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特開2022-94735粘着テープ、接合体、および接合体の解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094735
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】粘着テープ、接合体、および接合体の解体方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220620BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20220620BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220620BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220620BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J7/29
C09J201/00
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207794
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK04C
4F100AK12B
4F100AK25A
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK28B
4F100AK41E
4F100AK52A
4F100AK52D
4F100AK52E
4F100AL01B
4F100AL09B
4F100AT00B
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05A
4F100CB05D
4F100CB05E
4F100DE00A
4F100DE00D
4F100DJ01C
4F100GB32
4F100GB41
4F100JK02B
4F100JK02C
4F100JK05C
4F100JK08B
4F100JL13A
4F100JL13D
4F100JL13E
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CB04
4J004CC03
4J004CD08
4J004CE01
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040BA202
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF032
4J040DF061
4J040DM001
4J040DM002
4J040DN032
4J040EF282
4J040EK032
4J040JB09
4J040KA03
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、剥離作業の容易化と、厚さ方向への耐剥がれ性とを両立した粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層及び発泡体層、第3粘着層を順に備え、前記第1基材層は、破断強度が1.0~100.0MPa、破断伸度が400~1500%であり、前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体の引張強度が3.0~15.0MPaである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1粘着層、第1基材層、発泡体層及び第3粘着層を順に備え、
前記第1基材層は、破断強度が1.0~100.0MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体の引張強度が3.0~15.0MPaである、粘着テープ。
【請求項2】
前記第1基材層と前記発泡体層との間に第2粘着層を備える、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記第1基材層に隣り合う前記第1粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、
前記フィラー粒子を含有する前記粘着層中の前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記第1基材層に隣り合う前記第2粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、
前記フィラー粒子を含有する前記粘着層中の前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部である、請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記第2粘着層と前記発泡体層との間に第4粘着層を備える、請求項1~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記第2粘着層と前記第4粘着層との間に第2基材層を備える、請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の粘着テープと、当該粘着テープの前記第1粘着層の表面上に接着する第1被着体と、当該粘着テープの前記第3粘着層の表面上に接着する第2被着体とを備える接合体。
【請求項8】
請求項7に記載の接合体の解体方法であって、
前記粘着テープのうち少なくとも前記第1基材層を伸長させて、前記第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える、接合体の解体方法。
【請求項9】
請求項6に記載の粘着テープと、当該粘着テープの前記第1粘着層の表面上に接着する第1被着体と、当該粘着テープの前記第3粘着層の表面上に接着する第2被着体とを備える接合体。
【請求項10】
請求項9に記載の接合体の解体方法であって、
前記粘着テープのうち前記第2基材層を前記第2被着体の表面上に残しながら、当該粘着テープのうち少なくとも前記第1基材層を伸長させて、前記第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える、接合体の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、接合体、および接合体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、且つ、接着信頼性が高いので、接合手段として、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野で、部品固定用途や、部品の仮固定用途、製品情報を表示するラベル用途等に広範に使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-89726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境保護の観点から、これら家電や自動車等の各種の産業分野において、使用済み製品又は製造過程に発生した欠陥品のリサイクル、リユースの要請が高まっている。各種製品をリサイクル、リユースする際には、当該製品を解体し、製品中の各部品を取り外すこととなるが、各部品を取り外すときには、部品の固定やラベルに使用されている粘着テープを剥離する作業が必要となる。しかし、近年、粘着テープが製品中の各所に設けられ、各部品(被着体)間を貼り合わせる粘着テープの剥離作業が煩雑となっており、作業コストの低減が要望されている。
また、粘着テープは、剥離作業の容易化とともに、テープの厚さ方向への耐剥がれ性も求められている。具体的には、粘着テープが貼り合わせる製品中の各部品(例えば、筐体と、筐体に固定する部品など)の貼付け面は、部品の僅かな歪みなどの影響により、貼付け面の範囲内で大小の隙間が生じることがある。そして、粘着テープにはそのような隙間があっても、また、部品の歪みや隙間の大きさに変動があったとしても、粘着テープ自体の弾性等で各部品に接着し続けることが求められている(テープ厚さ方向への耐剥がれ性)。
【0005】
そこで、本開示は、上記の課題に鑑みてなされた発明であり、剥離作業の容易化と、厚さ方向への耐剥がれ性とを両立した粘着テープ、粘着テープの剥離作業が容易化され、且つ、被着体間の接着を十分維持可能な接合体、および、当該接合体を容易に解体するための接合体の解体方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示は、第1粘着層、第1基材層、発泡体層及び第3粘着層を順に備え、
前記第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、破断伸度が400~1500%であり、
前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体の引張強度が3.0~15.0MPaである、粘着テープである。
[2]本実施形態において、前記第1基材層と前記発泡体層との間に第2粘着層を備えることが好ましい。
[3]本実施形態において、前記第1基材層に隣り合う前記第1粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、
前記フィラー粒子を含有する前記粘着層中の前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部であることが好ましい。
[4]本実施形態において、前記第1基材層に隣り合う前記第2粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成され、
前記フィラー粒子を含有する前記粘着層中の前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部であることが好ましい。
[5]本実施形態において、前記第2粘着層と前記発泡体層との間に第4粘着層を備えることが好ましい。
[6]本実施形態において、前記第2粘着層と前記第4粘着層との間に第2基材層を備えることが好ましい。
[7]本実施形態は、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着テープと、当該粘着テープの前記第1粘着層の表面上に接着する第1被着体と、当該粘着テープの前記第3粘着層の表面上に接着する第2被着体とを備える接合体である。
[8]本実施形態は、上記[7]に記載の接合体の解体方法であって、
前記粘着テープのうち少なくとも前記第1基材層を伸長させて、前記第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える、接合体の解体方法である。
[9]本実施形態は、上記[6]に記載の粘着テープと、当該粘着テープの前記第1粘着層の表面上に接着する第1被着体と、当該粘着テープの前記第3粘着層の表面上に接着する第2被着体とを備える接合体である。
[10]本実施形態は、上記[9]に記載の接合体の解体方法であって、
前記粘着テープのうち前記第2基材層を前記第2被着体の表面上に残しながら、当該粘着テープのうち少なくとも前記第1基材層を伸長させて、前記第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える、接合体の解体方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、剥離作業の容易化と、厚さ方向への耐剥がれ性とを両立した粘着テープ、当該粘着テープの剥離作業が容易化され、且つ、被着体間の接着を十分維持可能な接合体、および、当該接合体を容易に解体するための接合体の解体方法、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0009】
〔粘着テープ〕
本実施形態の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、発泡体層及び第3粘着層を順に備え、前記第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、前記第1基材層の破断伸度が400~1500%であり、かつ前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体の引張強度が3.~15.0MPaである。また、本実施形態の粘着テープは、前記第1基材層と前記発泡体層との間に第2粘着層を備えることが好ましい。さらに、本実施形態の粘着テープは、前記第2粘着層と前記発泡体層との間に第4粘着層を備えることが好ましい。そして、本実施形態の粘着テープは、前記第2粘着層と前記第4粘着層との間に第2基材層を備えることがより好ましい。
本実施形態の粘着テープによれば、剥離作業の容易化と、厚さ方向への耐剥がれ性とを両立することができる。具体的には、本実施形態に係る粘着テープにおいて、第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、第1基材層の破断伸度が400~1500%であることにより、リワーク、リサイクルする対象の製品中の部品等の間から粘着テープを剥がす際(以下、粘着テープが接着する対象を第1被着体、第2被着体とも称す)、第1基材層が十分に伸長し、第1基材層が千切れることなく、第1基材層を、少なくとも第1粘着層(好ましくは第1粘着層及び任意構成要素である第2粘着層)とともに第1被着体および第2被着体の間から剥がし取る(抜き取る)ことができる。それにより、第1被着体および第2被着体を容易に分離・解体することができ、粘着テープの剥離作業を容易化することができる。また、発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、発泡体の引張強度が3.0~15.0MPaであることにより、粘着テープに適切な弾性が付与され、部品(被着体)の僅かな歪みなどがあっても、各部品(第1被着体、第2被着体)を接着し続けることができる(テープ厚さ方向への耐剥がれ性を有する)。
以下、本実施形態の粘着テープの、第1実施態様、第2実施態様、第3実施態様及び第4実施態様について説明する。
【0010】
《第1実施態様の粘着テープ》
本実施形態に係る第1実施態様の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、発泡体層及び第3粘着層を順に備え、前記第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、前記第1基材層の破断伸度が400~1500%であり、前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体の引張強度が3.0~15.0MPaである。
【0011】
<第1基材層>
第1実施態様において、粘着テープは、当該粘着テープの一方側の粘着面を形成する第1粘着層と、他方側の粘着面を形成する第3粘着層との間に、第1基材層を備える。当該第1基材層は、破断強度が1.0~100.0MPa、破断伸度が400~1500%である。
【0012】
第1実施態様において、第1基材層は、上記の特性を備えれば特に制限はなく、粘着テープに使用し得る公知の材料の中から適宜選択することができ、以下の第1基材用材料を含むことが好ましく、必要に応じて、更にその他の成分を含んでいてもよい。
第1基材層は、単層構造であってもよく、2層、3層、又はそれ以上の複層構造であってもよい。
【0013】
第1実施態様において、第1基材層は、破断強度が1.0~100.0MPaであり、好ましくは5~95MPaであり、より好ましくは15~92MPaであり、更に好ましくは25.0~90.0MPaである。破断強度が1.0MPa以上であることにより、粘着テープを剥がし第1被着体および第2被着体を分離・解体する際において、第1基材層を引っ張っても十分に伸長し、少なくとも第1基材層を千切れることなく第1被着体および第2被着体の間から剥がす(抜き取る)ことができる。それにより、第1被着体および第2被着体を容易に分離・解体することができる。また、破断強度が100.0MPa以下であることにより、作業者が、粘着テープを引っ張る際の応力が大きくなりすぎるのを避けることができる。
第1基材層の破断強度は、第1基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
また、当該破断強度は、適宜材料を選択するとともに、第1基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0014】
第1実施態様において、第1基材層は、破断伸度が400~1500%であり、好ましくは400~1400%であり、より好ましくは500~1300%であり、更に好ましくは600~1200%である。破断伸度(破断伸長度とも称する。)が400%以上であることにより、粘着テープが強固に被着体に接着している場合でも、該粘着テープを剥がす際の応力が大きくなり過ぎない。また、破断伸度が1500%以下であることにより、粘着テープを剥がす際に、引き伸ばし距離が長くなりすぎず小スペースでの作業が可能となる。
第1基材層の破断伸度は、第1基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
また、当該破断伸度は、適宜材料を選択するとともに、第1基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0015】
第1実施態様において、第1基材層は、100%モジュラスが1~5MPaであることが好ましく、より好ましくは1~4.5MPaであり、さらに好ましくは1~4MPaである。100%モジュラスが1MPa以上であることにより、粘着テープや被着体に負荷がかかった際にズレなどの形状変形に伴う不具合を抑制するとすることができる。また、100%モジュラスが5MPa以下であることにより、被着体より粘着テープを剥がす初期段階において、作業者が、比較的軽い力で引っ張ることができる。
第1基材層の100%モジュラスは、第1基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、伸長度が100%の際に測定した応力値を指す。
また、当該100%モジュラスは、適宜材料を選択するとともに、第1基材層の製造工程で延伸をかけるなどの方法で調整することができる。
【0016】
第1実施態様において、第1基材層は、ゴム硬度が20~90Aであることが好ましく、より好ましくは30~85Aであり、さらに好ましくは60~85Aである。ゴム硬度が20A以上であることにより、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に該粘着テープのちぎれを防止することができる。また、ゴム硬度が90A以下であることにより、第1基材層が軟らかくなり、例えば、粘着テープが貼り付いた被着体を落下した際に、粘着テープが衝撃を吸収しやすくなり、被着体を衝撃から保護することができる(粘着テープの耐衝撃性を向上させることができる)。
第1基材層のゴム硬度は、ショアA硬度であり、デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)(型式:GS-719G、株式会社テクロック製)を用い、JIS K 6253に準拠して測定した値を指す。
また、当該ゴム硬度は、例えば樹脂の分子量を変更したり、スチレン単量体単位を含む場合には当該単量体単位を変更したりする等、適宜材料を選択するなどの方法で調整することができる。
【0017】
第1基材層は、厚さが10~1000μmであり、好ましくは10~300μmであり、より好ましくは20~200μmである。厚さが10μm以上であることにより、粘着テープの強度を確保することができ、また、厚さが1000μm以下であることにより、厚さが厚すぎて引っ張りにくくなることを避けることができる。
なお、本明細書において、「第1基材層の厚さ」とは、第1基材層中の任意の5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、それらの測定値の平均値を指す。
【0018】
第1粘着層と第1基材層との厚さの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[第1粘着層の厚さ/第1基材層の厚さ]で表される、第1基材層の厚さに対する粘着層の厚さの比率が、1/5~5/1であることが好ましく、1/3~3/1であることがより好ましく、1/2~2/1であることが更に好ましい。第1基材層の厚さに対する第1粘着層の厚さの比率が好ましい範囲内にあると、粘着テープの優れた接着性と再剥離性(剥がしやすさ)を得ることができる。一方、前記比率が5/1より大きいと、粘着テープの再剥離工程で第1粘着層のみが被着体に残存してしまう可能性がある。また、前記比率が1/5より小さいと、被着体の表面が凹凸形状などの場合に第1粘着層が追従できずに接着強度が低下してしまう懸念がある。
【0019】
<<第1基材用材料>>
第1基材層の25%伸長時応力は、0.15MPa~82MPaであることが好ましく、0.15MPa~10MPaがより好ましく、0.15MPa~5MPaがさらに好ましく、0.15MPa~4.5MPaが最も好ましい。第1基材層の25%伸長時応力が0.15MPa~82MPaであると、第1基材層として好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、第1基材層の25%伸長時応力が、0.15MPa未満であると、第1粘着層と第1基材層の界面の未着力が得にくく、例えば、粘着テープの保持力を損なう場合がある。また、粘着テープの25%伸長時応力が、82MPaを超えると、粘着テープを引き剥がす際、該粘着テープを伸長させるために必要な力が過大となってしまう傾向がある。
第1基材層の25%伸長時応力は、粘着テープを、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
第1基材用材料としては、上記の特定の物性を有する第1基材層を得ることができれば特に限定されないが、例えば、スチレン系化合物単位を主体とするブロックと共役ジエン単位を主体とするブロックを含む共重合体及び/又はその水素添加物であるスチレン系樹脂;エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン等のポリウレタン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルイミド;ポリイミドフィルム;フッソ樹脂;ナイロン;アクリル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましい。
これらの中でも、スチレン系樹脂や、ポリウレタン樹脂は、好適な破断強度や破断伸度を得易いため好ましく、スチレン系樹脂がより好ましく、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との組合せ、又は、スチレン-イソプレンブタジエン-スチレン共重合体の水素添加物が特に好ましい。
【0020】
-スチレン系樹脂-
スチレン系樹脂は、熱可塑性を示す樹脂であるため、押出成形や射出成形等の成形性に優れ、第1基材層を成形し易い。また、スチレン系樹脂は、一般的に熱可塑性樹脂と呼ばれる樹脂群の中でも特に優れた破断伸度が得られ易く、粘着シートの第1基材として好適に使用できる。
【0021】
したがって、第1基材用材料において、全樹脂成分に対してスチレン系樹脂が占める割合としては、50%~100%が好ましく、60%~100%がより好ましく、65%~100%が更に好ましく、70%~100%が特に好ましい。スチレン系樹脂の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断強度が優れた第1基材層を得ることができる。
【0022】
ここで、スチレン系樹脂は、スチレン系化合物単位を主体とするブロック(以下、重合体ブロック(A)とも称す)と共役ジエン単位を主体とするブロック(重合体ブロック(B)とも称す)を含む共重合体及び/又はその水素添加物であるところ、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1-ビニルナフタレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、製造コストと物性バランスの観点から、スチレン、α-メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
また、共役ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも汎用性の観点から、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
スチレン系樹脂としては、具体的には例えば、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレンブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、およびそれらの水素添加物等が挙げられる。
【0024】
重合体ブロック(A)は、スチレン系化合物単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいてスチレン系化合物単位を50質量%以上含むことをいう。該重合体ブロック(A)中のスチレン系化合物単位の含有量は、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
但し、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(A)はスチレン系化合物以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位(以下、他の不飽和単量体単位と略称する)を10質量%以下の割合で含有していてもよい。該他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソブチレン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン等からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体ブロック(A)が該他の不飽和単量体単位を含有する場合の結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
【0025】
スチレン系樹脂は、上記重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有していればよい。スチレン系樹脂組が重合体ブロック(A)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(A)は、同一であっても異なっていてもよい。なお、本明細書において「重合体ブロックが異なる」とは、重合体ブロックを構成するモノマー単位、重量平均分子量、分子量分布、立体規則性、及び複数のモノマー単位を有する場合には各モノマー単位の比率及び共重合の形態(ランダム、グラジェント、ブロック)のうち少なくとも1つが異なることを意味する。
【0026】
重合体ブロック(B)は、共役ジエン単位を主体とする。ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて構造単位を50質量%以上含むことをいう。該重合体ブロック(B)中の共役ジエンに由来する構造単位の含有量は、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
【0027】
スチレン系樹脂は、重合体ブロック(A)と、重合体ブロック(B)とが結合している限りは、その結合形式は限定されず、直鎖状、分岐状、多分岐状、放射状、又はこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。直鎖状構造が豊富なスチレン系樹脂は、第1基材層に優れた破断伸度を与えることができる。一方、分岐状構造や多分岐状構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは、擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができる。このため、スチレン系樹脂は、必要な機械特性にあわせて混合して使用することが好ましい。中でも、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(A)をAで、また重合体ブロック(B)をBで表したときに、A-Bで示されるジブロック共重合体、A-B-Aで示されるトリブロック共重合体、A-B-A-Bで示されるテトラブロック共重合体、A-B-A-B-Aで示されるペンタブロック共重合体、(A-B)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等を挙げることができる。中でも、直鎖状のトリブロック共重合体又はジブロック共重合体が好ましく、A-B-A型のトリブロック共重合体が好ましく用いられる。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが二官能のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来、厳密にはY-X-Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA-B-X-B-A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体はA-B-Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
【0028】
また、スチレン系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲内で、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)以外の、他の重合性単量体からなる重合体ブロック(C)が存在していてもよい。この場合、重合体ブロック(C)をCで表したとき、ブロック共重合体の構造としては、A-B-C型トリブロック共重合体、A-B-C-A型テトラブロック共重合体、A-B-A-C型テトラブロック共重合体等が挙げられる。
【0029】
スチレン系樹脂としては、該スチレン系樹脂の全質量に対して、下記一般式(1)等で表されるスチレン系化合物単位を5質量%~75質量%の範囲で有するものを使用することが好ましく、5質量%~50質量%の範囲で有するものを使用することがより好ましく、10質量%~45質量%の範囲で有するものを使用することが更に好ましく、10質量%~40質量%の範囲で有するものを使用することが特に好ましい。スチレン系樹脂の全質量に対するスチレン系化合物単位の割合が前記好ましい範囲内であることで、破断伸度や破断強度が好適な範囲で得られ易くなる。
【化1】
【0030】
スチレン系樹脂は、本発明の目的及び効果を損なわない限り、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を、1種又は2種以上を有していてもよく、また官能基を有さないものであってもよい。
【0031】
ここで、スチレン系樹脂として、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計質量に対する、スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0質量%~80質量%であることが好ましく、0質量%~70質量%の範囲であることがより好ましく、0質量%~50質量%であることが更に好ましく、0質量%~30質量%であることが特に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、優れた破断伸度や破断強度を維持しながら熱耐久性との両立が可能となる。
【0032】
また、スチレン-イソプレン共重合体としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、1万~80万の範囲であるものを使用することが好ましく、3万~50万の範囲であるものを使用することがより好ましく、5万~30万の範囲であるものを使用することが更に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記好ましい範囲内であることで、加熱流動性や溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程における作業性が良好でありながら、熱耐久性を備えた第1基材層を得ることができるため好ましい。
【0033】
ここで、GPC法による重量平均分子量の測定は、GPC装置(SC-8020、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-H(20) 2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0034】
スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、及びスチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、アニオンリビング重合法によりブロック共重合体を得、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させることにより得ることができる。
具体的にはスチレン-イソプレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法などが挙げられる。
【0035】
スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法、リビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
【0036】
スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記方法で製造したスチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを混合する方法などが挙げられる。
【0037】
また、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法としては、ひとつの重合工程で同時に混合物として製造することも可能である。
より具体的な一態様としては、アニオンリビング重合法により、第一に、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いてスチレン単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリスチレンブロックを形成する。第二に、ポリスチレンブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合し、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を得る。第三に、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を形成する。第四に、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の残部を、重合停止剤を用いて、そのリビング性の活性末端を失活させ、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を形成させる。
【0038】
ここで、スチレン系樹脂として、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレンブタジエン-スチレン共重合体およびスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体の水素添加物であることが好ましく、より具体的には、スチレン系化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレンに由来する構造単位(以下、イソプレン単位とも称する)、ブタジエンに由来する構造単位(以下、ブタジエン単位とも称する)、又はイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位(以下、イソプレン及びブタジエン単位とも称する)を主体とする重合体ブロック(B)とから少なくとも構成されるブロック共重合体が水素添加された水添共重合体が好ましい。
