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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095167
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物および液晶調光素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20220621BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20220621BHJP
   C09K 19/56 20060101ALI20220621BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08F2/44 B
G02F1/13 500
G02F1/13 505
C09K19/34
C09K19/32
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/20
C09K19/54 Z
C09K19/38
C09K19/56
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020208329
(22)【出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】秋倉 美里
(72)【発明者】
【氏名】平井 吉治
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
4H027
4J011
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088MA20
2H189AA04
2H189CA08
2H189HA16
4H027BA01
4H027BA12
4H027BA13
4H027BB03
4H027BB11
4H027BC10
4H027BD02
4H027BD05
4H027BD07
4H027BD11
4H027BD24
4H027BE04
4H027CD01
4H027CD05
4H027CG05
4H027CM01
4H027CQ01
4H027CQ05
4H027CT01
4H027CT05
4J011PA23
4J011PA24
4J011PA26
4J011PA30
4J011PA35
4J011PA43
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA15
4J011QA33
4J011QA34
4J011QA37
4J011QA38
4J011QA39
4J011QA42
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB24
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA54
4J011SA58
4J011UA01
4J011VA01
4J011VA05
4J011WA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リバースモードで駆動する液晶調光素子において、長時間、高温高湿や低温の環境でも、1.液晶調光素子の電極間に印加していないときの透明性を維持しつつ、かつ、2.液晶複合体と液晶配向膜との密着性を向上させる。
【解決手段】(A)式(3)で表される化合物を含む液晶組成物と、(B)式(M-2)で表される化合物である重合性化合物と、(C)開始剤とを含有する、重合性液晶組成物。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)で表される化合物を含む液晶組成物と、
式(M-2)で表される化合物である重合性化合物と、
開始剤とを含有する、重合性液晶組成物。
式(3)において、
およびRは、独立して、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは炭素数2から12のアルケニルオキシであり、
環Dおよび環Fは、独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素もしくは塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイルまたは少なくとも1つの水素がフッ素もしくは塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり、
環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、3,4,5,6-テトラフルオロフルオレン-2,7-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾチオフェン-3,7-ジイルまたは1,1,6,7-テトラフルオロインダン-2,5-ジイルであり、
およびZは、独立して、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0または1であり、
cとdとの和は、3以下である。
式(M-2)において、
101は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンの1つ以上の水素は、1つ以上の-CH-は、CF-、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、
103は、環式炭化水素基または複素環基であって、かつ、炭素数5から35のものであって、これらの基の1つ以上の-CH-は、水素が炭素数1から12のアルキルで置き換えられたもの、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよい。
【請求項2】
(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物を、さらに含有する請求項1の重合性液晶組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物が、(メタ)アクリル基を複数有するウレタン(メタ)アクリレート重合体である請求項2の重合性液晶組成物。
【請求項4】
さらに、式(2)で表される化合物を含有する請求項1~3のいずれかに記載の重合性液晶組成物。<<(M-2)が貼り付いてますけど(江本)>>

式(2)において、
およびRは、独立に、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素若しくは塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり、
環Bおよび環Cは、それぞれ独立に、1,4-シクロヘキシレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンまたはピリミジン-2,5-ジイルであり、
は、単結合、エチレン、ビニレン、エチニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
bは、1、2または3である。
【請求項5】
請求項2に記載の(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物が、複数のエステル結合または複数のポリエーテル結合を有する請求項2から4のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
請求項2に記載の(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物の重量平均分子量が2,000から30,000である請求項2から5のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
さらに、式(M-1)で表される化合物を含有する請求項1から6のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
式(M-1)において、
100は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100およびR101は、それぞれ独立して、水素、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のヒドロキシアルキルであり、これらのアルキルもしくはヒドロキシアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-N(R102)-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、R102は、水素、炭素数1から12のアルキルである。
【請求項8】
式(M-1)において、
100は、水素またはメチルであり、
100およびR101は、独立して、水素、炭素数1から10の直鎖アルキル、炭素数3から10の分岐アルキル、炭素数1から10の直鎖ヒドロキシアルキルまたは炭素数3から10の分岐ドロキシアルキルであり、これらのアルキルまたはヒドロキシアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-N(R102)-、で置き換えられてもよく、
102は、水素または炭素数1から10の直鎖アルキルである
請求項7に記載の重合性液晶組成物。
【請求項9】
リン酸重合性化合物を含む請求項1から8のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項10】
リン酸重合性化合物が、式(M-3)で表される化合物または式(M-4)で表される化合物である請求項9に記載の重合性液晶組成物。
式(M-3)から式(M-4)において、
102は、独立して水素またはメチルであり、
101、n102およびn103は、独立して1から4である。
【請求項11】
さらに、垂直配向剤を含む請求項1から10のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項12】
垂直配向剤が式(H)で表される重合性化合物である、請求項11の重合性液晶組成物。
式(H)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
環Nおよび環Oは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
18は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、
19は、単結合またはエチレンであり、エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、оは1、2、または3である。
【請求項13】
さらに、式(N)で表される重合性化合物を含む、請求項1から12のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
式(N)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
およびRは、独立して、水素、炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、
環Pおよび環Qは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
20は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、
21は、単結合またはエチレンであり、エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、
pは、1、2または3である。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合して得られる液晶複合体。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶複合体と、
(a)液晶複合体に接した配向膜と(b)電極とを含む第一基板と、
当該液晶複合体を第一基板とともに挟持する、(c)液晶複合体に接した配向膜と(d)電極を含む第二基板とを含む液晶調光素子。
【請求項16】
第一基板および/または第二基板が、ガラス板、プラスチック板またはプラスチックフィルムである請求項14に記載の液晶調光素子。
【請求項17】
請求項15または16に記載の液晶調光素子を使用する調光窓。
【請求項18】
請求項17の調光窓を含むスマートウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リバースモードの液晶調光素子に関する、詳しくは、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を含む、リバースモードの液晶調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液晶調光素子に言及する。光散乱を利用する液晶調光素子中の液晶複合体を挟持する基材に印加する電圧を調節することにより、当該液晶複合体中の液晶分子の配列が変化する。当該液晶分子の配列の変化は、液晶複合体を透過する光を制御する。光散乱を利用する液晶調光素子は、ディスプレイ、光シャッター、調光窓、スマートウィンドウの部材となる。
【0003】
特許文献2は、前面基板と背面基板がフレキシブルなプラスチックフィルムである調光素子および、ロール・トゥ・ロール(roll to roll)方式による当該調光素子の製造に言及する。
【0004】
特許文献3は、重合体の割合を増加させた、リバースモードである調光素子に言及する。特許文献3は、重合性液晶組成物の成分に言及する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-273725号公報
【特許文献2】特開2019-105680号公報
【特許文献3】国際公開2020-022246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の課題の一つは、リバースモードで駆動する液晶調光素子において、長時間、高温高湿や低温の環境でも、液晶調光素子の電極間に電圧を印加していないときの透明性を維持しつつ、かつ、液晶複合体と液晶配向膜との密着性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、項1から項17の態様を含む。
【0008】
項1
(A)化合物(3)を含む液晶組成物と、
(B)化合物(M-2)である重合性化合物と、
(C)開始剤とを含有する重合性液晶組成物。
式3において、
およびRは、独立して、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは炭素数2から12のアルケニルオキシであり、
環Dおよび環Fは、独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素もしくは塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイルまたは少なくとも1つの水素がフッ素もしくは塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり、
環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、3,4,5,6-テトラフルオロフルオレン-2,7-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾチオフェン-3,7-ジイルまたは1,1,6,7-テトラフルオロインダン-2,5-ジイルであり、
およびZは、独立して、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0または1であり、
cとdとの和は、3以下である。

