(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094732
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220620BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220620BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220620BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20220620BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220620BHJP
C09J 183/10 20060101ALI20220620BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220620BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/08
C09J133/00
C09J7/22
C09J201/00
C09J183/10
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207790
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK52A
4F100AL05A
4F100AL06A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB05A
4F100CB05C
4F100JK02B
4F100JK08B
4F100JK12B
4F100JK16B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AA06
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA03
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD08
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040BA202
4J040DF021
4J040DF022
4J040DF031
4J040DF061
4J040DM011
4J040DN032
4J040EK112
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、被着体からより簡易に且つより速やかに除去可能な粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の粘着テープは、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、前記粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであることを特徴とする。また、本発明の粘着テープは、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、前記粘着層は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有し、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、
前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであることを特徴とする、粘着テープ。
【請求項2】
基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、
前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記粘着層は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部であることを特徴とする、粘着テープ。
【請求項3】
前記基材層のゴム硬度が20~90Aである、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤樹脂がアクリル系粘着剤樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、且つ、接着信頼性が高いので、接合手段として、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野で、部品固定用途や、部品の仮固定用途、製品情報を表示するラベル用途等に広範に使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境保護の観点から、これら家電や自動車等の各種の産業分野において、使用済み製品又は廃棄予定の製品のリサイクル、リユースの要請が高まっている。各種製品をリサイクル、リユースする際には、当該製品を解体し、製品中の各部品を取り外すこととなるが、各部品を取り外すときには、部品の固定やラベルに使用されている粘着テープを剥離する作業が必要となり、近年では粘着テープの先端を把持して引き伸ばすことで被着体から除去可能な粘着テープが提案されている。しかし、近年、粘着テープが製品中の各所に設けられ、粘着テープの剥離作業が煩雑となっている。また、多数の部品が高密度に実装された製品においては、密集した部品の中から一つの部品を取り外すために、粘着テープを貼付け面に対して高角度(例えば60°以上)の方向に引っ張って剥がす必要があるが、このように高い角度で引っ張ると粘着テープに負荷がかかり、特に、粘着テープをより早く伸長させようとすると、粘着テープがちぎれることがあった。さらに、モバイル端末のバッテリー等の強度が比較的脆弱であるため、このようなモバイル端末のバッテリー等の貼付け面に対して高角度(例えば60°以上)の方向に粘着テープを引っ張って剥がす作業では、バッテリー自体が曲がってしまう、あるいはバッテリーパウチのフィルムが破れてしまう場合がある。そして、バッテリーを当該作業により傷めてしまうと発火などの安全上の危険性があるため、より安全に取り外せることが必要となる。
したがって、粘着テープの除去工程においては、粘着テープがより簡易に且つより速やかに除去可能となることで作業コストの低減が要望されている。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされた発明であり、優れた接着力を有するとともに、被着体からより簡易に且つより速やかに除去可能な粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、所定の特性を有する粘着層及び基材層を備えた粘着テ-プを用いることにより、上記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]本開示は、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、
前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであることを特徴とする、粘着テープである。
[2]本開示の別の態様は、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープであって、
前記基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記粘着層は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部であることを特徴とする、粘着テープである。
[3]本実施形態において、前記基材層のゴム硬度が20~90Aであることが好ましい。
[4]本実施形態において、前記粘着剤樹脂がアクリル系粘着剤樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、優れた接着力を有するとともに、被着体からより簡易に且つより速やかに除去可能な粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0009】
《粘着テープ》
本実施形態の粘着テープは、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備える粘着テープである。また、本実施形態の粘着テープの基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%である。さらに、本実施形態の粘着テープの粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nである。
本実施形態の粘着層は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部である。したがって、粘着層も同様に、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有し、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部であることが好ましい。
本実施形態の粘着層はアクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有することにより、当該粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nの範囲内である条件を満たしやすくなる。
本実施形態の粘着テープは、このような構成を有することにより、被着体(粘着テープの貼り付け対象)からより簡易に且つより速やかに除去可能となる。より詳細には、所定の特性を備えた基材層上に形成された粘着層の外表面の摩擦力が上記範囲であると、被着体から粘着テープを剥がすために引っ張った際、被着体の表面で粘着テープの摩擦抵抗が下がるので、粘着層による被着体への接着力を効果的に低下させ、粘着テープを剥がしやすくすることができる。
具体的には、本実施形態の粘着テープは、基材層の破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%であることにより、被着体から粘着テープを剥がす際、引っ張っても千切れることなく被着体から粘着テープを剥がすことができる(再剥離することができる)。
【0010】
また、本実施形態の粘着テープは、基材層の厚さが10~800μmであることにより、粘着テープの強度と、粘着テープの引っ張りやすさとを確保することができる。
さらに、本実施形態の粘着テープでは、粘着層の外表面の摩擦力を0.1~5.0Nの範囲にするため、粘着層又は粘着剤組成物は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有し、当該アクリル変性シリコーンの含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部である。これにより、当該アクリル変性シリコーンのシリコーン組成部が滑り性を付与するため、被着体から粘着テープを剥がすために引っ張った際、被着体の表面で粘着テープの摩擦抵抗が下がるので、粘着層による被着体への接着力を効果的に低下させ、粘着テープを剥がしやすくすることができる。一方で、粘着剤組成物中にアクリル変性シリコーン等のフィラーを含有させると、当該フィラーにより接着性能の低減が生じる恐れがあるが、当該アクリル変性シリコーンのアクリル変性部が粘着剤組成物中の粘着剤樹脂と親和性を有し、当該粒子が組成物中で粘着剤成分を取り込むことにより膨潤状態になるため、粘着剤組成物の弾性が維持されやすく、粘着テープの接着性能の低減を抑えることができる。
したがって、本実施形態の粘着テープによれば、粘着テープを被着体からより簡易に且つより速やかに除去することができる。
【0011】
<基材層>
本実施形態において、粘着テープは、両面の粘着層の間に基材層を備え、当該基材層は、厚さが10~800μm、破断強度が10~90MPa、破断伸度が400~1500%である。
【0012】
本実施形態において、基材層は、上記の特性を備えれば特に制限はなく、粘着テープに使用し得る公知の材料の中から適宜選択することができ、以下の基材用材料を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の成分を含んでいてもよい。
基材層は、単層構造であってもよく、2層、3層、又はそれ以上の複層構造であってもよい。
【0013】
本実施形態において、基材層は、破断強度が10~90MPaであり、好ましくは12~90MPaであり、より好ましくは15~90MPaであり、更に好ましくは20~85MPaである。破断強度が10MPa以上であることにより、粘着テープを被着体よりを剥がす際において、作業者が引っ張っても千切れることなく被着体から粘着テープを剥がすことができる。また、破断強度が90MPa以下であることにより、作業者が、粘着テープを引っ張る際の応力が大きくなりすぎるのを避けることができる。
基材層の破断強度は、基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
また、当該破断強度は、適宜材料を選択するとともに、基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0014】
本実施形態において、基材層は、破断伸度が400~1500%であり、好ましくは500~1300%であり、より好ましくは600~1200%である。破断伸度が400%以上であることにより、粘着テープが強固に被着体に接着している場合でも、該粘着テープを剥がす際の応力が大きくなり過ぎない。また、破断伸度が1500%以下であることにより、粘着テープを剥がす際に、引き伸ばし距離が長くなりすぎず小スペースでの作業が可能となる。
基材層の破断伸度は、基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
また、当該破断伸度は、適宜材料を選択するとともに、基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0015】
本実施形態において、基材層は、100%モジュラスが0.1~5MPaであることが好ましく、より好ましくは0.5~4.5MPaであり、さらに好ましくは1~4MPaである。100%モジュラスが0.1MPa以上であることにより、粘着テープや被着体に負荷がかかった際にズレなどの形状変形に伴う不具合を抑制することができる。また、100%モジュラスが5MPa以下であることにより、被着体より粘着テープを剥がす初期段階において、作業者が、比較的軽い力で引っ張ることができる。
基材層の100%モジュラスは、基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、伸度が100%の際に測定した応力値を指す。
また、当該100%モジュラスは、適宜材料を選択するとともに、基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0016】
本実施形態において、基材層は、ゴム硬度が20~90Aであることが好ましく、より好ましくは30~85Aであり、さらに好ましくは40~80Aである。ゴム硬度が20A以上であることにより、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に該粘着テープのちぎれを防止することができる。また、ゴム硬度が90A以下であることにより、基材層が軟らかくなり、例えば、粘着テープが貼り付いた被着体を落下した際に、粘着テープが衝撃を吸収しやすくなり、被着体を衝撃から保護することができる(粘着テープの耐衝撃性を向上させることができる)。
基材層のゴム硬度は、ショアA硬度であり、デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)(型式:GS-719G、株式会社テクロック製)を用い、JIS K 6253に準拠して測定した値を指す。
また、当該ゴム硬度は、例えば樹脂の分子量を変更したり、スチレン単量体単位を含む場合には当該単量体単位を変更したりする等、適宜材料を選択するなどの方法で調整することができる。
【0017】
基材層は、厚さが10~800μmであり、好ましくは15~500μmであり、より好ましくは20~400μmである。厚さが10μm以上であることにより、粘着テープの強度を確保することができ、また、厚さが800μm以下であることにより、厚さが厚すぎて粘着テープを引っ張りにくくなることを避けることができる。
なお、本明細書において、「基材層の厚さ」とは、基材層中の任意の5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、それら測定値の平均値を指す。
【0018】
粘着層と基材層との厚さの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[粘着層の厚さ/基材層の厚さ]で表される、基材層の厚さに対する粘着層の厚さの比率が、1/5~5/1であることが好ましく、1/3~3/1であることがより好ましく、1/2~2/1であることが更に好ましい。基材層の厚さに対する粘着層の厚さの比率が好ましい範囲内にあると、粘着テープの優れた接着性と再剥離性(剥がしやすさ)を得ることができる。一方、前記比率が5/1より大きいと、粘着テープの再剥離工程で粘着層のみが被着体に残存してしまう可能性がある。また、前記比率が1/5より小さいと、被着体の表面が凹凸形状などの場合に粘着層が追従できずに接着強度が低下してしまう懸念がある。
【0019】
<<基材用材料>>
基材用材料としては、上記の特定の物性を有する基材層を得ることができれば特に限定されないが、例えば、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等のスチレン系樹脂;エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン等のポリウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルイミド;ポリイミドフィルム;フッソ樹脂;ナイロン;アクリル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
これらの中でも、スチレン系樹脂や、ポリウレタン樹脂は、好適な破断強度や破断伸度を得易いため好ましく、スチレン系樹脂がより好ましく、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0020】
-スチレン系樹脂-
スチレン系樹脂は、熱可塑性を示す樹脂であるため、押出成形や射出成形等の成形性に優れ、基材層を成形し易い。また、スチレン系樹脂は、一般的に熱可塑性樹脂と呼ばれる樹脂群の中でも特に優れた破断伸度が得られ易く、粘着シートの基材として好適に使用できる。
したがって、基材用材料において、全樹脂成分に対してスチレン系樹脂が占める割合としては、50%~100%が好ましく、60%~100%がより好ましく、65%~100%が更に好ましく、70%~100%が特に好ましい。スチレン系樹脂の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断強度が優れた基材層を得ることができる。
【0021】
スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐構造、又は多分岐構造の単一構造のものを使用してもよく、異なる構造のものを混合して使用してもよい。線状構造が豊富なスチレン系樹脂は、基材層に優れた破断伸度を与えることができる。一方、分岐構造や多分岐構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは、擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができる。このため、スチレン系樹脂は、必要な機械特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
【0022】
スチレン系樹脂は、該スチレン系樹脂の全質量に対して、下記一般式(1)で表される構造単位を13質量%~60質量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、15質量%~50質量%の範囲で有するものを使用することがより好ましく、15質量%~45質量%の範囲で有するものを使用することが更に好ましく、15質量%~35質量%の範囲で有するものを使用することが特に好ましい。スチレン系樹脂の全質量に対する下記一般式(1)で表される構造単位の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断強度が好適な範囲で得られ易くなる。なお、下記一般式(1)中の*は他の原子との結合を表わす結合手であり、他の式においても同様である。
【化1】
【0023】
スチレン系樹脂として、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計質量に対する、スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0質量%~80質量%であることが好ましく、0質量%~70質量%の範囲であることがより好ましく、0質量%~50質量%であることが更に好ましく、0質量%~30質量%であることが特に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、優れた破断伸度や破断強度を維持しながら熱耐久性との両立が可能となる。
【0024】
また、スチレン-イソプレン共重合体としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、1万~80万の範囲であるものを使用することが好ましく、3万~50万の範囲であるものを使用することがより好ましく、5万~30万の範囲であるものを使用することが更に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記好ましい範囲内であることで、加熱流動性や溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程における作業性が良好でありながら、熱耐久性を備えた基材層を得ることができるため好ましい。
【0025】
ここで、GPC法によるスチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量の測定は、GPC装置(SC-8020、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:テトラヒドロフラン
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-H(20) 2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0026】
スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、及びスチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、アニオンリビング重合法によりブロック共重合体を得、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させることにより得ることができる。
具体的にはスチレン-イソプレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法などが挙げられる。
【0027】
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法、リビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
【0028】
スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記方法で製造したスチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを混合する方法などが挙げられる。
【0029】
また、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、ひとつの重合工程で同時に混合物として製造することも可能である。
より具体的な一態様としては、アニオンリビング重合法により、第一に、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いてスチレン単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリスチレンブロックを形成する。第二に、ポリスチレンブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合し、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を得る。第三に、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を形成する。第四に、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の残部を、重合停止剤を用いて、そのリビング性の活性末端を失活させ、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を形成させる。
【0030】
-ポリウレタン樹脂-
ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上の軟化点を有するものが好ましく、50℃以上の軟化点を有するものがより好ましい。また、軟化点の上限としては、100℃以下であることが好ましい。
本明細書における軟化点は、JIS K 2207(環球式)に準拠して測定した値を指す(以下、軟化点については同様である)。
【0031】
ポリウレタン樹脂としては、ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応物を好適に使用することができる。
【0032】
ポリオール(b1-1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール(b1-1)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが、基材層の機械特性を得ることができるため好ましい。基材層において、耐熱性が必要となる場合はポリエステルポリオールを使用することが好ましく、耐水性や耐生分解性が必要な場合はポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステル、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0034】
ポリエステルポリオールの製造に使用可能な低分子量のポリオールとしては、例えば、概ね重量平均分子量が50~300程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノールなどを使用することができる。
【0035】
ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びそれらの無水物又はエステル化物などが挙げられる。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、後述する低分子量のポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
【0038】
炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0039】
ポリカーボネートポリオールの製造に使用可能な、炭酸エステル及び/又はホスゲンと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノールなどが挙げられる。
【0040】
