(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096475
(43)【公開日】2022-06-29
(54)【発明の名称】電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20220622BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20220622BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20220622BHJP
H03F 3/393 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
H03F1/52 210
H03F3/217 130
H03F3/68 210
H03F3/393
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209599
(22)【出願日】2020-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 亘
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA27
5J500AA41
5J500AA66
5J500AC55
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH25
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5J500AK17
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5J500AK47
5J500AK53
5J500AK62
5J500AM09
5J500AM20
5J500AM21
5J500AS05
5J500AT01
5J500AT06
5J500LV08
5J500MU02
5J500MV09
5J500MV20
5J500PF02
5J500PF05
5J500PG02
5J500WU01
5J500WU09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボンディングワイヤの本数増加やボンディングパッド数の増加を招くことなく、同時天絡、同時短絡時の過電流に対する回路の安全確保、信頼性の向上を図ることができる電力増幅器を提供する。
【解決手段】電力増幅器は、正相信号増幅部101と逆相信号増幅部102における同時天絡の発生又は同時地絡の発生により、正相信号増幅部101、逆相信号増幅部102の夫々における第2の電流値を超える過電流の発生が、正相第2基準第1及び第2の過電流検出回路63、64、逆相第2基準第1及び第2の過電流検出回路73、74で検出されると、6入力論理和回路13から論理値Highに相当する統合過電流検出信号OCDETが出力され、この統合過電流検出信号OCDETによって正相パワートランジスタドライブ回路51及び逆相パワートランジスタ52が動作停止せしめられて過電流によるボンディングワイヤの溶断が防止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正相入力信号を増幅する正相信号増幅部と、逆相入力信号を増幅する逆相信号増幅部とを有し、前記正相信号増幅部の出力と前記逆相信号増幅部の出力がBTL接続で負荷に供給可能に構成されると共に、前記正相信号増幅部における第1の電流値を超える過電流の発生と、前記逆相信号増幅部における第1の電流値を超える過電流の発生とを、それぞれ検出可能に構成された過電流検出部とを有してなる電力増幅器であって、
前記過電流検出部は、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時天絡の発生、又は、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時地絡の発生により、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部のそれぞれにおける第2の電流値を超える過電流の発生を検出可能に構成されると共に、前記第1の電流値を超える過電流、又は、前記第2の電流値を超える過電流のいずれかが検出された場合に、前記正相信号増幅部及び前記逆相信号増幅部に対して統合過電流検出信号を出力し、
前記正相信号増幅部及び前記逆相信号増幅部は、前記統合過電流検出信号が出力された際に、それぞれ動作停止可能に構成されてなることを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記第2の電流値は、前記第1の電流値よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記正相入力信号及び前記逆相入力信号がアナログオーディオ信号である場合に、それぞれ、パルス幅変調を施して前記アナログオーディオ信号の信号レベルに応じてハイレベルとローレベルのパルス信号に変換し、前記パルス幅変調が施された前記正相入力信号を第1のパルス幅変調信号として前記正相信号増幅部へ入力すると共に、前記パルス幅変調が施された前記逆相入力信号を第2のパルス幅変調信号として、前記逆相信号増幅部へ入力し、前記負荷において前記第1のパルス幅変調信号と前記第2のパルス幅変調信号の差分に応じたハイレベル、ゼロ、マイナスハイレベルの3値パルス幅変調信号の生成を可能とたことを特徴とする請求項2記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記正相信号増幅部と前記負荷との間に第1のLCフィルタが、前記逆相信号増幅部と前記負荷との間に第2のLCフィルタが、それぞれ設けられ、
前記過電流検出部は、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時天絡の発生により第2の電流値を超える過電流の発生が検出された際に、論理値Highに相当する同時天絡過電流検出信号を生成すると共に、当該同時天絡過電流検出信号を前記第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号の1周期分保持する第1のDフリップフロップが設けられる一方、