【0039】
スチレン系樹脂が、重合体ブロック(A)と、イソプレン単位、ブタジエン単位、又はイソプレン及びブタジエン単位を主体とする重合体ブロック(B)とから少なくとも構成されるブロック共重合体が水素添加された水添共重合体である場合、上記にて説明した重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)は、下記のような構成を有することが好ましい。
【0040】
スチレン系樹脂が有する重合体ブロック(A)のうち、少なくとも1つの重合体ブロック(A)の重量平均分子量が3,000~15,000であることが好ましく、3,000~12,000であることがより好ましい。スチレン系樹脂が、前記範囲内の重量平均分子量である重合体ブロック(A)を少なくとも1つ有することにより、スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂の機械強度がより向上する。
【0041】
また、スチレン系樹脂が有する重合体ブロック(A)の合計の重量平均分子量は、機械強度の観点から、3,500~15,000であることが好ましく、4,500~15,000であることがより好ましく、4,500~12,000であることがさらに好ましく、5,000~11,000であることが特に好ましく、8,000~11,000であることが最も好ましい。
なお、「重量平均分子量」は、上記のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。スチレン系樹脂が有する各重合体ブロック(A)の重量平均分子量は、製造工程において各重合体ブロックの重合が終了する都度、サンプリングした液を測定することで求めることができる。また、例えばA-B-A構造を有するトリブロック共重合体の場合は、最初の重合体ブロックA及び重合体ブロックBの重量平均分子量を上記方法により求め、スチレン系樹脂の重量平均分子量からそれらを引き算することにより、2番目の重合体ブロックAの重量平均分子量を求めることができる。また、他の方法として、A-B-A構造を有するトリブロック共重合体の場合は、重合体ブロック(A)の合計の重量平均分子量は、スチレン系樹脂の重量平均分子量とH-NMR測定で確認する重合体ブロック(A)の合計含有量から算出し、GPC測定によって、失活した最初の重合体ブロックAの重量平均分子量を算出し、これを引き算することによって2番目の重合体ブロックAの重量平均分子量を求めることもできる。
【0042】
スチレン系樹脂は、重合体ブロック(A)の含有量(複数の重合体ブロック(A)を有する場合はそれらの合計含有量)が、スチレン系樹脂の総量に対して5~75質量%であることが好ましく、より好ましくは、5~50質量%であり、さらに好ましくは10~40質量%である。重合体ブロック(A)の含有量が上記範囲内であると、得られるスチレン系樹脂が、柔軟性により優れたものとなる。
なお、スチレン系樹脂における重合体ブロック(A)の含有量は、HNMRスペクトルにより求めた値である。
【0043】
重合体ブロック(B)は、イソプレン単位、ブタジエン単位、又はイソプレン及びブタジエン単位を主体とする。ここで重合体ブロック(B)は、上述のように他の単量体を含むことは許容されるところ、重合体ブロック(B)は、イソプレン及びブタジエン以外の共役ジエン化合物に由来する構造単位として、例えば2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含んでもよい。
重合体ブロック(B)としては、上記のとおり、イソプレン単位、ブタジエン単位、又はイソプレン及びブタジエン単位を主体とするが、ブタジエン単位、又はイソプレン及びブタジエン単位を主体とすると、スチレン系樹脂の機械強度(特にゴム弾性)に優れる点で好ましい。さらに、イソプレン及びブタジエン単位を主体として構成されていることがより好ましい。イソプレンとブタジエンの混合割合は、特に制限されないが、諸性能向上の観点から、モル比でイソプレン/ブタジエン=10/90~90/10であることが好ましく、30/70~70/30であることがより好ましく、40/60~60/40であることがさらに好ましい。また、重合体ブロック(B)は、イソプレン及びブタジエン単位を主体とする構成である場合、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、又はそれらの2種以上の組合せからなることができる。
【0044】
重合体ブロック(B)を構成するイソプレン及びブタジエンそれぞれの結合形態としては、ブタジエンの場合には1,2-結合、1,4-結合を、イソプレンの場合には1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合をとることができる。スチレン系樹脂においては、重合体ブロック(B)中の1,2-結合及び3,4-結合の合計含有量が40モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは85モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。また、95モル%以下であることが好ましい。
なお、重合体ブロック(B)がブタジエンのみからなる場合には、前記の「1,2-結合及び3,4-結合の合計含有量」とは「1,2-結合の含有量」と読み替えて適用する。1,2-結合及び3,4-結合の含有量は、H-NMR測定によって算出した値である。
なお、本明細書において、重合体ブロック(B)がイソプレン単位を含む場合は1,2-結合量及び3,4-結合量の合計量をビニル結合量といい、重合体ブロック(B)がブタジエン単位からなる場合は、1,2-結合量をビニル結合量という場合がある。
【0045】
重合体ブロック(B)は、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて、通常は好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下で、イソプレン単位、ブタジエン単位以外の他の重合性の単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。該他の重合性の単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフラン等からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられる。重合体ブロック(B)がイソプレン単位、ブタジエン単位以外の他の重合体の単量体に由来する構造単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
【0046】
スチレン系樹脂は、上記重合体ブロック(B)を少なくとも1つ有していればよい。スチレン系樹脂が重合体ブロック(B)を2つ以上有する場合には、それら重合体ブロック(B)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
また、重合体ブロック(B)の水素添加率は50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
なお、上記の水素添加率は、重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する構造単位中の炭素-炭素二重結合量を、H-NMRスペクトルを用いて算出した値であり、より詳細な条件は実施例に記載の通りである。
【0048】
スチレン系樹脂が上記の水添共重合体である場合には、スチレン系樹脂の重量平均分子量は50,000~500,000であることが好ましく、より好ましくは60,000~400,000であり、更に好ましくは65000~300000、特に好ましくは70000~115000である。
【0049】
スチレン系樹脂の流動性は、230℃、21.6Nで測定したメルトフローレートが0.01~300g/10分であることが好ましい。Tダイ法やインフレーション法でフィルム成形する場合、0.01~100g/10分であることがより好ましく、押出し法でチューブ成形や射出成形する場合、0.1~100g/10分であることがより好ましい。なお、本明細書における「メルトフローレート」は全て、JIS K 7210(1999年)に準拠して測定した値である。
【0050】
なお、第1実施態様において、スチレン系樹脂が上記の水添共重合体である場合には、スチレン系樹脂は、水素添加型ブロック共重合体であるスチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)を含む。スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンで形成されるブロック共重合体の水素添加物である。SEEPSとしては市販品を用いることができ、例えば、クラレ社製のセプトン4033、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099が挙げられる。
【0051】
スチレン系樹脂は、溶液重合法、乳化重合法又は固相重合法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法では、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次添加して、ブロック共重合体を得、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させ、次いでブロック共重合体を水素添加することにより、スチレン系樹脂を得ることができる。
【0052】
上記方法において重合開始剤として使用し得る有機リチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム等が挙げられる。また、重合開始剤として使用し得るジリチウム化合物としては、例えばナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等が挙げられる。
【0053】
カップリング剤としては、例えばジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸フェニル等が挙げられる。
これらの重合開始剤及びカップリング剤の使用量は、目的とするスチレン系樹脂の所望とする重量平均分子量により適宜決定される。通常は、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物等の開始剤は、重合に用いるスチレン系化合物、ブタジエン、イソプレン等の単量体の合計100質量部あたり0.01~0.2質量部の割合で用いられるのが好ましく、カップリング剤を使用する場合は、単量体の合計100質量部あたり0.001~0.8質量部の割合で用いられるのが好ましい。
【0054】
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ペンタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、重合反応は、通常0~100℃、好ましくは10~70℃の温度で、0.5~50時間、好ましくは1~30時間行う。
【0055】
上記アニオン重合の際、有機ルイス塩基を添加することによって、未水添のブロック共重合体の1,2-結合量および3,4-結合量を増やすことができ、該有機ルイス塩基の添加量によって、1,2-結合量および3,4-結合量を制御することができる。
用いることのできる有機ルイス塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらの有機ルイス塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機ルイス塩基の添加量は、重合体ブロック(B)を構成するイソプレン単位及び/又はブタジエン単位のビニル結合量をどの程度に制御するかにより決定される。そのため、ルイス塩基の添加量に厳密な意味での制限はないが、重合開始剤として用いられるアルキルリチウム化合物又はジリチウム化合物に含有されるリチウム1グラム原子あたり、通常0.1~1,000モル、好ましくは1~100モルの範囲内で用いるのが好ましい。
【0056】
上記した方法により重合を行なった後、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加反応(水添反応)を行う。水素添加反応は、水素圧力を0.1~20MPa、好ましくは0.5~15MPa、より好ましくは0.5~5MPa、反応温度を20~250℃、好ましくは50~180℃、より好ましくは70~180℃、反応時間を通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間として実施することができる。
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の単体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。
【0057】
このようにして得られたスチレン系樹脂は、重合反応液をメタノールなどに注ぐことにより凝固させた後、加熱又は減圧乾燥させるか、重合反応液をスチームと共に熱水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱又は減圧乾燥することにより取得することができる。
【0058】
-ポリウレタン樹脂-
ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上の軟化点を有するものが好ましく、50℃以上の軟化点を有するものがより好ましい。また、軟化点の上限としては、100℃以下であることが好ましい。軟化点は、JIS K 2207(環球式)に準拠して測定した値を指す(以下、軟化点については同様である)。
【0059】
ポリウレタン樹脂としては、ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応物を好適に使用することができる。
【0060】
ポリオール(b1-1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール(b1-1)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが、第1基材層の機械特性を得ることができるため好ましい。第1基材層において、耐熱性が必要となる場合はポリエステルポリオールを使用することが好ましく、耐水性や耐生分解性が必要な場合はポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0061】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステル、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0062】
ポリエステルポリオールの製造に使用可能な低分子量のポリオールとしては、例えば、概ね重量平均分子量が50~300程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノールなどを使用することができる。
【0063】
ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;及びそれらの無水物又はエステル化物などが挙げられる。
【0064】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものなどが挙げられる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、後述する低分子量のポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
【0066】
炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0067】
ポリカーボネートポリオールの製造に使用可能な、炭酸エステル及び/又はホスゲンと反応しうる低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノールなどが挙げられる。
【0068】
ポリイソシアネート(b1-2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)とを反応させてポリウレタン樹脂(b1)を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、反応容器に仕込んだポリオール(b1-1)を、常圧又は減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、ポリイソシアネート(b1-2)を一括又は分割して供給し反応させる方法などが挙げられる。
【0071】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応は、ポリイソシアネート(b1-2)が有するイソシアネート基(NCO)と、ポリオール(b1-1)が有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH当量比)が、1.0~20.0の範囲で行うことが好ましく、1.1~13.0の範囲で行うことがより好ましく、1.2~5.0の範囲で行うことが更に好ましく、1.5~3.0の範囲で行うことが特に好ましい。
【0072】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)との反応条件としては、特に制限はなく、安全、品質、コスト等の諸条件を考慮して適宜選択することができるが、反応温度としては70℃~120℃が好ましく、反応時間としては30分間~5時間が好ましい。
【0073】
ポリオール(b1-1)とポリイソシアネート(b1-2)とを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒、有機金属系触媒などを使用することができる。
【0074】
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行ってもよく、有機溶剤の存在下で行ってもよい。
有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤は、ポリウレタン樹脂(b1)の製造途中又はポリウレタン(b1)を製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
【0075】
-その他の成分-
第1基材層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与樹脂;第1基材用材料以外のポリマー成分;架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第1基材層におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0076】
粘着付与樹脂は、粘着テープの粘着層と、第1基材層との密着性を高めることや耐熱性を高める目的で使用することができる。
【0077】
粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、80℃以上のものが好ましく、90℃以上のものがより好ましく、100℃以上のものが更に好ましく、110℃以上のものが特に好ましい。
【0078】
粘着付与樹脂としては、例えば、後述の「-ゴム系粘着剤樹脂-」の項目で記載したものなどを使用することができ、好ましい態様等も同様である。
【0079】
老化防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤(「加工安定剤」と称することもある)、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤が好ましく、これらを組み合わせて使用することが、第1基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができるため好ましい。なお、リン系老化防止剤は、高温環境下において経時的にわずかに変色(黄変)する場合があるため、その使用量は、初期接着性と熱耐久性と変色防止とのバランスを考慮し適宜設定することが好ましい。
【0080】
フェノール系老化防止剤としては、一般に立体障害性基を有するフェノール系化合物を使用することができ、モノフェノール型、ビスフェノール型、ポリフェノール型が代表的である。具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
フェノール系老化防止剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1基材用材料100質量部に対し、0.1質量部~5質量部の範囲で使用することが好ましく、0.5質量部~3質量部の範囲で使用することが、第1基材用材料の耐熱安定性を効果的に向上させることができ、その結果、良好な初期接着性を維持し、かつ、より一層優れた熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができる。
【0082】
<粘着層>
第1実施態様において、粘着テープは、粘着層として、第1粘着層及び第3粘着層を備える。第1粘着層および第3粘着層は、粘着テープの、被着体と接着する粘着面を形成する粘着層である。
各粘着層を形成する粘着剤組成物は、粘着剤樹脂を含み、当該粘着剤樹脂以外にも必要に応じて更に、フィラー粒子、その他の成分を含むことができる。また、各粘着層は、それぞれ同じ粘着剤組成物とすることや、それぞれ異なる粘着剤組成物とすることができる。
【0083】
以下、第1実施態様における各粘着層の特性等について説明する。
粘着層の25%伸長時応力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.04MPa~0.4MPaが好ましく、0.05MPa~0.1MPaがより好ましい。粘着層の25%伸長時応力が、好ましい範囲内であると、粘着テープとして好適な接着強度を得ることができ、伸長剥離する際でも比較的容易に引き剥がすことが可能となる。一方、粘着層の25%伸長時応力が、0.04MPa未満であると、硬質な被着体同士を固定していながら粘着テープのせん断方向への荷重が生じた場合に粘着テープが剥がれてしまうことがあり、0.4MPaを超えると、粘着テープを引き剥がす際、該粘着テープを伸長させるために必要な力が過大となってしまうことがある。
粘着層の25%伸長時応力は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、25%伸長したときに測定した応力値を指す。
【0084】
粘着層の破断強度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが0.5MPa~2.1MPaが好ましく、1.0MPa~2.1MPaがより好ましい。粘着層の破断強度が、前記好ましい範囲内であると、粘着テープを引き伸ばして剥がす際にも該粘着テープが千切れてしまうことを抑制することができ、該粘着テープを伸長させるための荷重が過剰になり過ぎないため引き剥がしによる再剥離作業が容易になる。一方、粘着層の破断強度が、0.5MPa未満であると、粘着テープを引き伸ばして剥がす際に該粘着層の凝集破壊による糊残りが生じることがあり、2.1MPaを超えると、十分な粘着性を得ることができないことがある。なお、粘着テープを引き伸ばして変形させる際に必要な力は、該粘着テープの厚さにも依存することになり、例えば、粘着テープの厚さが厚く破断強度が高い粘着テープを引き伸ばして剥がそうとした場合にも、十分に引き伸ばすことができず剥がすことができないことがある。
粘着テープ中の粘着層の破断強度は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した応力値を指す。
【0085】
粘着層の破断伸度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、450%~1,300%が好ましく、500%~1,200%がより好ましく、600%~1,100%が更に好ましい。粘着層の破断伸度が前記好ましい範囲内にあることで、好適な接着性と再剥離性(剥がしやすさ)を両立することができる。
粘着テープ中の粘着層の破断伸度は、粘着層を、標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度300mm/分間で長さ方向に引っ張り、破断したときに測定した引張伸び率を指す。
【0086】
粘着層の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~150μmであることが好ましく、20μm~120μmであることがより好ましく、30μm~110μmであることが更に好ましく、50μm~100μmであることが特に好ましい。「粘着層の厚さ」は、粘着テープにおける一つの粘着層の厚さを意味する。また、それぞれの粘着層の平均厚さは、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、本明細書において、「粘着層の厚さ」とは、粘着テープ中の任意の5点の粘着層の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、それら測定値の平均値を指す。
【0087】
第1実施態様において、第1粘着層は、被着体との密着性が確保し易いことから、厚さが10~150μmが好ましく、20~130μmであることがより好ましく、30~110μmであることが更に好ましい。第3粘着層は、被着体との密着性が確保し易いことから、厚さが10~100μmが好ましく、30~80μmであることがより好ましい。また、第2粘着層は、第1粘着層又は第3粘着層と同様な厚さにすることもでき、あるいは、異なる厚さにすることもできる。
【0088】
ここで、第1実施態様において、少なくとも第3粘着層、好ましくは発泡体層に隣り合う両側の粘着層(第1実施態様では第2粘着層および第3粘着層、後述の第2実施態様や第3実施態様では、第3粘着層および第4粘着層)は、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値が好ましくは-30℃~0℃であり、より好ましくは-20℃~-5℃である。粘着層の損失正接のピーク値を当該範囲とすることで、常温下での被着体との良好な密着性を付与しやすくなる。
損失正接(tanδ)は、温度分散による動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)から、tanδ=G’’/G’の式より求められる。温度分散による動的粘弾性測定から、ある周波数での損失正接(tanδ)のピーク値が得られる。
動的粘弾性特性は、粘着剤樹脂を構成する共重合体に用いるモノマーの種類やその比率、重合開始剤の種類やその使用量、架橋剤や粘着付与樹脂の種類や使用量、重合方法等を適宜選択することにより調整できる。
【0089】
なお、前述の粘着層の動的粘弾性特性は、特定周波数、及び特定温度における、動的粘弾性スペクトルの損失正接、又は損失正接及び貯蔵弾性率により規定し、さらに、特定周波数における動的粘弾性スペクトルの損失正接のピークを示す温度、又は損失正接のピーク値により規定する。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで-50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)を測定する。試験片は厚さ約2mmの粘着層を形成して、平行円盤の間に挟んで測定する。
【0090】
-フィラー粒子-
【0091】
第1実施態様において、第1基材層に隣り合う粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子および粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成される第1粘着層であることが好ましい。また、フィラー粒子を含有する前記第1粘着層を形成するための粘着剤組成物中のフィラー粒子の含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部であることが好ましい。同様に、第1基材層に隣り合う前記第2粘着層は、平均粒径が10~40μmのフィラー粒子及び粘着剤樹脂を含有する粘着剤組成物から形成されることが好ましい。そして、前記フィラー粒子を含有する前記第2粘着層中の前記フィラー粒子の含有量は、前記粘着剤樹脂100質量部に対して3~50質量部であることが好ましい。
なお、第1基材層に隣り合う粘着層としては、好ましくは少なくとも第1粘着層である。また、後述の第2実施形態の粘着テープのように、必要により第2粘着層を第1基材層と発泡体層との間に設ける場合、第1基材層に隣り合う粘着層としては、第1粘着層および後述の第2粘着層であるうる。さらには、本明細書において、単に粘着層と称する場合は、当該粘着層は第1粘着層及び第2粘着層の両方を含む。
【0092】
粘着層又は当該粘着層を形成する粘着剤組成物が当該フィラー粒子を含むことにより、第1被着体と第2被着体の間から粘着テープを剥がすため、第1基材層を伸長させた際に、第1基材層に追従して隣り合う粘着層も伸長し、フィラー粒子が該粘着層から露出する。そして、これにより第1粘着層と被着体との接着面積が小さくなる。したがって、より簡易に粘着テープを剥がすことができるので、剥離作業を容易化することができる。
又は、後述の第2実施形態の粘着テープのように、必要により第2粘着層を第1基材層と発泡体層との間に設ける場合、当該第2粘着層と、第2粘着層と隣り合う層(例えば発泡体層)との接着面積が小さくなる。したがって、より簡易に粘着テープを剥がすことができるので、剥離作業をさらに容易化することができる。
【0093】
フィラー粒子の種類としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、無機フィラー粒子であってもよく、有機フィラー粒子であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
無機フィラー粒子の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、ホウ素化チタン、カーボン、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズ、酸化スズの水和物、硼砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム-カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、赤リン、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、セリウム、錫、インジウム、炭素、イオウ、テリウム、コバルト、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛、酸化錫、酸化インジウム、ダイヤモンド、マグネシウム、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなどが挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウム、ニッケルなどが好ましい。
また、無機フィラーは、粘着剤樹脂への分散性向上のため、シランカップリング処理、ステアリン酸処理などの表面処理を施したものであってもよい。
【0095】
有機フィラー粒子の具体例としては、ポリスチレン系フィラー、ベンゾグアナミン系フィラー、ポリエチレン系フィラー、ポリプロピレン系フィラー、シリコーン系フィラー、尿素-ホルマリン系フィラー、スチレン/メタクリル酸共重合体、フッ素系フィラー、アクリル系フィラー、ポリカーボネート系フィラー、ポリウレタン系フィラー、ポリアミド系フィラー、エポキシ樹脂系フィラー、熱硬化樹脂系中空フィラーなどが挙げられる。
【0096】
なお、有機フィラー粒子のなかでもシリコーン系フィラーとしては、具体的には、直鎖状のオルガノポリシロキサンを三次元架橋させてなるシリコーンゴム粒子(特開昭63-77942号公報、特開平3-93834号公報、特開平04-198324号公報参照)、シリコーンゴムを粉末化したもの(米国特許第3843601号明細書、特開昭62-270660号公報、特開昭59-96,122号公報参照)などが利用できる。更には、上記方法で得られたシリコーンゴム粒子の表面を(R’SiO3/2n(R’は置換又は非置換の一価炭化水素基を表す)で表される三次元網目状に架橋した構造を持つポリオルガノシルセスキオキサン硬化物であるシリコーンレジンで被覆した構造のシリコーン複合粒子(特開平7-196815号公報参照)も利用できる。
より詳細には、シリコーンレジンによりシリコーンゴム粒子の表面が被覆されているシリコーン複合粒子がより好ましい。
かかるシリコーン系フィラーとしては、トレフィルE-500、トレフィルE-600、トレフィルE-601、トレフィルE-850等がそれぞれ上記の商品名で東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)から、また、KMP-600、KMP-601、KMP-602、KMP-605等が信越化学工業(株)から市販されているものが使用できる。
また、別のシリコーン系フィラーとしては、アクリル変性シリコーンを用いることができる。
【0097】
本実施形態における粘着層は、粘着剤樹脂及びフィラー粒子を含有し、粘着剤樹脂と、アクリル変性シリコーンと、任意成分である後述のマイクロバルーンとを含有することが好ましい。
本実施形態における粘着層中に存在するフィラー粒子、特にアクリル変性シリコーンは、共存する粘着剤樹脂に対して高い親和性を示すことにより、粘着テープからアクリル変性シリコーンの含有量及びアクリル変性の有無を特定し難い場合がある。
本実施形態における粘着層又は粘着剤組成物中に存在するフィラー粒子、特にアクリル変性シリコーンの存在の有無及びその含有量を特定し難い場合、例えば、フィラー粒子、特にアクリル変性シリコーンの存在及びその含有量を規定する代替として、例えば、本実施形態における粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nの範囲であってもよい。
また、換言すると、本実施形態において、粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nの範囲を達成する具体的な手段としては、当該粘着層が、粘着剤樹脂と、アクリル変性シリコーンとを含有する形態が挙げられる。
【0098】
本実施形態の粘着テープの粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであることが好ましく、0.3~4.0Nであることが好ましく、0.5~3.0Nであることがより好ましい。
本実施形態おける粘着層の外表面の摩擦力が上記範囲であると、被着体から粘着テープを剥がすために引っ張った際、被着体の表面で粘着テープの摩擦抵抗が下がるので、粘着層による被着体への接着力を効果的に低下させ、粘着テープを剥がしやすくすることができる。
なお、本実施形態の粘着層の外表面とは、被着体との接着面をいい、換言すると、粘着層における対向する2つの表面の内、基材層側とは反対側の最外表面をいう。そして、本実施形態の粘着テープにおいて、複数存在する粘着層のうち、少なくとも1以上の粘着層の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであればよい。さらには、基材層の両面に設けられた2つの粘着層の両方の外表面の摩擦力が0.1~5.0Nであってもよい。
上記の通り、本明細書における粘着層の摩擦力は、被着体と接触する側の粘着層の表面の摩擦力をいい、粘着層の摩擦力は、後述する実施例で説明する摩擦力の測定に記載した試験方法で測定している。
より詳細には、本明細書における粘着層の外表面の摩擦力は、綿帆布に対する23℃における摩擦力をいい、0.1~5.0Nであることが好ましく、0.3~4.0Nであることがより好ましく、0.5~3.0Nであることがさらに好ましい。
