(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096162
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】塩凝固物、印捺物、及び、印捺方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20220622BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20220622BHJP
C08G 18/34 20060101ALI20220622BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220622BHJP
C08G 18/82 20060101ALI20220622BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20220622BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220622BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20220622BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C09D11/30
C08G18/34 080
C08G18/42 008
C08G18/82
C08G18/44
C08G18/48 054
C08G18/40 018
D06M15/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209103
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】上口 美和
【テーマコード(参考)】
4J034
4J039
4L033
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC23
4J034KD02
4J034LA16
4J034RA07
4J034RA09
4J039AE04
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE16
4J039BE23
4J039FA03
4J039GA24
4L033AB01
4L033AC11
4L033CA50
4L033DA02
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、ウレタン樹脂を使用して、比較的低温の熱処理で、繊維基材との密着性を発現するウレタン樹脂の塩凝固物を提供することである。
【解決手段】本発明はウレタン樹脂組成物の塩凝固物であって、流動開始温度が110℃以下であることを特徴とする塩凝固物を提供するものである。また、本発明は、前記塩凝固物を含有することを特徴とする印捺物を提供するものである。更に、本発明は、繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を含むインクジェットインク組成物を塗布し、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に、110℃以下の加熱処理をすることを特徴とする印捺方法を提供するものである。前記ウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するものが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂組成物の塩凝固物であって、流動開始温度が110℃以下であることを特徴とする塩凝固物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂組成物が、ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するものである請求項1記載の塩凝固物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塩凝固物を含有することを特徴とする印捺物。
【請求項4】
繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を含むインクジェットインク組成物を付着させ、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に、110℃以下の加熱処理をすることを特徴とする印捺方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂の塩凝固物、印捺物、及び、印捺方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Tシャツや手袋などの繊維製品に意匠性を付与するためにインクジェット捺染が広く実施されている。インクジェット捺染では捺染時に高温での熱処理が必要なため、通常、耐熱性の高い綿繊維製品に捺染される。一方、アウトドアウェアやスポーツウェはポリエステル繊維を使用することが多いが、ポリエステル繊維は従来のインクジェット捺染の熱処理温度ではポリエステル繊維を着色するために使用した染料が昇華して印捺部を汚染することがあり、インクジェット捺染することが難しい。
【0003】
ポリエステル繊維にインクジェット捺染するためには染料の昇華を防ぐために110℃以下の熱処理でインクが繊維に密着する必要がある。従来、インクのバインダーとして水性アクリル樹脂や水性ウレタン樹脂がインクに混合されて、あるいは単独のバインダー層として使用される(例えば、特許文献1を参照。)。これらは水性アクリル樹脂や水性ウレタン樹脂が150℃以上の高温で溶融することで繊維に密着する。また、水性アクリル樹脂を使用して、110℃以下で熱処理して密着性を付与する方法もあるが、水性アクリル樹脂はウレタン樹脂に比べ柔軟性に劣る。よって、柔軟性のあるウレタン樹脂を使用して比較的低温の熱処理で、繊維基材との密着性を発現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン樹脂を使用して、比較的低温の熱処理で、繊維基材との密着性を発現するウレタン樹脂の塩凝固物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウレタン樹脂組成物の塩凝固物であって、流動開始温度が110℃以下であることを特徴とする塩凝固物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記塩凝固物を含有することを特徴とする印捺物を提供するものである。更に、本発明は、繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を含むインクジェットインク組成物を塗布し、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に、110℃以下の加熱処理をすることを特徴とする印捺方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塩凝固物は、比較的低温の熱処理で、繊維基材と優れた密着性(以下「密着性」と略記する。)を発現するものである。また、本発明の塩凝固物はウレタン樹脂を使用するため柔軟性にも優れるものである。よって、本発明の塩凝固物はインクジェット捺染に特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塩凝固物は、ウレタン樹脂組成物の塩凝固物であって、流動開始温度が110℃以下であるものである。
【0010】
前記塩凝固物は、流動開始温度が110℃以下であることが必須である。これにより110℃以下の熱処理で、繊維基材との優れた密着性を発現する。前記流動開始温度としては、より一層優れた密着性、柔軟性、及び、機械的強度が得られる点から、50~100℃の範囲が好ましい。なお、前記塩凝固物の流動開始温度の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0011】
前記塩凝固物は、ウレタン樹脂組成物を塩凝固したものである。前記ウレタン樹脂組成物としては、例えば、ウレタン樹脂(A)、及び、水(B)を含有するものを用いることができる。
【0012】
