(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096219
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
C09J 175/08 20060101AFI20220622BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220622BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C09J175/08
C09J9/02
C09J11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209198
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF131
4J040EF261
4J040HA066
4J040HB41
4J040JA02
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB07
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA32
4J040LA01
4J040LA03
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れる硬化物を得ることができる導電性接着剤組成物、その硬化物及び電子部品を提供する。
【解決手段】1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び導電性粒子を含む導電性接着剤組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、所定の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む化合物の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、導電性接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び導電性粒子を含む導電性接着剤組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、導電性接着剤組成物。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【請求項2】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移点が-55℃以下である、請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
前記単量体の分子量が3,000~30,000である、請求項1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
前記導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物に対して50~95質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項5】
前記導電性粒子の平均粒子径は、0.3~20μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項6】
前記導電性粒子が銀粒子である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項7】
さらに、重合開始剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項8】
前記重合開始剤が、光重合開始剤又は熱重合開始剤である、請求項7に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性接着剤組成物、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブルデバイス等のフレキシブルデバイスは、フレキシブル配線基板上に導電性接着剤を介して電子部品が実装される。このような導電性接着剤には、低弾性が求められており、例えば、特許文献1には、(A)少なくとも2種類のウレタンアクリレートオリゴマー、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)遊離ラジカル発生硬化剤、および(D)導電粒子を含む導電性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のフレキシブルデバイスにおいては、折り畳み角度が鋭角となるものもある。そのため、フレキシブルデバイスに用いられる導電性接着剤は、より優れた柔軟性が求められる。また、繰り返しの折り曲げに対する耐久性(以下、「繰り返し曲げ耐久性」とも言う。)、及び繰り返し折り曲げ後の導電性も求められる。
【0005】
しかしながら、従来の導電性接着剤では、柔軟性、繰り返し曲げ耐久性及び繰り返し折り曲げ後の導電性が十分であるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れる硬化物を得ることができる導電性接着剤組成物、その硬化物及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエーテル鎖及びウレタン結合を有する所定のウレタン(メタ)アクリレート、及び導電性粒子を含む導電性接着剤組成物を用いることにより、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れる硬化物を得ることができることを見出したことに基づく。
【0008】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び導電性粒子を含む導電性接着剤組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、導電性接着剤組成物。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
[2]前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移点が-55℃以下である、上記[1]に記載の導電性接着剤組成物。
[3]前記単量体の分子量が3,000~30,000である、上記[1]又は[2]に記載の導電性接着剤組成物。
[4]前記導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物に対して50~95質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
[5]前記導電性粒子の平均粒子径は、0.3~20μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
[6]前記導電性粒子が銀粒子である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
[7]さらに、重合開始剤を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の導電性接着剤組成物。
[8]前記重合開始剤が、光重合開始剤又は熱重合開始剤である、上記[7]に記載の導電性接着剤組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の導電性接着剤組成物の硬化物。
[10]上記[9]に記載の硬化物を備える電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れる硬化物を得ることができる導電性接着剤組成物、その硬化物及び電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における用語及び表記についての定義及び意義を以下に示す。
「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の総称である。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「官能基数」とは、特に断りのない限り、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。「平均官能基数」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量又は数平均分子量を1単位とする1分子中の平均の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。
「1官能ウレタン(メタ)アクリレート」とは、1分子中の平均官能基数が実質的に1であるウレタン(メタ)アクリレートを意味し、1分子中の平均官能基数が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるウレタン(メタ)アクリレートを、1分子中に実質的に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート、すなわち、1官能ウレタン(メタ)アクリレートとみなす。
