IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特開2022-94497超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル、及び超音波探傷検査方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094497
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル、及び超音波探傷検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20220620BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20220620BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220620BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G01N29/28
C08L101/14
C08K3/00
C08K5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207416
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】神崎 満幸
【テーマコード(参考)】
2G047
4J002
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047BC02
2G047BC07
2G047EA11
2G047EA21
2G047GE01
4J002AA001
4J002BG071
4J002BG131
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ056
4J002EC047
4J002EC057
4J002FD146
4J002GL00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】検査後に接触媒質を検査基質から除去するための洗浄作業を必要とせず、取り扱いが簡便であり、検査基質との密着性及び超音波の伝播性に優れ、繰り返し使用することのできる超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル及び、該ヒドロゲルを利用した超音波探傷検査方法を提供することである。
【解決手段】水溶性有機モノマーの重合体(A)、水膨潤性粘度鉱物(B)、及び水を含有することを特徴とする超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機モノマーの重合体(A)、水膨潤性粘度鉱物(B)、及び水を含有することを特徴とする超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル。
【請求項2】
揮発性が、60℃1気圧の開放系において、1cm・1時間あたり0.01g以下である多価アルコールを含有する請求項1記載の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル。
【請求項3】
前記多価アルコールがグリセリンである請求項2記載の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項記載の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルのシート状又はパッド状成型体を接触媒体として利用することを特徴とする超音波探傷検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲル、及び超音波探傷検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の内部の欠陥を非破壊的に検査するための代表的な方法として、超音波探傷検査が知られている。超音波探傷検査を実施する場合、超音波探触子にて発生させる超音波を対象構造物の内部に効率よく透過させることができるようにするため、構造物の表面に超音波探触子を密着させる必要がある。
【0003】
このため、対象構造物表面と超音波探触子の間に、超音波を伝播させるグリセリンやグリス等、粘性を有する液状の接触媒質を介在させることが行われていた。ところが、コンクリート構造物に、グリセリンやグリス等、粘性を有する液状の接触媒質を塗布した場合、コンクリート表面から接触媒質が浸透してしまうため、検査後に行う、接触媒質を構造物表面から除去するための洗浄作業に多大な労力を要するという問題があった。
【0004】
このような問題に対し、探傷面に対し密着状態に接触する高分子ゲルで形成されたパッドを使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、本パッドでは超音波の伝播性が十分ではなく、超音波が媒質中で減衰し解像度が低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-78356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、取り扱いが簡便であり、検査基質との密着性及び超音波の伝播性に優れ、繰り返し使用することのできる超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、水溶性有機モノマーの重合体、水膨潤性粘度鉱物、及び水を含有する超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルが、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、水溶性有機モノマーの重合体(A)、水膨潤性粘度鉱物(B)、及び水を含有することを特徴とする超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルは、取り扱いが簡便であり、検査基質との密着性及び超音波の伝播性に優れ、繰り返し使用できることから、コンクリート構造物等の内部欠陥の検査などへ適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルは、水溶性有機モノマーの重合体(A)、水膨潤性粘度鉱物(B)、及び水を含有するものである。
