(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022095967
(43)【公開日】2022-06-28
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20220621BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20220621BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/02257
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070653
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2019190888の分割
【原出願日】2019-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
(57)【要約】
【課題】レーザ光の強度をモニタする新規な構成を有する光源装置を提供する。
【解決手段】本開示の光源装置は、出射面と、前記出射面の反対側に位置する背面と、を有するレーザダイオードと、前記出射面から出射された光を反射する反射部と、前記反射部で反射された光を検出する光検出部と、前記背面と前記光検出部との間に設けられ、前記背面から出射された光を遮光する遮光部と、を有する。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射面と、前記出射面の反対側に位置する背面と、を有するレーザダイオードと、
前記出射面から出射された光を反射する反射部と、
前記反射部で反射された光を検出する光検出部と、
前記背面と前記光検出部との間に設けられ、前記背面から出射された光を遮光する遮光部と、
を有する光源装置。
【請求項2】
前記遮光部は、前記レーザダイオードに電気的に接続された保護素子である、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記遮光部は、前記レーザダイオードの背面から離れた位置において、前記レーザダイオードが配置される平面から上方に突出する形状を有する、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記レーザダイオードが載置されるサブマウントをさらに備え、
前記サブマウントの一部は、前記遮光部として機能する凸部を有している、請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記遮光部は、前記反射部によって反射された光であって、前記出射面の上端に向かって進む光の光路と重なる仮想線上には設けられない、請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
前記遮光部は、前記光検出部において、前記反射部で反射された光が入射する位置に向かって進む前記背面から出射される光を遮光する、請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記レーザダイオードと前記遮光部とを覆うガラスキャップをさらに備え、
前記ガラスキャップは、前記反射部として機能する正面ガラス壁を有している、請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記ガラスキャップは、前記遮光部と前記光検出器との間に位置する背面ガラス壁を含む、請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記遮光部は、前記背面ガラス壁に設けられる、請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光検出器の前面に配置された偏光子を備える、請求項8に記載の光源装置。
【請求項11】
前記偏光子は前記ガラスキャップの内部に配置されている、請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記正面ガラス壁の前記ガラスキャップの外側に位置する表面、および/または、前記正面ガラス壁の前記ガラスキャップの内側に位置する表面に反射率調整層が形成され、
前記反射率調整層の前記レーザ光に対する反射率は1%以上10%以下である、請求項8に記載の光源装置。
【請求項13】
前記背面ガラス壁の前記ガラスキャップの外側に位置する表面、および/または、前記背面ガラス壁の前記ガラスキャップの内側に位置する表面に反射防止膜が形成され、
前記反射防止膜の前記レーザ光に対する反射率は0.5%以下である、請求項12に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザダイオードを備える光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としてレーザダイオードを備える光源装置の用途は、様々な分野に拡大しつつある。例えば、ヘッドマウントディスプレイ(Head-Mounted Display:HMD)のように