「等モル反応生成物」とは、反応する化合物のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3である反応生成物を、等モル反応生成物とみなす。
同様に、反応する基(又は化合物)の「モル数が等しい」とは、反応する基(又は化合物)のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるとき、反応する基(又は化合物)のモル数が等しいものとみなす。
「水酸基価」は、JIS K 1557:2007に準拠した測定により求められる。「水酸基価換算分子量」は、56100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数)の式から算出した値である。
イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物との反応における「NCOインデックス」とは、水酸基含有化合物の水酸基に対するイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基の当量比を百倍した値である。
「分子量」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量、又は、分子量分布が存在する化合物の場合は、数平均分子量を意味する。「数平均分子量」は、標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線に基づいて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して求められたポリスチレン換算分子量である。
【0011】
[導電性接着剤組成物]
本発明の導電性接着剤組成物は、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び導電性粒子を含む導電性接着剤組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である。
(i)ポリエーテルモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテルモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【0012】
〔1官能ウレタン(メタ)アクリレート〕
1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む導電性接着剤組成物は、1官能ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基により、光重合又は熱重合させることができる。また、1官能ウレタン(メタ)アクリレートが、架橋に寄与しない柔軟なグラフト鎖としてポリエーテル鎖を有する単量体を含むことにより、柔軟性に優れた硬化物を得ることができる。さらに、該硬化物は、-20~80℃の広範な温度域での貯蔵弾性率の温度依存性が小さく、0℃以下の低温域でも優れた柔軟性が保持され得る。
1官能ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基は、導電性接着剤組成物の硬化速度の観点からは、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0013】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、上記(i)~(iii)の反応生成物(以下、「単量体1-1」、「単量体1-2」及び「単量体1-3」とも言う。)から選ばれる1種以上の単量体(以下、「第1の単量体」とも言う。)である。第1の単量体は、1種単独でも、2種以上併用されてもよい。
【0014】
第1の単量体の分子量は、3,000~30,000が好ましく、4,000~20,000がより好ましく、5,000~17,000がさらに好ましい。分子量が、3,000以上であると、導電性接着剤組成物の硬化物が柔軟になりやすく、30,000以下であると、導電性接着剤組成物の粘度を調製しやすい。第1の単量体として2種以上が併用される場合は、それぞれの分子量が上記範囲内であることが好ましい。
【0015】
<単量体1-1>
単量体1-1は、(i)の反応生成物であり、ポリエーテルモノオール(i-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0016】
単量体1-1としては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0017】
【0018】
式(1)中、R1は、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する一価の有機基である。
R12は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R12は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0019】
また、(OR12)は、1分子中に1個のエポキシ基及び該エポキシ基のエーテル結合以外のエーテル結合を有する単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aに基づく単位は、式(11)で表される単位であることが好ましい。単量体aは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
【0021】
式(11)中、R101は、-R103-O-R104で表される一価の基であり、R102は、水素原子又は-R105-O-R106で表される一価の基である。R103、R105は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R104、R106は、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
R103、R105のアルキレン基としては、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
R104、R106の炭素数は、それぞれ独立に、1~14が好ましく、1~12がより好ましく、2~10がさらに好ましい。
R104、R106の直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基が例示でき、メチル基、エチル基、n-ブチル基が好ましい。分岐のアルキル基は、前記直鎖のアルキル基中の水素原子(ただし、末端の炭素に結合する水素原子は除く。)がアルキル基で置換された構造を有する。置換するアルキル基としては、メチル基、エチル基が例示できる。分岐のアルキル基としては、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0022】
単量体aとしては、式(12)で表される単量体が好ましい。
【0023】
【0024】
式(12)中のR101及びR102は、式(11)中のR101及びR102と同じである。
【0025】
式(12)で表される単量体としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが例示され、得られる導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性がより良好である観点から、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0026】
式(1)中、R13は、炭素数1~20のアルキル基である。R13は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基がより好ましく、ブチル基がさらに好ましい。
aは、20~600の整数である。aは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0027】
(ポリエーテルモノオール(i-1))
単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が1個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。
【0028】
アルキレンオキシド及び単量体aの合計質量に対する単量体aの質量の割合は、柔軟性と強度の調整の観点から、0~90質量%が好ましく、0~85質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
【0029】
前記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~8のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数2~4のアルキレンオキシドがより好ましい。前記アルキレンオキシドの具体例としては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
