ抑制効果が得られるように設定することが好ましい。
すなわち、凹部33の形状の設定は、樹脂層31を形成する樹脂及び発光素子の形状及び重さを考慮して、状態1~状態3の所望の状態になりかつ位置ずれ抑制効果が得られるようにそれぞれ最適化された、当該樹脂のAステージ状態、第1温度、凹部33の形状及び隣接する凹部33間の間隔を記憶させたデータベースを参照して設定することが好ましい。このデータベースには、例えば、使用するであろう複数の樹脂、使用するであろう複数の発光素子の組み合わせに対してそれぞれ最適化されたパラメータが記憶されていることが好ましいことは言うまでもない。
【0059】
以上のように構成された実施形態3の発光装置の製造方法によれば、発光素子の位置精度を高くすることができ、所望の構成の発光装置を容易に製造することができる。
【0060】
<実施形態4>
本開示に係る実施形態4の製造方法は、複数の光源が、例えば、導光板上に行列状に配置された発光モジュールの製造方法である。以下、
図7A~
図7Cを参照しながら具体的説明する。尚、以下の説明では、実施形態1の製造方法で製造された複数の発光装置100を光源として用いた例により説明する。ただし、実施形態4の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、実施形態1で示した発光素子1を光源として用いてもよいし、実施形態2~3の製造方法で製造した発光装置を光源として用いることもできる。
【0061】
実施形態4の製造方法では、まず、導光板310を準備する。導光板310は、光源である発光装置から出射される光を面状に広げる部材であり、光取り出し面となる第2主面312と、その反対側に位置する第1主面311とを備えた略板状の部材である。第1主面311には第1凹部313を備える。第1凹部313は、発光装置100を配置する部分である。導光板310の第2主面312は、第1主面311の凹部313に対応する位置に、第2凹部315を配置してもよい。
図5Aに示す導光板310は、2つの第1凹部313を備える例を示している。第1凹部313は、例えば、第1主面311において、行列状に配置することができる。
【0062】
このような導光板310は、例えば、射出成形やトランスファモールド、熱転写等で成形することにより準備することができる。導光板310の材料としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエステル等の熱可塑性樹脂、エポキシ若しくはシリコーン等の熱硬化性樹脂、又は、ガラス等を用いることができる。また、導光板310の第1凹部313や第2凹部315は、導光板310の成形時に一括して形成することができる。これにより、成形時の位置ずれを低減することができる。また、第1凹部313や第2凹部315を有しない透光性の板を購入又は成形して準備し、第1凹部313や第2凹部315を形成する工程を行うことで導光板310を準備してもよい。あるいは、第1凹部313や第2凹部315を備えた導光板10を購入することで準備してもよい。
【0063】
第2凹部315は、円錐状、角錘状等の錘状の窪みや、円錐台状、角錐台状の窪みとすることができる。第2凹部315は、発光装置100からの光を側方に反射することができる。第2凹部315内には、光反射性の部材が配置されていてもよい。光反射性の部材としては、例えば酸化チタン等の光拡散剤を含む樹脂材料や、酸化物又は窒化物等の絶縁性の無機材料や金属等の導電材料の薄膜等を用いることができる。
【0064】
次に、
図7Aに示すように、準備した導光板310の第1凹部313にそれぞれ未硬化の樹脂を注入し、Aステージの状態の樹脂が充填された樹脂充填部331を配置する。
次に、
図7Bに示すように、注入した樹脂のAステージ状態を維持した状態で樹脂充填部331上にそれぞれ発光素子の発光面が樹脂充填部331に対向するように発光装置100を載置する。ここで、本明細書において、発光素子の発光面が樹脂充填部331に対向するとは
図7Bに示すように樹脂部材を介して対向する場合も含む。
次に、
図7Cに示すように、樹脂充填部331を第1温度で加熱して、樹脂充填部331の樹脂の粘度を低下させて発光装置100の自重によって、発光装置100の電極形成面が露出するように発光装置100を沈ませ、樹脂充填部331を、第1温度よりも高い第2温度で加熱して、第2面12が露出した状態で硬化する。これにより、第1凹部313内で発光装置100の電極形成面を除く表面を被覆する樹脂部材330を配置する。
【0065】
以上の実施形態4の製造方法によれば、導光板310上に複数の発光装置100を備えた発光モジュールを安価に製造することができる。
【0066】
尚、以上の実施形態4の発光モジュールの製造方法では、導光板310に第1凹部313を設けた例により説明したが、第1凹部313に代えて導光板310の上面から下面に貫通する貫通孔を用いてもよい。この場合、例えば、貫通孔を下面側で塞いで樹脂充填部を配置した後、第1凹部313の場合と同様にして製造することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 発光素子
10 半導体積層体
11 第1面
12 第2面
13 側面
20 電極
21 第1電極
22 第2電極
24 光反射層(第2光反射層)
25 光反射層(第1光反射層)
30、130 樹脂部材
31、131 樹脂層
35 支持体
100、200 発光装置
310 導光板
311 上面
312 下面
313 第1凹部
315 第2凹部
330 樹脂部材
331 樹脂充填部