使用者の目に近い位置に表示部を備える表示デバイス(Near-Eye Display)には小型の光源装置が必要になる。特許文献1は、小型化に適した光源装置を開示している。この光源装置は、外形がほぼ直方体の形状を有するガラスキャップで基板上のレーザダイオードを覆う構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017-149573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、レーザ光の強度を高い精度でモニタすることが可能である光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の光源装置は、例示的な実施形態において、レーザダイオードと、前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する基板と、前記基板に固定され、前記レーザダイオードを覆うガラスキャップであって、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光が入射する入射面、および、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光が出射する出射面を有し、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過する正面ガラス壁を含む、ガラスキャップと、前記基板に直接または間接的に支持され、前記ガラスキャップの外側に位置する光検出器とを備え、前記光検出器は、前記レーザダイオードから出射される前記レーザ光のうち前記正面ガラス壁によって反射され、かつ、前記ガラスキャップを透過した光を検出する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施形態によれば、レーザ光の強度を高い精度でモニタすることが可能である光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態における光源装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態における製造工程途中の光源装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態における製造工程途中の光源装置の他の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態における光源装置のYZ平面に平行な断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本実施形態における光源装置のXY平面に平行な断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における光源装置によるモニタ光が光検出器に入射する様子を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における光源装置によるモニタ光が光検出器に入射する様子を模式的に示す他の断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施形態における光源装置による非モニタ光を模式的に示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施形態における光源装置による非モニタ光を遮断する構成を示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、本実施形態における光源装置の変形例の構成を示す断面図である。
【
図6D】
図6Dは、本実施形態における光源装置の他の変形例の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本開示の実施形態における光源装置の概略構成を説明する。
図1Aは、本実施形態における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、製造工程の途中における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。図には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。
【0009】
図示されている光源装置100は、レーザダイオード10と、レーザダイオード10を直接または間接的に支持する基板30と、基板30に固定され、レーザダイオード10を覆うガラスキャップ40とを備えている。以下、ガラスキャップ40を単に「キャップ」と称することにする。光源装置100は、更に、
図1Bに示される光検出器50を備えている。光検出器50は、基板30に直接または間接的に支持され、キャップ40の外側に位置している。光検出器50は受光部52を有し、レーザダイオード10から出射されたレーザ光14の一部を受光部52で受けてレーザ光14のモニタを行う。受光部52は、フォトダイオードなどの光電変換素子である。光検出器50の動作については、後述する。
【0010】
キャップ40は、レーザダイオード10を収容する空洞40Vを有しており、空洞40Vは、
図1Bに示されるように、基板30に固定される前の状態において、下方に開放されている。キャップ40は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14を透過する正面ガラス壁40Fを含む。この正面ガラス壁40Fは、光検出器50の動作にとって重要な役割を果たす。この点については、後述する。
【0011】
キャップ40は、基板30の主面32に接合される下端面40Eを有している。下端面40Eは、空洞40Vの開放面の周囲に位置している。図示される例において、空洞40Vの形状は直方体であるが、空洞40Vの形状は、直方体に限定されない。空洞40Vの一辺の長さは、例えば、1.0mm以下であり得るが、1.0mmより大きくてもよい。