なお、本明細書における綿帆布は、綿製であり、9号綿帆布[(旧JIS L3102を準用)原糸撚り(経糸10/2、緯糸10/3)、密度(経糸44~48本/inch、緯糸33~37本/inch)、重さ510g/m)]を使用し、摩擦力の測定雰囲気は、温度23℃、湿度は50%である。
【0099】
本実施形態において、アクリル変性シリコーンが粘着層中に存在すると、当該粘着層の表面の摩擦力が低くなる傾向がある。また、粘着層の摩擦力が低いと、90°剥離の際に滑りやすく剥離が容易になるという効果を奏する。
本明細書における粘着層の摩擦力は、被着体(基材層以外)と接触する側の粘着層の表面の摩擦力をいい、粘着層の摩擦力は、後述する実施例の欄で説明する摩擦力の測定に記載した試験方法で測定している。
【0100】
上記アクリル変性シリコーンとしては、下記一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサンと、アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体と、これと共重合可能な官能基含有単量体との、乳化グラフト重合体が挙げられる。
【0101】
【化2】
【0102】
(上記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、X、X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立して、X又は-[O-Si(X)(X)]-Xで示される基を示し、X、X、及びXはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基又はヒドロキシル基を示し、X、X、X、X、X、X、X、X、及びX並びにY及びY中の少なくとも2個の基はヒドロキシル基であり、a、b及びcはそれぞれ独立して、0≦a≦1,000の正数、100≦b≦10,000の正数、1≦c≦1,000を満たす正数である。)
【0103】
一般式(2)において、R又はRで表される炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、ハロゲン原子、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アルキル,アルコキシもしくは(メタ)アクリロキシ置換アミノ基で置換されていてもよい。
又はRで表される炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。R又はRとしては、好ましくはメチル基である。
【0104】
一般式(2)において、X~Xで表される炭素数1~20のアルキル基及び炭素数6~20のアリール基としては、R又はRで例示したアルキル基及びアリール基とそれぞれ同様の基が挙げられる。
~Xで表される炭素数1~20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられる。
【0105】
一般式(2)において、a、b及びcは0≦a≦1,000の正数、100≦b≦10,000の正数、1≦c≦1,000の正数であるが、aは好ましくは0~200の正数である。aが1,000より大きくなると得られる皮膜の強度が不十分となる。bは好ましくは1,000~5,000の正数である。bが100未満では皮膜の柔軟性が乏しいものとなり、10,000より大きいと粒子のような固形になりにくくなる。cは好ましくは1~200の正数である。
また、一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサンは、架橋性の面から1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~4個のヒドロキシル基を有し、そのヒドロキシル基は分子鎖両末端に有するものが好ましい。
【0106】
上記アクリル変性シリコーンに用いられるアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0107】
上記アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体と共重合可能な官能基含有単量体としては、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、ビニル基、アリル基等を含む不飽和結合を有する単量体等が挙げられる。
【0108】
アクリル変性シリコーンは、上記一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサン100質量部に対して、アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体が10~100質量部、これと共重合可能な官能基含有単量体が0.01~20質量部を混合し、乳化グラフト重合して得られるものが好ましい。乳化グラフト重合における条件は、特に限定されず、重合時に用いる開始剤としては、通常アクリル系ポリマーに用いる公知のラジカル開始剤を使用できる。また、乳化剤も公知のアニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用できる。
【0109】
本実施形態における粘着剤組成物に使用可能なアクリル変性シリコーンは、ポリオルガノシロキサンの一部が(メタ)アクリル系単量体によって変性されている高分子を含有する形態であればよく、例えば、固形状、粉体状、粒子状又は溶液状のいずれであっても特に制限されることはない。そして、本実施形態における粘着剤組成物に使用可能なアクリル変性シリコーンの形状は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができ、規則的な形状であってもよく、不規則な形状であってもよい。アクリル変性シリコーンが粒状の場合の具体例としては、多角形状、立方体状、楕円状、球状、針状、平板状、鱗片状などが挙げられるが、これらの中でも、粒子の形状としては、楕円状、球状、多角形状が好ましく、より好ましくは球状である。粒子形状が、楕円状、球状、多角形状などの形状であると、粘着テープが伸長した際に、粘着層の被着体に対する滑りが良好となり、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。これらの形状の粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、アクリル変性シリコーンとして粒状のものを使用する場合、アクリル変性シリコーンの平均粒径は、好ましくは10~400μmであり、好ましくは15~400μmである。
本実施形態のアクリル変性シリコーンとして粒状のものを使用する場合は、下記に挙げる方法で造粒し粉体化される。即ち、スプレ-ドライ乾燥、気流式乾燥等が挙げられるが、生産性を考えるとスプレ-ドライヤ-が好ましい。粉体化は熱間乾燥することが好ましく、80~150℃で処理することが好ましい。
本実施形態に使用可能なシリコーン化合物としては、例えば、シャリ-ヌ R-170、シャリ-ヌ R-170S、シャリ-ヌ R-770、シャリ-ヌ R-773、シャリ-ヌ R-200(以上、日信化学工業(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0110】
本実施形態の粘着剤組成物に添加するフィラー粒子の粒度分布(D90/D10)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.5~20が好ましく、耐衝撃性の点で、2.5~15がより好ましく、2.5~5が更に好ましい。粘着剤組成物に添加するフィラー粒子の粒度分布(D90/D10)が好ましい範囲内であると、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができ、粘着テープの第1基材の厚さが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、粘着剤組成物に添加するフィラー粒子の粒度分布(D90/D10)が、2.5未満であると、伸長剥離性を損なうことがあり、20を超えると、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
粘着剤組成物に添加するフィラー粒子の粒度分布(D90/D10)は、例えば、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することによりフィラー粒子の粒子径を測定して、粒度分布に換算することで得られる。また、本明細書における「粘着剤組成物に添加するフィラー粒子」とは、粘着剤組成物に添加する際のフィラー粒子単体をいい、粘着層中に存在するフィラー粒子とは、区別する。より詳細には、本明細書における「平均粒径」と「数平均1次粒子径」とは、両者の測定方法が異なるため、本明細書では両者を区別している。本明細書における「平均粒径」は、フィラー粒子単体をレーザー回折散乱法により測定した体積平均粒子径をいう。一方、本明細書における「数平均1次粒子径」は、1種又は2種以上のフィラー粒子及び/又はマイクロバルーンが混合した粘着テープにおいて、電子顕微鏡画像から算出した1次粒子径の数平均をいう。
【0111】
粘着剤組成物に添加するフィラー粒子の平均粒径は、5~40μmであり、好ましくは10~35μmであり、より好ましくは10~30μmであり、さらに好ましくは10~25μmである。フィラー粒子の平均粒径が好ましい範囲内であると、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができ、粘着テープの第1基材の厚さが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、フィラー粒子の平均粒径が、5μm未満であると、伸長剥離性を損なうことがあり、40μmを超えると、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
なお、フィラー粒子の平均粒径は、体積平均粒径を指し、例えば、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより測定することができる。また、上記平均粒径は、1次粒子だけではなく、2次粒子などの凝集体も含む。
【0112】
なお、粘着剤組成物に添加するフィラー粒子として上記シリコーンゴム粒子やシリコーン複合粒子を用いる場合には、粘着剤組成物に添加するシリコーンゴム粒子やシリコーン複合粒子の平均粒径は、5~40μmのものが好適である。平均粒径が5μm未満であると、粘着テープが伸長した際のフィラー粒子による接着面積低減の効果が低下する傾向があり、また、40μmより大きいと、粘着テープの接着力が低下する傾向がある。
また、フィラー粒子として上記アクリル変性シリコーンを用いる場合には、アクリル変性シリコーンの平均粒径は、5~40μmであることが好ましい。平均粒径が5μm未満であると、粘着テープが伸長した際のフィラー粒子による接着面積低減の効果が低下する傾向があり、また、40μmより大きいと、粘着テープの接着力が低下する傾向がある。
一方、本実施形態において、粘着層中に存在するフィラー粒子の数平均1次粒子径は、3~45μmであり、好ましくは5~42μmであり、より好ましくは8~40μmであり、さらに好ましくは9~35μmであり、最も好ましくは10~32μmである。
本明細書において、「フィラー粒子の数平均1次平均粒子径」は、粘着層中に存在するフィラー粒子の大きさをいい、粘着層中に存在するフィラー粒子の数平均1次平均粒子径は、以下の方法を用いて測定する。まず、液体窒素下で冷却させた粘着テ-プをミクロト-ムにより無作為に3箇所切断し、3個の断片をサンプルとした。そして、それぞれのサンプルに対して走査型電子顕微鏡を用いて倍率400倍の写真を撮影した後、撮影された3枚の写真から、中実体の粒子であるフィラー粒子を選別した。その後、画像解析ソフトを用いて二値化処理(例えば大津の二値化処理)により算出した中実体の断面積を円の面積とみなし、中実体それぞれの円相当径を測定した。そして、3枚の写真内の中実体の合計個数とそれぞれに対応する円相当径とを算出して、以下の式(A)からフィラー粒子の数平均1次平均粒子径を算出した。
【数1】
(上記数式(A)中、nは中実体であるフィラー粒子の合計数を表し、Σdは撮影した写真中の中実体の外径に囲まれた領域の面積から算出した円相当径の総和を表す。)また、数平均1次平均粒子径の測定には、日立卓上顕微鏡MiniscopeTM3030Plusを使用した。
【0113】
フィラー粒子の平均粒径と、当該フィラー粒子を含む粘着層の平均厚さとの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、[フィラー粒子の1次平均粒子径/粘着層の平均厚さ]で表される、粘着層の平均厚さに対するフィラー粒子の1次平均粒子径との比率が、5/100以上であることが好ましく、5/100~95/100であることがより好ましく、10/100~75/100が更に好ましく、20/100~60/100が特に好ましい。前記比率が5/100以上であると、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができ、粘着テープの第1基材の厚さが薄い場合であっても千切れにくい。また、比率が95/100以下であること、耐衝撃性、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能もより優れる点で有利である。
【0114】
粘着層又は当該粘着層を形成するための粘着剤組成物におけるフィラー粒子の含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、3~50質量部であるが、10~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましい。粘着剤樹脂100質量部に対するフィラー粒子の含有量が3質量部以上であることにより、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。また、粘着剤樹脂100質量部に対するフィラー粒子の含有量が50質量部以下であることにより、被着体に粘着剤組成物が残留したり、耐衝撃性が悪くなったり、また、せん断接着力や割裂接着力が弱くなったりすることを防止することができる。
粘着層におけるフィラー粒子の含有量は、粘着剤組成物を調製する際に、適宜調製することができる。
【0115】
なお、粘着剤組成物に添加するフィラー粒子として上記シリコーンゴム粒子やシリコーン複合粒子を用いる場合には、粘着剤組成物に添加するシリコーンゴム粒子やシリコーン複合粒子の含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、3~20質量部であることが好ましい。
また、粘着剤組成物に添加するフィラー粒子として上記アクリル変性シリコーンを用いる場合には、粘着剤組成物に添加するアクリル変性シリコーンの含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
【0116】
粘着層全体の体積に対するフィラー粒子の体積比は、4~40%であることが好ましく、5~30%がより好ましく、5~20%がさらに好ましく、5~15%が最も好ましい。フィラー粒子の体積比が4%以上であることにより、より簡易に且つより速やかに粘着テープを剥がすことができる。また、フィラー粒子の体積比が40%以下であることにより、被着体に粘着剤組成物が残留したり、耐衝撃性が悪くなったり、また、せん断接着力や割裂接着力が弱くなったりすることを防止することができる。
なお、粘着層に対するフィラー粒子の体積比は、下記式(1)~(3)より算出することができる。
粘着剤樹脂*1の質量A(g)/粘着剤樹脂*1の密度A(g/cm)=粘着剤樹脂*1の体積A(cm) ・・・式(1)
フィラー粒子の質量B(g)/フィラー粒子の密度B(g/cm)=フィラー粒子の体積B(cm) ・・・式(2)
フィラー粒子の体積B(cm)/(粘着剤樹脂*1の体積A(cm)+フィラー粒子の体積B(cm))×100=フィラー粒子の体積比(%) ・・・式(3)
なお、上記式(1)及び(3)において、*1で表される粘着剤樹脂は、後述のその他の成分を含んでいてもよい。
密度は、JIS Z 8804に準拠して測定した値である。
【0117】
-粘着剤樹脂-
本実施形態の粘着層は、粘着剤樹脂を必須に含む。そして当該粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、公知の物の中から適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、ウレタン系粘着剤樹脂、シリコーン系粘着剤樹脂又はその他の粘着剤樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、粘着剤樹脂としては、アクリル系粘着剤樹脂を含むことが好ましい。
【0118】
--アクリル系粘着剤樹脂--
アクリル系粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル重合体、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤を含有するものなどが挙げられる。
【0119】
アクリル重合体は、例えば、(メタ)アクリレート単量体を重合させることによって製造することができる。
上記(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0120】
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、n-ブチルアクリレートを使用することが、被着体に対する優れた密着性を確保する上で特に好ましい。
【0121】
炭素原子数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、80~98.5質量%の範囲で使用することが好ましく、90~98.5質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0122】
アクリル重合体の製造に使用可能な単量体としては、上述のものの他に、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することができる。
高極性ビニル単量体としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル単量体等の(メタ)アクリル単量体、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有単量体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0123】
水酸基を有するビニル単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0124】
水酸基を有するビニル単量体は、粘着剤樹脂としてイソシアネート系架橋剤を含有するものを使用する場合に使用することが好ましい。具体的には、水酸基を有するビニル単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0125】
水酸基を有するビニル単量体は、アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、0.01~1.0質量%の範囲で使用することが好ましく、0.03~0.3質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0126】
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
アミド基を有するビニルの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリル単量体などが挙げられる。
【0127】
高極性ビニル単量体は記アクリル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して、1.5質量%~20質量%の範囲で使用することが好ましく、1.5質量%~10質量%の範囲で使用することがより好ましく、2質量%~8質量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性の点でバランスのとれた粘着層を形成できるため更に好ましい。
【0128】
アクリル重合体の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法で重合させる方法などが挙げられる。これらの中でも、アクリル重合体は、溶液重合法、塊状重合法で製造することが好ましい。
【0129】
重合の際には、必要に応じて、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系熱重合開始剤、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾの熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤などを使用することができる。
本実施形態において、アクリル重合体は、単独重合体であっても、あるいは多元共重合体(2元~7元共重合体)であってもよく、さらには、これらの混合物であってもよい。
【0130】
前記方法で得られたアクリル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量が、30万~300万であるものを使用することが好ましく、50万~250万であるものを使用することがより好ましい。
【0131】
ここで、GPC法によるアクリル重合体の重量平均分子量の測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0132】
本実施形態において、上記アクリル重合体としては、以下の一般式(I)で表されるトリブロック共重合体又は後述の一般式(V)で表されるジブロック共重合体が好ましい。以下、本実施形態におけるアクリル重合体の好ましい態様について説明する。
【0133】
<トリブロック共重合体>
本実施形態の粘着テープの粘着層は、下記一般式(I):
【化3】
(上記一般式(I)中、A、B及びCはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、A及びCはそれぞれ独立して、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、Bはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表し、AとCとは同一であっても或いは異なる化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位であってもよい。上記一般式中(I)中、*は他の原子との結合を表す結合手である。)で表される繰り返し単位を有するトリブロック共重合体を含む。
【0134】
上記一般式(I)中、A及びCは、Bとは異なる繰り返し単位を表し、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。また、A及びCはそれぞれ独立しており、互いに同一のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位であっても、或いは異なる化学構造を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体単位でもよい。本明細書における「メタクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、メタクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合又はグラフト重合した場合の、メタクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちメタクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。本発明における、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(II):
【化4】
(上記一般式(II)中、Rは、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基Rで置換されてもよく、当該置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表す。)で表されることが好ましい。
【0135】
上記一般式(II)中、Rは、再剥離性及び高荷重保持力の観点から、炭素原子数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましい。Rとしての、炭素原子数1~12のアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、接着力の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。該炭素原子数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基等の環状のアルキル基が挙げられる。また、炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基等の環状のアルキル基が挙げられる。上記炭素原子数1~4のアルキル基としては、再剥離性及び高荷重保持力の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0136】
上記一般式(II)中の好ましいRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、又はシクロブチル基のいずれかのアルキル基であり、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R(ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基)で置換されてもよい。
【0137】
本実施形態において、例えば、メタクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されることはなく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2-ヘキシルデシル等が挙げられる。これらの中でも、高荷重保持力と解体性の観点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0138】
上記一般式(I)中、Bは、A及びCとは異なる繰り返し単位を表し、アクリル酸アルキルエステル単量体単位を表す。本明細書における「アクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、アクリル酸アルキルエステル単量体を(共)重合又はグラフト重合した場合の、アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位、すなわちアクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位をいう。本発明における、アクリル酸アルキルエステル単量体単位は、以下の一般式(III):
【化5】
(上記一般式(III)中、Rは、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基Rで置換されてもよく、当該置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表わす。)で表わされることが好ましい。
【0139】
上記一般式(III)中、Rは、接着性の観点から、炭素原子数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素原子数4~8のアルキル基がさらに好ましい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、接着性の観点から、直鎖状又は分岐状が好ましい。
【0140】
また、上記一般式(III)中、炭素原子数1~12のアルキル基の例示は、上記一般式(I)中の、炭素原子数1~12のアルキル基の例示と同様である。
【0141】
上記一般式(III)中の好ましいRは、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基のいずれかのアルキル基であり、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R(ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基)で置換されてもよい。
【0142】
本実施形態において、アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらの中でも、接着力と再剥離性の両立の観点から、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及び、これらの共重合体が好ましい。
【0143】
上記一般式(I)中、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。p、q及びrのそれぞれの値は分子量等に関係する。p/(p+q+r)は、0.02~0.40であることが好ましく、0.05~0.37であることがより好ましい。q/(p+q+r)は、0.20~0.95であることが好ましく、0.25~0.90であることがより好ましい。r/(p+q+r)は、0.02~0.40であることが好ましく、0.05~0.37であることがより好ましい。
【0144】
本実施形態において、トリブロック共重合体は、以下の一般式(IV):
【化6】
(上記一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基Rに置換されてもよく、当該置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、
は、炭素原子数4~8のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基Rに置換されてもよく、当該置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、p、q及びrはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0145】
上記一般式(IV)中、Rは、上記一般式(II)におけるRと同様の態様を適用できる。上記一般式(IV)中、Rは、上記一般式(III)におけるRと同様の態様を適用できる。上記一般式(IV)中、Rは、上記一般式(II)におけるRと同様の態様を適用できる。また、上記一般式(IV)中、p、q及びrは、上記一般式(I)におけるp、q及びrと同様の態様を適用できる。さらに、上記一般式(IV)中、R及びRは同一であっても、或いは異なっていてもよい。
【0146】
本実施形態において、トリブロック共重合体が上記一般式(IV)で表わされる場合、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましく、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、又はウンデシル基からなる群から選択されることが好ましく、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びに、シクロブチル基からなる群から選択されることが好ましく、p/(p+q+r)が、0.02~0.40であり、q/(p+q+r)が0.20~0.95であり、r/(p+q+r)が0.02~0.40であることが好ましい。
【0147】
本発明におけるトリブロック共重合体は、一般式(I)中のAとCとが同一であることが好ましい。具体的には、トリブロック共重合体が上記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位を有する場合、RとRとが同一の基であり、p/(p+q+r)が、0.02~0.40であり、q/(p+q+r)が0.20~0.95であり、r/(p+q+r)が0.02~0.40であることが好ましい。
上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有するトリブロック共重合体において、AとCとが同一である(A-B-A型トリブロック共重合体)場合、より高い弾性率を確保できるため、高荷重保持力、経時再剥離性、及び保存安定性に優れた接着力をより確保しやすくなる。
【0148】
--分子量--
前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが5万~30万であることが好ましく、また、数平均分子量Mnが5万~30万であることが好ましい。より好ましくは、前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが10万~25万であり、且つ数平均分子量Mnが10万~25万であり、さらに好ましくは、前記トリブロック共重合体は、重量平均分子量Mwが13万~23万であり、且つ数平均分子量Mnが13万~23万である。
トリブロック共重合体の重量平均分子量Mwが上記範囲であると接着性と再剥離性と高荷重保持力の観点から好ましく、トリブロック共重合体の数平均分子量Mnが上記範囲であると接着性と再剥離性と高荷重保持力の観点から好ましい。
ここで、GPC法によるトリブロック重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0149】
--立体規則性--
前記トリブロック共重合体及び/又は当該トリブロック共重合体の部分構造(例えば、ブロック)は、立体規則性(タクチシティー)を有することが好ましい。具体的には、前記トリブロック共重合体及び/又は当該トリブロック共重合体の部分構造(例えば、ブロック)は、アイソタクチック、シンジオタクチック及びアタクチックのいずれの立体規則性を有してもよいし、これらのいずれかの立体規則性を有する複数のブロックを有していてもよい。
【0150】
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(A)-」部のポリマーブロックのシンジオタクチシティーが、65%以上のrr三連子の割合を示すことが好ましく、rr三連子の割合が75~95%であることがより好ましい。
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(C)-」部のポリマーブロックのシンジオタクチシティーが、65%以上のrr三連子の割合を示すことが好ましく、rr三連子の割合が75~95%であることがより好ましい。
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、一般式(I)中の「-(B)-」部のポリマーブロックは、アタクチックを示すことが好ましい。
【0151】
前記トリブロック共重合体が、rr三連子の割合が65%以上の「-(A)-」部のポリマーブロックを有する場合、再剥離性及び高温下での保持力が良好であるという効果を奏する。
【0152】
一般的には、重合体のシンジオタクチシティーは、3つの単量体単位で構成される連鎖(三連子)がrrである割合により表記される。本明細書では、重合体のNMR測定により算出している。具体的には、13C-NMRにおける三連子の配列を表すシグナルピークは、重合体の種類、測定溶媒、又は測定温度等の条件によって異なるため、それぞれの測定の条件に応じてシグナルを同定・定量する必要がある。なお、本明細書では、重水素化したクロロホルムに溶解させた試料を50℃で測定を行っている。
【0153】
前記トリブロック共重合体の好ましい形態としては、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピルブロック-ポリアクリル酸n-ブチルブロック-ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸t-ブチルブロック-ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルブロック-ポリアクリル酸プロピルブロック-ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0154】