【0030】
開始剤が有する活性水素含有基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミノ基が挙げられる。前記開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシ基が好ましく、水酸基がより好ましく、アルコール性水酸基がさらに好ましい。
【0031】
活性水素の数が1個である開始剤としては、例えば、一価アルコール、一価フェノール、一価カルボン酸、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミン化合物が挙げられる。前記開始剤としては、一価脂肪族アルコール、一価脂肪族カルボン酸が好ましく、一価脂肪族アルコールがより好ましい。また、目的のポリエーテルモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤として使用してもよい。
【0032】
開始剤としての一価脂肪族アルコールの炭素数は、1~20が好ましく、2~8がより好ましい。開始剤としての一価脂肪族アルコールの具体例としては、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノールが挙げられる。
開始剤としての一価脂肪族カルボン酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素原子を含め、2~20が好ましく、2~8がより好ましい。
【0033】
ポリエーテルモノオール(i-1)中のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基のみからなる、又は、オキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基が好ましい。
ポリエーテルモノオール(i-1)中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。なお、開始剤が目的のポリエーテルモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
【0034】
ポリエーテルモノオール(i-1)において、低水酸基価、すなわち、高分子量のポリオキシアルキレンモノオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンモノオールが挙げられる。
オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価、例えば、水酸基価が50mgKOH/g以上のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
前記ポリエーテルモノオールにおいて、高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、水酸化カリウム等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0035】
ポリオキシアルキレンモノオールの製造において、反応系内に投入される開始剤及びアルキレンオキシドには、通常、減圧脱気等により水分を除去した水分の少ないものが使用される。通常、ポリオキシアルキレンモノオールの製造における開始剤の水分量は、少ないほど好ましく、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましい。水分量が上記範囲内であると、水から生成するポリオキシアルキレンジオールの生成量が抑制される、結果的に、ポリオキシアルキレンジオールに起因する副生成物の生成量が抑制され、得られるポリオキシアルキレンモノオールの平均水酸基数の上限を1.2以下に調整しやすい。
【0036】
単量体1-1の原料として用いるポリエーテルモノオール(i-1)の水分量は、少ないほど好ましく、ポリエーテルモノオール(i-1)に対して、300質量ppm以下が好ましく、250質量ppm以下がより好ましく、50~200質量ppmがさらに好ましい。水分量が上記範囲内であると、水分とイソシアネート基含有化合物との副生物の生成が少なく、反応生成物である単量体1-1の安定性が向上する。さらに、導電性接着剤組成物の経時的な外観の変化を抑制しやすく、また、良好な柔軟性を有する導電性接着剤組成物の硬化物が得られやすい。
【0037】
ポリエーテルモノオール(i-1)の1分子中の平均の水酸基数は、良好な柔軟性を有する導電性接着剤組成物の硬化物が得られやすい観点から、0.80~1.20が好ましく、0.90~1.10がより好ましい。
ポリエーテルモノオール(i-1)の水酸基価は、導電性接着剤組成物の粘度を調製しやすい観点から、1.6~18.1mgKOH/gが好ましく、2.8~14mgKOH/gがより好ましく、3.1~11.2mgKOH/gがさらに好ましい。
【0038】
単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)は、2種以上のポリエーテルモノオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテルモノオールは上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンモノオールが好ましい。
【0039】
ポリエーテルモノオール(i-1)としては、例えば、式(1a)で表されるものが挙げられる。
【0040】
【0041】
式(1a)中、R12、R13及びaは、式(1)中の同一の記号と同じである。
【0042】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合したイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
イソシアネートアルキル基のイソシアネート基を除くアルキレン基の炭素数は、8以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0043】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【0045】
式(1b)中、R11は、水素原子又はメチル基である。R11は、水素原子が好ましい。
sは、1~4の整数であり、1~2の整数が好ましい。
【0046】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートメチルメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、「カレンズ(登録商標;以下、表記省略。)AOI」、「カレンズMOI」(以上、昭和電工株式会社製)が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1c)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【0049】
式(1c)中、R11は、水素原子又はメチル基である。R11は、水素原子が好ましい。
R14は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R14は、メチル基が好ましい。
tは、1~8の整数である。tは、1~4の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
uは、0~4の整数である。uは、0~2の整数が好ましい。
【0050】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネート及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(商品名「カレンズBEI」、昭和電工株式会社製)が挙げられ、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。
【0051】
単量体1-1としては、式(1-1-1)で表される化合物、式(1-1-2)で表される化合物及び式(1-1-3)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0052】
【0053】
式(1-1-1)、式(1-1-2)及び式(1-1-3)中、m、n1及びn2は、それぞれ独立に、20~600の整数が好ましく、35~500の整数がより好ましく、65~250の整数がさらに好ましい。
Buは、ブチル基である。
【0054】
<単量体1-2>
単量体1-2は、(ii)の反応生成物であり、ポリエーテルモノオール(ii-1)、ジイソシアネート(ii-2)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0055】
単量体1-2としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【0057】
式(2)中、R2は、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
