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特開2022-97225作業管理システム、作業管理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097225
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】作業管理システム、作業管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20220623BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20220623BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220623BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220623BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220623BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220623BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
G06Q10/08
G06Q50/04
G08B25/04 K
G08B21/02
G05B19/418 Z
B66F9/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210685
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】麻生 敏正
【テーマコード(参考)】
3C100
3F333
5C086
5C087
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA59
3C100AA62
3C100BB13
3C100BB17
3C100BB24
3C100BB33
3C100CC02
3C100CC14
3F333AA02
3F333DB10
3F333FA11
3F333FA40
3F333FD20
5C086AA22
5C086AA52
5C086BA20
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA25
5C087AA02
5C087BB18
5C087DD03
5C087DD14
5C087DD27
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087GG06
5C087GG12
5C087GG29
5C087GG84
5L049AA06
5L049AA16
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】装置構成を簡略化しつつ、管理対象領域内における作業の安全性を向上させることができる作業管理システム、作業管理方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】管理対象領域において用いられる移動体Mに設けられ、送信信号を送信する送信器2と、管理対象領域に滞在する人員に携帯され送信信号を受信すると共に、送信信号の電波強度を含む通信データを送信する端末装置4と、通信データを取得し、電波強度に基づいて端末装置と送信器との距離を算出する管理装置10と、を備え、管理装置は、距離に基づいて、人員のうち移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別し、操作者が移動体を操作中に作業者と移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、人員の管理対象領域におけるリスクを算出する、作業管理システム1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象領域において用いられる移動体に設けられ、送信信号を送信する送信器と、
前記管理対象領域に滞在する人員に携帯され前記送信信号を受信すると共に、前記送信信号の電波強度を含む通信データを送信する端末装置と、
前記通信データを取得し、前記電波強度に基づいて前記端末装置と前記送信器との距離を算出する管理装置と、を備え、
前記管理装置は、前記距離に基づいて、前記人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別し、前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記人員の前記管理対象領域におけるリスクを算出する、作業管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記移動体と前記端末装置との距離が所定値以内であり、且つ、所定の時間以上に前記所定値以内の状態が継続する場合、前記端末装置の所持者は前記操作者であると判定する、
請求項1に記載の作業管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記接近回数の総計に対する各前記操作者の個別の前記接近回数の割合に基づいて前記操作者の前記リスクを算出する、
請求項1または2に記載の作業管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記接近回数の総計に対する各前記作業者の個別の前記接近回数の割合に基づいて前記作業者の前記リスクを算出する、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の作業管理システム。
