IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094498
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】化合物、液晶組成物及び高周波移相器
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20220620BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20220620BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C07D495/04 103
C07D495/04 CSP
C09K19/34
G02F1/13 505
G02F1/13 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207421
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】池内 貴哉
【テーマコード(参考)】
2H088
4C071
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA42
2H088GA01
2H088HA24
2H088JA04
2H088KA25
2H088KA26
2H088MA20
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC01
4C071CC22
4C071DD06
4C071EE12
4C071FF03
4C071GG01
4C071HH12
4C071JJ01
4C071LL10
4H027BA01
4H027BD02
4H027BD03
4H027BD07
4H027BD10
4H027BE02
4H027BE04
4H027DL01
4H027DL02
4H027DL05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高周波数領域において大きな誘電率異方性を示す化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物とする。

[Rは、H、炭素原子数1から20のアルキル基等;Aは、置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環等;Zは、単結合等;L、Lは、独立にH、ハロゲン原子、ペンタフルオロスルファニル基等;X、X、Xは、独立にO又はS;n1は1から3の整数]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはなく、
は置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
及びLは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
、X及びXは各々独立して酸素原子又は硫黄原子を表し、
は単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH)COO-、-OCOC(CH)=CH-、-CH-CH(CH)COO-、-OCOCH(CH)―CH-、-OCHCHO-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-又は炭素原子数1から20のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが酸素原子同士が直接結合することはなく、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
n1は1から3の整数を表す。)で表される化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)において、A
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-又は-S-に置き換えられても良い。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、また、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の置換基Lによって置換されていても良く、
は各々独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、L及びLが各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、Zが-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、X、X及びXのうち少なくとも一つが硫黄原子を表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記一般式(I)において、X、X及びXが硫黄原子を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項9】
屈折率異方性が0.15以上である、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
誘電率異方性が2以上である、請求項8又は9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
誘電率異方性が2以下である、請求項8又は9に記載の液晶組成物。
【請求項12】
請求項8から11に記載の液晶組成物を使用した高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物は、スマートフォンやタブレットデバイスなどのモバイル端末、TVやウィンドウディスプレイなどのディスプレイ用途に用いられている。この液晶組成物の新規用途として、車等の移動体と通信衛星間で、電波の送受信を行うアンテナが注目されている。
【0003】
従来、衛星通信は、パラボラアンテナを用いているが、移動体で用いる場合、随時パラボラアンテナを衛星方向へ向けなければならず、大きな可動部が必要であった。しかし液晶組成物を用いたアンテナは、液晶が動作することにより、電波の送受信方向を変える事が出来るため、アンテナ自体を動かす必要が無く、アンテナの形状も平面にすることが出来る。
【0004】
これらの用途に用いる液晶組成物に要求される特性の一つとして、高周波数(GHz帯)領域における誘電率異方性(Δε)が大きいことが挙げられる。他、屈折率異方性(Δn)については例えば0.4程度とディスプレイ用途に求められるΔnと比較して非常に大きい値が要求される。またその他の特性として、アンテナ用に使用するためには、100℃以上でも液晶相を保つ必要があるため、高相転移点温度を有する化合物が求められている。
従来、Δεが大きな化合物としては6員環シクロカーボネート構造を有する化合物が報告されている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの化合物はアンテナ用途の液晶組成物へ添加した場合に溶解性に乏しく、長時間の保存で析出してしまう問題があった。また、それらの化合物は、Δn及び高周波数領域におけるΔεは必ずしも大きいものではなく、位相変調特性が不十分であった。そのため、とりわけ高周波数領域において大きな誘電率異方性を示す化合物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-136680号公報
【特許文献2】特許4978017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、大きな屈折率異方性(Δn)を有し、且つ液晶相の相転移温度の上昇効果と高い溶解性を有し、高周波数領域において大きな誘電率異方性(Δε)を示す化合物を得る点にある。これらの特性の中でも特に高周波数領域において大きなΔεを示す化合物を得ることで、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の化合物の開発に至った。すなわち、本発明は下記の一般式(I)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはなく、
は置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
及びLは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
、X及びXは各々独立して酸素原子又は硫黄原子を表し、