前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時地絡の発生により第2の電流値を超える過電流の発生が検出された際に、論理値Highに相当する同時地絡過電流検出信号を生成すると共に、当該同時地絡過電流検出信号を前記パルス幅変調信号の1周期分保持する第2のDフリップフロップが設けられ、
前記第1又は第2のDフリップフロップからの論理値Highに相当する出力信号を第1のカウント周期の間、計数後に論理値Highに相当する同時過電流検出信号として出力するカウンタ回路が設けられ、前記カウンタ回路が前記同時過電流検出信号を出力した場合に、前記統合過電流検出信号を出力可能に構成されてなることを特徴とする請求項3記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記第1のカウント周期は、前記LCフィルタの共振周期よりも大であることを特徴とする請求項4記載の電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器に係り、特に、半導体上に出力段がBTL(Bridged Trans Less)接続を用いて構成されてなる電力増幅器における出力同時天絡、同時地絡時の過電流に対する安全対策費用削減、回路の安全性、信頼性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオパワーアンプは、8Ω、4Ωなどの重負荷のスピーカを駆動するため、サイズの大きいパワートランジスタを用いて入力信号を電力増幅するのが一般的である。そのようなパワートランジスタを用いた電力増幅器の出力端子が、天絡、又は、地絡した場合、大電流による焼損の危険性が高いため過電流検出回路を内蔵するのが一般的である。
係る過電流検出回路は、例えば、特許文献1に開示されたようにパワートランジスタの電流をモニターする方法等が知られており、さらに、過電流検出回路の検出精度向上や電力損失の低減を図った構成が特許文献2等において開示されている。
【0003】
図6には、このような従来の電力増幅器の一回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について説明する。
この電力増幅器は、正相入力信号INPと逆相入力信号INNとが、それぞれ基本的に同一構成の増幅回路により増幅されて、BTL接続された負荷RLを駆動可能に構成されてなるものである。
すなわち、正相入力信号INPは、第1のドライブ回路PDR1を介してプッシュプル接続された2つのパワートランジスタQ1,Q2により増幅され、その正相増幅出力OUTPは負荷RLの一端に印加される構成となっている。
また、逆相入力信号INNは、第2のドライブ回路PDR2を介してプッシュプル接続された2つのパワートランジスタQ3,Q4により増幅され、その逆相増幅出力OUTNは負荷RLの他端に印加される構成となっている。
【0004】
また、パワートランジスタQ1,Q2に流れる電流は、検出用トランジスタQd1,Qd2によりモニターされ、所定の第1の電流値を超えた場合に第1及び第2の検出回路DET1,DET2から過電流検出信号が出力されるようになっている。
同様に、パワートランジスタQ3,Q4に流れる電流は、検出用トランジスタQd3,Qd4によりモニターされ、所定の第1の電流値を超えた場合に第3及び第4の検出回路DET3,DET4から過電流の検出信号が出力されるようになっている。
【0005】
第1乃至第4の検出回路DET1~DET4からの検出信号は、論理和回路ORを介して過電流検出信号OCDETとして、第1及び第2のドライブ回路PDR1,PDR2へ入力され、動作停止信号として機能するようになっている。すなわち、第1乃至第4の検出回路DET1~DET4のいずれからの検出信号に対応して論理和回路ORを介して過電流検出信号OCDETが出力され、第1及び第2のドライブ回路PDR1,PDR2に入力されると、第1及び第2のドライブ回路PDR1,PDR2は動作停止し、パワートランジスタQ1~Q4が駆動停止されるようになっている。
【0006】
ここで、第1乃至第4の検出回路DET1~DET4が検出信号OCDETを出力する基準となる第1の電流値は、アプリケーションの最大電流よりも大きな値に設定され、アプリケーションの最大電流Ioutmaxは、下記する式1により算出される。
【0007】
Ioutmax=(Poutmax/RL)1/2×21/2・・・式1
【0008】
なお、ここで、Poutmaxは電力増幅器の最大出力電力、RLは負荷抵抗値とする。
例えば、負荷抵抗値RL=4Ω、最大出力電力Poutmax=8Wの電力増幅器の場合、アプリケーションの最大電流は2Aと算出される。したがって、この場合、第1の電流値は2Aを超える適宜な値、例えば、2.5Aなどに設定される。
上述のようにして第1の電流値が決定された後、この電流値においてボンディングワイヤの溶断が生じないようにボンディングワイヤの本数が決定されることとなる。
例えば、
図7に模式的に示されたように、上述のような過電流に対処するために、半導体ICパッケージPACに搭載されたICチップIC-CHにおいては、電源電圧用ボンディングパッドVDD PADやグランド用ボンディングパッドVSS PADを増設して、半導体ICパッケージPACの外周近傍に設けられた電源電圧用接続ピンVDD PINやグランド用接続ピンVSS PINと、対応するボンディングパッドとを接続するボンディングワイヤを増設することで、ボンディングワイヤ一本あたりに流れる電流を減らす対策が採られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-171140号公報
【特許文献2】特開平01-257270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、正相増幅出力OUTP、逆相増幅出力OUTNが同時天絡、同時地絡する場合について考える。同時天絡、同時地絡が発生した場合、先の第1の電流値の2倍が電源端子VDD、又は、グランド端子VSSに流れる虞がある。そのため、このような場合にも、ボンディングワイヤが溶断しないようにするためには、電源端子VDD、及び、グランド端子VSSには、ボンディングワイヤのさらなる増設、強化が必要となる。
そのため、ボンディングワイヤの本数増加とボンディングパッド数の増加による製品原価の高騰を招くという問題がある。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ボンディングワイヤの本数増加やボンディングパッド数の増加を招くことなく、同時天絡、同時短絡時の過電流に対する回路の安全確保、信頼性の向上可能な電力増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る電力増幅器は、