【請求項5】
前記管理対象領域は、作業内容に応じた複数の作業領域に分類されており、
前記管理装置は、前記作業領域に応じて重み付けされた前記リスクを算出する、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の作業管理システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記リスクに応じた警告内容を生成する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の作業管理システム。
【請求項7】
管理対象領域において用いられる移動体に設けられた送信器から送信信号を送信し、
前記管理対象領域に滞在する人員に携帯された端末装置により前記送信信号を受信すると共に、前記送信信号の電波強度を含む通信データを送信し、
前記通信データを取得し、前記電波強度に基づいて前記端末装置と前記送信器との距離を算出し、
前記距離に基づいて、前記人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別し、
前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記操作者の前記移動体の操作におけるリスクを算出する、作業管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
管理対象領域において用いられる移動体に設けられた送信器から送信された送信信号の電波強度に基づいて、前記送信信号を受信した前記管理対象領域に滞在する作業者が携帯する端末装置と前記送信器との距離を算出させ、
前記距離に基づいて、前記管理対象領域に滞在する人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別させ、
前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記操作者の前記移動体の操作におけるリスクを算出させる、作業管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象領域における安全管理を行うための作業管理システム、作業管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流過程や工場等の管理対象領域において、荷役作業を行うフォークリフト等の移動体と作業者とが混在している。管理対象領域においては、移動体と作業者との接触を未然に防止する安全対策が求められる。特許文献1には、例えば、フォークリフトと作業者との距離が基準以内である場合に所定の警告を通知する予測衝突回避システムが記載されている。
【0003】
この予測衝突回避システムは、フォークリフトに設けられた信号を送信するセンサと、信号を受信する受信器と、受信器と通信しセンサと受信器との間の距離を算出するコントローラと、距離が所定以内である場合に照明などの警告を生成する投影装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-228284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術によれば、システムを構築する場合に、所定のセンサ、受信器、投影装置等が必要となり、設備を導入するためにコストが増加する虞がある。
【0006】
本発明は、装置構成を簡略化しつつ、管理対象領域内における作業の安全性を向上させることができる作業管理システム、作業管理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明は、管理対象領域において用いられる移動体に設けられ、送信信号を送信する送信器と、前記管理対象領域に滞在する人員に携帯され前記送信信号を受信すると共に、前記送信信号の電波強度を含む通信データを送信する端末装置と、前記通信データを取得し、前記電波強度に基づいて前記端末装置と前記送信器との距離を算出する管理装置と、を備え、前記管理装置は、前記距離に基づいて、前記人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別し、前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記人員の前記管理対象領域におけるリスクを算出する作業管理システムである。
【0008】
本発明によれば、送信器と端末装置との通信における電波強度に基づいて送信器と端末装置との間の距離を算出し、距離に基づいて作業者と移動体の操作者とを判別することができる。
【0009】
また、本発明の前記管理装置は、前記移動体と前記端末装置との距離が所定値以内であり、且つ、所定の時間以上に前記所定値以内の状態が継続する場合、前記端末装置の所持者は前記操作者であると判定するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明によれば、距離と継続時間に基づいて簡便に作業者と移動体の操作者とを判別することができる。
【0011】
また、本発明の前記管理装置は、前記接近回数の総計に対する各前記操作者の個別の前記接近回数の割合に基づいて前記操作者の前記リスクを算出するように構成されていてもよい。
【0012】
本発明によれば、簡便な手法を用いて管理対象領域内における操作者のリスクを評価することができる。
【0013】
また、本発明の前記管理装置は、前記接近回数の総計に対する各前記作業者の個別の前記接近回数の割合に基づいて前記作業者の前記リスクを算出するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、簡便な手法を用いて管理対象領域内における作業者のリスクを評価することができる。
【0015】
