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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094897
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】浮遊選鉱方法、浮遊選鉱システム
(51)【国際特許分類】
   B03D 1/02 20060101AFI20220620BHJP
   B03D 1/24 20060101ALI20220620BHJP
   B03D 1/008 20060101ALI20220620BHJP
   B03D 1/004 20060101ALI20220620BHJP
   B03D 103/02 20060101ALN20220620BHJP
   B03D 101/04 20060101ALN20220620BHJP
   B03D 101/02 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
B03D1/02 104
B03D1/02 108
B03D1/24 102
B03D1/008
B03D1/004
B03D103:02
B03D101:04
B03D101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105851
(22)【出願日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2020207398
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠二
(57)【要約】
【課題】粒径25μm以下程度の粒子を含む微細な鉱物粒子を対象とした場合であっても、効率的に浮遊選鉱処理を行うことができる浮遊選鉱方法を提供すること。
【解決手段】鉱物粒子を浮遊選鉱処理によって分離回収する浮遊選鉱方法であって、処理対象液中に、気泡径200μm以下の微細気泡及び前記微細気泡よりも径の大きい気泡を用いて、鉱物粒子を浮上させる、浮遊選鉱方法とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物粒子を浮遊選鉱処理によって分離回収する浮遊選鉱方法であって、
前記浮遊選鉱処理は、前記鉱物粒子を含有する処理対象液中に、気泡径200μm以下の微細気泡及び前記微細気泡よりも径の大きい気泡を用いて、前記鉱物粒子を前記処理対象液の浮上させる、浮遊選鉱方法。
【請求項2】
前記微細気泡は1μm以上200μm以下の微細気泡である請求項1に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項3】
浮遊選鉱装置に微細気泡発生装置を付設し、該微細気泡発生装置から前記微細気泡を処理対象液中に発生させ、
前記浮遊選鉱装置から、前記微細気泡より径の大きい気泡を前記処理対象液中に発生させる、
請求項1又は2に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項4】
前記処理対象液内における前記微細気泡と前記微細気泡より径の大きい気泡のそれぞれの流量を調整する工程を行う、
請求項3に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項5】
前記微細気泡発生装置と前記浮遊選鉱装置には、流量バルブがそれぞれ個別に設けられており、各装置から発生する気泡の流量を個別に調整することができる、
請求項4に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項6】
前記微細気泡発生装置と前記浮遊選鉱装置には、それぞれ個別に加圧気体供給装置が接続されている、
請求項4又は5に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項7】
前記鉱物粒子は、25μm以下の粒子を含む、
請求項2から6の何れか一項に記載の浮遊選鉱方法。
【請求項8】
鉱物粒子を浮遊選鉱処理によって分離回収する浮遊選鉱システムであって、
前記鉱物粒子を含む処理対象液中に、気泡径200μm以下の微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、
前記処理対象液を貯留して槽内で前記鉱物粒子を前記処理対象液の上方に浮上させる浮遊選鉱槽と、前記微細気泡よりも径の大きい気泡を前記処理対象液中に導入する気泡発生部と、を有する浮遊選鉱装置と、を備える、