R22は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R22は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR22)は、式(1)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
R23は、炭素数1~20のアルキル基である。R23は、炭素数2~8のアルキル基が好ましく、ブチル基がより好ましい。
R24は、ジイソシアネートから2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。ジイソシアネートの例は、後述する。
bは、20~600の整数である。bは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0058】
(ポリエーテルモノオール(ii-1))
ポリエーテルモノオール(ii-1)は、単量体1-1におけるポリエーテルモノオール(i-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0059】
ポリエーテルモノオール(ii-1)としては、例えば、式(2a)で表されるものが挙げられる。
【0060】
【0061】
式(2a)中、R22、R23及びbは、式(2)中の同一の記号と同じ意味である。
【0062】
(ジイソシアネート(ii-2))
ジイソシアネート(ii-2)は、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物である。
ジイソシアネート(ii-2)としては、無黄変性芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの各種変性体(イソシアネート基を2個有する変性体)が挙げられる。ジイソシアネートは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
ジイソシアネート(ii-2)としては、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性がより向上する観点から、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる選ばれる1種以上が好ましい。
【0063】
無黄変性芳香族ジイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート及び2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0064】
ジイソシアネート(ii-2)としては、例えば、式(2b)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【0066】
式(2b)中、R24は、式(2)中の同一の記号と同じ意味である。
上記ジイソシアネートとしては、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性がより向上する観点から、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0067】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
イソシアネート基と反応する基としては、水酸基及び水素原子が結合した窒素原子を有するアミノ基等が挙げられる。イソシアネート基と反応する基における水酸基の数及び窒素原子に結合した水素原子の数は、各1個が好ましい。また、イソシアネート基と反応する基としては、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合した水酸基が好ましい。
【0068】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシアルキル基の炭素数が8以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0069】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2c)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【0071】
式(2c)中、R21は、水素原子又はメチル基である。R21は、水素原子が好ましい。
pは1~4の整数である。pは、1~2の整数が好ましい。
【0072】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOP(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP-A(N)、ライトエステルHOB(N)(以上、共栄社化学株式会社製)、4-HBA(大阪有機化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2d)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【0075】
式(2d)中、R21は、水素原子又はメチル基である。R21は、水素原子が好ましい。
R25は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R25は、メチル基が好ましい。
qは、1~8の整数である。qは、1~4の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
rは、0~4の整数である。rは、0~2の整数が好ましい。
【0076】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロパン-1-オール及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールが挙げられ、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールが好ましい。
【0077】
<単量体1-3>
単量体1-3は、(iii)の反応生成物であり、ポリエーテルポリオール(iii-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0078】
単量体1-3としては、式(III)で表される化合物が好ましい。
R3-NH-C(=O)-Z ・・・(III)
式(III)中、R3は、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
Zは、ポリエーテルポリオールにおける水酸基の1個から、水素原子の1個を除いたポリエーテルポリオールの残基である。
【0079】
単量体1-3としては、式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0080】
【0081】
式(3)中、R3は、式(III)中のR3と同じである。
R32は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR32は、互いに同じであっても、異なってもよい。1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖は、ブロックでもよく、ランダムでもよい。R32は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR32)は、式(1)における(OR12)と同様に、前記量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
cは、20~600の整数である。cは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0082】
(ポリエーテルポリオール(iii-1))
ポリエーテルポリオール(iii-1)は、活性水素含有基を有し、かつ活性水素の数が2個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は上記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基を有する化合物である。
【0083】
前記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドが好ましい。炭素数2~4のアルキレンオキシドの具体例として、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド及び2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
また、単量体aとしては、上記式(12)で表される単量体が好ましく、式(12)で表される単量体としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが例示され、得られる導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性がより良好である観点から、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0084】