また、本発明の前記管理対象領域は、作業内容に応じた複数の作業領域に分類されており、前記管理装置は、前記作業領域に応じて重み付けされた前記リスクを算出するように構成されていてもよい。
【0016】
本発明によれば、管理対象領域内の個々の作業領域における作業内容が異なっていてもリスク評価の公平性を担保することができる。
【0017】
また、本発明の前記管理装置は、前記リスクに応じた警告内容を生成するように構成されていてもよい。
【0018】
本発明によれば、各操作者及び各作業者に警告内容を通知することにより、作業におけるリスクを注意喚起し作業内容の改善にフィードバックすることができる。
【0019】
本発明の一態様は、管理対象領域において用いられる移動体に設けられた送信器から送信信号を送信し、前記管理対象領域に滞在する人員に携帯された端末装置により前記送信信号を受信すると共に、前記送信信号の電波強度を含む通信データを送信し、前記通信データを取得し、前記電波強度に基づいて前記端末装置と前記送信器との距離を算出し、前記距離に基づいて、前記人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別し、前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記操作者の前記移動体の操作におけるリスクを算出する、作業管理方法である。
【0020】
本発明によれば、簡便な手法を用いて作業者と移動体の操作者とを判別することができる。
【0021】
本発明の一態様は、コンピュータに、管理対象領域において用いられる移動体に設けられた送信器から送信された送信信号の電波強度に基づいて、前記送信信号を受信した前記管理対象領域に滞在する作業者が携帯する端末装置と前記送信器との距離を算出させ、前記距離に基づいて、前記管理対象領域に滞在する人員のうち前記前記移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別させ、前記操作者が前記移動体を操作中に前記作業者と前記移動体とが所定範囲内に移動した接近回数に基づいて、前記操作者の前記移動体の操作におけるリスクを算出させる、作業管理プログラムである。
【0022】
本発明によれば、簡便な処理により作業者と移動体の操作者とを判別し、演算における負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、装置構成を簡略化しつつ、管理対象領域内における作業の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る管理対象領域の構成を示す図である。
図2】作業管理システムの構成を示すブロック図である。
図3】通信距離と受信電波強度との関係を示す図である。
図4】操作者と作業者との接近回数を示す図である。
図5】操作者のリスクの算出結果を示す図である。
図6】作業者のリスクの算出結果を示す図である。
図7】管理装置において実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る作業管理システム、作業管理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。作業管理システムは、例えば、管理対象領域の安全性を管理するものである。
【0026】
図1に示されるように、管理対象領域Rは、例えば、物流過程における物品を保管する倉庫や工場等の荷役作業が行われる場所である。管理対象領域Rは、作業内容に応じて複数の作業領域Rn(n:自然数)に分類されている。作業領域Rnは、それぞれ、物品の保管、梱包、配送、加工等の作業が行われている。管理対象領域Rにおいては、例えば、操作者Dが操作する移動体Mと作業者Wとが混在している。移動体Mは、例えば、操作者Dが運転するフォークリフト、フォークリフト以外の車両、作業用の機械であってもよい。
【0027】
図2に示されるように、作業管理システム1は、例えば、移動体Mに設けられた送信器2と、送信器2と通信する端末装置4と、作業者Wの安全管理を行う管理装置10とを備える。移動体Mは、例えば、管理対象領域R内において用いられるフォークリフトである。移動体Mは、管理対象領域R内に複数台存在する。作業者Wは、管理対象領域R内に多数人存在する。
【0028】
送信器2は、フォークリフトに設けられている。送信器2は、例えば、所定の送信信号を所定のタイミングで送信する電波ビーコン(BLEビーコン)である。送信器2は、送信信号にID情報を付加して送信する。ID情報は、例えば、MACアドレスである。ID情報は、個体識別が可能であればMACアドレス以外のものが用いられてもよい。送信器2は、例えば、Bluetooth(登録商標)により多数に存在する端末装置4と通信を行う。端末装置4は、受信した送信信号に付加されたID情報に基づいて、送信器2が複数個存在しても送信器2と個別に通信を行うことができる。
【0029】
端末装置4は、管理対象領域Rに滞在する人員に携帯されている。人員には、少なくとも移動体Mの操作者D及び操作者D以外の作業者Wが含まれる。端末装置4は、例えば、スマートフォン、タブレット型端末等により構成される携帯通信端末装置である。端末装置4には、送信器2が送信する電波ビーコンに基づいて所定の通信を行うアプリケーションがインストールされている。
【0030】
送信器2と端末装置4とは、例えば、BLE通信により通信を確立する。送信器2は、周囲をスキャンして端末装置4が所定のタイミングにおいて発信するアドバタイズ信号を受信する。アドバタイズ信号には、MACアドレスのデータが含まれる。送信器2は、アドバタイズ信号を受信した際、MACアドレス、受信電波強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)のデータを取得する。RSSIは、端末装置4と送信器2との間の距離が離れるのに応じて弱くなる。送信器2は、受信したアドバタイズ信号に基づいて端末装置4に接続要求を送信する。端末装置4は、接続要求を受信し、送信器2との1対1の接続通信(GATT(Generic attribute profile)通信)に切り替える。