式(M-2)において、
101は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンの1つ以上の水素は、1つ以上の-CH-は、CF-、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、
103は、環式炭化水素基または複素環基であって、かつ、炭素数5から35のものであって、これらの基の1つ以上の-CH-は、水素が炭素数1から12のアルキルで置き換えられたもの、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよい。
【0009】
項2
(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物を、さらに含有する項1の重合性液晶組成物。
【0010】
項3
(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する化合物が、(メタ)アクリル基を複数有するウレタン(メタ)アクリレート重合体である項2の重合性液晶組成物。
【0011】
項4
さらに化合物(2)を含有する項1~3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。

式(2)において、
およびRは、独立に、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素若しくは塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり、
環Bおよび環Cは、それぞれ独立に、1,4-シクロヘキシレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンまたはピリミジン-2,5-ジイルであり、
は、単結合、エチレン、ビニレン、エチニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
bは、1、2または3である。
【0012】
項5
項2に記載の(メタ)アクリル基を複数有しかつウレタン結合を有する重合性化合物が、複数のエステル結合または複数のポリエーテル結合を有する項2から4に記載の重合性液晶組成物。
【0013】
項6
項2に記載の重合性化合物の重量平均分子量が2,000から30,000である項2から5に記載の重合性液晶組成物。
【0014】
項7
さらに化合物(M-1)を含有する項1から6に記載の重合性液晶組成物。

式(M-1)において、
100は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100およびR101は、それぞれ独立して、水素、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のヒドロキシアルキルであり、これらのアルキルもしくはヒドロキシアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-N(R102)-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、R102は、水素、炭素数1から12のアルキルである。
【0015】
項8
化合物(M-1)が、
100は、水素またはメチルであり、
100およびR101は、独立して、水素、炭素数1から10の直鎖アルキル、炭素数3から10の分岐アルキル、炭素数1から10の直鎖ヒドロキシアルキルまたは炭素数3から10の分岐ヒドロキシアルキルであり、これらのアルキルまたはヒドロキシアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-N(R102)-、で置き換えられてもよく、
102は、水素または炭素数1から10の直鎖アルキルである
項7に記載の重合性液晶組成物。
【0016】
項9
リン酸重合性化合物を含む項1~8に記載の重合性液晶組成物。
【0017】
項10
リン酸重合性化合物が、化合物(M-3)または化合物(M-4)である項10に記載の重合性液晶組成物。
式(M-3)から式(M-4)において、
102は、水素またはメチルであり、
101、n102およびn103は、独立して1から4である。
【0018】
項11
さらに、垂直配向剤を含む、項1から10に記載の重合性液晶組成物。
【0019】
項12
さらに、式(H)で表される少なくとも1つの重合性化合物を含む、項11に記載の重合性液晶組成物。
式(H)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
環Nおよび環Oは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
18は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、
19は、単結合またはエチレンであり、エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、оは1、2、または3である。
【0020】
項13
さらに、式(N)で表される重合性化合物を含む、項1から12に記載の重合性液晶組成物。