ポリイソシアネート(b1-2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)とを反応させてポリウレタン樹脂(b1)を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、反応容器に仕込んだポリオール(b1-1)を、常圧又は減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、ポリイソシアネート(b1-2)を一括又は分割して供給し反応させる方法などが挙げられる。
【0043】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応は、ポリイソシアネート(b1-2)が有するイソシアネート基(NCO)と、ポリオール(b1-1)が有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH当量比)が、1.0~20.0の範囲で行うことが好ましく、1.1~13.0の範囲で行うことがより好ましく、1.2~5.0の範囲で行うことが更に好ましく、1.5~3.0の範囲で行うことが特に好ましい。
【0044】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応条件としては、特に制限はなく、安全、品質、コスト等の諸条件を考慮して適宜選択することができるが、反応温度としては70℃~120℃が好ましく、反応時間としては30分間~5時間が好ましい。
【0045】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)とを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒、有機金属系触媒などを使用することができる。
【0046】
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行ってもよく、有機溶剤の存在下で行ってもよい。
有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤は、ポリウレタン樹脂(b1)の製造途中又はポリウレタン(b1)を製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
【0047】
-その他の成分-
基材層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与樹脂;基材用材料以外のポリマー成分;架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
基材層におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0048】
粘着付与樹脂は、粘着テープの粘着層と、基材層との密着性を高めることや耐熱性を高める目的で使用することができる。
【0049】
粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、80℃以上のものが好ましく、90℃以上のものがより好ましく、100℃以上のものが更に好ましく、110℃以上のものが特に好ましい。
【0050】
粘着付与樹脂としては、例えば、後述の「-ゴム系粘着剤樹脂-」の項目で記載したものなどを使用することができ、好ましい態様等も同様である。
【0051】
老化防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤(「加工安定剤」と称することもある)、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤が好ましく、これらを組み合わせて使用することが、基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができるため好ましい。なお、リン系老化防止剤は、高温環境下において経時的にわずかに変色(黄変)する場合があるため、その使用量は、初期接着性と熱耐久性と変色防止とのバランスを考慮し適宜設定することが好ましい。
【0052】
フェノール系老化防止剤としては、一般に立体障害性基を有するフェノール系化合物を使用することができ、モノフェノール型、ビスフェノール型、ポリフェノール型が代表的である。具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
フェノール系老化防止剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基材用材料100質量部に対し、0.1質量部~5質量部の範囲で使用することが好ましく、0.5質量部~3質量部の範囲で使用することが、基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができる。
【0054】
<粘着層>
本実施形態において、粘着テープは、粘着力を発揮するための粘着層を基材層の両面に備える。そして、本実施形態の粘着テープの粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nである。さらに、本実施形態における粘着層の外表面の摩擦力は、0.3~4.0Nであることが好ましく、0.5~3.0Nであることがより好ましい。
本実施形態おける粘着層の外表面の摩擦力が上記範囲であると、被着体から粘着テープを剥がすために引っ張った際、被着体の表面で粘着テープの摩擦抵抗が下がるので、粘着層による被着体への接着力を効果的に低下させ、粘着テープを剥がしやすくすることができる。
なお、本実施形態の粘着層の外表面とは、被着体との接着面をいい、換言すると、粘着層における対向する2つの表面の内、基材層側とは反対側の表面をいう。そして、本実施形態の粘着テープにおいて、少なくとも2つ存在する粘着層のうち、少なくとも一方の粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであればよい。さらには、基材層の両面に設けられた2つの粘着層の両方の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであってもよい。
上記の通り、本明細書における粘着層の摩擦力は、被着体と接触する側の粘着層の表面の摩擦力をいい、粘着層の摩擦力は、後述する実施例で説明する摩擦力の測定に記載した試験方法で測定している。
より詳細には、本明細書における粘着層の外表面の摩擦力は、綿帆布に対する23℃における摩擦力をいい、0.1~5.0Nであることが好ましく、0.3~4.0Nであることがより好ましく、0.5~3.0Nであることがさらに好ましい。
なお、本明細書における綿帆布は、綿製であり、9号綿帆布[(旧JIS L3102を準用)原糸撚り(経糸10/2、緯糸10/3)、密度(経糸44~48本/inch、緯糸33~37本/inch)、重さ510g/m2)]を使用し、摩擦力の測定雰囲気は、温度23℃、湿度は50%RHである。
【0055】
本実施形態の粘着層は、アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、前記アクリル変性シリコーンの含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して0.1~35質量部である。また、本実施形態において、粘着層及び当該粘着層を形成する粘着剤組成物は上記アクリル変性シリコーン及び粘着剤樹脂以外、必要に応じて、マイクロバルーン及び/又はその他の成分を含んでもよい。
【0056】
粘着層の25%伸長時応力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.04MPa~0.4MPaが好ましく、0.05MPa~0.1MPaがより好ましい。粘着層の25%伸長時応力が、好ましい範囲内であると、粘着テープとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、粘着層の25%伸長時応力が、0.04MPa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら粘着テープのせん断方向への荷重が生じた場合に粘着テープが剥がれてしまうことがあり、0.4MPaを超えると、粘着テープを引き剥がす際、該粘着テープを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
粘着層の25%伸長時応力は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0057】
粘着層の破断強度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが0.5MPa~2.1MPaが好ましく、1.0MPa~2.1MPaがより好ましい。粘着層の破断強度が、前記好ましい範囲内であると、粘着テープを引き伸ばして剥がす際にも該粘着テープが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着テープを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、粘着層の破断強度が、0.5MPa未満であると、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に該粘着層の凝集破壊による糊残りが生じることがあり、2.1MPaを超えると、十分な粘着性を得ることができないことがある。なお、粘着テープを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着テープの厚さにも依存することになり、例えば、粘着テープの厚さが厚く破断強度が高い粘着テープを引き伸ばして剥がそうとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず剥がすことができないことがある。
粘着層の破断強度は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0058】
粘着層の破断伸度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、450%~1,300%が好ましく、500%~1,200%がより好ましく、600%~1,100%が更に好ましい。粘着層の破断伸度が前記好ましい範囲内にあることで、好適な接着性と再剥離性(剥がしやすさ)を両立することができる。
粘着層の破断伸度は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0059】
粘着層の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~150μmであることが好ましく、20μm~120μmであることがより好ましく、40μm~110μmであることが更に好ましく、50μm~100μmであることが特に好ましい。「粘着層の厚さ」は、粘着テープにおける一方の面の粘着層の厚さを意味する。粘着テープの両面に粘着層を有する場合、一方の面の粘着層の平均厚さと、他方の面の粘着層の平均厚さとは、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じ厚さであることが好ましい。
なお、本明細書において、粘着層の厚さは、次の方法により測定することができる。すなわち、粘着テープを液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で、粘着テープの幅方向を折り目として折り曲げて割り、該粘着テープの厚さ方向の割断面観察用の切片を作製する。前記切片をデシケータ内で常温に戻した後、前記割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡を用いて、前記割断面の観察を行う。電子顕微鏡のスケールを元に、前記粘着テープにおける粘着層の厚さを10箇所測定し、その算術平均値を粘着層の厚さとする。なお、粘着層の厚さは、一方側の表面から他方側の表面までを積層方向に沿って測った長さである。
【0060】
-シリコーン化合物(アクリル変性シリコーン)-
本実施形態において、粘着層の前駆体である粘着剤組成物は、シリコーン化合物(例えば、アクリル変性シリコーン)を含有する。粘着層の前駆体である粘着剤組成物が、当該アクリル変性シリコーンを含むことにより、接着面に介在する当該アクリル変性シリコーンによって摩擦抵抗が下がるので、接着力を効果的に低減させることができる。したがって、粘着テープの伸長方向が被着体の貼付面に対して比較的大きい角度、例えば垂直方向(「90°方向」と称することもある)である場合であっても、また、速い速度で伸長させた場合であっても、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。なお、粘着剤組成物にアクリル変性シリコーンを含有させると、接着性能の低減が生じる虞がある。しかし、当該アクリル変性シリコーンのアクリル変性部が粘着剤組成物又は粘着層中の粘着剤樹脂と親和性を有し、当該粒子が組成物又は粘着層中で粘着剤成分を取り込むことにより膨潤状態になるため、粘着剤組成物の弾性が維持されやすく、粘着テープの接着性能の低減が抑えることができる。
したがって、本実施形態における粘着層は、粘着剤樹脂及びシリコーン化合物を含有し、粘着剤樹脂と、アクリル変性シリコーンと、任意成分である後述のマイクロバルーンとを含有することが好ましい。
【0061】
本実施形態におけるシリコーン化合物としては、アクリル変性シリコーンが好ましい。当該シリコーン化合物としては、下記一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体と、これと共重合可能な官能基含有単量体との、乳化グラフト重合体が挙げられる。
【化2】
【0062】
(上記一般式(2)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、X1、X2、X3、X4、X5、及びX6はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示し、Y1及びY2はそれぞれ独立して、X1又は-[O-Si(X7)(X8)]c-X9で示される基を示し、X7、X8、及びX9はそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示し、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、及びX9並びにY1及びY2中の少なくとも2個の基はヒドロキシル基であり、a、b及びcはそれぞれ独立して、0≦a≦1,000の正数、100≦b≦10,000の正数、1≦c≦1,000を満たす正数である。)
【0063】
一般式(2)において、R1又はR2で表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、ハロゲン原子、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アルキル,アルコキシもしくは(メタ)アクリロキシ置換アミノ基で置換されていてもよい。
R1又はR2で表される炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
R1又はR2としては、好ましくはメチル基である。
【0064】
一般式(2)において、X1~X9で表される炭素数1~20のアルキル基及び炭素数6~20のアリール基としては、R1又はR2で例示したアルキル基及びアリール基とそれぞれ同様の基が挙げられる。
X1~X9で表される炭素数1~20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
一般式(2)において、a、b及びcは0≦a≦1,000の正数、100≦b≦10,000の正数、1≦c≦1,000の正数であるが、aは好ましくは0~200の正数である。aが1,000より大きくなると得られる皮膜の強度が不十分となる。bは好ましくは1,000~5,000の正数である。bが100未満では皮膜の柔軟性が乏しいものとなり、10,000より大きいと粒子のような固形になりにくくなる。cは好ましくは1~200の正数である。
また、一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサンは、架橋性の面から1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~4個のヒドロキシル基を有し、そのヒドロキシル基は分子鎖両末端に有するものが好ましい。
【0066】
上記シリコーン化合物の一例であるアクリル変性シリコーンに用いられるアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0067】
アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体と共重合可能な官能基含有単量体としては、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、ビニル基、アリル基等を含む不飽和結合を有する単量体等が挙げられる。
【0068】
アクリル変性シリコーンは、上記一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサン100質量部に対して、アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体が10~100質量部、これと共重合可能な官能基含有単量体が0.01~20質量部を混合し、乳化グラフト重合して得られるものが好ましい。乳化グラフト重合における条件は、特に限定されず、重合時に用いる開始剤としては、通常アクリル系ポリマーに用いる公知のラジカル開始剤を使用できる。また、乳化剤も公知のアニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用できる。
【0069】
本実施形態における粘着剤組成物に使用可能なアクリル変性シリコーンは、ポリオルガノシロキサンの一部が(メタ)アクリル系単量体によって変性されている高分子を含有する形態であればよく、例えば、固形状、粉体状、粒子状又は溶液状のいずれであっても特に制限されることはない。そして、本実施形態における粘着剤組成物に使用可能なアクリル変性シリコーンの形状は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができ、規則的な形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。アクリル変性シリコーンが粒状の場合の具体例としては、多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状などが挙げられるが、これらの中でも、粒子の形状としては、楕円状、球状、多角形状が好ましく、より好ましくは球状である。粒子形状が、楕円状、球状、多角形状などの形状であると、粘着テープが伸長した際に、粘着層の被着体に対する滑りが良好となり、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。これらの形状の粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アクリル変性シリコーンとして粒状のものを使用する場合、アクリル変性シリコーンの平均粒径は、好ましくは10~400μmであり、好ましくは15~400μmである。
【0070】
一方、本実施形態における粘着層中に存在するシリコーン化合物、特にアクリル変性シリコーンは、共存する粘着剤樹脂の種類などによってその形状が外部から観察し難い場合がある。アクリル変性シリコーンの形状が外部から観察し難い場合であっても、粘着層が、シリコーン化合物(例えば、アクリル変性シリコーン)及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から粘着層が形成されていればよい。
本実施形態における粘着層又は粘着剤組成物中に存在するアクリル変性シリコーンは、共存する粘着剤樹脂に対して高い親和性を示すことにより、製品である粘着テープからアクリル変性シリコーンの有無及びその含有量を特定し難い場合、例えば、アクリル変性シリコーンの存在及びその含有量を規定する代替として、本実施形態における粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nの範囲であってもよい。
また、本実施形態において、粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nの範囲を達成する具体的な手段としては、当該粘着層が、粘着剤樹脂と、アクリル変性シリコーンとを含有する形態が挙げられる。
【0071】
本実施形態のアクリル変性シリコーンとして粒状のものを使用する場合は、下記に挙げる方法で造粒し粉体化される。即ち、スプレ-ドライ乾燥、気流式乾燥等が挙げられるが、生産性を考えるとスプレ-ドライヤ-が好ましい。粉体化は熱間乾燥することが好ましく、80~150℃で処理することが好ましい。
本実施形態に使用可能なシリコーン化合物としては、例えば、シャリ-ヌ R-170、シャリ-ヌ R-170S、シャリ-ヌ R-770、シャリ-ヌ R-773、シャリ-ヌ R-200(以上、日信化学工業(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0072】
本実施形態において、粘着剤組成物における、シリコーン化合物又はアクリル変性シリコーンの含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、0.1~35質量部であるが、0.1~30質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましい。粘着剤樹脂100質量部に対する粒子の含有量が0.1質量部以上であることにより、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。また、粘着剤樹脂100質量部に対する粒子の含有量が35質量部以下であることにより、耐衝撃性が悪くなったり、また、せん断接着力や割裂接着力が弱くなったりすることを防止することができる。また、粘着層中におけるアクリル変性シリコーンの含有量も上記と同様の範囲を適用できる。
粘着層における粒子の含有量は、粘着剤組成物を調製する際に、適宜調製することができる。また、本実施形態おいて、シリコーン化合物(特にアクリル変性シリコーン)は、ポリオルガノシロキサンのみから構成されるシリコーン粒子を実質的に含まない。
【0073】
-マイクロバルーン-
本実施形態の粘着層又は当該粘着層を形成する粘着剤組成物は、マイクロバルーンをさらに含有してもよい。すなわち、本実施形態の粘着層又は粘着剤組成物は、シリコーン化合物(例えば、アクリル変性シリコーン)、マイクロバルーン及び粘着剤樹脂を含有することが好ましい。そして、当該粘着層は、シリコーン化合物(例えば、アクリル変性シリコーン)及び粘着剤樹脂を含有し、必要に応じて添加されるマイクロバルーン及び/又はその他の成分を含有する粘着剤組成物から形成される。また、当該粘着剤組成物の各成分の含有量は、得られる粘着層中の各成分が本明細書に記載の数値範囲をそれぞれ満たすよう適宜添加されることが好ましい。
【0074】
本実施形態の粘着層中におけるマイクロバルーンは、5~50μmの数平均1次粒子径を有することが好ましい。一方、粘着剤組成物を調製する際に使用する原料のマイクロバルーンは、10~50μmの平均粒径を有する。
マイクロバルーンが粘着層に存在すると、キャビディー又はせん断降伏がマトリックス中に分散しているマイクロバルーン近傍に多数発生して衝撃時のエネルギーを吸収するため、耐衝撃性が向上すると考えられる。しかし、耐衝撃性を重視して、粘着層におけるマイクロバルーンの充填率を上げると、粘着層の凝集力が低下し、粘着層と基材層とを備えた粘着テープを用いた場合、基材層に対する粘着層のアンカリング不良が発生するため、粘着テープを引っ張って剥がす作業において粘着剤成分が被着体上に残留してしまう、いわゆる糊残りの問題が顕著に表れる。しかし、上記アクリル変性シリコーンとマイクロバルーンとを併用して粘着層又は粘着剤組成物に添加すると、高い接着力を維持しつつ、かつ耐衝撃性を確保しながら簡易にかつ速やかに除去可能な粘着テープを作成することができる。その理由は定かではないが、互いに異なるアクリル変性シリコーンとマイクロバルーンとが混在すると、フィラー同士あるいはバルーン同士の凝集が互いに抑制されて、粘着層の分散状態が良好になった結果と考えられる。
本実施形態におけるマイクロバルーンは、中空体であり、かつ当該中空体単体の平均粒径(=外直径)が10~60μmである。また、当該マイクロバルーンは、必要により、ブタン、イソブタン等の揮発性炭化水素を含有してもよい。なお、ここでいう中空体(単体)の平均粒径(=外直径)が10~50μmとは、マイクロバルーンが膨張した後の平均粒径を表す。
【0075】
本実施形態におけるマイクロバルーンを粘着剤組成物に添加する際、未膨張のマイクロバルーンを予め熱処理などにより膨張した膨張済のマイクロバルーンを用いることが好ましい。また、未膨張のマイクロバルーンを用いて粘着層の前駆体(粘着剤組成物の塗膜など)又は粘着層を形成する際に、マイクロバルーンを膨張させてもよい。当該未膨張のマイクロバルーンとしては、膨張していない熱可塑性樹脂製のマイクロバルーンなどを挙げることができる。
一方、粘着層中に存在するマイクロバルーンの数平均1次粒子径も同様に、マイクロバルーンが膨張した後の外直径を表す。本実施形態において、粘着層に含まれるマイクロバルーンは、数平均1次粒子径が5~50μmの中空体であればよく、膨張済のマイクロバルーンであることが好ましい。
【0076】
本実施形態において、粘着剤組成物に添加するマイクロバルーンの膨張後の平均粒子は、10~50μmが好ましく、より好ましくは15~50μm、さらに好ましくは18~45μmである。マイクロバルーンの平均粒径が好ましい範囲内であると、より簡易に且つより速やかに粘着テ-プを剥がすことができ、粘着テ-プの基材の厚さが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、マイクロバルーンの平均粒径が10μm未満であると求める耐衝撃性が得られず、50μmを超えるとせん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
【0077】
なお、本明細書において、「マイクロバルーンの平均粒径」は、粘着剤組成物に添加する前のマイクロバルーン単体の粒子の大きさをいい、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)により測定した体積平均粒径をいう。そして、マイクロバルーンの平均粒径の測定は、後述の実施例の欄に記載の測定条件を使用している。
【0078】
本明細書において、「マイクロバルーンの数平均1次平均粒子径」は、粘着層中に存在するマイクロバルーン単体の粒子の大きさをいい、粘着層中に存在するマイクロバルーンの数平均1次平均粒子径は、以下の方法を用いて測定する。
まず、液体窒素下で冷却させた粘着テ-プをミクロト-ムにより無作為に3箇所切断し、3個の断片をサンプルとした。そして、それぞれのサンプルに対して走査型電子顕微鏡を用いて倍率400倍の写真を撮影した後、撮影された3枚の写真から、中空体の粒子をマイクロバルーンとした後、画像解析ソフトを用いて二値化処理(例えば大津の二値化処理)により算出した中空体の断面積を円の面積とみなし、中空体の円相当径を測定した。
そして、3枚の写真内の中空体の合計個数とそれぞれに対応する円相当径とを算出して、以下の式(a)から中空体であるマイクロバルーンの数平均1次平均粒子径を算出した。
【数1】
(上記数式(a)中、mは中空体であるマイクロバルーンの合計数を表し、ΣD
pは撮影した写真中の中空体の外径に囲まれた領域の面積から算出した円相当径の総和を表す。)また、マイクロバルーンの数平均1次平均粒子径の測定には、シリコーン複合フィラーと同様の日立卓上顕微鏡MiniscopeTM3030Plusを使用した。
【0079】