浮遊選鉱システム。
【請求項9】
前記微細気泡は1μm以上200μm以下の微細気泡である請求項8記載の浮遊選鉱システム。
【請求項10】
前記浮遊選鉱装置と前記微細気泡発生装置には、流量バルブがそれぞれ個別に設けられており、各装置から発生する気泡の流量を個別に調整することができる、
請求項8又は9に記載の浮遊選鉱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊選鉱方法、及び、その方法に用いる浮遊選鉱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山から採掘された鉱石中に含まれる鉱物は、有用鉱物(目的金属を多く含む鉱物)と脈石鉱物(目的金属をほとんど含まない鉱物)に大別される。又、鉱石から目的金属を回収する最初の処理として選鉱処理があり、鉱物表面の疎水性、親水性の差を利用した浮遊選鉱処理が広く行われている。
【0003】
図1に例示する浮遊選鉱処理では、硫化銅鉱鉱山で採鉱された鉱石を、破砕及び磨鉱(破砕後に得られた粒子表面の付着物や酸化被膜等を除去する操作)を行って得た鉱物粉末を鉱物スラリーとし、粗選(第1段階の浮遊選鉱処理)及び精選(第2段階の浮遊選鉱処理)を行うことにより、各段階で浮鉱と尾鉱とに分離する。そして、浮鉱を有用鉱物として物理的に分離して回収し、尾鉱は尾鉱ダムに貯留する。
【0004】
浮遊選鉱処理における浮鉱の分離は、鉱物スラリーに気泡を導入して、その気泡に疎水性の表面をもつ鉱物粒子を付着させて鉱物スラリー表面まで上昇させることによって行われる。尚、鉱物粒子が付着して鉱物スラリー表面に浮遊した泡を「フロス」という。「浮鉱として分離する」とは、鉱物スラリーの表面からフロスを溢れさせて回収する、或いは、ヘラ等によりフロスをかきとって回収することを指す。
【0005】
又、浮遊選鉱処理において、親水性の表面をもつ鉱物粒子は、鉱物スラリー中を沈降する。この鉱物スラリーは、固液分離することにより、尾鉱として分離される。従って、このような浮遊選鉱処理を行う場合、有用鉱物は、浮鉱として回収されるように、その表面を疎水性となるように調整する。
【0006】
ここで、市販の浮遊選鉱機で発生させることができる一般的な気泡径は、最小で数mm程度以上である。そして、この程度の径の気泡に付着しやすく、浮鉱として分離させやすい鉱物粒子は、粒径が上記の一般的な気泡の10分の1から数分の1程度(具体的に、粒径数十μmから200μm程度)の粒子である。しかしながら、近年は優良な鉱石が減少していることに伴い、100μm程度から1mm程度の粒径で効率的な浮遊選鉱処理の処理により分離できる鉱石は減少しており、100μm程度以下の小さな粒径(例えば、粒径20μm以下程度の粒子)となるまで破砕することを必要とする鉱石が増えている。
【0007】
浮遊選鉱機内に存在する気泡と比較すると非常に粒径が小さい上述の鉱物粒子は、疎水性の表面をもつ有用な鉱物粒子であっても、上述の一般的な粒径(最小で数mm程度以上)の気泡には付着することができない。特許文献1には、放射性金属物質を含む微細粒子を回収する装置及び方法であって、吸着剤や凝集剤を使用することなく、汚染した濁水から放射性金属物質を含む微細粒子を回収することができ、泡沫による放射性金属物質を含む微細粒子の回収と、フロックによる放射性金属物質を含む微細粒子の回収と、放射性金属物質がほとんど含まれない大径粒子の回収と、放射性金属物質がほとんど含まれない処理水の回収とを、単一の槽内での処理において同時に行うことがでる技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、浮上分離を用いた処理よりも凝集剤の使用量を低減させることが可能となった油分含有廃水の処理方法及び処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-032034号公報
【特許文献2】特開2009-165915号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】N. N. Rulyov; Combined microflotation of fine minerals: theory and experiment;Mineral Processing and Extractive Metallurgy, Volume 125, 2016, p 81-85