式(N)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
およびRは、独立して、水素、炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、
環Pおよび環Qは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
20は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、
21は、単結合またはエチレンであり、エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、
pは、1、2または3である。
【0021】
項14
項1から13のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合して得られる液晶複合体。
【0022】
項15
請求項14に記載の液晶複合体と、
(a)液晶複合体に接した配向膜と(b)電極とを含む第一基板と、
当該液晶複合体を第一基板とともに挟持する、(c)液晶複合体に接した配向膜と(d)電極を含む第二基板とを含む液晶調光素子。
【0023】
項16
第一基板の液晶複合体に接する部材および/または第二基板の液晶複合体に接する部材が、ガラス板、プラスチック板またはプラスチックフィルムである項15に記載の液晶調光素子。
【0024】
項17
項15または16に記載の液晶調光素子を使用する調光窓。
【0025】
項18
項17の調光窓を含むスマートウィンドウ。
【発明の効果】
【0026】
(A)項1~13までの重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて得た液晶複合体と、(B)(a)液晶複合体に接した配向膜と(b)電極とを含む第一基板と、当該液晶複合体を第一基板とともに挟持する、(c)液晶複合体に接した配向膜と(d)電極を含む第二基板とを含む液晶調光素子は、(i)当該液晶調光素子の電極間に電圧を印加していないときの透明性を維持でき、かつ、(ii)当該液晶複合体と当該液晶配向膜との密着性が高い。
【0027】
(A)14項の液晶複合体と、(B)(a)液晶複合体に接した配向膜と(b)電極とを含む第一基板と、当該液晶複合体を第一基板とともに挟持する、(c)液晶複合体に接した配向膜と(d)電極を含む第二基板とを含む液晶調光素子は、(i)当該液晶調光素子の電極間に電圧を印加していないときの透明性を維持でき、かつ、(ii)当該液晶複合体と液晶配向膜との密着性が高い。
【0028】
項14および項15の液晶調光素子は、(i)スイッチオフ時の透明性を維持でき、かつ、(ii)当該液晶複合体と液晶配向膜との密着性が高い。
【0029】
項16の調光窓は、(i)スイッチオフ時の透明性を維持でき、かつ、(ii)調光窓中に気泡が生じにくい。
【0030】
項17のスマートウィンドウは、(i)スイッチオフ時の調光窓の透明性を維持でき、かつ、(ii)調光窓中に気泡が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】液晶複合体に電圧を印加していないときの、リバースモードである液晶調光素子の断面の概略図である。
図2】液晶複合体に電圧を印加したときの、リバースモードである液晶調光素子の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示において、「重合性液晶組成物」とは、液晶組成物と重合性化合物を含有する組成物をいう。
【0033】
本開示において、「リバースモード」とは、液晶調光素子において装置の基板間に電圧を印加していない時(以下、「スイッチオフ時」という。)に透明であり、液晶調光素子の基板間に電圧を印加している時(以下、「スイッチオン時」という。)に光散乱により、不透明(opaque)である装置の種類をいう。
【0034】
本開示において、「室温」とは、18~28℃の範囲をいう。
本開示において、「液晶組成物」とは、液晶相を有する化合物を含む混合物(ただし、重合性化合物を含まない。)である。
【0035】
本開示において、「添加物」とは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消光剤、色素、消泡剤、光重合開始剤以外の重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物をいう。
【0036】
本開示において、「液晶性化合物」は、(A)純物質として液晶相を有する化合物および(B)液晶組成物の成分となる化合物の総称である。
【0037】
本開示において、「重合性基」とは、化合物中に有すると、光、熱、触媒などの手段により重合しより大きな分子量を有する高分子へと変化させる官能基である。
【0038】
本開示において、「重合性化合物」とは、1つ以上の重合性基を有する化合物(開始剤を除く。)である。
【0039】
本開示において、「単官能」とは、一分子中に重合性基を1つだけ含むことをいう。
【0040】
本開示において、「多官能」とは、一分子中に重合性基を複数含むことをいう。
【0041】
本開示において、「リン酸重合性化合物」とは、リン酸基またはリン酸エステル結合を有する重合性化合物である。
【0042】
本開示において、「液晶複合体」とは、液晶組成物中に重合体が分散しているものまたは重合体中に液晶組成物が分散しているものである。液晶複合体は、液晶組成物と重合性化合物の混合物を調製し、当該混合物中の重合性化合物を重合させることなどにより、得られる。
【0043】
本開示において、「液晶調光素子」とは、液晶複合体を含む素子である。
【0044】
本開示において、「液晶調光素子の作動範囲」とは、液晶調光素子が作動できる、温度、気圧、湿度等の環境の範囲をいう。
【0045】
本開示において、単に「上限温度」とは、「ネマチック相の上限温度」をいう。
【0046】
本開示において、単に「下限温度」とは、「ネマチック相の下限温度」をいう。
【0047】
本開示において、「主成分」とは、その混合物のなかで、質量百分率が最も高い化合物を意味する。
【0048】
本開示において、「アルキル」とは、特に明示の記載がある場合を除いて、環状アルキルを含まない。
【0049】
本開示において、化学式中の波線は、結合する位置を示す。
【0050】
本開示において、化学式中の下記の表記は、六員環、縮合環その他の環を示し、環αと呼ぶ。この場合において、αは、文字または文字列である。
【0051】
本開示において、化学式中の下記の表記は、βがε回繰り返される構造を示す。この場合において、βは、任意の化学構造を示す化学式であり、εは、0以上の整数である。
【0052】
本開示において、特別の記載のない限り、化学式中の下記の表記は、環γのK個の水素がK個のδに置換されていることを示す。この場合において、δは、任意の原子または化学構造を示す化学式であり、Kが1の場合、Kは、省略することができる。
【0053】
本開示において、非対称の2価基は、特に明示の記載がある場合を除いて、任意の構造を示す。例えば、2-フルオロ-1,4-フェニレンは、以下の両方の構造を示す。
【0054】
本開示において、「式(λ)で表される化合物」を「化合物(λ)」という。この場合において、λは、文字または文字列である。
【0055】
本開示において、単に「密着性」とは、液晶複合体と液晶配向膜間の密着性をいう。密着性が低い場合、気泡が生じやすい。
【0056】
本開示において、特に明示の記載がある場合を除き、混合物中の成分の割合は、液晶組成物を100質量%としたときの重量比である。
【0057】
基板1は、電極を含んでいる。リバースモードの調光素子において、基板間に電圧を印加していないとき、液晶性化合物2が一定の方向を向く(図1)。このとき、リバースモードの調光素子は、光を通す。
【0058】
基板1は、電極を含んでいる。リバースモードの調光素子において、基板間に電圧を印加したとき、液晶性化合物2がランダムな方向を向く。このとき、リバースモードの調光素子は、液晶複合体を透過しようとする光を散乱させる(図2)。
【0059】
調光窓の作動範囲が広がるため、重合性液晶組成物中の液晶組成物の上限温度は約70℃以上が好ましく、当該下限温度は約-20℃以下が好ましい。調光窓の作動範囲が広がるため、当該上限温度は、高い上限温度が好ましく、当該下限温度は、低い下限温度が好ましい。
調光窓の光の透過率の変化を高速化させるため、重合性液晶組成物中の液晶組成物は、低粘度が好ましく、低温度での低粘度が好ましい。
調光窓の応答時間の短縮化のため、重合性液晶組成物中の液晶組成物は、組成物における大きな弾性定数が好ましい。
【0060】
組成物の光学異方性は、液晶調光素子のヘーズに関連する。ヘーズは全透過光に対する拡散光の割合である。光を遮断するときは大きなヘーズが好ましい。大きなヘーズには大きな光学異方性が好ましい。組成物における誘電率異方性の絶対値の大きさは、素子における低いしきい値電圧や小さな消費電力に寄与する。したがって、組成物は、誘電率異方性の絶対値が大きいことが好ましい。
【0061】
長時間使用後の電圧保持率の維持のため、液晶複合体は、大きな比抵抗を有するものが好ましい。光や熱に対する液晶複合体の安定性と耐候性は、液晶調光素子の寿命を延ばす。
【0062】
液晶調光素子には、ノーマルモードとリバースモードがある。ノーマルモードでは電圧を印加していない時に素子は不透明であり、電圧を印加している時に透明になる。ノーマルモードは、部屋の仕切りに適している。リバースモードでは電圧を印加していない時に素子は透明であり、電圧を印加している時に不透明になる。このモードは、素子が故障したときには透明になるので、自動車の窓に適している。特許文献2は、液晶調光素子を有する調光窓やスマートウィンドウ用に、ガラス板、プラスチック板その他のリジッドな基板で前面基板と背面基板を構成するのではなく、フレキシブルなプラスチックフィルムである基板を用い、ロール・トゥ・ロール(roll to roll)方式での製造に言及する。当該基板には、透明電極および液晶配向膜が付着している。基板強度確保のため、密着性が必要である。
【0063】
リバースモードである調光素子中の液晶配向膜は、液晶性化合物を垂直に配向させるため疎水性が高い膜であることから、液晶複合体と基板上の液晶配向膜との密着性が低下する問題がある。当該密着性の向上のため、当該調光素子中の液晶複合体の原料である重合性液晶組成物は、多量に重合性化合物を含む。
【0064】
更に、リバースモードに用いられる素子は、自動車の窓に適していることから、長時間、高温高湿の環境や低温の環境でも、液晶の垂直配向性が低下せず、かつ密着性が高いことが必要となる。
【0065】
特許文献3は、リバースモードに用いられる素子の密着性を向上させるため、重合体の割合を増やすことが言及されている。
【0066】
重合反応を促進するため、重合性液晶組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。保存安定性確保のため、重合性液晶組成物は、重合禁止剤を含有することが好ましい。
【0067】
調光窓の耐久性のため、液晶組成物に含有する液晶性化合物中のアルキルは、直鎖アルキルが好ましい。誘電率異方性の絶対値を増加させるため、液晶組成物に含有する液晶性化合物中のアルコキシは、直鎖アルコキシが好ましい。調光窓の作動温度範囲を広域化させるため、液晶組成物に含有する液晶性化合物中のアルケニルは、直鎖アルケニルが好ましい。調光窓の作動温度範囲を広域化させるため、液晶組成物に含有する液晶性化合物中の1,4-シクロヘキシレンは、トランスが好ましい。
【0068】
効率的な光散乱のため、液晶複合体中の液晶組成物が、高濃度であることが好ましい。エネルギー消費および応答時間の観点から、液晶複合体中の重合体が、低濃度であることが好ましい。
【0069】
液晶複合体と基板との密着性を向上させるため、重合性液晶組成物中の重合性化合物の総量は、5~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~55質量%がさらに好ましい。
【0070】
偏光板が不要となるため、ポリマーネットワーク型の調光窓や高分子分散型の調光窓が好ましい。重合性液晶組成物中の重合性化合物の総量が、5~70質量%のとき、このような調光窓となる。
【0071】
散乱特性向上のため、重合性液晶組成物に対し、液晶組成物の総量は、30~95質量%が好ましい。散乱特性を向上させ、かつ、基板への密着性を向上させるため、重合性液晶組成物に対し、重合性化合物の総量は、5~70質量%が好ましい。
【0072】
化合物(2-1)から化合物(2-23)などが、化合物(2)の例である。



