(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096993
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20220623BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P29/00
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210319
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】井上 喬允
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB31
4C076CC05
4C076DD45
4C076DD50
4C076DD60
4C076FF43
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA21
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA03
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピルと、水とを含み、分散安定性が向上しており、更に肌馴染みに優れた外用医薬組成物を提供することである。
【解決手段】外用医薬組成物において、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上と、N-メチル-2-ピロリドン2重量%以上とを配合することによって、分散安定性が向上し、均一な懸濁状態を形成できると共に、肌馴染みが良好になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェルビナク、(B)ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上、(C)N-メチル-2-ピロリドン2重量%以上、並びに(D)水を含有する、外用医薬組成物。
【請求項2】
更に(E)ジイソプロパノールアミンを含む、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピルと、水とを含み、分散安定性が向上しており、更に肌馴染みに優れた外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルビナクは、解熱、鎮痛、及び消炎作用を有している非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、外用医薬組成物に使用されている。一方、外用医薬組成物に液状油を配合することにより使用感を向上できることが知られている。そこで、従来、フェルビナクと液状油を含む外用医薬組成物の処方について、種々報告されている。例えば、特許文献1には、フェルビナクと、l-メントールと、多価アルコールと、トリグリセリド(液状油に該当)とを含む水中油型乳化組成物が、フェルビナクの含量低下を抑制できることが記載されている。
【0003】
一方、液状油の中でも、ミリスチン酸イソプロピルは、エリモント作用、ソフトでさっぱりした感触の付与等の点で優れており、外用医薬組成物にミリスチン酸イソプロピルを配合することよって良好な使用感を付与できることが知られている。そこで、フェルビナクを含む外用医薬組成物において、使用感の向上等を図るべく、更にミリスチン酸イソプロピルを配合した製剤処方の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピルと、水とを含む外用医薬組成物を開発すべく鋭意検討を行ったところ、当該外用医薬組成物ではミリスチン酸イソプロピルの分散安定性(分散された状態を安定に維持する特性)が低く、均一な懸濁状態を形成できないという課題を知得した。更に、当該外用組成物は、肌馴染み(肌への馴染み易さ)が劣っているという課題も知得した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピルと、水とを含み、分散安定性が向上しており、更に肌馴染みに優れた外用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、外用医薬組成物において、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上と、N-メチル-2-ピロリドン2重量%以上とを配合することによって、分散安定性が向上し、均一な懸濁状態を形成できると共に、肌馴染みが良好になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)フェルビナク、(B)ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上、(C)N-メチル-2-ピロリドン2重量%以上、並びに(D)水を含有する、外用医薬組成物。
項2. 更に(E)ジイソプロパノールアミンを含む、項1に記載の外用医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フェルビナクと、ミリスチン酸イソプロピルと、水とを含む外用医薬組成物において、ミリスチン酸イソプロピルの分散安定性が向上しており、均一な懸濁状態を形成させることができ、更に肌馴染みも良好であり、優れた使用感を備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例5及び比較例3の外用医薬組成物を50℃7日間静置した後の外観を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.外用医薬組成物
本発明の外用医薬組成物は、(A)フェルビナク、(B)ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上、(C)N-メチル-2-ピロリドン2重量%以上、並びに(D)水を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用医薬組成物について詳述する。
【0012】
[(A)フェルビナク]
本発明の外用医薬組成物は、フェルビナク((A)成分と表記することもある)を含有する。フェルビナクは、フェニル酢酸系の非ステロイド性抗炎症薬である。
【0013】
本発明の外用医薬組成物における(A)成分の含有量は、備えさせるべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~5重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0014】
[(B)ミリスチン酸イソプロピル]
本発明の外用医薬組成物は、ミリスチン酸イソプロピル((B)成分と表記することもある)2重量%以上を含有する。ミリスチン酸イソプロピルとは、ミリスチン酸とイソプロピルアルコールがエステル結合している脂肪酸アルキルエステルである。
【0015】
本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量は、2重量%以上であればよいが、具体的には2~20重量%が挙げられる。ミリスチン酸イソプロピルの分散安定性及び肌馴染みをより一層向上させるという観点から、本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量として、好ましくは3~10重量%、より好ましくは4~10重量%、更に好ましくは5~10重量%が挙げられる。
【0016】
本発明の外用医薬組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が0.01~50重量部、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは1~20重量部が挙げられる。
【0017】
[(C)N-メチル-2-ピロリドン]