【0031】
送信器2と端末装置4とは、bluetoothによりペアリング通信を行ってもよい。送信器2が送信した送信信号を受信すると共に、ID情報に基づいて、送信器2と所定の通信を行い個別の通信を確立する。Bluetoothペアリングにおいて、端末装置4と送信器2とは、通信経路を生成する。ペアリング後において、端末装置4と送信器2とは、通信を安定させるために、電波強度の補正を行う。端末装置4は、送信信号を受信すると共に、送信信号の電波強度を計測する。端末装置4は、例えば、送信器2とのペアリング後の送信信号の強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を取得する。RSSIは、端末装置4と送信器2との間の距離が離れるのに応じて弱くなる。
【0032】
送信器2と端末装置4とは、bluetooth以外の通信方式により通信を行ってもよい。送信器2は、例えば、ZigBee(登録商標)や無線LAN等を用いて複数の端末装置4と通信を行ってもよい。送信器2と端末装置4との通信には、複数の端末装置4が同時に送信器2と通信可能であれば他の無線通信方式が用いられもよい。
【0033】
端末装置4は、受信した送信信号の電波強度を含む通信データを管理装置10にネットワークNを介して送信する。ネットワークNは、例えば、管理対象領域R内に設置された無線LAN、携帯電話の公衆網、及びBluetooth等の個別通信手段、又はこれらの組合せにより実現される通信手段である。端末装置4は、定期的(例えば10分毎)又は所定のタイミングに通信データを管理装置10に送信する。
【0034】
管理装置10は、ネットワークNを介して端末装置4により送信された通信データを取得する。管理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンなどにより実現される情報処理装置である。管理装置10は、例えば、安全管理に関する種々の計算を行う演算部12と、演算に必要なプログラム及びデータが記憶された記憶部14と、演算結果に基づいて、安全管理に関する表示を行う表示部16とを備える。
【0035】
演算部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、演算部12のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0036】
記憶部14は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)、或いはこれらを複数用いたハイブリッド型記憶装置により実現される。また、記憶部14には、ファームウェアやアプリケーションプログラム等の各種プログラム、各種機能部による処理結果などが記憶される。記憶部14の一部または全部は、管理装置10がネットワークNを介してアクセス可能な外部記憶装置によって実現されてもよい。外部記憶装置は、例えば、NAS(Network Attached Storage)装置である。
【0037】
次に、管理装置10において実行される処理について説明する。演算部12は、通信データに含まれる電波強度を示すRSSIデータに基づいて端末装置4と送信器2との距離を算出する。演算部12は、管理対象領域R内に複数の送信器2が設置されている場合、複数の送信器2から受信したRSSIのデータに基づいて端末装置4の位置を推定してもよい。
【0038】
図3に示されるように、受信電波の強度と通信距離との間には、通信距離が離れるほど受信電波強度が低下するという関連性がある。この関連性は、予め行われた実験により取得されたデータに基づいて所定の関数(d=f(v)、但しd:距離、v:電波強度)が設定される。所定の関数に代えて受信電波の強度と通信距離との関連を示すマッピングデータが用いられてもよい。所定の関数、マッピングデータは、記憶部14に記憶される。演算部12は、所定の関数やマッピングデータを用いて、取得したRSSIデータに対応する通信距離を算出する。
【0039】
演算部12は、算出した距離に基づいて、管理対象領域R内に存在する人員のうち移動体Mを操作する操作者Dとそれ以外の作業者Wとを判別する。演算部12は、例えば、移動体Mと端末装置4との距離が所定範囲(例えば1m)以内であり、且つ、所定の時間(例えば1分)以上に所定値以内の状態が継続する場合、端末装置4の所持者は移動体Mの操作者Dであると判定する。演算部12は、操作者Dが所持する端末装置4以外の端末装置4の所持者は、作業者Wであると判定する。
【0040】
演算部12は、所定期間(例えば1週間)毎に操作者Dが移動体Mを操作中に作業者Wと移動体Mとが所定範囲(例えば1m)内に移動した場合、「接近」と判定する。演算部12は、接近が生じた場合、その回数を接近回数としてカウントし、記憶部14に記憶し、データベースを生成する。
【0041】
図4に示されるように、演算部12は、データベースに基づいて所定期間(例えば1か月)毎に作業者Wと稼働中における移動体Mとが所定範囲内に移動した接近回数を集計し、集計マップQを生成する。集計マップQには、接近回数が集計されている。集計マップQは、例えば、表示部16に表示される。演算部12は、例えば、集計マップQに基づいて、操作者Dの移動体Mの操作におけるリスクを算出する。リスクは、例えば、単純に作業者Wと稼働中における移動体Mとが所定範囲内に移動した回数に基づいて評価されてもよい。リスクは、例えば、操作者Dと作業者Wとにそれぞれ設定されている。
【0042】