正相入力信号を増幅する正相信号増幅部と、逆相入力信号を増幅する逆相信号増幅部とを有し、前記正相信号増幅部の出力と前記逆相信号増幅部の出力がBTL接続で負荷に供給可能に構成されると共に、前記正相信号増幅部における第1の電流値を超える過電流の発生と、前記逆相信号増幅部における第1の電流値を超える過電流の発生とを、それぞれ検出可能に構成された過電流検出部とを有してなる電力増幅器であって、
前記過電流検出部は、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時天絡の発生、又は、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部における同時地絡の発生により、前記正相信号増幅部と前記逆相信号増幅部のそれぞれにおける第2の電流値を超える過電流の発生を検出可能に構成されると共に、前記第1の電流値を超える過電流、又は、前記第2の電流値を超える過電流のいずれかが検出された場合に、前記正相信号増幅部及び前記逆相信号増幅部に対して統合過電流検出信号を出力し、
前記正相信号増幅部及び前記逆相信号増幅部は、前記統合過電流検出信号が出力された際に、それぞれ動作停止可能に構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力端の同時天絡や同時地絡が生じた際に、出力端の一方に天絡、又は、地絡が生じた場合の過電流検出の基準である従来の第1の電流値とは別個の第2の電流値によって過電流の発生が検出されるように構成したので、従来と異なり、同時天絡、同時地絡発生時におけるボンディングワイヤ溶断回避のためのボンディングの本数増加やボンディングパッドの増加を伴うことなく、回路の安全性確実、信頼性の向上を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における電力増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施の形態における電力増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】3値パルス幅変調回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】
図3に示された3値パルス幅変調回路の出力信号を正相及び逆相入力信号とした場合の
図1に示された回路構成における電力増幅器の動作を説明する波形図であって、
図4(A)は三角波と正相及び逆相入力信号の変化を示す波形図、
図4(B)は三角波発振器に入力されるクロック信号の波形図、
図4(C)は、第1のコンパレータから出力される第1のパルス幅変調信号PWMPの波形図、
図4(D)は、第2のコンパレータから出力される第2のパルス幅変調信号PWMNの波形図、
図4(E)は、3値パルス幅変調信号の波形図である。
【
図5】
図2に示された第2の回路構成例における回路動作を説明する波形図であって、
図5(A)は、正相出力信号の波形図、
図5(B)は、逆相出力信号の波形図、
図5(C)は、正相出力端子から出力される出力電流の波形図、
図5(D)は、逆相出力端子から出力される出力電流の波形図、
図5(E)は、5入力論理和回路の出力の波形図である。
【
図6】従来回路の一回路構成例を示す回路図である。
【
図7】電源電圧用ボンディングパッド及びグランド用ボンディングパッド周辺のボンディングワイヤの配設状態を概説する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における電力増幅器の第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
この電力増幅器は、正相信号増幅部101と、逆相信号増幅部102と、過電流検出部103とに大別されて構成されたものとなっている。
正相信号増幅部101と逆相信号増幅部102の各々の増幅出力信号は、BTL接続により負荷(
図1においては「RL」と表記)37に供給される構成となっている。
【0016】
過電流検出部103は、従来同様、正相出力端子93における天絡、又は、地絡、若しくは、逆相出力端子94における天絡、又は、地絡による過電流の発生を、正相第1基準第1及び第2の過電流検出回路61,62、逆相第1基準第1及び第2の過電流検出回路71,72により行い、過電流が検出された際に正相信号増幅部101及び逆相信号増幅部102の動作が遮断されるようになっている(詳細は後述)。
【0017】
さらに、本発明の実施の形態における過電流検出部103は、従来と異なり、正相信号増幅部101と逆相信号増幅部102における同時天絡、同時地絡による出力電流の過電流検出が過電流検出部103によって行われ、過電流が検出された際に正相信号増幅部101及び逆相信号増幅部102の動作が遮断されるようになっている(詳細は後述)。
【0018】
正相信号増幅部101は、正相パワートランジスタドライブ回路(
図1においては「PDRP」と表記)51と、正相第1及び第2のパワートランジスタ(
図1においては、それぞれ「M1HP」、「M2LP」と表記)1,2と、正相第1及び第2のモニタトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Mm1HP」、「Mm2LP」と表記)5,6とを主たる構成要素として構成されてなるものである。
また、逆相信号増幅部102は、被増幅信号が逆相入力信号という点では、正相信号増幅部と異なるが、基本的な構成は正相信号増幅部101と同様である。
【0019】
すなわち、逆相信号増幅部102は、逆相パワートランジスタドライブ回路(
図1においては「PDRN」と表記)52と、逆相第1及び第2のパワートランジスタ(
図1においては、それぞれ「M1HN」、「M2LN」と表記)3,4と、逆相第1及び第2のモニタトランジスタ(
図1においては、それぞれ「Mm1HN」、「Mm2LN」と表記)7,8とを主たる構成要素として構成されてなるものである。
【0020】
過電流検出部103は、正相第1基準第1及び第2の過電流検出回路(
図1においては、それぞれ「L1DTHP」、「L1DTLP」と表記)61,62と、逆相第1基準第1及び第2の過電流検出回路(
図1においては、それぞれ「L1DTHN」、「L1DTLN」と表記)71,72と、正相第2基準第1及び第2の過電流検出回路(
