(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009601
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置、試料加工方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20220106BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01J37/317 D
H01J37/28 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175717
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2017060907の分割
【原出願日】2017-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】酉川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大西 毅
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101AA32
5C101AA37
5C101BB11
5C101EE72
5C101JJ01
5C101JJ02
(57)【要約】
【課題】試料の厚みを減じた微小試料片の全体にムラなく荷電粒子ビームを照射することが可能であり、かつ、加工時の加工終点を明確に把握することが可能な荷電粒子ビーム装置、および試料加工方法を提供する。
【解決手段】試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、微小試料片を作成する荷電粒子ビーム装置であって、前記試料に向けて荷電粒子ビームを照射可能な荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビーム鏡筒を収容する前記試料室と、前記試料を保持可能する試料片ホルダと、を有し、前記荷電粒子ビームによって、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を形成する際に、該微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が前記薄片化部分に対して傾斜した傾斜部を形成することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、微小試料片を作成する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料に向けて荷電粒子ビームを照射可能な荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビーム鏡筒を収容する前記試料室と、
前記試料を保持可能する試料片ホルダと、を有し、
前記荷電粒子ビームによって、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を形成する際に、該微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が前記薄片化部分に対して傾斜した傾斜部を形成することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記傾斜部に対して平行になるようにアルゴンイオンビームを照射することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を作成する試料作製方法であって、
前記荷電粒子ビームの照射によって、前記試料の厚み方向に沿った所定の加工厚みで、かつ前記厚み方向に対して直角な幅方向に沿った加工幅の除去域を、前記厚み方向に沿って複数重ねて形成し、前記除去域を重ねるごとに前記加工幅を段階的に減じることによって、前記微小試料片の薄片化部分に隣接する部分に、前記薄片化部分に対して傾斜させた傾斜部を形成する傾斜部形成工程を備えたことを特徴とする試料加工方法。
【請求項4】
前記傾斜部形成工程における、それぞれの除去域の前記加工厚みおよび前記加工幅は、走査型電子顕微鏡によって得られた前記傾斜部のSEM画像を参照して決定されることを特徴とする請求項3記載の試料加工方法。
【請求項5】
前記試料は、基材の内部に埋設層が前記厚み方向に沿って複数重ねて形成され、
前記傾斜部形成工程は、前記SEM画像を用いて、前記傾斜部に露呈される前記埋設層の数をカウントして、加工終点を決定することを特徴とする請求項4記載の試料加工方法。
【請求項6】
前記傾斜部形成工程では、前記薄片化部分と、前記薄片化部分に隣接する部分である傾斜部とを、互いに10°以上90°未満の範囲で傾斜させることを特徴とする請求項3ないし5いずれか一項記載の試料加工方法。
【請求項7】
前記微小試料片に向けて、前記傾斜部に対して平行になるようにアルゴンイオンビームを照射するアルゴンビーム照射工程を更に備えたことを特徴とする請求項3ないし6いずれか一項記載の試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを用いて試料の加工を行うための荷電粒子ビーム装置、および、荷電粒子ビームを用いた試料加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス等の試料の内部構造を解析したり、立体的な観察を行ったりする手法の1つとして、荷電粒子ビーム(Focused Ion Beam;FIB)鏡筒と電子ビーム(Electron Beam;EB)鏡筒を搭載した荷電粒子ビーム複合装置を用いて、FIBによる断面形成加工と、その断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により観察を行う断面加工観察方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この断面加工観察方法は、FIBによる断面形成加工とSEMによる断面観察を繰り返して3次元画像を構築する手法が知られている。この手法では、再構築した3次元立体像から、対象試料の立体的な形体を様々な方向から詳細に解析することができる。更に、対象試料の任意の断面像を再現することができるという、他の方法にはない利点を有している。
