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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009516
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174788
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2017138411の分割
【原出願日】2017-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】出島 悠貴
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】複数のアラームが発生し、複数の復旧操作を行うべき状況であるときに、ユーザーが複数の復旧操作の優先順位を簡単に認識でき、しかも、迅速にその優先順位で復旧操作を実行させることが可能な分析装置を提供すること。
【解決手段】本発明の検体分析装置は、測定部100、表示部200および制御部300を有する。制御部300は、測定部100および表示部200制御し、表示部200に、測定部100に発生している不具合のアラームを表示するアラーム表示領域51、及び、該アラーム表示領域に表示されたアラームを解除する復旧操作を表示する復旧操作表示領域52を表示させ、複数のアラームが発生している場合、それらを解除する複数の復旧操作を優先度が高いものから低いものへと順に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分析のための測定を行う測定部と、表示部と、制御部とを有する検体分析装置であって、
該制御部は、
該測定部を制御し、該測定部からの測定データを分析する一方、
該表示部に、該測定部に発生している不具合のアラームを表示するアラーム表示領域と、該アラーム表示領域に表示されたアラームを解除する復旧操作を表示する復旧操作表示領域を表示させ、並びに
複数のアラームが発生している場合、それらを解除する複数の復旧操作を優先度が高いものから低いものへと順に表示させ、および
該複数の復旧操作が互いに同一の操作を有する復旧操作を含む場合、該同一の操作を有する復旧操作のうちの少なくとも一つの復旧操作から該同一の操作を間引く校正をし、
校正後、該複数の復旧操作とともに、該複数の復旧操作の復旧操作毎の指令ボタンをそれぞれの復旧操作の表示に隣接させて表示させる、検体分析装置。
【請求項2】
復旧操作毎の指令ボタンは、そのボタンが押されて復旧操作が実行中の復旧操作の指令ボタン以外は非アクティブになるものである、請求項1記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、アラーム表示領域にアラームが表示されている状態で、測定部が測定可能状態か測定不可能状態かを表す標識を表示させる、請求項1または2記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液、尿等の検体の分析を検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の医療機関等において、血液、尿等の検体の分析(粒子の計数を含む)を行う自動分析装置が使用されている。この種の自動分析装置は、概しては、検体の測定を行う測定部と、該測定部の作動を制御する制御部とを有して構成される。測定部には、サンプリングノズルを含む配管系とそれを駆動する駆動ユニットとを有する駆動部、試薬収容部、測定チャンバー、各種ポンプなど、測定に関連する装置が含まれる。例えば、血液の分析(血液細胞の計数を含む)では、サンプリングノズルが検体容器に収容された血液を所定量だけ吸引し、1以上の測定チャンバーに分注し、試薬の注入等も行い、該測定チャンバーにおいて測定を行う。測定の際、制御部は、測定部の動作の制御に加えて、測定部から得られる測定データの分析をも行う(例えば、特許文献1など)。
【0003】
近時において、この種の分析装置は、装置の測定精度の向上や測定機能の向上等以外に、操作性を向上させる試みがなされている。例えば、装置の測定部に何らかの不具合が発生した場合に、その不具合を表すアラームと、アラームを解除するための復旧操作を表示する表示部を設けたものが知られている(例えば、特許文献2)。すなわち、当該装置では、測定部に不具合が発生したとき、ユーザーは表示部を見てアラームとその解除のための復旧操作を認識し、復旧操作を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-228285号公報