【0011】
前記水溶性有機モノマーの重合体(A)は、水溶性有機モノマー(a1)の重合により得られるが、前記水溶性有機モノマー(a1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するアクリルモノマー等が挙げられる。
【0012】
前記(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、メタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-シクロプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0013】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーとしては、例えば、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシメチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート等が挙げられる。
【0014】
前記ヒドロキシル基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、溶解性及び得られる有機無機ヒドロゲルの物性の観点から、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーを用いることが好ましく、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリンを用いることがより好ましく、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリンを用いることがさらに好ましく、重合が進行しやすい観点から、N,N-ジメチルアクリルアミドが特に好ましい。
【0016】
上述の水溶性有機モノマー(a1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記水溶性有機モノマーの重合体(A)は、必要に応じて、前記水溶性有機モノマー(a1)以外のその他のモノマーを共重合することもできる。
【0018】
本発明のヒドロゲル中の前記水溶性有機モノマーの重合体(A)の含有量は、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。前記水溶性有機モノマーの重合体(A)の含有量が1質量%以上であると、力学物性に優れるヒドロゲルを得ることができることから好ましい。一方、前記水溶性有機モノマーの重合体(A)が50質量%以下であると、重合前のヒドロゲル前駆体組成物(X)の調製が容易にできることから好ましい。
【0019】
前記水膨潤性粘土鉱物(B)は、上記水溶性有機モノマーの重合体とともに三次元網目構造を形成し、有機無機ヒドロゲルの構成要素となる。
【0020】
前記水膨潤性粘土鉱物(B)としては、特に制限されないが、水膨潤性スメクタイト、水膨潤性雲母等が挙げられる。
【0021】
前記水膨潤性スメクタイトとしては、例えば、水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト等が挙げられる。
【0022】
前記水膨潤性雲母としては、例えば、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ヒドロゲル前駆体組成物(X)の安定性の観点から、水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイトを用いることが好ましく、水膨潤性ヘクトライトを用いることがより好ましい。
【0024】
前記水膨潤性粘土鉱物(B)は、天然由来のもの、合成されたもの、および表面を修飾されたものを用いることもできる。表面を修飾された水膨潤性粘土鉱物としては、例えば、ホスホン酸変性ヘクトライト、フッ素変性ヘクトライト等が挙げられるが、得られる有機無機複合ヒドロゲルの強度及び接着性の観点から、ホスホン酸変性ヘクトライトを用いることが好ましい。
【0025】
前記ホスホン酸変性ヘクトライトとしては、例えば、ピロリン酸変性ヘクトライト、エチドロン酸変性ヘクトライト、アレンドロン酸変性ヘクトライト、メチレンジホスホン酸変性ヘクトライト、フィチン酸変性ヘクトライト等を用いることができる。これらのホスホン酸変性ヘクトライトは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
なお、上述の水膨潤性粘土鉱物(B)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明のヒドロゲル中の水膨潤性粘土鉱物(B)の含有量は、得られるヒドロゲルの力学物性がより向上することから、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、本発明のヒドロゲル中の水膨潤性粘土鉱物(B)の含有量は、ヒドロゲル前駆体組成物(X)の粘度上昇をより抑制することができることから、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