本実施形態において、マイクロバルーンの外形は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、球状、楕円状、多角形状、立方体状、棒状、針状、平板状、鱗片状、又は不定形などが挙げられる。
本実施形態におけるマイクロバルーンは、外殻である表層に密封された構造であり、有機材料(例えば、熱可塑性樹脂)を外殻に用いたマイクロバルーン、無機材料(例えば、タルク、ホウケイ酸ガラス、シリカ、カーボン、セラミック等)を外殻に用いたマイクロバルーン、又は前記有機材料と無機材料との複合材料(例えば、アクリルニトリル系樹脂などの有機材料をシェルとして有する中空体の表面にタルクなどの無機材料がコーティングされたマイクロバルーン)のいずれも使用できるが、有機マイクロバルーンが好ましい。また、有機マイクロバルーンを使用する場合、特に熱の作用によってマイクロバルーンに作用を及ぼすことにより、外側の外殻が柔らかくなる。同時に、中空体内部に封入された液状の発泡剤ガス等がそれの気体の状態に変わる。この際、マイクロバルーンが不可逆的に拡大し、三次元的に膨張する。内圧と外圧が等しくなった時に膨張が終了する。外殻は維持されるため、独立気泡型の発泡体を得ることができる。
【0080】
本実施形態において、粘着層に含まれるマイクロバルーンは、膨張済のマイクロバルーンであることが好ましい。また、本実施形態において、粘着層を形成する粘着剤組成物においては、粘着層の形成に未膨張のマイクロバルーンを用いる。当該未膨張のマイクロバルーンは、膨張していない熱可塑性樹脂製のマイクロバルーンを挙げることができる。
【0081】
本実施形態において、マイクロバルーンは、外殻である表層として第1樹脂を用いたものが好ましく用いられる。より詳細には、本実施形態における好適なマイクロバルーンは、第1樹脂を含む表層を有する中空体粒子であることが好ましい。
上記第1樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。また、第1樹脂としては、アクリルニトリル系樹脂であることが好ましく、具体的には、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
上記マイクロバルーンの具体例としては、ディアリテ社(Dualite Corporation)製のディアリテ(Dualite)(登録商標)シリーズ、アクツォノベル社(Akzo Nobel)製のエクスパンセル(Expancel)シリーズ、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)シリーズ、中空ガラス粒子(シリカバルーン、アルミナバルーンなど)、中空セラミックス粒子などが挙げられる。
【0082】
本実施形態において、マイクロバルーンの表面の一部又は全部を無機材料(例えば、無機微粒子)により被覆することが好ましい。当該無機材料は、炭酸カルシウム、表面処理済の炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレイ及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の無機粉末であることが好ましい。マイクロバルーンを無機材料により表面被覆すると、生産性、分散性、耐衝撃性の向上の観点で好ましい。また、当該無機材料を、必要により、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤を用いて表面処理してもよい。
【0083】
本実施形態において用いられるマイクロバルーンは、第1樹脂を含む表層を有する中空体粒子であり、且つ前記表層の表面に無機材料が添着されていることが好ましい。また、本実施形態において、炭酸カルシウムがマイクロバルーン表面の一部又は全部に添着していることが好ましい。これにより、耐衝撃性の効果がより向上する。
本実施形態において、マイクロバルーンの数平均1次粒子径と、粘着層の平均厚さとの比は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。[マイクロバルーンの数平均1次粒子径/粘着層の平均厚さ]で表される、粘着層の厚さに対するマイクロバルーンの数平均1次粒子径との比が、0.1~1.0の範囲であることが好ましく、0.2~0.9であることがより好ましく、0.3~0.8が更に好ましく、0.4~0.7が特に好ましい。前記比が0.1以上であると、優れた耐衝撃性を得やすくなる。また、前記比が0.7以下であると、粘着テープを引っ張って剥がす際に簡易にかつ速やかに除去し易くなり、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能もより優れる点で有利である。
【0084】
粘着層における、マイクロバルーンの含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、1~50質量部であるが、3~45質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましい。粘着剤樹脂100質量部に対するマイクロバルーンの含有量が1質量部以上であることにより、耐衝撃性及び切断加工性の両立、あるいは剥離容易性を確保することができる。また、粘着剤樹脂100質量部に対するマイクロバルーンの含有量が50質量部以下であることにより、被着体への粘着層の残留、耐衝撃性の低下、また、せん断接着力又は割裂接着力の低下を防止することができる。
粘着層におけるマイクロバルーンの含有量は、粘着剤組成物を調製する際に、適宜調製することができる。
【0085】
粘着層全体の体積に対する、マイクロバルーンの体積割合は、5~40体積%を占めることが好ましく、8~35体積%がより好ましく、10~30体積%がさらに好ましく、13~30体積%が最も好ましい。マイクロバルーンの体積割合が5体積%以上であることにより、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。また、マイクロバルーンの体積割合が40体積%以下であることにより、被着体への粘着層の残留、耐衝撃性の低下、また、せん断接着力又は割裂接着力の低下を防止することができる。
なお、本明細書における粘着層に対するマイクロバルーンの体積割合は、下記数式(1)~(3)より算出することができる。
粘着剤樹脂*1の質量A(g)/粘着剤樹脂*1の密度A(g/cm3)=粘着剤樹脂*1の体積A(cm3)・・・数式(1)
マイクロバルーンの質量B(g)/マイクロバルーンの密度B(g/cm3)=マイクロバルーンの体積B(cm3)・・・数式(2)
マイクロバルーンの体積B(cm3)/(粘着剤樹脂*1の体積A(cm3)+マイクロバルーンの体積B(cm3))×100=マイクロバルーンの体積割合(体積%)・・・数式(3)
なお、上記数式(1)及び(2)において、*1で表される粘着剤樹脂は、後述のその他の成分を含んでいてもよいことを表す。
上記密度は、JIS Z 8804に準拠して測定した値である。
【0086】
-粘着剤樹脂-
本実施形態の粘着層は、粘着剤樹脂を必須に含む。そして当該粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、公知の物の中から適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、ウレタン系粘着剤樹脂、シリコーン系粘着剤樹脂又はその他の粘着剤樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、粘着剤樹脂としては、アクリル系粘着剤樹脂を含むことが、上記のアクリル変性シリコーンとの親和性をより向上させることができるので、好ましい。
【0087】
--アクリル系粘着剤樹脂--
アクリル系粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル重合体、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤を含有するものなどが挙げられる。
【0088】
アクリル重合体は、例えば、(メタ)アクリレート単量体を重合させることによって製造することができる。
上記(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、n-ブチルアクリレートを使用することが、被着体に対する優れた密着性を確保する上で特に好ましい。
【0090】
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、80~98.5質量%の範囲で使用することが好ましく、90~98.5質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0091】
アクリル重合体の製造に使用可能な単量体としては、上述のものの他に、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することができる。
高極性ビニル単量体としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル単量体等の(メタ)アクリル単量体、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
水酸基を有するビニル単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0093】
水酸基を有するビニル単量体は、粘着剤樹脂としてイソシアネート系架橋剤を含有するものを使用する場合に使用することが好ましい。具体的には、水酸基を有するビニル単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0094】
水酸基を有するビニル単量体は、アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、0.01~1.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0.03~0.3質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0095】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0096】
アミド基を有するビニルの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0097】
高極性ビニル単量体は記アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、1.5質量%~20質量%の範囲で使用することが好ましく、1.5質量%~10質量%の範囲で使用することがより好ましく、2質量%~8質量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性の点でバランスのとれた粘着層を形成できるため更に好ましい。
【0098】
アクリル重合体の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法で重合させる方法などが挙げられる。これらの中でも、アクリル重合体は、溶液重合法、塊状重合法で製造することが好ましい。
【0099】
重合の際には、必要に応じて、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系熱重合開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾの熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤などを使用することができる。
本実施形態において、アクリル重合体は、単独重合体であっても、あるいは多元共重合体(2元~7元共重合体)であってもよく、さらには、これらの混合物であってもよい。
【0100】
前記方法で得られたアクリル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、30万~300万であるものを使用することが好ましく、50万~250万であるものを使用することがより好ましい。
【0101】
ここで、GPC法によるアクリル重合体の重量平均分子量の測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0102】
本実施形態において、上記アクリル重合体としては、以下の一般式(I)で表されるトリブロック共重合体又は後述の一般式(V)で表されるジブロック共重合体が好ましい。以下、本実施形態におけるアクリル重合体の好ましい態様について説明する。
【0103】
<トリブロック共重合体>
本実施形態の粘着テープの粘着層は、下記一般式(I):
【化3】
(上記一般式(I)中、A、B及びCはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、A及びCはそれぞれ独立して、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、Bはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表し、AとCとは同一であっても或いは異なる化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位であってもよい。上記一般式中(I)中、*は他の原子との結合を表す結合手である。)で表される繰り返し単位を有するトリブロック共重合体を含む。
【0104】
上記一般式(I)中、A及びCは、Bとは異なる繰り返し単位を表し、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。また、A及びCはそれぞれ独立しており、互いに同一のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位であっても、或いは異なる化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位でもよい。本明細書における「メタクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、メタクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合又はグラフト重合した場合の、メタクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。本発明における、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(II):
【化4】
(上記一般式(II)中、R
3は、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
4で置換されてもよく、当該置換基R
4は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表す。)で表されることが好ましい。
【0105】
上記一般式(II)中、R3は、再剥離性及び高荷重保持力の観点から、炭素原子数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましい。R1としての、炭素原子数1~12のアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、接着力の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。該炭素原子数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基等の環状のアルキル基が挙げられる。また、炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基等の環状のアルキル基が挙げられる。上記炭素原子数1~4のアルキル基としては、再剥離性及び高荷重保持力の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0106】
上記一般式(II)中の好ましいR3は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、又はシクロブチル基のいずれかのアルキル基であり、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R2(ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基)で置換されてもよい。
【0107】
本実施形態において、例えば、メタクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されることはなく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2-ヘキシルデシル等が挙げられる。これらの中でも、高荷重保持力と解体性の観点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0108】
上記一般式(I)中、Bは、A及びCとは異なる繰り返し単位を表し、アクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。本明細書における「アクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、アクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合又はグラフト重合した場合の、アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちアクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。本発明における、アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(III):
【化5】
(上記一般式(III)中、R
5は、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
6で置換されてもよく、当該置換基R
4は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表わす。)で表わされることが好ましい。
【0109】
上記一般式(III)中、R5は、接着性の観点から、炭素原子数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数4~8のアルキル基がさらに好ましい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、接着性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましい。
【0110】
また、上記一般式(III)中、炭素原子数1~12のアルキル基の例示は、上記一般式(I)中の、炭素原子数1~12のアルキル基の例示と同様である。
【0111】
上記一般式(III)中の好ましいR5は、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基のいずれかのアルキル基であり、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R6(ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基)で置換されてもよい。
【0112】
本実施形態において、アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらの中でも、接着力と再剥離性の両立の観点から、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及び、これらの共重合体が好ましい。
【0113】
上記一般式(I)中、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。p、q及びrのそれぞれの値は分子量等に関係する。p/(p+q+r)は、0.02~0.40であることが好ましく、0.05~0.37であることがより好ましい。q/(p+q+r)は、0.20~0.95であることが好ましく、0.25~0.90であることがより好ましい。r/(p+q+r)は、0.02~0.40であることが好ましく、0.05~0.37であることがより好ましい。
【0114】
本実施形態において、トリブロック共重合体は、以下の一般式(IV):
【化6】
(上記一般式(IV)中、R
3及びR
7はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
4に置換されてもよく、当該置換基R
4は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、
R
5は、炭素原子数4~8のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
6に置換されてもよく、当該置換基R
6は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0115】
上記一般式(IV)中、R1は、上記一般式(II)におけるR3と同様の態様を適用できる。上記一般式(IV)中、R5は、上記一般式(III)におけるR5と同様の態様を適用できる。上記一般式(IV)中、R7は、上記一般式(II)におけるR3と同様の態様を適用できる。また、上記一般式(IV)中、p、q及びrは、上記一般式(I)におけるp、q及びrと同様の態様を適用できる。さらに、上記一般式(IV)中、R3及びR7は同一であっても、或いは異なっていてもよい。
【0116】
本実施形態において、トリブロック共重合体が上記一般式(IV)で表わされる場合、R3は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましく、R5は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、又はウンデシル基からなる群から選択されることが好ましく、R7は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましく、p/(p+q+r)が、0.02~0.40であり、q/(p+q+r)が0.20~0.95であり、r/(p+q+r)が0.02~0.40であることが好ましい。
【0117】
本発明におけるトリブロック共重合体は、一般式(I)中のAとCとが同一であることが好ましい。具体的には、トリブロック共重合体が上記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を有する場合、R1とR5とが同一の基であり、p/(p+q+r)が、0.02~0.40であり、q/(p+q+r)が0.20~0.95であり、r/(p+q+r)が0.02~0.40であることが好ましい。
上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有するトリブロック共重合体において、AとCとが同一である(A-B-A型トリブロック共重合体)場合、より高い弾性率を確保できるため、高荷重保持力、経時再剥離性、及び保存安定性に優れた接着力をより確保しやすくなる。
【0118】
--分子量--
前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが5万~30万であることが好ましく、また、数平均分子量Mnが5万~30万であることが好ましい。より好ましくは、前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが10万~25万であり、且つ数平均分子量Mnが10万~25万であり、さらに好ましくは、前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが13万~23万であり、且つ数平均分子量Mnが13万~23万である。
トリブロック共重合体の重量平均分子量Mwが上記範囲であると接着性と再剥離性と高荷重保持力の観点から好ましく、トリブロック共重合体の数平均分子量Mnが上記範囲であると接着性と再剥離性と高荷重保持力の観点から好ましい。
ここで、GPC法によるトリブロック重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0119】
--立体規則性--
前記トリブロック共重合体及び/又は当該トリブロック共重合体の部分構造(例えば、ブロック)は、立体規則性(タクチシティー)を有することが好ましい。具体的には、前記トリブロック共重合体及び/又は当該トリブロック共重合体の部分構造(例えば、ブロック)は、アイソタクチック、シンジオタクチック及びアタクチックのいずれの立体規則性を有してもよいし、これらのいずれかの立体規則性を有する複数のブロックを有していてもよい。
【0120】
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(A)p-」部のポリマーブロックのシンジオタクチシティーが、65%以上のrr三連子の割合を示すことが好ましく、rr三連子の割合が75~95%であることがより好ましい。
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(C)r-」部のポリマーブロックのシンジオタクチシティーが、65%以上のrr三連子の割合を示すことが好ましく、rr三連子の割合が75~95%であることがより好ましい。
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(B)q-」部のポリマーブロックは、アタクチックを示すことが好ましい。
【0121】
前記トリブロック共重合体が、rr三連子の割合が65%以上の「-(A)p-」部のポリマーブロックを有する場合、再剥離性及び高温下での保持力が良好であるという効果を奏する。
【0122】
一般的には、重合体のシンジオタクチシティーは、3つの単量体単位で構成される連鎖(三連子)がrrである割合により表記される。本明細書では、重合体のNMR測定により算出している。具体的には、13C-NMRにおける三連子の配列を表すシグナルピークは、重合体の種類、測定溶媒、又は測定温度等の条件によって異なるため、それぞれの測定の条件に応じてシグナルを同定・定量する必要がある。なお、本明細書では、重水素化したクロロホルムに溶解させた試料を50℃で測定を行っている。
【0123】
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸t-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸プロピルブロック-ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0124】
前記トリブロック共重合体は、当該トリブロック共重合体の全体の分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量の比において、1.0~2.3の範囲であることが好ましく、1.00~1.50の範囲内であることがより好ましい。
【0125】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが異なる繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(A)p-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(A)p-」部のポリマーブロックの総重量をaと称する。)と、「-(B)q-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(B)q-」部のポリマーブロックの総重量をbと称する。)との割合は、粘着特性の観点から、a/bの質量比において、2/98~67/33の範囲内であるのが好ましく、5/95~60/40の範囲内であるのがより好ましい。