【0012】
レーザダイオード10には、例えば、青色の光を放射するレーザダイオード、緑色の光を放射するレーザダイオード、または、赤色の光を放射するレーザダイオードなどを採用
することができる。また、これら以外の光を放射するレーザダイオードを採用してもよい。
【0013】
本明細書において、青色の光は、発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光である。緑色の光は、発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光である。赤色の光は、発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光である。
【0014】
青色の光を発するレーザダイオード、または、緑色の光を発するレーザダイオードとして、窒化物半導体を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色の光を発するレーザダイオードとして、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。
【0015】
レーザダイオード10から放射されるレーザ光14は、拡がりを有し、レーザ光14の出射端面に平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPは、出射端面から離れた位置におけるレーザ光14の光強度分布によって規定される。この光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e2以上の強度を有する部分をビーム断面と呼んでもよい。
【0016】
本実施形態において、レーザダイオード10は、レーザ光14を出射する端面を有する端面出射型であるが、面発光型(VCSEL)であってもよい。簡単のため、図では、レーザ光14の中心軸が破線で示されている。実際のレーザ光14は、上述したように、レーザダイオード10の端面から出射された後、発散して拡がる。このため、レーザ光14は、不図示のレンズを含む光学系によって、コリメートまたは収束され得る。そのような光学系は、典型的には、光源装置100の外部に設けられる。コリメートまたは収束のためのレンズを含む光学系の少なくとも一部は、キャップ40そのものに設けられたり、キャップ40の空洞40V内に配置されたりしていてもよい。
【0017】
レーザ光14の中心軸は、基板30の主面32に沿う方向(Z軸方向)に延びている。光源装置100から外部に出たレーザ光14は、光源装置100の外部に配置されたミラーによって、例えば基板30の主面32に垂直な方向に反射されてもよい。
【0018】
図の例において、レーザダイオード10は、サブマウント20に固定された状態で基板30の主面32上に実装されている。レーザダイオード10は、サブマウント20を介することなく、直接に、基板30の主面32に接合されていてもよい。これらの図において、レーザダイオード10を外部回路に接続する配線の記載は省略されている。
【0019】
基板30は、シリコンやセラミックを主材料として形成することができる。なお、シリコンやセラミックに限らず金属で形成されていてもよい。例えば、セラミックでは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素を、金属では銅、アルミニウム、鉄、複合物として銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステンを基板30の主材料に用いることができる。
【0020】
基板30の上面および下面には、それぞれ複数の金属層が設けられ得る。基板30の内部を通る金属により、上面における金属層と下面における金属層とを電気的に接続することができる。基板30の下面には、上面における金属層とは電気的に接続しない金属層が形成され得る。基板30の一例は、配線を内部および/または外側に備える多層セラミックス基板であり得る。
【0021】
サブマウント20は下面と、上面と、側面とを有し、典型的には、直方体の形状を有しているがこれに限定されず、任意の形状を取り得る。サブマウント20は、例えば、シリコン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素から形成され得る。サブマウント20の上面には、レーザダイオード10を基板30上の配線に接続するための金属層が設けられ得る。
【0022】
キャップ40は、基板30に支持されたレーザダイオード10を覆った状態で基板30に固定される。図示される例では、キャップ40の下端面40Eが基板30の主面32に接合される。このような接合は、金属などの無機材料、また有機材料の層を介して実現され得る。こうして、レーザダイオード10は気密に封止され得る。
図1Aの光源装置100を「半導体レーザパッケージ」と呼んでもよい。図の例において、1個の光源装置100は1個のレーザダイオード10を備えているが、本開示の実施形態は、そのような例に限定されない。キャップ40が有する1個の空洞40Vの内部に複数のレーザダイオード10を配列してもよい。複数のレーザダイオード10は、典型的には、それぞれ、レーザ光14を同一の方向に出射するように、平行に配置され得る。
【0023】