【0004】
その一方で、SEMは原理上、高倍率(高分解能)の観察に限界があり、また得られる情報も試料表面近くに限定される。このため、より高倍率で高分解能の観察のために、薄膜状に加工した試料に電子を透過させる透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy:TEM)を用いた観察方法も知られている。こうしたTEMによる観察に用いる薄膜化した微細な試料(以下、微小試料片と称することがある。)の作製にも、上述したようなFIBによる断面形成加工が有効である。
【0005】
従来、TEMによる観察に用いる微小試料片を作成する際には、試料の例えば先端部分を試料の厚み方向に沿って荷電粒子ビームを照射し、試料の厚みを減じて薄膜化することによって、微小試料片を作成していた。
例えば、半導体基板中に厚み方向に沿って複数のデバイスを積層した試料を薄膜化する際には、荷電粒子ビームを照射しつつ加工断面のSEM画像を観察し、加工断面に露出したデバイスの数をカウントすることで、所望の加工終点を把握していた。
【0006】
一方、荷電粒子ビームを用いた加工によって生じる、荷電粒子ビームの照射方向に沿った加工縞模様(カーテン効果)を軽減するために、試料の厚み方向に対して傾斜した方向から荷電粒子ビームを照射することも行われている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-270073号公報
【特許文献2】特開平9-186210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した試料の加工方法(薄膜化方法)では、試料のうち、薄膜化する部分はエッチング加工され、当該部分に隣接する部分はエッチング加工されないため、90°で屈曲する段差が生じる。そして、上述したようなカーテン効果対策のために、薄片化する部分の加工面に対して傾斜した方向から荷電粒子ビームを照射すると、前述の隣接部分が荷電粒子ビームを遮蔽するため、荷電粒子ビームが当たらない陰領域が生じる。このため、荷電粒子ビームが当たらない陰領域を考慮して加工幅を決定しなければならず、所望の加工幅よりも大きな加工範囲に荷電粒子ビームを照射する必要が生じる。このため、試料の加工時間が長くなり、また、所望の形状の微小試料片を作製できない虞もあった。
【0009】
また、半導体基板中に厚み方向に沿って複数のデバイスを積層した試料を薄膜化する際には、加工終点を把握するために加工によって露出したデバイスの数をカウントする時に、上述した陰領域の影響で加工面のコントラストが低下し、正確にデバイスの数をカウントできず、加工終点の正確な把握ができなくなる虞もあった。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、試料の厚みを減じた微小試料片の全体にムラなく荷電粒子ビームを照射することが可能であり、かつ、加工時の加工終点を明確に把握することが可能な荷電粒子ビーム装置、および試料加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本実施形態の態様は、以下のような荷電粒子ビーム装置、試料加工方法を提供した。
すなわち、本発明の荷電粒子ビーム装置は、試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、微小試料片を作成する荷電粒子ビーム装置であって、前記試料に向けて荷電粒子ビームを照射可能な荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビーム鏡筒を収容する前記試料室と、前記試料を保持可能する試料片ホルダと、を有し、前記荷電粒子ビームによって、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を形成する際に、該微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が前記薄片化部分に対して傾斜した傾斜部を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の荷電粒子ビーム装置によれば、微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が、この薄片化部分に対して傾斜した傾斜部を形成することで、傾斜部に露呈するデバイスの断面形状は、デバイスの延長方向に直角な断面における断面形状と比較して、より大きく鮮明に見えるので、デバイスの数を正確にカウントすることができる。これによって、荷電粒子ビームによる試料の加工終点を容易に、かつ確実に決定することができる。
【0013】
また本発明は、前記傾斜部に対して平行になるようにアルゴンイオンビームを照射することを特徴とする。
【0014】