【特許文献2】特開2012-163567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しょうとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の装置では、測定部に複数の不具合が発生し、表示部に複数のアラームが表示されている場合、表示部には複数のアラームの個々のアラームの復旧操作(すなわち、個々の不具合を解消するそれぞれの復旧操作)が全て表示されるので、ユーザーは複数の復旧操作をいかなる順番で行えばよいかがわからない。例えば、不具合が「試薬不足」であるアラーム1と不具合が「装置の扉が開いた状態」であるアラーム2が生じているとき、アラーム1を解除する復旧操作1(「試薬を交換し、ブランク測定を実施する。」)とアラーム2を解除する復旧操作2(「装置の扉を閉める。」)が表示部に表示される。しかし、復旧操作1を先に行うと、装置の扉が開いた状態で駆動部が動作し、危険である(実際には、ソフト上でインターロックがかかり動作できないようになっている)。すなわち、表示部に表示された複数の復旧操作は分析装置の動作上の安全性等の点から実行すべき優先順位が自ずと定まっているが、装置の内部構造や動作態様の詳細を知らないユーザーはこの優先順位を知ることができない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み成されたものであり、その解決しょうとする課題は、複数のアラームが発生し、複数の復旧操作を行うべき状況であるときに、ユーザーが複数の復旧操作の優先順位を簡単に認識でき、しかも、迅速にその優先順位で復旧操作を実行させることが可能な分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の主たる構成は次のとおりである。
[1] 検体の分析のための測定を行う測定部と、表示部と、制御部とを有する検体分析装置であって、
該制御部は、
該測定部を制御し、該測定部からの測定データを分析する一方、
該表示部に、該測定部に発生している不具合のアラームを表示するアラーム表示領域と、該アラーム表示領域に表示されたアラームを解除する復旧操作を表示する復旧操作表示領域を表示させ、
複数のアラームが発生している場合、それらを解除する複数の復旧操作を優先度が高いものから低いものへと順に表示させる、検体分析装置。
[2] 前記制御部は、複数の復旧操作が互いに同一の操作を有する復旧操作を含む場合、該同一の操作を有する復旧操作のうちの少なくとも一つの復旧操作から該同一の操作を間引く校正をしてから、複数の復旧操作を表示させる、上記[1]記載の検体分析装置。[3] 前記制御部は、複数の復旧操作とともに、該複数の復旧操作の復旧操作毎の指令ボタンをそれぞれの復旧操作の表示に隣接させて表示させる、上記[1]記載の検体分析装置。
[4] 復旧操作毎の指令ボタンは、そのボタンが押されて復旧操作が実行中の復旧操作の指令ボタン以外は非アクティブになるものである、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の検体分析装置。
[5] 前記制御部は、アラーム表示領域にアラームが表示されている状態で、測定部が測定可能状態か測定不可能状態かを表す標識を表示させる、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の検体分析装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の検体分析装置では、複数のアラームが表示され、複数の復旧操作を行うべき状況であるときに、複数の復旧操作が優先度の高いものから低いものへと順に表示されるので、ユーザーは表示部をみて、複数の復旧操作の優先順位を認識でき、しかも、迅速にその優先順位で復旧操作を実行させることができる。
【0009】
また、本発明の検体分析装置では、複数のアラームが表示され、複数の復旧操作を行うべき状況であるときに、複数の復旧操作が互いに同一の操作を有する復旧操作を含む場合、複数の復旧操作は、優先度の高いものから低いものへと順に表示されるだけでなく、互いに同一の操作を有する復旧操作の少なくとも一つの復旧操作から該同一の操作を間引く校正がなされて表示される。このため、同じ操作が重複して実行されることを軽減または回避でき、復旧操作の実行時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明の検体分析装置の好ましい態様では、アラームが表示されている状態で、測定部が測定可能か否かの状態を表す標識を表示させる構成としたことから、例えば、データの信頼性は重要視せず、とりあえず検体の測定データを採っておきたいという要求があるときに、ユーザーは表示部を見て、アラームが発生していてもアラームの復旧操作を実行させなくても検体の測定を行える状態であることが分かり、検体測定における臨機応変な対応が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明による検体分析装置の構成の一例を示したブロック図である。同図では、測定に係る装置、機構、配管などの構造的部分と制御部との関係をブロックで示しており、電気的な配線は図示を省略している。