図1においては、それぞれ「L2DTHP」、「L2DTLP」と表記)63,64と、逆相第2基準第1及び第2の過電流検出回路(
図1においては、それぞれ「L2DTHN」、「L2DTLN」と表記)73,74と、第1及び第2のAND回路(
図1においては、それぞれ「AND1」、「AND2」と表記)11,12と、6入力論理和回路(
図1においては「OR」と表記)13とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0021】
本発明の実施の形態において、正相信号増幅部101における正相第1のパワートランジスタ1には、PチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)が、正相第2のパワートランジスタ2には、NチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられている。
この正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2は、電源端子95とグランド端子96との間にプッシュプル接続されて設けられている。
すなわち、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2は、ドレインが相互に接続されて、正相第1のパワートランジスタ1のソースは電源端子95に、正相第2のパワートランジスタ2のソースは、グランド端子96に、それぞれ接続されている。
なお、電源端子95とグランド端子96の間には、直流電源40が接続されている。
【0022】
正相パワートランジスタドライブ回路51は、正相入力端子91を介して正相入力信号が入力され、そのドライブ信号を正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2のゲートへ出力することで正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2が駆動されるようになっている。
また、正相パワートランジスタドライブ回路51は、後述するように、過電流検出部103の統合過電流検出信号OCDETが論理値Highに相当するレベルとなると動作停止し、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2の動作を遮断できるようになっている。
【0023】
さらに、本発明の実施の形態において、正相第1のモニタトランジスタ5には、PチャンネルMOSFETが、正相第2のモニタトランジスタ6には、NチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられている。
正相第1及び第2のモニタトランジスタ5,6は、ドレインが相互に接続されると共に、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2のドレイン相互の接続点と正相出力端子93に接続されている。
【0024】
また、正相第1のモニタトランジスタ5のソースは、正相第1の検出抵抗器(
図1においては「R1HP」と表記)21を介して電源端子95に印加される電源電圧VDDが印加されるようになっている。また、正相第1のモニタトランジスタ5のソースと正相第1の検出抵抗器21との接続点は、正相第1基準第1の過電流検出回路61及び正相第2基準第1の過電流検出回路62の入力段に接続されている。
【0025】
一方、正相第2のモニタトランジスタ6のソースは、正相第2の検出抵抗器(
図1においては「R2LP」と表記)22及びグランド端子96を介してグランド電位に維持されるようになっている。また、正相第2のモニタトランジスタ6のソースと正相第2の検出抵抗器22との接続点は、正相第1基準第2の過電流検出回路62及び正相第2基準第2の過電流検出回路64の入力段に接続されている。
【0026】
次に、逆相信号増幅部102における逆相第1のパワートランジスタ3には、PチャンネルMOSFETが、逆相第2のパワートランジスタ4には、NチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられている。
この逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4は、電源端子95とグランド端子96との間にプッシュプル接続されて設けられている。
【0027】
すなわち、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4は、ドレインが相互に接続されて、逆相第1のパワートランジスタ3のソースは電源端子95に、逆相第2のパワートランジスタ4のソースは、グランド端子96に、それぞれ接続されている。
逆相パワートランジスタドライブ回路52は、逆相入力端子92を介して逆相入力信号が入力され、そのドライブ信号を逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4のゲートへ出力することで逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4を駆動されるようになっている。
【0028】
また、逆相パワートランジスタドライブ回路52は、後述するように、過電流検出部103の統合過電流検出信号OCDETが論理値Highに相当するレベルとなると動作停止し、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4の動作を遮断できるようになっている。
本発明の実施の形態において、逆相第1のモニタトランジスタ7には、PチャンネルMOSFETが、逆相第2のモニタトランジスタ8には、NチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられている。
【0029】
逆相第1及び第2のモニタトランジスタ7,8は、ドレインが相互に接続されると共に、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4のドレイン相互の接続点と逆相出力端子94に接続されている。
また、逆相第1のモニタトランジスタ7のソースは、逆相第1の検出抵抗器(
図1においては「R1HN」と表記)23を介して電源端子95に印加される電源電圧VDDが印加されるようになっている。また、逆相第1のモニタトランジスタ7のソースと逆相第1の検出抵抗器23との接続点は、逆相第1基準第1の過電流検出回路71及び逆相第2基準第1の過電流検出回路73の入力段に接続されている。