本発明の試料加工方法は、試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を作成する試料作製方法であって、前記荷電粒子ビームの照射によって、前記試料の厚み方向に沿った所定の加工厚みで、かつ前記厚み方向に対して直角な幅方向に沿った加工幅の除去域を、前記厚み方向に沿って複数重ねて形成し、前記除去域を重ねるごとに前記加工幅を段階的に減じることによって、前記微小試料片の薄片化部分に隣接する部分に、前記薄片化部分に対して傾斜させた傾斜部を形成する傾斜部形成工程を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の試料加工方法によれば、微小試料片の薄片化部分に隣接する部分に、この薄片化部分に対して傾斜させた傾斜部を形成することができるので、後工程で、試料の加工に用いた荷電粒子ビームとは別な照射角の再加工ビームを照射する際に、微小試料片の付け根部分にアルゴンイオンビームが照射されない陰領域を無くすことができ、微小試料片の全域に確実にアルゴンイオンビームを照射することが可能になる。これによって、微小試料片の全域において加工縞模様が軽減され、鮮明な観察像を得ることが可能な微小試料片を形成できる。
【0016】
また本発明は、前記傾斜部形成工程における、それぞれの除去域の前記加工厚みおよび前記加工幅は、走査型電子顕微鏡によって得られた前記傾斜部のSEM画像を参照して決定されることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記試料は、基材の内部に埋設層が前記厚み方向に沿って複数重ねて形成され、前記傾斜部形成工程は、前記SEM画像を用いて、前記傾斜部に露呈される前記埋設層の数をカウントして、加工終点を決定することを特徴とする。
【0018】
前記傾斜部形成工程では、前記薄片化部分と、前記薄片化部分に隣接する部分である傾斜部とを、互いに10°以上90°未満の範囲で傾斜させることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記微小試料片に向けて、前記傾斜部に対して平行になるようにアルゴンイオンビームを照射するアルゴンビーム照射工程を更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試料の厚みを減じた微小試料片の全体にムラなく荷電粒子ビームを照射することが可能であり、かつ、加工時の加工終点を明確に把握することが可能な荷電粒子ビーム装置、および試料加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成図である。
【
図2】試料加工方法を段階的に示した説明図である。
【
図3】試料加工方法を段階的に示した説明図である。
【
図4】試料加工方法の別な例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である荷電粒子ビーム装置、およびこれを用いた試料加工方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置を示す概略構成図である。
本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10は、
図1に示すように、内部を真空状態に維持可能な試料室11と、試料室11の内部において、バルクの試料Vや、試料片Sを保持するための試料片ホルダPを固定可能なステージ12と、ステージ12を駆動するステージ駆動機構13と、を備えている。
【0024】
荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査範囲)内の照射対象に荷電粒子ビーム、例えば集束イオンビーム(FIB)を照射する集束イオンビーム照射光学系14を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する電子ビーム照射光学系15を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、荷電粒子ビームまたは電子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rを検出する検出器16を備えている。
【0025】
荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に気体イオンビーム(GB)を照射する気体イオンビーム光学系18を備えている。
これら集束イオンビーム照射光学系14、電子ビーム照射光学系15、および気体イオンビーム光学系18は、それぞれのビーム照射軸がステージ12上の実質的な1点で交差可能なように配置されている。即ち、試料室11を側面から平面視した時に、集束イオンビーム光学系14は鉛直方向に沿って配置され、電子ビーム照射光学系15と気体イオンビーム光学系18は、それぞれ鉛直方向に対して例えば45°傾斜した方向に沿って配置されている。こうした配置レイアウトにより、試料室11を側面から平面視した時に、電子ビーム照射光学系15から照射される電子ビーム(EB)のビーム照射軸に対して、気体イオンビーム(GB)のビーム照射軸は、例えば直角に交わる方向になる。
【0026】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面にガスGを供給するガス供給部17を備えている。ガス供給部17は具体的には外径200μm程度のノズル17aなどである。
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面にガスGを供給するガス供給部17を備えている。ガス供給部17は具体的には外径200μm程度のノズル17aなどである。
【0027】
荷電粒子ビーム装置10は、ステージ12に固定された試料Vから試料片Sを取り出し、この試料片Sを保持して試料片ホルダPに移設するニードル19aおよびニードル19aを駆動して試料片Sを搬送するニードル駆動機構19bからなる試料片移設手段19と、ニードル19aに流入する荷電粒子ビームの流入電流(吸収電流とも言う)を検出し、流入電流信号はコンピュータに送り画像化する吸収電流検出器20と、を備えている。