アルキレンオキシド及び単量体aの合計質量に対する単量体aの質量の割合は、得られる導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性と強度の調整の観点から、0~90質量%が好ましく、0~85質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
【0085】
開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシ基及び窒素原子に結合した水素原子を有するアミノ基等が挙げられる。開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基が好ましく、アルコール性水酸基がより好ましい。
【0086】
活性水素の数が2個以上である開始剤としては、水、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸及び窒素原子に結合した水素原子を2個以上有するアミン化合物が挙げられる。前記開始剤としては、水又は2価脂肪族アルコールが好ましく、2価脂肪族アルコールがより好ましい。また、目的のポリエーテルポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールを開始剤として使用してもよい。
【0087】
開始剤としての2価脂肪族アルコールの炭素数は、2~8が好ましい。開始剤としての2価脂肪族アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングルコール等のポリプロピレングリコール及び1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0088】
ポリエーテルポリオール(iii-1)中のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基のみからなるか又はオキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基、オキシテトラメチレン基が好ましい。ポリエーテルポリオールの中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
なお、開始剤が目的ポリエーテルポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルポリオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
【0089】
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、低水酸基価の、すなわち高分子量の、ポリオキシアルキレンポリオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価の、例えば水酸基価が50mgKOH/g以上の、ポリオキシアルキレンポリオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
ポリエーテルポリオール(iii-1)のうち、高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、KOH等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0090】
ポリエーテルポリオール(iii-1)の1分子中の平均の水酸基数は、1.60~2.00が好ましく、1.70~2.00がより好ましく、1.80~1.96がさらに好ましい。1分子中の平均の水酸基数が1.60~2.00であるポリエーテルポリオールを、ポリエーテルジオールという場合がある。
ポリエーテルポリオール(iii-1)の水酸基価は、1.6~18.1mgKOH/gが好ましく、2.8~14mgKOH/gがより好ましい。
【0091】
ポリエーテルポリオール(iii-1)は、2種以上のポリエーテルポリオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテルポリオールは上記範疇に含まれるポリエーテルポリオールが好ましく、各々のポリエーテルポリオールはいずれも上記範疇に含まれるポリエーテルジオールであることが好ましい。
【0092】
ポリエーテルポリオール(iii-1)としては、例えば、式(3a)で表されるものが挙げられる。
【0093】
【0094】
式(3a)中、R32及びcは、式(3)中の同一の記号と同じ意味である。
【0095】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、単量体1-1における(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0096】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、導電性接着剤組成物全量に対して5~50質量%であることが好ましく、8~45質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。
【0097】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移点(Tg)は、好ましくは-55℃以下であり、より好ましくは-58℃以下であり、さらに好ましくは-60℃以下である。Tgが-55℃以下であると、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性がより優れる。
前記Tgは、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0098】
〔第2の単量体〕
本発明の導電性接着剤組成物は、第1の単量体以外に、下記(iv)及び(v)の反応生成物(以下、「単量体2-1」及び「単量体2-2」とも言う。)から選ばれる1種以上である第2の単量体を含んでいてもよい。前記導電性接着剤組成物中の第2の単量体は、1種単独でも、2種以上併用されてもよい。
(iv)ポリエーテルポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、前記ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数と、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のモル数とが等しい、反応生成物。
(v)ポリオール(A)、ポリイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の反応生成物であって、前記ポリオール(A)は、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリオレフィンポリオールから選ばれる1種以上であり、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、前記ポリオール(A)の水酸基、及び、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のイソシアネート基と反応する基の合計モル数と、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数とが等しい、反応生成物。
【0099】
第2の単量体は、2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートであり、第1の単量体を架橋させる架橋性単量体として作用し得る。第1の単量体及び第2の単量体を含む導電性接着剤組成物は、該導電性接着剤組成物の硬化収縮率が低減され、該導電性接着剤組成物の硬化物は、優れた柔軟性を有する。
【0100】
第2の単量体は、分子量が6,000~60,000であることが好ましく、8,000~40,000であることがより好ましく、10,000~34,000であることがさらに好ましい。分子量が6,000以上であると、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性が得られやすく、また、60,000以下であると、導電性接着剤組成物の粘度が低くなり、導電性接着剤組成物を混合しやすくなる。
【0101】
<単量体2-1>
単量体2-1は、(iv)の反応生成物であり、ポリエーテルポリオール(iv-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)の反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、ポリエーテルポリオール(iv-1)の水酸基のモル数と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)のモル数とが等しい。
【0102】