図2図2は、本発明による検体分析装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明による検体分析装置におけるガイダンスウィンドウの一例を示す図である。
図4図4は、本発明による検体分析装置におけるガイダンスウィンドウの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の検体分析装置(当該装置と呼ぶ場合もある)の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の検体分析装置の主要部分の構成の一例を示した図である。図1に例示するように、当該装置1は、測定部100と、表示部200と、制御部300とを少なくとも有する。図1は、測定部100と表示部200と制御部300との関係を示すブロックであり、具体的な配線は図示を省略している。
【0013】
図1の例は、血液細胞の計数と白血球の分類とを行う血液自動分析装置であり、測定部100は、サンプリングノズル駆動部10、測定チャンバー20、配管P1、P2、P3等を含んでいる。配管は、各種のポンプ、電磁弁装置、液体洗浄剤タンク、希釈液タンク、試薬タンクをも含んでいる(これらは図示せず)。また、測定チャンバー20は、好塩基球を計数するための測定チャンバー(BASOチャンバー)21、リンパ球(Lymphocyte)、単球(Monocyte)、好中球(Neutrophil)、好酸球(Eosinophil)を分類し計数するための測定チャンバー(Lymphocyte、Monocyte、Neutrophil、Eosinophilの頭文字から、LMNEチャンバーと呼ぶ)22、赤血球を計数するための測定チャンバー(RBCチャンバー)23、白血球の計数やHGB(ヘモグロビン濃度)分析を行うための測定チャンバー(WBCチャンバー)24を備えている。なお、図中の符号30は検体容器であり、検体容器30が当該装置にセットされた状態を示している。
【0014】
表示部200としては、所謂「タッチパネル」等の液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ装置に入力装置機能を具備させたものが好適である。このような表示兼入力装置としては、CRTの画面上で入力も行えるようにしたものであってもよく、表示画面が入力部として機能するものであれば制限なく使用できる。表示部200の表示画面には、測定部100で得られる分析結果、測定部で発生する不具合のアラーム、アラームを解除する復旧操作、復旧操作の実行を命令する指令ボタン等を表示する。
【0015】
制御部300は、測定部100及び表示部200の制御を行う。ロジック回路等によって構築されたものであってもよいが、コンピューターが適切であり、キーボードやマウス等の入力部(入力手段)、外付けの演算装置や種々の駆動装置(センサーやモーター用のドライバーなど)、外付けの記憶装置、種々のインターフェイスを含んでいてもよい。
【0016】
[制御部]
制御部300は、測定制御部310と動作状態管理部320を有する。測定制御部310は、測定部100の各部の動作(サンプリングノズル駆動部の各部の動作、各測定チャンバーでの測定動作など)を制御し、測定部から送られてくる測定データを分析のために処理(演算)し、分析結果を出力するように構成されており、図1の例では、測定制御部310は、測定部100の各部の動作を制御する動作制御部311と、測定データを処理し分析結果を出力するデータ処理部312と、データ処理結果等を格納する記憶部313を有する。また、動作制御部311は、表示部200に入力されたアラーム解除のための復旧操作を実行させる命令信号を受けて、測定部100における復旧操作の動作を制御する。
【0017】
動作状態管理部320は、測定部100の各部の動作及び構成要素(駆動系、部品、試薬等)に不具合が検出されたときに送られてくる信号を監視し、その不具合のアラームとアラーム解除のための復旧操作を表示部200に表示する処理を行う。動作状態管理部3
20は、測定部100で起こる種々の不具合を不具合名を含むアラームとして表示するためのデータ(アラームデータ)、アラームを解除する復旧操作の内容を文章で表示するためのデータ(復旧操作データ)、復旧操作を実行させる指令ボタンを表示させるためのデータ(指令ボタン表示用データ)等を予め格納している記憶部321と、不具合の発生状況(アラームの発生状況)に応じて、表示部200に表示させる復旧操作の内容や実行する優先順位を決定する処理(演算)を行うデータ処理部322を有する。
【0018】