前記トリブロック共重合体は、当該トリブロック共重合体の全体の分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量の比において、1.0~2.3の範囲であることが好ましく、1.00~1.50の範囲内であることがより好ましい。
【0155】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが異なる繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(A)-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(A)-」部のポリマーブロックの総重量をaと称する。)と、「-(B)-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(B)-」部のポリマーブロックの総重量をbと称する。)との割合は、粘着特性の観点から、a/bの質量比において、2/98~67/33の範囲内であるのが好ましく、5/95~60/40の範囲内であるのがより好ましい。
【0156】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが異なる繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(C)-」部のポリマーブロックの総重量(当該「-(C)-」部のポリマーブロックの総重量をcと称する。)と、「-(B)-」部のポリマーブロックの総重量との割合は、粘着特性の観点から、c/bの質量比において、2/98~67/33の範囲内であるのが好ましく、5/95~60/40の範囲内であるのがより好ましい。
【0157】
本実施形態において、一般式(I)中のAとCとが同一の繰り返し単位である場合、前記トリブロック共重合体の分子中に含まれる「-(A)-」部のポリマーブロック及び「-(C)-」部のポリマーブロックの総重量(「-(A)-」部のポリマーブロック及び「-(C)-」部のポリマーブロックの総重量をdと称する。)と、「-(B)-」部のポリマーブロックの総重量(bと称する)との割合は、粘着特性の観点から、d/bの質量比において、5/95~80/20の範囲内であるのが好ましく、10/90~75/25の範囲内であるのがより好ましい。
【0158】
前記トリブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、分子側鎖中又は分子主鎖末端において、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基等の官能基等に変性されてもよい。
【0159】
--トリブロック共重合体の製造方法--
前記トリブロック共重合体の製造方法は、特に限定されることはなく、従来公知の製造方法の中から適宜選択することができ、例えば、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法によりブロック共重合体を逐次重合する方法等が挙げられる。また、前記トリブロック共重合体が立体規則性(例えば、シンジオタクチシティー)を有する場合、有機金属錯体を用いた公知の方法を利用してもよい。
【0160】
前記トリブロック共重合体を製造する方法の一例としては、不活性の重合溶媒中において、重合開始剤を用いて、主成分であるメタクリル酸アルキルエステル単量体の重合と、主成分であるアクリル酸アルキルエステル単量体及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする単量体の重合を、所望のブロック結合順序になるように順次行うことからなる手法によりトリブロック共重合体を製造することができる。
【0161】
本実施形態において、トリブロック共重合体の製造方法の一態様としては、アニオンリビング重合法により、第一に、重合溶媒中、重合開始剤を用いてメタクリル酸アルキルエステル単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリメタクリル酸アルキルエステルブロック(一般式(I)中の「-(A)-」部分に対応)を形成する。第二に、上記ポリメタクリル酸アルキルエステルのリビング性の活性末端からアクリル酸アルキルエステル単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル二元ブロック共重合体(一般式(I)中の「-(A)-(B)-」部分に対応)を得る。第三に、リビング性の活性末端を有するメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル二元ブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたメタクリル酸アルキルエステル-アクリル酸アルキルエステル-メタクリル酸アルキルエステルトリブロック共重合体(一般式(I)の「-(A)-(B)-(C) 」部分に対応)を形成する。この際に、必要に応じて、アルコール等の重合停止剤と反応させることによって重合停止する。
【0162】
上記重合開始剤の例としては、有機リチウム化合物又は有機金属錯体等の有機金属化合物が挙げられる。
上記有機リチウム化合物としては、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、アルキルリチウムを1,1-ジフェニルエチレン、ジフェニルメタン等と反応させて得られる化合物等が挙げられる。さらにこれら有機リチウム化合物と、例えば、リチウムクロライド等の無機塩、リチウム2-(2-メトキシエトキシ)エトキサイド等のアルコキサイドのリチウム塩、ジイソブチル(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物とを併用してもよい。
上記有機金属錯体としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル基を配位子として有する希土類金属錯体、例えば、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムメチルテトラヒドロフラナート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イットリウムメチルテトラヒドロフラナート等が挙げられる。さらにこれら有機金属錯体と、例えば、トリメチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類とを併用してもよい。
【0163】
上記重合溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒等を使用することができる。
本実施形態に係るトリブロック共重合体の好適例としては、n-ブチルアクリレート単量体単位を90~99質量%含有する重合体が好ましい。
【0164】
<その他の粘着剤樹脂>
本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂として、上記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有するトリブロック共重合体を含むことが好ましい。必要により、当該トリブロック共重合体以外の粘着剤樹脂として、ジブロック共重合体、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、その他の粘着剤樹脂等を更に含んでもよい。また、上記トリブロック共重合体の代わりにジブロック共重合体、アクリル系粘着剤樹脂、ゴム系粘着剤樹脂、その他の粘着剤樹脂等を含有してもよい。
なお、本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂全体に対して、50~100質量%が、前記トリブロック共重合体で占めることが好ましく、70~100質量%が、前記トリブロック共重合体で占めることがより好ましい。
粘着層に用いる粘着剤樹脂中の前記トリブロック共重合体の含有量が上記範囲であると、接着性と解体性と高荷重保持力を両立しやすい。
【0165】
--ジブロック共重合体--
本実施形態の粘着テープの粘着層は、下記一般式(V):
【化7】
(上記一般式(V)中、D及びEはそれぞれ独立して、繰り返し単位を表し、Dは、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、Eはアクリル酸アルキルエステル単量体単位を表し、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表す。上記一般式中(V)中、*は他の原子との結合を表す結合手である。)で表される繰り返し単位を有するジブロック共重合体を含んでもよい。
本実施形態の粘着テープの粘着層は、粘着剤樹脂全体に対して、0~40質量%が、上記ジブロック共重合体で占めることが好ましく、0~20質量%がより好ましい。
粘着層に用いる粘着剤樹脂中の上記ジブロック共重合体の含有量が上記範囲であると、接着性と解体性と高荷重保持力を両立しやすい。
また、本実施形態において、粘着剤樹脂として、トリブロック共重合体とジブロック共重合体とを併用すると、高い弾性率と初期接着性を確保しやすくなるため、高荷重保持力、経時再剥離性、及び初期接着力をより確保しやすくなる。特に、粘着テープを引っ張った際において、粘着層中のアクリル変性シリコーン等のフィラーが表面に露出した状態を長期間維持できるため、当該フィラーの効果と相まって優れた相乗効果を発揮する。
上記一般式(V)中のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位及びアクリル酸アルキルエステル単量体単位は、上記一般式(I)中のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位及びアクリル酸アルキルエステル単量体単位と同様の形態を適用できる。
前記ジブロック共重合体は、以下の一般式(VI):
【化8】
(上記一般式(VI)中、Rは、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基Rで置換されてもよく、当該置換基Rは、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、R10は、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1又は2以上の水素原子は、置換基R11で置換されてもよく、当該置換基R11は、ハロゲン原子、アミノ基、又はシアノ基を表し、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0166】
上記一般式(VI)中、Rは、上記一般式(II)におけるRと同様の態様を適用できる。上記一般式(VI)中、R10は、上記一般式(III)におけるRと同様の形態を適用できる。上記一般式(VI)中、s及びtは、上記一般式(I)におけるp及びqと同様の形態を適用できる。
【0167】
また、本実施形態において、前記ジブロック共重合体の重量平均分子量Mwが5万~30万であり、且つ数平均分子量Mnが5万~30万であることが好ましい。当該重量平均分子量の測定は、本発明におけるトリブロック共重合体の重量平均分子量の測定方法を援用できる。
【0168】
上記一般式(VI)中、s及びtはそれぞれ独立して、各単量体単位の重合度を表わす。s及びtのそれぞれの値は分子量等に関係する。s/(s+t)は、0.01~0.99であることが好ましく、0.1~0.9であることがより好ましい。t/(s+t)は、0.01~0.99であることが好ましく、0.1~0.9であることがより好ましい。
【0169】
本実施形態において、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを併用する場合、ジブロック共重合体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態においては、トリブロック共重合体100質量部に対して、ジブロック共重合体を0~100質量部含有することが好ましく、1~50質量部含有することがより好ましく、10~50質量部含有することがさらに好ましい。粘着層における粘着付与樹脂の含有量の範囲が上記範囲であると、被着体との密着性を確保しやすくなる。
【0170】
アクリル系粘着剤樹脂としては、被着体との密着性や面接着強度を向上させるため、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。アクリル系粘着剤樹脂が含有する粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟化点が、30℃~180℃のものが好ましく、70℃~140℃のものが、高い接着性能を備えた粘着層を形成するうえでより好ましい。なお、(メタ)アクリレート系の粘着付与樹脂を使用する場合には、そのガラス転移温度が30℃~200℃のものが好ましく、50℃~160℃のものがより好ましい。
【0171】
アクリル系粘着剤樹脂が含有する粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、粘着付与樹脂は、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好ましい。
【0172】
粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アクリル重合体100質量部に対して、5質量部~65質量部の範囲で使用することが好ましく、8質量部~55質量部の範囲で使用することが、被着体との密着性を確保しやすくいためより好ましい。
なお、少なくとも第3粘着層、好ましくは発泡体層に隣り合う両側の粘着層(第1実施態様では第3粘着層、後述の第2実施態様、第3実施態様及び第4実施態様では、第2粘着層、第3粘着層および第4粘着層)では、粘着付与樹脂の使用量として、アクリル重合体100質量部に対して、5質量部~40質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0173】
アクリル系粘着剤樹脂としては、粘着層の凝集力をより一層向上させるうえで、架橋剤を含有するものを使用することが好ましい。
【0174】
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋剤は、アクリル重合体の製造後に混合し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、アクリル重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0175】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、3官能のポリイソシアネート系化合物である、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体、トリフェニルメタンイソシアネートが特に好ましい。
【0176】
架橋度合いの指標として、粘着層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。本実施形態の粘着層のゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%~70質量%が好ましく、25質量%~65質量%がより好ましく、35質量%~60質量%が、凝集性と接着性がともに良好な粘着層を得るうえで更に好ましい。
【0177】
なお、ゲル分率は、下記方法で測定された値を指す。剥離シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤樹脂、更に必要に応じて添加剤を含有する粘着剤組成物を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日間エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め試料のトルエン浸漬前の質量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、下記数式(4)に従ってゲル分率が求められる。なお、試料中の導電性微粒子の質量(G3)は、試料の質量(G1)と粘着剤組成物の組成から算出する。
ゲル分率(質量%)=(G2-G3)/(G1-G3)×100 ・・・数式(4)
【0178】
--ゴム系粘着剤樹脂--
本実施形態の粘着層に使用可能なゴム系粘着剤樹脂は、特に制限はなく、一般的に粘着剤樹脂(例えば、合成ゴム系粘着剤樹脂又は天然ゴム系粘着剤樹脂等)として使用可能なゴム材料が挙げられる。また当該ゴム材料には、必要に応じて粘着付与樹脂等の添加剤を含有してもよい。
【0179】
上記ゴム材料の具体例としては、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体が挙げられる。当該ブロック共重合体としては、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレンブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体及びそれらの水素添加物等のスチレン系樹脂などが好ましい。ゴム材料は、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、スチレン系樹脂を2種以上併用すると、粘着テープに優れた接着物性と保持力とを付与できるためより好ましい。特に、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせた混合物を使用することが好ましい。
【0180】
上記スチレン系樹脂は、例えば、線状構造、分岐状構造、又は多分岐状構造の単一構造を備えた樹脂を使用してもよく、あるいは異なる構造を備えた樹脂を混合して使用してもよい。前記線状構造が豊富なスチレン系樹脂を粘着層に使用すると、粘着テープが優れた接着性能を有する。一方、分岐構造又は多分岐構造であり、かつ分子末端にスチレンブロックを配した樹脂は、擬似的架橋構造を形成しうることから、優れた凝集力を発揮するため、高い保持力を粘着層に付与することができる。このため、粘着剤樹脂として使用するスチレン系樹脂は、必要な特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
上記スチレン系樹脂としては、該スチレン系樹脂の全質量に対して、下記一般式(3)で表される構造単位を、10質量%~80質量%の範囲で有することが好ましく、12質量%~60質量%の範囲で有することがより好ましく、15質量%~40質量%の範囲で有することが更に好ましく、17質量%~35質量%の範囲で有することが特に好ましい。これにより、優れた接着性と耐熱性とを発揮しうる。
【化9】
【0181】
本実施形態の粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂として、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体とを組み合わせて使用する場合、スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との合計質量に対する、スチレン-イソプレン共重合体の含有量が、0質量%~80質量であることが好ましく、0質量%~77質量%であることがより好ましく、0質量%~75質量%であることが更に好ましく、0質量%~70質量%であることが特に好ましい。スチレン-イソプレン共重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、優れた接着性能と熱耐久性とを両立した粘着テープを提供できる。
【0182】
上記スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万~80万の範囲であることが好ましく、3万~50万の範囲であることがより好ましく、5万~30万の範囲であることが更に好ましい。前記重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した値である。スチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量が前記範囲内であると、加熱流動性又は溶剤希釈時の相溶性を確保できるため、製造工程において良好な作業性を確保しつつ、熱耐久性を備えた粘着テープを得ることができる点で好ましい。
【0183】
なお、上記GPCによるスチレン-イソプレン共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC装置(SC-8020、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・ サンプル濃度:0.5質量%(THF(テトラヒドロフラン)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離剤:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel(登録商標) GMHHR-H(20) 2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0184】
本実施形態の粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりブロック共重合体を調製した後、必要に応じてカップリング剤を添加して反応させることにより、目的物のスチレン系樹脂を製造できる。
また、前記スチレン系樹脂の好ましい一例であるスチレン-イソプレン共重合体の製造方法も特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法などが挙げられる。
【0185】
さらに、前記スチレン系樹脂の好ましい一例であるスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、アニオンリビング重合法によりスチレンブロック及びイソプレンブロックを逐次重合する方法、又はリビング性活性末端を有するブロック共重合体を製造した後にカップリング剤と反応させてカップリングしたブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。
【0186】
上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の製造方法は、特に制限されることはなく、公知の製造方法から適宜選択することができる。例えば、前記方法で製造したスチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体を公知の混合手段で混合する方法などが挙げられる。
【0187】
さらには、上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物の別の製造方法は、1回の重合工程で同時に混合物として製造してもよい。
上記スチレン-イソプレン共重合体とスチレン-イソプレン-スチレン共重合体との混合物のより具体的な製造方法は、アニオンリビング重合法を用いた以下の第一の工程~第四の工程を有することが一例として挙げられる。
第一の工程としては、重合溶媒中、アニオン重合開始剤を用いてスチレン単量体を重合し、リビング性の活性末端を有するポリスチレンブロックを形成する工程である。
第二の工程は、ポリスチレンブロックのリビング性の活性末端からイソプレンを重合し、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を得る工程である。
そして、第三の工程は、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の一部とカップリング剤とを反応させ、カップリングしたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を形成する工程である。
第四の工程は、リビング性の活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の残部を、重合停止剤を用いて、そのリビング性の活性末端を失活させ、スチレン-イソプレンジブロック共重合体を形成させる工程である。
【0188】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。これにより、優れた初期接着性と熱耐久性と両立した粘着テープを提供できる。
【0189】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂としては、常温(23℃)下で固体状の樹脂が好ましい。当該粘着付与樹脂の具体例としては、石油樹脂、重合ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン-フェノール樹脂、スチレン樹脂、クマロン-インデン樹脂、キシレン樹脂又はフェノール樹脂などが挙げられる。また、当該石油樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5系/C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂は、C5系石油樹脂と重合ロジン系樹脂とを組み合わせて使用されることが、より一層優れた初期接着性と熱耐久性とを両立の観点で好ましい。
上記石油樹脂は、スチレン系樹脂を構成する前記一般式(3)で表されるスチレン単量体単位と相溶しやすい。そのため、粘着テープの初期接着力と熱耐久性とをより一層向上させることができる。
【0190】
上記C5系石油樹脂は、例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツシリーズ(エスコレッツ1202、エスコレッツ1304又はエスコレッツ1401)、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー製のウイングタック95、日本ゼオン株式会社製のクイントンシリーズ(クイントンK100、クイントンR100又はクイントンF100)又は理化ハーキュレス株式会社製のピコタック95若しくはピコペール100などが挙げられる。
【0191】
上記C9系石油樹脂は、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の日石ネオポリマーシリーズ(日石ネオポリマーL-90、日石ネオポリマー120、日石ネオポリマー130、日石ネオポリマー140、日石ネオポリマー150、日石ネオポリマー170S、日石ネオポリマー160、日石ネオポリマーE-100、日石ネオポリマーE-130、日石ネオポリマー130S又は日石ネオポリマーS)、東ソー株式会社製のペトコール(登録商標)などが挙げられる。
【0192】
上記C5系/C9系石油樹脂は、C5系石油樹脂と、C9系石油樹脂との共重合体を使用することができる。C5系/C9系石油樹脂の具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツ2101、日本ゼオン株式会社製のクイントンG115又は理化ハーキュレス株式会社製のハーコタック1149等を使用することができる。
【0193】
上記脂環族系石油樹脂は、C9系石油樹脂に水素添加して得ることができる。例えば、エクソンモービル社製のエスコレッツ5300、荒川化学工業株式会社製のアルコンP-100、理化ハーキュレス株式会社製のリガライトR101などが挙げられる。
【0194】
ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂の使用量は、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。ゴム系粘着剤樹脂を構成する成分の全量(100質量%)に対して、粘着付与樹脂は、0質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましく、0質量%~70質量%の範囲で使用することがより好ましく、0質量%~50質量%の範囲で使用することが更に好ましく、0質量%~30質量%の範囲で使用することが特に好ましい。当該好ましい範囲内で粘着付与樹脂を使用すると、粘着層と基材層との界面における密着性が向上し、かつ粘着テープの優れた破断伸度又は熱耐久性とが両立し易くなる。
【0195】
80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン系樹脂の全量に対して、80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂を3質量%~100質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%~80質量%の範囲で使用することがより好ましく、より一層優れた接着性と優れた熱耐久性とを両立した粘着テープを提供する観点を重視する場合、5質量%~80質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0196】
また、定温環境での貼付性又は初期接着性を得る目的から、80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂と、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂と組み合わせて使用してもよい。当該-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹は、特に制限されることはなく、公知の粘着付与樹脂から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温(20℃~27℃)下で液状の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0197】
-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂の具体例としては、プロセスオイル、ポリエステル又はポリブテン等の液状ゴムなどが挙げられる。これらの液状ゴムは、1種単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。より一層優れた初期接着性を発揮させる観点から、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂として、ポリブテンを使用することが好ましい。
【0198】
-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂は、粘着付与樹脂の全量(100質量%)に対して、0質量%~40質量%の範囲占めることが好ましく、0質量%~30質量%の範囲占めることがより好ましい。
【0199】
また、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂は、粘着剤樹脂に使用するスチレン系樹脂の全量(100質量%)に対して、0質量%~40質量%の範囲で使用することが好ましく、初期接着力を向上と良好な接着性とを有し、かつ、十分な熱耐久性を発揮する観点を重視する場合、0質量%~30質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0200】
80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂と-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂との質量比としては、特に制限されることはなく、目的に応じて適宜選択することができる。[80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量/-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量]で表される、-5℃以下の軟化点を有する粘着付与樹脂に対する80℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂の質量比が、5~50となる範囲で使用することが好ましく、優れた初期接着性と優れた保持力とを両立した粘着テープを得る観点を重視する場合、10~30となる範囲で使用することがより好ましい。
【0201】
スチレン系樹脂とゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、[スチレン系樹脂/ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂]で表される、粘着付与樹脂に対するスチレン系樹脂の質量比が、0.5~10.0となる範囲で使用することが好ましく、初期接着力を向上することができ、かつ、優れた熱耐久性を得る観点を重視する場合、0.6~9.0となる範囲で使用することが、より好ましい。また、質量比[スチレン系樹脂/ゴム系粘着剤樹脂と併用する粘着付与樹脂]は、1よりも大きいことが、例えば、被着体の曲面部等に貼付した際に粘着テープの反発力に起因した剥がれを防止(耐反発性)するうえで好ましい。
【0202】
-その他の成分-
本実施形態の粘着層中に含まれるその他の成分は、特に制限されることはなく、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えば、粘着剤樹脂以外のポリマー成分、架橋剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらその他の成分は、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
粘着層におけるその他の成分の含有量としては、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0203】
-他の粘着剤樹脂-
本実施形態において、粘着剤樹脂として、上記の粘着剤樹脂以外以下に説明する、アクリル系混合粘着剤、ゴム系混合粘着剤、ウレタン系混合粘着剤、粘着剤組成物、接着料又は接着剤樹脂などの混合粘着剤樹脂を用いてもよい。
(アクリル系混合粘着剤)
上記混合粘着剤は、粘着特性(例えばせん断接着力)又は分子設計、経時安定性等の観点から、アクリル系重合体をベース樹脂として含むアクリル系混合粘着剤であってもよい。なお、本明細書における「ベース樹脂」とは、混合粘着剤に含まれる樹脂成分の主成分(例えば、50質量%を超えて含まれる成分)をいう。
【0204】
(アクリル系重合体)
上記アクリル系重合体は、例えば、主成分の単量体としてアルキル(メタ)アクリレートをとして含み、かつ前記主成分の単量体と共重合性を有する副成分の単量体をさらに含み得る単量体原料の重合物が好ましい。ここで主成分の単量体とは、上記単量体原料における全単量体成分の50質量%超を占める成分をいう。
【0205】
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記一般式(4)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化10】
(上記式(4)中のR13は水素原子又はメチル基を表す。また、R14は炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)
粘着剤樹脂の貯蔵弾性率等の観点から、上記一般式(4)のR14がC1-14(例えばC2-10、より好ましくは、C4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R13が水素原子でR14がC4-8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。上記R14がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。粘着特性や糊残り防止等の観点から、n-ブチルアクリレートがより好ましい。
【0206】