単量体2-1としては、式(IV)で表される化合物が好ましい。
R4-NHC(=O)-Z-C(=O)NH-R4 ・・・(IV)
式(IV)中、R4は、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
Zは、ポリエーテルポリオール(iv-1)における水酸基の2個から、水素原子の2個を除いたポリエーテルポリオール(iv-1)の残基である。
【0103】
単量体2-1としては、式(4)で表される化合物がより好ましい。
【0104】
【0105】
式(4)中、R4は、式(IV)中のR4と同様である。
R42は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR42は、互いに同じであっても異なっていてもよい。1分子中に2種以上のR42が存在する場合、-OR42-の連鎖は、ブロックでもよく、ランダムでもよい。R42は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR42)は、式(1)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
dは、20~600の整数である。dは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0106】
ポリエーテルポリオール(iv-1)は、単量体1-3におけるポリエーテルポリオール(iii-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0107】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)は、単量体1-1における(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0108】
<単量体2-2>
単量体2-2は、(v)の反応生成物であり、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(v-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)の反応生成物であって、ポリオール(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリオレフィンポリオールから選ばれる1種以上であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、ポリオール(A)の水酸基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)のイソシアネート基と反応する基の合計モル数と、ポリイソシアネート(v-1)のイソシアネート基のモル数とが等しい。
【0109】
単量体2-2としては、式(5)で表される化合物が好ましい。
【0110】
【0111】
式(5)中、R5は、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
R52は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR52は、互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR52が存在する場合、-OR52-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。R52は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR52)は、式(1)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
R54は、ジイソシアネートから2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。ジイソシアネートとしては、単量体1-2におけるジイソシアネートと同様であり、好ましい態様も同じである。
eは、20~600の整数である。eは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0112】
ポリオール(A)のうち、ポリテーテルポリオールは、単量体1-3におけるポリエーテルポリオール(iii-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
ポリオール(A)における、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィンポリオールは、特開2020-37689号公報の[0016]~[0028]に記載のものを特に限定なく使用できる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリオール中に(メタ)アクリレート単量体に基づく単位を有する重合体が分散したポリマーポリオールを使用することもできる。ポリマーポリオールは、市販品であってもよく、例えば、「アルティフロー(登録商標)」シリーズ、「シャープフロー(登録商標)」シリーズ(以上、三洋化成工業株式会社社製)、「エクセノール(登録商標)」シリーズ(AGC株式会社製)等が挙げられる。
【0113】
ポリイソシアネート(v-1)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、1分子中に2個又は3個のイソシアネート基を有する化合物が好ましく、ジイソシアネートがより好ましい。ジイソシアネートとしては、単量体1-2におけるジイソシアネート(ii-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
ポリイソシアネート(v-1)の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。導電性接着剤組成物の硬化物の伸びと強度の調整のしやすさの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0114】
〔第1の単量体及び第2の単量体の含有量〕
前記導電性接着剤組成物100質量部に対する第1の単量体の含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、5~50質量部であることが好ましく、8~45質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることがさらに好ましい。
単量体1-1、単量体1-2及び単量体1-3は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第1の単量体としては、単量体1-1及び単量体1-2から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。第1の単量体100質量部中、単量体1-1及び単量体1-2の合計含有量は、導電性接着剤組成物の硬化収縮率の低減及び導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性の観点から、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることが特に好ましい。この場合、単量体1-1及び単量体1-2の合計含有量100質量部に対して、単量体1-1の含有量が50~100質量部であることが好ましい。
【0115】
導電性接着剤組成物中に第2の単量体を含む場合、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、導電性接着剤組成物100質量部に対する第2の単量体の含有量は、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0116】
〔導電性粒子〕
導電性粒子は、導電性接着剤組成物に導電性を付与する。導電性粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等の金属粒子を使用することができる。中でも、導電性の観点から、銀粒子が好ましい。
【0117】
導電性粒子の平均粒子径は、比抵抗値を低減する観点から、好ましくは0.3~20μmであり、より好ましくは0.5~15μmであり、さらに好ましくは1~15μmである。導電性粒子は、平均粒子径が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。
前記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)のことである。
【0118】
前記導電性粒子のBET法により求めた比表面積は、比抵抗値を低減する観点から、好ましくは1.5m2/g以下であり、より好ましくは0.1~0.9m2/gであり、さらに好ましくは0.1~0.6m2/gである。
前記比表面積は、比表面積測定装置を用いて、窒素吸着によるBET 1点法により測定することができる。
【0119】