は単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH)COO-、-OCOC(CH)=CH-、-CH-CH(CH)COO-、-OCOCH(CH)―CH-、-OCHCHO-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-又は炭素原子数1から20のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが酸素原子同士が直接結合することはなく、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
n1は1から3の整数を表す。)
で表される化合物を提供し、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、特に高周波数領域において大きな誘電率異方性(Δε)を示すことから、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ等の素子用の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般式(I)で表される化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【0012】
一般式(I)において、Rは水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはない。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Rは炭素原子数2から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い。また、Rは水素原子、基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことが好ましく、Rは基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことがより好ましく、Rは炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基又は炭素原子数2から8のアルキニル基を表すことがさらに好ましく、Rは炭素原子数2から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から7のアルキニル基を表すことが特に好ましい。
【0013】
一般式(I)において、Aは置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表し、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Aは無置換であるか又は1つ以上の置換基Lによって置換されていても良い、
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-又は-S-に置き換えられても良い。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、また、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表すことが好ましく、Aが複数存在する場合それらは同一のLによって置換されていても異なるLに置換されていても良い。ここで、一般式(I)で表される化合物は、構造中に少なくとも1つのLを有することが好ましく、2個以上のLを有することがさらに好ましい。
また、Aは無置換であるか又は1つ以上の置換基Lによって置換されていても良い、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基から選ばれる基を表すことがより好ましく、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。また、Aは複数存在する場合は各々独立して下記の式(A-1)から式(A-17)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、破線は結合位置を表し、Lが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すことがさらに好ましく、各々独立して式(A-1)から式(A-7)、式(A-12)、式(A-15)及び式(A-17)から選ばれる基を表すことがさらにより好ましく、各々独立して式(A-1)、式(A-3)から式(A-7)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
及びLは各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い基を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、L及びLは水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基であることが好ましい。また、L及びLは炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、L及びLはフッ素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがより好ましく、L及びLはフッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがさらに好ましく、L及びLはフッ素原子又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表すことが特に好ましい。
【0016】
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い基を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Lはフッ素原子、塩素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、Lはフッ素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがより好ましく、Lはフッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがさらに好ましく、Lはフッ素原子又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表すことが特に好ましい。
【0017】
、X及びXは各々独立して酸素原子又は硫黄原子を表すことが好ましく、誘電率異方性を大きくする観点からはX、X及びXのうち少なくとも一つが硫黄原子を表すことが好ましく、X、X及びXのすべてが硫黄原子を表すことが特に好ましい。
【0018】
一般式(I)において、Zは単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH)COO-、-OCOC(CH)=CH-、-CH-CH(CH)COO-、-OCOCH(CH)―CH-、-OCHCHO-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-又は炭素原子数1から20のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが酸素原子同士が直接結合することはなく、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。また、Zは-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すことがより好ましく、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CH=N-N=CH-、-N=N-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがさらに好ましく、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがとりわけ好ましい。また、Zは単結合又は-C≡C-を表すことが屈折率異方性、低粘性の点で最も好ましい。
【0019】