【0126】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが異なる繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(C)r-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(C)r-」部のポリマーブロックの総重量をcと称する。)と、「-(B)q-」部のポリマーブロックの総重量との割合は、粘着特性の観点から、c/bの質量比において、2/98~67/33の範囲内であるのが好ましく、5/95~60/40の範囲内であるのがより好ましい。
【0127】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが同一の繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(A)p-」部のポリマーブロック及び「-(C)r-」部のポリマーブロックの総重量(「-(A)p-」部のポリマーブロック及び「-(C)r-」部のポリマーブロックの総重量をdと称する。)と、「-(B)q-」部のポリマーブロックの総重量(bと称する)との割合は、粘着特性の観点から、d/bの質量比において、5/95~80/20の範囲内であるのが好ましく、10/90~75/25の範囲内であるのがより好ましい。
【0128】
前記トリブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、分子側鎖中又は分子主鎖末端において、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基等の官能基等に変性されてもよい。
【0129】
--トリブロック共重合体の製造方法--
前記トリブロック共重合体の製造方法は、特に限定されることはなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法によりブロック共重合体を逐次重合する方法等が挙げられる。また、前記トリブロック共重合体が立体規則性(例えば、シンジオタクチシティー)を有する場合、有機金属錯体を用いた公知の方法を利用してもよい。
【0130】
前記トリブロック共重合体を製造する方法の一例としては、不活性の重合溶媒中において、重合開始剤を用いて、主成分であるメタクリル酸アルキルエステル単量体の重合と、主成分であるアクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする単量体の重合を、所望のブロック結合順序になるように順次行うことからなる手法によりトリブロック共重合体を製造することができる。
【0131】
本実施形態において、トリブロック共重合体の製造方法の一態様としては、アニオンリビング重合法により、第一に、重合溶媒中、重合開始剤を用いてメタクリル酸アルキルエステル単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリメタクリル酸アルキルエステルブロック(一般式(I)中の「-(A)p-」部分に対応)を形成する。第二に、上記ポリメタクリル酸アルキルエステルのリビング性の活性末端からアクリル酸アルキルエステル単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル二元ブロック共重合体(一般式(I)中の「-(A)p-(B)q-」部分に対応)を得る。第三に、リビング性の活性末端を有するメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル二元ブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル-メタクリル酸アルキルエステルトリブロック共重合体(一般式(I)の「-(A)p-(B)q-(C)r
―」部分に対応)を形成する。この際に、必要に応じて、アルコール等の重合停止剤と反応させることによって重合停止する。
【0132】
上記重合開始剤の例としては、有機リチウム化合物又は有機金属錯体等の有機金属化合物が挙げられる。
上記有機リチウム化合物としては、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、アルキルリチウムを1,1-ジフェニルエチレン、ジフェニルメタン等と反応させて得られる化合物等が挙げられる。さらにこれら有機リチウム化合物と、例えば、リチウムクロライド等の無機塩、リチウム2-(2-メトキシエトキシ)エトキサイド等のアルコキサイドのリチウム塩、ジイソブチル(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物とを併用してもよい。
上記有機金属錯体としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル基を配位子として有する希土類金属錯体、例えば、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムメチルテトラヒドロフラナート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イットリウムメチルテトラヒドロフラナート等が挙げられる。さらにこれら有機金属錯体と、例えば、トリメチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類とを併用してもよい。
【0133】
上記重合溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒等を使用することができる。
本実施形態に係るトリブロック共重合体の好適例としては、n-ブチルアクリレート単量体単位を90~99質量%含有する重合体が好ましい。
【0134】
<その他の粘着剤樹脂>
本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂として、上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有するトリブロック共重合体を含むことが好ましい。必要により、当該トリブロック共重合体以外の粘着剤樹脂として、ジブロック共重合体、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、その他の粘着剤樹脂等を更に含んでもよい。また、上記トリブロック共重合体の代わりにジブロック共重合体、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、その他の粘着剤樹脂等を含有してもよい。 なお、本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂全体に対して、50~100質量%が、前記トリブロック共重合体で占めることが好ましく、70~100質量%が、前記トリブロック共重合体で占めることがより好ましい。
粘着層に用いる粘着剤樹脂中の前記トリブロック共重合体の含有量が上記範囲であると、接着性と解体性と高荷重保持力を両立しやすい。
【0135】
--ジブロック共重合体--
本実施形態の粘着テープの粘着層は、下記一般式(V):
【化7】
(上記一般式(V)中、D及びEはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、Dは、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、Eはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。上記一般式中(V)中、*は他の原子との結合を表す結合手である。)で表される繰り返し単位を有するジブロック共重合体を含んでもよい。
本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂全体に対して、0~40質量%が、上記ジブロック共重合体で占めることが好ましく、0~20質量%がより好ましい。
粘着層に用いる粘着剤樹脂中の上記ジブロック共重合体の含有量が上記範囲であると、接着性と解体性と高荷重保持力を両立しやすい。
また、本実施形態において、粘着剤樹脂として、トリブロック共重合体とジブロック共重合体とを併用すると、高い弾性率と初期接着性を確保しやすくなるため、高荷重保持力、経時再剥離性、及び初期接着力をより確保しやすくなる。特に、粘着テープを引っ張った際において、粘着層中のアクリル変性シリコーン等のフィラーが表面に露出した状態を長期間維持できるため、当該フィラーの効果と相まって優れた相乗効果を発揮する。
上記一般式(V)中のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位及びアクリル酸アルキルエステル単量体単位は、上記一般式(I)中のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位及びアクリル酸アルキルエステル単量体単位と同様の形態を適用できる。
前記ジブロック共重合体は、以下の一般式(VI):
【化8】
(上記一般式(VI)中、R
8は、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
9で置換されてもよく、当該置換基R
9は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、R
10は、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R
11で置換されてもよく、当該置換基R
11は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0136】
上記一般式(VI)中、R8は、上記一般式(II)におけるR3と同様の態様を適用できる。上記一般式(VI)中、R10は、上記一般式(III)におけるR5と同様の形態を適用できる。上記一般式(VI)中、s及びtは、上記一般式(I)におけるp及びqと同様の形態を適用できる。
【0137】
また、本実施形態において、前記ジブロック共重合体の重量平均分子量Mwが5万~30万であり、且つ数平均分子量Mnが5万~30万であることが好ましい。当該重量平均分子量の測定は、本発明におけるトリブロック共重合体の重量平均分子量の測定方法を援用できる。
【0138】
上記一般式(VI)中、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。s及びtのそれぞれの値は分子量等に関係する。s/(s+t)は、0.01~0.99であることが好ましく、0.1~0.9であることがより好ましい。t/(s+t)は、0.01~0.99であることが好ましく、0.1~0.9であることがより好ましい。
【0139】
本実施形態において、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを併用する場合、ジブロック共重合体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態においては、トリブロック共重合体100質量部に対して、ジブロック共重合体を0~100質量部含有することが好ましく、1~50質量部含有することがより好ましく、10~50質量部含有することがさらに好ましい。粘着層における粘着付与樹脂の含有量の範囲が上記範囲であると、被着体との密着性を確保しやすくなる
【0140】
本実施形態におけるアクリル系粘着剤樹脂としては、被着体との密着性や面接着強度を向上させるため、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。
【0141】
アクリル系粘着剤樹脂が含有する粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、30℃~180℃のものが好ましく、70℃~140℃のものが、高い接着性能を備えた粘着層を形成するうえでより好ましい。なお、(メタ)アクリレート系の粘着付与樹脂を使用する場合には、そのガラス転移温度が30℃~200℃のものが好ましく、50℃~160℃のものがより好ましい。
【0142】
アクリル系粘着剤樹脂が含有する粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、粘着付与樹脂は、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好ましい。
【0143】
粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アクリル重合体100質量部に対して、5質量部~65質量部の範囲で使用することが好ましく、8質量部~55質量部の範囲で使用することが、被着体との密着性を確保しやすくいためより好ましい。
【0144】
アクリル系粘着剤樹脂としては、粘着層の凝集力をより一層向上させるうえで、架橋剤を含有するものを使用することが好ましい。
【0145】
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋剤は、アクリル重合体の製造後に混合し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、アクリル重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0146】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、3官能のポリイソシアネート系化合物である、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体、トリフェニルメタンイソシアネートが特に好ましい。
【0147】
架橋度合いの指標として、粘着層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。粘着層のゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%~70質量%が好ましく、25質量%~65質量%がより好ましく、35質量%~60質量%が、凝集性と接着性がともに良好な粘着層を得るうえで更に好ましい。
【0148】
-
なお、ゲル分率は、下記方法で測定された値を指す。剥離シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤樹脂、更に必要に応じて添加剤を含有する粘着剤組成物を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日間エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め試料のトルエン浸漬前の質量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、下記数式(4)に従ってゲル分率が求められる。なお、試料中の導電性微粒子の質量(G3)は、試料の質量(G1)と粘着剤組成物の組成から算出する。
ゲル分率(質量%)=(G2-G3)/(G1-G3)×100 ・・・数式(4)
【0149】
--ゴム系粘着剤樹脂--
本実施形態の粘着層に使用可能なゴム系粘着剤樹脂は、特に制限はなく、一般的に粘着剤樹脂(例えば、合成ゴム系粘着剤樹脂又は天然ゴム系粘着剤樹脂等)として使用可能なゴム材料が挙げられる。また当該ゴム材料には、必要に応じて粘着付与樹脂等の添加剤を含有してもよい。
【0150】
上記ゴム材料の具体例としては、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体が挙げられる。当該ブロック共重合体としては、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレンブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体及びそれらの水素添加物等のスチレン系樹脂などが好ましい。ゴム材料は、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、スチレン系樹脂を2種以上併用すると、粘着テープに優れた接着物性と保持力とを付与できるためより好ましい。特に、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせた混合物を使用することが好ましい。
【0151】
上記スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐状構造、又は多分岐状構造の単一構造を備えた樹脂を使用してもよく、あるいは異なる構造を備えた樹脂を混合して使用してもよい。前記線状構造が豊富なスチレン系樹脂を粘着層に使用すると、粘着テープが優れた接着性能を有する。一方、分岐構造又は多分岐構造であり、かつ分子末端にスチレンブロックを配した樹脂は、擬似的架橋構造を形成しうることから、優れた凝集力を発揮するため、高い保持力を粘着層に付与することができる。このため、粘着剤樹脂として使用するスチレン系樹脂は、必要な特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
【0152】
上記スチレン系樹脂としては、該スチレン系樹脂の全質量に対して、下記一般式(3)で表される構造単位を、10質量%~80質量%の範囲で有することが好ましく、12質量%~60質量%の範囲で有することがより好ましく、15質量%~40質量%の範囲で有することが更に好ましく、17質量%~35質量%の範囲で有することが特に好ましい。これにより、優れた接着性と耐熱性とを発揮しうる。
【0153】
【0154】
本実施形態の粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂として、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計質量に対する、スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0質量%~80質量であることが好ましく、0質量%~77質量%であることがより好ましく、0質量%~75質量%であることが更に好ましく、0質量%~70質量%であることが特に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、優れた接着性能と熱耐久性とを両立した粘着テープを提供できる。
【0155】
上記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万~80万の範囲であることが好ましく、3万~50万の範囲であることがより好ましく、5万~30万の範囲であることが更に好ましい。前記重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した値である。スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記範囲内であると、加熱流動性又は溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程において良好な作業性を確保しつつ、熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができる点で好ましい。
【0156】
なお、上記GPCによるスチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC装置(SC-8020、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(THF(テトラヒドロフラン)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離剤:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-H(20) 2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0157】
本実施形態の粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりブロック共重合体を調製した後、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させることにより、目的物のスチレン系樹脂を製造できる。
また、前記スチレン系樹脂の好ましい一例であるスチレン-イソプレン共重合体の製造方法も特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法などが挙げられる。
【0158】
さらに、前記スチレン系樹脂の好ましい一例であるスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法、又はリビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
【0159】
上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、前記方法で製造したスチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体を公知の混合手段で混合する方法などが挙げられる。
【0160】
さらには、上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の別の製造方法は、1回の重合工程で同時に混合物として製造してもよい。
上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物のより具体的な製造方法は、アニオンリビング重合法を用いた以下の第一の工程~第四の工程を有することが一例として挙げられる。
第一の工程としては、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いてスチレン単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリスチレンブロックを形成する工程である。
第二の工程は、ポリスチレンブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合し、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を得る工程である。
そして、第三の工程は、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を形成する工程である。
第四の工程は、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の残部を、重合停止剤を用いて、そのリビング性の活性末端を失活させ、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を形成させる工程である。
【0161】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。これにより、優れた初期接着性と熱耐久性と両立した粘着テープを提供できる。
【0162】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂としては、常温(23℃)下で固体状の樹脂が好ましい。当該粘着付与樹脂の具体例としては、石油樹脂、重合ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン-フェノール樹脂、スチレン樹脂、クマロン-インデン樹脂、キシレン樹脂又はフェノール樹脂などが挙げられる。また、当該石油樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂は、C5系石油樹脂と重合ロジン系樹脂とを組み合わせて使用されることが、より一層優れた初期接着性と熱耐久性とを両立の観点で好ましい。
【0163】
上記石油樹脂は、スチレン系樹脂を構成する前記一般式(3)で表されるスチレン単量体単位と相溶しやすい。そのため、粘着テープの初期接着力と熱耐久性とをより一層向上させることができる。
【0164】
上記C5系石油樹脂は、例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツシリーズ(エスコレッツ1202、エスコレッツ1304又はエスコレッツ1401)、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー製のウイングタック95、日本ゼオン株式会社製のクイントンシリーズ(クイントンK100、クイントンR100又はクイントンF100)又は理化ハーキュレス株式会社製のピコタック95若しくはピコペール100などが挙げられる。
【0165】
上記C9系石油樹脂は、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の日石ネオポリマーシリーズ(日石ネオポリマーL-90、日石ネオポリマー120、日石ネオポリマー130、日石ネオポリマー140、日石ネオポリマー150、日石ネオポリマー170S、日石ネオポリマー160、日石ネオポリマーE-100、日石ネオポリマーE-130、日石ネオポリマー130S又は日石ネオポリマーS)、東ソー株式会社製のペトコール(登録商標)などが挙げられる。
【0166】
上記C5系/C9系石油樹脂は、C5系石油樹脂と、C9系石油樹脂との共重合体を使用することができる。C5系/C9系石油樹脂の具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツ2101、日本ゼオン株式会社製のクイントンG115又は理化ハーキュレス株式会社製のハーコタック1149等を使用することができる。
【0167】
上記脂環族系石油樹脂は、C9系石油樹脂に水素添加して得ることができる。例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツ5300、荒川化学工業株式会社製のアルコンP-100、理化ハーキュレス株式会社製のリガライトR101などが挙げられる。
【0168】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂の使用量は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。ゴム系粘着剤樹脂を構成する成分の全量(100質量%)に対して、粘着付与樹脂は、0質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましく、0質量%~70質量%の範囲で使用することがより好ましく、0質量%~50質量%の範囲で使用することが更に好ましく、0質量%~30質量%の範囲で使用することが特に好ましい。当該好ましい範囲内で粘着付与樹脂を使用すると、粘着層と基材層との界面における密着性が向上し、かつ粘着テープの優れた破断伸度又は熱耐久性とが両立し易くなる。
【0169】
80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン系樹脂の全量に対して、80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂を3質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%~80質量%の範囲で使用することがより好ましく、より一層優れた接着性と優れた熱耐久性とを両立した粘着テープを提供する観点を重視する場合、5質量%~80質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0170】
また、定温環境での貼付性又は初期接着性を得る目的から、80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂と、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂と組み合わせて使用してもよい。
当該-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹は、特に制限されることはなく、公知の粘着付与樹脂から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温(20℃~27℃)下で液状の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0171】