前記導電性粒子のタップ密度は、好ましくは2.0g/cm3以上であり、より好ましくは3.0~6.0g/cm3である。導電性粒子のタップ密度が2.0g/cm3以上であると、導電性接着剤組成物の硬化物の導電性を高めることができる。
前記タップ密度は、JIS Z 2512:2012 金属粉-タップ密度測定法に準拠して測定することができる。
【0120】
前記導電性粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、フレーク状、鱗片、多面体等が挙げられる。中でも、比抵抗値を低減する観点から、フレーク状が好ましい。
【0121】
前記導電性粒子の含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の導電性を高める観点から、導電性接着剤組成物全量に対して50~95質量%であることが好ましく、55~92質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることがさらに好ましい。
【0122】
〔他の成分〕
前記導電性接着剤組成物は、該導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の向上等の観点から、第1の単量体及び第2の単量体以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、第1の単量体及び第2の単量体以外の単量体(以下、「他の単量体」とも言う。)、重合開始剤等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、触媒(三級アミン化合物、四級アンモニウム化合物、ラウリル酸スズ化合物等)、顔料や染料等の着色剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、整泡剤、充填材等が任意の成分として含まれていてもよい。また、溶媒が含まれていてもよい。
記導電性接着剤組成物中のこれらの他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内の含有量で配合される。
【0123】
<他の単量体>
他の単量体は、第1の単量体(導電性接着剤組成物が第2の単量体を含む場合は、第1の単量体及び第2の単量体)と共重合する化合物であり、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
他の単量体としては、第1の単量体及び第2の単量体との共重合のしやすさ、導電性接着剤組成物の粘度の調整のしやすさ等の観点から、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、前記アルキル基の炭素数は、例えば、1~18が好ましく、1~14がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0124】
他の単量体としては、第1の単量体を架橋させる官能基を2個以上有する、架橋性を有する単量体を用いることもできる。架橋性を有する単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋性を有する単量体の前記官能基は、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、イソシアネー卜基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基及びアミド基から選ばれる1種以上が好ましい。前記官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
架橋性を有する単量体の1分子中の前記官能基の数は2~4が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0125】
架橋性を有する単量体を配合する場合、導電性接着剤組成物中の含有量は、導電性接着剤組成物の硬化物の柔軟性の観点から、第1の単量体(導電性接着剤組成物が第2の単量体を含む場合は、第1の単量体及び第2の単量体)100質量部に対して、架橋性を有する単量体の含有量は1~50質量部が好ましく、2~45質量部がより好ましく、3~40質量部がさらに好ましい。
【0126】
<重合開始剤>
前記導電性接着剤組成物は、さらに重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては特に制限はないが、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられ、これらを併用することもできる。
【0127】
前記導電性接着剤組成物の硬化は、光硬化であっても、熱硬化であってもよい。デバイス作製工程での硬化の際には、光硬化であれば、硬化速度が速く、高温とする必要がないため、デバイスに熱によるダメージを与えることがない。
光硬化の場合、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0128】
光重合開始剤としては、重合反応の制御の観点から、波長380nm以下の紫外照射により使用できるものが好ましい。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、国際公開第2018/173896号の段落[0147]~[0151]に記載されているものが挙げられる。
光重合開始剤としては、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させる水素引抜型光重合開始剤が好ましい。水素引抜型光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルが挙げられる。
また、光重合開始剤としては、光に対する高い感応性の観点からは、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0129】
熱重合開始剤は、(メタ)アクリレートの重合に用いられる公知の熱重合開始剤を公知の手法で用いることができ、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート等の過酸化物等が挙げられる。熱重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0130】
導電性接着剤組成物中の重合開始剤の含有量は、導電性接着剤組成物の重合に伴う硬化の適度な進行の観点から、第1の単量体及び第2の単量体の合計100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.2~6質量部がさらに好ましい。
【0131】
導電性接着剤組成物中、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び導電性粒子の合計含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0132】
〔導電性接着剤組成物の調製〕
本発明の導電性接着剤組成物は、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、導電性粒子、及び必要に応じて含有される各種成分を混合することにより調製することができる。混合装置としては、例えば、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等が挙げられる。前記混合は、0~50℃、例えば室温(25℃)で行うことができる。また、導電性接着剤組成物の調製において脱泡を行うことが好ましい。脱泡を行うことで、導電性接着剤組成物の硬化物の強度低下を抑制することができる。
【0133】
本発明の導電性接着剤組成物の硬化は、加熱硬化であってもよく、光硬化であってもよい。前記硬化を加熱により行う場合、加熱温度は好ましくは60~180℃であり、より好ましくは70~175℃であり、さらに好ましくは75~170℃であり、加熱時間は好ましくは1~150分間であり、より好ましくは5~120分間であり、さらに好ましくは10~90分間である。
【0134】
〔物性〕
本発明の導電性接着剤組成物は、常温(25℃)で液状であることが好ましい。
【0135】
本発明の導電性接着剤組成物の硬化物の比抵抗値は、導電性が良好となりやすい観点から、好ましくは1×10-3Ω・m未満であり、より好ましくは1×10-4Ω・m未満である。
前記硬化物の比抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0136】
本発明の導電性接着剤組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率は、応力の集中を分散させやすい観点から、好ましくは500MPa未満であり、より好ましくは400MPaである。
前記硬化物の25℃における貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0137】
[電子部品]