【0073】
式(2-1)~式(2-23)のRおよびRは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは1以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0074】
液晶調光素子の応答時間を短くするため、化合物(2)としては、式(2-1)~式(2-23)であらわされる化合物を用いることができる。液晶調光素子を高温でも作動させるため、化合物(2)を含む重合性液晶組成物が、好ましい。
【0075】
化合物(2)のbは、1、2または3である。
【0076】
化合物(2)のbは、1の場合、液晶調光素子の作動可能温度を下降させる。1の場合、液晶調光素子の作動可能温度を上昇させる。
【0077】
液晶調光素子が作動する温度範囲を広げるため、式(2)のRおよびRは、炭素数2~12のアルケニルが好ましい。
液晶調光素子の長寿命化のため、式(2)のRおよびRは、炭素数1から12のアルキルが好ましい。
【0078】
駆動温度領域の拡張のため、液晶組成物中に、化合物(2-1)、化合物(2-2)、化合物(2-3)、化合物(2-6)、化合物(2-9)、化合物(2-10)、化合物(2-11)、化合物(2-12)、化合物(2-13)、化合物(2-16)、化合物(2-19)、化合物(2-20)および化合物(2-21)のいずれかを含むことが好ましい。
【0079】
応答時間を短くするため、液晶組成物中に、
化合物(2-2)および化合物(2-9)、
化合物(2-2)および化合物(2-10)、
化合物(2-2)および化合物(2-11)、
化合物(2-2)および化合物(2-12)、
化合物(2-2)および化合物(2-13)、
化合物(2-9)および化合物(2-10)、
化合物(2-9)および化合物(2-11)、
化合物(2-9)および化合物(2-12)、
化合物(2-9)および化合物(2-13)、
化合物(2-10)および化合物(2-11)、
化合物(2-10)および化合物(2-12)、
化合物(2-10)および化合物(2-13)、
化合物(2-11)および化合物(2-12)、
化合物(2-11)および化合物(2-13)または
化合物(2-12)および化合物(2-13)
の組合せを含むことが好ましい。
【0080】
複数の化合物(2-9)、複数の化合物(2-11)、複数の化合物(2-12)、複数の化合物(2-13)を組み合わせてもよい。
液晶調光素子を高温で作動させるため、液晶組成物中にテルフェニル構造を有する化合物(2)を含有することが好ましい。他の液晶性化合物との相溶性を向上させるため、液晶組成物中に水素をフッ素に置換させたテルフェニル構造を有する化合物(2)を含有することが好ましい。
【0081】
液晶調光素子が作動する温度範囲を広げるため、かつ、液晶調光素子の閾値電圧を低減させ、および/または消費電圧を低減させるため、化合物(2)の総量は、5~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましい。
【0082】

化合物(3-1)から(3-35)などが、化合物(3)の例である。





式(3-1)~(3-35)において、RおよびRは、独立して、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【0083】
式(3-1)~式(3-35)であらわされる化合物などが、化合物(3)の例である。化合物(3)は、液晶組成物を、負の誘電率異方性に誘導する。
【0084】
液晶調光素子のヘーズを向上させるため、化合物(3)を含む重合性液晶組成物が、好ましい。
【0085】
液晶調光素子の耐久性の観点から、のRおよびRは、炭素数1から12のアルキルが好ましい。液晶調光素子の駆動電圧の低減のため、のRおよびRは、炭素数1から12のアルコキシが好ましい。
化合物(2)のRおよび化合物(3)のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、ビニルオキシ、アリルオキシ、3-ブテニルオキシ、3-ペンテニルオキシまたは4-ペンテニルオキシ、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、7-フルオロヘプチル、8-フルオロオクチル、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニルおよび6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。
駆動温度範囲の拡張および液晶調光素子の応答時間を短くするため、式(3-1)~式(3-35) のRおよびRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、ビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、3-ペンテニル、アリルオキシ、3-ブテニルオキシ、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、2,2-ジフルオロビニルおよび4,4-ジフルオロ-3-ブテニルが好ましい。
【0086】
液晶調光素子の作動温度範囲を広げるため、化合物(3)の環Dおよび環Fは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、1以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、1つ以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイルおよび1以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルである。液晶調光素子の作動範囲を広げるため、化合物(3)の環Dおよび環Fは、1,4-シクロヘキシレンおよび1,4-フェニレンが好ましい。
この場合において、低電圧化のため、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルは、
がより好ましい。
【0087】
化合物(3)の環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、3,4,5,6-テトラフルオロフルオレン-2,7-ジイル(FLF4)、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル(DBFF2)、4,6-ジフルオロジベンゾチオフェン-3,7-ジイル(DBTF2)または1,1,6,7-テトラフルオロインダン-2,5-ジイル(InF4)である。
【0088】
液晶調光素子の応答時間を短くするため、化合物(3)の環Eは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンが好ましい。液晶調光素子を低電圧駆動させるため、化合物(3)の環Eは、4,6-ジフルオロジベンゾチオフェン-3,7-ジイルが好ましい。
【0089】
化合物(3)の環Bおよび環Cは、1,4-シクロヘキシレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンまたはピリミジン-2,5-ジイルである。液晶調光素子の作動範囲を広げるため、化合物(3)の環Bまたは環Cは、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンが好ましい。
【0090】
化合物(3)のZおよびZは、単結合、エチレン、ビニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシである。
【0091】
液晶調光素子の作動範囲を広げるため、化合物(3)のZまたはZは、単結合が好ましい。液晶調光素子を低電圧駆動させるため、メチレンオキシが好ましく、単結合がさらに好ましい。化合物(3)のZは、単結合、エチレン、ビニレン、エチニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシである。液晶調光素子の信頼性を維持するため、化合物(3)のZは、単結合が好ましい。
【0092】
液晶調光素子を低電圧駆動させるため、化合物(3)のZの、非対称であるメチレンオキシは、-OCH-がより好ましい。液晶調光素子を低電圧駆動させるため、化合物(3)のZの、非対称であるカルボニルオキシは、-COO-がより好ましい。
【0093】
化合物(3)のcは、0、1、2または3であり、化合物(3)のdは、0または1であり、化合物(3)の、cおよびdの和は3以下である。
【0094】
化合物(3)において、小さいcおよびdは、液晶調光素子の作動可能温度を低温に誘導する。
化合物(3)において、大きいcおよびdは、液晶調光素子の作動可能温度を高温に誘導する。
【0095】
低電圧駆動のため、液晶組成物中の化合物(3)は、化合物(3-1)、化合物(3-2)、化合物(3-3)、化合物(3-6)、化合物(3-7)、化合物(3-8)、化合物(3-9)、化合物(3-10)、化合物(3-13)、化合物(3-14)、化合物(3-16)、化合物(3-18)および化合物(3-34)のいずれかを含むことが好ましい。駆動温度範囲の拡張のため、液晶組成物中に、化合物(3-1)および化合物(3-8)、化合物(3-1)および化合物(3-14)、化合物(3-3)および化合物(3-8)、化合物(3-3)および化合物(3-14)、化合物(3-3)および化合物(3-34)、化合物(3-6)および化合物(3-8)、化合物(3-6)および化合物(3-10)または化合物(3-6)および化合物(3-14)の組合せを含むことが好ましい。
【0096】
液晶複合体の製造コストを低減するため、重合性液晶組成物中の化合物(3)の含有量は、多い方が好ましい。液晶複合体または/および重合性液晶組成物の特性をより調整できるため、化合物(3)の含有量は、多い方が好ましい。
【0097】
液晶調光素子の閾値電圧を低減させ、および/または消費電力を低減させる、かつ、液晶調光素子を低温で作動させるため、化合物(3)の総量は、5~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましい。
【0098】
密着性の向上のため、重合性液晶組成物は、単官能である重合性化合物および多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーをともに含有することが好ましく、化合物(M-2)および多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーをともに含有することがより好ましい。
式(M-2)において、
101は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは1つ以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンの1つ以上の水素は、1つ以上の-CH-は、CF-、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、
103は、環式炭化水素基または複素環基であって、かつ、炭素数5から35のものであって、これらの基の1つ以上の-CH-は、水素が炭素数1から12のアルキルで置き換えられたもの、-O-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよい。
化合物(M-2-1)から(M-2-10)などが、化合物(M-2)の例である。
式(M-2-1)~(M-2-10)において、
101は、水素またはメチルであり、
100は、0、1または2であり、
100は、2から6の整数である。
【0099】
液晶組成物への親和性を向上するため、重合性液晶組成物中の2つ以上の(メタ)アクリル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0100】
重合性液晶組成物中の(メタ)アクリル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー重量平均分子量が低いと、重合の際に液晶複合体の体積が収縮し、密着性が低下する。
【0101】
また、当該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量が高いと、当該液晶複合体中の重合体の繰り返し単位の鎖長が長くなり、重合体の分子鎖間に液晶分子が入り込みやすくなる。その結果、重合体と液晶組成物と界面での相互作用が低下し、当該液晶組成物の駆動電圧が低くなる。
【0102】
このため、重合性液晶組成物中の(メタ)アクリル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、2,000から30,000の範囲が好ましく、5,000から15,000の範囲がより好ましく、7,000から12,000の範囲がさらに好ましい。
【0103】
液晶組成物中の化合物(M-2)は、複数種類、含有してもよい。
液晶組成物中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、複数種類、含有してもよい。
【0104】
密着性の向上のため、重合性液晶組成物は、化合物(M-1)を含有してもよい。化合物(M-1)は、重合性化合物である。
式(M-1)において、
100は、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキルまたは1つ以上の水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり、
100およびR101は、独立して水素、炭素数1から12の直鎖または分岐鎖のアルキル、炭素数1から12の直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキルであり、これらのアルキルまたはヒドロキシアルキルにおいて、1つ以上の-CH-は、-O-、-N(R102)-、-CO-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく、R102は、水素、炭素数1から12の直鎖または分岐鎖のアルキルである。
密着性の向上のため、重合性液晶組成物中の化合物(M-1)のM100は、水素またはメチルが好ましい。
密着性の向上のため、重合性液晶組成物中の化合物(M-1)のR102は、それぞれ独立して水素、炭素数1から10の直鎖アルキル、または炭素数3から10の分岐鎖のアルキル、炭素数1から10の直鎖のヒドロキシアルキルまたは炭素数3から10の分岐鎖のヒドロキシアルキルが好ましい。
【0105】
N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドなどが、化合物(M-1)の例である。
【0106】
密着性の向上のため、重合性液晶組成物は、上記の化合物とともに、リン酸基またはリン酸基エステル結合を有する化合物を含むことが好ましく、当該化合物は、化合物(M-3)または化合物(M-4)であることがさらに好ましい。
式(M-3)~(M-4)において、
102は、独立して水素またはメチルであり、
101、n102およびn103は、独立して1~4である。
密着性の向上のため、n101、n102およびn103は、それぞれ2が好ましい。
【0107】
液晶調光層の耐久性の向上するため、単官能である化合物(M-2)は、炭素環式構造または複素環式構造を有することが好ましい。
単官能である化合物(M-2)から得られる重合体のガラス転移温度は高くなる傾向にあり、弾性率も上がる傾向にあると考えられるからである。
【0108】
液晶調光層と基板の間の密着性向上ため重合性液晶組成物中の化合物(M-1)、化合物(M-2)およびウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの併用が好ましい。
【0109】
密着性と散乱特性を向上させるため、重合性液晶組成物中の化合物(M-2)の総量は、10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0110】
液晶組成物との親和性と散乱特性向上のため、重合性液晶組成物中の化合物(M-1)の総量は、1~25質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
【0111】
密着性と散乱特性を向上させるため、重合性液晶組成物中の多官能であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの総量は、5~25質量%が好ましい。
【0112】
密着性の向上のため、化合物(M-2)とウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの総重量比は、4/1~2/3が好ましく、3/2~2/3がより好ましい。
【0113】
化合物(M-1)と化合物(M-2)の総重量比は、3/1~1/3が好ましく、2/1~1/2がより好ましい。化合物(M-3)および化合物(M-4)の総量は、0.001~0.5質量%が好ましく、0.01~0.3質量%がより好ましい。
【0114】
重合性液晶組成物は、上記のほか、直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルなどの線状構造やエーテル構造を有する、単官能重合性化合物を含んでもよい。化合物(M-5)は、当該単官能重合性化合物の例である。化合物(M-5-E)および化合物(M-5-P)などが、化合物(M-5)の例である。
重合性液晶組成物は、上記のほか、直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルなどの線状構造を有する、多官能である重合性化合物を含んでもよい。化合物(M-6)は、当該多官能である重合性化合物の例である。
【0115】
式(M-5)において、
501は、水素またはメチルであり、
501は、水素または炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、1つ以上の水素は、炭素数1から12のアルキル、フッ素または塩素で置き換えられていてもよく、このR501において1つ以上の-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよい。
Aは、それぞれ独立して、水素、フッ素、メチルまたはプロピルであり、
式(M-5-E)および式(M-5-P)において、
501は、水素またはメチルであり、
502は、炭素数1から6のアルキルであり、
Aは、それぞれ独立して、水素、フッ素、メチルまたはプロピルであり、
nは、1から30である。
式(M-6)において、
601は、独立して、水素またはメチルであり、
601は、炭素数1から40のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1つ以上の水素は、炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数1-から20のアルコキシ(メタ)アクリレート、炭素数1から20のアルキルエステル(メタ)アクリレート、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、このR601において1つ以上の-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置き換えられてもよい。
【0116】
化合物(M-5-1)~化合物(M-5-5)などが、化合物(M-5)の例である。
【0117】
液晶組成物との親和性を向上するため、
式(M-5-E)において、
501は、水素またはメチルが好ましく、水素がより好ましく、
502は、炭素数1から6のアルキルが好ましく、メチル、エチルまたはプロピルがより好ましく、
nは、1から30が好ましく、2から25がより好ましい。
化合物(M-5-E-1)~化合物(M-5-E-8)などが、化合物(M-5-E)の例である。