【非特許文献2】P.T.L Koh el al; Modeling attachment rates of multi-sized bubbles with particles in a flotation cell; ,Minerals Engineering 21, 2008,p.989-993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粒径25μm以下程度の粒子を含む微細な鉱物粒子を対象とした場合であっても、効率的に浮遊選鉱処理を行うことができる浮遊選鉱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態における浮遊選鉱方法は、鉱物粒子を浮遊選鉱処理によって分離回収する浮遊選鉱方法であって、前記浮遊選鉱処理は、前記鉱物粒子を含有する処理対象液中に、気泡径200μm以下の微細気泡及び前記微細気泡よりも径の大きい気泡を用いて、前記鉱物粒子を前記処理対象液の浮上させる、浮遊選鉱方法である。
【0013】
本実施形態における浮遊選鉱システムは、鉱物粒子を浮遊選鉱処理によって分離回収する浮遊選鉱システムであって、前記鉱物粒子を含む処理対象液中に、気泡径200μm以下の微細気泡を導入する微細気泡発生装置と、前記処理対象液を貯留して槽内で前記鉱物粒子を前記処理対象液の上方に浮上させる浮遊選鉱槽と、前記微細気泡よりも径の大きい気泡を前記処理対象液中に導入する気泡発生部と、を有する浮遊選鉱装置と、を備える、浮遊選鉱システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粒径25μm以下程度の粒子を含む微細な鉱物粒子を対象とした場合であっても、効率的に浮遊選鉱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】浮遊選鉱処理の流れを示す図である。
図2】浮遊選鉱方法において用いる浮遊選鉱装置の構成の概要を示す図である。
図3】浮遊選鉱方法において用いる浮遊選鉱装置の構成の概要を示す図である。
図4】実施例1、比較例1での浮遊選鉱処理の結果を示す図である。
図5】実施例2、比較例2での浮遊選鉱処理の結果を示す図である。
図6】実施例3、比較例3での浮遊選鉱処理の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、バブル(気泡)とは界面で囲まれた媒体中の気体である。このうち、体積相当の直径が100μm未満をファインバブル、1μm以上100μm未満のバブルをマイクロバブル、1μm未満のバブルをウルトラファインバブルと言う。本実施形態では、これらの気泡を、以下微細気泡と称する。ここで、体積相当の直径とは球形を前提としたバブルの体積に基づいて導きだされる直径を指す。
【0017】
以下、具体的な実施形態について詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<浮遊選鉱処理の流れ>
図1は、本発明の浮遊選鉱方法を用いて実施することができる浮遊選鉱処理の流れを示す図である。以下においては、先ず、この浮遊選鉱処理の流れを簡単に説明した後に、本発明の浮遊選鉱方法の具体的な実施形態についてその詳細を説明する。
【0019】
[鉱石の破砕・磨鉱]
浮遊選鉱処理においては、処理対象の鉱石を破砕して、有用鉱物及び脈石鉱物を含む混合物粉粒体を得ている。破砕操作後の分離操作が物理的な分離であるため、混合物粉粒体の粒子は、有用鉱物又は脈石鉱物の何れかの単一粒子とすること(以下、「単体分離」とも言う)が理想的であり、鉱石に含まれる鉱物サイズにより破砕の強度は調節される。
【0020】
鉱石の破砕において、ボールミル等の一般的な破砕装置を用いた場合において、経済効率を良好に維持しつつ破砕することができる混合物粉粒体の粒子サイズの下限は、粒径100μm程度である。しかしながら、近年では鉱石に含まれる鉱物サイズが25μm以下程度と微細化しているため、上記の一般的な粒子サイズ(粒径100μm程度)迄の破砕では十分な単体分離が困難である。そのため、ビーズミル等の超微細破砕機を用いて25μm程度以下まで破砕する場合がある。
【0021】
鉱石を破砕したのち、得られた鉱物粒子に対して磨鉱の処理を行う。磨鉱とは、破砕後に得られた粒子表面の付着物や酸化被膜等を除去する操作のことである。この操作は、浮遊選鉱処理(後述する「粗選」又は「精選」)の直前に行われて、粒子表面を清浄な状態とする操作である。そして、この操作により、浮遊選鉱処理に際して添加する添加剤(浮選剤)、例えば捕収剤、抑制剤、凝集剤等の鉱物粒子の表面処理を目的とする添加剤の効果にばらつきが生じないようにすることができる。