なお、前述のとおり、不具合(アラーム)を解除する復旧操作は、不具合の内容によって単一の操作で構成されるもの、複数の操作で構成されるものがある。これらの復旧操作を構成する単位操作は測定部の動作や構成要素との関連からの階層付けがあり、この階層データも記憶部321に予め格納されている。ある復旧操作を行うためには別の復旧操作を行わなければならない場合があり、復旧操作を行える順序を階層データとして記憶している。実施例では各復旧操作毎に、順序を示す重複しない数字を記憶させ、復旧操作と順序が関連付けられている。
【0019】
以下、制御部がコンピューターを主体に構成されたものであるとして、制御内容の説明を行う。
測定制御部310が行なう制御は、測定部100の各部の動作(サンプリングノズル駆動部の各部の動作、各測定チャンバーでの測定動作など)の制御、及び、測定部100から送られてくる測定データの分析のための演算処理、分析結果を出力、格納等に係る制御等であり、これらの制御は、従来公知の分析装置(特許文献1等参照)の一般的な制御内容と同じであり、詳しい説明は省略する。
【0020】
動作状態管理部320は、測定部100の各部の動作状態及び各部を構成する要素(部品、試薬等)の状態を監視し、測定部100に不具合が発生したときに、表示部200に不具合のアラーム、アラームを解除する復旧操作及び復旧操作の実行を命令するための指令ボタンを表示する処理を行う。
図2は処理手順のフローチャートである。
【0021】
ステップS1において、測定部のサンプリングノズル駆動部10、測定チャンバー20、及び配管P1、P2、P3等、並びに、配管P1、P2、P3に含まれる、ポンプ、電磁弁装置、液体洗浄剤タンク、希釈液タンク、試薬タンク等の構成要素に設けられたセンサから送られてくる信号を取得する。
【0022】
ステップS2において、信号を解析して、不具合の検出を行い、ステップS3で不具合が無しの場合は、ステップS1へ処理が戻される。一方、ステップS3で不具合を検出した場合は、ステップS4において検出された不具合を表示部200にアラーム表示する。
【0023】
表示部200は、例えば、図3に示すように、アラーム表示領域51及び復旧操作表示領域52を含むガイダンスウィンドウ50を表示し、アラーム表示領域51に不具合の名称をアラームとして表示し、復旧操作表示領域52に復旧操作を文章で表示する。図3の例では、復旧操作表示領域52はガイダンスウィンドウ50の中のアラーム表示領域51の上に表示させているが、かかるレイアウトに限定されない。アラーム表示領域51及び復旧操作表示領域52とが互いに関連するものであることが一目で視認できるレイアウトであればよい。
【0024】
アラーム表示領域51にはその時点で発生している不具合のアラームを全て表示する。発生している不具合が1つの場合は、アラーム表示領域51にその不具合のアラームが1つ表示される。図3では、測定部100で発生した「スタートアップ未完了」、「CRP用試薬キットAが空」、「洗浄剤有効期限切れ」、「洗浄剤が空」及び「試薬有効期限切
れ」の不具合の名前を示すアラームが不具合の発生時間とともに表示されている。ユーザーはアラーム表示領域51を見ることで「スタートアップ未完了」、「CRP用試薬キットAが空」、「洗浄剤有効期限切れ」、「洗浄剤が空」及び「試薬有効期限切れ」の不具合が時系列で発生していることを確認することができる。
【0025】
ステップS5で、復旧操作表示領域52に表示する復旧操作の表示内容を決定するための以下の解析処理を行う。
(処理1)
発生しているアラームが1つか複数かを判定し、アラームが1つの場合は、記憶部に格納されている、そのアラームを解除する所定の操作からなる復旧操作を復旧操作表示領域52にそのままの内容で表示することを決定する。アラームが複数の場合、複数のアラームの全ての復旧操作(複数の復旧操作)を総合的に解析して、それら複数の復旧操作が互いに同一の操作を有する復旧操作を含む場合、該同一の操作を有する復旧操作の少なくとも一つの復旧操作から該同一の操作を間引く校正を行う。すなわち、例えば、2つの復旧操作が同一の操作を含む場合、2つの復旧操作のいずれか一方から同一の操作を間引く。また、3つの復旧操作が同一の操作を含む場合、3つの復旧操作のうちの2つの復旧操作から同一の操作を間引くことができる。
【0026】
例えば、不具合が「モーター原点検知失敗」であるアラームを解除する復旧操作と不具合が「サンプルホルダ故障」であるアラームを解除する復旧操作は、それぞれが「モーターを所定の位置に戻すオートコントロールというシーケンス(シーケンス1)の実行」を含んでいる。このため、これら2つのアラームが発生している場合、いずれか一方の復旧操作において、当該シーケンスを実行する操作を間引く。
【0027】