【0030】
一方、逆相第2のモニタトランジスタ8のソースは、逆相第2の検出抵抗器(
図1においては「R2LN」と表記)24及びグランド端子96を介してグランド電位に維持されるようになっている。また、逆相第2のモニタトランジスタ8のソースと逆相第2の検出抵抗器24との接続点は、逆相第1基準第2の過電流検出回路72及び逆相第2基準第2の過電流検出回路74の入力段に接続されている。
【0031】
正相第1基準第1及び第2の過電流検出回路61,62と、逆相第1基準第1及び第2の過電流検出回路71,72の各々の出力は、6入力論理和回路13に入力されている。
また、正相第2基準第1の過電流検出回路63の出力と、逆相第2基準第1の過電流検出回路73の出力は、第1のAND回路11に入力されて、その論理積出力が6入力論理和回路13に入力されるようになっている。
【0032】
さらに、正相第2基準第2の過電流検出回路64の出力と、逆相第2基準第2の過電流検出回路74の出力は、第2のAND回路12に入力されて、その論理積出力が6入力論理和回路13に入力されるようになっている。
6入力論理和回路13は、6つの入力のいずれかが論理値Highとなった場合に、それを統合過電流検出信号OCDETとして出力する。
6入力論理和回路13の出力端子は、正相パワートランジスタドライブ回路51と逆相パワートランジスタドライブ回路52のそれぞれの統合過電流検出信号入力端子OCDETに接続されている。
【0033】
次に、上記構成における回路動作について説明する。
まず、正相入力端子91に外部から入力された正相信号INPは、正相パワートランジスタドライブ回路51、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2により電力増幅され、正相出力端子93から正相出力信号OUTPとして出力される。
また、逆相入力端子92に外部から入力された逆相信号INNは、逆相パワートランジスタドライブ回路52、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4により電力増幅され、逆相出力端子94から逆相出力信号OUTNとして出力され、正相出力端子93と逆相出力端子94の間に接続された負荷37はBTL駆動されることとなる。
【0034】
一方、過電流検出部103においては、正相第1のモニタトランジスタ5により正相第1のパワートランジスタ1の電流が、正相第2のモニタトランジスタ6により正相第2のパワートランジスタ2の電流が、それぞれ検出され、その検出電流が、正相第1基準第1及び第2の過電流検出回路61,62、及び、正相第2基準第1及び第2の過電流検出回路63,64において、それぞれの基準を超えているか否かが判定される。
【0035】
すなわち、正相第1のパワートランジスタ1の電流が第1の基準電流値を超えた場合、正相第1基準第1の過電流検出回路61から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「正相第1基準第1トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、正相第2のパワートランジスタ2の電流が第1の基準電流値を超えた場合、正相第1基準第2の過電流検出回路62から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「正相第1基準第2トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、それぞれ出力される。
【0036】
また、逆相第1のパワートランジスタ3の電流が第1の基準電流値を超えた場合、逆相第1基準第1の過電流検出回路71から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「逆相第1基準第1トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、逆相第2のパワートランジスタ4の電流が第1の基準電流値を超えた場合、逆相第1基準第2の過電流検出回路72から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「逆相第1基準第2トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、それぞれ出力される。
【0037】
さらに、正相第1のパワートランジスタ1の電流が第2の基準電流値を超えた場合、正相第2基準第1の過電流検出回路63から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「正相第2基準第1トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、正相第2のパワートランジスタ2の電流が第2の基準電流値を超えた場合、正相第2基準第2の過電流検出回路64から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「正相第2基準第2トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、それぞれ出力される。
【0038】
またさらに、逆相第1のパワートランジスタ3の電流が第2の基準電流値を超えた場合、逆相第2基準第1の過電流検出回路73から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「逆相第2基準第1トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、逆相第2のパワートランジスタ4の電流が第2の基準電流値を超えた場合、逆相第2基準第2の過電流検出回路74から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「逆相第2基準第2トランジスタ過電流検出信号」と称する)が、それぞれ出力される。
【0039】
そして、正相1基準第1の過電流検出回路61、正相1基準第2の過電流検出回路62、逆相1基準第1の過電流検出回路71、及び、逆相1基準第2の過電流検出回路72のいずれかから論理値Highに相当するレベルの検出信号が出力された場合に、6入力論理和回路13から同じく論理値Highに相当するレベルの統合過電流検出信号OCDETが出力され、正相パワートランジスタドライブ回路51及び逆相パワートランジスタドライブ回路52にそれぞれ入力される。
【0040】