【0028】
荷電粒子ビーム装置10は、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する表示装置21と、コンピュータ22と、入力デバイス23と、を備えている。
【0029】
なお、集束イオンビーム照射光学系14および電子ビーム照射光学系15の照射対象は、ステージ12に固定された試料V、試料片S、および照射領域内に存在するニードル19aや試料片ホルダPなどである。
【0030】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面に荷電粒子ビームを走査しながら照射することによって、被照射部の画像化やスパッタリングによる各種の加工(掘削、トリミング加工など)と、デポジション膜の形成などが実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料Vから試料片Sの切り出し、切り出した試料片SからTEMによる観察に用いる微小試料片Q(
図3参照:例えば、薄片試料、針状試料など)や電子ビーム利用の分析試料片を形成する加工を実行可能である。
【0031】
荷電粒子ビーム装置10は、試料片ホルダPに移設された試料片Sの例えば先端部分を、透過電子顕微鏡による透過観察に適した所望の厚さ(例えば、5~100nmなど)まで薄膜化して、観察用の微小試料片Qを得ることが可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料片Sおよびニードル19aなどの照射対象の表面に荷電粒子ビームまたは電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象の表面の観察を実行可能である。
【0032】
吸収電流検出器20は、プリアンプを備え、ニードルの流入電流を増幅し、コンピュータ22に送る。吸収電流検出器20により検出されるニードル流入電流と荷電粒子ビームの走査と同期した信号により、表示装置21にニードル形状の吸収電流画像を表示でき、ニードル形状や先端位置特定が行える。
【0033】
試料室11は、排気装置(図示略)によって内部を所望の真空状態になるまで排気可能であるとともに、所望の真空状態を維持可能に構成されている。
ステージ12は、試料Vを保持する。ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備えている。このホルダ固定台12aは複数の試料片ホルダPを搭載できる構造であってもよい。
【0034】
ステージ駆動機構13は、ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてステージ12を所定軸に対して変位させる。ステージ駆動機構13は、少なくとも水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行にステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。ステージ駆動機構13は、ステージ12をX軸またはY軸周りに傾斜させる傾斜機構13bと、ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0035】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向上方の位置でステージ12に臨ませるとともに、光軸を鉛直方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に載置された試料V、試料片S、および照射領域内に存在するニードル19aなどの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい荷電粒子ビームを照射可能である。
【0036】
また、荷電粒子ビーム装置10は、上記のような集束イオンビーム照射光学系14の代わりに他のイオンビーム照射光学系を備えてもよい。イオンビーム照射光学系は、上記のような集束ビームを形成する光学系に限定されない。イオンビーム照射光学系は、例えば、光学系内に定型の開口を有するステンシルマスクを設置して、ステンシルマスクの開口形状の成形ビームを形成するプロジェクション型のイオンビーム照射光学系であってもよい。このようなプロジェクション型のイオンビーム照射光学系によれば、試料片Sの周辺の加工領域に相当する形状の成形ビームを精度良く形成でき、加工時間が短縮される。
【0037】
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、荷電粒子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。
【0038】
イオン源14aは、例えば、液体ガリウムなどを用いた液体金属イオン源やプラズマ型イオン源、ガス電界電離型イオン源などである。イオン光学系14bは、例えば、コンデンサレンズなどの第1静電レンズと、静電偏向器と、対物レンズなどの第2静電レンズと、などを備えている。イオン源14aとして、プラズマ型イオン源を用いた場合、大電流ビームによる高速な加工が実現でき、サイズの大きな試料片Sの摘出に好適である。例えば、ガス電界電離型イオン源としてアルゴンイオンを用いることで、集束イオンビーム照射光学系14からアルゴンイオンビームを照射することもできる。
【0039】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向に対して所定角度(例えば60°)傾斜した傾斜方向でステージ12に臨ませるとともに、光軸を傾斜方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に固定された試料V、試料片S、および照射領域内に存在するニードル19aなどの照射対象に傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
