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特開2022-95129ユニット構造体、及びユニット構造体の連結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095129
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ユニット構造体、及びユニット構造体の連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
E04B1/348 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208279
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】520496187
【氏名又は名称】株式会社ジャカコン西日本
(71)【出願人】
【識別番号】518082507
【氏名又は名称】株式会社サイエンス構造
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の輸送用コンテナに容易に適用でき、応急用の仮設建物等として使用可能なユニット構造体を提供する。
【解決手段】ユニット構造体1は、平面視で長方形の各頂点に相当する位置に立設される4本の柱10と、各柱の上端に下面が固定され、且つ各柱の下端に上面が固定される概略直方体状の8つの隅金物20と、隣接する各柱の上端部10b間及び下端部10a間に夫々一本ずつ差し渡されて、各柱及び各隅金物に跨がって端部が固定される合計8本の梁30L、30Sと、を備えた直方体形状である。隅金物の側面のうち、梁の端部が固定される側面の端縁に沿って平面視が略L字形状の接続基板40が固定されており、接続基板は下部隅金物201の下面、又は上部隅金物202の上面と並行、且つ無段差状に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で長方形の各頂点に相当する位置に立設される4本の柱と、該各柱の上端に下面が固定され、且つ該各柱の下端に上面が固定される概略直方体状の8つの隅金物と、隣接する前記各柱の上端部間及び下端部間に夫々一本ずつ差し渡されて、前記各柱及び前記各隅金物に跨がって端部が固定される合計8本の梁と、を備えた直方体状のユニット構造体であって、
前記隅金物の4つの外周面のうち、前記梁の端部が固定される2つの前記外周面の端縁に沿って平面視が略L字形状の接続基板が固定されており、該接続基板は前記柱の下端が固定された前記隅金物の下面、又は前記柱の上端が固定された前記隅金物の上面と並行、且つ無段差状に配置されていることを特徴とするユニット構造体。
【請求項2】
前記接続基板の長手方向の端縁は、前記隅金物の4つの外周面のうち、前記梁の端部が固定されていない2つの前記外周面よりも外方には突出していないことを特徴とする請求項1に記載のユニット構造体。
【請求項3】
前記隅金物の下面又は上面と平行且つ無段差状に配置された前記接続基板の面の反対面は、該隅金物に端部が固定された前記梁と密着しており、且つ該梁に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のユニット構造体。
【請求項4】
前記接続基板のうち、前記各梁が上下方向に重ならない領域には、他の前記ユニット構造体を締結する挿通孔が貫通形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のユニット構造体。
【請求項5】
所定の間隔を空けて横方向に並列配置された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のユニット構造体と、前記両ユニット構造体の隣接する前記接続基板の端部間に跨がって配置される補助接続基板とを備え、
該補助接続基板は、前記両ユニット構造体の対向する前記梁の幅方向の夫々の端縁と、該梁の端部が固定された両前記隅金物の側面に夫々当接した状態で、両前記接続基板に固定されることを特徴とするユニット構造体の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物の構築に利用されるユニット構造体、及びその連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大災害発生時に輸送用コンテナを店舗や住宅等の応急用の仮設建物として使用する動きが広がっている。輸送用コンテナはトレーラー等で容易に現地に搬入できるため、災害発生から比較的短期間に仮設建物を準備できるという利点がある。