一般式(I)において、n1は1から3の整数を表すが、液晶組成物への相溶性、相転移点、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、n1は1又は2の整数を表すことが好ましく、1の整数を表すことが特に好ましい。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は構造中に複素縮合環構造を含むため、その電子密度の高さと偏りから高周波数領域におけるΔεが大きいという特徴を示す。とりわけ、ピロール構造中の窒素原子を介した先にA1で表される環構造を有し化合物全体で棒状の分子構造を形成していることから、大きいΔεに加えて液晶性が向上し液晶組成物の構成成分として用いるのに適している。
【0021】
なお、一般式(I)において、化合物の安定性の観点から、酸素原子同士、及び/又は酸素原子と硫黄原子とが直接結合することはないことが好ましい。
【0022】
一般式(I)で表される化合物は、液晶相を示す温度範囲の広さ、誘電率異方性、液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、好ましくは下記の一般式(I-i)
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、
11は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良く、
11は1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基を表すが、A11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の置換基L31によって置換されていても良く、
11及びL21は各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良く、
31は各々独立してフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良く、L31が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
11、X21及びX31は各々独立して酸素原子又は硫黄原子を表し、
11は単結合、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CFO-、-OCF-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、n11は1から3の整数を表す。)で表される化合物であり、
より好ましくは下記の一般式(I-ii)
【0025】
【化4】
(式中、
12は炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良く、
12は下記の式(A-ii-1)から式(A-ii-17)
【0026】
【化5】
(式中、破線は結合位置を表し、L32及びL42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すが、A12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
12、L22、L32及びL42は、各々独立して水素原子、フッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の-CH-が-O-によって置換されていても良く、
12、X22及びX32は各々独立して酸素原子又は硫黄原子を表すが、少なくとも一つが硫黄原子を表し、
12は各々独立して-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、n12は1又は2の整数を表す。)で表される化合物である。
【0027】
一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物の構造を(I-a-1)~(I-a-12)に示す。
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
(式中、R、L、L及びLは前記一般式(I)におけるR、L、L及びLと同じ意味を表し、m1は0から4の整数を表し、式中に複数のLが存在する場合それらは同じであっても異なっていても良く、式中に複数のm1が存在する場合それらは同じであっても異なっていても良い。)
一般式(I)で表されるより具体的な化合物を、下記の式(I-1)から式(I-54)に示す。
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
【化17】
【0041】
【化18】
【0042】
【化19】
【0043】
【化20】
【0044】
本発明において、一般式(I)の化合物は、例えば以下のようにして製造することができるが、本発明の趣旨及び適用範囲はこれらにより制限されるものではない。
【0045】
本発明の化合物は以下の製法で製造することができる。
(製法1)下記式(s-8)で表される化合物の製造1
【0046】
【化21】
【0047】
(式中、R1s、A1s、Z1s、X1s、X2s、X3s及びn1sは前記一般式(I)におけるR、A、Z、X、X、X及びn1と同じ意味を表す。)
一般式(s-1)で表される化合物を例えば一般式(s-2)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-3)で表される化合物を得ることができる。
【0048】
一般式(s-3)で表される化合物を例えば還元剤と反応させることにより一般式(s-4)で表される化合物を得ることができる。還元反応の具体例としては、例えば臭化リチウムの存在下水素化ホウ素ナトリウム等を用いる方法が挙げられる。
一般式(s-4)で表される化合物を例えば三臭化リンと反応させることにより一般式(s-5)で表される化合物を得ることができる。
【0049】
一般式(s-5)で表される化合物を例えば塩基存在下一般式(s-6)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-7)で表される化合物を得ることができる。塩基の具体例としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0050】
一般式(s-7)で表される化合物を例えば酸化剤と反応させることにより一般式(s-8)で表される化合物を得ることができる。酸化剤の具体例としては二酸化マンガン、2、3-ジクロロ-5、6-p-ベンゾキノン等が挙げられる。
(製法2)下記式(s-8)で表される化合物の製造2
【0051】
【化22】
【0052】
(式中、R1s、A1s、Z1s、X1s、X2s、X3s及びn1sは前記一般式(I)におけるR、A、Z、X、X、X及びn1と同じ意味を表す。)
一般式(s-1)で表される化合物を例えば一般式(s-10)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-11)で表される化合物を得ることができる。
【0053】
一般式(s-11)で表される化合物を例えば塩基存在下一般式(s-6)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-13)で表される化合物を得ることができる。
一般式(s-13)で表される化合物を例えば還元剤と反応させることにより一般式(s-14)で表される化合物を得ることができる。還元剤の具体例としては、例えば水素化ホウ素ナトリウムを挙げることができる。
【0054】
一般式(s-14)で表される化合物を例えば酸性条件下で反応させることにより一般式(s-8)で表される化合物を得ることができる。酸の具体例としてはアンバーリスト15等が挙げられる。
(製法3)下記式(s-23)で表される化合物の製造
【0055】
【化23】
【0056】
(式中、R1s、A1s、Z1s、L1s、L2s及びn1sは前記一般式(I)におけるR、A、Z、L、L及びn1と同じ意味を表す。)
一般式(s-6)で表される化合物を例えば一般式(s-19)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-20)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えば酸を用いたパールクノールピロール合成が挙げられる。酸の具体例としては酢酸アンモニウム等が挙げられる。
一般式(s-20)で表される化合物を例えばチオシアン酸鉛と臭素と反応させることにより一般式(s-21)で表される化合物を得ることができる。
一般式(s-21)で表される化合物を例えば還元剤と反応させることにより一般式(s-22)で表される化合物を得ることができる。還元剤の具体例としては水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。