前記ウレタン樹脂(A)は、前記水(B)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するもの;乳化剤で強制的に水(B)中に分散するものなどを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、乳化の容易性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、より一層優れた塩凝固性、及び、密着性が得られる点からアニオン性基を有するウレタン樹脂が好ましい。
【0013】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物、及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0014】
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4-ジアミノブタンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,6-ジアミノベンゼンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチルスルホン酸、N-2-アミノエタン-2-アミノスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン;これらの塩を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0017】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0018】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミン、N-メチルジアミノエチルアミン、N-エチルジアミノエチルアミン等のN-アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0020】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記強制的に水(B)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)、及び、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の反応物を用いることができる。
【0023】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、
より一層優れた柔軟性、及び、密着性が得られる点から、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリオールが好ましく、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、及び、ポリテトラメチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとの併用が特に好ましい。
【0024】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた柔軟性及び機械的特性が得られる点から、500~50,000の範囲が好ましく、1,000~10,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
前記ポリオール(a1)には、必要に応じて、鎖伸長剤(a1-1)を併用してもよい。前記鎖伸長剤(a1-1)としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、等のアミノ基を有する鎖伸長剤;エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、トリメチロールプロパン等の分岐構造を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ウレタン樹脂(A)としては、より一層優れた塩凝固性、柔軟性、及び、密着性が得られる点から、ポリアミン由来の尿素結合の含有量が100mmol/kg以下であることが好ましく、70mmol/kg以下がより好ましい。
【0027】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐変色性が得られる点から、脂肪族ポリイソシアネート、及び/又は、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。
【0028】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、無溶剤下または有機溶剤の存在下、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)と前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するための原料を混合し、50~100℃の範囲で、3~20時間反応させることによって製造する方法;無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)と前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するための原料を混合し、50~100℃の範囲で3~15時間反応させることによって製造する方法等が挙げられる。なお、前記反応で有機溶剤を使用した場合には、最終的に留去されることが好ましい。
【0029】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に用いることができる前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶剤などを用いることができる。前記有機溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ウレタン樹脂(A)の平均粒子径としては、より一層優れた貯蔵安定性が得られる点から、0.01~1μmの範囲が好ましく、0.10~0.7μmの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の平均粒子径の測定方法は、ウレタン樹脂(A)を含有するウレタン樹脂組成物をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラック UPA-EX150」)を使用して、分散液として水を使用し、溶媒屈折率=1.33、粒子屈折率=1.51として、平均粒子径は体積平均径を測定した値を示す。
【0031】
前記ウレタン樹脂組成物中におけるウレタン樹脂(A)の含有量としては、保存性及び作業性を向上できる点から、前記ウレタン樹脂組成物中10~95質量%の範囲であることが好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
【0032】
前記水(B)としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記水(B)の含有量としては、保存性及び作業性を向上できる点から、前記ウレタン樹脂組成物中10~60質量%の範囲が好ましく、20~50質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
前記ウレタン樹脂組成物としては、前記ウレタン樹脂(A)、及び、前記水(B)以外にも、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0035】
前記その他の添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ性付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、泡安定剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性付与剤、撥水剤、撥油剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の塩凝固物は、前記ウレタン樹脂組成物を凝固剤で塩凝固したものである。前記凝固剤としては、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム等の金属塩溶液を用いることができる。前記凝固剤中に含まれる金属塩は、前記凝固剤の全量に対して1~50質量%の範囲で含まれることが好ましい。また、塩凝固する際の時間は、例えば、1~300秒が挙げられる。また、前記凝固剤は、5~60℃の温度で使用することができる。