例えば、輸送用コンテナを、桁行方向に多数の住戸を配置した複数階層からなる集合住宅として利用する場合には、複数の輸送用コンテナを所定の横方向位置に隣接配置した上で上下方向に積層し、夫々の輸送用コンテナ同士を強固に連結する必要がある。
特許文献1には、積層されたコンテナ同士を強固に連結可能なコンテナ構造が記載されている。コンテナは、立設される4本の柱、柱の上端と下端に夫々接合される合計8つの隅金物、及び、横方向に隣接する隅金物間を接続する合計8本の梁を備えている。隅金物は、上下方向に伸びる4つの辺のうち、柱が固定された面から柱が固定されていない面の直前位置までが入隅状に切り欠かれている。この切り欠きにより、コンテナ下部に位置する隅金物の下面寄りの部位と、コンテナ上部に位置する隅金物の上面寄りの部位にはフランジ部が形成される。フランジ部の面内には、ボルトの軸部を挿通可能な貫通孔が形成されている。特許文献1においては、接合用の基板を用いることなく、2つのコンテナを上下方向に積層して、ボルトとナットとを用いて両コンテナを直接に連結可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-4723公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、隅金物自体の形状を変更しているため、既存の輸送用コンテナに適用するには、隅金物自体を交換する等、大掛かりな改造が必要となる。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、既存の輸送用コンテナに容易に適用でき、応急用の仮設建物等として使用可能なユニット構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、平面視で長方形の各頂点に相当する位置に立設される4本の柱と、該各柱の上端に下面が固定され、且つ該各柱の下端に上面が固定される概略直方体状の8つの隅金物と、隣接する前記各柱の上端部間及び下端部間に夫々一本ずつ差し渡されて、前記各柱及び前記各隅金物に跨がって端部が固定される合計8本の梁と、を備えた直方体状のユニット構造体であって、前記隅金物の4つの外周面のうち、前記梁の端部が固定される2つの前記外周面の端縁に沿って平面視が略L字形状の接続基板が固定されており、該接続基板は前記柱の下端が固定された前記隅金物の下面、又は前記柱の上端が固定された前記隅金物の上面と並行、且つ無段差状に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、既存の輸送用コンテナに容易に適用でき、応急用の仮設建物等として使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るユニット構造体を複数個組み付けた状態の軸組構成を示す斜視図である。
図2】一のユニット構造体の軸組を示す斜視図である。
図3】(a)、(b)は、ユニット構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
図4】各部材の位置関係を説明する図であり、(a)は図2のA矢視に相当する平面図であり、(b)は図2のB-B断面図であり、(c)は図2のC-C断面図である。
図5図1のD-D断面図である。
図6】複数のユニット構造体を横方向に連結した状態を示す図であり、(a)は各部材の位置関係を示す平面図であり、(b)は(a)のE-E断面図である。
図7】4つのユニット構造体を上下方向と横方向に連結した状態を示す断面図である。
図8】他の例に係る2つのユニット構造体を上下方向に連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係るユニット構造体を複数個組み付けた状態の軸組構成を示す斜視図である。図2は、一のユニット構造体の軸組を示す斜視図である。図3(a)、(b)は、ユニット構造体の一部を拡大して示す斜視図である。図4は、各部材の位置関係を説明する図であり、(a)は図2のA矢視に相当する平面図であり、(b)は図2のB-B断面図であり、(c)は図2のC-C断面図である。
【0010】
ユニット構造体1(1A~1C)は、例えばISO規格に従った輸送用コンテナの躯体に相当する構造部分であり、フレーム材としての柱10と梁30(30L、30S)、及び、柱10と梁30が結合される隅金物20を備える。
なお、ユニット構造体1の構成のうち、下部に位置する部材と上部に位置する部材を区別して書くときは、下部に位置する部材には末尾に1を、上部に位置する部材には末尾に2を付して、3桁で表現する。また、図2等においては、ユニット構造体1の長手方向に沿って伸びる梁30にはアルファベット符号Lを、ユニット構造体1の短手方向に沿って伸びる梁30にはアルファベット符号Sを付している。