【0022】
[粗選・精選]
粗選(粗選鉱)・精選(精選鉱)は、破砕して得られた混合物粉粒体の粒子と気泡とを接触させ、粒子表面の親水性や疎水性の差によって気泡に付着する粒子と付着しない粒子とを分離する操作であり、浮遊選鉱処理における主要な操作である。
【0023】
粗選・精選の操作においては、先ず、混合物粉粒体を、水や海水等の液体と混合してスラリー状(鉱物スラリー)にする。鉱石スラリーを調製するにあたっては、通常、その鉱物スラリーのインプットと精鉱回収量との効率を考慮して固形分比率を調整する。又、有用鉱物の粒子と脈石鉱物の粒子との表面に対して濡れ性の差を拡大させるため、鉱石スラリーに浮選剤を添加すること等によって処理対象であるスラリーの表面性質や液相部分の性質を、浮遊選鉱処理に適した所望の性質に改質するという操作を行うようにしてもよい。尚、このような鉱物粒子の改質操作のことを、本明細書においては、以下「条件付け」と称する。
【0024】
ここで、浮遊選鉱処理は、基本的な仕組みとして、鉱物スラリー中に気泡を導入し、有用鉱物の粒子と脈石鉱物の粒子との表面性状(濡れ性)の差を利用して、疎水性の表面をもつ有用鉱物に気泡に付着させてその有用鉱物を「浮鉱」として回収し、その一方で、脈石鉱物を「沈鉱」として分離する処理である。
【0025】
このような処理において、「条件付け」のために添加される浮選剤には、鉱物表面に吸着してその表面性質を変更する薬剤や、鉱物スラリーの液相部分の性質を変更する薬剤等がある。例えば、鉱物表面の性質を変更する薬剤として、鉱物表面に疎水性を付与する捕収剤(ナトリウム、ザンセート、エチルザンセート等)、逆に疎水性を付与しない抑制剤(ゼラチン、乳酸、澱粉等)等が知られている。又、鉱物スラリーの液相部分の性質を変更する薬剤として、pHを調整するpH調整剤(塩酸、過酸化水素水、苛性ソーダ、石灰等)、鉱物スラリー中に溶解して安定した気泡を発生させるための起泡剤(MIBC、パイン油、クレゾール酸等)等が知られている。
【0026】
浮遊選鉱処理においては、予め「条件付け」を施した鉱物スラリーを浮遊選鉱装置に装入するか、又は、上述した浮選剤をスラリー中に添加することによって、若しくは、必要に応じてそれらの両操作を行うことによって、粒子表面性状や、鉱物スラリー中の液相を適切な条件に調整する。尚、「条件付け」は、鉱物スラリーを浮遊選鉱装置に装入した状態において気泡を導入する前に行われる場合もある。
【0027】
そして、浮遊選鉱処理においては、浮遊選鉱装置によって、装入した鉱物スラリーを撹拌し、気泡を導入することによって、スラリー中の混合物粉粒体のうちの、疎水性が高い粒子に気泡を付着させる。これにより、気泡に付着した鉱物粒子が鉱物スラリー表面に浮遊してフロスが形成される。一方で、疎水性が低い粒子は沈降して尾鉱となる。
【0028】
鉱物スラリーに対する撹拌は、装置規模や鉱物スラリーの投入量、又、通常は、数mm程度のサイズに調整された気泡の浮遊速度、導入量等が最適となるように調整されて行われる。
【0029】
尚、図1に示すように、粗選が、所謂1段目の選鉱処理であり、精選が所謂2段目の選鉱処理である。1段目の選鉱処理である粗選により得られた浮鉱に対して磨鉱処理を再度行い(再磨鉱)、その後、2段目の選鉱処理である精選が行われる。
【0030】
<浮遊選鉱方法>
本発明の浮遊選鉱方法(以下、単に「浮遊選鉱方法」とも言う)は、25μm以下程度の粒子を含む微細な鉱物粒子を、処理対象液(鉱石スラリー)から、浮遊選鉱処理によって分離回収する方法である。
【0031】
浮遊選鉱処理において、気泡径50μm以上200μm以下の微細気泡を導入することにより、当該微細気泡に粒径25μm以下程度の微細な粒子を付着させてフロスを形成することができる(非特許文献1、2参照)。しかしながら、粒径25μm以下程度の微細な鉱物粒子を対象とする浮遊選鉱処理では、当該微細気泡は、上昇速度が小さく、フロスの生成が不充分であり、生成に要する時間も長時間を要する場合があった。
【0032】
本実施形態における「浮遊選鉱方法」は、浮遊選鉱処理を行う処理対象液(鉱石スラリー)中に、気泡径200μm以下の微細気泡と、当該微細気泡よりも粒径の大きい気泡を用いて、鉱物粒子を浮鉱として浮上させるプロセスである。又、本実施形態においては、マイクロバブルを生成する微細気泡発生装置を主として説明をするが、1μm未満の気泡(ウルトラファインバブル)が含まれていてもよい。
【0033】
