(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096960
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】多孔質複合粒子、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220623BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20220623BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20220623BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20220623BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20220623BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20220623BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220623BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C08J9/28 102
C08L101/14
C08L89/00
C08L1/02
C08L5/00
C08K3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210263
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591275665
【氏名又は名称】三信鉱工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 彰紘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幹則
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直晃
(72)【発明者】
【氏名】岡寺 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】浅井 巌
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA01
4F070AA02
4F070AA03
4F070AA26
4F070AA29
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4J002AB01X
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4J002FD016
4J002GB00
(57)【要約】
【課題】多孔質粒子の圧縮強度を上げるには結合剤の含有量を増やす必要があるが、結合剤の含有量を増やすことで気孔が埋められるため、多孔質構造由来の特性である、担持性や軽量性、断熱性などが低下する傾向があった。そのため、結合剤の含有量を抑えて粒子の圧縮強度を向上させることが可能な多孔質複合粒子の開発が望まれていた。
【解決手段】メディアン径が0.010μm~5.00μmの無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを含有する複合粒子であり、前記複合粒子の気孔率が20体積%~90体積%であることを特徴とする多孔質複合粒子、及びその製造方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアン径が0.010μm~5.00μmの無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを含有する複合粒子であり、前記複合粒子の気孔率が20体積%~90体積%であることを特徴とする多孔質複合粒子
【請求項2】
水溶性有機バインダーの含有量が0.10重量%~20.0重量%、ナノファイバーの含有量が0.10重量%~20.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の多孔質複合粒子
【請求項3】
無機原料が、金属酸化物、金属非酸化物から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質複合粒子
【請求項4】
水溶性有機バインダーが、水溶性高分子、水溶性多糖類から選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1~3いずれか一項記載の多孔質複合粒子
【請求項5】
ナノファイバーが、セルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、シルクナノファイバーから選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1~4いずれか一項記載の多孔質複合粒子
【請求項6】
下記工程(1)及び(2)を経て調製される、請求項1~5いずれか一項記載の多孔質複合粒子の製造方法
(1)無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを混合機に供して分散体を得る。