また、不具合が「温調未完了」であるアラームを解除する復旧操作は、「液を配管に充填し測定の準備を行うスタートアップをするというシーケンス(シーケンス2)の実行」であるが、この「スタートアップ」は上記の「オートコントロール」の動作を含む。このため、例えば、「温調未完了」のアラームと上記の「モーター原点検知失敗」及び/又は「サンプルホルダ故障」のアラームと発生している場合、これらの復旧操作から下位のシーケンスであるシーケンス1を間引く。
【0028】
(処理2)
複数のアラームの全ての復旧操作(複数の復旧操作)を総合的に解析してそれらを実行する復旧操作の優先順位を決定する。例えば、前述したように、不具合が「試薬不足」であるアラーム1と、不具合が「装置の扉が開いた状態」であるアラーム2が発生しているとき、アラーム2を解除する復旧操作2(「装置の扉を閉める。」)、アラーム1を解除する復旧操作1(「試薬を交換し、ブランク測定を実施する。」)の順序で復旧操作を実行することが決定される。
【0029】
ステップS6で、ステップS5の解析処理で優先順位が決定された復旧操作を、その優先順位(実行すべき順番)が分かるように、それぞれの復旧操作の実行を命令する指令ボタンとともに表示部200に表示する。
【0030】
図3の例では、復旧操作表示領域52に、それぞれの復旧操作の先頭に実行させる優先度の順位を表す数字を付して、復旧操作表示領域52に優先度の高いものから低いものへと順に並べて表示し、実行させる復旧操作の優先度の順番(優先順位)がユーザーに分かるように表示している。また、それぞれの復旧操作の表示の横にその復旧操作の実行を命令する指令ボタン53を隣接させて表示して、個々の復旧操作を迅速に実行させることができるようにしている。復旧操作を実行させるための指令ボタンが装置の表示部と離れたところにあると、表示部を見て実行させる復旧操作の優先度の順番(優先順位)を知るこ
とができても、直ちにその順番通りに復旧操作を実行することができないが、本発明はこのような問題も解消することができる。なお、複数の復旧操作の表示は必ずしも図3のように全ての復旧操作を一度に並べて表示せず、優先度の高いものから1つずつ表示し、1つの復旧操作を実行させた後、次の復旧操作を表示するようにしてもよい。また、1つずつでなく、複数の復旧操作を表示してもよい。この場合、表示する複数の復旧操作は優先順位の高い順に表示する。さらに表示した複数の復旧操作の全てを実行した後に、次に優先順位の高い複数の復旧操作を表示しても良いし、表示した複数の復旧操作の1つを実行
した後、次に優先順位の高い1つの復旧操作を表示しても良い。このようにして、複数の
復旧操作を優先度が高いものから低いものへと順に表示させる。
【0031】
以上の処理により、当該装置は、測定部100に不具合が発生すると、表示部200のガイダンスウィンドウ50に不具合の発生状況(アラーム)と、不具合の解消のための復旧操作(アラーム解除のための復旧操作)が表示され、ユーザーは復旧操作の優先順位を認識でき、しかも、迅速にその優先順位で復旧操作を実行させることができる装置として動作することができる。
【0032】
また、上記の復旧操作表示領域52に表示する複数の復旧操作のそれぞれの表示の横に表示させる指令ボタン53を、そのボタンが押されて復旧操作が実行中の復旧操作の指令ボタン以外は非アクティブになる態様のボタンとすることができ、かかる態様のボタンとすることにより、復旧操作の優先順位とは異なる誤った順序で復旧操作を実行させることを防止することができる。また、指令ボタン53はその復旧操作の実行が完了した後は、ボタンの表示自体が消える態様のボタンとすることができ、かかる態様のボタンとすることにより、誤って実行が完了した復旧操作を誤って再度実行させることも防止することができる。
【0033】
図4は、本発明の検体分析装置の表示部に表示するガイダンスウィンドウの他の例であり、図3とは、ガイダンスウィンドウ内のアラーム表示領域51及び復旧操作表示領域52とは異なる領域に、アラーム表示領域51にアラームが表示されている状態で、測定部100が測定可能状態か測定不可能状態かを識別する標識54を表示するようにした点が異なる。すなわち、アラーム表示領域51にアラームが表示されている状態で、測定部100が測定可能状態であるときは標識54が黄色に点灯し、測定部100が測定不可能状態であるときは、標識54が赤に点灯し、アラーム表示領域51にアラームがない場合、標識54自体が消える。
【0034】
測定部100で発生する不具合には、例えば、溶血剤試薬液切れ等のその不具合が解消していなければ(即ち、アラーム解除のための復旧操作が実行済みでなければ)、検体の測定が行えないものと、例えば、試薬の有効期限切れ等のその不具合が解消されなくても(即ち、アラーム解除のための復旧操作が実行されていなくても)、検体の測定を行えるものがあるが、本発明の検体分析装置を図4のガイダンスウィンドウを表示させる態様にすることで、例えば、データの信頼性は重要視せず、とりあえず検体の測定データを採っておきたいという要求があるときに、ユーザーは表示部を見て、アラームが発生していてもアラームの復旧操作を実行させなくても検体の測定を行える状態であることが分かり、検体測定における臨機応変な対応が可能になる。図4のガイダンスウィンドウでは、アラーム表示領域51にアラームが表示されている状態で、測定部100が測定可能状態であるときは標識54が黄色に点灯し、測定部100が測定不可能状態であるときは、標識54が赤に点灯する。また、アラーム表示領域51にアラームがない場合、標識54自体が消える。