図2は、本開示の実施形態における光源装置の他の構成例を模式的に示す斜視図である。この例において、基板30は、1個のサブマウント20上に配列された3個のレーザダイオード10R、10G、10Bを備えている。レーザダイオード10R、10G、10Bは、それぞれ、赤色、緑色、青色のレーザ光14を放射する。これらのレーザダイオード10R、10G、10Bが1個のキャップ40の内部に収容されて気密に封止され得る。サブマウント20の個数は、1個に限定されず、レーザダイオード10R、10G、10Bごとに分離されていてもよい。
【0024】
レーザダイオード10R、10G、10Bのそれぞれから放射されたレーザ光14は、不図示のビームコンバイナによって同軸のビームに結合され得る。レーザダイオード10R、10G、10Bは、それぞれ、異なるタイミングまたは同時にレーザ光14を放射し得る。レーザ光14の放射は、不図示の駆動回路によって制御される。
【0025】
図2の光源装置100も、光検出器50を備えている。この光検出器50も、基板30に直接または間接的に支持され、キャップ40の外側に位置している。光検出器50は、受光部52R、52G、52Bを有している。受光部52R、52G、52Bは、それぞれ、赤色、緑色、青色の光を選択的に透過する色フィルタを有している。受光部52R、52G、52Bは、レーザダイオード10R、10G、10Bのそれぞれから放射されたレーザ光14の一部を受けてレーザ光14のモニタを行う。
【0026】
なお、同一のキャップ40の内部に、例えば黄色のレーザ光を放射する他のレーザダイオードが実装されていてもよい。また、同一の基板30上に複数のキャップ40が接続され、個々のキャップ40の内部に1個または複数個のレーザダイオードが収容されていてもよい。
【0027】
次に
図3Aおよび
図3Bを参照しながら、本実施形態における光源装置100の構成例を詳細に説明する。
図3Aは、YZ平面に平行な断面であって、レーザ光14の中心軸を含む断面を模式的に示す図である。
図3Bは、
図3Aの1B-1B線の断面図であり、XY平面に平行な断面を示す図である。
図3Aは、
図3Bの1A-1A線の断面図に相当する。
【0028】
本実施形態におけるキャップ40は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14を透過する正面ガラス壁40Fを含む。正面ガラス壁40Fは、基板30上においてレーザ光14を横切る位置に配置されている。正面ガラス壁40Fは、レーザダイオード1
0から出射されるレーザ光14が入射する入射面40a、および、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14が出射する出射面40bを有している。また、キャップ40は、
図3Aに示される例において、レーザダイオード10を基準として正面ガラス壁40Fの反対側に位置する背面ガラス壁40Rを含む。更に、キャップ40は、
図3Bに示される「コの字型(アルファベットのCの字型)」の断面を有する中間部分40Bを有している。この中間部分40Bは、レーザダイオード10の側方に位置する一対の側壁部40Sと、レーザダイオード10の上方に位置して一対の側壁部40Sを連結するカバー部40Tを有している。一対の側壁部40Sとカバー部40Tとは、必ずしも透光性を有している必要はないので、中間部分40Bは、ガラスから形成されている必要はない。本実施形態では、正面ガラス壁40Fで反射されたレーザ光を透過し得る透光性部分をキャップ40が有している。
【0029】
本実施形態において、正面ガラス壁40F、背面ガラス壁40R、および、中間部分40Bは、一体的に連続した構造を有しているが、個別のガラス部品を結合して作製され得る。このようなガラス部品の結合は、例えば陽極接合によって行うことができる。ガラス部品の結合部には薄い金属の層が存在していてもよい。このため、「ガラスキャップ」は、全体がガラスから形成されているキャップだけではなく、例えば正面ガラス壁40Fおよび背面ガラス壁40R以外の部分がガラスとは異なる材料から形成されているようなキャップも含む。キャップ40を製造する方法の例は、例えば、特願2019-171454号に開示されている。特願2019-171454号の開示内容の全体をここに援用する。
【0030】
キャップ40におけるガラス部分は、アルカリガラスおよび/または無アルカリガラスから形成され得る。「アルカリガラス」は、Na+、Ka+、Li+などのアルカリ金属元素イオンを含有するケイ酸化合物ガラスである。アルカリ酸化物の濃度が0.1質量%以下であるケイ酸化合物ガラスを「無アルカリガラス」と称する。なお、ケイ酸化合物ガラスの例は、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、および石英ガラスを含む。
【0031】
図3Aに示される例において、光検出器50は、背面ガラス壁40Rの背面側に位置し、キャップ40を透過したレーザ光を検出することができる。より詳細には、図の例における光検出器50は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14のうち正面ガラス壁40Fによって反射され、かつ、背面ガラス壁40Rを透過した光を検出する。光検出器50は、受光部52のサイズまたは光検出器50の位置によっては、キャップ40のうちで背面ガラス壁40R以外の部分を透過した光を検出することもできる。しかし、正面ガラス壁40Fによって反射されたレーザ光の大部分は、一般に、背面ガラス壁40Rを透過するため、光検出器50が置かれる位置の典型例は、背面ガラス壁40Rの背面側である。
【0032】