(2)工程(1)で得られた分散体を噴霧乾燥造粒法もしくは凍結乾燥造粒法によりナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は多孔質複合粒子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質複合粒子は化粧品、触媒や薬剤などの担体、吸着剤、断熱材、電波吸収材など幅広い分野の製品として利用されている。
【0003】
多孔質複合粒子は無機原料のみでは保形性や粒子の圧縮強度が低くなり粒子形状が容易に崩壊する。そのため、無機原料に結合剤として有機物を用いる。
【0004】
非特許文献1には、アルミナ粉末に結合剤としてポリビニルアルコールと分散剤としてポリアクリル酸を混合し作製したスラリーを冷凍したn-ヘキサン中に噴霧させ、凍結粒子を得たのちに、凍結乾燥機により作製した多孔質粒子が開示されている。
【0005】
非特許文献2には、リン酸カルシウムに結合剤としてセルロースナノファイバーを添加したスラリーを噴霧乾燥法により作製したセラミック複合粒子が開示されている。
【0006】
特許文献1には、ポリビニルアルコールをバインダーとして添加したセラミックスラリーを噴霧乾燥法により作製したセラミック複合粒子が開示されている。
【0007】
しかしながら、多孔質粒子の圧縮強度を上げるには結合剤の含有量を増やす必要があるが、結合剤の含有量を増やすことで気孔が埋められるため、多孔質構造由来の特性である、担持性や軽量性、断熱性などが低下する問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】茨城県工業技術センター研究報告 第14号 p18-20(1985)
【非特許文献2】岐阜県産業技術センター研究報告、No.11、p1-4(2017)
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の一態様は、上記従来技術が有する問題を鑑み、結合剤の含有量を抑えて粒子の圧縮強度を向上させることが可能な多孔質複合粒子とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情において、本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、メディアン径0.01μm~5μmの無機原料、水溶性有機バインダー、及びナノファイバーを含有する多孔質複合粒子が、気孔率20体積%~90体積%を実現しながらも圧縮強度を上げることができることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0012】
また、本願発明では、前記多孔質複合粒子は、下記工程で製造できることを見出した。
(1)無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを混合機に供して分散体を得る。
(2)工程(1)で得られた分散体を噴霧乾燥造粒法もしくは凍結乾燥造粒法によりナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得る。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の一態様によれば、結合剤の含有量を抑えて粒子の圧縮強度を向上させることが可能な多孔質複合粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の実施形態の多孔質複合粒子の積算細孔体積図である。
【
図2】本願発明の実施形態の多孔質複合粒子の差分細孔体積図である。
【
図3】実施例1-1の多孔質複合粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図4】実施例1-1の多孔質複合粒子の積算細孔体積図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本願発明の多孔質複合粒子及びその製造方法を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。本願発明によれば、結合剤の含有量を抑えて粒子の圧縮強度を向上させることが可能な多孔質複合粒子を提供することができる。
【0016】
<多孔質複合粒子>
本願発明の多孔質複合粒子は、無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを含む多孔質粒子である。
本願発明の多孔質複合粒子のメディアン径は、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは2μm~300μmであり、最も好ましくは3μm~200μmである。多孔質複合粒子のメディアン径が500μmを超えると噴霧時に空気を取り込み易くなり、多孔質複合粒子内に粗大な気泡が形成し粒子の強度が低下する傾向にある。また、多孔質複合粒子のメディアン径が1μmを下回ると粒子の強度が低下してハンドリング時に粒子形状が崩壊しやすくなる。
尚、本願発明では、多孔質複合粒子のメディアン径はレーザー回折方式、光散乱方式、画像解析方式のいずれかを用いて測定することができる。
【0017】