【0011】
隅金物20はコーナーフィッティングとも呼ばれる鋳鋼からなる部材であり、ユニット構造体1を輸送用コンテナとして使用する場合に、複数のユニット構造体1、1…を、例えばISO規格に従った連結金具を用いて連結させるために用いられる。
図2に示すように、本発明の実施形態に係るユニット構造体1は、複数のユニット構造体1、1…を上下方向又は横方向に接続(連結)する接続基板40(401、402)を備える。接続基板40は他の基板を必要とせずに2つのユニット構造体1、1を上下方向に連結させる。接続基板40は、ユニット構造体1を輸送用コンテナとして使用する場合に、隅金物20を利用したコンテナの吊り上げや、コンテナ同士の連結等を阻害しないように構成されている。
【0012】
図2に示すように、概略直方体形状のユニット構造体1は、平面視で長方形の各頂点に相当する位置に立設される4本の柱10~10と、各柱10の下端(下端面)に上面221(図3図4(b)参照)が固定される概略直方体状の下部隅金物201と、各柱10の上端(上端面)に下面212(図3図4(a)参照)が固定される概略直方体状の上部隅金物202と、隣接する各柱10~10の下端部10a、10a間及び上端部10b、10b間に夫々一本ずつ差し渡されて、各柱10~10及び各隅金物201~201、202~202に跨がって長手方向の両端部30a、30aが溶接により固定される(溶着される)合計8本の梁30(4本の下部梁301と、4本の上部梁302)と、を備える。
【0013】
図3(a)及び図4(a)、(c)に示すように、下部隅金物201の4つの側面231、231、241、241のうち、下部梁301の端部301aが固定される2つの側面231、231には、その下端縁231a、231aに沿って平面視が略L字形状の下部接続基板401が固定されている。下部接続基板401は、その下面が、柱10の下端が固定されていない下部隅金物201の下面211と並行、且つ無段差状に配置されている。
図3(b)及び図4(a)、(b)に示すように、上部隅金物202の4つの側面232、232、242、242のうち、上部梁302の端部302aが固定される2つの側面232、232には、その上端縁232a、232aに沿って平面視が略L字形状の上部接続基板402が固定されている。上部接続基板402は、その上面が、柱10の上端が固定されていない上部隅金物202の上面222と並行、且つ無段差状に配置されている。
【0014】
ここで、図4(a)に示すように、隅金物20の4つの側面23、23、24、24のうち、梁30の端部30aが固定されていない側面24、24は、ユニット構造体1の最も外側の外周囲OLに相当する面である。接続基板40の長手方向の両端縁40a、40aは、側面24、24よりも外周側(外周囲OLよりも外側)に突出しないように設定されている。特に本例において端縁40a、40aは、側面24、24と並行且つ無段差状に配置されている。
下部接続基板401及び上部接続基板402はL字形状であるため、下部接続基板401と上部接続基板402を上部隅金物201と下部隅金物202に対して夫々溶着する際に、上部隅金物201と下部隅金物202の夫々に対して水平方向に精度よく位置決めできる。
【0015】
<各部材の構成>
各部材及びその位置関係を図4に基づいて説明する。図4(b)に示すZR線は、ユニット構造体1の最上位位置を示す線である。図4(c)に示すZ1線は、ユニット構造体1の最下位位置を示す線である。
【0016】
本実施形態に示す柱10~10は、角形鋼管から構成される。なお、図示する柱10は、その内部に、梁30の応力を柱10に伝達する内ダイアフラムを備えている。内ダイアフラムは、H型鋼材から構成される梁30のフランジプレートと同等の上下方向位置に配置されている。
【0017】
隅金物20は、概略直方体形状の中空状の鋳鋼である。柱10が接合されていない隅金物20の上面又は下面には、ユニット構造体1の長手方向に沿って伸びる長孔25が貫通形成されている。即ち、図3に示すように、下部隅金物201の下面221の面内中央部には長孔251が貫通形成され、上部隅金物202の上面222の面内中央部には長孔252が貫通形成されている。2つのユニット構造体1A、1Bを、図1のように長手方向と短手方向とを合致させた状態にて上下方向に積層すると、下方に位置するユニット構造体1Aの長孔251と、上方に位置するユニット構造体1Bの長孔252は、その形状と位置関係が互いに整合し合った状態で連通する。長孔251、252は、2つのユニット構造体1A、1Bをツイストロックと呼ばれる接合金物を用いて上下方向に接合(締結)する場合等に用いられる。また、長孔252は、ユニット構造体1をクレーンにより吊り上げる場合等に用いられる。
【0018】