本発明の外用医薬組成物は、前記成分に加えて、N-メチル-2-ピロリドン((C)成分と表記することもある)を2重量%以上含有する。本発明の外用医薬組成物では、フェルビナクとミリスチン酸イソプロピル2重量%以上とN-メチル-2-ピロリドン2重量%以上とを併用することにより、ミリスチン酸イソプロピルの分散安定性が向上し、均一な懸濁状態を形成させることが可能になると共に、優れた肌馴染みを備えさせることができる。N-メチル-2-ピロリドンとは、2-ピロリドンの窒素原子にメチル基が置換されている化合物である。
【0018】
本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量は、2重量%以上であればよいが、具体的には2~20重量%が挙げられる。ミリスチン酸イソプロピルの分散安定性及び肌馴染みをより一層向上させるという観点から、本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは3~15重量%、より好ましくは4~10重量%、更に好ましくは5~8重量%が挙げられる。
【0019】
本発明の外用医薬組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が0.01~50重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0020】
[(D)水]
本発明の外用医薬組成物には、基剤として水が含まれる。本発明の外用医薬組成物における水の含有量は、配合する他の成分を除いた残部であればよいが、例えば、5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~88重量%が挙げられる。
【0021】
[(E)ジイソプロパノールアミン]
本発明の外用医薬組成物は、前記成分に加えて、ジイソプロパノールアミン((E)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。本発明の外用医薬組成物において、更にジイソプロパノールアミンを含む場合には、ミリスチン酸イソプロピルの分散安定性及び肌馴染みをより一層向上させることが可能になる。ジイソプロパノールアミンは、1,1’-イミノビス(2-プロパノール)とも称される公知の化合物である。
【0022】
本発明の外用医薬組成物に(E)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の外用医薬組成物に(E)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(D)成分の比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(E)成分が0.001~100重量部、好ましくは0.01~50重量部、より好ましくは0.1~7重量部が挙げられる。
【0024】
[1価低級アルコール]
本発明の外用医薬組成物は、更に1価低級アルコールを含んでいてもよい。本発明において、1価低級アルコールとは炭素数1~5の1価アルコールを指す。
【0025】
1価低級アルコールの種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの1価低級アルコールの中でも、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0027】
本発明の外用医薬組成物に1価低級アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~70重量%、好ましくは1~60重量%が挙げられる。
【0028】
[その他の成分]
本発明の外用医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル((B)成分以外)、脂肪酸、高級アルコール、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用医薬組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
また、本発明の外用医薬組成物は、前述する成分の他に、薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤、保湿剤、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用医薬組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
[製剤形態]
本発明の外用医薬組成物の製剤形態については、経皮投与可能であることを限度として特に制限されず、例えば、液剤(懸濁液)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【実施例0031】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
試験例1
表1に示す組成の外用医薬組成物(懸濁液)を以下の方法で調製した。具体的には、フェルビナク、ジイソプロパノールアミン、エタノール、及び精製水を所定量混合して溶解させた後に、ミリスチン酸イソプロピルを混合しながら徐々に添加し、最後にN-メチル-2-ピロリドンを所定量添加して、均一になるまで撹拌することにより、外用医薬組成物(比較例1及び5~7は可溶化液、比較例1及び5~7以外は懸濁液)を調製した。
【0033】
調製した各外用医薬組成物(比較例1及び5~7以外)を50℃で7日間静置した後に外観を観察し、「油分(ミリスチン酸イソプロピル)が著しく分離しており、均一な懸濁液を形成していない」を1点、「油分(ミリスチン酸イソプロピル)の分離が全く認められず、均一な懸濁液を形成している」を15点として、分散状態の程度に応じて1~15点の15段階で分散安定性を評点化した。なお、参考のために、前記評点において1点及び15点の状態の外用医薬組成物の外観を撮影した写真を
図1に示す。なお、前記評点において、10点以上の場合には、実用化する上で許容できる分散安定性を有していると判定できる。
【0034】
また、調製した各外用医薬組成物の肌馴染みの程度について評価した。具体的には、10名の被験者に各外用医薬組成物の約2gを内腕に塗布させ、塗布時の肌への馴染み易さについて、「肌によく馴染む」を10点、「肌に馴染みにくい」を1点として、肌への馴染み易さの程度に応じて1~10点の10段階で肌馴染みを評点化し、10名の被験者の評点の平均点を算出し、小数点第二位を四捨五入した値を肌馴染みの評点とした。
【0035】
結果を表1に示す。また、
図1に実施例5及び比較例3の外用医薬組成物の外観を撮影した写真を示す。フェルビナクを含む外用医薬組成物において、ミリスチン酸イソプロピルを含まない場合には肌馴染みが劣っていた(比較例1及び5~7)。また、フェルビナクを含む外用医薬組成物において、ミリスチン酸イソプロピル又はN-メチル-2-ピロリドンの一方のみを含む場合には、分散安定性が認められず、更に肌馴染みの点でも不十分であった(比較例2~7)。更に、フェルビナクを含む外用医薬組成物において、ミリスチン酸イソプロピル及びN-メチル-2-ピロリドンの双方を含んでいても、これらの両成分の少なくとも1つの含有量が2重量%を下回っている場合には、良好な肌馴染みは認められなかった(比較例8及び9)。これに対して、フェルビナクを含む外用医薬組成物において、ミリスチン酸イソプロピル2重量%以上及びN-メチル-2-ピロリドン2重量%以上を含む場合には、分散安定性に優れ、均一な懸濁液を形成できており、更に良好な肌馴染みも認められた(実施例1~6)。なお、実施例1において、フェルビナクを未配合に変更した外用医薬組成物では、分散安定性が認められず、更に肌馴染みの点でも不十分であった。また、実施例1においてジイソプロパノールアミンを5重量%に変更した外用医薬組成物は、実施例1よりも分散安定性に優れ、より良好な肌馴染みとなることが確認された。
【0036】
【0037】
処方例
表2に示す組成の外用医薬組成物を試験例1と同様の方法で調製し、試験例1と同様の方法で分散安定性及び肌馴染みの程度を評価したところ、処方例1~10いずれの外用医薬組成物においても分散安定性に優れ、均一な懸濁液を形成できており、更に良好な肌馴染みも認められた
【0038】