本願発明の多孔質複合粒子の気孔率は20体積%~90体積%であり、好ましくは22体積%~85体積%であり、より好ましくは24体積%~80体積%である。多孔質複合粒子の気孔率が90体積%を超えると粒子の強度が著しく低下するためハンドリング時に容易に崩壊する。多孔質複合粒子の気孔率が20体積%を下回ると多孔質構造由来の吸着性能や担持性能が大きく低下する。
【0018】
多孔質複合粒子の気孔率は水銀圧入法、画像解析法のいずれかを用いて測定することができる。
【0019】
図1に、本願発明の実施形態の多孔質複合粒子の水銀圧入法により測定される積算細孔体積のグラフを示す。2段階の積算細孔体積の変化が見られ、細孔径が大きい側に見られる1段階目は多孔質複合粒子を測定セルに充填した際の多孔質複合粒子間の空隙体積を表し、2段階目は多孔質複合粒子内の細孔体積を表している。水銀圧入法で用いるセルの体積から1段階目の多孔質複合粒子間の空隙体積を減ずることで多孔質複合粒子の体積が求められる。
【0020】
多孔質複合粒子の気孔率は多孔質複合粒子内の細孔体積を多孔質複合粒子の体積で除することで行う。すなわち、多孔質複合粒子の気孔率(体積%)={(多孔質複合粒子内の細孔体積)/(多孔質複合粒子の体積)}×100である。
【0021】
本願発明の多孔質複合粒子の適切な細孔径は0.005μm~5μmであり、より好ましくは0.05μm~3μmであり、最も好ましくは0.5μm~1μmである。多孔質複合粒子の細孔径が5μmを超えると圧縮強度が低下する傾向にある。また、多孔質複合粒子の細孔径が0.005μmを下回ると多孔質複合粒子の作製時に昇華する水もしくは有機溶媒の抜けが悪くなりクラックなどの欠陥が生じ易くなる。
【0022】
多孔質複合粒子の細孔径は水銀圧入法、画像解析法のいずれかを用いて測定することができる。
【0023】
図2は、本願発明の実施形態の多孔質複合粒子の水銀圧入法により測定される細孔分布のグラフを示す。測定された細孔分布は2つのピークを持つ。細孔径が大きい側のピークは多孔質複合粒子間の空隙径に対応し、細孔径が小さい側のピークは孔質複合粒子の細孔径に対応する。
【0024】
本願発明で用いる無機原料としては、金属酸化物、金属非酸化物から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。また、無機原料の含有量は60.0重量%~99.8重量%であり、好ましくは75.0重量%~99.5重量%である。
【0025】
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(=アルミナ)、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素(=シリカ)、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化タングステン、アパタイト、コージェライト、ムライト、マイカ、タルクなどが挙げられる。
【0026】
また、金属非酸化物としては特に限定されないが、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ、窒化タンタル、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化タングステン、サイアロンなどが挙げられる。
【0027】
本願発明で用いる無機原料のメディアン径は、0.010μm~5.00μmであり、好ましくは0.015μm~4.00μmであり、より好ましくは0.020μm~3.00μmである。メディアン径が5.00μmよりも大きいと分散体中で沈降が顕著に起こり、均一な組成の多孔質複合粒子を得ることが困難になる。メディアン径が0.010μmよりも小さいと粒子の凝集が顕著に起こり噴霧の際にノズルが詰まるため生産性が大きく低下する。
【0028】
無機原料のメディアン径はレーザー回折方式、光散乱方式、画像解析方式のいずれかを用いて測定することができる。
【0029】
本願発明で用いる水溶性有機バインダーは、無機原料の結合剤であるが、具体的には水溶性高分子、水溶性多糖類から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
【0030】
水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0031】
水溶性多糖類としては、特に限定されないが、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、デキストリンなどが挙げられる。
【0032】
本願発明で用いる水溶性有機バインダーの好ましい含有量は0.10重量%~20.0重量%であり、より好ましくは0.15重量%~10.0重量%である、最も好ましくは0.20重量%~5.0重量%である。水溶性有機バインダーの含有量が20.0重量%を超えると多孔質複合粒子の気孔に水溶性有機バインダーが充填され多孔質構造由来の特性が低下する傾向にある。水溶性有機バインダーの含有量が0.10重量%を下回ると多孔質複合粒子を十分に保形することが困難になり、形状が崩壊しやすくなる。
【0033】