【0118】
化合物(M-6-1)~(M-6-18)は、化合物(M-6)の例である。


式(M-6-15)、式(M-6-17)、式(M-6-18)において、aおよびbの右に記載する基は、それぞれ、aおよびbで示す個数あることを示す。
【0119】
耐湿性、耐熱性、耐光性、耐候性などの信頼性の向上のため、重合性液晶組成物中に、直鎖アルキルまたは/および分枝アルキルを有する、多官能である重合性化合物を含むことが好ましい。
【0120】
直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルなどの線状構造を有する多官能重合性化合物を含む重合体のガラス転移温度は、高くなる傾向にある。架橋密度が高まり、重合体のガラス転移温度が高くなると、液晶性化合物との相互作用も高まり、調光層の駆動電圧の上昇につながる場合がある。液晶調光素子の信頼性を維持しながら低電圧駆動させるためには、架橋度が高くなりすぎないようにすることが望ましい。この観点からは、比較的分子量の大きな多官能重合性化合物や、重合後のガラス転移温度が低くなりやすいとされる、エーテル結合を多く含有する多官能重合性化合物が好ましい。
【0121】
液晶組成物との親和性および散乱特性向上のため、重合性液晶組成物中の重合性化合物の総量に対し、重合性液晶組成物中に、直鎖アルキルまたは/および分枝アルキルを有する、多官能である重合性化合物の総量は、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、3質量~20質量%がさらに好ましい。
液晶組成物との親和性および散乱特性向上のため、重合性液晶組成物中の重合性化合物の総量に対し、重合性液晶組成物中に、直鎖アルキルまたは/および分枝アルキルを有する、単官能である重合性化合物の総量は、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。
【0122】
散乱特性の制御や耐熱性向上の目的で並びに液晶組成物の光学的および/または電磁気的性質を調整する目的で、液晶相を誘導する重合性化合物を含んでもよい。
【0123】
化合物(7)、(8)および(9)などが、液晶相を誘導する重合性化合物の例である。
液晶組成物は、化合物(7)、(8)および(9)を、複数含んでもよい。
式(7)、(8)および(9)において、
環G、環I、環J、環K、環Lおよび環Mは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、ピリジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの1つ以上の水素は、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数2から5のアルコキシカルボニルまたは炭素数1から5のアルカノイルで置き換えられてもよい。
式(7)、(8)および(9)において、
、Z10、Z12、Z13およびZ17は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-または-OCOO-であり、
、Z11、Z14およびZ16は、単結合、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-、-OCOO-、-CONH-、-NHCO-、-CFO-、-OCF-、-CHCH-、-CFCF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CHCHCOO-、-OCOCHCH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-または-C≡C-であり、
15は、単結合、-O-または-COO-である。
は、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1から20の直鎖アルキル、炭素数2から20の直鎖アルケニル、炭素数1から20の直鎖アルコキシまたは炭素数2から20の直鎖アルコキシカルボニルである。
fおよびhは、1から4の整数であり、
kおよびmは、0から3の整数であり、かつ、kおよびmの和は1から4であり、
e、g、i、j、lおよびnは、0から20の整数であり、
~M12は、水素またはメチルである。
【0124】
液晶調光素子の散乱特性向上のため、化合物(7)、(8)および(9)における環G、環I、環J、環K、環Lおよび環Mは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-メトキシ-1,4-フェニレンまたは2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンが好ましく、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンがより好ましい。
液晶調光素子の散乱特性向上のため、化合物(7)、(8)および(9)におけるZ、Z10、Z12、Z13およびZ17は、単結合または-O-が好ましい。
液晶調光素子の散乱特性向上のため、化合物(7)、(8)および(9)におけるZ、Z11、Z14およびZ16は、単結合、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-CHCHCOO-または-OCOCHCH-が好ましい。
液晶調光素子の散乱特性向上のため、化合物(7)におけるYは、シアノ、直鎖アルキルまたは直鎖アルコキシが好ましい。
【0125】
化合物(7-1)~(7-24)などが化合物(7)の例である。
式(7-1)~(7-24)において、
は、水素またはメチルであり、
eは、1から20の整数である。