【0040】
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。電子光学系15bは、例えば、電磁レンズや偏向器などを備えている。
【0041】
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替えて、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0042】
気体イオンビーム光学系18は、例えばアルゴンイオンビームなどの気体イオンビーム(GB)を照射する。気体イオンビーム光学系18は、アルゴンガスをイオン化して1kV程度の低加速電圧で照射することができる。こうした気体イオンビーム(GB)は、集束イオンビーム(FIB)に比べて集束性が低いため、試料片Sや微小試料片Qに対するエッチングレートが低くなる。よって、試料片Sや微小試料片Qの精密な仕上げ加工に好適である。
【0043】
検出器16は、試料V、試料片Sおよびニードル19aなどの照射対象に荷電粒子ビームや電子ビームが照射された時に照射対象から放射される二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rの強度(つまり、二次荷電粒子の量)を検出し、二次荷電粒子Rの検出量の情報を出力する。検出器16は、試料室11の内部において二次荷電粒子Rの量を検出可能な位置、例えば照射領域内の試料V、試料片Sなどの照射対象に対して斜め上方の位置などに配置され、試料室11に固定されている。
【0044】
ガス供給部17は試料室11に固定されており、試料室11の内部においてガス噴射部(ノズルとも言う)を有し、ステージ12に臨ませて配置されている。ガス供給部17は、荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料V、試料片Sのエッチングを、これらの材質に応じて選択的に促進するためのエッチング用ガスと、試料V、試料片Sの表面に金属または絶縁体などの堆積物によるデポジション膜を形成するためのデポジション用ガスなどを試料V、試料片Sに供給可能である。
【0045】
試料片移設手段19を構成するニードル駆動機構19bは、ニードル19aが接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてニードル19aを変位させる。ニードル駆動機構19bは、ステージ12と一体に設けられており、例えばステージ12が傾斜機構13bによって傾斜軸(つまり、X軸またはY軸)周りに回転すると、ステージ12と一体に移動する。
【0046】
ニードル駆動機構19bは、3次元座標軸の各々に沿って平行にニードル19aを移動させる移動機構(図示略)と、ニードル19aの中心軸周りにニードル19aを回転させる回転機構(図示略)と、を備えている。なお、この3次元座標軸は、試料ステージの直交3軸座標系とは独立しており、ステージ12の表面に平行な2次元座標軸とする直交3軸座標系で、ステージ12の表面が傾斜状態、回転状態にある場合、この座標系は傾斜し、回転する。
【0047】
コンピュータ22は、少なくともステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、ガス供給部17と、ニードル駆動機構19bを制御する。
【0048】
また、コンピュータ22は、試料室11の外部に配置され、表示装置21と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスやキーボードなどの入力デバイス23とが接続されている。コンピュータ22は、入力デバイス23から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
【0049】
コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を、照射位置に対応付けた輝度信号に変換して、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル19aに流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布(吸収電流画像)によってニードル19aの形状を示す吸収電流画像データを生成する。
【0050】
コンピュータ22は、生成した各画像データとともに、各画像データの拡大、縮小、移動、および回転などの操作を実行するための画面を、表示装置21に表示させる。コンピュータ22は、自動的なシーケンス制御におけるモード選択および加工設定などの各種の設定を行なうための画面を、表示装置21に表示させる。
【0051】
以上のような構成の荷電粒子ビーム装置10を用いた、本発明の試料加工方法を説明する。
図2、
図3は、試料加工方法を段階的に示した説明図である。
なお、以下の実施形態では、試料加工方法として、試料片ホルダPに支持された試料片Sを荷電粒子ビームによって薄膜化して、TEM観察用の微小試料片Qを作成する例を挙げて説明する。また、
図2(a)に示すように、試料片Sは、例えば、半導体基板からなる試料V(
図1参照)に複数のデバイス31,31…が形成された領域を切り出したものを想定し、デバイス31,31…が並べられた方向を厚み方向Tと称し、この厚み方向Tに対して直角で、かつデバイス31の延長方向を幅方向Wと称する。また、厚み方向Tおよび幅方向Wに対して直角な方向を加工方向Dと称する。
【0052】
まず、半導体基板からなる試料V(