-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂の具体例としては、プロセスオイル、ポリエステル又はポリブテン等の液状ゴムなどが挙げられる。これら液状ゴムは、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。より一層優れた初期接着性を発揮させる観点から、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂として、ポリブテンを使用することが好ましい。
【0172】
-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂は、粘着付与樹脂の全量(100質量%)に対して、0質量%~40質量%の範囲占めることが好ましく、0質量%~30質量%の範囲占めることがより好ましい。
【0173】
また、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂は、粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂の全量(100質量%)に対して、0質量%~40質量%の範囲で使用することが好ましく、初期接着力を向上と良好な接着性とを有し、かつ、十分な熱耐久性を発揮する観点を重視する場合、0質量%~30質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0174】
80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂と-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂との質量比としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。[80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量/-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量]で表される、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂に対する80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量比が、5~50となる範囲で使用することが好ましく、優れた初期接着性と優れた保持力とを両立した粘着テープを得る観点を重視する場合、10~30となる範囲で使用することがより好ましい。
【0175】
スチレン系樹脂とゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、[スチレン系樹脂/ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂]で表される、粘着付与樹脂に対するスチレン系樹脂の質量比が、0.5~10.0となる範囲で使用することが好ましく、初期接着力を向上することができ、かつ、優れた熱耐久性を得る観点を重視する場合、0.6~9.0となる範囲で使用することが、より好ましい。また、質量比[スチレン系樹脂/ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂]は、1よりも大きいことが、例えば、被着体の曲面部等に貼付した際に粘着テープの反発力に起因した剥がれを防止(耐反発性)するうえで好ましい。
【0176】
-その他の成分-
本実施形態の粘着層中に含まれるその他の成分は、特に制限されることはなく、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えば、粘着剤樹脂以外のポリマー成分、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらその他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着層におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0177】
-他の粘着剤樹脂-
本実施形態において、粘着剤樹脂として、上記の粘着剤樹脂以外以下に説明する、アクリル系混合粘着剤、ゴム系混合粘着剤、ウレタン系混合粘着剤、粘着剤組成物、接着料又は接着剤樹脂などの混合粘着剤樹脂を用いてもよい。
(アクリル系混合粘着剤)
上記混合粘着剤は、粘着特性(例えばせん断接着力)又は分子設計、経時安定性等の観点から、アクリル系重合体をベース樹脂として含むアクリル系混合粘着剤であってもよい。なお、本明細書における「ベース樹脂」とは、混合粘着剤に含まれる樹脂成分の主成分(例えば、50質量%を超えて含まれる成分)をいう。
【0178】
(アクリル系重合体)
上記アクリル系重合体は、例えば、主成分の単量体としてアルキル(メタ)アクリレートをとして含み、かつ前記主成分の単量体と共重合性を有する副成分の単量体をさらに含み得る単量体原料の重合物が好ましい。ここで主成分の単量体とは、上記単量体原料における全単量体成分の50質量%超を占める成分をいう。
【0179】
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記一般式(4)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化10】
(上記式(4)中のR
13は水素原子又はメチル基を表す。また、R
14は炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)
粘着剤樹脂の貯蔵弾性率等の観点から、上記一般式(4)のR
14がC1-14(例えばC2-10、より好ましくは、C4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
13が水素原子でR
14がC4-8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。上記R
14がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。粘着特性や糊残り防止等の観点から、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
【0180】
全単量体成分中における主成分の単量体の配合比率は70質量%以上(例えば85質量%以上、より好ましくは90質量%以上)であることが好ましい。主成分の単量体の配合比率の上限は特に限定されることはないが、99.5質量%以下(例えば99質量%以下)とすることが好ましい。
【0181】
主成分の単量体であるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副成分の単量体は、アクリル系重合体に架橋点を導入したり、アクリル系重合体の凝集力を高めたりするために有用である。副成分の単量体として、例えば、カルボキシ基含有単量体、水酸基含有単量体、酸無水物基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、ケト基含有単量体、窒素原子含有環を有する単量体、アルコキシシリル基含有単量体、イミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体等の官能基含有単量体の1種又は2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副成分の単量体としてカルボキシ基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体が共重合されたアクリル系重合体が好ましい。上記カルボキシ基含有単量体の好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が例示される。上記水酸基含有単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
【0182】
上記副成分の単量体の量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副成分の単量体の量は、アクリル系重合体を形成する全単量体成分中の0.5質量%以上とすることが適当であり、好ましくは1質量%以上である。また、副成分の単量体の量は、全単量体成分中の30質量%以下が適当であり、好ましくは10質量%以下(例えば5質量%以下)である。アクリル系重合体に水酸基含有単量体が共重合されている場合、水酸基含有単量体の含有量は、アクリル系重合体の合成に使用する全単量体成分中、約0.001~10質量%(例えば0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%)の範囲であることが好ましい。これにより、接着力と凝集力とがより高レベルでバランスした粘着剤樹脂が実現され得る。
【0183】
本開示のアクリル系重合体には、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外の単量体(その他単量体)が共重合されていてもよい。前記その他の単量体は、例えば、アクリル系重合体のガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤樹脂の凝集力を向上させ得る単量体として、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。前記その他単量体は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、ビニルエステル類が好適例として挙げられる。前記ビニルエステル類は、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、酢酸ビニルが好ましい。前記その他単量体の含有量は、アクリル系重合体の合成に使用する全単量体成分中、約30質量%以下(例えば0.01~30質量%、より好ましくは0.1~10質量%)とすることが好ましい。
【0184】
上記アクリル系重合体の共重合組成は、該重合体のガラス転移温度(Tg)が-15℃以下(例えば、-70℃以上-15℃以下)となるように設計されていることが好ましく、より好ましくは-25℃以下(例えば-60℃以上-25℃以下)、さらに好ましくは-40℃以下(例えば-60℃以上-40℃以下)である。アクリル系重合体のTgを上述した上限値以下とすることは、粘着テープの耐衝撃性等の観点から好ましい。
【0185】
アクリル系重合体のTgは、単量体組成(すなわち、該重合体の合成に使用する単量体の種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系重合体のTgとは、該重合体を構成する各単量体の単独重合体のTg及び該単量体の質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいて以下に示すFoxの式から算出された値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成する単量体のそれぞれを単独重合した単独重合体のガラス転移温度Tgjとの関係式である。
1/Tg=Σ(Mj/Tgj)
(上記Foxの式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(K)を表し、Mjは前記共重合体における単量体jの質量分率(質量基準の共重合割合)を表し、Tgjは単量体jの単独重合体のガラス転移温度(K)を表す。)
単独重合体のTgは、従来公知の文献又は資料に記載の値を用いる。
【0186】
本実施形態において、上記単独重合体のTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2-エチルヘキシルアクリレート 203.15K
ブチルアクリレート 218.15K
酢酸ビニル 305.15K
アクリル酸 379.15K
メタクリル酸 501.15K
2-ヒドロキシエチルアクリレート 258.15K
上記で記載したTg以外の単独重合体のTgは、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いる。また、上記Polymer Handbookに使用する単独重合体のTgの値が記載されていない場合には、例えば、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0187】
アクリル系重合体を製造する方法は特に限定されることはない。当該製造方法としては、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法又は懸濁重合法等の、アクリル系重合体の重合手法として一般的に知られている方法を適宜採用することができる。例えば、アクリル系重合体は、溶液重合法により製造することが好ましい。溶液重合法を行う際の単量体供給方法は、全単量体原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式又は分割供給(滴下)方式等を適宜採用できる。さらに、重合温度は、使用する単量体及び溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、当該重合温度は、20℃~170℃(例えば40℃~140℃)程度とすることができる。また、UV等の光を照射して行う光重合(例えば、光重合開始剤の存在下で行われる。)又はβ線若しくはγ線等の活性エネルギー線を照射して行う活性エネルギー線照射重合を用いてもよい。
【0188】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(例えば芳香族炭化水素類)、酢酸エチル等の脂肪族又は脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
【0189】
重合に用いる重合開始剤は、重合方法の種類に応じて、公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤の1種又は2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤が挙げられる。上記重合開始剤は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全単量体成分100質量部に対して0.005~1質量部(例えば0.01~1質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0190】
本開示におけるベース樹脂(好適にはアクリル系重合体)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されることはないが、例えば10×104以上500×104以下の範囲であり得る。凝集力と接着力とを高レベルでバランスさせる観点から、ベース樹脂(好ましくはアクリル系重合体)のMwは、好ましくは10×104~150×104、より好ましくは20×104~110×104(例えば20×104~75×104)、さらに好ましくは35×104~90×104(例えば35×104~65×104)の範囲にある。ここでMwの測定値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。当該GPC装置としては、例えば、「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用できる。後述の実施例においても同様である。
【0191】
(ゴム系混合粘着剤)
本実施形態における粘着剤樹脂として、ゴム系混合粘着剤により構成してもよい。好ましい一態様に係るゴム系混合粘着剤は、ベース樹脂として、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。前記モノビニル置換芳香族化合物とは、芳香環に1つのビニル基を有する官能基が結合した化合物をいう。上記芳香環の例は、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン又はビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン又はイソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してベース樹脂に用いることができる。
【0192】
上記ブロック共重合体におけるXブロック(硬質セグメント又は硬質ブロックとも称する。)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。上記ブロック共重合体におけるYブロック(軟質セグメント又は軟質ブロックとも称する)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%である。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着テープが実現され得る。
【0193】
上記ブロック共重合体は、ジブロック重合体、トリブロック重合体、放射状(radial)体、これらの混合物、等であることが好ましい。トリブロック重合体及び放射状重合体においては、高分子鎖の末端にXブロック(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたXブロックは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤樹脂の凝集性が向上するためである。本開示のブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック重合体比率が好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、継続的に加わる応力に対する耐性の観点から、ジブロック重合体比率が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下のものを使用できる。例えば、ジブロック重合体比率が60~85質量%のブロック共重合体の使用が好ましい。
【0194】
(スチレン系ブロック共重合体)
本開示の粘着剤樹脂の好ましい一態様において、上記ベース樹脂がスチレン系ブロック共重合体である混合粘着剤が好ましい。スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、上記ベース樹脂がスチレンイソプレンブロック共重合体及びスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。粘着剤樹脂に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上占める形態、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上占める形態、又はスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上を占める形態が好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体のほぼ全体(例えば95~100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体であることが好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体のほぼ全体(例えば95~100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体であることが好ましい。この組成により、耐反撥性に優れ、かつ他の粘着特性とのバランスの良い粘着テープが好適に実現され得る。
【0195】
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック重合体、トリブロック重合体、放射状(radial)重合体、これらの混合物、等の形態が好ましい。トリブロック重合体及び放射状重合体においては、高分子鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。高分子鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤樹脂の凝集性が向上するためである。スチレン系ブロック共重合体において、ジブロック重合体比率の上限値及び下限値は上記のブロック共重合体の値を援用できる。
【0196】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、当該スチレン系ブロック共重合体の全体に対して5~40質量%であることが好ましい。耐反撥性や保持力の観点から、スチレン系ブロック共重合体において当該スチレン含有量が好ましくは10質量%以上、より好ましくは10質量%超、さらに好ましくは12質量%以上である。また、被着体に対する粘着力の観点から、スチレン含有量が35質量%以下(例えば30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、例えば20質量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。例えば、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体が特に好ましい。
【0197】
(ウレタン系混合粘着剤)
粘着剤樹脂はウレタン系混合粘着剤により構成することができる。ここでウレタン系混合粘着剤とは、ウレタン系重合体をベース樹脂として含む粘着剤のことをいう。上記ウレタン系混合粘着剤は、例えば、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系重合体をベース樹脂として含むウレタン系樹脂からなるものである。ウレタン系重合体としては、特に限定されることはないが、粘着剤樹脂として機能し得る各種ウレタン系重合体(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)のなかから適切なものを採用し得る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0198】
(粘着剤組成物)
本実施形態における粘着剤樹脂は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤でありうる。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、例えば、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称される組成物が含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。本開示は、せん断接着力等の粘着特性を好適に実現することを重視する観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤を備える態様で好ましく実施される。
【0199】
(アクリル系オリゴマー)
本開示の粘着剤組成物は、アクリル系オリゴマーを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを使用することによって、耐衝撃性と耐反撥性とをバランスよく改善することができる。また、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる場合には、アクリル系オリゴマーは、例えばロジン系樹脂やテルペン系樹脂等の粘着付与樹脂に比べて硬化阻害(例えば、未反応単量体の重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成単量体成分としてアクリル系単量体を含む重合体であり、上記アクリル系重合体よりもMwの小さい重合体として定義される。
【0200】
アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分に占めるアクリル系単量体の割合は、例えば50質量%超であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。好ましい一態様において、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系単量体のみからなる単量体組成を有する。
【0201】
アクリル系オリゴマーの構成単量体成分としては、上記アクリル系重合体に利用され得る単量体として例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、官能基含有単量体、その他単量体を使用できる。また、上記構成単量体は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分としては、上記で例示した各種単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0202】
上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(II)においてR3が炭素原子数1~12(例えば、より好ましくはC1-8)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。なかでもメチルメタクリレートがより好ましい。
【0203】
上記官能基含有単量体の好適例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(例えば窒素原子含有複素環)を有する単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;アクリル酸、メチルメタクリレート等のカルボキシ基含有単量体;エチルヘキシルアクリレート等の水酸基含有単量体;が挙げられる。
【0204】
上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートは、例えば、炭素原子数が4~20の範囲内にある脂環式炭化水素基を含有する、(メタ)アクリレートを1種又は2種以上使用してもよい。上記脂環式炭化水素基を構成する炭素原子数は、好ましくは5以上(例えば6以上、より好ましくは8以上)であり、また好ましくは16以下(例えば12以下、より好ましくは10以下)である。上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートは、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジシクロペンタニルメタクリレートがより好ましい。
【0205】
上記アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分中に占める上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合(すなわち共重合割合)は、粘着性又は凝集性の観点から、約30~90質量%(例えば50~80質量%、より好ましくは55~70質量%)とすることが好ましい。
【0206】
アクリル系オリゴマーの好ましい形態は、当該アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレート及び/又は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分に占める上記鎖状アルキル基含有及び脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、約80質量%以上(例えば90~100質量%、より好ましくは95~100質量%)とすることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレート及び/又は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
【0207】