このように光検出器50をキャップ40の外側に配置することにより、キャップ40は光検出器50を内部に収容するような大きさを有している必要はなく、小型化することが可能になる。レーザダイオード10に比べて相対的に大きな光検出器50であっても、キャップ40の背面側に配置することにより、レーザ光の進行に邪魔にならない位置で電気的な接続を行うことも容易になり、製造がしやすいという利点もある。
【0033】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光14は、正面ガラス壁40Fの入射面40aに入射するとき、気体と固体との間に存在する第1の界面(入射面40a)を通過する。「気体」は空洞40Vの内部に存在する空気、または不活性ガスなどである。「固体」は正面ガラス壁40Fを構成しているガラスである。空気などの気体の屈折率は約1.0であるのに対して、ガラスの屈折率は例えば1.4以上である。このため、第1の界面は、屈折率が相対的に低い誘電体(空気)と屈折率が相対的に高い誘電体(ガラス)との
界面である。このような界面は、「Low-to-High」の界面と呼ばれ、いわゆる「固定端反射」が生じる。その結果、レーザ光14の一部が反射される。
【0034】
レーザ光14が正面ガラス壁40Fの内部を透過して出射面40bから出射されるとき、固体と気体との間に存在する第2の界面(出射面40b)を通過する。第2の界面は、屈折率が相対的に高い誘電体(ガラス)と屈折率が相対的に低い誘電体(空気)との界面である。このような界面は、「High-to-Low」の界面と呼ばれ、いわゆる「自由端反射」が生じる。第2の界面でも、レーザ光14の一部が反射される。
【0035】
このように、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14のうち正面ガラス壁40Fによって反射される割合は、正面ガラス壁40Fの入射面40aおよび出射面40bの反射率によって決まる。入射面40aおよび出射面40bの反射率、すなわち、第1および第2の界面における反射率は、後述するように、例えば、1層の誘電体層または積層された複数の誘電体層からなる光学膜によって調整され得る。なお、反射率は、光の波長に依存するため、本開示における「反射率」とは、レーザダイオード10から出射されるレーザ光のピーク波長における反射率を意味するものとする。
【0036】
次に、
図4を参照する。
図4は、本実施形態における光源装置100によるモニタ光が光検出器に入射する様子を模式的に示す断面図である。
図4では、正面ガラス壁40Fの入射面40aで反射されるレーザ光14a、出射面40bで反射されるレーザ光14bが代表的な何本かの光線によって模式的に示されている。実際の光線はキャップ40と空気との界面において屈折するが、簡単のため、屈折の様子は図示されていない。前述したように、レーザダイオード10から放射されるレーザ光14は、拡がりを有し、レーザ光14の出射端面12に平行な面において楕円形状のFFPを形成する。楕円の長軸は、レーザダイオード10の積層方向に平行であり、
図4の配置例において、楕円の長軸はY軸方向を向いている。このため、正面ガラス壁40Fの入射面40aで反射されたレーザ光14aの一部、および、出射面40bで反射されたレーザ光14bの一部は、それぞれ、レーザダイオード10およびサブマウント20に遮光されることなく、光検出器50に達することができる。
【0037】
一般に、精度の高いモニタを行うには、ノイズ成分よりも大きな信号成分を得ることが好ましい。正面ガラス壁40Fの入射面40aおよび出射面40bの反射率が高いほど、光検出器50の受光部52に入射するレーザ光14a、14bの強度は増加する。しかし、光源装置100から外部に取り出して利用されるレーザ光14の光強度は、正面ガラス壁40Fの入射面40aおよび出射面40bの反射率が低いほど、増加する。従って、充分に高いレーザ光14の光強度を実現しながら、必要なレベルのモニタが可能となるように正面ガラス壁40Fの入射面40aおよび出射面40bの反射率が調整され得る。
【0038】
従来、レーザダイオード10の出射端面12ではなく、出射端面12の反対側に位置する他の端面、すなわち背面側の端面から漏れた光をモニタ光として利用することが行われている。しかし、出射端面12の表面状態がレーザ動作中に変化した場合、そのことをモニタ光の強度からは検知できない。また、背面側の端面から漏れた光をモニタ光として利用する場合、背面ガラス壁40Rのミラー反射率が高いため、反射率のわずかな変化でも光検出器50に入る光量が大きく変わるという課題もある。しかし、本開示の実施形態のように、レーザダイオード10の出射端面12から出射されたレーザ光14の一部である反射光をモニタすれば、上記の課題を解決することができる。
【0039】
図5を参照しながら、正面ガラス壁40Fにおける入射面40aおよび出射面40bの反射率が調整された光源装置100の構成例を説明する。
【0040】
図5の例において、正面ガラス壁40Fにおける入射面40aには第1反射率調整層60aが形成されている。また、出射面40bには、第2反射率調整層60bが形成されている。第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bのそれぞれは、例えば、1層の誘電体層、または、積層された複数の誘電体層からなる誘電体多層膜であり得る。第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bは、それぞれ、「反射防止膜」と呼ばれる光学膜の構成と同様の構成を有している。しかし、一般の反射防止膜は、可能な限り反射を抑制するように、極めて低い反射率、例えば0.5%以下の反射率を有している。これに対して、本開示の実施形態では、第1および第2の界面の少なくとも一方の界面から、モニタに必要なレベルの反射光を得る必要がある。このため、第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bの反射率は、両方を含む全体として、例えば1%以上10%以下の範囲になるように決定される。