図2、及び図3に示すように、梁30が接合されていない隅金物20の2つの側面24、24には、横孔26、26(261…、262…)が貫通形成されている。即ち、下部隅金物201の側面241、241の面内中央部には横孔261、261が貫通形成され、上部隅金物202の側面242、242の面内中央部には横孔262、262が貫通形成されている。
図1に示すように、2つのユニット構造体1A、1Cを横方向に並列配置する場合、一方のユニット構造体1Aの横孔261…、262…と、他方のユニット構造体1Cの横孔261…、262…とは、その形状と位置関係が互いに整合し合った状態で連通する。横孔261…、262…は、2つのユニット構造体1A、1Cを横方向に並列配置する場合に、両ユニット構造体1、1をブリッジフィッティングと呼ばれる接合金物を用いて接合(締結)する際等に用いられる。また、横孔261…、262…は、ラッシングロッドを用いて複数のユニット構造体1…を斜め方向に拘束する場合にも用いられる。
【0019】
図3、及び図4に示すように、各柱10の4つの外側面(外周面)のうち、ユニット構造体1の外周囲OLに面していない側面11、11、言い換えれば、隣接する柱10と対向する側面11、11は、該柱10と接合された隅金物20(下部隅金物201、上部隅金物202)の側面23…(231…、232…)と、並行、且つ無段差状に配置されている。
【0020】
図3、及び図4に示すように、各梁30(30L、30S)の端部30a、30aは、隅金物20の側面23、23と柱10の側面11、11とに跨がって固定されている。
即ち、下部梁301(301L、301S)の端部301aは、下部隅金物201の側面231と柱10の側面11とに跨がって固定されている。上部梁302(302L、302S)の端部302aは、上部隅金物202の側面232と柱10の側面11とに跨がって固定されている。
各梁30は、例えばH型鋼材から構成される。下部梁301の下面311は下部隅金物201の下面211よりも上方に位置し、両下面311、211間の離隔はh1である。上部梁302の上面322は上部隅金物202の上面222よりも下方に位置し、両上面322、222間の離隔はh2である。本例においては、「離隔h1<離隔h2」に設定されている。
梁30L、30Sは、ユニット構造体1の外周囲OLよりも所定距離だけ内周側に退避した位置に配置されている。
【0021】
<接続基板>
図4(a)に示すように、接続基板40は、隅金物20の隣接する2つの側面23、23から隅金物20の外径方向に突出した半フランジ状である。接続基板40のうち、直交する2本の梁30L、30Sの端部30a、30a間に位置する部位44は、両梁の長手方向の夫々と交差する斜め方向に角状に面取されている。
【0022】
接続基板40のうち、梁30L、30Sとは上下方向に重ならない部位における面内適所には、ボルト挿通用の挿通孔43、43が貫通形成されている。挿通孔43、43は、接続基板40の長手方向の各端部に形成されている。より詳しくは、挿通孔43、43は、梁30L、30Sよりも外周側に、即ち、梁30L、30Sと外周囲OLとの間に配置されている。挿通孔43、43は、ユニット構造体1、1同士を上下方向又は横方向に連結する際に使用される。なお、直行する梁30、30間に位置する接続基板40の部位44に、ユニット構造体1、1同士を連結するための挿通孔を貫通形成してもよい。
【0023】
図4(a)に示すように、平面視でユニット構造体1の長方形の同一の頂点位置にある下部隅金物201と上部隅金物202、及び該各隅金物に接合された下接続基板401と上部接続基板402は、同一の平面視形状を有する。下部隅金物201及びその長孔251と、上部隅金物202及びその長孔252とは、上下方向に重ね合わせたときに互いに整合し合う形状及び位置関係を有する。下接続基板401及びその挿通孔431と、上部接続基板402及びその挿通孔432とは、上下方向に重ね合わせたときに互いに整合し合う形状及び位置関係を有する。
従って、図1のように2つのユニット構造体1A、1Bを、その長手方向と短手方向とを合致させた状態で上下方向に積層すると、長孔252と長孔251が連通し、挿通孔431と挿通孔432が連通する。
【0024】
図4(c)に示すように、下部接続基板401の肉厚t1は「肉厚t1≦離隔h1」を満たすが、特に本例では「肉厚t1=離隔h1」である。即ち、本例においては、下部接続基板401の上面411と下部梁301の下面311とが面接触している。下部接続基板401の上面411に対しては、2つの下部梁301L、301Sのそれぞれの端部301a、301aが溶接により固定されている。