例えば、気泡径50μm~200μm程度の微細な気泡を発生させる装置を用いることができる。この微細気泡発生装置は、例えば、装置内部に供給されたエアーを多孔質体に通過させて外部に析出する過程で微細化し、さらにその多孔質体を回転させることで粗大化する前に気泡を多孔質体表面から離脱させることで、所望の気泡径の微細気泡を発生させる機構となっている。
【0034】
尚、微細気泡の他に、処理対象液中に併存させる「微細気泡よりも径の大きい気泡」とは例えば気泡径1.0mm以上1.5mm以下の気泡であることが好ましい。
【0035】
[「浮遊選鉱方法」の第1の実施形態]
上述の「浮遊選鉱方法」は、上記の「微細気泡よりも径の大きい気泡」を発生する機能を有する上記の汎用的な浮遊選鉱装置に、微細気泡発生装置を付設し、微細気泡発生装置から気泡径50μm以上200μm以下の気泡(「微細気泡」)を処理対象液(鉱石スラリー)中に発生させるとともに、浮遊選鉱装置から、微細気泡発生装置から発生する気泡よりも大きいサイズの気泡を鉱石スラリー中に発生させる実施形態(第1の実施形態)である。
【0036】
このようにして行う「浮遊選鉱方法」によれば、気泡径50μm以上200μm以下の気泡(「微細気泡」)とともに、それよりも気泡径が大きいサイズの気泡を併せて導入することで、鉱物粒子が付着しやすい微細気泡よりも径の大きい気泡が鉱物スラリー中でより大きな速度で上昇することに伴って、微細気泡の見かけ上の上昇速度も増加する。その結果、フロスの形成に必要な所要時間を短縮させることが可能となる。
【0037】
[浮遊選鉱システム]
ここで、図2は、上述した浮遊選鉱方法の第1の実施形態において好適に用いることができる浮遊選鉱システム1Aの構成の概要を示す図である。浮遊選鉱システム1Aは、浮遊選鉱処理装置を行う浮遊選鉱装置11と、浮遊選鉱装置11に付設されて微細気泡を発生させて処理対象液(鉱石スラリー)中に導入する微細気泡発生装置12と、を備える。又、浮遊選鉱システム1Aでは、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12とにおいて、それぞれ個別に、加圧気体供給装置(コンプレッサー)2から供給される加圧気体を減圧して流量調整可能にする減圧弁(流量バルブ)13、14が接続して設けられている。
【0038】
(浮遊選鉱装置)
浮遊選鉱装置11は、内部に供給された微細な鉱物粒子を含む鉱石スラリーに対して浮遊選鉱処理を行う浮遊選鉱槽と、気泡を発生させ処理対象液(鉱石スラリー)中に導入する気泡発生部と、を有する。このような浮遊選鉱装置11は、例えば機械式デンバー浮選機により構成できる。
【0039】
浮遊選鉱装置11の気泡発生部からは、微細気泡発生装置12から発生する気泡径50μm以上200μm以下の気泡(「微細気泡」)よりも径が大きい気泡を発生させ、浮遊選鉱槽に収容された処理対象液(鉱石スラリー)中に導入する。気泡生部では、装置の外部から取り込んだ空気、或いは、接続された加圧空気供給装置から供給される加圧気体(加圧空気)に基づいて気泡を発生させる。具体的に、浮遊選鉱装置11において発生させる気泡径は、導入する微細気泡(「微細気泡」)よりも大きければ特に限定はされないが、気泡径1.0mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。
【0040】
(微細気泡発生装置)
浮遊選鉱システム1Aにおいては、微細気泡発生装置12が、浮遊選鉱装置11に付設接続されている。微細気泡発生装置12は、浮遊選鉱装置11から発生する気泡よりも小さいサイズであって、気泡径50μm以上200μm以下の微細気泡を発生させる。
【0041】
微細気泡発生装置12としては、上述の微細気泡を発生させることができる装置であれば特に限定されず、入手及び設置が容易な汎用品を用いることができる。そのようなマイクロバブル装置の一例として、微細孔からなる多孔質体が内部に設けられ、供給された空気をその多孔質体に通過させることで空気を微細化する機構を有するマイクロバブル装置を挙げることができる。
【0042】
微細気泡発生装置12は、微細気泡を発生させ、浮遊選鉱装置11の内部に収容した鉱石スラリー中にその微細気泡を導入する。微細気泡発生装置12は、装置の外部から取り込んだ空気、或いは、接続された加圧空気供給装置から供給される加圧気体(加圧空気)に基づいて微細気泡を発生させる。
【0043】
このように浮遊選鉱システム1Aにおいて、浮遊選鉱装置11に、微細気泡発生装置12を付設することで、処理対象の鉱石スラリー中に、気泡径50μm以上200μm以下の微細気泡と、その微細気泡よりも径が大きい気泡、即ち、大きさの異なる2種の気泡を発生させることができる。