【0126】
化合物(8-1)~(8-31)などが、化合物(8)の例である。



式(8-1)~(8-31)において、
およびMは、水素またはメチルであり、
gおよびiは、1~20の整数である。
【0127】
化合物(9-1)~(9-10)などが、化合物(9)の例である。



式(9-1)~(9-10)において、
10、M11およびM12は、水素またはメチルであり、
j、lおよびnは、1から20の整数である。
【0128】
液晶性化合物は、メソゲン(液晶性を誘発する剛直な部位)を有する。アクリロイルオキシ(-OCO-CH=CH)およびメタクリロイルオキシ(-OCO-(CH)C=CH)を末端に有する、化合物(7)、化合物(8)および化合物(9)はメソゲンを有するため、化合物(7)、化合物(8)および化合物(9)は、液晶性化合物と共に液晶配向膜の作用によって同一方向に配向する。この配向は、重合性液晶組成物の重合後も維持される。
【0129】
本開示の重合性液晶組成物を重合して得られる液晶複合体は、電圧無印可時に高い透明性を有するため、リバースモードの液晶調光素子に適用できる。
【0130】
散乱特性向上のため、液晶組成物中の化合物(7)~(9)の総量は、重合性化合物の総量に対し、3~50質量%であり、5~30質量%である。
【0131】
当業者は、開示した化合物を合成できる。
【0132】
当業者は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された方法によって、合成法を記載しなかった化合物を、合成できる。当業者は、各化合物を混合し、加熱によって互いに溶解させるなどの方法で、組成物を調製できる。
【0133】
本開示の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含む。当業者は、文献から、重合のための適切な条件、適切な重合開始剤およびその量を、確認できる。下記の化合物などが、重合開始剤である。


【0134】
液晶調光素子の光学特性を上げるため、重合性液晶組成物中の光重合開始剤の総量は、重合性液晶組成物に対しの0.1~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【0135】
重合性液晶組成物は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消光剤、色素、消泡剤、光重合開始剤以外の重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物(以下、これらを「添加物」という。)を含有してもよい。
【0136】
重合性液晶組成物中の添加物の総量は、0.1~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【0137】
液晶調光素子の耐久性のため、重合性液晶組成物中に酸化防止剤を含有することが好ましい。当該酸化防止剤は、化合物(11-1)~(11-3)を含む。

【0138】
液晶複合体中の液晶組成物の揮発による性能劣化を防止するため、液晶組成物中の化合物は、揮発性の小ささから式(11-2)や式(11-3)が好ましい。
液晶調光素子の、耐久性と作動温度の観点から、液晶組成物中の酸化防止剤は、液晶組成物に対し、50~600質量ppmが好ましく、100~300質量ppmがより好ましい。
【0139】
液晶調光素子の耐久性向上のため、重合性液晶組成物中に安定剤を含むことが好ましい。立体障害のあるアミンなどが、光安定剤である。化合物(12-1)~(12-16)などが、当該安定剤である。液晶調光素子の、耐久性と作動温度の観点から、液晶組成物中の光安定剤は、液晶組成物に対し、50~10000質量ppmが好ましく、100~10000質量ppmがより好ましい。

【0140】
液晶調光素子の耐久性向上のため、重合性液晶組成物中に消光剤を含むことが好ましい消光剤である。化合物(13-1)~(13-7)などが、消光剤である。液晶調光素子の、耐久性と作動温度の観点から、液晶組成物中の消光剤は、液晶組成物に対し、50~20000質量ppmが好ましく、100~10000質量ppmがより好ましい。
【0141】
重合反応を促進するため、重合性液晶組成物中の重合性化合物の重合は、紫外線照射によるものが、好ましい。メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、単一波長を照射可能なUV-LEDランプなどが紫外線照射ランプである。光重合開始剤を用いるとき、紫外線の波長は、光重合開始剤の吸収波長域であることが好ましい。液晶組成物の吸収波長域は避ける。好ましい波長は330nm以上である。さらに好ましい波長は、350nm以上であり、例えば365nmである。反応は室温付近で行ってもよく、または加熱して行ってもよい。
【0142】
重合性液晶組成物の保管時における重合を防止するため、重合性液晶組成物に重合禁止剤を添加することが好ましい。ヒドロキノンおよびメチルヒドロキノンその他のヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジンなどが、重合禁止剤である。
【0143】
重合性液晶組成物は、極性化合物を含有してもよい。極性化合物は、化合物(M-1)、化合物(M-2)、化合物(M-3)または化合物(M-4)とは異なる、極性をもつ有機化合物である。重合性基を有していてもよい。ここでは、イオン結合を有する化合物は含まれない。酸素、硫黄、および窒素のような原子は、より電気的に陰性であり、部分的な負電荷をもつ傾向にある。炭素および水素は中性であるか、または部分的な正電荷をもつ傾向がある。極性は、化合物中の別種の原子間で部分電荷が均等に分布しないことから生じる。例えば、極性化合物は、-OH、-COOH、-SH、-NH、>NH、>N-のような部分構造および/またはイソシアヌレート基、スルホ基を有する。
極性化合物として、下記化合物(14)が含まれる重合体は、密着性向上の観点から好ましい。
液晶調光素子を低温でも作動させるため、調光素子中の調光層は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む重合性液晶組成物を重合させて得たものが、好ましい。
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシペンチルアクリレート、2-ヒドロキシペンチルメタクリレートなどがヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
【0144】
密着性向上のため、液晶組成物と重合性化合物の総量に対し、化合物(14)は、1~10質量%が好ましく、1~7質量%が好ましい。
低温環境でも駆動可能になるなどの、液晶調光素子の作動範囲を広げるため、重合性液晶組成物にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加することが好ましく、重合性液晶組成物にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート並びに化合物(M-5-E)および/または化合物(M-5-P)を添加することがより好ましい。
散乱特性向上のため、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同時に、重合性液晶組成物に添加する化合物(M-5-E)および/または化合物(M-5-P)は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートおよび4-ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
散乱特性向上のため、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、化合物(M-5-E)および/または化合物(M-5-P)とを併用する場合の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの添加量は、5~10質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0145】
重合性液晶組成物は、垂直配向剤を含有してもよい。密着性向上と液晶への親和性向上のため、垂直配向剤は、重合性化合物である垂直配向剤が好ましい。
【0146】
液晶調光素子の性能維持のため、重合性液晶組成物中の垂直配向剤は、(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物が好ましく、化合物(H)がより好ましい。
液晶調光素子の性能維持のため、垂直配向剤の量は、重合性液晶組成物の質量に対して、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
式(H)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
環Nおよび環Oは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
18は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、
19は単結合またはエチレンであり、Z19におけるエチレンの1つの水素は、
(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、оは1、2、または3である。
【0147】
化合物(H-1)~(H-13)などが、化合物(H)の例である。