図4(b)に示すように、上部接続基板402の肉厚t2は「肉厚t2≦離隔h2」を満たすが、特に本例では「肉厚t2=離隔h2」である。即ち、本例においては、上部接続基板402の下面422と上部梁302の上面322とが面接触している。上部接続基板402の下面422に対しては、2つの上部梁302L、302Sのそれぞれの端部302a、302aが溶接により固定されている。
【0025】
このように、下部接続基板401と下部梁301L、301Sとが面接触しているので、下部接続基板401に加わる荷重を下部梁301L、301Sが受けることができ、下部接続基板401の変形及び破損を防止できる。同様に、上部接続基板402と上部梁302L、302Sとが面接触しているので、上部接続基板402に加わる荷重を上部梁302L、302Sが受けることができ、上部接続基板402の変形及び破損を防止できる。
【0026】
更に、下部接続基板401は、下部梁301の下面311に密着するため、下部隅金物201に対して下部接続基板401を上下方向に精度よく位置決めできる。上部接続基板402は、上部梁302の上面322に密着するため、上部隅金物202に対して上部接続基板402を上下方向に精度よく位置決めできる。
【0027】
接続基板40の形状は、高張力ボルトを用いて複数のユニット構造体1、1を接合した場合に必要な強度を確保できるように設定される。一例として、M2-16サイズの高張力ボルトを用いる場合、180×160×H118mmの隅金物20に対して、接続基板40の幅(隅金物20の側面23からの突出量)は80mm、肉厚t1は12mm、肉厚t2は30mmに設定される。
図3等に示すように、下部隅金物201の下端縁231aに下部接続基板401の入隅側の端縁を溶接により固定し、上部隅金物202の上端縁232aに上部接続基板402の入隅側の端縁を溶接により固定した本実施形態の構造においては、隣接する柱10、10と該柱10、10間を接続する2つの梁(上部梁302と下部梁301)により形成される矩形状の構面が平行四辺形状に変形するような外力が加えられた場合であっても、通常の使用状況下では下部隅金物201と上部隅金物202が降伏するほどの影響を与えないことが確認されている。
【0028】
<ユニット構造体の接合構造(上下方向)>
図5は、図1のD-D断面図である。なお、当該部位の平面視における各部材の位置関係は図4(a)の平面図と同様である。図中Z2線は、ユニット構造体1Aの最上位位置、及びユニット構造体1Bの最下位位置を示す線である。
【0029】
2つのユニット構造体1A、1Bは、下方に位置するユニット構造体1Aの各上部接続基板402…の各挿通孔432…と、上方に位置するユニット構造体1Bの各下部接続基板401…の各挿通孔431…とが連通するように、上下方向に積層される。
両ユニット構造体1A、1Bの連通した挿通孔431、432内に、高張力ボルトBの軸部を挿通し、挿通孔431、432から突出した該軸部の先端部にナットNを螺着することにより、両ユニット構造体1A、1Bが締結、一体化されている。挿通孔431、432はユニット構造体1A、1Bの外周囲OLに面した位置にあり、ユニット構造体1A、1Bの外周側からアクセスしやすいため、両ユニット構造体1A、1Bの締結は容易である。
【0030】
上部隅金物202の上面222と上部接続基板402の上面412とが無段差状に配置され、下部隅金物201の下面211と下部接続基板401の下面421とが無段差状に配置されているため、上下方向への連結に際しては接続用のプレートを別途準備する必要がない。また、長孔251、252を用いたツイストロック接合を併用できる。下部接続基板401と上部接続基板402は、外周囲OLよりも外側には突出していないので、ラッシングロッドを用いたユニット構造体1A、1Bの拘束を併用することも可能である。
【0031】
なお、ユニット構造体1Aが地盤上に設置される場合、下部接続基板401の挿通孔431(図4(c)参照)から直接、又はベースプレート等を介してコンクリート地盤等にアンカーボルトを打ち込むことにより、ユニット構造体1Aを地盤に対して強固に固定することが可能である。
【0032】
<ユニット構造体の接合構造(横方向)>
図6は、複数のユニット構造体を横方向に連結した状態を示す図であり、(a)は各部材の位置関係を示す平面図であり、(b)は(a)のE-E断面図である。なお、(a)においてはボルトの図示を省略している。
本図には、複数のユニット構造体が平面視で線対称となる位置関係で横方向に並べられ状態を示している。ここでいう平面視で線対称となる位置関係とは、2つのユニット構造体1、1の短手方向に沿って伸びる梁30S、30Sが並行し、且つ対称軸と平行に伸びるように両ユニット構造体1、1が配置されていること、又は、2つのユニット構造体1、1の長手方向に沿って伸びる梁30L、30Lが並行し、且つ対称軸と平行に伸びるように両ユニット構造体1、1が配置されていることを意味する。