図1参照)から観察対象を含む小領域である試料片SをFIB加工によって切り出す。そして、ニードル19a(
図1参照)を用いて半導体基板の厚み方向が鉛直方向(加工方向D)になるように、試料片ホルダP(
図1参照)に加工対象である試料片Sを支持させる。そして、
図2(b)に示すように、試料片Sに対して照射領域を設定し、集束イオンビーム照射光学系14(
図1参照)からFIBを加工方向Dに沿って照射する。そして、試料片Sの厚み方向Tに沿った所定の加工厚みで、かつ幅方向Wに沿った加工幅W1の第1除去域E1を形成する。これにより、第1除去域E1の付け根側の端部E1eには、例えば、1つのデバイス31の端面が露呈される。
【0053】
次に、
図2(c)に示すように、厚み方向Tに沿って第1除去域E1に重なる位置、即ち、第1除去域E1から厚み方向Tに沿って所定の加工厚みだけずらした位置にFIBを照射し、第2除去域E2を形成する。この時、幅方向Wに沿った加工幅W2として、加工幅W1よりも所定減少幅ΔWだけ短い幅に設定する。これにより、第2除去域E2の付け根側の端部E2eは、第1除去域E1の付け根側の端部E1eよりも幅方向Wの中心側に向けてずれた位置になる。
【0054】
更に、
図3(a)に示すように、厚み方向Tに沿って直前に形成した第n除去域Enに重なる位置、即ち、第n除去域Enから厚み方向Tに沿って所定の加工厚みだけずらした位置にFIBを照射し、第(n+1)除去域E(n+1)を形成する。この時、幅方向Wに沿った加工幅W(n+1)として、直前の第n除去域Enの加工幅Wnよりも所定減少幅ΔWだけ短い幅に設定する。このようにして、試料片Sに対してFIBを加工方向Dに沿って照射し、段階的に加工幅を減じた多数の除去域を厚み方向Tに重ねて形成することにより、試料片Sの厚み方向Tに沿った厚みを減じた微小試料片Qを形成する。
【0055】
こうした段階的に加工幅を減じた多数の除去域を形成することで、微小試料片Qには、その厚みが減じられた薄片化部分Qsが形成される。そして、この薄片化部分Qsに隣接する部分、即ち、それぞれの除去域の付け根側の端部が連なった部分には傾斜部(薄片化部分に隣接する部分)Cが形成される(傾斜部形成工程)。傾斜部Cは、例えば、厚み方向Tに対して10°以上90°未満の範囲で傾斜した傾斜面であり、例えば、傾斜部Cの表面はアルゴンイオンビームの照射角と平行になるように形成されていればよい。一例として、本実施形態では、傾斜部Cは、厚み方向Tに対して20°で傾斜した傾斜面を成す。ここで、10°以上90°未満の範囲において、90°未満の小さい入射角度でビームを入射することで、ビーム入射による試料へのダメージ層を浅くすることができる。これにより、ダメージ層を浅いため、デバイス寸法が微細な試料であっても加工時の加工終点を明確に把握することができる。
【0056】
なお、
図2、
図3に示す実施形態では、試料片Sの幅方向Wに沿った加工幅Wnが段階的に小さくなるようにFIBをスキャンさせて照射することで、傾斜部(薄片化部分に隣接する部分)Cを形成しているが、FIBのスキャン方法はこれに限定されるものでは無い。
【0057】
例えば、
図4に示すFIBのスキャンの例では、薄片化部分Qsとなる試料片Sの幅方向Wに沿った除去域Enの加工幅Wnを一定にしている。そして、更にそれぞれの除去域Enの付け根側から、厚み方向Tに対して10°以上90°未満の範囲で傾斜する方向に連続してFIBをスキャンさせる。これにより、FIBが厚み方向Tに対して傾斜する方向にスキャンさせた領域に、傾斜部Cが形成される。こうした傾斜部Cに沿った加工幅Wnは、段階的に漸増していく。ここで、FIBのスキャン方法はFIBのスキャン方向を試料片Sの幅方向から厚み方向Tに対して傾斜する方向に変更するベクタースキャンを用いる。
また、試料片Sの幅方向に第1の矩形の照射領域を、厚み方向Tに対して傾斜する方向に第2の矩形の照射領域を設定し、それぞれの照射領域でラスタースキャンまたはビットマップスキャンを用いても良い。
【0058】
これ以外にも、微小試料片Qの薄片化部分Qsと薄片化部分Qsに隣接する部分である傾斜部Cとで区画された台形領域内におけるFIBのスキャン方向は、特に限定されるものでは無く、薄片化部分Qsに隣接する部分である傾斜部Cとが形成可能であれば、どのような方向でFIBをスキャンして除去域を形成してもよい。
【0059】
以上のように段階的に加工幅を減じた多数の除去域の形成過程において、任意のタイミングで電子ビーム照射光学系15からEBを照射し、傾斜部CのSEM画像を取得する。そして、得られたSEM画像を観察し、傾斜部Cに露呈したデバイス31,31…の数をカウントすることによって、FIBによる厚み方向Tの加工終点を決定することができる。傾斜部Cに露呈するデバイス31,31…の断面形状は、例えば、厚み方向Tに沿った断面に露呈するデバイスの断面形状と比較して、より大きく鮮明に見えるので、デバイス31,31…の数を正確にカウントすることができる。
【0060】
なお、SEM画像の取得から、傾斜部Cに露呈したデバイス31,31…のカウントまでを、例えばコンピュータ22によって自動的に行い、この結果を試料片Sに対してFIBの照射条件にフィードバックさせることによって、付け根側に傾斜部Cが接続される微小試料片Qの形成を自動化させることができる。
【0061】
こうした自動化による加工終点の検出方法の具体例として、予め、観察目標位置までに出現する(傾斜部Cに露出する)設計上のデバイス31,31…の数をコンピュータ22に入力しておく。こうしたデバイス31の予定出現数は、試料Vに形成された集積回路の設計データなどから把握することができる。
【0062】