式(H-1)から式(H-9)中、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
191は、単結合、炭素数1から6の直鎖アルキレン、または-O(CH)-であり、nは2から6である。
式(H-10)から式(H-13)中、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
192は、OH、(メタ)アクリロイルオキシ、または2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシである。
【0148】
駆動電圧低減の目的で、さらに式(N)で表される重合性化合物を含んでもよい。式(N)で表される重合性化合物は、上記重合体の前駆体とともに、共重合して重合体を含む。式(N)で表される重合性化合物の量は、重合性組成物の質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【化1】

式(N)において、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つ以上の水素が塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシまたは1つ以上の水素が塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
およびRは、それぞれ独立に水素、炭素数1から12のアルキル、1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルまたは1つ以上の水素が塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、
環Pおよび環Qは、独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、
20は、単結合、エチレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
21は単結合またはエチレンであり、当該エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシを含む基で置き換えられてもよく、
pは1、2または3である。
【0149】
式(N)で表される化合物の具体例を示す。
【化2】

【化3】

式(N-1)から式(N-18)中、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
211は、単結合、炭素数1から6の直鎖アルキレン、または-O(CH2)n-であり、
nは、2から6である。
【化4】

式(N-19)から式(N-26)中、
は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルまたは1つ以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、
212は、OH、(メタ)アクリロイルオキシまたは2-ヒドロキシメチルアクリロイルオキシである。
【0150】
液晶複合体を含む液晶調光素子は、以下の手順などで作成できる:
手順1)一対の電極を含む基板の間に重合性液晶組成物を挟持させ、
手順2)当該重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて得る。
【0151】
真空注入法、液晶滴下法等、滴下または塗布などが、手順1の具体的な手順である。
【0152】
液晶調光素子の基板は、基材と電極を含む。
【0153】
ガラス、石英並びにアクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネートおよびシリコン樹脂などのプラスチックなどの素材が、当該基材の例である。
当該基板は、フィルムまたは板であって可撓性があるものであればよい。
【0154】
当該基板に含まれる電極は、透明の場合がある。酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide)、導電性ポリマーなどが電極の例である。
この基板は、その上に電極、典型的には透明電極を有する。透明電極の上に液晶配向膜などを有してもよい。透明電極の例は、酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide、ITO)や導電性ポリマーである。
【0155】
ポリイミドやポリビニルアルコールのような薄膜が配向膜の素材の例である。ポリイミド樹脂組成物を基板上に塗布し、綿布やレーヨン布でラビングする方法などが、配向膜の作成方法の例である。
【0156】
液晶調光素子中の液晶複合体を介した基板間の距離を調整するため、スペーサーを入れることがある。ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトスペーサーなどが、スペーサーの例である。スペーサーの厚みは、2~50μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。
【0157】
重合性液晶組成物の粘度(25℃)は、塗工方法により最適な粘度は異なるが、10~1000mPa・sである。フィルム基板を用いる際、好ましくは50~500mPa・sであり、さらに好ましくは100~300mPa・sである。粘度が低すぎると液だれの原因になり、高すぎると膜厚の制御が難しくなる。
【0158】
液晶調光素子の片方の基板の外側に光吸収層、拡散反射板など光学装置を配置することがある。光学装置の配置により、鏡面反射、拡散反射、再帰性反射、ホログラム反射等の機能を付加することもできる。
【0159】
図1に示すように、基板間に電圧を印加していないとき、基板1間の液晶複合体3中の液晶化合物の分子の配向方向は、一定である。
このため、スイッチオフ時の液晶複合体3を通過する光は、散乱せずに通過する。
図2に示すように、基板間に電圧を印加すると、基板1間の液晶複合体3中に電場が生じ、液晶複合体3中の液晶化合物の分子の配向方向が、一定でなくなる。
このため、スイッチオン時の液晶複合体3を透過する光は散乱し、不透明(opaque)となる。
【0160】
液晶調光素子は、調光窓、調光フィルム、スマートウィンドウなどを構成する素子などに使用される。液晶調光素子は、光スイッチ機能を利用して、液晶シャッターなどに利用できる。
【実施例0161】
本発明は、これらの実施例に限定されない。当業者は、実施例中に記載した化合物を入手または合成ができる。当業者は、実施例中に記載した化合物を、NMR分析などの方法によって同定できる。
【0162】
実施例で記載する液晶性化合物は、表1に記載の記号に基づく文字列で表す。この場合において、1,4-シクロヘキシレン骨格はトランスに限る。
【0163】
【表1】
【0164】
実施例で使用する、化合物(3)を含む液晶組成物中の成分の化学構造およびそのそれらの比率は、以下のとおりである。
[液晶組成物(M1)]
3-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 12%
5-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 12%
3-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 5%
2-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
4-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 6%
5-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
3-HB-O2 (2-2) 10%
3-HHB-1 (2-9) 12%
3-HHB-3 (2-9) 5%
3-HHB-O1 (2-9) 5%
3-HBB-2 (2-10) 5%
NI=110.5℃;Δn=0.145;Δε=-3.8
【0165】
[液晶組成物(M2)]
3-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 12%
5-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 12%
3-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 5%
2-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
4-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 6%
5-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
3-HB-O2 (2-2) 15%
3-HHB-O1 (2-9) 12%
3-HBB-2 (2-10) 10%
NI=105.5℃;Δn=0.149;Δε=-3.8
【0166】
[液晶組成物(M3)]
2-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 4%
3-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 10%
5-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 10%
3-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 3%
2-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
4-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 6%
5-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
1-BB-3 (2-3) 5%
3-HBB-2 (2-10) 10%
3-BB(2F,5F)B-3 (2-13) 7%
5-B(F)BB-2 (2-11) 12%
5-B(F)BB-3 (2-11) 10%
NI=100.7℃;Δn=0.200;Δε=-3.1
【0167】
[液晶組成物(M4)]
3-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 10%
5-BB(2F,3F)-O2 (3-6) 10%
3-HHB(2F,3F)-O2 (3-8) 8%
2-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
4-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 6%
5-HBB(2F,3F)-O2 (3-14) 10%
3-HBB-2 (2-10) 14%
3-BB(2F,5F)B-3 (2-13) 7%
5-B(F)BB-2 (2-11) 12%
5-B(F)BB-3 (2-11) 10%
NI=118.7℃;Δn=0.199;Δε=-3.2
【0168】
上記の液晶組成物(M1)~(M4)の表記において、化合物の表1に記載の記号に基づく文字列とその成分比の間に記載した括弧付きの文字列は、発明の詳細中に記載した液晶性化合物の一般式との対応を示す。
【0169】
液晶組成物(M1)~(M4)のNI、ΔnおよびΔεは、下記の方法で求めた。当該方法は、明示的な記載がある場合を除き、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で制定されたJEITA・ED-2521Bに記載された方法である。本開示では、TN(twisted nematic)素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けずに、NI、ΔnおよびΔεを求める。
【0170】
(1)NIは、上限温度である。NIは、偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱し、試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度(℃)とした。
(2)Δnは、試料の光学異方性である。Δnは、25℃の試料に対し、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計によって以下の手順で求める:
1)主プリズムの表面を一方向にラビングし、
2)試料を主プリズムに滴下し、
3)偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(以下、「n∥」という。)を計測し、
4)偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(以下、「n⊥」という。)を計測し、
5)n∥-n⊥を算出する。
(3)Δεは、25℃の試料の誘電率異方性である。Δεは、以下の手順で求める:
1-1)ガラス基板に0.16mLのオクタデシルトリエトキシシランを含む20mLのエタノール溶液を塗布し、
1-2)ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱し、
1-3)2枚のガラス基板の間隔が4μmであるVA素子に試料を入れ、
1-4)ガラス基板を紫外線で硬化する接着剤で密閉し、
1-5)VA素子の基板間に0.5V、1kHzのサイン波を印加し、
1-6)印加開始から2秒後に液晶性化合物の長軸方向の誘電率(以下、「ε∥」という。)を測定し、
2-1)ガラス基板にポリイミド溶液を塗布し、
2-2)このガラス基板を焼成した後、得られた液晶配向膜にラビング処理をし、
2-3)2枚のガラス基板の間隔が9μmであって、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を注入し、
2-4)TN素子の基板間に0.5V、1kHzのサイン波を印加し、
2-5)印加開始から2秒後に液晶分子の短軸方向の誘電率(以下、「ε⊥」という)を測定し、
3-1)ε∥-ε⊥を算出する。
【0171】
化合物(M-2-1-1)~(M-2-10-1)は、以下の化合物である。