また、本発明のヒドロゲルは、水以外の有機溶媒を含んでいてもよく、大気開放条件下においても質量変化が小さく、基材密着性、破断強度等の力学物性を安定して保持できるヒドロゲルが得られることから、揮発性が60℃1気圧の開放系において1cm・1時間あたり、0.1g以下(0.1g/cm・hr・60℃・1atm以下)のものが好ましく、0.05g以下のものがより好ましく、0.01g以下のものがさらに好ましい。具体的には、水と混和しやすい溶媒が好ましいことからグリセリン(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)、ジグリセリン(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)、エチレングリコール(0.01g以下/cm・hr・60℃・1atm)、プロピレングリコール(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)、ポリエチレングリコール(0.001g以下/cm・hr・60℃・1atm)等の揮発性が60℃1気圧の開放系において1cm・1時間あたり、0.01g以下の多価アルコールが好ましく、グリセリン、ジグリセリンがより好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機溶媒は、本発明の有機無機複合ヒドロゲルに均一に含まれることが望ましい。
【0029】
本発明のヒドロゲル中の水と前記有機溶媒との質量比(水/有機溶媒)は、超音波の伝播性にも優れ、水単独の場合よりも接触媒体内の音速が速くなり、より解像度の高い超音波探傷が可能となることから、60/40~20/80であることが好ましく、50/50~30/70であることがより好ましい。
【0030】
本発明のヒドロゲルの製造方法としては、簡便に三次元網目構造を有するヒドロゲルが得られることから、水溶性有機モノマー(a1)、水膨潤性粘度鉱物(B)、水、及び、必要に応じて有機溶媒の混合液と、重合開始剤と、重合促進剤とを含むヒドゲル前駆体組成物(X)中で、前記水溶性有機モノマー(a1)を重合させる方法が好ましい。得られた水溶性有機モノマーの重合体は水膨潤性粘土鉱物ととともに三次元網目構造を形成し、ヒドロゲルの構成要素となる。
【0031】
前記重合開始剤は、空気雰囲気下においても、前記水溶性有機モノマー(a1)の重合を十分に進行させることができることから、20℃における水への溶解度が50g/100ml以上であることが好ましい。
【0032】
前記重合開始剤としては、例えば、20℃における水への溶解度が50g/100ml以上である水溶性の過酸化物、水溶性のアゾ化合物等が挙げられる。
【0033】
前記水溶性の過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0034】
前記水溶性のアゾ化合物としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、前記水膨潤性粘度鉱物(B)との相互作用の観点から、水溶性の過酸化物を用いることが好ましく、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムを用いることがより好ましい。
【0036】
なお、前記重合開始剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記ヒドロゲル前駆体組成物(X)中の前記水溶性有機モノマー(a1)に対する前記重合開始剤のモル比は、空気雰囲気下においても、前記水溶性有機モノマー(a1)の重合を十分に進行させることができることから、0.01~0.1の範囲が好ましく、0.01~0.05の範囲がより好ましい。
【0038】
前記重合促進剤としては、例えば、3級アミン化合物、チオ硫酸塩、アスコルビン酸類等が挙げられる。
【0039】
前記3級アミン化合物としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノプロピオニトリルが挙げられる。
【0040】
前記チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0041】
前記アスコルビン酸類としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。
【0042】
これらのうち、水膨潤性粘土鉱物との親和性及び相互作用の観点から、3級アミン化合物を用いることが好ましく、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを用いることがより好ましい。
【0043】
なお、前記重合促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記ヒドロゲル前駆体組成物(X)中の前記重合促進剤の含有量は、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましい。0.01質量%以上であると、得られるヒドロゲルの有機モノマーの合成を効率よく促進できることから好ましい。一方、1質量%以下であると、前記ヒドロゲル前駆体組成物(X)が重合前に凝集せずに使用することができて、取扱性が向上することから好ましい。
【0045】
前記ヒドロゲル前駆体組成物(X)は、必要に応じて、有機架橋剤、防腐剤、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。
【0046】
前記水溶性有機モノマー(a1)の重合温度としては、10~80℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。重合温度が10℃以上であると、ラジカル反応が連鎖的に進行できることから好ましい。一方、重合温度が80℃以下であると、分散液中に含まれる水が沸騰せずに重合できることから好ましい。
【0047】