全単量体成分中における主成分の単量体の配合比率は70質量%以上(例えば85質量%以上、より好ましくは90質量%以上)であることが好ましい。主成分の単量体の配合比率の上限は特に限定されることはないが、99.5質量%以下(例えば99質量%以下)とすることが好ましい。
【0207】
主成分の単量体であるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副成分の単量体は、アクリル系重合体に架橋点を導入したり、アクリル系重合体の凝集力を高めたりするために有用である。副成分の単量体として、例えば、カルボキシ基含有単量体、水酸基含有単量体、酸無水物基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、ケト基含有単量体、窒素原子含有環を有する単量体、アルコキシシリル基含有単量体、イミド基含有単量体、エポキシ基含有単量体等の官能基含有単量体の1種又は2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副成分の単量体としてカルボキシ基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体が共重合されたアクリル系重合体が好ましい。上記カルボキシ基含有単量体の好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が例示される。上記水酸基含有単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
【0208】
上記副成分の単量体の量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランス良く両立させる観点から、副成分の単量体の量は、アクリル系重合体を形成する全単量体成分中の0.5質量%以上とすることが適当であり、好ましくは1質量%以上である。また、副成分の単量体の量は、全単量体成分中の30質量%以下が適当であり、好ましくは10質量%以下(例えば5質量%以下)である。アクリル系重合体に水酸基含有単量体が共重合されている場合、水酸基含有単量体の含有量は、アクリル系重合体の合成に使用する全単量体成分中、約0.001~10質量%(例えば0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%)の範囲であることが好ましい。これにより、接着力と凝集力とがより高レベルでバランスした粘着剤樹脂が実現され得る。
【0209】
本開示のアクリル系重合体には、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外の単量体(その他単量体)が共重合されていてもよい。前記その他の単量体は、例えば、アクリル系重合体のガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤樹脂の凝集力を向上させ得る単量体として、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体、シアノ基含有単量体、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。前記その他単量体は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、ビニルエステル類が好適例として挙げられる。前記ビニルエステル類は、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、酢酸ビニルが好ましい。前記その他単量体の含有量は、アクリル系重合体の合成に使用する全単量体成分中、約30質量%以下(例えば0.01~30質量%、より好ましくは0.1~10質量%)とすることが好ましい。
【0210】
上記アクリル系重合体の共重合組成は、該重合体のガラス転移温度(Tg)が-15℃以下(例えば、-70℃以上-15℃以下)となるように設計されていることが好ましく、より好ましくは-25℃以下(例えば-60℃以上-25℃以下)、さらに好ましくは-40℃以下(例えば-60℃以上-40℃以下)である。アクリル系重合体のTgを上述した上限値以下とすることは、粘着テープの耐衝撃性等の観点から好ましい。
【0211】
アクリル系重合体のTgは、単量体組成(すなわち、該重合体の合成に使用する単量体の種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系重合体のTgとは、該重合体を構成する各単量体の単独重合体のTg及び該単量体の質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいて以下に示すFoxの式から算出された値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成する単量体のそれぞれを単独重合した単独重合体のガラス転移温度Tgjとの関係式である。
1/Tg=Σ(Mj/Tgj)
(上記Foxの式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(K)を表し、Mjは前記共重合体における単量体jの質量分率(質量基準の共重合割合)を表し、Tgjは単量体jの単独重合体のガラス転移温度(K)を表す。)
単独重合体のTgは、従来公知の文献又は資料に記載の値を用いる。
【0212】
本実施形態において、上記単独重合体のTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2-エチルヘキシルアクリレート 203.15K
ブチルアクリレート 218.15K
酢酸ビニル 305.15K
アクリル酸 379.15K
メタクリル酸 501.15K
2-ヒドロキシエチルアクリレート 258.15K
上記で記載したTg以外の単独重合体のTgは、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いる。また、上記Polymer Handbookに使用する単独重合体のTgの値が記載されていない場合には、例えば、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0213】
アクリル系重合体を製造する方法は特に限定されることはない。当該製造方法としては、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法又は懸濁重合法等の、アクリル系重合体の重合手法として一般的に知られている方法を適宜採用することができる。例えば、アクリル系重合体は、溶液重合法により製造することが好ましい。溶液重合法を行う際の単量体供給方法は、全単量体原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式又は分割供給(滴下)方式等を適宜採用できる。さらに、重合温度は、使用する単量体及び溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、当該重合温度は、20℃~170℃(例えば40℃~140℃)程度とすることができる。また、UV等の光を照射して行う光重合(例えば、光重合開始剤の存在下で行われる。)又はβ線若しくはγ線等の活性エネルギー線を照射して行う活性エネルギー線照射重合を用いてもよい。
【0214】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(例えば芳香族炭化水素類)、酢酸エチル等の脂肪族又は脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
【0215】
重合に用いる重合開始剤は、重合方法の種類に応じて、公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤の1種又は2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤が挙げられる。上記重合開始剤は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全単量体成分100質量部に対して0.005~1質量部(例えば0.01~1質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0216】
本開示におけるベース樹脂(好適にはアクリル系重合体)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されることはないが、例えば10×10以上500×10以下の範囲であり得る。凝集力と接着力とを高レベルでバランスさせる観点から、ベース樹脂(好ましくはアクリル系重合体)のMwは、好ましくは10×10~150×10、より好ましくは20×10~110×10(例えば20×10~75×10)、さらに好ましくは35×10~90×10(例えば35×10~65×10)の範囲にある。ここでMwの測定値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。当該GPC装置としては、例えば、「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用できる。後述の実施例においても同様である。
【0217】
(ゴム系混合粘着剤)
本実施形態における粘着剤樹脂として、ゴム系混合粘着剤により構成してもよい。好ましい一態様に係るゴム系混合粘着剤は、ベース樹脂として、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。前記モノビニル置換芳香族化合物とは、芳香環に1つのビニル基を有する官能基が結合した化合物をいう。上記芳香環の例は、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン又はビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン又はイソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してベース樹脂に用いることができる。
【0218】
上記ブロック共重合体におけるXブロック(硬質セグメント又は硬質ブロックとも称する。)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。上記ブロック共重合体におけるYブロック(軟質セグメント又は軟質ブロックとも称する)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%である。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着テープが実現され得る。
【0219】
上記ブロック共重合体は、ジブロック重合体、トリブロック重合体、放射状(radial)体、これらの混合物、等であることが好ましい。トリブロック重合体及び放射状重合体においては、高分子鎖の末端にXブロック(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたXブロックは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤樹脂の凝集性が向上するためである。本開示のブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック重合体比率が好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、継続的に加わる応力に対する耐性の観点から、ジブロック重合体比率が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下のものを使用できる。例えば、ジブロック重合体比率が60~85質量%のブロック共重合体の使用が好ましい。
【0220】
(スチレン系ブロック共重合体)
本開示の粘着剤樹脂の好ましい一態様において、上記ベース樹脂がスチレン系ブロック共重合体である混合粘着剤が好ましい。スチレン系ブロック共重合体としては、例えば、上記ベース樹脂がスチレンイソプレンブロック共重合体及びスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。粘着剤樹脂に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上占める形態、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上占める形態、又はスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上を占める形態が好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体のほぼ全体(例えば95~100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体であることが好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体のほぼ全体(例えば95~100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体であることが好ましい。この組成により、耐反撥性に優れ、かつ他の粘着特性とのバランスの良い粘着テープが好適に実現され得る。
【0221】
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック重合体、トリブロック重合体、放射状(radial)重合体、これらの混合物、等の形態が好ましい。トリブロック重合体及び放射状重合体においては、高分子鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。高分子鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤樹脂の凝集性が向上するためである。スチレン系ブロック共重合体において、ジブロック重合体比率の上限値及び下限値は上記のブロック共重合体の値を援用できる。
【0222】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、当該スチレン系ブロック共重合体の全体に対して5~40質量%であることが好ましい。耐反撥性や保持力の観点から、スチレン系ブロック共重合体において当該スチレン含有量が好ましくは10質量%以上、より好ましくは10質量%超、さらに好ましくは12質量%以上である。また、被着体に対する粘着力の観点から、スチレン含有量が35質量%以下(例えば30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、例えば20質量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。例えば、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体が特に好ましい。
【0223】
(ウレタン系混合粘着剤)
粘着剤樹脂はウレタン系混合粘着剤により構成することができる。ここでウレタン系混合粘着剤とは、ウレタン系重合体をベース樹脂として含む粘着剤のことをいう。上記ウレタン系混合粘着剤は、例えば、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系重合体をベース樹脂として含むウレタン系樹脂からなるものである。ウレタン系重合体としては、特に限定されることはないが、粘着剤樹脂として機能し得る各種ウレタン系重合体(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)のなかから適切なものを採用し得る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0224】
(粘着剤組成物)
本実施形態における粘着剤樹脂は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤でありうる。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、例えば、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称される組成物が含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。本開示は、せん断接着力等の粘着特性を好適に実現することを重視する観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤を備える態様で好ましく実施される。
【0225】
(アクリル系オリゴマー)
本開示の粘着剤組成物は、アクリル系オリゴマーを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを使用することによって、耐衝撃性と耐反撥性とをバランスよく改善することができる。また、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる場合には、アクリル系オリゴマーは、例えばロジン系樹脂やテルペン系樹脂等の粘着付与樹脂に比べて硬化阻害(例えば、未反応単量体の重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成単量体成分としてアクリル系単量体を含む重合体であり、上記アクリル系重合体よりもMwの小さい重合体として定義される。
【0226】
アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分に占めるアクリル系単量体の割合は、例えば50質量%超であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。好ましい一態様において、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系単量体のみからなる単量体組成を有する。
【0227】
アクリル系オリゴマーの構成単量体成分としては、上記アクリル系重合体に利用され得る単量体として例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、官能基含有単量体、その他単量体を使用できる。また、上記構成単量体は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分としては、上記で例示した各種単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0228】
上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(II)においてRが炭素原子数1~12(例えば、より好ましくはC1-8)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。なかでもメチルメタクリレートがより好ましい。
【0229】
上記官能基含有単量体の好適例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(例えば窒素原子含有複素環)を有する単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有単量体;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;アクリル酸、メチルメタクリレート等のカルボキシ基含有単量体;エチルヘキシルアクリレート等の水酸基含有単量体;が挙げられる。
【0230】
上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートは、例えば、炭素原子数が4~20の範囲内にある脂環式炭化水素基を含有する、(メタ)アクリレートを1種又は2種以上使用してもよい。上記脂環式炭化水素基を構成する炭素原子数は、好ましくは5以上(例えば6以上、より好ましくは8以上)であり、また好ましくは16以下(例えば12以下、より好ましくは10以下)である。上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートは、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジシクロペンタニルメタクリレートがより好ましい。
【0231】
上記アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分中に占める上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合(すなわち共重合割合)は、粘着性又は凝集性の観点から、約30~90質量%(例えば50~80質量%、より好ましくは55~70質量%)とすることが好ましい。
【0232】
アクリル系オリゴマーの好ましい形態は、当該アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレート及び/又は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全単量体成分に占める上記鎖状アルキル基含有及び脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、約80質量%以上(例えば90~100質量%、より好ましくは95~100質量%)とすることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレート及び/又は脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
【0233】
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含む単量体混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの組成比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成単量体成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの質量割合(MCh)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの質量割合(MAli)との質量比率(MCh:MAli)は、1:9~9:1であり、好ましくは2:8~7:3(例えば3:7~6:4、より好ましくは3:7~5:5)である。
【0234】
アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分の組成(すなわち重合組成)は、特に限定されることはなく、当該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーを構成する単量体成分の組成に基づいて、前記単量体組成に基づくTgと同様にして算出される値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期の接着性の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤樹脂の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、より好ましくは120℃以上)であることが好ましい。
【0235】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されることはないが、例えば0.1×10~3×10程度である。粘着特性(例えば粘着力又は耐反撥性)を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×10以下が好ましく、1×10以下がより好ましく、0.8×10以下(例えば0.6×10以下)がさらに好ましい。また粘着剤樹脂の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×10以上(例えば0.3×10以上)が好ましい。アクリル系オリゴマーの分子量は、重合に際して必要に応じて連鎖移動剤を用いて調節できる。
【0236】
アクリル系オリゴマーは、その構成単量体成分を重合することにより形成され得る。アクリル系オリゴマーの重合方法又は重合態様は特に限定されることはなく、公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合又は放射線重合等)を採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類又はその使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは省略する。
【0237】
本開示の粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、例えば0.5質量部以上とすることが好ましい。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1質量部以上(例えば1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性又はアクリル系重合体との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50質量部未満(例えば10質量部未満)とすることが好ましく、8質量部未満(例えば7質量部未満、より好ましくは5質量部以下)とすることがさらに好ましい。このような少量の添加であっても、アクリル系オリゴマーを使用することによる耐衝撃性及び耐反撥性の改善は実現され得る。
【0238】
(粘着付与剤)
本開示の粘着剤樹脂又は粘着剤組成物は、粘着付与剤を含む組成であってもよい。前記粘着付与剤としては、特に制限されることはない。前記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂又はケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。上記粘着付与樹脂は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0239】
ロジン系粘着付与樹脂の具体例は、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン等の未変性ロジン(生ロジン(樹脂酸と呼ばれる炭素原子数20の三環式ジテルペノイド異性体を主成分));これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同様。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の具体例は、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化した化合物(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化した化合物(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベース樹脂としてアクリル系重合体を採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種又は3種以上を併用することがより好ましい。
【0240】
テルペン系粘着付与樹脂の具体例は、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の具体例は、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベース樹脂としてアクリル系重合体を使用する場合、テルペン系粘着付与樹脂、例えばテルペン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。特に、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる1種又は2種以上を併用することがより好ましい。
【0241】
炭化水素系粘着付与樹脂の具体例は、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂又はクマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0242】
本開示において、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が約70℃以上(好ましくは約100℃以上、より好ましくは約110℃以上)であることが好ましい。先述した種々の軟化点を有する粘着付与樹脂を含む粘着剤樹脂又は粘着剤組成物を使用すると、より接着力に優れた粘着テープが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、上記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば約200℃以下(例えば約180℃以下)とすることができる。
【0243】
本実施形態において、粘着付与剤の使用量は特に制限されることはなく、所望の粘着性能(接着力等)に応じて適宜調整することができる。当該粘着付与剤の使用量は、例えば、固形分基準で、アクリル系重合体100質量部に対して、粘着付与剤を好ましくは約10~100質量部、より好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~60質量部の割合で使用してもよい。
【0244】
粘着剤樹脂をゴム系混合粘着剤で構成する場合には、上記ゴム系混合粘着剤は、粘着付与樹脂として、120℃以上の軟化点を有する高軟化点樹脂を含有することが好ましい。当該高軟化点樹脂を含有する粘着テープは、耐反撥性又は保持力等の観点から好ましい。好ましい一態様において、上記高軟化点樹脂は、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、特に好ましくは140℃以上の軟化点を有する粘着付与樹脂を含んでもよい。また、被着体に対する粘着力等の観点から、上記高軟化点樹脂の軟化点は、通常、200℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以下、さら好ましくは170℃以下、特に好ましく160℃以下である。
【0245】
上記高軟化点樹脂の具体例としては、テルペンフェノール樹脂、重合ロジン又は重合ロジンのエステル化物等が挙げられる。これらの高軟化点樹脂は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記高軟化点樹脂が1種又は2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が好ましい。例えば、120℃以上200℃以下(例えば120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)の軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を高軟化点樹脂として使用することができる。
【0246】
上記テルペンフェノール樹脂は、軟化点が120℃以上であって、水酸基価(OH価)が40mgKOH/g以上(例えば40~200mgKOH/g、より好ましくは40~160mgKOH/g)であることが好ましい。テルペンフェノール樹脂の水酸基価が上記範囲であると、より高性能な粘着テープが実現され得る。本明細書における水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される。より具体的な測定方法は、特開2014-55235号公報に記載される方法を使用することができる。
【0247】
本開示において、例えば、上記ゴム系混合粘着剤が、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の高軟化点樹脂(h1)と、水酸基価80mgKOH/g以上(例えば80~160mgKOH/g、例えば80~140mgKOH/g)の高軟化点樹脂(h2)とを混合した混合粘着剤が好ましい。この場合において、上記高軟化点樹脂(h1)と高軟化点樹脂(h2)との使用量は、例えば、質量比(h1:h2)が1:5~5:1の範囲となることが好ましく、1:3~3:1(例えば1:2~2:1)の範囲となることがより好ましい。高軟化点樹脂(h1)及び高軟化点樹脂(h2)がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が好ましい。
【0248】
本実施形態において、耐反撥性や保持力等の観点から高軟化点樹脂の含有量の下限は、ベース樹脂100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上(例えば35質量部以上)とすることが好ましい。また、高軟化点樹脂の含有量の上限は、粘着力又は低温特性等の観点から、ベース樹脂100質量部に対する高軟化点樹脂の含有量は、100質量部以下、80質量部以下、70質量部以下60質量部以下、50質量部以下)であることが好ましい。
【0249】
本開示において、上記ゴム系混合粘着剤が、上記高軟化点樹脂に代えて、あるいは上記高軟化点樹脂に加えて、120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂を含有してもよい。上記ゴム系混合粘着剤が、120℃以上の軟化点を有する高軟化点樹脂と、120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂とを含んでもよい。
【0250】
上記低軟化点樹脂としては、例えば40℃以上(例えば60℃以上)の軟化点を有する樹脂が好ましい。耐反撥性又は保持力等の観点を重視する場合、80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂が好ましい。また、110℃以上120℃未満の軟化点を有する低軟化点樹脂を用いてもよい。
【0251】
本実施形態において、上記ゴム系混合粘着剤が、石油樹脂及びテルペン樹脂(例えば未変性テルペン樹脂)の少なくとも一方を上記低軟化点樹脂として含むことが好ましい。例えば、低軟化点樹脂の主成分(すなわち、低軟化点樹脂のうちの50質量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との混合物である組成等が好ましい。粘着力及び相溶性を重視する場合、低軟化点樹脂の主成分は、テルペン樹脂(例えば、β-ピネン重合体)であることが好ましい。低軟化点樹脂の実質的に全量(例えば95質量%以上)がテルペン樹脂から構成されてもよい。
【0252】
上記低軟化点樹脂は、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂であることが好ましい。当該水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂は、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で使用しても、あるいは2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。低軟化点樹脂は、例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β-ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、当該重合ロジンのエステル化物)等であることが好ましい。
【0253】
被着体に対する粘着力を重視する場合、低軟化点樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。また、耐反撥性を重視する場合、低軟化点樹脂の含有量は、120質量部以下であることが好ましく、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、よりさらに好ましくは60質量部以下、さらにより好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。
【0254】