ここで、化合物(M-2-7-1)の価標の交差は、CH2=COO-が、環上の任意の水素と置換していることを示す。
【0172】
Omnirad651は、IGM Resinsから入手する。Omnirad651は、光重合開始剤である。
【0173】
実施例で用いる、その他の化合物は以下の通りである。
【0174】
UN-6202PRは、根上工業株式会社から入手する。UN-6202PRは、多官能であり、ポリエーテル系である、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであって、重量平均分子量が約11,000である。
【0175】
N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド(以下、「DEAA」という。)、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドは、化合物(M-1)であって、単官能であるモノマーである。
【0176】
ライトエステルP-1Mは、共栄社化学株式会社から入手する。ライトエステルP-1Mは、化合物(M-3)であって、M102がメチルであり、n101が2である、リン酸重合性化合物である。
【0177】
化合物(8-2-1)の化学式は、以下のとおりである。化合物(8-2-1)は、液晶構造(メソゲン構造)を有する重合性化合物である。

【0178】
垂直配向剤である化合物(H-1-1)の化学式は、以下のとおりである。化合物(H-1-1)は、重合性化合物である。
【0179】
垂直配向剤である化合物(N-10-1)の化学式は、以下のとおりである。化合物(N-10-1)は、重合性化合物である。
【0180】
化合物(M-5-3)の化学式は、以下のとおりである。化合物(M-5-3)は、重合性化合物である。
【0181】
液晶調光素子の作製(実施例1~10および比較例1~4)
表2に記載の、化合物(3)を含む液晶組成物と化合物(M-2)である重合性化合物の混合物を調製し、光重合開始剤であるOmnirad651を、液晶組成物と重合性化合物の混合物の合計質量に対し0.5質量%の割合で添加し、重合性液晶組成物とした。
この重合性液晶組成物に7μmのスペーサー(積水化学工業株式会社製、ミクロパールSP、SP-207)を混合し、垂直液晶配向膜が形成されたITO付PETフィルムに塗布し、ラミネーターにより、もう一枚のフィルムと張り合わせた。ここで、ITO付PETフィルムの厚みは125μmである。
次に、UV-LED露光器(株式会社AKS社製、LED露光器AMU-35-DU/LED)を用いて、波長365nm、照度2.4mW/cmの紫外線を25℃で1J/cm照射し、液晶調光素子を作製した。
【0182】
【表2】

【0183】
(1) NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES Co.,LTD製 HAZE METER NDH5000に、25℃で、光源光がセル面に対して垂直となるように、作成した液晶調光素子を配置して、液晶調光素子の電極間の電圧を上昇してゆき、ヘーズが80%以上になった時の当該電圧を「臨界電圧」とし、ヘーズが80%以上になった時の当該電圧が100V以下のとき、「駆動」(Driven)が「充分」(Enough)と評価し、「充分」でない場合を、「駆動」が「不充分」(Not_Enough)と評価した。
【0184】
(2)高湿度下のヘーズの変化量を以下の手順で求めた:
2-1)NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES Co.,LTD製 HAZE METER NDH5000に、25℃で、光源光がセル面に対して垂直となるように、作成した液晶調光素子を配置して、液晶調光素子の電極間の電圧を印加せずに、液晶調光素子のヘーズを計測し、この計測値を、「当初のヘーズ」とし、
2-2)液晶調光素子を、168時間、80℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽内に保管し、
2-3)液晶調光素子の電極間の電圧を印加せずに、2-1)と同様の方法で、当該液晶調光素子のヘーズを計測し、この計測値を、「高湿度保管後のヘーズ」とし、
2-4)「高湿度下のヘーズの変化量」を(高湿度保管後のヘーズ)-(当初のヘーズ)で求めた。
【0185】
(3)低温度下のヘーズの変化量を以下の手順で求めた:
3-1)液晶調光素子を、168時間、-30℃のフリーザーに保管し、
3-2)液晶調光素子の電極間の電圧を印加せずに、2-1)と同様の方法で、当該液晶調光素子のヘーズを計測し、この計測値を、「低温保管後のヘーズ」とし、
3-3)「低温度下のヘーズの変化量」を(低温後のヘーズ)-(当初のヘーズ)で求めた。
【0186】
(4)高湿度下の密着性の評価を以下の手順で確認した:
4-1)液晶調光素子を、168時間、80℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽内に保管し、
4-2)当該液晶調光素子の液晶複合体中に、気泡を確認した場合、「高湿度下の気泡」が「有」とし、気泡が確認できない場合、「高湿度下の気泡」が「無」とした。
【0187】
(5)低温下の密着性の評価を以下の手順で確認した:
5-1)液晶調光素子を、168時間、-30℃のフリーザーに保管し、
5-2)当該液晶調光素子の液晶複合体中に、気泡を確認した場合、「低温度下の気泡」が「有」とし、気泡が確認できない場合、「低温度下の気泡」が「無」とした。
【0188】
表3は、液晶調光素子の評価結果を示す。
【0189】
【表3】

【0190】
比較例1および2の液晶調光素子は、液晶調光素子間の電極に電圧を印加する前から、垂直配向しないため不透明である。ゆえに、比較例1および2の液晶調光素子は、リバースモードの液晶調光素子として利用できない。比較例3の液晶調光素子は、駆動は充分であったが、密着性評価において気泡が確認されたためヘーズの変化量は測定不可である。比較例4の液晶調光素子は、駆動が不充分である。ゆえに、比較例3および4の液晶調光素子は、リバースモードの液晶調光素子として利用できない。
【0191】
表3から、実施例1~10までの液晶調光素子は、リバースモードで駆動することがわかる。表3から、本開示の手段が、本開示の課題を解決させることがわかる。
【符号の説明】
【0192】
1 基板
2 液晶性化合物
3 液晶複合体
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
液晶調光素子の光学特性を上げるため、重合性液晶組成物中の光重合開始剤の総量は、重合性液晶組成物に対し0.1~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
さらに、式(2)で表される化合物を含有する請求項1~3のいずれかに記載の重合性液晶組成物

式(2)において、
およびRは、独立に、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素若しくは塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり、
環Bおよび環Cは、それぞれ独立に、1,4-シクロヘキシレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンまたはピリミジン-2,5-ジイルであり、
は、単結合、エチレン、ビニレン、エチニレン、メチレンオキシまたはカルボニルオキシであり、
bは、1、2または3である。