【0041】
ある実施形態において、第1反射率調整層60aの反射率は、第2反射率調整層60bの反射率よりも高い。その場合、第1反射率調整層60aによって反射されたレーザ光14aがモニタに必要な光量を光検出器50に与えることができれば、第2反射率調整層60bの反射率は、一般の反射防止膜のように、0.5%以下の反射率を有していてもよい。従って、そのような低反射率の第2反射率調整層60bは、通常の「反射防止膜」と同様にして形成され得る。
【0042】
他の実施形態において、第2反射率調整層60bの反射率は、第1反射率調整層60aの反射率よりも高い。その場合、第2反射率調整層60bによって反射されたレーザ光14bがモニタに必要な光量を光検出器50に与えることができれば、第1反射率調整層60aの反射率は、一般の反射防止膜のように、0.5%以下の反射率を有していてもよい。従って、そのような低反射率の第1反射率調整層60aは、通常の「反射防止膜」と同様にして形成され得る。
【0043】
このように、第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bの一方は、従来の反射防止膜と同様に極めて低い反射率を有していてよい。また、光検出器50の感度が高い場合、あるいは、反射光が効率よく光検出器50の受光部52に入射する場合は、第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bの両方が、従来の反射防止膜と同様に極めて低い反射率を有していてもよい。
【0044】
また、第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bは、それぞれ、膜の形態を有している必要はない。ナノ粒子の粉末層またはモスアイ構造のように、波長よりも短いサイズの微細凹凸構造を入射面40aおよび/または出射面40bに形成してもよい。
【0045】
あるいは、入射面40aおよび/または出射面40bの表面を改質することにより、ガラス表面に内部よりも屈折率の低い領域を形成しても、反射率の調整は可能である。こうしてガラス表面に形成した改質領域によっても第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bを実現することができる。また、上記した反射率調整が可能な種々の構成を組み合わせてもよい。
【0046】
なお、第1反射率調整層60aおよび第2反射率調整層60bは、レーザ光14が透過する領域に選択的に形成されてもよいし、製造工程によっては、他の領域に拡がって形成されていてもよい。
【0047】
図5には図示されていないが、背面ガラス壁40Rのキャップ40の外側に位置する表面、および/または、内側に位置する表面には、反射防止膜が形成され得る。このような反射防止膜の役割は、モニタのためのレーザ光14a、14bを効率的に光検出器50の受光部52に入射させることにある。
【0048】
【0049】
まず、
図6Aを参照して、レーザダイオード10から放射される不要な光について説明する。一般に、レーザダイオード10からは、相対的に弱い非レーザ光が四方に放射され得る。この非レーザ光は、レーザ発振によってコヒーレント化した光ではなく、LEDが放射する光と同様にインコヒーレントな光である。このような光16が光検出器50に入射すると、ノイズとなり、レーザ光14のモニタ精度が低下する。
【0050】
次に
図6Bを参照する。
図6Bは、本実施形態における光源装置による非モニタ光を遮断する構成を示す断面図である。図示される構成を有する光源装置100は、レーザダイオード10と光検出器50との間に配置された遮光体70を備える。遮光体70は、非レーザ光が光検出器50に入射することを阻止または抑制する。このため、レーザ光14のモニタ精度が向上し得る。
【0051】
図6Cは、本実施形態における光源装置の変形例の構成を示す断面図である。
図6Cの光源装置100は、キャップ40内に配置された保護素子72を備えている。この保護素子72はツェナーダイオードとすることができ、レーザダイオード10に電気的に並列に接続され、レーザダイオード10に印加され得る逆方向電圧を所定レベル以下に抑える保護回路として機能し得る。
図6Cの光源装置100では、保護素子72が遮光体70として機能する。なお、レーザダイオード10と基板30との間に位置するサブマウント20をキャップ40内に備えている場合、サブマウント20の一部が遮光体70として機能する凸部を有していてもよい。
【0052】
図6Cの光源装置100は、光検出器50の前面に配置された偏光子80を更に備えている。レーザダイオード10から四方に放射される相対的に弱い非レーザ光は、非偏光であるため、偏光子80によって強度を半減することができる。偏光子80は、
図6Cに示されているように、キャップ40の内部に配置され得る。偏光子80の偏光透過軸は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14の偏光方向に整合している。レーザダイオード10から放射され、正面ガラス壁40Fによって反射されたレーザ光14の反射光は、偏光状態を保持したまま、偏光子80に入射する。このため、このような反射光は偏光子80を透過して適切に光検出器50で検出される。