【0044】
(減圧弁)
又、浮遊選鉱システム1Aは、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12とのそれぞれに、加圧気体供給装置(コンプレッサー)2から供給される加圧空気を減圧して流量調整可能にする減圧弁(流量バルブ)13、14が設けられていることが好ましい。
【0045】
減圧弁13、14は、加圧気体供給装置2から供給される加圧空気を減圧して一定圧力に維持する調整弁であるとともに、減圧した空気の流量調整を行うことができる。これにより、減圧弁13、14は、その減圧した空気を供給する装置、即ち、浮遊選鉱装置11及び微細気泡発生装置12から発生させる気泡の流量調整を可能としている。従って、減圧弁13、14を、気泡の流量を調整する「流量バルブ13、14」とも言う。
【0046】
浮遊選鉱システム1A、1Bにおいて、減圧弁13、14は、浮遊選鉱装置11と、加圧気体供給装置2との接続配管15と、微細気泡発生装置12と、加圧気体供給装置2との接続配管16のそれぞれに個別に設置されている。従って、加圧気体供給装置2から供給された空気を、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12に対してそれぞれ個別の流量を制御しながら供給することができる。浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12に供給される空気の流量は、各装置(11、12)から発生する気泡の流量と相関するため、減圧弁(流量バルブ)13、14による制御によって、鉱石スラリー中に導入される微細気泡(気泡径50μm以上200μm以下の気泡)の流量と、その微細気泡よりも大きいサイズの気泡の流量とをそれぞれ個別に適切に調整することができる。
【0047】
上述したように、微細な鉱物粒子を含む鉱物スラリー中に、気泡径50μm以上200μm以下の微細気泡を導入することで、その気泡に微細な鉱物粒子を良好に付着させて微細なフロスを形成することができる。又、それとともに、微細気泡よりも径が大きい気泡を併せて導入することで、処理対象液中における上昇速度がより大きい気泡が鉱物スラリー中で上昇することに伴って微細な気泡の見かけ上の上昇速度を増加させ、フロスの形成に必要な所要時間を短縮することができる。
【0048】
このとき、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12のそれぞれに個別に流量バルブ13、14を設け、各装置(11、12)から発生する気泡の流量を個別に調整可能としていることで、微細な鉱物粒子への気泡の付着と、スラリー表面への浮上の速度向上に伴うフロス形成の所要時間の短縮化を、効率的に、且つ、適切に行うことができる。
【0049】
尚、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12とで単一の流量バルブとした場合、例えば微細気泡発生装置の流量を増加させるためにバルブを操作すると、浮遊選鉱装置11の側の流量が減少することとなり、良好にスラリー表面への浮上速度を高めることができない。同様に、例えば浮遊選鉱装置11の流量を増加させるためにバルブ操作すると、微細気泡発生装置側の流量が減少することとなり、充分な量の微細な気泡を導入できず、微細な鉱物粒子に付着させることできず、浮鉱の回収率を低下させる。
【0050】
気泡の流量調整、言い換えると、微細気泡発生装置12から発生する微細気泡の流量と浮遊選鉱装置11から発生する気泡の流量との割合については、特に限定されない。例えば、浮遊選鉱処理に供する鉱物スラリー中の固形分(鉱物粒子)濃度や、その鉱物粒子の大きさ、所望とする浮上時間(フロス形成の所要時間)等に応じて適宜設定することができる。又、浮選剤の添加による鉱物スラリー液相の粘度変化や、鉱物粒子を構成する有用鉱物と脈石鉱物の親水性の差等の条件の変動によってフロス形成の所要時間も変わることから、これらの条件に基づいて適宜設定することが好ましい。又、浮遊選鉱処理に先立ち、条件付けの操作の一環として浮遊選鉱試験を行い、その試験において好適な流量割合を選定するようにしてもよい。
【0051】
尚、微細気泡発生装置12から発生させる微細気泡よりも径が大きい気泡(浮遊選鉱装置11から発生させる気泡)の流量が大きすぎると、微細気泡の上昇速度が大きくなりすぎて、例えば微細な鉱物粒子とその微細気泡との接触する機会が損なわれる可能性がある。或いは、微細な鉱物粒子に微細気泡が接触して付着したとしても、鉱石スラリー表面への浮上の途中で脱落してしまう可能性がある。