【0035】
[不具合(アラーム)と復旧操作]
本発明の検体分析装置において、表示部200にアラームとして表示される不具合とそ
のアラームの解除のために実行させる復旧操作としては、上述したもの以外に例えば以下のものが挙げられる。
【0036】
(1)不具合:「CRP保冷庫扉空き」、復旧操作:「保冷庫扉を閉じる」
(2)不具合:「サンプルホルダ位置が不正」、復旧操作:「サンプルホルダを開けて位置調整」
(3)不具合:「廃液タンク満杯」、復旧操作:「タンクの廃液を捨てる」
(4)不具合:「温調未完了」、復旧操作:「室温の確認」
(5)不具合:「バッテリー切れ」、復旧操作:「バッテリーの交換後時間の設定」
【0037】
〔測定部の細部の構成〕
図1の例では、測定チャンバー20は、分析目的(血液細胞の計数、白血球の分類、免疫測定など)に応じて、インピーダンス法(電気抵抗法)、フローサイトメトリー(光学的な粒子分析法)、集光型フローインピーダンス法(インピーダンス法とフローサイトメトリーを1つの流路で行う方法)などの分析法を実施し得るように構成される。ノズル11は、駆動ユニット12の作動により、水平方向、垂直方向に移動し、該ノズルの下端側が検体容器25内や各測定チャンバー20内に入り、液体の吸引や吐出を行なう。測定チャンバー20は、制御部30に制御されて、分析のための測定動作を行ない、測定データを制御部30に送る。制御部30は、送られて来た測定データを処理し、度数分布などの分析を行い、分析結果を出力する。測定部100の各部の構造や測定のための動作(ノズルの動作、各測定チャンバー内での測定のための動作、各種ポンプ及び電磁弁装置の動作)、制御部200での分析のための演算処理は、特許文献1など、従来公知の自動分析装置の技術を参照することができる。
【0038】
図1に例示する血液分析装置では、ノズル11は、検体容器に収容された検体(血液)を所定量だけ吸引し、それを測定チャンバー20に分配する。図1の例では、測定チャンバー20として、BASOチャンバー21、LMNEチャンバー22、RBCチャンバー23、WBCチャンバー24が設けられている。LMNEチャンバーにはフローセル(図示せず)が接続されており、試薬による必要な処理を行い、該フローセルにおいて集光型フローインピーダンス法を実施し、リンパ球、単球、好中球、好酸球を計数するように構成されている。特許文献1に示すように、これらの測定チャンバーに加えて、CRP値の測定など免疫測定用の測定チャンバーや、ノズルに付着した血液を洗浄したり、該ノズル内の余分な血液検体を捨てるための洗浄用のチャンバーが設けられていてもよい。尚、洗浄用のチャンバーは、測定チャンバーが兼用してもよい。
【0039】
検体が分配された各測定チャンバーでは、制御部による制御のもとでそれぞれの測定チャンバー特有の計数データの取得が行なわれる。制御部では、各測定チャンバーから送られる各計数データが処理され、例えば、血液分析では、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平均赤血球ヘモグロビン濃度、血小板数、赤血球粒度分布幅、平均血小板容積、血小板粒度分布幅、血小板クリット値、リンパ球数、リンパ球比率、単球数、単球比率、顆粒球数、顆粒球比率、好中球数、好中球比率、好酸球数、好酸球比率、好塩基球数、好塩基球比率、CRP値(C反応性蛋白質濃度)、血糖値、などについての分析が行なわれる。
【0040】
検体は、血液、尿、便、細胞などの生体由来の試料以外に、ガラス粒子、セラミックス粒子等の無機試料であってよく、測定チャンバーは、分析すべき検体に応じたものを設けることができ、制御部は、検体の分析に応じて構成されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、測定部に複数の不具合が発生し、複数のアラームの復旧操作を行うべ
き状況であるときに、ユーザーは簡単に複数の復旧操作の優先順位を認識でき、しかも、迅速にその優先順位で復旧操作を実行させることができる自動分析装置を提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0042】
10 サンプリングノズル駆動部
11 サンプリングノズル
12 駆動ユニット
20 測定チャンバー
30 検体容器
100 測定部
200 表示部
300 制御部
50 ガイダンスウィンドウ
51 アラーム表示領域
52 復旧操作表示領域
図1
図2
図3
図4