本願発明で用いるナノファイバーとは、直径が1~1000ナノメートルで、かつ長さが1000μm以下のアスペクト比が100倍以上ある繊維であるが、具体的にはセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、シルクナノファイバーから選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
【0034】
本願発明で用いるナノファイバーの好ましい含有量は0.10重量%~20.0重量%であり、より好ましくは0.2重量%~10.0重量%である、最も好ましくは0.4重量%~5.0重量%である。ナノファイバーの含有量が20.0重量%を超えると多孔質複合粒子の気孔にナノファイバーが充填され多孔質構造由来の特性が大きく低下する傾向にある。また、ナノファイバーの含有量が0.10重量%を下回ると、ナノファイバー添加の効果が十分に得られなくなる傾向がある。
【0035】
また、本願発明で用いられるナノファイバーと水溶性有機バインダーの重量混合比(ナノファイバー/水溶性有機バインダー)は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.3~9であり、更に最も好ましくは0.4~8である。重量混合比が10を超えると水溶性有機バインダー添加による強度への向上効果が小さくなる傾向にある。また、重量混合比が0.1を下回るとナノファイバー添加による強度への向上効果が小さくなる傾向にある。
【0036】
<多孔質複合粒子の製造方法>
本願発明の実施形態の多孔質粒子は、以下の工程(1)及び(2)に示す製造方法により作製される。
(1)無機原料と水溶性有機バインダーとナノファイバーを混合機に供して分散体を得る。
(2)工程(1)で得られた分散体を噴霧乾燥造粒法もしくは凍結乾燥造粒法によりナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得る。
【0037】
工程(1)において、無機原料、水溶性有機バインダー、ナノファイバーを混合する混合機としては特に限定されないが、例えば自転公転撹拌機、回転式ボールミル混合機、ビーズミル、ホモジナイザー、ディスパーミキサーなどが挙げられる。
【0038】
工程(2)において、噴霧乾燥造粒法としては特に限定されないが、例えば2流体以上のノズル方式、機械式ディスペンサー又は回転ディスク方式噴霧機により分散体を噴霧させ、得られた微細液滴を加熱乾燥空気により乾燥させ、無機原料とナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得る方法が好ましい。
【0039】
工程(2)において、凍結乾燥造粒法としては特に限定されないが、例えば2流体以上のノズル方式、機械式ディスペンサー又は回転ディスク方式噴霧機により分散体を噴霧させ、得られた微細液滴を冷凍空気もしくは液体窒素中に滴下させることで凍結微細液滴を作製する。その後、得られた凍結微細液滴を凍結乾燥機に供することで水もしくは有機溶媒を昇華させ、無機原料とナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得る方法が好ましい。
【実施例0040】
以下、実施例により本願発明をさらに詳細に説明する。尚、これらは本願発明を何ら限定するものではない。
【0041】
実施例1-1
工程(1):コロイダルシリカ(ST-N-40、固形分濃度40重量%、日産化学)、セルロースナノファイバー(I-2SX、固形分濃度2重量%、第一工業製薬)、ポリビニルアルコール(10重量%、富士フイルム和光純薬)を表1-実施例1-1の重量比かつ、分散体の固形分濃度は30重量%になるよう配合し、自転公転ミキサー(ARE-310、シンキー)に供して分散体を調製した。
工程(2):工程(1)で得られた分散体を機械式ディスペンサー(Aero-Jet、武蔵エンジニアリング)に供し、液体窒素中に微細液滴を滴下し急速冷凍させ、冷凍微粒子を得た。
吐出圧力:0.1MPa
ノズル径:200μm
その後、得られた凍結微粒子を凍結乾燥機(FDU-1200、東京理化器械)に供し、多孔質複合粒子を得た。
【0042】
図3に、実施例1-1で得られた多孔質複合粒子の電子顕微鏡画像を示す。多孔質構造が形成された球状粒子が得られた。
【0043】
図4に、実施例1-1で得られた多孔質複合粒子の水銀圧入法で得られた積算細孔体積を示す。2段階の積算細孔体積の変化が見られた。測定結果から、気孔率は76体積%であった。
尚、実施例1-1で調製された多孔質複合粒子の組成及び物性は表1に示すとおりであり、以降に示す実施例及び比較例の組成及び物性も表1に示した。
【0044】
【0045】
比較例1-1
水溶性有機バインダーであるポリビニルアルコールのみを用いて表1の比較例1-1に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製したこと以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0046】
比較例1-2
ナノファイバーであるセルロースナノファイバーのみを使用して表1の比較例1-2に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製したこと以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0047】
実施例1-2