【0052】
流量バルブ13、14の制御による気泡の流量調整は、バルブの開度を制御することによって行うことができる。
【0053】
図3は、浮遊選鉱方法において用いる浮遊選鉱システムの他の実施形態に係る構成の概要を示す図である。浮遊選鉱システム1Bは、浮遊選鉱処理を行う浮遊選鉱装置11と、浮遊選鉱装置11に付設されて微細気泡を発生させ導入する微細気泡発生装置12と、を備え、浮遊選鉱装置11と微細気泡発生装置12とにおいて、それぞれ個別に、加圧気体を減圧して流量調整可能にする減圧弁(流量バルブ)13、14が接続して設けられている。浮遊選鉱システム1Bでは、減圧弁13、14に対してそれぞれ個別に加圧気体供給装置2a、2bが接続されている点で、浮遊選鉱システム1Aとは異なる。
【0054】
図3に示すように、浮遊選鉱システム1Bにおいて、浮遊選鉱装置11には配管15を介して加圧気体供給装置2aが接続されており、その配管15には流量バルブ13が設けられている。又、微細気泡発生装置12には配管16を介して加圧気体供給装置2bが接続されており、その配管16には流量バルブ14が設けられている。加圧気体供給装置2aと加圧気体供給装置2bとはそれぞれ別個のものであり、各装置(2a、2b)からそれぞれ独立した制御によって、配管15、16の先に接続された装置(浮遊選鉱装置11又は微細気泡発生装置12)に空気が供給される。
【0055】
このような構成によっても、配管15、16のそれぞれに流量バルブ13、14が設けられ、加圧気体供給装置2a、2bから供給される空気の流量を調整するようにしていることから、浮遊選鉱装置11及び微細気泡発生装置12から発生する気泡の流量を個別に調整可能となる。これにより、微細な鉱物粒子への気泡の付着と、スラリー表面への浮上の速度向上に伴うフロス形成の所要時間の短縮化を、効率的に実現することができる。
【0056】
尚、浮遊選鉱システム1Bにおいて、加圧気体供給装置2a、2bがそれぞれ別個に設けられていること以外の他の構成は、浮遊選鉱システム1Aと同様であり、他の構成についての説明は上述したものと同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0057】
[「浮遊選鉱方法」の第2の実施形態]
本実施形態の「浮遊選鉱方法」は、浮遊選鉱装置を用いて、処理鉱物粒子を浮鉱として浮上させる浮遊選鉱処理に際して、予め、「微細気泡」を含む微細気泡含有水を処理対象液(鉱石スラリー)中に注入する実施形態(第2の実施形態)である。
【0058】
又、第2の実施形態においても、浮遊選鉱装置としては、処理対象液中に、気泡径200μmを超える気泡を発生させる機能を有する汎用的な装置を用いることができる。
【0059】
尚、この第2の実施形態において、浮遊選鉱装置11への微細気泡発生装置12の付設せずに、気泡径200μ以下の微細気泡を含む含有水を用いてもよい。例えば、別途用意した微細気泡発生装置12によって必要量に応じて微細気泡含有水を製造して用いてもよい。これに限らず、予め微細気泡が混合されている用水を工場内の他所或いは他工場から入手して、これを適切なタイミングで浮遊選鉱処理に投入することも可能である。そのような浮遊選鉱装置11への微細気泡発生装置12の付設を伴わない実施形態も本発明の技術的範囲である。
【0060】
第2の実施形態における「浮遊選鉱方法」を実施する場合において、図1に示すように浮遊選鉱処理を複数段階に亘って連続的に行うときには、第1段階目の浮遊選鉱処理(図1における「粗選」)に投入する処理対象液(鉱石スラリー)中に、微細気泡を含んでなる微細気泡含有水を適量注入すればよい。或いは、必要に応じて、第2段階目の浮遊選鉱処理(図1における「精選」)等、下流側で順次行われるその他の各処理毎において、当該処理に投入する処理対象液(鉱石スラリー)中に、都度、適量の微細気泡含有水を個別に注入してもよい。
【0061】
尚、第2の実施形態による場合においても、「微細気泡」と「微細気泡よりも径の大きい気泡」のそれぞれの流量を、第1の実施形態の実施時と同様に、適宜最適な量に個別に調整することで、より精度の高い選鉱処理が可能となる。
【実施例0062】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
[実施例1、比較例1]