一般式(s-22)で表される化合物を例えばチオホスゲンと反応させることにより一般式(s-23)で表される化合物を得ることができる。
(製法4)下記式(s-25)で表される化合物の製造
【0057】
【化24】
【0058】
(式中、R1s、A1s、Z1s、X1s、X2s、L1s、L2s及びn1sは前記一般式(I)におけるR、A、Z、X、X、L、L及びn1と同じ意味を表す。)
一般式(s-24)で表される化合物を例えば酢酸水銀と反応させることにより一般式(s-25)で表される化合物を得ることができる。
【0059】
各工程において記載した以外の反応条件として、例えば実験化学講座(日本化学会編、丸善株式会社発行)、Organic Syntheses(A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)、Beilstein Handbook of Organic Chemistry(Beilstein-Institut fuer Literatur der Organischen Chemie、Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.K)、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(John Wiley & Sons,Inc.)等の文献に記載のもの又はSciFinder(Chemical Abstracts Service,American Chemical Society)、Reaxys(Elsevier Ltd.)等のデータベースに収載のものが挙げられる。
【0060】
各工程において必要に応じて官能基を保護することができる。保護基としては、例えば、GREENE’S PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS((Fourth Edition)、PETER G.M.WUTS、THEODORA W.GREENE共著、A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)等に記載の保護基が挙げられる。
【0061】
また、各工程において必要に応じて精製を行うことができる。精製方法としてはクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華、再沈殿、吸着、分液処理等が挙げられる。精製剤の具体例としてはシリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0062】
一般式(I)で表される化合物は、液晶組成物へ添加し使用されることが好ましい。液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、一般式(I)で表される1つの化合物を含有しても良く、一般式(I)で表される複数の化合物を含有しても良い。本発明の液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、液晶組成物における一般式(I)で表される化合物の含有量の合計が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であり95質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上であり90質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上であり85質量%以下であることが特に好ましい。ここで、「一般式(I)で表される化合物の含有量の合計」とは、液晶組成物が一般式(I)で表される1つの化合物を含有する場合、一般式(I)で表される化合物の含有量を意味し、液晶組成物が一般式(I)で表される複数の化合物を含有する場合、一般式(I)で表される複数の化合物の含有量の合計を意味する。
【0063】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)が0.15以上であり1.00以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、屈折率異方性(Δn)は0.20以上であり0.95以下であることが好ましく、0.25以上であり0.90以下であることがより好ましく、0.30以上であり0.85以下であることがさらに好ましく、0.35以上であり0.80以下であることが特に好ましい。
【0064】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物を、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズに使用する場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))が2以上であり60以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))は2.5以上であり50以下であることが好ましく、3以上であり40以下であることがより好ましく、3.5以上であり30以下であることが特に好ましい。
【0065】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、高周波数素子に使用することが好ましい。周波数範囲としては、1MHz以上であり1THz以下であることが好ましく、1GHz以上であり500GHz以下であることがより好ましく、2GHz以上であり300GHz以下であることがさらに好ましく、5GHz以上であり150GHz以下であることが特に好ましい。
【0066】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(IV)
【0067】
【化25】
【0068】
(式中、Rは炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
は下記の式(A6-1)から式(A6-8)
【0069】
【化26】
【0070】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
は-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m6は1から4の整数を表し、
は下記の式(Ay-1)及び式(Ay-2)
【0071】
【化27】
【0072】
(式中、破線は結合位置を表し、Y、Y、Y10及びY12は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y及びY11は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表すが、ここで1個の-CH-又は2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-i)
【0073】
【化28】
【0074】
(式中、R61は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
61は上記の式(A6-1)から式(A6-6)から選ばれる基を表すが、A61が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
41は-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m61は1から3の整数を表し、
y1は下記の式(Ay-1-i)及び式(Ay-2-i)
【0075】
【化29】
【0076】
(式中、破線は結合位置を表し、Y71、Y91、Y101及びY121は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y81及びY111は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-ii)
【0077】
【化30】
【0078】
(式中、R62は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
62は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A62が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
42は-CFO-、-OCF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m62は1、2又は3を表し、