【0053】
図6Dは、本実施形態における光源装置の他の変形例の構成を示す断面図である。この改変例における光源装置100では、遮光体70がキャップ40、具体的には背面ガラス壁40Rに固定されている。また、この光源装置100では、偏光子80がキャップ40の外側に配置されている。偏光子80は、光検出器50の前面に固定されていてもよい。
【0054】
上記の各構成例において、光検出器50とキャップ40との間にはギャップが存在しているが、このようなギャップは不可欠ではない。光検出器50とキャップ40とが接していても良い。
【0055】
図7は、本開示の実施形態における光源装置の他の構成例を模式的に示す断面図である。
図7の光源装置100では、光検出器50が基板30に支持されておらず、キャップ40に固定されており、基板30に間接的に支持されている。光検出器50は、このようにキャップ40に支持されていてもよい。
【0056】
図8は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
図8の光源装置100では、キャップ40の正面ガラス壁40Fおよび背面ガラス
壁40Rが基板30の主面32の法線方向(Y軸に平行な方向)から傾斜している。
図8に示すように、入射面40aおよび出射面40bの傾斜角度を、それぞれ、θ
1およびθ
2で定義する。θ
1とθ
2とは、等しい必要はない。図の例において、θ
1およびθ
2の両方が90°よりも大きい。このため、入射面40aおよび出射面40bは、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14の光軸に対して直交していない。正面ガラス壁40Fによる反射光の中心軸も、傾斜の角度に依存して変化し得る。このことは、光検出器50の受光部52に入射する光の量を低下させる可能性がある。しかし、背面ガラス壁40Rを傾斜させたり、光検出器50の受光部52の位置および角度を調整したりすることにより、受光量の低下を十分に抑えることが可能である。
【0057】
図8の例において、正面ガラス壁40Fおよび背面ガラス壁40Rの両方がY軸方向から傾斜しているが、一方のみが傾斜していてもよい。
図8のように正面ガラス壁40Fが傾斜していると、
図8の破線で示すよう、レーザ光14が第1および第2の界面で屈折するため、出射面40bから出射されたレーザ光14の中心軸は、基板30の主面32からの高さが増加する方向にシフトする。
【0058】
図9は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
図9の光源装置100でも、キャップ40の正面ガラス壁40Fおよび背面ガラス壁40Rが基板30の主面32の法線方向(Y軸に平行な方向)から傾斜している。より具体的には、正面ガラス壁40Fが
図8の光源装置100における傾斜方向とは反対側の方向に傾斜している。言い換えると、θ
1およびθ
2は、いずれも、90°より小さい。このため、
図9の破線で示すよう、レーザ光14が第1および第2の界面で屈折し、出射面40bから出射されたレーザ光14の中心軸は、基板30の主面32からの高さが減少する方向にシフトする。
図8および
図9の構成例では、いずれも、背面ガラス壁40Rがレーザダイオード10の側に向かって傾斜しているが、背面ガラス壁40Rの傾斜方向は任意である。
【0059】
図10は、本開示の実施形態における光源装置の更に他の構成例を模式的に示す断面図である。
図10の光源装置100では、キャップ40の正面ガラス壁40Fが基板30の主面32の法線方向(Y軸に平行な方向)から傾斜しているが、背面ガラス壁40Rは傾斜していない。このようにキャップ40は、種々の形状をとり得る。必要に応じて、キャップ40の一部に1個または複数個のレンズが取り付けられてもよい。そのようなレンズの例は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光14をコリメートするレンズ、および、レーザ光14a、14bを取り込んで光検出器50の受光部52に集めるレンズを含む。
【0060】
上記のいずれの形態において、光検出器50がキャップ40の外側に配置されているため、例えば
図1Bに示される空洞40Vの大きさを、光検出器50のサイズに制約されることなく、小さくすることができる。光検出器50を不図示の電子回路に接続するための配線も、キャップ40の内部に設ける必要がなく、キャップ40の内部および基板30における配線構造を簡単にすることが可能になる。このことも装置の小型化にとって有利である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示の光源装置は、レーザ光の出力を高い精度でモニタすることができ、また小型化に適しているため、ヘッドマウントディスプレイなどの小型光源として好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0062】
10・・・レーザダイオード、12・・・レーザダイオードの出射端面、20・・・サブ
マウント、30・・・基板、32・・・基板の主面、40・・・キャップ、40a・・・入射面、40b・・・出射面、40F・・・正面ガラス壁、40R・・・背面ガラス壁、40S・・・側壁部、40T・・・カバー部、50・・・光検出器、52・・・受光部、60a・・・第1反射率調整層、60b・・・第2反射率調整層、70・・・遮光体、80・・・偏光子、100・・・光源装置