上記粘着付与樹脂が低軟化点樹脂と高軟化点樹脂とを含む混合物である場合、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:5~3:1であることが好ましく、より好ましくは1:5~2:1である。本開示において、上記ゴム系混合粘着剤が、粘着付与樹脂として低軟化点樹脂よりも高軟化点樹脂を多く含むことが好ましく、例えば、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の質量比が1:1.2~1:5であることが好ましい。これにより、より高性能な粘着テープが実現され得る。
【0255】
本開示において、ベース樹脂(例えばゴム系重合体)100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、20質量部以上であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。また、低温特性(例えば、低温条件下における粘着力や耐衝撃性)等を重視する場合、ベース樹脂100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部である。
【0256】
(その他の添加成分)
本開示において、粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の種類は特に制限されることはなく、公知の架橋剤から適宜選択することができる。当該架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、凝集力向上の観点から、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤であることが好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されることはなく、例えば、ベース樹脂(例えばアクリル系重合体)100質量部に対して約10質量部以下(例えば約0.005~10質量部、好ましくは約0.01~5質量部)の範囲から選択することができる。
【0257】
上記粘着剤組成物は、粘着剤又は粘着剤樹脂に含まれ得る公知の種々の充填剤を含有してもよい。当該充填剤としては、各種の粒子状物質又は繊維状物質を使用してもよい。当該粒子状物質を構成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等の重合体;等が挙げられる。また、粒子状物質は、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。さらに、上記粘着剤組成物は、上記充填剤として中空構造の粒子状物質、すなわち後述のマイクロバルーン(例えば、無機材料又は有機材料からなる中空粒子)を含んでもよい。上記粘着剤組成物に使用するマイクロバルーンの例として、ガラス製のバルーン(例えば中空ガラスバルーン)、金属酸化物製の中空バルーン(例えば中空アルミナバルーン)、磁器製の中空バルーン等(例えば中空セラミックバルーン)が挙げられる。繊維状物質としては、各種合成繊維材料又は天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記充填剤の添加量は特に限定されることはなく、その添加目的・用途又は技術常識に基づき、適宜選択できる。
【0258】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤又は光安定剤等の、一般的な各種の添加剤を含有してもよい。また、例えば粘着剤組成物(例えばアクリル系粘着剤組成物)に対してシリコーン系オリゴマー等の粘着力調整剤を添加してもよい。このような各種添加剤については、公知のものを常法により使用することができる。
【0259】
-接着料-
本実施形態において、粘着剤樹脂として、ビニル芳香族ブロック共重合体及び接着性樹脂をベースとして構成される接着料を使用してもよい。
当該接着料は、主に、ビニル芳香族(Xブロック)、好ましくはスチレンから形成されたポリスチレンブロック、主に、例えば、イソプレン又はブタジエンのような1,3-ジエン化合物(Yブロック)の重合化によって形成されたジエン系重合体ブロック、並びに、イソプレン及びブタジエンの両方を重合化した共重合体ブロックからなる群から選択される少なくとも2種のブロックから形成されるブロック共重合体であることが好ましい。また前記ブロック共重合体は、部分的に又は完全に、ジエン系ブロック中で水素化されてもよい。同様に、ビニル芳香族及びイソブチレンのブロック共重合体も接着料に利用できる。
好ましい接着料は、ブロック共重合体であり、かつポリスチレンエンドブロックを有する。
【0260】
Xブロック及びYブロックから得られるブロック共重合体は、それぞれのブロックと同一又は異なるYブロックを含んでもよい。ブロック共重合体は、線状のX-Y-X構造を有することができる。また、ラジアル型のブロック共重合体並びに星型及び線状のマルチブロック共重合体も本実施形態に使用できる。また、X-Y-ブロック共重合体を接着料に使用してもよい。これら共重合体はいずれも、単独で使用しても、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0261】
上記ポリスチレンブロックに代えて、別の芳香族含有の単独重合体及び共重合体(好ましくは、C8~C12の芳香族化合物から重合された共重合体)をベースとするポリマーブロック(例えば、75℃超のガラス転移温度を有する芳香族化合物を重合してなるポリマーブロック)もまたXブロックとして利用でき、例えば、α-メチルスチレンを重合してなる芳香族ブロックである。さらには、同じか又は異なるA-ブロックを同様に含有することもできる。
【0262】
本実施形態において、Xブロックは、“硬質ブロック”とも称する。Yブロックは、“軟質ブロック””とも称する。これは、ガラス転移温度に対応した重合体ブロックの選択を反映している(Xブロックは少なくとも25℃、特に、少なくとも50℃であり、Yブロックは、最高で25℃、特に、最高で-25℃)。
【0263】
本実施形態において、ブロック共重合体は、10質量%~35質量%、好ましくは20質量%~32質量%のポリビニル芳香族部分を有する。
【0264】
さらに好ましくは、ビニル芳香族ブロック共重合体、特に、スチレンブロック共重合体の含有割合の下限は、接着料の総量(100質量%)に対して、合計で、少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも30質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%である。
【0265】
ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が低すぎると、接着料の凝集力が比較的小さくなるという結果になる。
【0266】
ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の含有割合の上限は、接着料の総量(100質量%)に対して、合計で80質量%以下、好ましくは65質量%以下、特に好ましくは最大60質量%以下である。ビニル芳香族ブロック共重合体の含有割合が高すぎると、接着料がほとんど粘着性でないという結果になる。
【0267】
互いのガラス転移温度が大きく異なる軟質ブロック及び硬質ブロックを有するブロック共重合体は一般に室温でドメイン構造を形成する。これによって、接着料の物理的架橋によって凝集力をもたらす傾向を示す。また、スチレンブロック及びジエン/ブチレン/イソブチレン/エチレン/プロピレンブロックの改質されていないブロック共重合体は、概ね85℃まで又は最高100℃までしかせん断安定性を維持できなく、この温度範囲において、組成に依存して硬質ブロックの軟化が始まる。
【0268】
接着料は、選択されたスチレンブロック共重合体をベースとしてもよい。ポリマー混合物の感圧接着力は、混和性の接着性樹脂のエラストマー相の添加によって達成されうる。接着料に添加可能な混合成分としては、老化防止剤、加工助剤、着色料、光学的光沢剤、安定剤、エンドブロック強化樹脂並びに場合によっては、好ましくはエラストマーの性質を有するような別のポリマーなどを利用することができる。
それらの混合成分の種類及び量は、必要に応じて選択できる。
【0269】
所望の凝集性に高める観点から、接着料は、少なくとも一つのビニル芳香族ブロック共重合体の他に、少なくとも一つの接着性樹脂を有してもよい。当該接着性樹脂は、ブロック共重合体のエラストマーブロックと適合性を有することが好ましく、
特に好ましくは、接着性樹脂全体に対して、少なくとも75質量%までが炭化水素樹脂か又はテルペン樹脂、あるいはそれらの混合物である。
【0270】
接着料の接着性付与剤としては、非極性の炭化水素樹脂が挙げられる。そして当該非極性の炭化水素樹脂は、例えば、ジシクロペンタジエンの水素化された又は水素化されていない重合物、C5-、C5/C9-又はC9-単量体ストリームをベースとする水素化されていない、部分的に、選択的に又は完全に水素化された炭化水素樹脂、α-ピネン及び/又はβ-ピネン及び/又はδ-リモネンをベースとするポリテルペン樹脂を使用することが好ましい。上述の接着性樹脂は、単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。その場合、室温において固形樹脂としても液状樹脂としても使用できる。水素化又は水素化されていないロジン系樹脂は、樹脂の全量に基づいて25%の最大割合まで接着料中で利用されるため、その接着料は過度に極性にはならない。
【0271】
さらなる添加剤として、一般的に以下の成分(a)~(h)を使用してもよい。
成分(a):例えば、軟化油のような可塑化剤、又は、低分子量ポリブテンのような低分子量の液状ポリマー
成分(b):例えば、立体障害フェノールのような一次酸化防止剤
成分(c):例えば、亜リン酸塩又はチオエーテルのような二次酸化防止剤
成分(d):例えば、C-ラジカル捕捉剤のようなプロセス安定剤
成分(e):例えば、UV-吸収材又は立体障害アミンのような光保護剤
成分(f):プロセス助剤
成分(g):エンドブロック強化樹脂、
成分(h):場合によっては別の、エラストマーの性質を備えた重合体、適切に利用可能なエラストマー、とりわけ、純粋な炭化水素をベースとするような、例えば、天然又は合成のポリイソプレン又はポリブタジエンといった不飽和ポリジエン、実質的に化学的飽和したエラストマー(例えば、飽和エチレン-プロピレン共重合体、α-オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム)、並びに、化学的に官能化させた炭化水素(例えば、ハロゲン化アクリレート含有のアリルポリオレフィン又はビニルエーテル含有ポリオレフィン)。
【0272】
上記接着料は、必要により着色料又は顔料を用いて着色してもよく、当該接着料の色は、白色、黒色又は有彩色でありうる。
【0273】
本実施形態において、粘着剤樹脂として、少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体をベースとするエラストマー(i)、及び少なくとも一種の粘着樹脂を含む粘着樹脂(ii)、並びに任意に添加される軟化樹脂(iii)、及び任意に添加される他の添加剤(iv)を含む接着剤樹脂、を用いてもよい。
【0274】
上記エラストマー(i)は、少なくとも90質量%までが、ポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体、特にポリビニル芳香族類-ポリブタジエン-ブロック共重合体からなることが好ましい。そして、ポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体中におけるポリビニル芳香族類の割合は、12~35質量%、好ましくは20質量%~32質量%である。そして接着剤樹脂の総量(100質量%)に対するエラストマー(i)の配合割合は、40~55質量%であることが好ましく、より好ましくは45~55質量%である。
また、粘着樹脂(ii)は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上までが、ポリジエンブロックと本質的に相溶性でありかつポリビニル芳香族ブロックと本質的に不相溶性である炭化水素樹脂からなることが好ましい。そして接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して粘着樹脂(ii)の配合割合は、少なくとも40質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
さらに、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して軟化樹脂(iii)は、0質量%~最大5質量%である。
また、接着剤樹脂は、マイクロバルーン(例えば、後述のマイクロバルーン)を含有することができる。マイクロバルーンを含有する場合には、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対してマイクロバルーンの割合は、少なくとも0.5質量%であることが好ましく、0.5~2.5質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは1.0~2.0質量%である。
さらに、接着剤樹脂を粘着層に用いた場合には、粘着層の厚さは、20~75μmとすることが好ましく、より好ましくは25~65μmである。
【0275】
本実施形態における接着剤樹脂は、エラストマー(i)(例えば、少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体及び少なくとも一種の粘着樹脂(ii)をベースとして構成されている感圧接着剤を含む。
【0276】
上記エラストマー(i)は、X-Y、X-Y-X、(X-Y)、(X-Y)Z又は(X-Y-X)Zの構成を持つブロック共重合体の形の少なくとも一種のポリビニル芳香族類-ポリジエン-ブロック共重合体であることが好ましい。
なお、X-Y、X-Y-X、(X-Y)、(X-Y)Z又は(X-Y-X)Zにおいて、Xは、互いに独立して、少なくとも一種のビニル芳香族類の重合によって形成された重合体ブロックを表し、Yは、互いに独立して、炭素原子数4~18の共役ジエンの重合によって形成された重合体ブロック、又はポリジエンブロックにおいてこのような重合体の部分水素化誘導体を表し、Zは、カップリング試薬又は重合開始剤の残部を表し、nは2以上の整数を表す。
【0277】
接着剤樹脂は合成ゴムから構成されることが好ましく、そして当該接着剤樹脂を構成する全ての合成ゴムは、上述のような構成を持つブロック共重合体であることが特に好ましい。そのため、接着剤樹脂は、上述のような構成を持つ異なるブロック共重合体の混合物を含んでもよい。
【0278】
換言すると、上記ブロック共重合体(ビニル芳香族ブロック共重合体)は、一以上のゴム様ブロックY(軟質ブロックとも称する。)及び一以上のガラス様ブロックX(硬質ブロックとも称する。)を含む。特に好ましくは、接着剤樹脂を構成する少なくとも一種の合成ゴムは、X-Y、X-Y-X、(X-Y)Z、(X-Y)Z又は(X-Y)Zの構成を持つブロック共重合体であり、これら式中のX、Y及びZは上述の意味が適用される。接着剤樹脂の特に好ましい形態は、当該接着剤樹脂を構成する全ての合成ゴムが、X-Y、X-Y-X、(X-Y)Z、(X-Y)Z又は(X-Y)Zの構成を持つブロック共重合体である。なおX、Y及びZについては上述の意味が適用される。特に、接着剤樹脂の合成ゴムは、X-Y、X-Y-X、(X-Y)Z、(X-Y)Z又は(X-Y)Zの構成を持つブロック共重合体の混合物であることが好ましく、より好ましくは、ジブロック共重合体(上記一般式(V)を除く。)X-Y、及び/又はトリブロック共重合体(上記一般式(I)を除く。)X-Y-Z又は(X-Y)Xを少なくとも含む。
【0279】
更に、ジブロック及びトリブロック共重合体(上記一般式(I)及び(V)を除く。)、及び(X-Y)-又は(X-Y)Zブロック共重合体(nは3以上である)からなる混合物が有利である。
【0280】
更に、ジブロック共重合体(上記一般式(V)を除く。)及び放射状マルチブロック共重合体(X-Y)又は(X-Y)Z(nは3以上である)からなる混合物が有利である。
【0281】
本実施形態の接着剤樹脂としては、好ましくは、主としてビニル芳香族類、好ましくはスチレンから形成された重合体ブロックX(Xブロック)、及び主として1,3-ジエン、例えばブタジエン及びイソプレン、又はこれらの両者の共重合体、特にブタジエンの重合によって形成された重合体ブロックY(Yブロック)を含むブロック共重合体をベースとする感圧接着剤が使用される。この際、これらの製品は、ジエンブロックにおいて部分的に水素化されていてもよい。部分的に水素化された誘導体に関して、中でも、存在するかもしれないビニル基、すなわち側鎖に不飽和状態で存在する繰り返し単位、例えば1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンが水素化された状態で存在するブロック共重合体が特に適している。
好ましくは、接着剤樹脂のブロック共重合体はポリスチレン末端ブロックを有する。
【0282】
Xブロック及びYブロックから生じるブロック共重合体は、同じ又は異なるYブロックを含んでもよい。該ブロック共重合体は線状X-Y-X構造を有することができる。また同様に、放射状形態のブロック共重合体、並びに星型及び線状マルチブロック共重合体も使用し得る。他の成分としては、X-Y-Zの二元ブロック共重合体が存在することができる。上記のポリマーの全てを、単独で又は互いの混合物として利用することができる。
【0283】
上記の好ましいポリスチレンブロックの代わりに、ビニル芳香族類としては、75℃超のガラス転移温度を有する他の芳香族類含有単独及び共重合体(好ましくはC8~C12芳香族類)をベースとする重合体ブロック、例えばα-メチルスチレン含有芳香族類ブロックも利用することができる。更に、同一の又は異なるXブロックも含まれていてよい。
【0284】
Xブロックの構成のためのビニル芳香族類は、スチレン、α-メチルスチレン及び/又は他のスチレン誘導体を含むことが好ましい。そのため、前記Xブロックは、ホモポリマー又は共重合体として存在しうる。特に好ましいXブロックはポリスチレンである。
【0285】
軟質ブロックYの構成のための単量体としての好ましい共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、エチルブタジエン、フェニルブタジエン、ピペリレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、エチルヘキサジエン、及びジメチルブタジエン並びにこれらの単量体の任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。軟質ブロックYも単独重合体又は共重合体として存在し得る。
【0286】
軟質ブロックYに使用される単量体としての共役ジエンは、ブタジエン及びイソプレンから選択されることが特に好ましい。例えば、軟質ブロックYは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はこれら両者のポリマーの部分水素化誘導体、例えば特にポリブチレンブタジエン;又はブタジエン及びイソプレンからなる混合物でできたポリマーである。非常に特に好ましくは、ブロックBはポリブタジエンである。
【0287】
「硬質ブロックX」及び「軟質ブロックY」において、これらのガラス転移温度(硬質ブロックXのガラス転移温度は25℃以上、より好ましくは50℃である。一方、軟質ブロックYのガラス転移温度は好ましくは25℃以下、より好ましくは-25℃以下である。)に応じたブロックの選択を反映している。
【0288】
本実施形態において、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合の下限値は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対し、合計で少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%である。
ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が少ないほど、接着剤樹脂の凝集力が比較的小さくなることから、剥離の時に避けやすくなるという結果となる。加えて、エラストマー相のガラス転移温度が上昇して、耐衝撃性が低下する。加えて、脱着の際に残渣が接着基材上に残るリスクも高くなる。
【0289】
一方、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合の上限値は、接着剤樹脂の総量に対し、合計で最大55質量%であることが好ましい。他方、ビニル芳香族ブロック共重合体の割合が大きいほど、感圧接着剤がもはや十分に感圧接着性でなくなるという結果となる。
【0290】
本実施形態において、ビニル芳香族ブロック共重合体、特にスチレンブロック共重合体の割合は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、合計で少なくとも40質量%以上、より好ましくは45~55質量%である。
【0291】
接着剤樹脂は、少なくとも一種のビニル芳香族ブロック共重合体の他に、接着性を所望のレベルに高めるために、少なくとも一種の粘着樹脂(ii)を含んでもよい。当該粘着樹脂(ii)は、ブロック共重合体のエラストマーブロックと相溶性を有することが好ましい。
【0292】
「粘着樹脂」とは、当業者の一般的な理解と一致し、粘着剤樹脂は含まないものの他は同じ接着剤と比べた場合に接着剤の接着性(タック、固有粘着性)を高めるオリゴマー性又はポリマー性樹脂のことと解される。
【0293】
本実施形態において、粘着樹脂としては、例えば、+5℃超、好ましくは+10℃超でかつ+65℃未満(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在する場合)、好ましくは+50℃未満(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在しない場合)のDACP(ジアセトンアルコール曇点)を有する樹脂が、(全樹脂割合を基準にして)90質量%以上、好ましくは95質量%以上の割合で選択される。加えて、少なくとも一種の樹脂は、特に、少なくとも+50℃、好ましくは少なくとも+60℃で、かつ最大で+100℃(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマーに存在する場合)、好ましくは最大で+90℃(ポリイソプレン-ブロック共重合体がエラストマー分に存在しない場合)のMMAP(混合メチルシクロヘキサンアニリン点)を有する。少なくとも一種の粘着樹脂は、70℃以上、好ましくは100℃以上で最大150℃までの軟化点(環球式)を有する。
【0294】
上記接着剤樹脂と併せて使用する粘着性付与剤は、特に非極性炭化水素樹脂、例えばジシクロペンタジエンの水素化及び非水素化ポリマー、C5-、C5/C9-もしくはC9-単量体ストリームをベースとする水素化されていない又は部分的、選択的若しくは完全に水素化された炭化水素樹脂、α-ピネン及び/又はβ-ピネン及び/又はδ-リモネンをベースとするポリテルペン樹脂を使用することが好ましい。前述の粘着樹脂は、単独で又は混合物としても使用し得る。場合により、酸素も含む水素化又は非水素化粘着樹脂を、接着剤樹脂中の樹脂の総量を基準にして好ましくは最大10%の割合までで使用できる。
【0295】
本実施形態の粘着樹脂は、(総樹脂割合を基準にして)少なくとも75質量%までが炭化水素樹脂又はテルペン樹脂又はこれらの混合物であることが特に好ましい。 接着剤樹脂は、接着剤樹脂の総量(100質量)に対して好ましくは40~60質量%の少なくとも一種の粘着樹脂を含む。
【0296】
本実施形態において、室温で(粘)液性の軟化樹脂(iii)の配合割合は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して最大5質量%までである。しかし、室温中、(粘)液性の軟質樹脂(iii)を配合しなくてもよい。例えば鉱油、植物油などの低粘性軟化剤の使用を有意に忌避することができる。軟化樹脂(iii)を使用する場合、25℃及び1Hzで少なくとも25Pa*s、特に少なくとも50Pa*sの溶融粘度及び<25℃の軟化温度を有する粘液性軟化樹脂が好ましい。溶融粘度は試験VIに従い決定される。
【0297】
上記接着剤樹脂は、他の添加剤(iv)を必要により含有してもよい。例えば、当該他の添加剤(iv)としては、例えば、上記成分(b)~成分(h)を使用してもよい。
上記成分(b)は、接着剤樹脂の総量100質量%に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(c)としては、二次酸化防止剤、例えばホスファイト、チオエステル又はチオエーテルが挙げられ、当該成分(c)は、接着剤樹脂の総量100質量%に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
上記成分(d)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。)、
上記成分(e)は、接着剤樹脂の総量(100質量)に対して、0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(f)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~1質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(g)は、接着剤樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.2~10質量%の割合配合されていることが好ましい。
成分(h):場合によっては、接着剤樹脂の総量(100質量%)を基準にして好ましくは0.2~10質量%の割合の、好ましくはエラストマー性質の更なるポリマー;これに対応して利用可能なエラストマーに含まれるのは、中でも純粋な炭化水素をベースとするエラストマー、例えば天然のもしくは合成されたポリイソプレンもしくはポリブタジエンのような不飽和ポリジエン、化学的に実質的に飽和状態のエラストマー、例えば飽和エチレン-プロピレン-共重合体、α-オレフィン共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、並びに化学的に官能化された炭化水素、例えばハロゲン含有の、アクリレート含有の、アリル含有の、もしくはビニルエーテル含有のポリオレフィン。
【0298】
上記他の添加剤の混合成分の種類及び量は必要に応じて選択することができる。添加剤(iv)が使用され、かつこれらが移行性である場合には、(iv)と同種類の添加剤を同様に使用できる。接着剤樹脂が上記他の添加剤の一部、好ましくは全てをそれぞれ含まなくてもよい。
【0299】
本実施形態において、接着剤樹脂は、上述した他の添加剤とは別の添加剤を更に含んでもよい。当該別の添加剤としては、特に限定はされることはなく例えば、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタン、スズ、亜鉛、鉄又はアルカリ(土類)金属の結晶性もしくは非晶質の酸化物、水酸化物、炭酸塩、窒化物、ハロゲン化物、炭化物又は混合酸化物-/水酸化物-/ハロゲン化物化合物などが挙げられる。そして、当該別の添加剤は、礬土、例えば酸化アルミニウム類、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア及び類似物であってもよい。中でも特に好ましい例は、層状シリケート、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、カオリナイト、ベーマイト、マイカ、バーミキュライト又はこれらの混合物である。またさらに、カーボンブラック又は炭素の他の変態、例えばカーボンナノチューブも添加剤として使用できる。
【0300】
また、接着剤樹脂は、必要により染料又は顔料を用いて着色してもよい。そして接着剤樹脂の色は、例えば、白色、黒色又は有彩色でありうる。
【0301】
接着剤樹脂の熱せん断強度を調整する観点を重視する場合、シリカ、より好ましくはジメチルジクロロシランにより表面変性された沈降シリカを添加してもよい。
【0302】
本実施形態の粘着層は、マイクロバルーンを含有してもよい。粘着層中におけるマイクロバルーンは、10~60μmの数平均1次粒子径を有する。一方、粘着剤組成物を調製する際に使用する原料のマイクロバルーンは、10~50μmの平均粒径を有する。
所定の数平均1次粒子径を有するマイクロバルーンが粘着層に存在すると、キャビティ-又はせん断降伏がマトリックス中に分散しているマイクロバルーン近傍に多数発生して衝撃時のエネルギーを吸収するため、耐衝撃性が向上すると考えられる。しかし、要求される耐衝撃性を重視して、粘着層におけるマイクロバルーンの充填率を上げると、弾性率が向上し、切断加工性は向上するものの、粘着剤樹脂の相対量が低下して接着性能が低下する。特にこの傾向は、粘着層と基材層とを備えた粘着テ-プを用いた場合、基材層に対する粘着層のアンカリング不良が発生するため顕著に表れる。しかし、上記のフィラー粒子とマイクロバルーンとを併用して粘着層に添加すると、高い接着力を維持しつつ、かつ耐衝撃性を確保できる。その理由は定かではないが、互いに異なる粒径及び材料のフィラー粒子とマイクロバルーンとが混在すると、フィラー同士あるいはバル-ン同士の凝集が互いに抑制されて、粘着層の分散状態が良好になった結果と考えられる。
【0303】
本実施形態におけるマイクロバルーンは、中空体であり、かつ当該中空体単体の平均粒径(=外直径)が10~50μmである。また、当該マイクロバルーンは、必要により、ブタン、イソブタン等の揮発性炭化水素を含有してもよい。なお、ここでいう中空体(単体)の平均粒径(=外直径)が10~50μmとは、マイクロバルーンが膨張した後の平均粒径を表す。
本実施形態におけるマイクロバルーンを粘着剤組成物に添加する際、未膨張のマイクロバルーンを予め熱処理などにより膨張した膨張済のマイクロバルーンを用いることが好ましい。また、未膨張のマイクロバルーンを用いて粘着層の前駆体(粘着層用樹脂組成物の塗膜など)又は粘着層を形成する際に、マイクロバルーンを膨張させてもよい。当該未膨張のマイクロバルーンとしては、膨張していない熱可塑性樹脂製のマイクロバルーンなどを挙げることができる。
【0304】
一方、粘着層中に存在するマイクロバルーンの数平均1次粒子径も同様に、マイクロバルーンが膨張した後の外直径を表す。本実施形態において、粘着層に含まれるマイクロバルーンは、数平均1次粒子径が10~60μmの中空体であればよく、膨張済のマイクロバルーンであることが好ましい。
【0305】
本実施形態において、粘着剤組成物に添加するマイクロバルーンの膨張後の平均粒子は、10~50μmが好ましく、より好ましくは15~50μm、さらに好ましくは18~45μmである。マイクロバルーンの平均粒径が好ましい範囲内であると、より簡易に且つより速やかに粘着テ-プを剥がすことができ、粘着テ-プの基材の厚さが薄い場合であっても千切れにくく、かつ、耐衝撃性、せん断接着力、及び割裂接着力に優れる。一方、マイクロバルーンの平均粒径が10μm未満であると求める耐衝撃性が得られず、50μmを超えるとせん断接着力、割裂接着力等の接着性能を損なうことがある。
なお、本明細書において、「マイクロバルーンの平均粒径」は、粘着剤組成物に添加する前のマイクロバルーン単体の粒子の大きさをいい、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)により測定した体積平均粒径をいう。
マイクロバルーンの平均粒径の測定は、後述の実施例の欄に記載の測定条件を使用している。
【0306】
本明細書において、「マイクロバルーンの数平均1次平均粒子径」は、粘着層中に存在するマイクロバルーン単体の粒子の大きさをいい、粘着層中に存在するマイクロバルーンの数平均1次平均粒子径は、以下の方法を用いて測定する。まず、液体窒素下で冷却させた粘着テ-プをミクロト-ムにより無作為に3箇所切断し、3個の断片をサンプルとした。そして、それぞれのサンプルに対して走査型電子顕微鏡を用いて倍率400倍の写真を撮影した後、撮影された3枚の写真から、中空体の粒子をマイクロバルーンとし、中実体の粒子をフィラー粒子と選別した。その後、画像解析ソフトを用いて二値化処理(例えば大津の二値化処理)により算出した中空体及び中実体の断面積を円の面積とみなし、中空体及び中実体それぞれの円相当径を測定した。そして、3枚の写真内の中空体及び中実体の合計個数とそれぞれに対応する円相当径とを算出して、以下の式(B)から中空体であるマイクロバルーンの数平均1次平均粒子径を算出した。
【数2】
(上記数式(B)中、mは中空体であるマイクロバルーンの合計数を表し、ΣDは撮影した写真中の中空体の外径に囲まれた領域の面積から算出した円相当径の総和を表す。)また、マイクロバルーンの数平均1次平均粒子径の測定には、フィラー粒子と同様の日立卓上顕微鏡MiniscopeTM3030Plusを使用した。
【0307】
本実施形態において、マイクロバルーンの外形は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、球状、楕円状、多角形状、立方体状、棒状、針状、平板状、鱗片状、又は不定形などが挙げられる。
【0308】
本実施形態におけるマイクロバルーンは、外殻である表層に密封された構造であり、有機材料(例えば、熱可塑性樹脂)を外殻に用いたマイクロバルーン又は無機材料(例えば、ホウケイ酸ガラス、シリカ、カ-ボン、セラミック等)を外殻に用いたマイクロバルーンのいずれも使用できるが、有機マイクロバルーンが好ましい。また、有機マイクロバルーンを使用する場合、特に熱の作用によってマイクロバルーンに作用を及ぼすことにより、外側の外殻が柔らかくなる。同時に、中空体内部に封入された液状の発泡剤ガス等がそれの気体の状態に変わる。この際、マイクロバルーンが不可逆的に拡大し、三次元的に膨張する。内圧と外圧が等しくなった時に膨張が終了する。外殻は維持されるため、独立気泡型の発泡体を得ることができる。
【0309】
本実施形態において、粘着層に含まれるマイクロバルーンは、膨張済のマイクロバルーンであることが好ましい。また、本実施形態において、粘着層を形成する粘着剤組成物においては、粘着層の形成に未膨張のマイクロバルーンを用いる。当該未膨張のマイクロバルーンは、膨張していない熱可塑性樹脂製のマイクロバルーンを挙げることができる。
本実施形態において、マイクロバルーンは、外殻である表層として第1樹脂を用いたものが好ましく用いられる。より詳細には、本実施形態における好適なマイクロバルーンは、第1樹脂を含む表層を有する中空体粒子であることが好ましい。
【0310】
上記第1樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。また、第1樹脂としては、アクリルニトリル系樹脂であることが好ましく、具体的には、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレ-ト/アクリロニトリル共重合体、メタクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
上記マイクロバルーンの具体例としては、ディアリテ社(Dualite Corporation)製のディアリテ(Dualite)(登録商標)シリ-ズ、アクツォノベル社(Akzo Nobel)製のエクスパンセル(Expancel)シリ-ズ、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェア-(登録商標)シリ-ズ、中空ガラス粒子(シリカバル-ン、アルミナバル-ンなど)、中空セラミックス粒子などが挙げられる。
【0311】
本実施形態において、マイクロバルーンの表面の一部又は全部を無機材料(例えば、無機微粒子)により被覆することが好ましい。当該無機材料は、炭酸カルシウム、表面処理済の炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレイ及びカ-ボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の無機粉末であることが好ましい。マイクロバルーンを無機材料により表面被覆すると、生産性、分散性、耐衝撃性の向上の観点で好ましい。また、当該無機材料を、必要により、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤を用いて表面処理してもよい。