【0033】
上述の位置関係で2つのユニット構造体1D、1Eを横方向に並列に配置した場合に、ユニット構造体1D、1Eの隣接する挿通孔431同士と挿通孔432同士は、両ユニット構造体1D、1Eの角部(外周囲OL、OLの交点)からの離隔、言い換えれば、図中左右方向に伸びる外周囲OLからの距離が一致する。
【0034】
横方向に並べられた2つのユニット構造体1D、1Eを接合して一体化する場合は、補助接続基板50を用いる。補助接続基板50は、横方向に隣接して配置された2つのユニット構造体1D、1Eの、隣接する接続基板40、40の端部間(ここでは上部接続基板402、402の端部間)に跨がって配置される。補助接続基板50は平面視概略矩形状の平板であり、2つのユニット構造体1D、1Eが所定の間隔G(G≧0)を空けて配置された場合に、両上部接続基板402、402の挿通孔432、432と連通する貫通孔51、51を備える。挿通孔432、432と貫通孔51、51が夫々連通した状態にて、両孔に高張力ボルトBの軸部を挿通し、挿通孔432、432と貫通孔51、51から突出した該軸部の先端部にナットNを螺着することにより、両ユニット構造体1D、1Eが横方向に連結され、一体化される。
【0035】
2つのユニット構造体1D、1Eの配列方向(図中左右方向)に沿う補助接続基板50の長さLは、間隔Gを空けて隣接配置された2つのユニット構造体1D、1Eの上部梁302、302の間隔に等しくなるように設定されている。長さLと直交する方向における補助接続基板50の幅Wは各上部接続基板402、402の幅(上部隅金物202の側面からの突出量)と等しくなるように設定されている。補助接続基板50の厚さは、高張力ボルトを用いて複数のユニット構造体1、1を接合した場合に接合状態を維持するために必要な強度を確保できるように設定される。
【0036】
補助接続基板50は、上部接続基板402の下面422に添設された場合に、その長さL方向に伸びる一辺(幅方向の一端縁50a)が上部隅金物202、202の側面232、232と当接し、補助接続基板の幅W方向に伸びる二辺(長さ方向の両端縁50b、50b)が上部梁302、302の幅方向の夫々の端縁302b、302b(外周囲OL側の端縁)と当接するように構成されている。補助接続基板50の三辺がユニット構造体1D、1Eと当接するので、ユニット構造体1D、1Eを間隔Gにて位置決めできると共に、ユニット構造体1D、1Eのがたつきが防止され、高張力ボルトBに対してせん断荷重が加わりにくくなる。ユニット構造体1D、1Eを強固に、且つ安定的に連結できる。
【0037】
なお、2つのユニット構造体1D、1Eを横方向に接合して一体化する場合は、ユニット構造体1D、1Eの上に他のユニット構造体1が積層されない場合であっても、接合強度を確保するために、図6(b)に示すように、上部接続基板402、402を間に挟んで2枚の補助接続基板50、50を配置することが望ましい。即ち、上部接続基板402の上面412と下面422に夫々補助接続基板50、50を添設して、補助接続基板50、50と上部接続基板402、402とをボルトB及びナットNを用いて締結することが望ましい。
【0038】
2つのユニット構造体1D、1Eを横方向に並列に配置する場合、2つのユニット構造体1D、1Eは、その長手方向に沿って伸びる側面が隣接するように配置されてもよいし、その短手方向に沿って伸びる側面が隣接するように配置されてもよい。本実施形態においては、何れの場合も補助接続基板50を用いて連結できる。
【0039】
<ユニット構造体の接合構造(上下方向・横方向)>
図7は、4つのユニット構造体を上下方向と横方向に連結した状態を示す断面図である。なお、本連結構造における平面視の構成は図6(a)と同様であり、図7図6(a)のE-E断面に相当する断面図である。
図示する例は、2つのユニット構造体1D、1Eを横方向に所定の間隔Gを空けて並列に配置し、更に2つのユニット構造体1F、1Gを各ユニット構造体1D、1Eの上に夫々積層した例である。上方に位置する2つのユニット構造体1F、1Gは、横方向に所定の間隔Gを空けて並列に配置されている。
【0040】
横方向の連結には、補助接続基板50を使用する。補助接続基板50と、補助接続基板50によって連結される2つのユニット構造体(1Dと1E、1Fと1G)の関係は、上述の通りである。
下方に位置するユニット構造体1D、1Eの上部接続基板402、402の端部間には、補助接続基板50が跨がって配置される。補助接続基板50は、上部接続基板402、402の下面422、422に添設される。