その結果、正相パワートランジスタドライブ回路51、逆相パワートランジスタドライブ回路52による正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4の駆動が停止され、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4は、遮断状態となる。
【0041】
また、第1のAND回路11、又は、第2のAND回路12のいずれかの出力が論理値Highに相当するレベルとなった場合にも、上述と同様に、6入力論理和回路13から同じく論理値Highに相当するレベルの統合過電流検出信号OCDETが出力され、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4が遮断状態とされる。
【0042】
すなわち、正相第2基準第1の過電流検出回路63と逆相第2基準第1の過電流検出回路73の双方において第2の電流値を超える過電流が検出された場合、第1のAND回路11から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「同時天絡過電流検出信号」と称する)が出力される。
また、正相第2基準第2の過電流検出回路64と逆相第2基準第2の過電流検出回路74の双方において第2の電流値を超える過電流が検出された場合、第2のAND回路12から論理値Highに相当するレベルの検出信号(以下説明の便宜上、「同時地絡過電流検出信号」と称する)が出力される。
【0043】
正相第1基準第1及び第2の過電流検出回路61,62、逆相第1基準第1及び第2の過電流検出回路71,72は、基本的に従来と同様に、正相出力端子93又は逆相出力端子94における天絡、又は、地絡の発生によって正相第1、第2のパワートランジスタ1、2、逆相第1、第2のパワートランジスタ3、4のいずれかに過電流が生ずることを検出するために設けられている。そして、過電流検出の基準となる第1の電流値は、従来同様、先の式1により求められるアプリケーション(電力増幅器の具体的な使用形態)の最大電流Ioutmaxを超える適宜な値に選定されるものとなっている。
【0044】
一方、正相出力端子93と逆相出力端子94における同時天絡、又は、同時地絡の発生により、正相第1のパワートランジスタ1に第2の電流値を超える過電流が生じたことを検出する正相第2基準第1の過電流検出回路63、正相第2のパワートランジスタ2に第2の電流値を超える過電流が生じたことを検出する正相第2基準第2の過電流検出回路64、逆相第1のパワートランジスタ3に第2の電流値を超える過電流が生じたことを検出する逆相第2基準第1の過電流検出回路73、及び、逆相第2のパワートランジスタ4に第2の電流値を超える過電流が生じたことを検出する逆相第2基準第2の過電流検出回路74における過電流検出の基準である第2の電流値は、次述するような観点から定められる。
【0045】
まず、負荷に対する電力供給が本発明の実施の形態の電力増幅器のようにBTL接続で行われる回路の場合、一方の出力が電流をソースするときに、もう一方は電流をシンクするため、通常動作において、ハイサイドトランジスタである正相第1のパワートランジスタ1と逆相第1のパワートランジスタ3が同時に大電流をソースすることはなく、また、ローサイドパワートランジスタである正相第2のパワートランジスタ2と逆相第2のパワートランジスタ4が同時に大電流をシンクすることはない。
【0046】
そのため、第2の電流値は、先の第1の電流値と異なり、式1により求められるアプリケーションの最大電流を考慮することなく第1の電流値よりも十分小さな値に設定することができる。すなわち、パワートランジスタに対する過電流によるダメージをより早期に解消し、回路保護を図ることが可能となる。
なお、第2の電流値の具体的な値は、電力増幅器の具体的な仕様や、使用形態等を考慮して、個々に適切な値を選定することとなる。
【0047】
上述の構成例において、正相入力信号と逆相入力信号は、交互に正負にレベル変化する信号を想定しているが、このような信号に限定される必要はなく、第1の回路構成例は、3値パルス幅変調信号を用いる場合も有効である。
図3には、3値パルス幅変調信号の生成に適する3値パルス幅変調回路の回路構成例が、
図4には、3値パルス幅変調回路の動作を説明する波形図が、それぞれ示されており、以下、これらの図を参照しつつ3値パルス幅変調信号について説明する。
【0048】
最初に、
図3に示された3値パルス幅変調回路について説明する。
この3値パルス幅変調回路は、第1及び第2のコンパレータ(
図3においては、それぞれ「COM1」、「COM2」と表記)41,42と、三角波発振器(
図3においては「OSC」と表記)43を有して構成されている。
第1及び第2のコンパレータ41,42の各々の反転入力端子は、相互に接続されて三角波発振器43の出力段に接続されている。
【0049】
また、第1のコンパレータ41には、第1の回路構成例と同様な正相入力信号INPが、第2のコンパレータ42には、同じく逆相入力信号INNが、それぞれ入力されるようになっている。
三角波発振器43には、後述するようなクロック信号CLKが入力され、このクロック信号CLKに同期した三角波信号TWが生成、出力され、第1及び第2のコンパレータ41,42へ入力されるようになっている。
【0050】
次に、
図4を参照しつつ、
図3に示された3値パルス幅変調回路と電力増幅器の動作について説明する。
三角波発振器43から出力される三角波信号TW(
図4(A)二点鎖線参照)は、アナログオーディオ信号である正相入力信号、逆相入力信号に比して繰り返し周波数が十分高く設定されたものとなっている(
図4(B)参照)。すなわち、三角波発振器43に入力されるクロック信号CLK(
図4(B)参照)の繰り返し周波数は、アナログオーディオ信号に対して高い周波数に設定されている。
【0051】
第1のコンパレータ41において、正相アナログ入力信号INPが無入力時には、第1のコンパレータ41からはデューティ50%の繰り返しパルス信号が出力されるが、無入力時以外においては、三角波信号が正相アナログ入力信号INPを下回ったところでハイレベルとなり、三角波信号が正相アナログ入力信号INPを上回ったところでローレベルとなる第1のパルス幅変調信号PWMPが出力される(
図4(A)及び
図4(C)参照)。
【0052】