本実施形態において用いられるマイクロバルーンは、第1樹脂を含む表層を有する中空体粒子であり、且つ前記表層の表面に無機材料が添着されていることが好ましい。また、本実施形態において、炭酸カルシウムがマイクロバルーン表面の一部又は全部に添着していることが好ましい。これにより、耐衝撃性の効果がより向上する。
【0312】
本実施形態において、マイクロバルーンの数平均1次粒子径と、粘着層の平均厚さとの比は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。[マイクロバルーンの数平均1次粒子径/粘着層の平均厚さ]で表される、粘着層の厚さに対するマイクロバルーンの数平均1次粒子径との比が、0.1~1.0の範囲であることが好ましく、0.2~0.9であることがより好ましく、0.2~0.8が更に好ましく、0.3~0.7が特に好ましい。前記比が0.1以上であると、好適な耐衝撃性が得られやすく、また、前記比が1.0以下であること、せん断接着力、割裂接着力等の接着性能もより優れる点で有利である。
【0313】
粘着層における、マイクロバルーンの含有量は、粘着剤樹脂100質量部に対して、1~30質量部であるが、2~25質量部であることが好ましく、3~23質量部であることがさらに好ましく、4~20質量部であることがよりいっそう好ましい。粘着剤樹脂100質量部に対するマイクロバルーンの含有量が1質量部以上であることにより、耐衝撃性及び切断加工性の両立、あるいは剥離容易性を確保することができる。また、粘着剤樹脂100質量部に対するマイクロバルーンの含有量が50質量部以下であることにより、被着体への粘着層の残留、耐衝撃性の低下、また、せん断接着力又は割裂接着力の低下を防止することができる。
粘着層におけるマイクロバルーンの含有量は、粘着剤組成物を調製する際に、適宜調製することができる。
【0314】
粘着層全体の体積に対する、マイクロバルーンの体積割合は、3~40体積%を占めることが好ましく、5~35体積%がより好ましく、8~30体積%がさらに好ましく、10~30体積%が最も好ましい。マイクロバルーンの体積割合が3体積%以上であることにより、より簡易に且つより速やかに粘着テ-プを剥がすことができる。また、マイクロバルーンの体積割合が40体積%以下であることにより、被着体への粘着層の残留、耐衝撃性の低下、また、せん断接着力又は割裂接着力の低下を防止することができる。
【0315】
なお、本明細書における粘着層に対するマイクロバルーンの体積割合は、下記式(4)~(6)より算出することができる。
粘着剤樹脂*1の質量A(g)/粘着剤樹脂*1の密度A(g/cm)=粘着剤樹脂*1の体積A(cm)・・・式(4)
マイクロバルーンの質量B(g)/マイクロバルーンの密度B(g/cm)=マイクロバルーンの体積B(cm)・・・式(5)
マイクロバルーンの体積B(cm)/(粘着剤樹脂*1の体積A(cm)+マイクロバルーンの体積B(cm))×100=マイクロバルーンの体積割合(体積%)・・・式(6)
なお、上記式(4)及び(6)において、*1で表される粘着剤樹脂は、後述のその他の成分を含んでいてもよいことを表す。
上記密度は、JIS Z 8804に準拠して測定した値である。
【0316】
<発泡体層>
第1実施態様において、粘着テープは、発泡体層を備え、発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、引張強度が3.0~15.0MPaである。これにより、粘着テープに適切な弾性が付与され、部品(被着体)の僅かな歪みなどがあっても、各部品(第1被着体、第2被着体)を接着し続けることができる(テープ厚さ方向への耐剥がれ性を有する)。
【0317】
第1実施態様において、発泡体層の発泡体は、25%圧縮強度が40~160kPa、好ましくは50~140kPa、より好ましくは60~130kPaである。25%圧縮強度が当該範囲の発泡体を使用することにより、被着体との優れた密着性を有し、特に凹凸形状や粗面を有する被着体に対しても好適に追従して優れた密着性を有する。また、当該圧縮強度の発泡体は、適度なクッション性を有するため、貼付の際の圧力が接合部に集中して接着界面に存在する空気を押し出しやすいため、剛体同士の接合においても、例えば水が入り込むような隙間を生じさせない優れた密着性を実現できる。
【0318】
発泡体層の発泡体は、発泡構造を独立気泡構造とすることが好ましい。これにより、例えば粘着テープを用いて貼り合わせた第1被着体と第2被着体において、粘着テープを介してより確実に空間を遮断し、気密性を向上させることができ、例えば発泡体の切断面からの浸水を効果的に防ぐことができる。独立気泡構造を形成する気泡形状は特に限定されないが、発泡体の厚さ方向の平均気泡径より、流れ方向や幅方向、もしくはその両方の平均気泡径が長い形状の独立気泡が適度なクッション性を有するので好ましい。
【0319】
発泡体の厚さ方向の平均気泡径は、好ましくは1~100μm、より好ましくは10~50μmであり、発泡体の流れ方向および幅方向の平均気泡径が好ましくは1.2~700μm、より好ましくは10~500μm、さらに好ましくは50~300μmである。平均気泡径を当該範囲とすることで、粘着テープの幅を狭くした場合にも独立気泡を形成しやすく、発泡体断面からの浸水経路を好適に遮断できる。
【0320】
平均気泡径の比率は特に限定されないが、発泡体の厚さ方向における平均気泡径に対する、発泡体の流れ方向における平均気泡径の比(流れ方向における平均気泡径/厚さ方向における平均気泡径)が1.2~15が好ましく、より好ましくは3~8である。また、発泡体の厚さ方向における平均気泡径に対する、発泡体の幅方向における平均気泡径の比(幅方向における平均気泡径/厚さ方向における平均気泡径)が1.2~15が好ましく、より好ましくは3~8である。また流れ方向及び幅方向共に、上記比率範囲であることが更に好ましい。当該比率が1.2以上であると厚さ方向の柔軟性を確保しやすいため追従性が向上する。また、15倍以下であると、発泡体の流れ方向と幅方向の柔軟性や引張強さのばらつきが生じにくい。
【0321】
さらに、流れ方向と幅方向の平均気泡径の比率は、流れ方向を1とした場合0.25~4倍が好ましく、より好ましくは0.33~3倍である。上記比率範囲であると発泡体の流れ方向と幅方向の柔軟性や引張強さのばらつきが生じにくい。
【0322】
発泡体の幅方向と流れ方向の平均気泡径は、下記の要領で測定する。まず、発泡体を幅方法、流れ方向とも1cmに切断する。次に、切断した発泡体の切断面中央部分を走査型電子顕微鏡(SEM)で50倍に拡大したのち、発泡体の切断面がその発泡体厚さ方向の全長に亘って写真に納まるように、発泡体の幅方向又は流れ方向の断面を写真撮影する。得られた写真において、流れ方向又は幅方向の拡大前の実際の長さが2mm分の切断面に存在する気泡径を全て測定し、その平均値から平均気泡径を算出する。
【0323】
発泡体の厚さ方向の平均気泡径は、下記の要領で測定する。まず、SEMで写真撮影する発泡体の厚みを測定する。次に、発泡体の流れ方向の平均気泡径測定と同じ条件でSEM写真撮影を行う。次に、得られた写真において、発泡体の任意の箇所に存在する厚さ方向の気泡数を目視で数えて、以下の式より厚さ方向の平均気泡径を算出する。
厚さ方向の平均気泡径(μm)=発泡体の厚さ(μm)/気泡の個数
これを、任意の3箇所で測定行い、その平均値を厚さ方向における平均気泡径とする。
【0324】
発泡体の発泡構造は、圧縮強度や引張強度を上記範囲に調整し、被着体との優れた密着性を実現しやすいことから、その発泡倍率を2~6.5倍とすることが好ましく、3~5.5倍とすることがより好ましい。
なお、本明細書の発泡倍率は、発泡体を構成する樹脂の比重を発泡体の比重で除したものを言う。
【0325】
なお、25%圧縮強度は、50mm角に切断した試料を厚さ約10mmになるまで重ね合わせる。試料より大きな面積の板で試料をはさみ、23℃下で10mm/分の速度で試料を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮させ停止し、20秒経過後の強度を測定する。
【0326】
発泡体の圧縮強度や引張強さは、使用する発泡体の素材や発泡構造により適宜調整できる。発泡体の種類は、上記圧縮強度、引張強さを有するものであれば特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合ポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合ポリマー等からなるポリオレフィン系発泡体やポリウレタン系発泡体、アクリル系ゴムやその他のエラストマー等からなるゴム系発泡体等を使用でき、なかでも被着体表面の凹凸への追従性や緩衝吸収性等に優れた薄い発泡体を作製しやすいため、ポリオレフィン系発泡体を好ましく使用できる。
【0327】
発泡体の厚さは使用する態様によって適宜調整すれば良いが、50~1200μmであることが好ましい。電子機器の部品固定用、特に小型、薄型の携帯電子機器の場合には、薄いテープ厚さが求められるため、発泡体の厚さは50~300μmであることがより好ましく、50~250μmであることがさらに好ましく、75~150μmであることが最も好ましい。
【0328】
また、発泡体の引張強さが3.0~15.0MPa、好ましくは4.0~13.0MPa、より好ましくは5.0~12.0MPaである。切断伸度は、100~1000%、好ましくは300~700%である。引張強さや切断伸度が当該範囲の発泡体により、発泡した柔軟な発泡体であっても粘着テープの加工性の悪化やチギレ、貼付作業性の低下を抑制できる。
【0329】
なお、前述の引張強さは、標線長さ2cm、幅1cmのサンプルを、テンシロン引張試験機を用い、23℃・50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した最大強度である。
【0330】
このような発泡体としては、ポリオレフィン系樹脂を用いて形成される発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに電子線を照射して樹脂を架橋させ、シートを発泡等させることにより得られる、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、従来公知のものが使用できるが、四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40質量%以上含有するものが好ましい。
【0331】
発泡体は、粘着層や他の層との密着性を向上させるため、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理、易接着処理剤の塗布等の表面処理がなされていてもよい。表面処理は、ぬれ試薬によるぬれ指数が36mN/m以上、好ましくは40mN/mとすることで、粘着剤との良好な密着性が得られる。
【0332】
<その他の層>
第1実施態様の粘着テープでは、特に制限はなく、目的に応じて適宜その他の層を設けることもでき、例えば、プライマー層、帯電防止層、不燃層、加飾層、導電層、熱伝導層、離型層などが挙げられる。
【0333】
<粘着テープの形状、特性等>
第1実施態様の粘着テープは、その形状・寸法は特に限定されず、例えば、所定の被着体へ貼り付けるために適した形状・寸法を有する粘着テープ(例えば打ち抜き加工された後の状態の粘着テープ)や、シート状の長尺の粘着テープ(例えば特定の形状に加工される前の粘着テープ)も含まれる。
また、第1実施態様の粘着テープは、例えば被着体への貼付けや被着体からの剥離のために、例えば粘着テープの表面側の粘着層を非粘着のフィルム等で覆ったり、あるいは、表面側の粘着層が形成されていない状態(剥がしたり、又は製造時から形成しない)にすることにより非接着性とした把持領域を任意に設けることができる。
【0334】
粘着テープの厚さとしては、特に制限はなく、粘着層及び第1基材層の厚さなどに応じて適宜選択することができるが、85μm~2400μmであることが好ましく、130μm~840μmであることがより好ましく、150μm~570μmであることが更に好ましく、180μm~500μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「粘着テープの厚さ」とは、粘着テープ中の任意の5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、それら測定値の平均値を指す。
【0335】
粘着テープは、耐衝撃性も優れるものである。耐衝撃性は、例えば、後述する実施例の欄における「耐衝撃性の評価」に記載の方法で確認することができる。耐衝撃性の評価において、粘着テープの剥がれ又は破壊が生じる撃芯の高さとしては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、30cm以上であることが好ましく、40cm以上であることがより好ましく、50cm以上であることが更に好ましく、60cm以上であることが特に好ましい。前記高さが30cm未満であると、十分な耐衝撃性を得ることができない傾向がある。
【0336】
粘着テープの180°ピール接着力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/20mm~50N/20mmが好ましく、15N/20mm~45N/20mmがより好ましく、18N/20mm~40N/20mmが更に好ましい。180°ピール接着力が、前記好ましい範囲内であると、被着体からの剥がれやズレを引き起こさず適度な接着力を有しながら、該粘着テープを引き伸ばして再剥離する際に、容易に引き剥がすことができる。
粘着テープの180°ピール接着力は、JIS Z 0237に準拠して測定して測定した値を指す。
【0337】
<粘着テープの製造方法>
第1実施態様において、粘着テープの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。第1実施態様の粘着テープの製造方法では、粘着層形成工程と、第1基材層形成工程と、発泡体層形成工程と、積層工程とを含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の層形成工程を含む。また、粘着層形成工程と、第1基材層形成工程とを同時に行う多層同時形成工程により製造することもできる。
【0338】
粘着層形成工程は、各粘着層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剥離シートの表面に、ヒートプレス法、押し出し成型によるキャスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などの方法により粘着層を形成する方法などが挙げられる。これらの中でも、押し出し成型によるキャスト法、溶液法が好ましい。
剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0339】
第1基材層形成工程は、第1基材層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートプレス法、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、押し出し成型によるキヤスト法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法が、第1基材層に好適な柔軟性や伸張性を付与する上で好ましい。
なお、第1基材層は、粘着層との密着性をより一層向上させることを目的として、表面処理が施されたものであってもよい。
表面処理法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、表面研磨・摩擦法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線照射処理法、酸化処理法などが挙げられる。
【0340】
発泡体層形成工程では、発泡体層を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、発泡体層形成工程では、例えば、発泡体を形成するための原料を例えば剥離シート上に塗布するように供給する。そして、原料として、例えば塗布後に発泡させるものを用いる場合には、流延する原料の表面に、その上方側から、別の剥離シートを供給する。そして、この積層状態のまま、ロールコーター等を通過させることにより、原料を発泡させつつ厚さを調整する。なお、上方側から供給した剥離シートの使用の有無は、問わないが、この当該剥離シートを用いると、硬化前の発泡体の厚さの調整が容易であり、熱処理後に得られる発泡体の表面にスキン層を形成することができる。
また、原料として、塗布前に発泡させているもの(例えばエマルジョン組成物等)を用いる場合には、原料を離型紙上にドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により塗布して所望の厚さに調整する。
これらの工程により、硬化前の発泡体層の少なくとも一方側に剥離シートが積層された積層物を得ることができる。
その後、この積層物を、熱処理装置により加熱する。これにより硬化や乾燥させて発泡体層を形成することができる。
【0341】
また、発泡体として、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を用いる場合には、ポリオレフィン系樹脂および熱分解型発泡剤を押出し機に供給して溶融混練して原料を得、それを押出し機からシート状に押し出すことによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを形成する。そして当該シートに電子線を照射して樹脂を架橋させ、その後に発泡、延伸、薄肉化させることにより発泡体が得られる。ポリオレフィン系樹脂は、従来公知のものが使用できるが、四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40質量%以上含有するものが好ましい。また、該発泡体を発泡させた後、該発泡シートを厚さ方向にスライスした後に熱ロールで延伸し皮つけして製造してもよい。
【0342】
積層工程は、第1基材層、各粘着層、および発泡体層を積層する工程である。第1基材層、各粘着層、発泡体層を積層する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、粘着層形成工程で形成した剥離シートに付着した状態の粘着層、第1基材層、発泡体層を加圧してラミネートする方法などが挙げられる。具体的には、第1粘着層と第1基材層とをラミネートし、また、第3粘着層と発泡体層とをラミネートする。次いで、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体とを、発泡体層を間に挟むようにしてラミネートすることで、第1実施態様の粘着テープを得ることができる。
【0343】
《第2実施態様の粘着テープ》
本実施形態に係る第2実施態様の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、第2粘着層、発泡体層及び第3粘着層を順に備え、前記第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、前記第1基材層の破断伸度が400~1500%であり、前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体層の引張強度が3.0~15.0MPaである。
第2実施態様の粘着テープは、上述の第1実施態様の粘着テープと比較して、第1基材層と発泡体層との間に第2粘着層を備える点を規定している。本実施形態において、第2粘着層は、粘着テープのうち第1基材層側の部分と、発泡体層側の部分とをつなぎ合わせることを可能とする層である。
第2実施態様の粘着テープを剥がす際には、第2粘着層が第1基材層に追従して伸長することが好ましい。これにより、第2粘着層が、被着体上に残る残留物を低減することができる。
【0344】
以下、第2実施態様の粘着テープについて、上記で説明した第1実施態様の粘着テープと異なる構成要件を説明し、同じ構成要件については説明を省略する。
また、第3実施態様では、第1実施態様及び第2実施態様と同様に、第1基材層に隣り合う粘着層、具体的には第1粘着層、好ましくは第1粘着層および第2粘着層は、上述のようにフィラー粒子を所定量の含むことが好ましい。第3実施態様において、第1基材層に隣り合う粘着層、特に第1粘着層がフィラー粒子を含有することにより、より簡易に粘着テープを剥がすことができるので、剥離作業を容易化することができる。また、第2粘着層もフィラー粒子を含有することにより、後述の第4粘着層との間でも、第1被着体と第2被着体の間から粘着テープを剥がす際に接着力を低減させやすくすることができるので、さらに簡易に粘着テープを剥がすことができる。
【0345】
第2粘着層を形成する粘着剤組成物は、上記の第1実施態様で説明した粘着剤樹脂と同様な粘着剤樹脂を含むことができ、また、上記の第1実施態様と同様に、当該粘着剤樹脂以外にも必要に応じて更に、フィラー粒子、その他の成分を含むことができる。また、第2粘着層は、第1粘着層又は第3粘着層と同じ粘着剤組成物とすることや、異なる粘着剤組成物とすることもできる。さらに、第2粘着層は、第1粘着層又は第3粘着層が有することができる範囲の特性および厚さと同じ範囲の特性および厚さを有することができる。
【0346】
また、第2実施態様では、第1実施態様と同様に、第1基材層に隣り合う粘着層、具体的には第1粘着層、好ましくは第1粘着層および第2粘着層は、上述のようにフィラー粒子を所定量の含むことが好ましい。第2実施態様において、第1基材層に隣り合う粘着層、特に第1粘着層がフィラー粒子を含有することにより、より簡易に粘着テープを剥がすことができるので、剥離作業を容易化することができる。また、第2粘着層もフィラー粒子を含有することにより、第1被着体と第2被着体の間から粘着テープを剥がす際に接着力を低減させやすくすることができるので、さらに簡易に粘着テープを剥がすことができる。
【0347】
<粘着テープの形状、特性等>
第2実施態様の粘着テープは、第1実施態様の粘着テープと同様な形状、特性および厚さを有することができる。
【0348】
<粘着テープの製造方法>
第2実施態様において、粘着テープの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。
具体的には、第2実施態様の粘着テープでは、第1実施態様の粘着テープの製造方法における粘着層形成工程、第1基材層形成工程、発泡体層形成工程と同様にして第1基材層、各粘着層、発泡体層を得ることができる。また、第2実施態様の粘着テープでは、剥離シートに付着した状態の粘着層、第1基材層、発泡体層を加圧しラミネートして粘着テープを得ることができる。具体的には、剥離シートに付着した状態の第1粘着層、第2粘着層を、第1基材層の両面にラミネートし、剥離シートに付着した状態の第3粘着層を、発泡体層の表面にラミネートする。続いて、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体とを、向き合うようにラミネートすることで、第2実施態様の粘着テープを得ることができる。
【0349】
《第3実施態様の粘着テープ》
本実施形態に係る第3実施態様の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、第2粘着層、第4粘着層、発泡体層、第3粘着層を順に備え、前記第1基材層の破断強度が1.0~100.0MPa、前記第1基材層の破断伸度が400~1500%であり、前記発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、前記発泡体層の引張強度が3.0~15.0MPaである。
第3実施態様の粘着テープは、上述の第2実施態様の粘着テープと比較して、第2粘着層と発泡体層との間に第4粘着層を備える点を規定している。したがって、第3実施態様の粘着テープは、上記第2実施態様の粘着テープと比較して、第1被着体、第2被着体の間から粘着テープを剥がす際の作業をより容易にすることができる。
具体的には、第2実施態様の粘着テープを剥がす際には、第2粘着層が第1基材層に追従して伸長し、そのときに、第2粘着層が、被着体上に残る残留物としての発泡体層を、千切りながら剥がれる恐れがある。したがって、第2実施態様の粘着テープでは、第2粘着層が発泡体層を千切りながら剥がれた場合には、第1被着体と第2被着体とを解体したあとに、千切れた発泡体層を含む残留物を被着体から剥がさなければならない。
これに対して第3実施態様の粘着テープでは、隣り合う粘着層の間(第2粘着層と第4粘着層との間)での接着力は、粘着層と第1基材との間の接着力や粘着層と発泡体層との接着力よりも低い傾向がある(粘着層同士ではアンカー効果が発揮されにくいため)ので、第3実施態様の粘着テープでは、第4粘着層の存在により、第1基材層とともに剥がれる第2粘着層が発泡体層を千切ることを低減することができる。したがって、第3実施態様の粘着テープでは、残留物としての発泡体層が千切れにくいので、残留物を簡単に除去でき、剥離作業をより容易化することができる。
【0350】
以下、第3実施態様の粘着テープについて、上記で説明した第1実施態様の粘着テープと異なる構成要件を説明し、同じ構成要件については説明を省略する。
<粘着層>
第3実施態様の粘着テープは、第1実施態様の粘着テープと比較して、発泡体層と第1基材層との間に、第2粘着層及び第4粘着層を備える。より詳細には、第3実施態様の粘着テープは、第1基材層と発泡体層との間において、前記第1基材層側に第2粘着層が配置され、かつ前記発泡層側に第4粘着層が配置される。また、上記第2実施態様の粘着テープ(特に、粘着層)と比較すると、第3実施態様の粘着層の構成は、第2粘着層と発泡体層との間に第4粘着層を備える。第4粘着層は、第2粘着層とともに、粘着テープのうち第1基材層側の部分と、発泡体層側の部分とをつなぎ合わせることを可能とする層である。
第4粘着層を形成する粘着剤組成物は、上記の第1実施態様で説明した粘着剤樹脂と同様な粘着剤樹脂を含むことができ、また、上記の第1実施態様と同様に、当該粘着剤樹脂以外にも必要に応じて更に、フィラー粒子、その他の成分を含むことができる。また、第4粘着層は、第1粘着層、第2粘着層、第3粘着層と同じ粘着剤組成物とすることや、異なる粘着剤組成物とすることもできる。さらに、第4粘着層は、第1粘着層、第2粘着層、第3粘着層が有することができる範囲の特性および厚さと同じ範囲の特性および厚さを有することができる。
【0351】
また、第3実施態様では、第1実施態様又は第2実施態様と同様に、第1基材層に隣り合う粘着層、具体的には第1粘着層、好ましくは第1粘着層および第2粘着層は、上述のようにフィラー粒子を所定量の含むことが好ましい。第3実施態様において、第1基材層に隣り合う粘着層、特に第1粘着層がフィラー粒子を含有することにより、より簡易に粘着テープを剥がすことができるので、剥離作業を容易化することができる。また、第2粘着層もフィラー粒子を含有することにより、第4粘着層との間でも、第1被着体と第2被着体の間から粘着テープを剥がす際に接着力を低減させやすくすることができるので、さらに簡易に粘着テープを剥がすことができる。
【0352】
<粘着テープの形状、特性等>
第3実施態様の粘着テープは、第1実施態様又は第2実施態様の粘着テープと同様な形状、特性および厚さを有することができる。
【0353】
<粘着テープの製造方法>
第3実施態様において、粘着テープの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。
具体的には、第3実施態様の粘着テープでは、第1実施態様の粘着テープの製造方法における粘着層形成工程、第1基材層形成工程、発泡体層形成工程と同様にして第1基材層、各粘着層、発泡体層を得ることができる。また、第3実施態様の粘着テープでは、剥離シートに付着した状態の粘着層、第1基材層、発泡体層を加圧しラミネートして粘着テープを得ることができる。具体的には、剥離シートに付着した状態の第1粘着層、第2粘着層を、第1基材層の両面にラミネートし、剥離シートに付着した状態の第3粘着層、第4粘着層を、発泡体層の両面にラミネートする。続いて、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体とを、第2粘着層と第4粘着層とが向き合うようにラミネートすることで、第3実施態様の粘着テープを得ることができる。
【0354】
《第4実施態様の粘着テープ》
本開示の第4実施態様の粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、第2粘着層、第2基材層、第4粘着層、発泡体層、第3粘着層を順に備え、第1基材層は、破断強度が1.0~100.0MPa、破断伸度が400~1500%であり、発泡体層の発泡体の25%圧縮強度が40~160kPa、引張強度が3.0~15.0MPaである。
第4実施態様の粘着テープは、上述の第3実施態様の粘着テープと比較して、第2粘着層と第4粘着層との間に第2基材層を備える点を規定している。
したがって、第3実施態様の粘着テープは、第2実施態様の粘着テープと比較して、粘着テープをより製造しやすくすることができる。具体的には、第3実施態様の粘着テープは、上述のように、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体とを、第2粘着層と第4粘着層とが向き合うようにラミネートすることで、粘着テープを得ることができる。これに対して、第4実施態様の粘着テープでは、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体をラミネートする前に、一方の積層体の粘着層の表面上に第2基材層を貼り合わせ、次いで、他方の積層体を第2基材層の表面上に貼り合わせることで得ることができる。つまり、第4実施態様の粘着テープでは、第2粘着層及び第4粘着層のそれぞれの粘着層表面が露出した状態で前記第2粘着層と前記第4粘着層とを貼り合わせる作業を行わないので、第1基材層側の積層体と、発泡体層側の積層体とのラミネートをより容易に行うことができる。
また、第4実施態様の粘着テープによれば、粘着テープにより接着した第1被着体と第2被着体を解体する際、各被着体の間から第1基材層を第1粘着層および第2粘着層とともに引き抜いて取り除くと、第2粘着層と第2基材層との界面が剥がれるために、発泡体層の追従により生じる応力を抑制できるため容易に引き抜くことができる。また解体後の各被着体の間には、粘着テープのうち第2基材層を表面に有する残留物が存在し得る。そして、その場合、当該残留物の表面の第2基材層が非粘着性であるので、各被着体間との再接着を避けることができ、接合体の解体をより容易に行うことができる。
【0355】
以下、第4実施態様の粘着テープについて、上記で説明した第1実施態様、第2実施態様及び第3実施形態の粘着テープと異なる構成要件を説明し、同じ構成要件については説明を省略する。
<第2基材層>
第4実施態様の粘着テープは、第3実施態様の粘着テープと比較して、第2粘着層と第4粘着層との間に第2基材層を備える点を規定している。
第2基材層の材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体(特に、樹脂シートを含む積層体)等が挙げられる。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。不織布としては、天然繊維(セルロース系繊維)の不織布;ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエチレン樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維等の合成樹脂繊維の不織布等が挙げられる。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等が挙げられる。紙としては、和紙、クラフト紙等が挙げられる。
第2基材層としては、取り扱いの容易性の観点から、上記の中でも樹脂シートが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレートにより構成される樹脂シートである。
【0356】
第2基材層の厚さは、特に限定されないが、例えば、2~200μmであることが好ましく、より好ましくは5~100μmであり、更に好ましくは10~50μm、よりいっそう好ましくは10~30μmである。
【0357】
また、第2基材層の破断伸度が500%以下であり、好ましくは400%以下、より好ましくは300%以下である。破断伸度が500%以下であることにより、粘着テープを用いて接合した被着体の解体を容易にすることができる。
【0358】
<粘着テープの形状、特性等>
第4実施態様の粘着テープは、第1実施態様、第2実施態様又は第3実施態様の粘着テープと同様な形状、特性および厚さを有することができる。
【0359】
<粘着テープの製造方法>
第4実施態様において、粘着テープの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。
具体的には、第4実施態様の粘着テープでは、第1実施態様の粘着テープの製造方法における粘着層形成工程、第1基材層形成工程、発泡体層形成工程と同様にして第1基材層、各粘着層、発泡体層を得ることができる。また、第4実施態様の粘着テープでは、剥離シートに付着した状態の粘着層、第1基材層、第2基材層、発泡体層を加圧しラミネートして粘着テープを得ることができる。具体的には、剥離シートに付着した状態の第1粘着層、第2粘着層を、第1基材層の両面にラミネートし、剥離シートに付着した状態の第3粘着層、第4粘着層を、発泡体層の両面にラミネートする。続いて、第1基材層側の積層体の第2粘着層の表面上、又は、発泡体層側の積層体の第4粘着層の表面上に、第2基材層を貼り合わせる。次いで、第2粘着層と第4粘着層とが第2基材層を挟んで向き合うように、第2基材層を貼り合わせた積層体の表面上に、第2基材層を貼り合わせていない積層体を貼り合わせ、ラミネートすることで、第4実施態様の粘着テープを得ることができる。
【0360】
《粘着テープの用途》
本実施形態の粘着テープは、薄型テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器を構成する板金同士の固定や外装部品と筐体との固定、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器への外装部品や電池等の剛体部品の固定などのような各産業分野での部品固定や該部品の仮固定、並びに製品情報を表示するラベルなどの用途に好適に使用できる。
【0361】
〔接合体〕
本実施形態の接合体は、上記の本発明に係る実施形態の粘着テープと、当該粘着テープの前記第1粘着層の表面上に接着する第1被着体と、当該粘着テープの第3粘着層の表面上に接着する第2被着体とを備える。本実施形態の接合体によれば、粘着テープの剥離作業が容易であり、接合体中の被着体間の接着を十分維持することができる。
ここで、本実施形態の接合体は、より具体的には、上記の第1実施態様の粘着テープ(第1実施態様の接合体)と、又は上記の第2実施態様の粘着テープ又は第3実施態様の粘着テープを用いた接合体(第2実施態様の接合体)と、上記の第4実施態様の粘着テープを用いた接合体(第3実施態様の接合体)とを含む。
【0362】
<第1被着体、第2被着体>
第1被着体および第2被着体は、特に限定されなく、例えば、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野で用いられる製品を構成する構成物とすることができる。第1被着体および第2被着体の組み合わせの例としては、例えば、一方の被着体を、それら製品の筐体とし、他方の被着体を、それら製品に組み込む電池、電子部品、構造部品、表示素子等の部品とする場合が挙げられる。そして、それらの第1被着体および第2被着体を、粘着テープにより固定又は仮固定することができる。或いは、第1被着体および第2被着体の組み合わせの例としては、例えば、一方の被着体を、製品情報等が表されたラベルを表示する表示部とし、他方の被着体を、当該ラベルとすることもできる。
また、具体的な第1被着体および第2被着体の表面を形成する材料としては、第1被着体および第2被着体によって任意にすることができるが、例えば樹脂製又は金属製とすることができる。