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの組成比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成単量体成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの質量割合(MCh)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの質量割合(MAli)との質量比率(MCh:MAli)は、1:9~9:1であり、好ましくは2:8~7:3(例えば3:7~6:4、より好ましくは3:7~5:5)である。
【0208】
アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分の組成(すなわち重合組成)は、特に限定されることはなく、当該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分の組成に基づいて、前記単量体組成に基づくTgと同様にして算出される値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期の接着性の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤樹脂の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、より好ましくは120℃以上)であることが好ましい。
【0209】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されることはないが、例えば0.1×104~3×104程度である。粘着特性(例えば粘着力又は耐反撥性)を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×104以下が好ましく、1×104以下がより好ましく、0.8×104以下(例えば0.6×104以下)がさらに好ましい。また粘着剤樹脂の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×104以上(例えば0.3×104以上)が好ましい。アクリル系オリゴマーの分子量は、重合に際して必要に応じて連鎖移動剤を用いて調節できる。
【0210】
アクリル系オリゴマーは、その構成単量体成分を重合することにより形成され得る。アクリル系オリゴマーの重合方法又は重合態様は特に限定されることはなく、公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合又は放射線重合等)を採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類又はその使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは省略する。
【0211】
本開示の粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、例えば0.5質量部以上とすることが好ましい。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1質量部以上(例えば1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性又はアクリル系重合体との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50質量部未満(例えば10質量部未満)とすることが好ましく、8質量部未満(例えば7質量部未満、より好ましくは5質量部以下)とすることがさらに好ましい。このような少量の添加であっても、アクリル系オリゴマーを使用することによる耐衝撃性及び耐反撥性の改善は実現され得る。
【0212】
(粘着付与剤)
本開示の粘着剤樹脂又は粘着剤組成物は、粘着付与剤を含む組成であってもよい。前記粘着付与剤としては、特に制限されることはない。前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂又はケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。上記粘着付与樹脂は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0213】
ロジン系粘着付与樹脂の具体例は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン等の未変性ロジン(生ロジン(樹脂酸と呼ばれる炭素原子数20の三環式ジテルペノイド異性体を主成分));これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同様。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の具体例は、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化した化合物(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化した化合物(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベース樹脂としてアクリル系重合体を採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種又は3種以上を併用することがより好ましい。
【0214】
テルペン系粘着付与樹脂の具体例は、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の具体例は、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベース樹脂としてアクリル系重合体を使用する場合、テルペン系粘着付与樹脂、例えばテルペン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。特に、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる1種又は2種以上を併用することがより好ましい。
【0215】
炭化水素系粘着付与樹脂の具体例は、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂又はクマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0216】
本開示において、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が約70℃以上(好ましくは約100℃以上、より好ましくは約110℃以上)であることが好ましい。先述した種々の軟化点を有する粘着付与樹脂を含む粘着剤樹脂又は粘着剤組成物を使用すると、より接着力に優れた粘着テープが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、上記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば約200℃以下(例えば約180℃以下)とすることができる。
【0217】
本実施形態において、粘着付与剤の使用量は特に制限されることはなく、所望の粘着性能(接着力等)に応じて適宜調整することができる。当該粘着付与剤の使用量は、例えば、固形分基準で、アクリル系重合体100質量部に対して、粘着付与剤を好ましくは約10~100質量部、より好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~60質量部の割合で使用してもよい。
【0218】
粘着剤樹脂をゴム系混合粘着剤で構成する場合には、上記ゴム系混合粘着剤は、粘着付与樹脂として、120℃以上の軟化点を有する高軟化点樹脂を含有することが好ましい。当該高軟化点樹脂を含有する粘着テープは、耐反撥性又は保持力等の観点から好ましい。好ましい一態様において、上記高軟化点樹脂は、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、特に好ましくは140℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂を含んでもよい。また、被着体に対する粘着力等の観点から、上記高軟化点樹脂の軟化点は、通常、200℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以下、さら好ましくは170℃以下、特に好ましく160℃以下である。
【0219】
上記高軟化点樹脂の具体例としては、テルペンフェノール樹脂、重合ロジン又は重合ロジンのエステル化物等が挙げられる。これらの高軟化点樹脂は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記高軟化点樹脂が1種又は2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が好ましい。例えば、120℃以上200℃以下(例えば120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を高軟化点樹脂として使用することができる。
【0220】
上記テルペンフェノール樹脂は、軟化点が120℃以上であって、水酸基価(OH価)が40mgKOH/g以上(例えば40~200mgKOH/g、より好ましくは40~160mgKOH/g)であることが好ましい。テルペンフェノール樹脂の水酸基価が上記範囲であると、より高性能な粘着テープが実現され得る。本明細書における水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される。より具体的な測定方法は、特開2014-55235号公報に記載される方法を使用することができる。
【0221】
本開示において、例えば、上記ゴム系混合粘着剤が、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の高軟化点樹脂(h1)と、水酸基価80mgKOH/g以上(例えば80~160mgKOH/g、例えば80~140mgKOH/g)の高軟化点樹脂(h2)とを混合した混合粘着剤が好ましい。この場合において、上記高軟化点樹脂(h1)と高軟化点樹脂(h2)との使用量は、例えば、質量比(h1:h2)が1:5~5:1の範囲となることが好ましく、1:3~3:1(例えば1:2~2:1)の範囲となることがより好ましい。高軟化点樹脂(h1)及び高軟化点樹脂(h2)がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が好ましい。
【0222】
本実施形態において、耐反撥性や保持力等の観点から高軟化点樹脂の含有量の下限は、ベース樹脂100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上(例えば35質量部以上)とすることが好ましい。また、高軟化点樹脂の含有量の上限は、粘着力又は低温特性等の観点から、ベース樹脂100質量部に対する高軟化点樹脂の含有量は、100質量部以下、80質量部以下、70質量部以下60質量部以下、50質量部以下)であることが好ましい。
【0223】
本開示において、上記ゴム系混合粘着剤が、上記高軟化点樹脂に代えて、あるいは上記高軟化点樹脂に加えて、120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂を含有してもよい。上記ゴム系混合粘着剤が、120℃以上の軟化点を有する高軟化点樹脂と、120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂とを含んでもよい。
【0224】
上記低軟化点樹脂としては、例えば40℃以上(例えば60℃以上)の軟化点を有する樹脂が好ましい。耐反撥性又は保持力等の観点を重視する場合、80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂が好ましい。また、110℃以上120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂を用いてもよい。
【0225】
本実施形態において、上記ゴム系混合粘着剤が、石油樹脂及びテルペン樹脂(例えば未変性テルペン樹脂)の少なくとも一方を上記低軟化点樹脂として含むことが好ましい。例えば、低軟化点樹脂の主成分(すなわち、低軟化点樹脂のうちの50質量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との混合物である組成等が好ましい。粘着力及び相溶性を重視する場合、低軟化点樹脂の主成分は、テルペン樹脂(例えば、β-ピネン重合体)であることが好ましい。低軟化点樹脂の実質的に全量(例えば95質量%以上)がテルペン樹脂から構成されてもよい。
【0226】
上記低軟化点樹脂は、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂であることが好ましい。当該水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂は、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で使用しても、あるいは2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。低軟化点樹脂は、例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β-ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、当該重合ロジンのエステル化物)等であることが好ましい。
【0227】
被着体に対する粘着力を重視する場合、低軟化点樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。また、耐反撥性を重視する場合、低軟化点樹脂の含有量は、120質量部以下であることが好ましく、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、よりさらに好ましくは60質量部以下、さらにより好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。
【0228】
上記粘着付与樹脂が低軟化点樹脂と高軟化点樹脂とを含む混合物である場合、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:5~3:1であることが好ましく、より好ましくは1:5~2:1である。本開示において、上記ゴム系混合粘着剤が、粘着付与樹脂として低軟化点樹脂よりも高軟化点樹脂を多く含むことが好ましく、例えば、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:1.2~1:5であることが好ましい。これにより、より高性能な粘着テープが実現され得る。
【0229】
本開示において、ベース樹脂(例えばゴム系重合体)100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、20質量部以上であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。また、低温特性(例えば、低温条件下における粘着力や耐衝撃性)等を重視する場合、ベース樹脂100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部である。
【0230】
(その他の添加成分)
本開示において、粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の種類は特に制限されることはなく、公知の架橋剤から適宜選択することができる。当該架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、凝集力向上の観点から、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤であることが好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されることはなく、例えば、ベース樹脂(例えばアクリル系重合体)100質量部に対して約10質量部以下(例えば約0.005~10質量部、好ましくは約0.01~5質量部)の範囲から選択することができる。
【0231】
上記粘着剤組成物は、粘着剤又は粘着剤樹脂に含まれ得る公知の種々の充填剤を含有してもよい。当該充填剤としては、各種の粒子状物質又は繊維状物質を使用してもよい。当該粒子状物質を構成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等の重合体;等が挙げられる。また、粒子状物質は、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。さらに、上記粘着剤組成物は、上記充填剤として中空構造の粒子状物質、すなわち上記マイクロバルーン(例えば、無機材料又は有機材料からなる中空粒子)を含んでもよい。上記粘着剤組成物に使用するマイクロバルーンの例として、ガラス製のバルーン(例えば中空ガラスバルーン)、金属酸化物製の中空バルーン(例えば中空アルミナバルーン)、磁器製の中空バルーン等(例えば中空セラミックバルーン)が挙げられる。繊維状物質としては、各種合成繊維材料又は天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記充填剤の添加量は特に限定されることはなく、その添加目的・用途又は技術常識に基づき、適宜選択できる。
【0232】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤又は光安定剤等の、一般的な各種の添加剤を含有してもよい。また、例えば粘着剤組成物(例えばアクリル系粘着剤組成物)に対してシリコーン系オリゴマー等の粘着力調整剤を添加してもよい。このような各種添加剤については、公知のものを常法により使用することができる。
【0233】
-接着料-
本実施形態において、粘着剤樹脂として、ビニル芳香族ブロック共重合体及び接着性樹脂をベースとして構成される接着料を使用してもよい。
当該接着料は、主に、ビニル芳香族(Xブロック)、好ましくはスチレンから形成されたポリスチレンブロック、主に、例えば、イソプレン又はブタジエンのような1,3-ジエン化合物(Yブロック)の重合化によって形成されたジエン系重合体ブロック、並びに、イソプレン及びブタジエンの両方を重合化した共重合体ブロックからなる群から選択される少なくとも2種のブロックから形成されるブロック共重合体であることが好ましい。また前記ブロック共重合体は、部分的に又は完全に、ジエン系ブロック中で水素化されてもよい。同様に、ビニル芳香族及びイソブチレンのブロック共重合体も接着料に利用できる。
好ましい接着料は、ブロック共重合体であり、かつポリスチレンエンドブロックを有する。
【0234】
Xブロック及びYブロックから得られるブロック共重合体は、それぞれのブロックと同一又は異なるYブロックを含んでもよい。ブロック共重合体は、線状のX-Y-X構造を有することができる。また、ラジアル型のブロック共重合体並びに星型及び線状のマルチブロック共重合体も本実施形態に使用できる。また、X-Y-ブロック共重合体を接着料に使用してもよい。これら共重合体はいずれも、単独で使用しても、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0235】
上記ポリスチレンブロックに代えて、別の芳香族含有の単独重合体及び共重合体(好ましくは、C8~C12の芳香族化合物から重合された共重合体)をベースとするポリマーブロック(例えば、75℃超のガラス転移温度を有する芳香族化合物を重合してなるポリマーブロック)もまたXブロックとして利用でき、例えば、α-メチルスチレンを重合してなる芳香族ブロックである。さらには、同じか又は異なるA-ブロックを同様に含有することもできる。
【0236】
本実施形態において、Xブロックは、“硬質ブロック”とも称する。Yブロックは、“軟質ブロック””とも称する。これは、ガラス転移温度に対応した重合体ブロックの選択を反映している(Xブロックは少なくとも25℃、特に、少なくとも50℃であり、Yブロックは、最高で25℃、特に、最高で-25℃)。
【0237】
本実施形態において、ブロック共重合体は、10質量%~35質量%、好ましくは20質量%~32質量%のポリビニル芳香族部分を有する。
さらに好ましくは、ビニル芳香族ブロック共重合体、特に、スチレンブロック共重合体の含有割合の下限は、接着料の総量(100質量%)に対して、合計で、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも30質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%である。
ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が低すぎると、接着料の凝集力が比較的小さくなるという結果になる。
【0238】
ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の含有割合の上限は、接着料の総量(100質量%)に対して、合計で80質量%以下、好ましくは65質量%以下、特に好ましくは最大60質量%以下である。
ビニル芳香族ブロック共重合体の含有割合が高すぎると、接着料がほとんど粘着性でないという結果になる。
【0239】
互いのガラス転移温度が大きく異なる軟質ブロック及び硬質ブロックを有するブロック共重合体は、一般に室温でドメイン構造を形成する。これによって、接着料の物理的架橋による凝集力をもたらす傾向を示す。また、スチレンブロック及びジエン/ブチレン/イソブチレン/エチレン/プロピレンブロックの改質されていないブロック共重合体は、概ね85℃まで又は最高100℃までしかせん断安定性を維持できなく、この温度範囲において、組成に依存して硬質ブロックの軟化が始まる。
【0240】
接着料は、選択されたスチレンブロック共重合体をベースとしてもよい。ポリマー混合物の感圧接着力は、混和性の接着性樹脂のエラストマー相の添加によって達成されうる。接着料に添加可能な混合成分としては、老化防止剤、加工助剤、着色料、光学的光沢剤、安定剤、エンドブロック強化樹脂並びに場合によっては、好ましくはエラストマーの性質を有するような別のポリマーなどを利用することができる。
それらの混合成分の種類及び量は、必要に応じて選択できる。
【0241】
所望の凝集性に高める観点から、接着料は、少なくとも一つのビニル芳香族ブロック共重合体の他に、少なくとも一つの接着性樹脂を有してもよい。当該接着性樹脂は、ブロック共重合体のエラストマーブロックと適合性を有することが好ましく、
特に好ましくは、接着性樹脂全体に対して、少なくとも75質量%までが炭化水素樹脂か又はテルペン樹脂、あるいはそれらの混合物である。
【0242】
接着料の接着性付与剤としては、非極性の炭化水素樹脂が挙げられる。そして当該非極性の炭化水素樹脂は、例えば、ジシクロペンタジエンの水素化された又は水素化されていない重合物、C5-、C5/C9-又はC9-単量体ストリームをベースとする水素化されていない、部分的に、選択的に又は完全に水素化された炭化水素樹脂、α-ピネン及び/又はβ-ピネン及び/又はδ-リモネンをベースとするポリテルペン樹脂を使用することが好ましい。上述の接着性樹脂は、単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。その場合、室温において固形樹脂としても液状樹脂としても使用できる。水素化又は水素化されていないロジン系樹脂は、樹脂の全量に基づいて25%の最大割合まで接着料中で利用されるため、その接着料は過度に極性にはならない。
【0243】
さらなる添加剤として、一般的に以下の成分(a)~(h)を使用してもよい。
成分(a):例えば、軟化油のような可塑化剤、又は、低分子量ポリブテンのような低分子量の液状ポリマー
成分(b):例えば、立体障害フェノールのような一次酸化防止剤
成分(c):例えば、亜リン酸塩又はチオエーテルのような二次酸化防止剤
成分(d):例えば、C-ラジカル捕捉剤のようなプロセス安定剤
成分(e):例えば、UV-吸収材又は立体障害アミンのような光保護剤
成分(f):プロセス助剤
成分(g):エンドブロック強化樹脂、
成分(h):場合によっては別の、エラストマーの性質を備えた重合体、適切に利用可能なエラストマー、とりわけ、純粋な炭化水素をベースとするような、例えば、天然又は合成のポリイソプレン又はポリブタジエンといった不飽和ポリジエン、実質的に化学的飽和したエラストマー(例えば、飽和エチレン-プロピレン共重合体、α-オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム)、並びに、化学的に官能化させた炭化水素(例えば、ハロゲン化アクリレート含有のアリルポリオレフィン又はビニルエーテル含有ポリオレフィン)。
上記接着料は、必要により着色料又は顔料を用いて着色してもよく、当該接着料の色は、白色、黒色又は有彩色でありうる。
【0244】
本実施形態において、粘着剤樹脂として、少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体をベースとするエラストマー(i)、及び少なくとも一種の粘着樹脂を含む粘着樹脂(ii)、並びに任意に添加される軟化樹脂(iii)、及び任意に添加される他の添加剤(iv)を含む接着剤樹脂、を用いてもよい。
【0245】
上記エラストマー(i)は、少なくとも90質量%までが、ポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体、特にポリビニル芳香族類-ポリブタジエン-ブロック共重合体からなることが好ましい。そして、ポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体中におけるポリビニル芳香族類の割合は、12~35質量%、好ましくは20質量%~32質量%である。そして接着剤樹脂の総量(100質量%)に対するエラストマー(i)の配合割合は、40~55質量%であることが好ましく、より好ましくは45~55質量%である。
また、粘着樹脂(ii)は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上までが、ポリジエンブロックと本質的に相溶性でありかつポリビニル芳香族ブロックと本質的に不相溶性である炭化水素樹脂からなることが好ましい。そして接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して粘着樹脂(ii)の配合割合は、少なくとも40質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
さらに、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して軟化樹脂(iii)は、0質量%~最大5質量%である。
また、接着剤樹脂は、マイクロバルーン(例えば、上述したマイクロバルーン)を含有することができる。マイクロバルーンを含有する場合には、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対してマイクロバルーンの割合は、少なくとも0.5質量%であることが好ましく、0.5~2.5質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは1.0~2.0質量%である。
さらに、接着剤樹脂を粘着層に用いた場合には、粘着層の厚さは、20~75μmとすることが好ましく、より好ましくは25~65μmである。
本実施形態における接着剤樹脂は、エラストマー(i)(例えば、少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体及び少なくとも一種の粘着樹脂(ii)をベースとして構成されている感圧接着剤を含む。
【0246】