72及びY92は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y82はフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iii)
【0079】
【化31】
【0080】
(式中、R63は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
63は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A63が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
43は-CFO-、-OCF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z43が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m63は1、2又は3を表し、
73及びY93は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y83はフッ素原子、塩素原子、シアノ基又はチオイソシアノ基を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iv-1)から一般式(VI-iv-21)
【0081】
【化32】
【0082】
【化33】
【0083】
【化34】
【0084】
【化35】
【0085】
【化36】
【0086】
(式中、R614は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0087】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(III)
【0088】
【化37】
【0089】
(式中、R31及びR32は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
31及びA32は各々独立して下記の式(A3-1)から式(A3-8)
【0090】
【化38】
【0091】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A32が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m31は1から4の整数を表す。)で表される化合物を含有してもよい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-i)
【0092】
【化39】
【0093】
(式中、R311及びR321は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
311及びA321は各々独立して下記の式(A31-1)から式(A31-6)
【0094】
【化40】
【0095】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A321が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m311は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-ii)
【0096】
【化41】
【0097】
(式中、R312及びR322は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
312及びA322は各々独立して下記の式(A32-1)から式(A32-4)
【0098】
【化42】
【0099】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A322が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m312は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-iii)
【0100】
【化43】
【0101】
(式中、R313及びR323は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
313及びA323は各々独立して下記の式(A33-1)及び式(A33-2)
【0102】
【化44】
【0103】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A323が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m313は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましい。
ここで、一般式(III)で表される化合物は、具体的には下記の一般式(III-iv-1)から一般式(III-iv-10)
【0104】
【化45】
【0105】
【化46】
【0106】
(式中、R314及びR324は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0107】
また、一般式(I)で表される化合物は、誘電率異方性(Δε)が中性又は負である液晶組成物へ添加して使用しても良い。その場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が-20以上であり2以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、誘電率異方性(Δε)は-15以上であり1.5以下であることが好ましく、-10以上であり1以下であることがより好ましく、-5以上であり0.5以下であることが特に好ましい。
【0108】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物の誘電率異方性(Δε)が中性又は負である場合、液晶組成物は下記の一般式(IV)
【0109】
【化47】
【0110】
(式中、R41及びR42は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
41及びA42は各々独立して下記の式(A4-1)から式(A4-11)
【0111】
【化48】
【0112】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
41及びZ42は各々独立して-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m41及びm42は各々独立して0から3の整数を表すが、m41+m42は1から3の整数を表す。)で表される化合物を含有しても良い。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-i)
【0113】
【化49】
【0114】
(式中、R411及びR421は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
411及びA421は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-9)から選ばれる基を表すが、A411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
411及びZ421は各々独立して-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m411及びm421は各々独立して0から3の整数を表すが、m411+m421は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-ii)
【0115】
【化50】
【0116】
(式中、R412及びR422は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
412及びA422は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-7)から選ばれる基を表すが、A412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
412及びZ422は各々独立して-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-又は単結合を表すが、Z412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m412及びm422は各々独立して0、1又は2を表すが、m412+m422は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iii)