【0363】
第1被着体のうち、粘着テープが貼り付けられる第1貼付け面、第2被着体のうち、粘着テープが貼り付けられる第2貼付け面は、平滑な平面とすることができるが、貼付け面は曲面であってもよい。
【0364】
〔接合体の解体方法〕
本実施形態の接合体の解体方法は、上記の本発明に係る実施形態の接合体を解体する方法であって、第1被着体から第2被着体を分離する工程を備える。本実施形態の接合体の解体方法によれば、接合体を容易に解体することができる。
ここで、本実施形態の接合体の解体方法は、より具体的には、上記の第1実施態様の接合体を解体するための方法(第1実施態様の接合体の解体方法)と、上記の第2実施態様の接合体を解体するための方法(第2実施態様の接合体の解体方法)と、上記の第3実施態様の接合体を解体するための方法(第3実施態様の接合体の解体方法)とを含む。
【0365】
《第1実施態様の接合体の解体方法》
第1実施態様の接合体の解体方法は、上記の第1実施態様の接合体の解体方法であって、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させて、第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える。なお、第1実施態様で用いられている粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、発泡体層、第3粘着層を順に備える。
第1実施態様の接合体の解体方法では、第1被着体から第2被着体を分離(解体)するために、具体的には、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させることにより、第1基材層とともに少なくとも第1粘着層(好ましくは第1粘着層)が第1被着体と第2被着体との間から剥がされる(抜き取られる)。これにより、第1被着体から第2被着体を分離(解体)可能となる。この際、発泡体層は、第1基材層のように伸長しにくいので、発泡体層および第3粘着層は、被着体に貼り付いたままになり残留物になり得る。この場合には、例えば、第1被着体から第2被着体を分離(解体)したあとに、当該残留物を取り除くことができる。
【0366】
なお、第1実施態様において、第1被着体から第2被着体を分離(解体)するために、粘着テープの第1基材層以外の層、例えば発泡体層も伸長させてもよいが、第1基材層を伸長させると、発泡体層がそれに追従して伸長しにくいので、途中で発泡体層が千切れる恐れがある。
【0367】
《第2実施態様の接合体の解体方法》
第2実施態様の接合体の解体方法は、上記の第2実施態様の接合体の解体方法であって、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させて、第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える。なお、第2又は第3実施態様で用いられている粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、第2粘着層、発泡体層、第3粘着層を順に備え、必要により前記第2粘着層と前記発泡体層との間に第4粘着層をさらに備える。
第2実施態様の接合体の解体方法では、第1被着体から第2被着体を分離(解体)するために、具体的には、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させることにより、第1基材層とともに少なくとも第1粘着層(好ましくは第1粘着層及び第2粘着層)が第1被着体と第2被着体との間から剥がされる(抜き取られる)。これにより、第1被着体から第2被着体を分離(解体)可能となる。この際、発泡体層は、第1基材層のように伸長しにくいので、発泡体層および第3粘着層は、被着体に貼り付いたままになり残留物になり得る。この場合には、例えば、第1被着体から第2被着体を分離(解体)したあとに、当該残留物を取り除くことができる。
【0368】
なお、第2実施態様において、第1被着体から第2被着体を分離(解体)するために、粘着テープの第1基材層以外の層、例えば発泡体層も伸長させてもよいが、第1基材層を伸長させると、発泡体層がそれに追従して伸長しにくいので、途中で発泡体層が千切れる恐れがある。
また、粘着テープが第2粘着層を備えるため、第2粘着層と発泡層との接着力は、第1基材層と第2粘着層との接着力よりも相対的に低いので、第1基材層を伸長させた際、第2粘着層も第1基材層に追従して剥がれる傾向がある。
また、粘着テープが第4粘着層を備える場合には、第2粘着層と第4粘着層との接着力は、第1基材層と第2粘着層との接着力、第4粘着層と発泡体層との接着力よりも相対的に低いので、第1基材層を伸長させた際、第2粘着層も第1基材層に追従して剥がれ、第4粘着層は発泡体層とともに被着体に貼り付いたままになる傾向がある。
【0369】
《第3実施態様の接合体の解体方法》
第3実施態様の接合体の解体方法は、上記の第3実施態様の接合体の解体方法であって、粘着テープのうち第2基材層を第2被着体の表面上に残しながら、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させて、第1被着体から前記第2被着体を分離する工程を備える。なお、第3実施態様で用いられている粘着テープは、第1粘着層、第1基材層、第2粘着層、第2基材層、第4粘着層、発泡体層、第3粘着層を順に備える。
第3実施態様の接合体の解体方法は、第1被着体から第2被着体を分離(解体)するために、具体的には、第2基材層を第2被着体の表面上に残しながら、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させることにより、第1基材層とともに、少なくとも第1粘着層(好ましくは第1粘着層と第2粘着層)が第1被着体と第2被着体との間から剥がされる(抜き取られる)。第2実施態様において、第2基材層を第2被着体の表面上に残す方法としては、第1基材層を伸長させ第1被着体と第2被着体との間から取り除く際、第2基材層を取り除かないようにすること、より具体的には第2基材層を第1基材層とともに引っ張らない、又は、引っ張り続けないようにすることが挙げられる。
第3実施態様の接合体の解体方法において、少なくとも第1粘着層が第1被着体と第2被着体との間から剥がされた際、第2基材層、第4粘着層、発泡体層および第3粘着層は、被着体に貼り付いたままになり残留物になる。したがって、第1被着体から第2被着体を分離(解体)したあとに、当該残留物を取り除く。
【0370】
なお、第3実施態様では、第1基材層を第1粘着層と第2粘着層とともに剥がし取ったときに、第1被着体と第2被着体の間に、第2基材層を表面に有する粘着テープの残留物が存在することとなるが、第2基材層が非粘着性であるので第1被着体と第2被着体との再接着を避けることができ、より容易に解体することができる。
また、第3実施態様において、粘着テープ中に例えば第2基材層を千切れやすい基材を用いた場合には、粘着テープのうち少なくとも第1基材層を伸長させる際、第1基材層ととともに第2基材層等(例えば粘着テープのすべての層)も一緒に伸長させてもよい。この場合、伸長途中で第2基材層等(例えば、粘着テープのうち、第2基材層、第4粘着層、発泡体層、第3粘着層を含む部分)が千切れるので、第2基材層等を含む残留物を第2被着体の表面上に残しながら、第1基材層を第1粘着層と第2粘着層とともに剥ぎ取ることができる。
【0371】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の粘着テープは、上記の例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0372】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
【0373】
各実施例および比較例で得られた粘着テープの測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0374】
(1)基材層の破断強度、破断伸度の測定
各基材層を、標線長さ20mm、幅5mmのダンベル状に打ち抜き、測定雰囲気23℃、50%RHの条件で、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、引張速度500mm/分間で長さ方向に引っ張ることで、基材層の破断強度、及び破断伸度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0375】
(2)基材層、粘着層、発泡体層の厚さの測定
基材層、粘着層、発泡体層中の任意の5点の厚さをTH-104 紙・フィルム用厚さ測定機(テスター産業株式会社製)を用いて測定した。それら測定値を平均して得られた値を基材層および粘着層の厚さとした。
【0376】
(3)25%圧縮強度の測定
50mm角に切断した発泡体を厚さ約10mmになるまで重ね合わせ、当該発泡体より大きな面積の板ではさんだ。23℃下で10mm/分の速度で発泡体を約2.5mm(もとの厚さの25%分)圧縮させ停止し、20秒経過後の強度を測定し、当該強度を25%圧縮強度とした。また、当該強度は、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定した。
【0377】
(4)発泡体層の引張強度の測定
発泡体層の発泡体を標線長さ2cm、幅1cmに切断した試験片を、テンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、23℃・50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した。得られた測定値のうち最大強度を引張強度とした。
【0378】
(5)伸張剥離性の評価
各粘着テープを、長さ60mm、幅10mmに切断した。このうち、長さ10mm、幅10mmを掴み手としてはみ出させた状態で、雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記粘着テープの一方の面(第3粘着層側)に清潔で表面が平滑なアルミ板(長さ150mm、幅50mm、厚さ2mm、合金番号A1050)に貼付した。次に、前記粘着テープにおける前記アルミ板を貼付した面とは反対側の面(第1粘着層側)に、清潔で表面平滑なアクリル板(長さ150mm、幅50mm、厚さ2mm、アクリライトL、色調:無色、三菱レイヨン株式会社製)を貼付し、前記アルミ板と、前記粘着テープと、前記アクリル板との積層構造物に対して5kgの荷重を加えながらローラーで1往復加圧して圧着させた後、雰囲気23℃、50%RHの条件下で3日間静置したものを試験片とした。
雰囲気23℃、50%RHの条件下で、前記試験片における前記粘着テープの掴み手部分(第1粘着層、第1基材層、第2粘着層)を該粘着テープの貼付面に対して水平方向にテンシロン引張試験機(型式:RTF-1210、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて引張速度300mm/分間の速度で引き伸ばした。
上記方法による試験を10回行い、下記評価基準に基づき再剥離性(伸張剥離性)を評価した。結果を下記表1~3に示す。
[評価基準]
◎:少なくとも第1基材層切れずにアクリル板とアルミ板の間から引き抜くことができる回数が、10回中、9回以上であった。
○:少なくとも第1基材層切れずにアクリル板とアルミ板の間から引き抜くことができる回数が、10回中、5~9回であった。
×:少なくとも第1基材層切れずにアクリル板とアルミ板の間から引き抜くことができる回数が、10回中、4~1回であった。
×:少なくとも第1基材層切れずにアクリル板とアルミ板の間から引き抜くことができる回数が、10回中、0回であった。
なお、◎及び○が、使用上問題がないものである。
【0379】
(6)厚み方向への追従性の評価方法
実施例及び比較例で得た粘着テープを、外形50mm×40mmで、幅1mmの額縁状に裁断した。裁断した粘着テープの第1粘着層を、中央部に直径10mmの穴が開いたステンレス板1(厚さ2mm、外形65mm×45mm)に貼付した。
次に、上記の粘着テープの第3粘着層を、ステンレス板2(厚さ2mm、外形65mm×45mm)と23℃下で貼り合わせ、50N/cmの荷重で5秒間加圧した後、23℃環境下で24時間放置することによって接合体を得た。
続いて、上記で得た接合体のステンレス板1とステンレス板2の間の距離が、粘着テープの厚みに対して+0.00mm、+0.05mm、+0.10mm、+0.15mm、+0.20mm・・・、+0.50mmとなる様に、0.05mm刻みの厚さのスペーサーを使用して粘着テープの厚み方向への追従性を評価するための追従性評価サンプルを作製した。追従性評価サンプルを23℃,50%RH環境下で48時間放置した後に、ステンレス板1の中央部の穴から15kPaの空気内圧を5秒間かけ、空気漏れの有無を評価した。
◎:粘着テープの厚さの1.30倍の間隙を設けた場合であっても
空気漏れがまったく確認されなかった。
○:粘着テープの厚さの1.25倍の間隙を設けた場合であっても
空気漏れがまったく確認されなかった。
△:粘着テープの厚さの1.20倍の間隙を設けた場合であっても
空気漏れがまったく確認されなかった。
×:粘着テープの厚さの1.20倍の間隙を設けた場合に空気漏れが確認された。
【0380】
(7)摩擦力の測定
粘着テープの粘着層の摩擦力(23℃)は、JIS K7125に定義される測定装置に準拠して測定をした。滑り片としては、片側にフェルトを備えたステンレス製プレート(40cm、200g荷重)と綿帆布#9とが、両面テープ(DIC製#8800CH)を介して前記フェルト面及び前記綿帆布#9が向かいあって貼り合わされたものを準備した。なお、ここでいう綿帆布#9とは、9号綿帆布[(旧JIS L3102を準用)原糸撚り(経糸10/2、緯糸10/3)、密度(経糸44~48本/inch、緯糸33~37本/inch)、重さ510g/m)]をいう。続いて、評価に使用する粘着テープを幅100mm×長さ200mmのサイズにカットし、粘着テープの測定対象の粘着層表面が上向きになる様に平滑で水平な試験テーブルに固定した。滑り片が粘着テープの測定対象の粘着層表面の上を滑るときの応力値を測定する。なお、本測定方法によって得られる応力値は、粘着層表面に対する摩擦力が高いことから静摩擦力が連続的に測定された状態となる。このため、応力値と滑り片の移動距離のグラフを作成し、比較的応力値が安定している移動距離範囲から移動距離50mm分の応力値を抽出し、抽出した応力値のピーク値の算術平均を摩擦力とした。
【0381】
(8)平均粒径及び数平均1次粒子径の測定
(平均粒径の測定)
レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより、粘着剤用組成物に使用するフィラー粒子の平均粒径を測定した。
(数平均1次粒子径の測定)
液体窒素下で冷却させた粘着テ-プをミクロト-ムにより無作為に3箇所切断し、3個の断片をサンプルとした。そして、それぞれのサンプルに対して走査型電子顕微鏡を用いて倍率400倍の写真を撮影した後、撮影された3枚の写真から、中実体の粒子をフィラーと選別した。その後、画像解析ソフトを用いて二値化処理(例えば大津の二値化処理)により算出した中実体の断面積を円の面積とみなし、中実体それぞれの円相当径を測定した。そして、3枚の写真内の中実体の合計個数とそれぞれに対応する円相当径とを算出して、以下の式(A)からフィラー粒子の数平均1次平均粒子径を算出した。
【数3】
(上記数式(A)中、nは中実体であるフィラー粒子の合計数を表し、Σdは撮影した写真中の中実体の外径に囲まれた領域の面積から算出した円相当径の総和を表す。)また、数平均1次平均粒子径の測定には、日立卓上顕微鏡MiniscopeTM3030Plusを使用した。
【0382】
続いて、実施例、比較例で用いた各材料等は下記のとおりである。
<基材用材料>
・基材用材料(1)(SIS)
基材用材料(1)として、SIS樹脂(日本ゼオン株式会社製、クインタック3620)を用いた。
・基材用材料(2)(SEEPS)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン3,000mL、開始剤として濃度10.5質量%のsec-ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液)9.2mLを仕込み、60℃に昇温した後、スチレンを100mL加えて60分間重合した。
その後、同温度で、イソプレン270mLおよびブタジエン350mLを加え、その後90分間反応させた。続いて、同温度でスチレン100mLを添加して60分間重合させた後、メタノール0.52mLで重合を停止し、ブロック共重合体を含む重合反応液を得た。
この反応混合液に水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を29.3g添加し、水素圧力2MPa、150℃で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより基材用材料(2)を得た。
得られた基材用材料(2)は、スチレン含有量が30質量%、重量平均分子量が98000、分子量分布が1.03、水素添加率が98%であった。
【0383】
・基材用材料(3)(ウレタン)
基材用材料(3)として、エステル系ポリウレタンシート(日清紡テキスタイル株式会社製、モビロンフィルムMF50T、厚さ50μm)を用いた。
【0384】
・基材用材料(4)(PET)
基材用材料(4)として、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーS10、厚さ12μm)を用いた。
【0385】
・基材用材料(5)(PET)
基材用材料(5)として、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーS10、厚さ50μm)を用いた。
【0386】
<フィラー粒子>
・フィラー粒子(1)(シリコーン系フィラー)
フィラー粒子(1)として、シリコーン複合粒子(信越化学工業株式会社製KMP-601、平均粒径12μm)を用いた。
【0387】
・フィラー粒子(2)(シリコーン系フィラー)
フィラー粒子(2)として、シリコーン複合粒子(信越化学工業株式会社製KMP-602、平均粒径30μm)を用いた。
【0388】
<粘着剤樹脂>
・粘着剤樹脂(1)(アクリル)の調製方法
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート15質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、及び酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら65℃まで昇温させて混合物(1)を得た。次に、前記混合物(1)に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビスイソブチロニトリル溶液4質量部(固形分2.5質量%)を添加し、攪拌下、65℃で10時間ホールドして混合物(2)を得た。次に、前記混合物(2)を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量160万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(1)溶液を得た。
次に、前記アクリル共重合体溶液(1)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(D-125、荒川化学工業株式会社)5質量部と石油系粘着付与樹脂(FTR(登録商標)6125、三井化学株式会社製)15質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分35質量%の粘着剤樹脂(1)を含む粘着剤樹脂溶液(1)を得た。
【0389】
・粘着剤樹脂(2)(アクリル)の調製方法
アルゴンで内部を置換した内容積1000mlのフラスコ内に、乾燥トルエン500mlと、重合開始剤としてのビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウム・テトラヒドロフラナート錯体〔(CMeSmMe(THF)〕0.75gの乾燥トルエン溶液80mlを加えて混合溶液を調製した。当該混合溶液に対して、0℃でメタクリル酸メチル(MMA)を12.0ml加え、0℃で30分間攪拌した。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングした(サンプル1)。上記のMMAの重合後、重合反応系を-78℃まで冷却し、アクリル酸n-ブチル(nBA)88.0mlを第2番目のモノマーとして加え、-78℃で3時間攪拌を行った。そして、系中から20mlの溶液をサンプリングした(サンプル2)。上記のnBAの重合後、この重合系にMMA12.0mlを第3番目のモノマーとして-78℃で添加して溶液を攪拌した。溶液が均一になった後、0℃に昇温して、さらに1時間攪拌した。得られた反応混合液に、メタノールを50ml加えて室温で2時間反応させることによって重合を停止した。この重合停止後の反応溶液を大量のヘキサン中に注ぎ、析出した白色沈殿物を得た。そして、白色沈殿物の一部をサンプリングした(サンプル3)。
【0390】
上記サンプル1~3中の各重合体について、NMR測定、DSC測定、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)測定を行った。そして、当該測定結果に基づいて、数平均分子量(Mn)、PMMA/PnBA(ポリメタクリル酸メチルブロック/ポリアクリル酸n-ブチルブロック)比等を求めたところ、上記の白色沈殿物はポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロック-ポリアクリル酸n-ブチル(PnBA)ブロック-ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ブロックのトリブロック共重合体(PMMA-b-PnBA-b-PMMA、以下、トリブロック共重合体(1)と称する。)であることが確認された。また、トリブロック共重合体(1)のPMMAブロック部のシンジオタクチシティーは71%であり、同ブロック部のガラス転移温度は113.7℃であり、PnBAブロック部のガラス転移温度は-46.8℃であり、共重合体全体のMnは95936であり、共重合体全体のMw/Mn(分子量分布)は1.09であり、各重合体ブロックの割合はPMMA(11重量%)-PnBA(78重量%)-PMMA(11重量%)であることが確認された。
上記で得られた白色沈殿物を酢酸エチルで希釈することによって固形分45質量%の粘着剤樹脂(2)を含む粘着剤樹脂溶液(2)を得た。
【0391】
<粘着剤組成物>
・粘着剤組成物(1)
上記で得られた粘着剤樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して、フィラー粒子(1)を30質量部添加した。続いて、フィラー粒子(1)を含有させた溶液に架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)を、前記粘着剤樹脂溶液(1)100質量部を基準に1.3質量部添加し、均一になるよう攪拌混合した後、酢酸エチルを添加することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(1)を得た。
【0392】
・粘着剤組成物(2)
上記で得られた粘着剤樹脂溶液(2)の固形分100質量部に対して、フィラー粒子(1)を30質量部添加し、均一になるよう攪拌混合した後、酢酸エチルを添加することによって固形分45質量%の粘着剤組成物(2)を得た。
【0393】
・粘着剤組成物(3)
上記で得られた粘着剤樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して、フィラー粒子(2)を30質量部添加した。続いて、フィラー粒子(2)を含有させた溶液に架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)を、前記粘着剤樹脂溶液(1)100質量部を基準に1.3質量部添加し、均一になるよう攪拌混合した後、酢酸エチルを添加することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(3)を得た。
【0394】
・粘着剤組成物(4)
上記で得られた粘着剤樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して、架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)を、1.3質量部と酢酸エチルを添加することによって固形分40質量%の粘着剤組成物(4)を得た。
【0395】
<発泡体>
・発泡体(1)(PEフォーム)
黒色ポリオレフィン系発泡体(厚さ:150μm、発泡倍率3倍、25%圧縮強度:70kPa、引張強度:10MPa)を準備した。
【0396】
・発泡体(2)(PEフォーム)
黒色ポリオレフィン系発泡体(厚さ:150μm、発泡倍率2.2倍、25%圧縮強度:150kPa、引張強度:14MPa)を準備した。
【0397】
・発泡体(3)(PEフォーム)
黒色ポリオレフィン系発泡体(厚さ:150μm、発泡倍率5倍、25%圧縮強度:190kPa、引張強度:5MPa)を準備した。
【0398】
・発泡体(4)(PEフォーム)
黒色ポリオレフィン系発泡体(厚さ:100μm、発泡倍率1.9倍、25%圧縮強度:50kPa、引張強度:16MPa)を準備した。
【0399】
続いて、実施例、比較例を説明する。
〔実施例1〕
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって第1粘着層および第2粘着層用の粘着層を作製した。
次に、前記基材用材料(1)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって第1基材層を作製した。
前記第1基材層の離型ライナーを剥離後、表面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした該第1基材層の両面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせることで第1粘着層と第2粘着層を形成し、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、粘着剤組成物(4)を離型ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃3分間乾燥し第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を形成した。
次に、発泡体層として発泡体(1)を準備し、コロナ処理でぬれ指数60mN/mとした両面に、前記第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を1枚ずつ貼り合わせたのち、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、前記基材用材料(4)を第2基材層として準備し、その片面に、上記で熟成を終えた第2粘着層を貼り合わせた後、第2基材層のもう一方の面に、上記で熟成を終えた第4粘着層を貼り合わせ、線圧5kg/cmのロールでラミネートすることによって、粘着テープ(1)を製造した。
【0400】
〔実施例2〕
第1基材層を基材用材料(1)の代わりに、前記基材用材料(2)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ(2)を得た。
【0401】
〔実施例3〕
基材用材料(3)を第1基材層として使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ(3)を得た。
【0402】
〔実施例4〕
第1粘着層と第2粘着層用の粘着剤組成物として粘着剤組成物(1)の代わりに、前記粘着剤組成物(2)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ(4)を得た。
【0403】
〔実施例5〕
第1粘着層と第2粘着層用の粘着剤組成物として粘着剤組成物(1)の代わりに、前記粘着剤組成物(3)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ(5)を得た。
【0404】
〔実施例6〕
発泡体層として発泡体(1)の代わりに、前記発泡体(2)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ(6)を得た。
【0405】
〔実施例7〕
発泡体層として発泡体(1)の代わりに、前記発泡体(3)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ(7)を得た。
【0406】
〔実施例8〕
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって第1粘着層および第2粘着層用の粘着層を作製した。
次に、前記基材用材料(2)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって第1基材層を作製した。
前記第1基材層の離型ライナーを剥離後、表面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした該第1基材層の両面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせることで第1粘着層と第2粘着層を形成し、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、粘着剤組成物(4)を離型ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃3分間乾燥し第3粘着層用の粘着層を形成した。
次に、発泡体層として発泡体(1)を準備し、コロナ処理でぬれ指数60mN/mとした片面に、前記第3粘着層用の粘着層を貼り合わせたのち、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、上記で熟成を終えた第2粘着層を上記で第3粘着層を貼り合わせた発泡体層の第3粘着層とは反対側の面に貼り合わせ、線圧5kg/cmのロールでラミネートすることによって、粘着テープ(8)を製造した。
【0407】
〔実施例9〕
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって第1粘着層用の粘着層を作製した。
次に、前記基材用材料(2)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって第1基材層を作製した。
前記第1基材層の離型ライナーを剥離後、表面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした該第1基材層の片面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせることで第1粘着層を形成し、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、粘着剤組成物(4)を離型ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃3分間乾燥し第3粘着層用の粘着層を形成した。
次に、発泡体層として発泡体(1)を準備し、コロナ処理でぬれ指数60mN/mとした片面に、前記第3粘着層用の粘着層を貼り合わせたのち、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、上記で作成した第1粘着層付き第1基材層の第1粘着層とは反対側の面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした後に、前記で作成した第三粘着層付き発泡体層の第三粘着層とは反対側の面に貼り合わせ、線圧5kg/cmのロールでラミネートすることによって、粘着テープ(9)を製造した。
【0408】
〔実施例10〕
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって第1粘着層および第2粘着層用の粘着層を作製した。
次に、前記第1基材用材料(2)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって第1基材層を作製した。
前記第1基材層の離型ライナーを剥離後、表面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした該第1基材層の両面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせることで第1粘着層と第2粘着層を形成し、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、粘着剤組成物(4)を離型ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃3分間乾燥し第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を形成した。
次に、発泡体層として発泡体(1)を準備し、コロナ処理でぬれ指数60mN/mとした両面に、前記第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を1枚ずつ貼り合わせたのち、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成した。
続いて、上記で熟成を終えた第2粘着層に上記で熟成を終えた第4粘着層を貼り合わせ、線圧5kg/cmのロールでラミネートすることによって、粘着テープ(10)を製造した。
【0409】
〔比較例1〕
第1基材層を基材用材料(1)の代わりに、前記基材用材料(5)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ(11)を得た。
【0410】
〔比較例2〕
粘着剤組成物(4)を離型ライナー上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃3分間乾燥し第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を形成した。
次に、発泡体層として発泡体(1)を準備し、コロナ処理でぬれ指数60mN/mとした両面に、前記第3粘着層および第4粘着層用の粘着層を1枚ずつ貼り合わせたのち、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成することによって、粘着テープ(12)を製造した。
【0411】
〔比較例3〕
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって第1粘着層および第2粘着層用の粘着層を作製した。
次に、前記第1基材用材料(1)にトルエンを添加して均一になる様に攪拌し、アプリケーターにより乾燥後の厚みが50μmになるように離型ライナー上に塗布し、60℃にて5分間乾燥させることによって第1基材層を作製した。
前記第1基材層の離型ライナーを剥離後、表面をコロナ処理でぬれ指数60mN/mとした該第1基材層の両面に、離型ライナーを剥離した前記粘着層を貼り合わせることで第1粘着層と第2粘着層を形成し、線圧5kg/cmのロールでラミネートし、40℃で48時間熟成することによって、粘着テープ(13)を製造した。
【0412】
〔比較例4〕
発泡体層として発泡体(1)の代わりに、前記発泡体(4)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ(14)を得た。
得られた粘着テープを上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
【0413】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0414】
本発明によれば、剥離作業の容易化と、厚さ方向への耐剥がれ性とを両立した粘着テープ、粘着テープの剥離作業が容易化され、且つ、被着体間の接着を十分維持可能な接合体、および、当該接合体を容易に解体するための接合体の解体方法、を提供することができる。