上記エラストマー(i)は、X-Y、X-Y-X、(X-Y)n、(X-Y)nZ又は(X-Y-X)nZの構成を持つブロック共重合体の形の少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体であることが好ましい。
なお、X-Y、X-Y-X、(X-Y)n、(X-Y)nZ又は(X-Y-X)nZにおいて、Xは、互いに独立して、少なくとも一種のビニル芳香族類の重合によって形成された重合体ブロックを表し、Yは、互いに独立して、炭素原子数4~18の共役ジエンの重合によって形成された重合体ブロック、又はポリジエンブロックにおいてこのような重合体の部分水素化誘導体を表し、Zは、カップリング試薬又は重合開始剤の残部を表し、nは2以上の整数を表す。
【0247】
接着剤樹脂は合成ゴムから構成されることが好ましく、そして当該接着剤樹脂を構成する全ての合成ゴムは、上述のような構成を持つブロック共重合体であることが特に好ましい。そのため、接着剤樹脂は、上述のような構成を持つ異なるブロック共重合体の混合物を含んでもよい。
【0248】
換言すると、上記ブロック共重合体(ビニル芳香族ブロック共重合体)は、一以上のゴム様ブロックY(軟質ブロックとも称する。)及び一以上のガラス様ブロックX(硬質ブロックとも称する。)を含む。特に好ましくは、接着剤樹脂を構成する少なくとも一種の合成ゴムは、X-Y、X-Y-X、(X-Y)2Z、(X-Y)3Z又は(X-Y)4Zの構成を持つブロック共重合体であり、これら式中のX、Y及びZは上述の意味が適用される。接着剤樹脂の特に好ましい形態は、当該接着剤樹脂を構成する全ての合成ゴムが、X-Y、X-Y-X、(X-Y)2Z、(X-Y)3Z又は(X-Y)4Zの構成を持つブロック共重合体である。なおX、Y及びZについては上述の意味が適用される。特に、接着剤樹脂の合成ゴムは、X-Y、X-Y-X、(X-Y)2Z、(X-Y)3Z又は(X-Y)4Zの構成を持つブロック共重合体の混合物であることが好ましく、より好ましくは、ジブロック共重合体(上記一般式(V)を除く。)X-Y、及び/又はトリブロック共重合体(上記一般式(I)を除く。)X-Y-Z又は(X-Y)2Xを少なくとも含む。
【0249】
更に、ジブロック及びトリブロック共重合体(上記一般式(I)及び(V)を除く。)、及び(X-Y)n-又は(X-Y)nZブロック共重合体(nは3以上である)からなる混合物が有利である。
【0250】
更に、ジブロック共重合体(上記一般式(V)を除く。)及び放射状マルチブロック共重合体(X-Y)n又は(X-Y)nZ(nは3以上である)からなる混合物が有利である。
【0251】
本実施形態の接着剤樹脂としては、好ましくは、主としてビニル芳香族類、好ましくはスチレンから形成された重合体ブロックX(Xブロック)、及び主として1,3-ジエン、例えばブタジエン及びイソプレン、又はこれらの両者の共重合体、特にブタジエンの重合によって形成された重合体ブロックY(Yブロック)を含むブロック共重合体をベースとする感圧接着剤が使用される。この際、これらの製品は、ジエンブロックにおいて部分的に水素化されていてもよい。部分的に水素化された誘導体に関して、中でも、存在するかもしれないビニル基、すなわち側鎖に不飽和状態で存在する繰り返し単位、例えば1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンが水素化された状態で存在するブロック共重合体が特に適している。
好ましくは、接着剤樹脂のブロック共重合体はポリスチレン末端ブロックを有する。
【0252】
Xブロック及びYブロックから生じるブロック共重合体は、同じ又は異なるYブロックを含んでもよい。該ブロック共重合体は線状X-Y-X構造を有することができる。また同様に、放射状形態のブロック共重合体、並びに星型及び線状マルチブロック共重合体も使用し得る。他の成分としては、X-Y-Zの二元ブロック共重合体が存在することができる。上記のポリマーの全てを、単独で又は互いの混合物として利用することができる。
【0253】
上記の好ましいポリスチレンブロックの代わりに、ビニル芳香族類としては、75℃超のガラス転移温度を有する他の芳香族類含有単独及び共重合体(好ましくはC8~C12芳香族類)をベースとする重合体ブロック、例えばα-メチルスチレン含有芳香族類ブロックも利用することができる。更に、同一の又は異なるXブロックも含まれていてよい。
【0254】
Xブロックの構成のためのビニル芳香族類は、スチレン、α-メチルスチレン及び/又は他のスチレン誘導体を含むことが好ましい。そのため、前記Xブロックは、ホモポリマー又は共重合体として存在しうる。特に好ましいXブロックはポリスチレンである。
【0255】
軟質ブロックYの構成のための単量体としての好ましい共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、エチルブタジエン、フェニルブタジエン、ピペリレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、エチルヘキサジエン、及びジメチルブタジエン並びにこれらの単量体の任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。軟質ブロックYも単独重合体又は共重合体として存在し得る。
【0256】
軟質ブロックYに使用される単量体としての共役ジエンは、ブタジエン及びイソプレンから選択されることが特に好ましい。例えば、軟質ブロックYは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はこれら両者のポリマーの部分水素化誘導体、例えば特にポリブチレンブタジエン;又はブタジエン及びイソプレンからなる混合物でできたポリマーである。非常に特に好ましくは、ブロックBはポリブタジエンである。
【0257】
「硬質ブロックX」及び「軟質ブロックY」において、これらのガラス転移温度(硬質ブロックXのガラス転移温度は25℃以上、より好ましくは50℃である。一方、軟質ブロックYのガラス転移温度は好ましくは25℃以下、より好ましくは-25℃以下である。)に応じたブロックの選択を反映している。
【0258】
本実施形態において、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合の下限値は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対し、合計で少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%である。
ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が少ないほど、接着剤樹脂の凝集力が比較的小さくなることから、剥離の時に避けやすくなるという結果となる。加えて、エラストマー相のガラス転移温度が上昇して、耐衝撃性が低下する。加えて、脱着の際に残渣が接着基材上に残るリスクも高くなる。
【0259】
一方、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合の上限値は、接着剤樹脂の総量に対し、合計で最大55質量%であることが好ましい。他方、ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が大きいほど、感圧接着剤がもはや十分に感圧接着性でなくなるという結果となる。
【0260】
本実施形態において、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、合計で少なくとも40質量%以上、より好ましくは45~55質量%である。
【0261】
接着剤樹脂は、少なくとも一種のビニル芳香族ブロック共重合体の他に、接着性を所望のレベルに高めるために、少なくとも一種の粘着樹脂(ii)を含んでもよい。当該粘着樹脂(ii)は、ブロック共重合体のエラストマーブロックと相溶性を有することが好ましい。
【0262】
「粘着樹脂」とは、当業者の一般的な理解と一致し、粘着剤樹脂は含まないものの他は同じ接着剤と比べた場合に接着剤の接着性(タック、固有粘着性)を高めるオリゴマー性又はポリマー性樹脂のことと解される。
【0263】
本実施形態において、粘着樹脂としては、例えば、+5℃超、好ましくは+10℃超でかつ+65℃未満(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在する場合)、好ましくは+50℃未満(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在しない場合)のDACP(ジアセトンアルコール曇点)を有する樹脂が、(全樹脂割合を基準にして)90質量%以上、好ましくは95質量%以上の割合で選択される。加えて、少なくとも一種の樹脂は、特に、少なくとも+50℃、好ましくは少なくとも+60℃で、かつ最大で+100℃(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在する場合)、好ましくは最大で+90℃(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマー分に存在しない場合)のMMAP(混合メチルシクロヘキサンアニリン点)を有する。少なくとも一種の粘着樹脂は、70℃以上、好ましくは100℃以上で最大150℃までの軟化点(環球式)を有する。
【0264】
上記接着剤樹脂と併せて使用する粘着性付与剤は、特に非極性炭化水素樹脂、例えばジシクロペンタジエンの水素化及び非水素化ポリマー、C5-、C5/C9-もしくはC9-単量体ストリームをベースとする水素化されていない又は部分的、選択的若しくは完全に水素化された炭化水素樹脂、α-ピネン及び/又はβ-ピネン及び/又はδ-リモネンをベースとするポリテルペン樹脂を使用することが好ましい。前述の粘着樹脂は、単独で又は混合物としても使用し得る。場合により、酸素も含む水素化又は非水素化粘着樹脂を、接着剤樹脂中の樹脂の総量を基準にして好ましくは最大10%の割合までで使用できる。
【0265】
本実施形態の粘着樹脂は、(総樹脂割合を基準にして)少なくとも75質量%までが炭化水素樹脂又はテルペン樹脂又はこれらの混合物であることが特に好ましい。 接着剤樹脂は、接着剤樹脂の総量(100質量)に対して好ましくは40~60質量%の少なくとも一種の粘着樹脂を含む。
【0266】
本実施形態において、室温で(粘)液性の軟化樹脂(iii)の配合割合は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して最大5質量%までである。しかし、室温中、(粘)液性の軟質樹脂(iii)を配合しなくてもよい。例えば鉱油、植物油などの低粘性軟化剤の使用を有意に忌避することができる。軟化樹脂(iii)を使用する場合、25℃及び1Hzで少なくとも25Pa*s、特に少なくとも50Pa*sの溶融粘度及び<25℃の軟化温度を有する粘液性軟化樹脂が好ましい。溶融粘度は試験VIに従い決定される。
【0267】
上記接着剤樹脂は、他の添加剤(iv)を必要により含有してもよい。例えば、当該他の添加剤(iv)としては、例えば、上記成分(b)~成分(h)を使用してもよい。
上記成分(b)は、接着剤樹脂の総量100質量%に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(c)としては、二次酸化防止剤、例えばホスファイト、チオエステル又はチオエーテルが挙げられ、当該成分(c)は、接着剤樹脂の総量100質量%に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
上記成分(d)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。)、
上記成分(e)は、接着剤樹脂の総量(100質量)に対して、0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(f)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(g)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~10質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(h):場合によっては、接着剤樹脂の総量(100質量%)を基準にして好ましくは0.2~10質量%の割合の、好ましくはエラストマー性質の更なるポリマー;これに対応して利用可能なエラストマーに含まれるのは、中でも純粋な炭化水素をベースとするエラストマー、例えば天然のもしくは合成されたポリイソプレンもしくはポリブタジエンのような不飽和ポリジエン、化学的に実質的に飽和状態のエラストマー、例えば飽和エチレン-プロピレン-共重合体、α-オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、並びに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有の、アリル含有の、もしくはビニルエーテル含有のポリオレフィン。
【0268】
上記他の添加剤の混合成分の種類及び量は必要に応じて選択することができる。添加剤(iv)が使用され、かつこれらが移行性である場合には、(iv)と同種類の添加剤を同様に使用できる。
接着剤樹脂が上記他の添加剤の一部、好ましくは全てをそれぞれ含まなくてもよい。
【0269】
本実施形態において、接着剤樹脂は、上述した他の添加剤とは別の添加剤を更に含んでもよい。当該別の添加剤としては、特に限定はされることはなく例えば、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタン、スズ、亜鉛、鉄又はアルカリ(土類)金属の結晶性もしくは非晶質の酸化物、水酸化物、炭酸塩、窒化物、ハロゲン化物、炭化物又は混合酸化物-/水酸化物-/ハロゲン化物化合物などが挙げられる。そして、当該別の添加剤は、礬土、例えば酸化アルミニウム類、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア及び類似物であってもよい。中でも特に好ましい例は、層状シリケート、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、カオリナイト、ベーマイト、マイカ、バーミキュライト又はこれらの混合物である。またさらに、カーボンブラック又は炭素の他の変態、例えばカーボンナノチューブも添加剤として使用できる。また、 接着剤樹脂は、必要により染料又は顔料を用いて着色してもよい。そして接着剤樹脂の色は、例えば、白色、黒色又は有彩色でありうる。
【0270】
接着剤樹脂の熱せん断強度を調整する観点を重視する場合、シリカ、より好ましくはジメチルジクロロシランにより表面変性された沈降シリカを添加してもよい。
粘着層のための接着剤樹脂は、発泡可能であっても、又は発泡された状態で存在してもよい。また、発泡目的のために、発泡剤を製造過程又は粘着層などに添加してもよい。当該発泡剤としては、膨張した又は膨張可能なマイクロバルーン(例えば、上述した有機材料又は無機材料のマイクロバルーン)を使用してもよい。また、化学的発泡剤を、単独あるいは他の発泡剤との組み合わせで使用してもよい。接着剤樹脂は、物理的に発泡されてもよく、例えば、ガス状又は超臨界液状の物質又は物質混合物の配合によって接着剤樹脂などを発泡してよい。
【0271】
<その他の層>
本実施形態の粘着テープは、基材層及び粘着層を有する構成である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜その他の層を設けることもできる。当該その他の層としては、例えば、プライマー層、帯電防止層、不燃層、加飾層、導電層、熱伝導層、離型層などが挙げられる。
【0272】
<粘着テープの形状、特性等>
本実施形態の粘着テープは、基材層と、当該基材層の両面に粘着層とを備えるものであれば、その形状・寸法は特に限定されず、例えば、所定の被着体へ貼り付けるために適した形状・寸法を有する粘着テープ(例えば打ち抜き加工された後の状態の粘着テープ)や、シート状の長尺の粘着テープ(例えば特定の形状に加工される前の粘着テープ)も含まれる。
また、本実施形態の粘着テープは、例えば被着体への貼付けや被着体からの剥離のために、非接着性の把持領域を任意に設けることができる。
【0273】
粘着テープの厚さとしては、特に制限はなく、粘着層及び基材層の厚さなどに応じて適宜選択することができるが、15μm~1000μmであることが好ましく、30μm~540μmであることがより好ましく、60μm~320μmであることが更に好ましく、70μm~250μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「粘着テープの厚さ」とは、粘着テープを、長さ方向に100mm間隔で5箇所、幅方向に切断し、各切断面において幅方向に100mm間隔で5点の粘着層の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した、合計25点の厚さの平均値を指す。
【0274】
粘着テープの硬度(タイプA硬度(ショアA硬度))は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10~90が好ましく、20~85がより好ましく、64~85が更に好ましい。粘着テープのショアA硬度が前記好ましい範囲内であると、粘着テープの引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、ショアA硬度が、10未満であると、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に該粘着テープが千切れてしまうことがあり、90を超えると、粘着テープを引き伸ばして再剥離しようとした場合に、引き伸ばすための応力が高くなりすぎることで再剥離することができないことがある。
粘着テープのゴム硬度は、ショアA硬度であり、デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)(型式:GS-719G、株式会社テクロック製)を用い、JIS K 6253に準拠して測定した値を指す。
【0275】
粘着テープの25%伸長時応力は、0.15MPa~82MPaであることが好ましく、0.15MPa~10MPaがより好ましく、0.15MPa~5MPaがさらに好ましく、0.15MPa~2MPaが最も好ましい。粘着テープの25%伸長時応力が0.15MPa~82MPaであると、粘着テープとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、粘着テープの25%伸長時応力が、0.15MPa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら粘着テープのせん断方向への荷重が生じた場合に粘着テープが剥がれる虞がある。また、粘着テープの25%伸長時応力が、82MPaを超えると、粘着テープを引き剥がす際、該粘着テープを伸長させるために必要な力が過大となってしまう傾向がある。
粘着テープの25%伸長時応力は、粘着テープを、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0276】
粘着テープの破断強度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10MPa~100.0MPaが好ましく、15MPa~90.0MPaがより好ましく、30MPa~90.0MPaが更に好ましく、40MPa~90.0MPaが特に好ましい。粘着テープの破断強度が、前記好ましい範囲内であると、粘着テープを早く引き伸ばして剥がす際にも該粘着テープが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着テープを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、粘着テープの破断強度が、10MPa未満であると、粘着テープを早く引き伸ばして剥がす際に該粘着テープが千切れてしまうことがあり、100.0MPaを超えると、粘着テープを引き伸ばして再剥離しようとした場合に、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。なお、粘着テープを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着テープの厚さにも依存することになり、例えば、粘着テープの厚さが厚く破断強度が高い粘着テープを引き伸ばして再剥離しようとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず再剥離することができないことがある。
粘着テープの破断強度は、粘着テープを、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0277】
粘着テープの破断伸度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、400%~2000%が好ましく、500%~1800%がより好ましく、600%~1200%が更に好ましい。粘着テープの破断伸度が400%以上であると、粘着テープが強固に被着体に接着している場合でも、該粘着テープを再剥離する際に、被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばすための応力が大きくなり過ぎず、引き剥がす際においても該粘着テープが過剰に伸びすぎることなく容易に引き剥がすことができる。また、破断伸度が2000%以下であると、粘着テープを再剥離する際に、被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎず小スペースでの作業が可能となる。一方、破断伸度が、500%未満であると、粘着テープを再剥離する際に、被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばして剥がす際に破断を伴って剥がせないことがあり、1300%を超えると、粘着テープを再剥離する際に、被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向への引き伸ばし距離が長くなりすぎるため作業性が悪くなることがある。
粘着テープの破断伸度は、粘着テープを、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0278】
本実施形態の粘着テープは、所定の条件で、被着体の貼付面に対して垂直方向(90°方向)に引っ張って剥離させることができるものである。具体的には、本実施形態の粘着テープは、後述する実施例の欄に記載の「90°伸張剥離(高速)の評価」にしたがって行った評価結果が、「粘着テープの切れの発生が、3回中、0回である」か、又は「粘着テープの切れの発生が、3回中、1回であった、及び/又は、被着体に残留した粘着剤組成物の面積が初期貼付面積に対して1/5以下未満である」。粘着テープがこのような物性を有することで、被着体からさらに簡易に且つさらに速やかに除去可能である。
また、本実施形態の粘着テープは、23℃、50RH%条件下で、被着面(アクリル板)に対して垂直方向(90°方向)に1000mm/分の速度で引き伸ばしたときの引き抜き強度が25N/10mm以下が好ましく、中でも20N/10mm以下が更に好ましく、15N/10mm以下がより好ましい。引き抜き強度が上記の範囲内にあることで、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に、過度な力を必要とせずに容易に引き伸ばすことが可能となるからである。
粘着テープの引き抜き強度は、後述する実施例の欄に記載の「(5)90°伸長剥離(高速)の評価」に記載の評価方法により測定した値である。
【0279】
粘着テープは、耐衝撃性も優れるものである。耐衝撃性は、例えば、後述する実施例の欄における「耐衝撃性の評価」に記載の方法で確認することができる。耐衝撃性の評価において、粘着テープの剥がれ又は破壊が生じる撃芯の高さとしては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、30cm以上であることが好ましく、40cm以上であることがより好ましく、50cm以上であることが更に好ましく、60cm以上であることが特に好ましい。前記高さが30cm未満であると、十分な耐衝撃性を得ることができない傾向がある。
【0280】
粘着テープの180°ピール接着力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3N/20mm~50N/20mmが好ましく、10N/20mm~50N/20mmがより好ましく、12N/20mm~45N/20mmが更に好ましい。180°ピール接着力が、前記好ましい範囲内であると、被着体からの剥がれやズレを引き起こさず適度な接着力を有しながら、該粘着テープを被着体の貼付面に対して水平方向~垂直方向へ引き伸ばして再剥離する際に、容易に引き剥がすことができる。
粘着テープの180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定して測定した値を指す。
【0281】
<粘着テープの製造方法>
本実施形態において、粘着テープの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。本実施形態の粘着テープの製造方法では、粘着層形成工程と、基材層形成工程と、積層工程とを含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の層形成工程を含む。また、粘着層形成工程と、基材層形成工程とを同時に行う多層同時形成工程により製造することもできる。
【0282】
粘着層形成工程は、粘着層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剥離シートの表面に、ヒートプレス法、押し出し成型によるキャスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などの方法により粘着層を形成する方法などが挙げられる。これらの中でも、押し出し成型によるキャスト法、溶液法が好ましい。
剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0283】
基材層形成工程は、基材層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートプレス法、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、押し出し成型によるキヤスト法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法が、基材層に好適な柔軟性や伸張性を付与する上で好ましい。
なお、基材層は、粘着層との密着性をより一層向上させることを目的として、表面処理が施されたものであってもよい。
表面処理法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、表面研磨・摩擦法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線照射処理法、酸化処理法などが挙げられる。
【0284】
積層工程は、基材層と、粘着層とを積層する工程である。基材層と粘着層とを積層する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、粘着層形成工程で形成した剥離シートに付着した状態の粘着層と基材層とを加圧してラミネートする方法などが挙げられる。
【0285】
<粘着テープの用途>
粘着テープは、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器を構成する板金同士の固定や外装部品と筐体との固定、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器への外装部品や電池等の剛体部品の固定などのような各産業分野での部品固定や該部品の仮固定、並びに製品情報を表示するラベルなどの用途に好適に使用できる。