【0117】
【化51】
【0118】
(式中、R413及びR423は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
413及びA423は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-5)から選ばれる基を表すが、A413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
413及びZ423は各々独立して-OCH-、-CHO-、-CHCH-又は単結合を表すが、Z413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m413及びm423は各々独立して0、1又は2を表すが、m413+m423は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iv-1)から一般式(IV-iv-8)
【0119】
【化52】
【0120】
【化53】
【0121】
(式中、R414及びR424は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0122】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、組成物に対して0.005質量%から1質量%の範囲が好ましく、0.02質量%から0.8質量%がより好ましく、0.03質量%から0.5質量%がさらに好ましい。また、1種類の安定剤を用いても良く、2種類以上の安定剤を併用して用いても良い。安定剤としては下記の一般式(X1)
【0123】
【化54】
【0124】
(式中、Spx1は1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax1は下記の式(Ax1-1)から式(Ax1-8)
【0125】
【化55】
【0126】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
x1は-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Zx1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx1は0又は1を表し、
mx2は0から4の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-i)
【0127】
【化56】
【0128】
(式中、Spx11は1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax11は下記の式(Ax11-1)及び式(Ax11-2)
【0129】
【化57】
【0130】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
x11は-COO-、-OCO-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-又は単結合を表すが、Zx11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx11は0又は1を表し、
mx21は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-ii-1)から一般式(X1-ii-4)
【0131】
【化58】
【0132】
(式中、Spx12は炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0133】
また、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(X2)
【0134】
【化59】
【0135】
(式中、Rx21、Rx22、Rx23及びRx24は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から20のアルキル基又は炭素原子数1から20のアルコキシ基を表し、
Spx21、Spx22、Spx23及びSpx24は各々独立してスペーサー基又は単結合を表し、
mx21は0又は1を表し、
mx22は0又は1を表し、
mx23は0又は1を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-i)
【0136】
【化60】
【0137】
(式中、Rx211、Rx221、Rx231及びRx241は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx211、Spx221、Spx231及びSpx241は各々独立して、基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されても良く、1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキレン基又は単結合を表し、
mx211は0又は1を表し、
mx221は0又は1を表し、
mx231は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-ii)
【0138】
【化61】
【0139】
(式中、Rx212及びRx222は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx212及びSpx222は各々独立して、1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基又は単結合を表し、
mx212は0又は1を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-iii)
【0140】
【化62】
【0141】
(式中、Rx213及びRx223は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx213は1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-が各々独立して-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0142】
本願発明において、1,4-シクロヘキシレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基に含まれる環構造は、各々トランス体及びシス体のいずれであっても良いが、液晶性の観点から、各々トランス体の含有率がシス体の含有率よりも多いことが好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が80%以上であることがより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が90%以上であることがさらに好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が95%以上であることがさらにより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が98%以上であることが特に好ましい。また、本願発明において下記の表記(CY-1)
【0143】
【化63】
【0144】
(式中、破線は結合位置を表す。)は1,4-シクロヘキシレン基のトランス体及び/又はシス体を意味する。
【0145】
また、本願発明において、各元素は同じ元素の同位体に置き換えられていても良い。
【実施例0146】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。各工程において酸素及び/又は水分に不安定な物質を取り扱う際は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で作業を行うことが好ましい。各化合物の純度はUPLC(Waters ACQUITY UPLC、BEH C18(100×2.1mm×1.7μm)、アセトニトリル/水又は0.1%ギ酸含有アセトニトリル/水、PDA、カラム温度40℃)、GPC(島津製作所 HPLC Prominence、Shodex KF-801(300mm×8mm×6μm)+KF-802(300mm×8mm×6μm)、テトラヒドロフラン、RI、UV(254nm)、カラム温度40℃)、GC(Agilent 6890A、J&W DB-1、30m×0.25mm×0.25μm、キャリアガス He、FID、100℃(1分)→昇温10℃/分→300℃(12分))又はH NMR(JEOL、400MHz)によって決定した。