そして、FIBの照射による除去域の形成と照射SEM画像の取得とを繰り返すことで傾斜部Cに出現したデバイス31の数を、コンピュータ22で実行する画像比較ソフトウェアなどによってカウントする。そして、コンピュータ22に予め入力したデバイス31の予定出現数と、実際のSEM画像の取得による傾斜部Cに出現したデバイス31の数とが一致した時に、ここを加工終点と認識してFIBを照射を終了させる。
【0063】
また、自動化による加工終点の検出方法の別な具体例として、FIBによって試料(半導体基板)V(
図1参照)から試料片Sを切り出した際に、試料片Sの側壁のSEM画像を取得する。そして、この試料片Sの側壁に露出したデバイス31の数を、コンピュータ22で実行する画像比較ソフトウェアなどによってカウントする。あるいは、試料片Sを切り出した後の試料Vの切り取り端面に露出したデバイス31の数や、試料Vに形成された集積回路の設計データなどに基づいた、試料片Sの切り出し部分の設計上のデバイス31の数をカウントしてもよい。
【0064】
こうしてコンピュータ22に認識された、試料片Sのデバイス31の総数から、FIBの照射による除去域の形成と照射SEM画像の取得とを繰り返すことで傾斜部Cに出現した実際のデバイス31の数を減じていき、予めコンピュータ22に入力した、試料片Sに残したいデバイス31の数と一致した時に、ここを加工終点と認識してFIBを照射を終了させる。
【0065】
次に、
図3(b)に示すように、例えば、傾斜部Cの表面に平行な角度で、微小試料片Qに対して、気体イオンビーム、例えばアルゴンイオンビームを照射し、FIBを用いた加工によって生じる加工縞模様(カーテン効果)を軽減する(アルゴンビーム照射工程)。
【0066】
このアルゴンビーム照射工程では、気体イオンビーム光学系18(
図1参照)から、アルゴンガスをイオン化して例えば1kV程度の低加速電圧で微小試料片Qの全域にアルゴンイオンビームを照射する。この時、電子ビーム照射光学系15からEBを微小試料片Qに向けて照射し、得られたSEM画像に基づいてアルゴンイオンビームによる微小試料片Qの仕上げ加工を行うことが好ましい。この時の加工終点の検出も、上述したFIBによる微小試料片Qの加工時の加工終点検出手順を適用することができる。これによって、アルゴンビーム照射工程の自動化を行うことができる。
【0067】
こうしたアルゴンビーム照射工程において、微小試料片Qの付け根部分に隣接した部分として、厚み方向Tに対して10°以上、90°未満の角度範囲で傾斜させた傾斜部Cが形成されているので、試料片Sの厚みを減じて薄膜化した微小試料片Qの全域に、ムラなくアルゴンイオンビームを照射することができる。
【0068】
即ち、
図1に示すように、試料室11を側面から平面視した時に、電子ビーム照射光学系15から照射される電子ビーム(EB)のビーム照射軸に対して、気体イオンビーム(GB)のビーム照射軸が、例えば直角に交わる方向になるように気体イオンビーム光学系18が配置されている。このため、微小試料片Qにおける幅方向Wに対して、厚み方向Tが例えば直角になっていると、微小試料片Qの付け根部分にアルゴンイオンビームが照射されない陰領域が生じてしまう。
【0069】
しかし、本実施形態のように、厚み方向Tに対して傾斜した角度で照射されるアルゴンイオンビームに対応して、微小試料片Qに、例えば10°以上90°未満の範囲で傾斜した傾斜部Cを形成することによって、微小試料片Qの付け根部分にアルゴンイオンビームが照射されない陰領域を無くすことができ、微小試料片Qの全域に確実にアルゴンイオンビームを照射することが可能になる。これによって、微小試料片Qの全域において加工縞模様が軽減され、鮮明な観察像を得ることが可能なTEM観察用試料片を形成できる。
【0070】
なお、
図3(c)に示すように、上述した厚み方向Tに沿った加工方向とは反対方向からも、幅方向Wに沿った加工幅を段階的に減じた多数の除去域を形成し、両側から厚みを減じた薄片化部分Qsを有する微小試料片Qを形成することができる。
【0071】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10…荷電粒子ビーム装置、11…試料室、12…ステージ(試料ステージ)、13…ステージ駆動機構、14…集束イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、15…電子ビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、16…検出器、17…ガス供給部、18…気体イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、19a…ニードル、19b…ニードル駆動機構、20…吸収電流検出器、21…表示装置、22…コンピュータ、23…入力デバイス、33…試料台、34…柱状部、C…傾斜部、P…試料片ホルダ、Q…微小試料片、R…二次荷電粒子、S…試料片、V…試料。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、微小試料片を作成する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料に向けて荷電粒子ビームを照射可能な荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビーム鏡筒を収容する前記試料室と、
前記試料を保持可能する試料片ホルダと、を有し、
前記荷電粒子ビームによって、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を形成する際に、該微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が前記薄片化部分に対して傾斜した傾斜部が形成され、