また、第2のコンパレータ42においても、逆相アナログ入力信号INNが無入力時には、第2のコンパレータ41からはデューティ50%の繰り返しパルス信号が出力されるが、無入力時以外においては、三角波信号が逆相アナログ入力信号INNを下回ったところでハイレベルとなり、三角波信号が逆相アナログ入力信号INNを上回ったところでローレベルとなる第2のパルス幅変調信号PWMNが出力される(
図4(A)及び
図4(D)参照)。
【0053】
上述の第1のパルス幅変調信号PWMPは正相入力端子91へ入力され、正相信号増幅部101により増幅されて正相出力信号OUTPとして正相出力端子93へ出力される一方、第2のパルス幅変調信号PWMNは逆相入力端子92へ入力され、逆相信号増幅部102により増幅されて逆相出力信号OUTNとして逆相出力端子94へ出力される。
正相アナログ入力信号INPと逆相アナログ入力信号INNが無信号時には、第1のパルス幅変調信号PWMPと第2のパルス幅変調信号PWMNの差分はゼロとなる。その結果、負荷37には、
図4(E)に示されたようにハイレベル、ゼロ、マイナスハイレベルの3値パルス幅変調信号が与えられることとなる。
【0054】
このような3値パルス幅変調信号を用いた場合、入力信号が無信号の場合、先に説明したように正相出力信号OUTPと逆相出力信号OUTNの差分がゼロとなるため、出力LCフィルタを介して負荷をBTLで駆動する必要がなく、出力LCフィルタの省略によるコストダウンが可能となる。
その一方で、3値パルス幅変調信号は、同時にハイレベル、同時にローレベルとなる場合があるため、同時天絡、同時地絡の発生を考慮する必要があるが、本発明の実施の形態における電力増幅器は、係る同時天絡、同時地絡による過電流に起因する回路素子の焼損等を確実に抑圧、防止可能であり、3値パルス幅変調信号を用いる場合に好適である。
【0055】
しかし、高出力化に伴う高電源電圧化による輻射ノイズの影響を考慮する必要がある場合には、3値パルス幅変調信号を用いても出力LCフィルタを介して負荷をBTL接続で駆動する構成を採ることとなる。
無入力時における第1のパルス幅変調信号PWMP及び第2のパルス幅変調信号PWMNは、先に説明したようにデューティ50%であるため、電源電圧VDDの半分の電圧値をバイアスポイントとして動作することとなる。したがって、動作開始時に、出力LCフィルタにVDD/2のインパルスが入力し、LC共振による電流の減衰振動が発生する。
【0056】
通常、LCフィルタで用いるインダクタの直列抵抗値Rは小さく、LCR回路にインパルス入力がなされたときの電流IFILTERは、下記する式2で表される。
【0057】
IFILTER=(VDD/2)/{L/C-(R/2)2}1/2×e-(R/2L)t×sin[t{1/LC-(R/2L)2}1/2]・・・式2
【0058】
したがって、式2で表されるインパルス信号起因の電流が、正相第2基準第1及び第2の過電流検出回路63,64、及び、逆相第2基準第1及び第2の過電流検出回路73,74における第2の電流値を超え、本来不要な過電流検出が行われてしまうという問題が生ずる可能性がある。
【0059】
このような問題を回避する方策としては、第2の電流値を大きくすることが必要とされるが、それは、ボンディングパッド増加やボンディングワイヤ増加を招いてしまう。
図2には、出力LCフィルタを設けることにより生ずる上述のような問題の解決に適する第2の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、第2の回路構成例について説明する。
なお、
図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、
図1に示された第1の回路構成例に、インパルス信号起因の電流が第2の電流値を超えた場合に過電流検出信号の出力を回避するための論理回路(詳細は後述)を付加した構成を有するものである。
【0060】
すなわち、この電力増幅器は、過電流検出部103において、第1及び第2のAND回路11,12の後段に、NOT回路14、第1及び第2のDフリップフロップ15,16、2入力論理和回路17、及び、カウンタ回路18、並びに、6入力論理和回路13に代えて5入力論理和回路(
図2においては「OR2」と表記)19による論理回路が増設された構成を有してなるものである。さらに、この電力増幅部の正相出力端子93と負荷37との間に第1の出力LCフィルタ81、逆相出力端子94と負荷37との間に第2の出力LCフィルタ82が、それぞれ設けられている。
【0061】
以下、具体的に回路構成について説明する。
第1のAND回路11の出力端子は、第1のDフリップフロップ15のD入力端子に、第2のAND回路12の出力端子は、第2のDフリップフロップ16のD入力端子に、それぞれ接続されている。
【0062】
また、第2のDフリップフロップ16のクロック入力端子CKには、図示されないクロック信号発生回路で生成されたクロック信号CLKが、第1のDフリップフロップ15のクロック入力端子CKには、NOT回路14により反転されたクロック信号CLKが、それぞれ入力されるようになっている。
第1及び第2のDフリップフロップ15,16のそれぞれの出力Qは、2入力論理和回路17に、それぞれ入力され、2入力論理和回路17の出力は、カウンタ回路18へ被計数信号RSTXとして入力されるようになっている。
【0063】
カウンタ回路18は、第1及び第2のDフリップフロップ15,16に印加されているクロック信号と同一のクロック信号CLKを用いて2入力論理和回路17の出力信号の計数を行うものである。このカウンタ回路18は、後述するように2入力論理和回路17の出力信号を所定回数計数した際に論理値Highに相当する信号(以下説明の便宜上、「同時過電流検出信号」と称する)を出力する。
【0064】
第1及び第2の出力LCフィルタ81,82は、基本的に同一構成を有してなるもので、以下の回路構成の説明においては、第1の出力LCフィルタ81の構成要素の後ろに、第2の出力LCフィルタ82の対応する構成要素を括弧書きすることで、第1の出力LCフィルタ81の回路構成の説明を以て、第2の出力LCフィルタ82の回路構成の説明に代えることとする。
【0065】
第1の出力LCフィルタ81において、正相出力端子93(逆相出力端子94)と負荷37との間には、第1のフィルタ抵抗器31(第2のフィルタ抵抗器32)と第1のフィルタコイル33(第2のフィルタコイル34)が、正相出力端子93(逆相出力端子94)に第1のフィルタ抵抗器31(第2のフィルタ抵抗器32)が位置するように直列接続されて設けられている。
さらに、第1のフィルタコイル33(第2のフィルタコイル34)と負荷37との接続点とグランドとの間には、第1のフィルタコンデンサ35(第2のフィルタコンデンサ36)が接続されている。