表1の実施例1-2に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製すること以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0048】
実施例1-3
無機原料にアルミナ(TM-DAR、大明化学工業)と水溶性有機バインダーにポリアクリル酸(A-6114、東亞合成)を用いて作製したアルミナスラリー(固形分濃度60重量%)を用い、表1の実施例1-3に示す多孔質複合粒子の組成となるよう配合し、固形分濃度が50重量%になるように分散体を調製すること以外は、実施例1-1と同様にして多孔質複合粒子を得た。
【0049】
比較例1-3
水溶性有機バインダーであるポリアクリル酸のみを用いて表1の比較例1-3に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製したこと以外は、実施例1-3と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0050】
実施例1-4
無機原料に炭化ケイ素粉末(GC#6000、Fujimi)とナノファイバーにキトサンファイバー(EFo-08002、固形分濃度2重量%、スギノマシン)と水溶性有機バインダーに澱粉(和光純薬)を用い、表1の実施例1-4に示す多孔質複合粒子の組成となるよう配合し分散体を調製すること以外は、実施例1-1と同様にして多孔質複合粒子を得た。
【0051】
実施例1-5
無機原料にマイカ(A-11、ヤマグチマイカ)とシリカ(ST-N-40、固形分濃度40重量%、日産化学)を用い、ナノファイバーにキチンファイバー(SFo-20002、固形分濃度2重量%、スギノマシン)を用い、ノズル径が320μmのノズルを用い、表1の実施例1-5に示す多孔質複合粒子の組成となるよう配合し、固形分濃度が17重量%になるように分散体を調製すること以外は、実施例1-1と同様にして多孔質複合粒子を得た。
【0052】
実施例1-6
ナノファイバーにシルクナノファイバー(KCo-30005、固形分濃度5重量%、スギノマシン)を用い、表1の実施例1-6に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製すること以外は、実施例1-1と同様にして多孔質複合粒子を得た。
【0053】
比較例1-4
水溶性有機バインダーの代わりに非水溶性有機バインダーであるパラフィンエマルジョン(N-4040、オリオン化成)を用いること以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0054】
比較例1-5
水溶性有機バインダーの代わりに非水溶性有機バインダーであるアクリルエマルジョン(AS-2000、東亜合成)を用いること以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0055】
比較例1-6
水溶性有機バインダーの代わりに非水溶性有機バインダーであるポリエチレンエマルジョン(C-101、オリオン化成)を用いること以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0056】
実施例2-1
工程(1):アルミナ(AES―11、住友化学)、セルロースナノファイバー(FMa-100002、固形分濃度2重量%、スギノマシン)、ポリビニルアルコール(固形分濃度10重量%、富士フイルム和光純薬)を表1-実施例2-1の組成となるよう配合し、固形分濃度が50重量%になるよう調製し、自転公転ミキサー(ARE-310、シンキー)に供して分散体を得た。
工程(2):工程(1)で得られた分散体を噴霧乾燥機(ADL311S、ヤマト科学)に供し、微細液滴を高温場での急速固化により、無機原料とナノファイバーと水溶性有機バインダーを含有する多孔質複合粒子を得た。
吐出圧力:0.1MPa
ノズルタイプ:2流体ノズル
ノズル径:250μm
給気温度:150℃
排気温度:95℃
【0057】
比較例2-1
ナノファイバーであるセルロースナノファイバーのみを用いて表1の比較例2-1に示す多孔質複合粒子の組成となるように分散体を調製したこと以外は、実施例2-1と同様にして、多孔質複合粒子を得た。
【0058】
(圧縮強度評価方法)
上記の実施例及び比較例の多孔質複合粒子の圧縮強度について、微小圧縮試験機(MCT-W500、島津製作所)を用いて測定を行った。
【0059】
表1から、ナノファイバーと水溶性有機バインダーの両方を含む実施例1-1、実施例1-3、実施例2-1の多孔質複合粒子は、ナノファイバーもしくは水溶性有機バインダーを含まない比較例1-1、1-2、1-3、2-1の多孔質複合粒子と対比すると、結合剤の含有量を増やすことなく圧縮強度を向上することがわかる。さらに、ナノファイバーと水溶性有機バインダーの両方を含む実施例1-1は、水溶性有機バインダーを非水溶性有機バインダーに代えた比較例1-4、1-5、1-6と対比すると、結合剤の含有量を増やすことなく圧縮強度を向上することがわかる。
本願発明は、結合剤の含有量を抑えて粒子の圧縮強度を向上させることが可能な多孔質複合粒子とその製造方法である。本願発明の多孔質複合粉体を用いれば担持性や軽量性、断熱性に優れた材料を要求する産業分野に大きく貢献することができる。