前記傾斜部は前記微小試料片の付け根部分まで設けられることにより、前記荷電粒子ビームにより前記微小試料片を形成する際に生じた加工縞を軽減する為にアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射する際に前記微小試料片の付け根部分においてもアルゴンイオンビームが妨げられないように形成され、
前記荷電粒子ビームと交わる方向かつ前記傾斜部に平行な方向からアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射することにより前記微小試料片の全域において加工縞が軽減されることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記傾斜部は、走査型電子顕微鏡によって得られた前記傾斜部のSEM画像を参照して形成されることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を作成する試料作製方法であって、
前記荷電粒子ビームの照射によって、前記試料の厚み方向に沿った所定の加工厚みで、かつ前記厚み方向に対して直角な幅方向に沿った加工幅の除去域を、前記厚み方向に沿って複数重ねて形成し、前記除去域を重ねるごとに前記加工幅を段階的に減じることによって、前記微小試料片の薄片化部分に隣接する部分に、前記薄片化部分に対して傾斜させた傾斜部を形成する傾斜部形成工程を備え、
前記傾斜部は前記微小試料片の付け根部分まで設けられることにより、前記荷電粒子ビームにより前記微小試料片を形成する際に生じた加工縞を軽減する為にアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射する際に前記微小試料片の付け根部分においてもアルゴンイオンビームが妨げられないように形成され、
前記荷電粒子ビームと交わる方向かつ前記傾斜部に平行な方向からアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射することにより前記微小試料片の全域において加工縞が軽減されるアルゴンイオンビーム照射工程を有することを特徴とする試料加工方法。
【請求項4】
前記傾斜部形成工程における、それぞれの除去域の前記加工厚みおよび前記加工幅は、走査型電子顕微鏡によって得られた前記傾斜部のSEM画像を参照して決定されることを特徴とする請求項3記載の試料加工方法。
【請求項5】
前記傾斜部形成工程では、前記薄片化部分と、前記薄片化部分に隣接する部分である傾斜部とを、互いに10°以上90°未満の範囲で傾斜させることを特徴とする請求項3または4いずれか一項記載の試料加工方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するために、本実施形態の態様は、以下のような荷電粒子ビーム装置、試料加工方法を提供した。
すなわち、本発明の荷電粒子ビーム装置は、試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、微小試料片を作成する荷電粒子ビーム装置であって、前記試料に向けて荷電粒子ビームを照射可能な荷電粒子ビーム鏡筒と、前記荷電粒子ビーム鏡筒を収容する前記試料室と、前記試料を保持可能する試料片ホルダと、を有し、前記荷電粒子ビームによって、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を形成する際に、該微小試料片の薄片化部分に隣接する部分が前記薄片化部分に対して傾斜した傾斜部が形成され、前記傾斜部は前記微小試料片の付け根部分まで設けられることにより、前記荷電粒子ビームにより前記微小試料片を形成する際に生じた加工縞を軽減する為にアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射する際に前記微小試料片の付け根部分においてもアルゴンイオンビームが妨げられないように形成され、前記荷電粒子ビームと交わる方向かつ前記傾斜部に平行な方向からアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射することにより前記微小試料片の全域において加工縞が軽減されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また本発明は、前記傾斜部は、走査型電子顕微鏡によって得られた前記傾斜部のSEM画像を参照して形成されることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の試料加工方法は、試料に向けて荷電粒子ビームを照射し、前記試料の一部領域の厚みを減じた微小試料片を作成する試料作製方法であって、前記荷電粒子ビームの照射によって、前記試料の厚み方向に沿った所定の加工厚みで、かつ前記厚み方向に対して直角な幅方向に沿った加工幅の除去域を、前記厚み方向に沿って複数重ねて形成し、前記除去域を重ねるごとに前記加工幅を段階的に減じることによって、前記微小試料片の薄片化部分に隣接する部分に、前記薄片化部分に対して傾斜させた傾斜部を形成する傾斜部形成工程を備え、前記傾斜部は前記微小試料片の付け根部分まで設けられることにより、前記荷電粒子ビームにより前記微小試料片を形成する際に生じた加工縞を軽減する為にアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射する際に前記微小試料片の付け根部分においてもアルゴンイオンビームが妨げられないように形成され、前記荷電粒子ビームと交わる方向かつ前記傾斜部に平行な方向からアルゴンイオンビームを前記微小試料片に照射することにより前記微小試料片の全域において加工縞が軽減されるアルゴンイオンビーム照射工程を有することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】