【0066】
次に、上記構成における動作について
図5の波形図を参照しつつ説明する。
第1のパルス信号幅変調信号が正相入力端子91から入力されると、第1のパルス信号幅変調信号は、正相パワートランジスタドライブ回路51、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2により電力増幅され正相出力端子93に正相出力信号OUTPとして出力される(
図5(A)参照)。
第2のパルス信号幅変調信号が逆相入力端子92から入力されると、第2パルス信号幅変調信号は、逆相パワートランジスタドライブ回路52、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4により電力増幅され逆相出力端子94に逆相出力信号OUTNとして出力される(
図5(B)参照)。
【0067】
正相出力信号OUTPは、第1の出力LCフィルタ81を介して、逆相出力信号OUTNは、第2の出力LCフィルタ82を介して、負荷37へ供給されて負荷37はBTL接続で駆動されることとなる。
回路起動時(
図5において時刻t1)には、正相出力信号OUTP、逆相出力信号OUTNの立ち上がりにより第1及び第2の出力LCフィルタ81,82に起因する突入電流の発生により共振状態となるが、回路の動作状態は時間の経過に伴い徐々に定常状態となってゆく。
【0068】
すなわち、正相第1及び第2のパワートランジスタ1,2に流れる正相出力電流IOUTP、逆相第1及び第2のパワートランジスタ3,4に流れる逆相出力電流IOUTNは、回路起動後、しばらくの間は、正相出力信号OUTP、逆相出力信号OUTNの立ち上がり、立ち下がり近傍において第2の電流値を超える場合がある(
図5(A)乃至
図5(D)参照)。
その結果、第1のAND回路11により論理値Highに相当する信号が出力されると第1のDフリップフロップ15により、また、第2のAND回路12により論理値Highに相当する信号が出力されると第2のDフリップフロップ16により、それぞれ第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号(
図4(C)及び
図4(D)参照)の1周期の間、論理値Highが保持される。
【0069】
カウンタ回路18の第1のカウント周期は、計数動作(カウント動作)を繰り返し行う際の時間間隔であり、この第1のカウント周期時間は、第1及び第2の出力LCフィルタ81,82におけるLC共振周期よりも十分大きな時間に設定されている。そのため、第1のDフリップフロップ15、又は、第2のDフリップフロップ16からの論理値Highに対応する信号が、カウンタ回路18によって複数回計数されても、カウンタ回路18からカウントアップによる同時過電流検出信号が出力されることはない。
したがって、正相パワートランジスタドライブ回路51、逆相パワートランジスタドライブ回路52が、統合過電流検出信号OCDETによって動作停止されることはなく、回路起動後の回路動作を維持することができる。
【0070】
一方、例えば、同時地絡が生じた場合(
図5において時刻tn)、正相出力信号OUTP、逆相出力信号OUTは、電圧降下を生じ低電圧レベルとなる(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
正相出力電流IOUTPと逆相出力電流IOUTNは、第1、第2のパルス幅変調信号PWMP、PWMNに、それぞれ同期するような出力状態となる(
図5(C)及び
図5(D)時刻tn以降参照)。
【0071】
ここで、第1、第2のパルス幅変調信号PWMP、PWMNの繰り返し周期は、カウンタ回路18の第1のカウント周期よりも小さく、しかも、この場合、正相出力電流IOUTPと逆相出力電流IOUTNは、第2の電流値を超える大きさであるため、出力の度毎に、第1のAND回路11からは、論理値Highに相当する同時天絡過電流検出信号が、第2のAND回路12からは、論理値Highに相当する同時地絡過電流検出信号が、それぞれ出力されることとなる。
【0072】
第1及び第2のDフリップフロップ15,16は、論理値Highに相当する信号が入力されると、第1のカウント周期の間、出力Qを論理値Highに保持する。
そして、第1及び第2のDフリップフロップ15,16のいずれかの論理値Highに相当する信号は、カウンタ回路18において第1のカウント周期の間、計数されることでカウンタ回路18からは、第1のカウント周期終了時に論理値Highに相当する同時過電流検出信号が出力される。この同時過電流検出信号に対応して5入力論理和回路19から論理値Highに相当する過電流検出信号OCDETが出力されることとなる(
図5(E)参照)。
【0073】
なお、第1のカウント周期中に同時天絡・当時地絡が発生した場合、その間、電流が流れてしまうが、ボンディングワイヤの溶断電流は、時間の関数となっており、通常、オーディオパワーアンプで使用するLCフィルタの回路定数を考慮して定められた第1のカウント周期においては溶断電流は十分大きいため、直ちにボンディングワイヤの溶断が生ずるような虞はない。
また、回路が定常状態にある場合には、LCフィルタ起因のリプル電流が流れるため、第2の電流値は想定されるリプル電流よりも大きめに設定すると好適である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
ボンディングワイヤの本数増加やボンディングパッド数の増加を抑えつつ、従来に比して、同時天絡、同時短絡時の過電流のより確実な抑圧が所望される電力増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1…正相第1のパワートランジスタ
2…正相第2のパワートランジスタ
3…逆相第1のパワートランジスタ
4…逆相第2のパワートランジスタ
5…正相第1のモニタトランジスタ
6…正相第2のモニタトランジスタ
7…逆相第1のモニタトランジスタ
8…逆相第2のモニタトランジスタ
51…正相パワートランジスタドライブ回路
52…逆相パワートランジスタドライブ回路
61…正相第1基準第1の過電流検出回路
62…正相第1基準第2の過電流検出回路
63…正相第2基準第1の過電流検出回路
62…正相第2基準第2の過電流検出回路
71…逆相第1基準第1の過電流検出回路
72…逆相第1基準第2の過電流検出回路
73…逆相第2基準第1の過電流検出回路
72…逆相第2基準第2の過電流検出回路