【0037】
以上、本発明の塩凝固物は、110℃以下の比較的低温の熱処理で、繊維基材と優れた密着性を発現するものである。また、本発明の塩凝固物はウレタン樹脂を使用するため柔軟性にも優れるものである。よって、本発明の塩凝固物はインクジェット捺染に特に好適に使用することができる。
【0038】
次に、本発明の塩凝固物を含有する印染物、その印捺方法について説明する。
【0039】
前記印捺方法は、繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を含むインクジェットインク組成物を付着させ、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に、110℃以下の加熱処理をするものである。
【0040】
あるいは繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を付着させ、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に、インクジェットインクを付着させてから110℃以下の加熱処理をするものでも良い。また、繊維基材に、ウレタン樹脂組成物を付着させ、ウレタン樹脂組成物を塩凝固した後に110℃以下の加熱処理をしてからインクジェットインクを付着させても良い。
【0041】
前記繊維基材には、まず前記凝固剤を含む前処理液を付着することが好ましい。
【0042】
前記繊維基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材などを用いることができる。
【0043】
前記前処理液は、後述する前記ウレタン樹脂を含むインクジェットインク組成物と相互作用することにより、インクジェットインク組成物が増粘又は不溶化し、密着性を発現する。
【0044】
前記前処理液中における前記凝固剤の含有量としては、例えば、1~60質量部の範囲が挙げられ、2~30質量部の範囲が好ましい。
【0045】
前記前処理液は、前記凝固剤以外にも、例えば、界面活性剤、溶剤、有機酸、樹脂などを含有されていてもよい。
【0046】
前記インクジェットインク組成物は、前記ウレタン樹脂組成物を含有するものであり、前記ウレタン樹脂組成物はインクジェットインクと繊維基材とのバインダーとして機能する。
【0047】
前記インクジェットインク組成物における前記ウレタン樹脂組成物中のウレタン樹脂(A)の含有量(ウレタン樹脂固形分)としては、0.1~30質量%の範囲が好ましく、1~20質量%の範囲がより好ましい。
【0048】
前記インクジェットインク組成物は、前記ウレタン樹脂組成物以外にも、例えば、顔料、溶剤、界面活性剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、キレート化剤当を用いることができる。
【0049】
前記前処理液、及び、前記インクジェットインク組成物としては、詳しくは、特開2016-50277号公報に記載されたものを用いることができる。
【0050】
前記繊維基材に、前記前処理液を付着する方法としては、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布などの方法を使用することができる。
【0051】
次に、前記前処理液が付着した繊維基材に、前記インクジェットインク組成物を付着させる方法としては、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布などの方法を使用することができる。
【0052】
前記インクジェットインク組成物を前記繊維基材に付着させることで、前記前処理剤中の凝固剤により、ウレタン樹脂が塩凝固する。
【0053】
次に、これらを110℃以下、好ましくは70~100℃で加熱処理することで、溶剤が乾燥するとともに、塩凝固物が適度に染み込み、優れた密着性が発現する。前記加熱処理としては、オーブン乾燥、ヒートプレス、ウェットオンドライなどの方法を使用することができる。
【0054】
前記加熱処理した後には、必要に応じて、水洗し、乾燥してもよい。
【実施例0055】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0056】
[合成例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、脂肪族系ポリエステルポリオール(ジエチレングリコール/1,6-ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール/アジピン酸より得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオール)343質量部、芳香族系ポリエステルポリオール(エチレングリコール/ジエチレングリコール/テレフタル酸/イソフタル酸より得られる数平均分子量2000ポリエステルポリオール)518質量部、ジメチルプロピオン酸26質量部及びメチルエチルケトン666質量部を均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート112質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約15時間反応させた。
反応物が規定粘度に達した時点でメタノール1.3質量部を加えて1時間攪拌して反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン334質量部を追加することでポリウレタンの有機溶剤溶液を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトン溶液にト5%アンモニア水溶液を65質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水3002質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分35質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0057】
[合成例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールを原料とする数平均分子量2000のポリカーボネートジオール)558質量部、PTMG2000 314質量部、ジメチルプロピオン酸23質量部及びメチルエチルケトン666質量部を均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート103質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約15時間反応させた。
反応物が規定粘度に達した時点でメタノール1.2質量部を加えて1時間攪拌して反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン334質量部を追加することでポリウレタンの有機溶剤溶液を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトン溶液にト5%アンモニア水溶液を59質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水2999質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分35質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0058】
[合成例3]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリカーボネートジオール777質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した後、ジブチルアミン27質量部を加えて反応させた。
その後、5%アンモニア水溶液を109質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4002質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0059】