(実施例1)式(I-1)で表される化合物の製造
【0147】
【化64】
【0148】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-1)で表される化合物50.4g、臭化リチウム34.9g、テトラヒドロフラン250mL、メタノール100mLを加えた。-10℃で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム30.4gを少量ずつ添加し、室温まで上昇させながら3時間攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、さらにその溶液に10%塩酸を注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-1-2)で表される化合物29.4gを得た。
【0149】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-2)で表される化合物29.4gテトラヒドロフラン300mLを加えた。0℃で攪拌しながら、三臭化リン94.3gを滴下し、室温まで上昇させながら1時間攪拌した。反応液に水を注ぎ、析出した個体を濾取により精製を行うことによって、式(I-1-3)で表される化合物32.1gを得た。
【0150】
【化65】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-3)で表される化合物7.0g、ジイソプロピルエチルアミン7.1g、ジクロロメタン20mLを加えた。室温で攪拌しながら、式(I-1-4)で表される化合物3.6gをジクロロメタン20mLに溶解させた溶液を滴下し、2時間加熱還流を行った。反応液に10%塩酸を注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、乾燥させることによって、式(I-1-5)で表される化合物を含む粗生成物7.8gを純度84%で得た。
【0151】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-5)で表される化合物を含む粗生成物7.8g、二酸化マンガン34g、テトラヒドロフラン70mLを加え、1時間加熱還流を行った。セライト濾過により二酸化マンガンを除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)及び分散洗浄(アセトン/メタノール、酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-1)で表される化合物2.4gを得た。
MS(EI):m/z=305HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=7.31-7.25(4H,m),7.03(2H,s),2.65(2H,t,7.8Hz),1.66-1.57(2H,m),1.37(2H,td,7.3Hz),0.94(3H,t,7.3Hz)
(実施例2)式(I-2)で表される化合物の製造
【0152】
【化66】
【0153】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-2-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-2)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=291
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=6.96(2H,s),6.63(2H,s),2.33(3H,s),2.01(6H,s)
(実施例3)式(I-3)で表される化合物の製造
【0154】
【化67】
【0155】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-3-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-3)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=335
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=7.31-7.24(3H,m),7.00(2H,d,1.4Hz),2.39(2H,t,7.1Hz),1.64(2H,td,7.2Hz),1.05(3H,t,7.3Hz)(実施例4)式(I-4)で表される化合物の製造
【0156】
【化68】
【0157】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-4-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-4)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=413
HNMR(CDCl、TMS内部標準)δ(ppm)=7.35-7.30(3H,m),7.03(1H,d,8.2Hz),6.99(1H,d,11.9Hz),6.69(2H,s),2.63(2H,t,7.8Hz),2.11(6H,s),1.68(2H,td,7.8Hz),0.97(3H,t,7.3Hz)
(実施例5)式(I-5)で表される化合物の製造
【0158】
【化69】
【0159】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-1)で表される化合物8.0g、2,5-ヘキサンジオン3.7gを加え、室温で24時間攪拌した。反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5-2)で表される化合物6.2gを得た。
反応容器に式(I-5-2)で表される化合物6.2g、テトラヒドロフラン200mLを加えた。0℃で攪拌しながら、事前に調整したチオシアン酸鉛(II)20.1gと臭素8.5gのジクロロメタン溶液80mLを加え、室温まで上昇させながら15時間攪拌した。反応液をチオ硫酸ナトリウム水溶液に加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5-3)で表される化合物7.2gを得た。
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-3)で表される化合物7.2g、テトラヒドロフラン50mLを加えた。室温で攪拌しながら、水素化アルミニウムリチウム1.2gをテトラヒドロフラン25mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で5時間攪拌した。酢酸をトルエンに溶解させた溶液を反応溶液が桃色から黄色に変化するまで滴下した。反応液に水を注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5-4)で表される化合物4.5gを得た。
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-4)で表される化合物4.5g、トリエチルアミン2.4g、トルエン60mLを加え、室温で10分間攪拌した。チオホスゲン1.4gをトルエン80mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で30分間攪拌した。溶媒を留去した後、残留物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5)で表される化合物4.2gを得た。
MS(EI):m/z=437
(液晶組成物の調製と評価)
以下の物性値を示す母体液晶(LC-1)を調製した。値はいずれも実測値である。
【0160】
n-i(ネマチック相-等方性液体相転移温度):74.0℃
Δε(25℃における誘電率異方性) :5.11
Δn(25℃における屈折率異方性) :0.141
γ (25℃における回転粘性係数):107
この母体液晶(LC-1)に対して、実施例で得た化合物(I-1)~(I-5)及び特許文献に記載の式(C-1)~(C-3)で表される化合物のいずれかをそれぞれ0%、3%、5%加えた液晶組成物を調製した。
【0161】
【化70】
【0162】
最小二乗法を用いた100%における外挿値を表1に示す。実施例6~10及び比較例1~3を比較する事により、本願化合物を液晶組成物に添加した際にΔεを効果的に上昇させる事が判明した。
【0163】
【表1】