本発明の電子部品は、上述の導電性接着剤組成物の硬化物を備える。該導電性接着剤組成物の硬化物は、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れることから、フレキシブルデバイスに実装される電子部品に好適に用いることができる。このような電子部品としては、光半導体素子、トランジスタ、ダイオード等の半導体素子等が挙げられる。
【実施例0138】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0139】
[合成例1]
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応器内に、亜鉛へキサシアノコバルテート-t-ブチルアルコール錯体(以下、「DMC-TBA触媒」ともいう)0.2g、及びn-ブタノール 30gを加え、窒素雰囲気下、130℃で、プロピレンオキシド 3970gを一定の速度で7時間かけて投入した。耐圧反応器の内圧低下が止まったことを確認し、水酸基価5.6mgKOH/g(水酸基価換算分子量10,000)のポリオキシプロピレンモノオール4000g得た。
【0140】
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、得られたポリオキシプロピレンモノオール(平均水酸基数1.08)964.9g、及び2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(「カレンズAOI」、昭和電工株式会社社製) 13.1g(NCOインデックス100)を加え、2-エチルヘキサン酸ビスマスの25質量%トルエン溶液0.08gの存在下、70℃で3時間撹拌して、1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を得た(数平均分子量16,000)。なお、1官能ウレタンアクリレートを含む生成物のガラス転移点は-69℃であった。
【0141】
〔数平均分子量の測定〕
合成例1で得られた生成物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記の測定条件で測定した。
<測定条件>
・使用機器:「HLC-8120GPC」、東ソー株式会社製
・使用カラム:下記の2種のカラムを順に直列で連結
「TSKgel(登録商標) G7000HXL」、東ソー株式会社製、1本
「TSKgel(登録商標) GMHXL」、東ソー株式会社製、2本
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率(RI)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.8mL/分
・試料濃度:0.5質量%
・試料注入量:100μL
・標準試料:ポリスチレン
【0142】
〔ガラス転移点の測定〕
合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物のガラス転移点(Tg)は、JIS K7121:2012に準拠して測定した。
【0143】
例1~3で使用する原料化合物の詳細は、以下のとおりである。
〔原料化合物〕
[(A)1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物]
・(A-1):合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物
【0144】
[(A)以外のウレタン(メタ)アクリレート]
・(B-1):ウレタンアクリレートオリゴマー;「CN9071」、サートマー社製;重量平均分子量Mw=24,000(カタログ値)
・(B-2):ウレタンアクリレートオリゴマー;「UN-6200」、根上工業株式会社製;重量平均分子量Mw=6,500(カタログ値)
【0145】
[他の単量体:ラジカル重合性モノマー]
・(C-1):イソボルニルアクリレート;「SR506A」、サートマー社製
・(C-2):ジプロピレングリコールジアクリレート;「SR508」、サートマー社製
【0146】
[重合開始剤]
・熱重合開示剤:ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート;「パーロイル(登録商標)TCP」、日油株式会社製
・光重合開始剤::フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;「イルガキュア(登録商標)819」、BASF社製
【0147】
[導電性粒子]
・銀粒子:「AA-9829N」、メタローテクノロジーズSA社製;フレーク状、平均粒子径10.1μm、タップ密度5.0g/cm3、比表面積0.2m2/g
【0148】
[例1~3]
表1に示す組成比(質量部)で各成分を混合し、例1~3の導電性接着剤組成物を作製する。例1及び例2は実施例であり、例3は比較例である。
【0149】
〔試験体の作製〕
次に各導電性接着剤組成物を用いて、下記の評価に用いる試験体を作製する。
【0150】
(例1の試験体の作製)
例1の導電性接着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーS10、東レ株式会社製、厚さ50μm)に、硬化後の導電性接着剤組成物の厚さが25μmおよび200μmになるように、それぞれドクターブレードを用いて塗布したのち、シリコーンで剥離処理されたPETフィルム(SP-PET-01-75BU、三井化学東セロ株式会社製、厚さ75μm)のシリコーン処理面を重ね合わせる。次いで、エアーコンベンションオーブン中で、80℃で30分間乾燥して硬化させ、シリコーン処理PETフィルムを剥がし、例1の試験体を得る。
【0151】
(例2の試験体の作製)
例2の導電性接着剤組成物を、上記同様のPETフィルムに、硬化後の導電性接着剤組成物の厚さが25μmおよび200μmになるように、それぞれドクターブレードを用いて塗布したのち、ポリエチレンフィルム(厚さ80μm)を重ね合わせる。次いで、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm2、積算光量1J/cm2の条件下で硬化させ、ポリエチレンフィルムを剥がして例2の試験体を得る。
【0152】
(例3の試験体の作製)
例1の導電性接着剤組成物の代わりに例3の導電性接着剤組成物を用いること以外は、前記(例1の試験体の作製)と同様の操作により、例3の試験体を得る。
【0153】
〔評価〕
(1)比抵抗
導電性接着剤組成物の硬化物の厚さが25μmの各試験体から切り出して、幅50mm、長さ50mmの試験片を作製する。抵抗率計(「MCP-T600」、三菱化学株式会社製)を用いて、4端子法により試験片の抵抗値を測定し、比抵抗値を求め、下記評価基準にて評価する。
<評価基準>
A:1×10-3Ω・m未満
C:1×10-3Ω・m以上
【0154】
(2)繰り返し曲げ試験
導電性接着剤組成物の硬化物の厚さが25μmの試験体におけるPETフィルムとは反対側の面に、カプトンフィルム(ポリイミドフィルム;「カプトン(登録商標) 200EN」、東レ・デュポン株式会社製、厚さ50μm)を貼り合わせて幅50mm、長さ50mmの試験片を作製する。
U字型面状曲げ試験機(「DLDM111LH」、ユアサシステム機器株式会社製;試験条件:室温(25℃)、屈曲半径5mm、折り曲げ180℃開放の操作を1回とし、30回/minの速度で10,000回繰り返し)にて、試験片のカプトンフィルム側の面を内側にして、長さ方向の半分の位置でU字型に折り曲げる操作を繰り返す試験を行う。
試験後の試験片の外観を目視観察し、下記評価基準にて評価する。評価A又は評価Bであれば実用上の問題はなく、繰り返し曲げ耐久性に優れていると言え、評価Cは繰り返し曲げ耐久性が十分ではなく、実用には適さないと判定される。
<評価基準>
A:剥がれ、浮き及びクラックのいずれも生じず、外観上の変化が全くない。
B:剥がれ、浮き及びクラックの1つ以上がわずかに生じた。
C:剥がれ、浮き及びクラックの1つ以上が著しく生じた。
【0155】
(3)繰り返し曲げ試験後の比抵抗
上記(2)の繰り返し曲げ試験後の試験片について、抵抗率計(「MCP-T600」、三菱化学株式会社製)を用いて、4端子法により抵抗値を測定し、比抵抗値を求め、下記評価基準にて評価する。
<評価基準>
A:1×10-3Ω・m未満
C:1×10-3Ω・m以上
【0156】
(4)貯蔵弾性率の測定
導電性接着剤組成物の硬化物の厚さが200μmの各試験体から切り出して、幅5mm、長さ15mmの試験片を作製する。動的粘弾性測定装置(EXSTAR 6000 DMS 6100、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、引張モードで、-80℃~130℃の温度範囲において、昇温速度3℃/min、測定周波数1Hz、歪み1%の条件下における25℃の貯蔵弾性率E’(MPa)を測定する。得られた貯蔵弾性率の値を下記評価基準にて評価する。
<評価基準>
A:500MPa未満
C:500MPa以上
【0157】
【0158】
例1及び例2は、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性に優れ、かつ、繰り返し折り曲げても比抵抗値が低く導電性に優れたものとなる。