処理対象の鉱物を、ビーズミルを用いて粉砕し、篩分けして20μm(P80)以下の微細な鉱物粒子を含む混合鉱物粉粒体を得た。下記表1に、得られた混合物粉粒体の元素分析(単位:重量%)の結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
次に、得られた混合物粉粒体に水を添加し混合して、鉱物スラリーを得た。又、鉱物スラリーには、水酸化カルシウムを添加してpHを8.5に調整した。又、起泡剤(メチルイソブチルカルビノール:MIBC)を15g/t、捕収剤F4244(Flottec社製、型番4244)を86g/t、及びDiesel oil(軽油)を34g/tでそれぞれ添加し、条件付け(1分間)を行った。
【0066】
次に、調整した鉱石スラリーに対して4段の浮遊選鉱処理を合計30分間で行った。実施例1の浮遊選鉱処理では、図2に概略構成を示す浮遊選鉱装置を用いた。即ち、浮遊選鉱装置に微細気泡発生装置(カーボンセラミックス製回転式マイクロバブル発生装置、株式会社安斎管鉄製)が付設されている装置を用いた。
【0067】
尚、浮遊選鉱装置としては、機械式デンバー浮遊選鉱機を用いた。又、微細気泡発生装置からは径100μm~150μmの微細な気泡(「微細気泡」)を発生させ、機械式デンバー浮選機からはその「微細気泡」よりも径が大きい気泡(径1.0mm~1.5mm)を発生させ、微細気泡発生装置から発生する気泡と機械式デンバー浮遊選鉱機から発生する気泡のそれぞれの流量を調整可能とした。
【0068】
一方で、比較例1の浮遊選鉱処理では、微細気泡発生装置を付設しない機械式デンバー浮選機のみからなる装置を用いた従来の処理を行った。
【0069】
図4は、実施例1、比較例1における、それぞれの浮遊選鉱処理の結果を示す図であり、浮選時間(Flotation time)とCu実収率との関係を示すグラフ図である。このグラフ図に示すように、微細気泡発生装置を付設して、鉱石スラリーに対して「微細気泡」を導入するとともにそれよりサイズの大きい気泡を導入した実施例1では、Cuの実収率を向上させることができた。又、例えばCu実収率が30%の場合では、実施例1の浮選時間が約8分、比較例1の浮選時間が約30分であり、実施例1において大幅にも浮選時間の短縮することができた。
【0070】
[実施例2、比較例2]
実施例2では、浮遊選鉱装置として、図3に概略構成を示す浮遊選鉱装置を用いたこと以外、実施例1と同様の処理を行った。即ち、浮遊選鉱装置として、浮遊選鉱装置(機械式デンバー浮遊選鉱機)と、微細気泡発生装置とに接続されるコンプレッサーが、それぞれ別個に設けられた装置を用いた。
【0071】
尚、浮遊選鉱装置としては、機械式デンバー浮遊選鉱機を用いた。又、微細気泡発生装置からは径100μm~150μmの微細な気泡(「微細気泡」)を発生させ、機械式デンバー浮選機からはその微細気泡よりも径が大きい気泡(径1.0mm~1.5mm)を発生させ、微細気泡発生装置から発生する気泡と機械式デンバー浮遊選鉱機から発生する気泡のそれぞれの流量を調整可能とした。
【0072】
一方で、比較例2の浮遊選鉱処理では、比較例1と同様に、微細気泡発生装置を付設しない機械式デンバー浮選機のみからなる装置を用いた従来の処理を行った。
【0073】
図5は、実施例2、比較例2における浮遊選鉱処理の結果を示す図であり、浮選時間(Flotation time)とCu実収率との関係を示すグラフ図である。このグラフ図に示すように、実施例2では、Cuの実収率を向上させることができた。又、大幅にも浮選時間の短縮することができた。
【0074】
[実施例3、比較例3]
実施例3では、表1に示す組成の混合物粉粒体に、予め微細気泡を添加した「微細気泡含有水」処理対象液へ混合した以外は実施例、実施例2と同様の処理である。予め微細気泡を添加するため、含有水は主に1μm以下のウルトラファインバブルが含まれる。一方で、比較例3は微細気泡含有水を用いずに、機械式デンバー浮選機のみからなる装置を用いた従来の処理を行った。
【0075】
図6は、実施例3、比較例3における浮遊選鉱処理の結果を示す図であり、浮選時間(Flotation time)とCu実収率との関係を示すグラフ図である。このグラフ図に示すように、実施例3においても、比較例3に対して、浮選時間30分でのCuの実収率を向上させることができた。
【符号の説明】
【0076】
1A、1B 浮遊選鉱システム
11 浮遊選鉱装置
12 微細気泡発生装置
13、14 減圧弁(流量バルブ)
15、16 接続配管
2、2a、2b 加圧気体供給装置(コンプレッサー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6