上方に位置するユニット構造体1F、1Gの下部接続基板401、401の端部間には、補助接続基板50が跨がって配置される。補助接続基板50は、下部接続基板401、401の上面411、411に添設される。
接続基板401、402の挿通孔431、432と、補助接続基板50、50の貫通孔51、51とを連通させた状態にて、高張力ボルトBとナットNとによりユニット構造体1D~1Gを締結する。
本例においては、下部接続基板401と上部接続基板402を2枚の補助接続基板50によって挟むことにより、ユニット構造体1D~1Gを横方向と上下方向に連結して、接合強度を確保している。しかし、原理的には上部接続基板402の下面422、又は下部接続基板401の上面411の一方に1枚の補助接続基板50を配置することで、ユニット構造体1D~1Gを締結することは可能である。
【0041】
また、他のユニット構造体1が横方向に隣接していない接続基板40の長手方向端部は、補助接続基板50を使用することなく、高張力ボルトBとナットNとにより直接上下方向に締結される。
上下方向に積層されたユニット構造体1D、1Fと、ユニット構造体1E、1Gは、間にプレート等を介在させることなく直接積層されているので、安定した積層構造とできる。
【0042】
<本実施形態の効果>
ユニット構造体1のうち接続基板40以外は、従来の輸送用コンテナ等の構造部分そのものであるので、既存のユニット構造体1を活用できる。また、既存の輸送用コンテナに大きな改造を加えなくても、ユニット構造体1を得られる。また、本実施形態に示したユニット構造体は、既存の輸送用コンテナとしての規格を逸脱していないため、ツイストロック、ブリッジフィッティング、及びラッシングロッドを利用でき、ユニット構造体1を引き続き輸送用コンテナとして使用可能である。
接続基板40同士を、必要に応じて補助接続基板50を用いて、ボルトBとナットNによって締結することにより、複数のユニット構造体1…上下方向、及び横方向に強固に連結できるので、輸送用コンテナを容易にコンテナハウス化できる。コンテナハウスとして使用する場合でも、ツイストロック、ブリッジフィッティング、及びラッシングロッドを併用できる。
ユニット構造体1は、輸送用コンテナとして、又はコンテナハウスとして、相互に入れ替えて使用できる。
【0043】
〔変形実施形態〕
図8は、他の例に係る2つのユニット構造体を上下方向に連結した状態を示す図である。本図は、図1のD-D断面図に対応する。図8に示すように、本発明に係る接続基板40は、梁30の応力を柱10に伝達する通しダイアフラム60を備えるユニット構造体1H、1Jに適用されてもよい。通しダイアフラム60は、H型鋼材から構成される梁30のフランジプレートと同等の上下方向位置に配置されており、柱10を構成する角形鋼管は当該位置において分断され、分断された角形鋼管の双方は夫々通しダイアフラム60と溶接されている。
同様に、本発明に係る接続基板40は、梁30の応力を柱10に伝達する外ダイアフラムを備えるユニット構造体に適用されてもよい。
いずれの場合も、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様に係るユニット構造体1は、平面視で長方形の各頂点に相当する位置に立設される4本の柱10と、各柱の上端に下面が固定され、且つ各柱の下端に上面が固定される概略直方体状の8つの隅金物20と、隣接する各柱の上端部10a間及び下端部10b間に夫々一本ずつ差し渡されて、各柱及び各隅金物に跨がって端部が固定される合計8本の梁30と、を備えた直方体状のユニット構造体1であって、隅金物の4つの外周面(側面23、24)のうち、梁の端部が固定される2つの外周面(側面23)の端縁(下端縁231a、上端縁232a)に沿って平面視が略L字形状の接続基板40が固定されており、該接続基板は柱の下端が固定された隅金物(下部隅金物201)の下面211、又は柱の上端が固定された隅金物(上部隅金物202)の上面222と並行、且つ無段差状に配置されていることを特徴とする。
【0045】
本態様に係るユニット構造体は、所定の規格に従った輸送用コンテナの隅金物の端縁に接続基板を接合することにより得られる。本態様に係るユニット構造体は、既存の輸送用コンテナに対して大きな改造を施すことなく得られる。
ユニット構造体において下部接続基板401は、その下面421が下部隅金物201の下面211と並行且つ無段差状となるように下部隅金物に対して固定され、上部接続基板402は、その上面412が上部隅金物202の上面222と並行且つ無段差状となるように上部隅金物に対して固定される。そのため、既存の輸送用コンテナに接続基板を固定して本態様のユニット構造体を作製しても、その全高は接続基板の固定前後で変わらない。従来通り、ツイストロックを利用してユニット構造体同士を接合することも可能である。