重合時間としては、前記重合開始剤や前記重合促進剤の種類によって異なるが、数十秒~24時間の間で実施される。特に、加熱やレドックスを利用するラジカル重合の場合は、1~24時間であることが好ましく、5~24時間であることがより好ましい。重合時間が1時間以上であると、前記水膨潤性粘土鉱物(B)と前記水溶性有機モノマー(A)の重合物が三次元網目を形成できることから好ましい。一方、重合反応は24時間以内にほぼ完了するので、重合時間は24時間以下が好ましい。
【0048】
本発明の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルは、コンクリート等の検査対象構造物表面と超音波探触子の間に、ヒドロゲルシートとして貼り付けることにより、効果的に超音波を伝播させることができる。
【0049】
前記ヒドロゲルシートの厚さは、1~20mmが好ましく、2~10mmがより好ましい。
【0050】
また、前記ヒドロゲルシートは、コンクリート等の検査構造物表面への密着性に優れることから、液状の接触媒質を使用することなく、安定した超音波測定ができる。
【0051】
さらに、前記ゲルシートは検査基質から容易に剥離することができるため、検査終了後の洗浄等の後工程も不要であり、繰り返し使用することができる。
【実施例0052】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0053】
(調製例1)
[重合開始剤混合液(1)の調製]
平底ガラス容器に、水10mL、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)80μLを入れて撹拌し、均一な重合促進剤溶液を調製した。ここに過硫酸ナトリウム(NPS)0.50gを入れて撹拌し、重合開始剤混合液(1)を得た。
【0054】
(実施例1)
平底ガラス容器に、純水100g、合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン株式会社製「ラポナイトS-482」)4.8g、ジメチルアクリルアミド(DMAA)20gを入れて、撹拌により均一透明な水溶液を調製した。ここへ、上記で得た重合開始剤混合液(1)を全量加え、ヒドロゲル前駆体組成物(X-1)を得た。混合による気泡の残存が著しい場合は必要に応じて減圧脱気した。
【0055】
[ヒドロゲルシートの製造]
上記で得たヒドロゲル前駆体組成物(X-1)を離形処理したガラス平板(厚み5mm)上に流し、上から同様のガラス平板をかぶせてシート状に成型した。ヒドロゲルシートの厚み調整はゴムスペーサーを使用し、厚み3mmで成型した。
【0056】
[超音波伝播性の評価]
コンクリート平板上に、上記で得たヒドロゲルシートを貼り付けた後、その表面からコンクリート平板の内部に向かって、超音波探触子から超音波パルスを送り、音速を測定した。超音波測定は、超音波送受信器、オシロスコープ、5MHz探触子を用いて行い背面反射波を計測することでおこなった。測定温度は20℃とした。なお、音響インピーダンスは次式により求めた。
「音響インピーダンス(kg/m・sec)」
=「媒質中の密度(kg/m)×「媒質中の音速(m/sec)」
【0057】
(実施例2)
平底ガラス容器に、純水40g、精製グリセリン60g、ホスホン酸変性合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン株式会社製「ラポナイトRDS」)4.8g、合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン株式会社製「ラポナイトS-482」)1.44g、ジメチルアクリルアミド20g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド20mgを入れて、撹拌により水溶液を調製した。ここへ、上記で得た重合開始剤混合液(1)を全量加え、ヒドロゲル前駆体組成物(X-2)を得た。混合による気泡の残存が著しい場合は必要に応じて減圧脱気した。
【0058】
実施例1で用いたヒドロゲル前駆体組成物(X-1)をヒドロゲル前駆体組成物(X-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ヒドロゲルシートを作成し、超音波伝播性を評価した。
【0059】
(比較例1)
[ウレタンプレポリマーの製造]
2Lフラスコに分子量2000のポリプロピレンエーテルグリコール(AGC株式会社製「エクセノール 2020」)500質量部、分子量3000のポリプロピレンエーテルトリオール(AGC株式会社製「エクセノール 3030」)500質量部、にトリレンジイソシアネート(2,4-/2,6-(異性体比):80/20)174質量部を加え、80℃にて6時間反応を続けた。得られたウレタンプレポリマーの粘度は25℃において8700mPa・sで遊離のイソシアネート量は3.5%であった。
【0060】
[硬化剤の製造]
分子量3200のポリプロピレンエーテルグリコール(DIC株式会社製「パンデックスOD-X-825」)40質量部に、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン6質量部を加熱溶解させた上にジオクチルフタレート54質量部を入れ攪拌混合した。
【0061】
[ウレタン系シートの製造]
上記で得たウレタンプレポリマー50質量部と硬化剤50質量部をビーカーにとり攪拌混合し、実施例1と同様にして、厚み3mmのシートを製造した。
【0062】
実施例1で使用したヒドロゲルシートをウレタン系シートに変更した以外は、実施例1と同様にして、超音波伝播性を評価した。
【0063】
上記で得られた評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1の本発明の超音波探傷検査接触媒体用ヒドロゲルは、音速及び音響インピーダンスの値が大きく、超音波伝播性に優れることが確認された。
【0066】
一方、比較例1は、ウレタン系シートであるが、超音波伝播性が不十分であることが確認された。