【0286】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の粘着テープは、上記の例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0287】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
各実施例及び比較例で得られた粘着テープの測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0288】
(1)基材層の破断強度、破断伸度の測定
各基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張ることで、基材層の破断強度、及び破断伸度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0289】
(2)ゴム硬度の測定
デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)(型式:GS-719G、株式会社テクロック製)を用い、JIS K 6253に準拠して各粘着テープのタイプA硬度(ショアA)を測定した。
【0290】
(3)基材層及び粘着層の厚さの測定
基材層及び粘着層を、長さ方向に100mm間隔で5箇所、幅方向に切断し、各切断面において幅方向に100mm間お隔で5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した。当該合計25点の厚さを平均して得られた値を基材層及び粘着層の厚さとした。
【0291】
(4)平均粒径及び数平均1次粒子径の測定
(平均粒径の測定)
レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより、粘着剤組成物に使用する添加粒子単体の平均粒径を測定した。
(数平均1次粒子径の測定)
液体窒素下で冷却させた粘着テ-プをミクロト-ムにより無作為に3箇所切断し、3個の断片をサンプルとした。そして、それぞれのサンプルに対して走査型電子顕微鏡を用いて倍率400倍の写真を撮影した後、撮影された3枚の写真から、中空体の粒子をマイクロバルーンとし、中実体の粒子をシリコーン複合フィラーと選別した。その後、画像解析ソフトを用いて二値化処理(例えば大津の二値化処理)により算出した中空体の断面積を円の面積とみなし、中空体の円相当径を測定した。そして、3枚の写真内の中空体の合計個数とそれぞれに対応する円相当径とを算出して、以下の式(a)からマイクロバルーンの数平均1次平均粒子径を算出した。
【数2】
(上記数式(a)中、mは中空体であるマイクロバルーンの合計数を表し、ΣD
pは撮影した写真中の中空体の外径に囲まれた領域の面積から算出した円相当径の総和を表す。)また、マイクロバルーンの数平均1次平均粒子径の測定には、シリコーン複合フィラーと同様の日立卓上顕微鏡MiniscopeTM3030Plusを使用した。
【0292】
(5)90°伸張剥離(高速)の評価
各粘着テープを、長さ70mm、幅10mmに切断した。このうち、長さ50mm、幅10mmを掴み手部としてはみ出させた状態で、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記粘着テープの一方の面に清潔で表面が平滑なアルミ板(長さ150mm、幅70mm、厚さ2mm、合金番号A1050)に貼付した。次に、前記粘着テープにおける前記アルミ板を貼付した面とは反対側の面に、清潔で表面平滑なアクリル板(長さ150mm、幅70mm、厚さ2mm、アクリライトL、色調:無色、三菱レイヨン株式会社製)を貼付し、前記アルミ板と、前記粘着テープと、前記アクリル板との積層構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で24時間静置したものを試験片とした。
雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記試験片における前記粘着テープの掴み手部分を該粘着テープの貼付面に対してアクリル板側であって90°方向(垂直方向)にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて荷重リミッター50Nに設定し、引張速度1000mm/分間の速度で引き伸ばした。この際、テンシロン引張試験機で測定した応力(引き抜き強度 N/20mm)を記録した。そして、引き抜き強度が25N/10mm以下を良好とした。
また、外観評価としての粘着テープの切れの発生について、粘着テープ剥離後の被着体(前記アルミ板及び前記アクリル板の少なくともいずれか)への粘着剤組成物の残留の程度を目視にて確認した。
上記方法による試験を3回行い、下記評価基準に基づき再剥離性(垂直方向伸張剥離)を評価した。結果を下記表1~3に示す。
[外観評価基準]
◎:粘着テープの切れの発生が、3回中、0回であり、被着体に残留した粘着剤組成物がなかった。
○:粘着テープの切れの発生が、3回中、1回であった、及び/又は、被着体に残留した粘着剤組成物の面積が初期貼付面積に対して1/5未満であった。
△:粘着テープの切れの発生が、3回中、1回であり、かつ、粘着テープが伸長せず、被着体に残留した粘着テープの面積が初期貼付面積に対して1/5以上であった。
×:粘着テープの切れの発生が、3回中、2回以上であった、及び/又は、粘着テープが伸長せず、再剥離できなかった。
なお、◎及び○が、使用上問題がないものである。
【0293】
(6)90°伸張剥離(中速)の評価
上記「垂直方向伸張剥離(高速)の評価」における、前記粘着テープの引張速度1000mm/分間を、引張速度500mm/分間に変更して、同様に試験して評価した。
【0294】
(7)90°伸張剥離(低速)の評価
上記「垂直方向伸張剥離(高速)の評価」における、前記粘着テープの引張速度1000mm/分間を、引張速度50mm/分間に変更して、同様に試験して評価した。
【0295】
(8)180°ピール接着力の評価
180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定した。具体的には、各粘着テープを、長さ150mm、幅20mmに切断し、該粘着テープの一方の面に、厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちした。次に、前記粘着テープの他方の面を、雰囲気23℃、50%RHの条件下でステンレス板(長さ100mm、幅30mm、厚さ3mm)に貼付し、前記粘着テープと、前記ステンレス板との積層構造物に対して2kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で1時間静置したものを試験片とした。
前記試験片における粘着テープを、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、180°方向(水平方向)にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度300mm/分間の速度で引き伸ばし、前記粘着テープの180°ピール接着力を測定した。
【0296】
(9)摩擦力の測定
粘着テープの粘着層の摩擦力(23℃、50%RH)は、JIS K7125に定義される測定装置に準拠して測定をした。滑り片としては、片側にフェルトを備えたステンレス製プレート(40cm2、200g荷重)と綿帆布#9とが、両面テープ(DIC製#8800CH)を介して前記フェルト面及び前記綿帆布#9が向かいあって貼り合わされたものを準備した。なお、ここでいう綿帆布#9とは、9号綿帆布[(旧JIS L3102を準用)原糸撚り(経糸10/2、緯糸10/3)、密度(経糸44~48本/inch、緯糸33~37本/inch)、重さ510g/m2)]をいう。続いて、評価に使用する粘着テープを幅100mm×長さ200mmのサイズにカットし、粘着テープの測定対象の粘着層表面が上向きになる様に平滑で水平な試験テーブルに固定した。滑り片が粘着テープの測定対象の粘着層表面の上を滑るときの応力値を測定する。なお、本測定方法によって得られる応力値は、粘着層表面に対する摩擦力が高いことから静摩擦力が連続的に測定された状態となる。このため、応力値と滑り片の移動距離のグラフを作成し、比較的応力値が安定している移動距離範囲から移動距離50mm分の応力値を抽出し、抽出した応力値のピーク値の算術平均を摩擦力とした。
【0297】
続いて、実施例、比較例で用いた各材料等は下記のとおりである。
<基材用材料>
・基材用材料(1)(SIS)
前記基材用材料(1)としては、スチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物(以下、「SIS」と称することがある)を用いた。当該混合物は、下記一般式(1)で表されるスチレン由来の構造単位25重量%であり、前記樹脂組成物(1)の全量に対するスチレン-イソプレン共重合体の割合が17重量%のものを使用した。
【化11】
【0298】
・基材用材料(2)(ポリウレタン)
基材用材料(2)としては、エステル系ポリウレタン化合物(モビロンフィルムMF200T、日清紡テキスタイル株式会社製)を使用した。
・基材用材料(3)(SEEPS)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3,000mL、開始剤として濃度10.5質量%のsec-ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)9.2mLを仕込み、60℃に昇温した後、スチレンを100mL加えて60分間重合した。
その後、同温度で、イソプレン270mL及びブタジエン350mLを加え、その後90分間反応させた。続いて、同温度でスチレン100mLを添加して60分間重合させた後、メタノール0.52mLで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を29.3g添加し、水素圧力2MPa、150℃で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより基材用材料(3)を得た。
得られた基材用材料(3)は、スチレン含有量が30質量%、重量平均分子量が98000、分子量分布が1.03、水素添加率が98%であった。
【0299】
<粘着剤組成物>
本実施例及び比較例における粘着剤組成物は、以下の添加粒子及び粘着剤樹脂を含有する。
<添加粒子>
・アクリル変性シリコーン(1)
アクリル変性シリコーン(1)としては、シャリーヌR-770(日信化学工業(株)製商品名;平均粒径350μm)を使用した。
・アクリル変性シリコーン(2)
アクリル変性シリコーン(2)としては、シャリーヌR-773(信越化学工業(株)製商品名;平均粒径30μm)を使用した。
・シリコーン(3)
シリコーン(3)としては、X-52-1621(信越化学工業(株)製商品名;平均粒径5μm)を使用した。
・シリコーン(4)
アクリル変性シリコーン(4)としては、KMP-402(信越化学工業(株)製商品名;平均粒径30μm)を使用した。
・水酸化アルミニウム
水酸化アルミニウムとしては、BW153(日本軽金属(株)製商品名;平均粒径18μm)を使用した。
・マイクロバルーン
マイクロバルーンとしては、低沸点炭化水素を内包し、シェルがポリアクリロニトリルであり、かつ当該シェルをタルク被覆した中空体(製品名:MFL-81GTA 平均粒径:20μm、真比重0.23g/cm3)を使用した。
【0300】
<粘着剤樹脂>
・粘着剤樹脂(1)の調製方法
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート75.94重量部、2-エチルヘキシルアクリレート5重量部、シクロヘキシルアクリレート15重量部、アクリル酸4重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06重量部、及び酢酸エチル200重量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら65℃まで昇温させて混合物(1a)を得た。次に、前記混合物(1a)に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビスイソブチロニトリル溶液4重量部(固形分2.5重量%)を添加し、攪拌下、65℃で10時間ホールドして混合物(1b)を得た。次に、前記混合物(1b)を酢酸エチル98重量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量160万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(1)溶液を得た。次に、前記アクリル共重合体溶液(1)の固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(D-125、荒川化学工業株式会社)5重量部と石油系粘着付与樹脂(FTR(登録商標)6125、三井化学株式会社製)15重量部使用とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31重量%の粘着剤樹脂(1)を含有する粘着剤樹脂溶液(以下、単に粘着剤樹脂溶液と称する。)(1)を得た。
【0301】
・粘着剤樹脂(2)の調製方法
粘着剤樹脂として、スチレン系トリブロック共重合体(ゼオン社製クインタック3270、スチレン量24%、SIジブロック量67%)100質量部に対して、ロジン系粘着付与樹脂(スーパーエステルA-100、荒川化学株式会社、軟化点100℃)50質量部をトルエンで希釈しながら混合攪拌することで固形分35質量%の粘着剤樹脂溶液(2)を得た。
【0302】
・粘着剤樹脂(3)(MAM)の調製方法
アルゴンで内部を置換した内容積1000mlのフラスコ内に、乾燥トルエン500mlと、重合開始剤としてのビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウム・テトラヒドロフラナート錯体〔(C5Me5)2SmMe(THF)〕0.75gの乾燥トルエン溶液80mlを加えて混合溶液を調製した。当該混合溶液に対して、0℃でメタクリル酸メチル(MMA)を12.0ml加え、0℃で30分間攪拌した。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングした(サンプル1)。上記のMMAの重合後、重合反応系を-78℃まで冷却し、アクリル酸n-ブチル(nBA)88.0mlを第2番目の単量体として加え、-78℃で3時間攪拌を行った。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングした(サンプル2)。上記のnBAの重合後、この重合系にMMA12.0mlを第3番目の単量体として-78℃で添加して溶液を攪拌した。溶液が均一になった後、0℃に昇温して、さらに1時間攪拌した。得られた反応混合液に、メタノールを50ml加えて室温で2時間反応させることによって重合を停止した。この重合停止後の反応溶液を大量のヘキサン中に注ぎ、析出した白色沈殿物を得た。そして、白色沈殿物の一部をサンプリングした(サンプル3)。
【0303】
上記サンプル1~3中の各重合体について、NMR測定、DSC測定、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)測定を行った。そして、当該測定結果に基づいて、数平均分子量(Mn)、PMMA/PnBA(ポリメタクリル酸メチルブロック/ポリアクリル酸n-ブチルブロック)比等を求めたところ、上記の白色沈殿物はポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロック-ポリアクリル酸n-ブチル(PnBA)ブロック-ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロックのトリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA)であることが確認された。また、トリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA、以下、トリブロック共重合体(1)と称する。)のPMMAブロック部のシンジオタクチシティーは71%であり、同ブロック部のガラス転移温度は113.7℃であり、PnBAブロック部のガラス転移温度は-46.8℃であり、共重合体全体のMnは95936であり、共重合体全体のMw/Mn(分子量分布)は1.09であり、各重合体ブロックの割合はPMMA(11重量%)-PnBA(78重量%)-PMMA(11重量%)であることが確認された。
上記で得られた白色沈殿物を酢酸エチルで希釈することによって固形分45質量%の粘着剤樹脂溶液(3)を得た。
【0304】
以下、本実施例及び比較例において使用した粘着剤組成物の調製方法を説明する。
<粘着剤組成物の調製方法>
・粘着剤組成物(1)の調製方法
上記粘着剤樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して3質量部になるよう、当該粘着剤樹脂溶液(1)にアクリル変性シリコーン(1)を加え均一になる様に攪拌した。次に、前記粘着剤樹脂溶液(1)100重量部に対し、架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7重量%、不揮発分40重量%)1.3重量部を添加し、均一になるよう攪拌混合しながら酢酸エチルを加えることで固形分31.1重量%の粘着剤組成物(1)の溶液を得た。
【0305】
・粘着剤組成物(2)の調製方法
上記粘着剤樹脂溶液(2)の固形分100質量部に対して、アクリル変性シリコーン(1)を3質量部と、トルエンとを添加し均一になるよう攪拌混合することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(2)の溶液を得た。
【0306】
・粘着剤組成物(3)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の代わりにアクリル変性シリコーン(2)を用いた以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(3)の溶液を得た。
【0307】
・粘着剤組成物(4)の調製方法
上記粘着剤樹脂溶液(3)の固形分100質量部に対して、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(タマノル803L、荒川化学工業株式会社)を36質量部と、アクリル変性シリコーン(1)を3質量部と、酢酸エチルを添加し均一になるよう攪拌混合することによって固形分45質量%の粘着剤組成物(4)の溶液を得た。
【0308】
・粘着剤組成物(5)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)を加えなかった以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(5)の溶液を得た。
【0309】
・粘着剤組成物(6)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の添加量を粘着剤樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して35質量部とした以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(6)の溶液を得た。
【0310】
・粘着剤組成物(7)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の代わりにシリコーン粒子(3)を用いた以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(7)の溶液を得た。
【0311】
・粘着剤組成物(8)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の代わりにシリコーン粒子(4)を用いた以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(8)の溶液を得た。
【0312】
・粘着剤組成物(9)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の代わりに水酸化アルミニウム粒子を用いた以外は、上記粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(9)の溶液を得た。
【0313】
・粘着剤組成物(10)の調製方法
アクリル変性シリコーン(1)の添加量を、上記粘着剤組成物(1)の固形分100質量部に対して0.01質量部とした以外は、粘着剤組成物(1)の調製方法と同様の方法で固形分31.1質量%の粘着剤組成物(10)の溶液を得た。
【0314】
・粘着剤組成物(11)の調製方法
上記粘着剤樹脂溶液(3)の固形分100質量部に対してテルペンフェノール系粘着付与樹脂(タマノル803L、荒川化学工業株式会社)を36質量部加えた後、前記マイクロバルーン17.5質量部と、アクリル変性シリコーン(1)3質量部と、酢酸エチルを加え均一になるように攪拌して固形分が45%である粘着剤組成物(11)の溶液を得た。
【0315】
「粘着テープの製造」
〔実施例1〕
上記基材用材料(1)が固形分40質量%となる様にトルエンを用いて希釈した塗布液(1)を調製した。そして、アプリケーターにより乾燥後の厚みが200μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に前記塗布液(1)を塗布し、65℃にて15分間乾燥させることによって基材層を作製した。次に、粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが100μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。次に、前記基材層の両面における濡れ張力が52mN/mとなるようコロナ処理した後、前記粘着層を両面に貼り合わせ、前記基材層と前記粘着層との積層体に対して0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、実施例1の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0316】
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法により、上記基材用材料(2)を用いて基材層を準備した。次に、粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが100μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着層を作製した。次に、前記基材層の両面における濡れ張力が52mN/mとなるようコロナ処理した後、前記粘着層を両面に貼り合わせ、前記基材層と前記粘着層との積層体に対して0.2MPaで加圧してラミネートすることによって、実施例2の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0317】
〔実施例3〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例3の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0318】
〔実施例4〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例4の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0319】
〔実施例5〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0320】
〔実施例6〕
基材用材料(1)の代わりに基材用材料(3)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で実施例6の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
〔実施例7〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(11)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例7の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。また、得られた粘着テープから上記記載の数平均1次粒子径の測定方法により、粘着テープ中に存在するマイクロバルーンの数平均1次粒子径を測定した。その結果、マイクロバルーンの数平均1次粒子径は、28μmであった。
【0321】
〔実施例8〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(6)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例8の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0322】
〔比較例1〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0323】
〔比較例2〕
基材用材料(1)の代わりに基材用材料(2)を基材として用いた以外は、比較例1と同様の方法で比較例2の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0324】
〔比較例3〕
基材用材料(1)が固形分40質量%となる様にトルエンを用いて希釈した塗布液(1)を調製した後、アプリケーターにより乾燥後の厚みが200μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に前記塗布液(1)を塗布し、65℃にて15分間乾燥させ、5枚貼り合わせることによって厚みが1000μmの基材層を作製した以外は、実施例1と同様の方法で比較例3の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0325】
〔比較例4〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(7)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例4の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0326】
〔比較例5〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(8)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例5の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0327】
〔比較例6〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(9)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例6の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0328】
〔比較例7〕
粘着剤組成物(1)の代わりに粘着剤組成物(10)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例7の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0329】
〔比較例8〕
基材用材料(1)の代わりに基材用材料(4)を基材として用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例8の粘着テープを製造した。得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。
【0330】
【0331】