接続基板は、梁の端部が固定される隅金物の外周面に固定されるため、ユニット構造体は、既存の輸送用コンテナの幅方向長及び長手方向長を変更せずに作製可能である。
従って、元の輸送用コンテナが満足する規格を満たしたままで、本態様のユニット構造体を得ることができる。
また、輸送用コンテナから本態様に示すユニット構造体を作製する場合、輸送用コンテナの構造上、接続基板には梁とは上下方向に重ならない部分(梁30から外周囲OL側、直行する梁30、30間)ができるため、当該部位を利用して他のユニット構造体を接合可能となる。
【0046】
<第二の実施態様>
本態様に係るユニット構造体1において、接続基板40の長手方向の端縁40aは、隅金物20の4つの外周面(側面23、24)のうち、梁30の端部30aが固定されていない2つの外周面(側面24)よりも外方には突出していないことを特徴とする。
本態様によれば、既存の輸送用コンテナに接続基板を固定して本態様のユニット構造体を作製しても、既存の輸送用コンテナの幅方向長及び長手方向長は変更されない。従って、元の輸送用コンテナが満足する規格を満たしたままで、本態様のユニット構造体を得ることができる。ブリッジフィッティング、及びラッシングロッドを利用してユニット構造体同士を接合、拘束することも可能である。
【0047】
<第三の実施態様>
本態様に係るユニット構造体1において、隅金物20の下面又は上面と平行且つ無段差状に配置された接続基板の面の反対面(下部接続基板401の上面411、上部接続基板402の下面422)は、該隅金物に端部が固定された梁20と密着しており、且つ該梁に固定されていることを特徴とする。
即ち、下部接続基板401の上面411は、下部梁301の下面311と密着(面接触)し、且つ下部梁301に固定されている。また、上部接続基板402の下面422は、上部梁302の上面322と密着(面接触)し、且つ上部梁302に固定されている。
本態様によれば、梁が接続基板に加わる荷重を受けることができるので、接続基板の変形及び破損を防止できる。
【0048】
<第四の実施態様>
本態様に係るユニット構造体1の接続基板40のうち、各梁30が上下方向に重ならない領域には、他のユニット構造体1を締結する挿通孔43が貫通形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、ボルト及びナットを用いて、ユニット構造体同士を容易に連結できる。特に、上下方向には連結用の他の基板等を使用せずに、直接他のユニット構造体を連結できる。
【0049】
<第五の実施態様>
本態様に係るユニット構造体の連結構造(図6図7)は、所定の間隔Gを空けて横方向に並列配置されたユニット構造体1、1と、両ユニット構造体の隣接する接続基板40、40の端部間に跨がって配置される補助接続基板50とを備え、補助接続基板は、両ユニット構造体の対向する梁30、30の幅方向の夫々の端縁30b、30bと、該梁の端部が固定された両隅金物20、20の側面23、23に夫々当接した状態で、両接続基板に固定されることを特徴とする
本態様によれば、ユニット構造体同士を横方向に連結できる。また、補助接続基板の三辺が両ユニット構造体と当接するので、両ユニット構造体を所定の間隔にて位置決めできると共に、がたつきが防止される。従って、連結に使用するボルトに対してせん断荷重が加わりにくくなり、両ユニット構造体を強固に、且つ安定的に連結できる。
この連結構造は、第一乃至第四の実施態様に示したユニット構造体が有する効果を享受する。
【符号の説明】
【0050】
1、1A~1J…ユニット構造体、10…柱、10a…下端部、10b…上端部、11…側面、20…隅金物、201…下部隅金物、202…上部隅金物、21、211、212…下面、22、221、222…上面、23、231、232…(梁が固定された)側面、231a…下端縁、232a…上端縁、24、241、242…(外周囲に面した)側面、25、251、252…長孔、26、261、262…横孔、30…梁、301…下部梁、302…上部梁、30a、301a、302a…端部、302b…端縁、31、311…下面、32、322…上面、40…接続基板、401…下部接続基板、402…上部接続基板、40a、401a、402a…端縁、41、411、412…上面、42、421、422…下面、43、431、432…挿通孔、50…補助接続基板、50a、50b…端縁、51…貫通孔、60…通しダイアフラム、OL…(ユニット構造体の)外周囲、h1、h2…(隅金物と梁の高さ方向の)離隔、t1、t2…(接続基板の)肉厚、G…(ユニット構造体間の)ギャップ、L…(補助接続基板の)長さ、W…(補助接続基板の)幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8