図5に示されるように、演算部12は、接近回数の総計に対する各操作者Dの個別の接近回数の割合を操作者Dのリスクとして算出する。算出結果は、例えば、表示部16に表示される。この場合、リスクは、値が小さいほど安全側に評価される。リスクの算出方法は一例であり、接近回数の割合だけでなく、接近回数に応じた結果が得られるのであれば他の評価方法が用いられてもよい。図示するように、例えば、(3)の操作者Dの接近回数が占める割合が他の操作者Dの接近回数の割合に比して大きい。この場合、(3)の操作者Dは、移動体Mの操作において作業者Wとの接触リスクが相対的に高いと判定される。
【0043】
図6に示されるように、演算部12は、操作者Dのリスクの算出と同様に、接近回数の総計に対する各作業者Wの個別の接近回数の割合を作業者Wのリスクとして算出する。算出結果は、例えば、表示部16に表示される。図示するように、例えば、(11)の作業者Wの接近回数が占める割合が他の作業者Wの接近回数の割合に比して大きい。この場合、(11)の作業者Wは、管理対象領域R内における作業において移動体Mとの接触リスクが相対的に高いと判定される。
【0044】
演算部12は、算出結果に基づいて、リスクの度合いに応じた警告内容を生成する。警告内容は、リスクの度合いに応じて予め設定された段階的なランクであってもよいし、リスクの度合いに応じた警告内容が示されたメッセージであってもよい。演算部12は、リスクが相対的に高いと判定された操作者D及び作業者Wが所持する端末装置4に、警告内容を含む送信データを送信させる。操作者D及び作業者Wは、端末装置4に表示された警告内容に基づいて作業内容を再確認し、作業におけるリスクを低下させるようにフィードバックすることができる。
【0045】
上述したように、管理対象領域Rは、作業内容に応じて複数の作業領域Rnに分類されている。例えば、作業者Wの密度が高い作業領域Rnと、密度が低い作業領域Rnとでは、リスクが異なる。また、移動体Mの平均速度が相対的に低い作業領域Rnにおいては、移動体Mの平均速度が相対的に高い作業領域Rnに比してリスクが異なる。
【0046】
演算部12は、作業領域Rn毎にリスクを算出してもよい。演算部12は、管理対象領域R全体において操作者D及び作業者Wのリスクを一元管理する場合、作業領域Rnに応じてリスクに重み付けを行い、操作者D及び作業者Wのリスクを算出してもよい。この他、演算部12は、リアルタイムで接近が判定された場合、端末装置4に接近を警告する警告内容を送信させてもよい。この場合、演算部12は、所定範囲に接近した段階において端末装置4に接近を警告する警告内容を送信させてもよい。演算部12は、作業領域Rn毎の見取り図において、接近回数と発生位置との関連を示す表示を生成し、表示部16に表示させてもよい。
【0047】
次に、作業管理システム1において実行される作業管理方法の処理の流れについて説明する。
【0048】
図7には、管理装置10において実行される処理の流れを示すフローチャートが示されている。管理対象領域Rにおいて用いられる移動体Mには、送信器2が設けられている。送信器2は、所定のタイミングで送信信号を送信する(ステップS100)。管理対象領域Rに滞在する人員は、端末装置4を携帯している。端末装置4は、送信信号を受信する(ステップS102)。端末装置4は、送信信号の電波強度を含む通信データを送信する(ステップS104)。管理装置10は、通信データを取得する(ステップS106)。
【0049】
管理装置10は、通信データに含まれる電波強度のデータに基づいて端末装置4と送信器2との距離を算出する。管理装置10は、距離に基づいて、人員のうち移動体を操作する操作者とそれ以外の作業者とを判別する(ステップS108)。管理装置10は、操作者が移動体を操作中に作業者と移動体とが所定範囲内に移動した回数に基づいて、操作者の移動体の操作におけるリスクを算出する(ステップS110)。
【0050】
上記処理において、管理装置10においては、作業管理プログラムは、コンピュータに以下の処理を実行させる。作業管理プログラムは、管理対象領域Rにおいて用いられる移動体Mに設けられた送信器2から送信された送信信号の電波強度に基づいて、送信信号を受信した管理対象領域Rに滞在する作業者Wが携帯する端末装置4と送信器2との距離を算出させる。作業管理プログラムは、距離に基づいて、管理対象領域Rに滞在する人員のうち移動体Mを操作する操作者Dとそれ以外の作業者Wとを判別させる。作業管理プログラムは、操作者Dが移動体Mを操作中に作業者Wと移動体Mとが所定範囲内に移動した回数に基づいて、操作者Dの移動体Mの操作におけるリスクを算出させる。
【0051】
上述したように、作業管理システム1によれば、BLEビーコンなどにより構成される送信器2、スマートフォン等の端末装置4により構成され、装置構成を大幅に簡略化することができる。作業管理システム1によれば、電波強度に基づいて作業者Wと移動体Mの操作者Dとを簡便に判別できる。作業管理システム1によれば、接近回数に基づく簡便なアルゴリズムを用いて管理対象領域R内において発生するリスクを算出し、処理スピードを高速化できる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、作業管理システムは、人員に送信器も付与し、人員の接近回数を判定し、感染症のリスクを評価することに適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 作業管理システム
2 送信器
4 端末装置
10 管理装置
12 演算部
14 記憶部
16 表示部
D 操作者
LAN 無線
M 移動体
N ネットワーク
Q 集計マップ
R 管理対象領域
Rn 作業領域
W 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7