[合成例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリカーボネートジオール518質量部、PTMG2000 259質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した後、ジブチルアミン27質量部を加えて反応させた。
その後、5%アンモニア水溶液を109質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4002質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0060】
[合成例5]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリカーボネートジオール518質量部、PTMG2000 259質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した後、ジブチルアミン27質量部を加えて反応させた。
その後、トリエチルアミンを27質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4001質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0061】
[合成例6]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、PTMG2000 777質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した後、ジブチルアミン27質量部を加えて反応させた。
その後、5%アンモニア水溶液を109質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4002質量部を加え攪拌することによりポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0062】
[合成例7]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、PTMG2000 777質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した。
その後、5%アンモニア水溶液を109質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4002質量部を加え攪拌した後、ジブチルアミン19質量部、イソホロンジアミン5.4質量部を加えて反応させポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0063】
[合成例8]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、PTMG2000 777質量部、ジメチルプロピオン酸43質量部及びメチルエチルケトン667質量部を均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート180質量部を加え、次いでオクチル酸ビスマスを0.5質量部加え、70℃で約20時間反応させ、ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン333質量部を追加した。
その後、5%アンモニア水溶液を109質量部加えて、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水4002質量部を加え攪拌した後、ジブチルアミン13.6質量部、イソホロンジアミン8.9質量部を加えて反応させポリウレタンの水分散体を得た。
次いで、前記ポリウレタンのメチルエチルケトンを減圧下留去することによって、不揮発分30質量%のウレタン樹脂組成物を得た。
【0064】
[実施例1]
<密着性の評価方法>
(i)ホットプレート上に、ガラス板をおき、105~110℃に調整する。
(ii)布帛(2.5cm×2.5cm)をガラス板の上に置き、凝固剤(5質量%の硝酸カルシウム水溶液)0.7mlを布帛上に滴下する(布帛の周囲に染み出した凝固剤が布帛端部から5mm以内に収まるようにする。)。
(iii)その後速やかに、合成例1で得られたウレタン樹脂組成物をウレタン樹脂固形分15質量%となるように水で希釈したものを、シリンジで0.03~0.05ml滴下する。
(iv)10分後に布帛をガラス板から取り、ウレタン樹脂の塩凝固皮膜の端部をステンレス製ピンセット(AAタイプ)でつまみ、密着性を以下の様に評価した。
「〇」;塩凝固皮膜が布帛から剥離しない。
「△」;塩凝固皮膜が布帛から容易に剥離しない。
「×」;塩凝固皮膜の一部が布帛から浮いている、又は塩凝固皮膜が布帛から容易に剥離する。
このうち、「〇」、又は、「△」の評価のものを実用上使用可能レベルと判断した。
【0065】
[実施例2]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例2で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0066】
[実施例3]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例3で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0067】
[実施例4]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例4で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0068】
[実施例5]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例5で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0069】
[実施例6]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例6で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0070】
[実施例7]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例7で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0071】
[比較例1]
用いるウレタン樹脂組成物を、合成例8で得られたウレタン樹脂組成物に変更した以外は実施例1と同様にして、塩凝固皮膜を得、密着性の評価を行った。
【0072】
[数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0073】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0074】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0075】
[塩凝固皮膜の流動開始温度の測定方法]
合成例1~3で得られたウレタン樹脂組成物100質量部に対し、DIC株式会社製会合型増粘剤「ハイドラン アシスターT10」を混合し、それらの混合物の粘度が1,000~3,000mPa・sとなるように調整した後、離型処理を施した常温のポリプロピレンフィルムの表面に、前記混合物を、ナイフコーターを使用して150g/cm2塗布した。
前記塗布物を、5質量%の濃度に調整した常温の硝酸カルシウム水溶液に3分間浸漬した。次いで、前記塗布物を70℃で20分間乾燥し、更に120℃で2分間乾燥することによって、塩凝固皮膜を形成した。前記乾燥後、前記ポリプロピレンフィルムから剥離し、塩凝固皮膜を得た。
これを高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500-1」)を使用して、昇温速度;3℃/分、シリンダ圧力;0.98MPa、ダイ穴径;1mm、ダイ長さ;1mmでウレタン樹脂が流動を開始する温度を測定した。
【0076】
【0077】
【0078】
本発明の手袋である実施例1~7は、優れた密着性を備えることが分かった。
【0079】
一方、比較例1は、塩凝固皮膜の流動開始温度が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、密着性が不良であった。